会社概要
羽生成夫氏:丸藤シートパイル株式会社代表取締役社長の羽生です。本日は、当社の事業内容のご紹介と2025年3月期の決算実績と次期の見通し、今後の取り組み及びトピックスについてご説明します。
当社は1926年の創業以来、重仮設リースのパイオニア企業として建築、土木事業での地盤・地下の基礎工事に欠かせない建設工事用の重仮設資材の販売、賃貸、製品の加工ならびに土木建築の基礎工事の設計施工の請負業務を行っています。
「地下エンジニアリング」企業として、国土の発展と社会資本の整備に貢献するという基本理念のもとに地下工事を支え、社会に貢献していきます。
創業から100年を迎えようとしています。コア事業の基盤を強化し次の100年に向けた中期経営計画に取り組み、持続的な企業価値向上を目指していきます。
当社の従業員数は391名です。連結グループ会社2社を含めますと493名となります。
事業内容
当社は創業以来、社会資本形成への貢献を理念に掲げ、建材リース業として地下仮設工事に総合的に携わってきました。
土木分野では河川・ダム、砂防・治山治水、海岸等の整備、交通(道路、鉄道、空港、港湾等)関連、エネルギー(各種発電所)関連の建設、老朽化したインフラ設備(道路、鉄道、上下水道、治山治水等)の維持更新、大規模自然災害の復旧工事に携わっています。
建築分野では、都市圏の再開発事業、地下の基礎工事を必要とする建物の建築などに携わっています。
重仮設業のパイオニアとして蓄えた知見をもとに、現在では各種鉄骨加工や、環境関連工事にまで事業領域を拡大しています。
決算サマリー(通期)
2025年3月期の決算についてご説明します。
建設業界では、都市部の再開発事業や民間の設備投資のプロジェクトに加え、国土強靭化対策やインフラの維持更新・老朽化対策など政府が進める公共投資などの建設需要が底堅く推移してきました。このような環境の中で、当社は建設市場の多様なニーズへの対応力を高め受注拡大に向けての製品・工法の差別化を行い、お客さまの要望に添った特殊品分野への営業活動及び拡販活動の強化と受注工事の確保に取り組んできました。また、近年の大規模自然災害やインフラ設備の老朽化による重大事故への復旧支援にも取り組んできました。
その結果、前年度比売上高は3パーセント増収の355億8,000万円となりました。経常利益は、採算性を重視した営業活動と建設コスト高に対応した価格改善とコスト削減に取り組んだ結果、前年度比7.9パーセント増益の20億7,000万円となりました。
損益計算書(P/L)
損益計算書についてご説明します。
売上高は、民間の設備投資の底堅い建設需要が継続されている環境の下、各四半期単位では大きな変動もなく推移してきました。営業利益から経常利益が増加している要因は、賃貸等不動産の地代家賃収益と、主要な工場の建物の屋根に設置した太陽光発電の売電収益によるものです。
売上高・経常利益の推移
売上高・経常利益の上期・下期単位での推移についてご説明します。
民間設備投資の需要が持続的に推移していますが、公共投資の受注が比較的下期に集中することから、当社の収益の比重は下期型の傾向となります。
売上高の増減要因
売上高の増減要因を項目別についてご説明します。
販売収入は、現場の状況に応じて資材の販売を行っていますが、採算性を重視し、前期よりも販売を抑制した結果、減収となりました。次に賃貸収入については、建設資材の現場への提供は量的には賃貸での提供をメインとしています。鋼材仕入価格の高止まりが続いている中、価格改善に取り組んだ結果、賃貸収入は増収となりました。工事収入については連結グループ会社との連携で工事受注に注力した結果、増収となりました。そのほか、運送収入、加工収入においても増収となりました。
キャッシュ・フロー
キャッシュ・フロー計算書について説明します。
2025年3月期の現金及び現金同等物の残高は、前期に比べ2億3,700万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの増減の要因をご説明します。
営業キャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益及び売上債権の回収促進などによりプラスとなりました。
投資キャッシュ・フローの支出は、工事用機械の購入と工場の生産性向上に向けた投資による支出となります。
財務キャッシュ・フローの支出は、配当金の支払いによる支出となります。
2025年3月期は、営業キャッシュ・フローで得た資金で設備投資への支払いと株主への配当を実施した流れとなりました。
貸借対照表(B/S)
貸借対照表についてご説明します。
2025年3月期の総資産の残高は、前年度末より6億2,400万円増加した439億6,900万円となりました。資産の部の流動資産では、建設資材が現場向けの在庫調達により増加となりました。有形固定資産では、工事用機械の購入と工場の整備能力・生産性向上のための設備投資により増加となりました。負債の部の流動負債の減少は、主に納税による未払法人税等が減少したことによります。固定負債の増加は、主に資産除去債務の増加によるものです。純資産の部の利益剰余金の増加は、親会社株主に帰属する当期純利益によるものです。この結果、現金及び預金は営業キャッシュ・フローの増加などにより2億3,700万円増加しました。
業績予想
業績予想の見通しをご説明します。
当社が属する建設業界は、従来からの技能労働者不足、建設従事者の高齢化、鋼材価格の高止まり、労務費の高騰、時間外労働の上限規制の適用による建設コストの上昇が懸念されます。また、それらの影響で懸念される工事の着工遅延、進捗遅れには引き続き注視する必要があり、採算面での厳しさが一層増すものと予想されます。一方で、都市部の再開発事業や民間設備投資プロジェクトに加え、国土強靭化対策やインフラの維持更新、老朽化対策など政府が進める公共投資の下支えが期待され、底堅い建設需要の推移が見込まれます。
このような環境が予測される中で、次期の業績予想は売上高では2.9パーセントの増収、営業利益1.3パーセント、経常利益1.1パーセントの増益を見込んでいます。親会社株主に帰属する当期純利益は8.1パーセントの減益の見通しとしていますが、これは2025年3月期に特別利益に計上した投資有価証券売却益8,900万円の反動によるものです。引き続き、採算性を重視した営業活動及び拡販活動に取り組んでいきます。
全社的な取り組み
次に全社的取り組みについてご説明します。
当社は、企業理念に掲げる「安全・安心を守る」ことを最重要課題と位置付けています。基本に立ち返り、「安全管理活動の強化と意識改革への取り組み」「不安全行動の撲滅」及び「心と身体の健康確保」の安全目標を掲げ、社員・協力会社のすべての関係者が一体となり、安全管理、リスク低減を実施し、労働災害撲滅、無事故・無災害を目指していきます。
また、大規模自然災害等で役職員の身体・生命の安全確保と、事業資産の損害を最小限にとどめ、事業の継続あるいは早期復旧を可能にしていくためのBCP(事業継続計画)を策定し、実施・運用していきます。
当社は、2024年にスタートした中期経営計画(2024-2026年度)に掲げた、重仮設資材の販売・賃貸及び技術・工事・加工を提供するコア事業の基盤強化と収益構造の変革と強靭化に取り組んでいきます。建設業界のニーズに応える重仮設資材の提供に重心を置きつつ、現場の潜在需要を見定めた新工種の提案、加工案件の受注拡大を図っていきます。
また、整備能力・生産性の向上を図るため工場設備への積極的な投資を進め、建設資材の保有量を適切に維持・管理し資産の効率性を高めていきます。加えて、技術力強化・業務プロセス改革のためのIT関連投資を進め、成長へ繋げていきます。
経営力を強化するためには、当社の成長・変革を担う人材の確保・育成が必要となります。人的資本への投資を増やし、社内研修制度をさらに充実させ、社員一人ひとりが能力を向上させ、成長に向かうことができる「魅力ある企業」を目指していきます。また、「経営幹部との対話ミーティング」を社内のあらゆる役職者や非管理職の小グループと実施する事を通じて、会社の方針を直接説明すると同時に社員の声を直接拾い上げ、「人を大切にして人を育て」の企業理念の実現に向けて多様な強い人材「個」が活躍できる企業を目指していきます。
定量的目標については最終年度の2027年3月期で売上高400億円、経常利益20億円を掲げました。1年目の2025年3月期では売上高は最終目標の89パーセントの進捗となり、経常利益では104パーセントの進捗となりました。引き続き、中期経営計画で掲げた「事業構造改革」「成長」「経営力」の3本柱を戦略的に展開し、経営基盤を強化し計画を進めていきます。
当社は、中期経営計画の達成に取り組みながら、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指していきます。業績面での売上や利益水準の向上とともに、財務の健全性を維持し資本コストや資本収益性を意識した最適な資本構成の実現に向けた取り組みを実施していきます。当社の資機材を管理する工場部門では、働き手の高齢化と将来の人手不足に対応し、同時に生産性を追求した設備投資を積極的に推進していきます。工事部門と加工部門では環境負荷軽減と工期短縮、現場の潜在需要を見定めた新工種及び加工案件のさらなる研究と機械への投資を継続し、必要に応じてM&A(企業合併・買収等)やアライアンス(業務提携等)を検討しながら収益力拡大を目指していきます。
SDGsへの取り組み
当社は、「建設業界のニーズに応えた資機材及び技術・工事・加工の提供を通じて社会資本の整備に貢献する」ことを企業理念として掲げています。鋼材の反復利用を行う重仮設リースは環境に優しい事業モデルであり、常に「リサイクル」・「リユース」を意識した事業展開に努めています。
「物流管理システムの効率化」として、運送部門では、効率的な物流管理システムを構築しています。配車状況、運転手情報を一元管理し、現場までのルートの最適化などで運送距離を短縮化し、運転手の労働負荷を減らすこととCO2排出量削減を実現していきます。当社やグループ会社を含めた運送会社が連携して物流の効率化に取り組み、より安全で快適な運送業務を目指すことで環境への影響を軽減していきます。
また、「資材の再利用」では、高強度材を用いた山留・構台・桟橋関連商品や仮桟橋商品は再利用が可能で、現場の多様なニーズに対応可能なリース商品として提供しています。
「基礎工事の工法の最適化」では、工期短縮、削孔時のセメント材不要、建設残土の削減など、環境への負荷の大幅な軽減を実現し現場の工期進捗に貢献しています。
当社は工場・工事部門で着用するユニフォームを20年ぶりにリニューアルしました。環境面に着目し、素材にはCO2排出削減に貢献する植物由来のストレッチ素材を採用しました。機能面でも現場ニーズを多数採用し、環境性、機能性、安全性を徹底追及した仕様・デザインとなっています。
今後も持続可能な社会の実現に向けた環境意識の向上を図り、技術力・開発力を強化し、新商品及び新工法を提供していくことで、さらなる社会資本の整備と充実に貢献していきます。
配当金の推移
配当についてご説明します。
2025年3月期は業績等を勘案しまして、当初予定から20円増配の1株当たり130円としました。今後も、競争力強化のための保有資材の充実、設備増強、新工法・新技術の導入、新規事業への投資等を実施し、持続可能な利益を創出しながら、株主のみなさまへの利益還元に努めていきます。
次期の配当の予想については、業績予想を売上高増収、営業利益、経常利益で増益を見込んでいますことから、当期と同額の1株当たり130円の維持とさせていただきます。
株主のみなさまにおかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
新商品・サービスの推進
トピックスについてご紹介します。
当社は、BIMを中核としたDX戦略の先駆けとして重仮設業に特化したBIMシステム「M-craft」の運用を開始しました。「M-craft」には、当社がこれまで積み上げてきた「技術」が凝縮されており、設計者を強力にアシストする多様な機能は、経験に依存することのない高精度のモデル作成を可能とします。「M-craft」は業務プロセスの一貫性と効率性に革新をもたらすだけでなく、お客さまへのサービス品質の向上に寄与すると確信しています。「M-craft」を1つの軸に、DXを積極展開し、建設業界の労働生産性向上に貢献していきます。
国内には橋梁が約73万橋あり、建設後50年を経過した橋梁の割合は、10年後(2032年度)には約59パーセント急増し、立地環境が厳しい箇所など、一部の構造物で老朽化による重大な損傷が顕在化するといわれています(注)。今後、橋梁設備の老朽化に伴う維持・更新が進むことが予想されます。
システム橋梁「ランドクロス」は当社システム橋梁の総称で、鈑桁・トラスなどのさまざまなバリエーションを保有しており、老朽化した橋梁の架け替え時のための迂回路・工事用桟橋・歩道橋などさまざまなニーズにお応えしています。なかでも、大型揚重機作業及び仮桟橋縦架設施工が可能で、河川や山岳地に適用できる「ストロングタイプ(鈑桁)」では、中間パネルを新規開発し、最長28.0メートルの支間長に対応可能となりました。今後も新商品・新技術の開発を強化し、社会資本の整備、災害復旧支援に貢献していきます。
注:
・国土交通省、老朽化対策の取り組み(老朽化の現状・老朽化対策の課題)より
工場機械化の推進
建設現場で使用された建設資材は、賃貸期間が終了したあと工場に戻ってきます。工場では再利用するために付着した泥土などの洗浄・整備を行います。現在、当社の生産拠点である工場では今後予想される人手不足と高齢化に考慮し、資材整備のオートメーション化を図っています。この度、名古屋工場に鋼矢板(シートパイル)に対応した自動水洗ケレンマシン(自動水洗洗浄機)を導入しました。この導入によりまして、従来比約20パーセントの生産量向上と省力化を図っていきます。他の地域の工場への水平展開も視野に入れ導入効果を検証中です。
覆工板においても、茨城工場に新たに建屋を設置し、洗浄や塗装、乾燥を自動的に行う整備ラインを導入する計画を進め、年内の稼働を予定しています。従来の整備能力のアップと品質向上の両立を実現していきます。
加工売上の拡大
当社は、加工売上を強化していくために、整備能力・生産性向上をアップさせ、さらに外注委託先を開拓し、建設現場のさまざまな加工ニーズに対応できる体制作りに取り組んでいます。鉄道関連や土木物件などあらゆる分野に特化した受注加工案件の拡大をさらに図っていきます。
新工種分野で工事売上が拡大
当社は連結グループ会社と連携してSMW工法やRG工法などを現場に提案し、受注工事に注力した結果、工事売上高は3期連続で100億円を確保しています。今後も受注工事に注力し、地域や現場の特性及び環境に配慮した工事収益の拡大戦略を実施します。SMW工法やRG工法に加え、ARハンマー工法・ジャイロプレス工法・TRD工法・鋼管杭施工等など地域、現場に最適な高付加価値工法の推進を通じて、工事売上高100億円を安定確保していきます。
以上を持ちまして、2025年3月期決算と当社の取り組み及びトピックスについてのご説明を終了します。今後も企業価値向上に向けて取り組んでいきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。