2025年3月期決算および中期経営計画「TOKYOink 2027」説明会

堀川聡氏:みなさま、こんにちは。東京インキ株式会社代表取締役社長の堀川です。本日はお忙しい中、当社の説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日お伝えしたいこと

前半は2025年3月期決算の概要について、後半では中期経営計画「TOKYOink 2027」の概要について、重要な点に絞ってご説明します。

会社概要 -主要事業-

2025年3月期決算説明に入る前に、簡単に当社の主要事業の製品群についてご説明します。

まず、インキ事業は、主にチラシやパンフレットなどの印刷に使用する、平版印刷とも呼ばれるオフセット印刷用インキ、米袋や食品包装などの印刷に使用する、凹版印刷のひとつであるグラビア印刷用インキ、さまざまな媒体に印刷が可能で建材用途などに使用される、デジタル印刷の一種であるインクジェット印刷用インクを展開しています。

会社概要 -主要事業-

化成品事業は、主な製品として、マスターバッチやコンパウンドと呼ばれるプラスチックに顔料や各種機能を付与するための添加剤を分散させたペレットを展開しています。

プラスチック製品を作る際の材料として使用されるもので、両者の主な違いは有効成分の濃度であり、マスターバッチのほうが高濃度になります。コンパウンドは何も混ぜずに成形されます。

一方、マスターバッチは他の材料と混ぜ合わされて成形されます。用途は多岐に分かれますが、主なものは自動車の内外装部品やプラスチックフィルム・容器などになります。本資料では、自社製品、受託製品および海外(タイ)という切り口でご説明します。

会社概要 -主要事業-

加工品事業は、さまざまなプラスチック製のフィルムや成形品を展開しています。インキ、化成品事業が主に材料として使われる製品を扱っているのに対し、加工品事業は部品として使われる製品を多く扱っているのが特徴になります。

製品の分類としては、主に工業用途、包装用途に使用されるプラスチックの一種であるポリエチレンを網状に成型したネトロン、主に食品包装用途、産業用途に使用されるポリエチレンを主とした縦一軸延伸フィルム、主に防災・減災用途に使用されるポリエチレンを立体形成したハニカム状の土壌安定枠であるジオセルを中心に展開する土木資材、 機能性農業資材であるエナジーキーパーに加え、農業用途製品全般を扱う農業資材があります。

以上のように当社はインキ、化成品、加工品の3事業を主要事業として展開しています。

※ネトロンは三井化学株式会社の登録商標です。

1. 2025年3月期 決算概況(1)エグゼクティブサマリ

2025年3月期の決算についてご説明します。

2025年3月期の売上高および営業利益は、各事業の製品販売価格改定が進捗し、前年比増収増益となりました。

経常利益は当社の米国連結子会社が出資している持株会社の出資先において、先行投資による一時的な業績悪化を受けたため、のれん相当額の回収可能性を評価しました。回収が見込めない部分をのれん相当額の減損損失として出資金運用損約8億円を計上した影響により、前年比減益となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の縮減に伴う売却益約8億3,000万円、前年度の第3四半期に発生した連結子会社の火災に伴う保険金約1億8,000万円を計上したことにより、前年比増益となりました。

1. 2025年3月期 決算概況(2)連結損益計算書

先ほどもご説明したとおり、各事業の製品販売価格改定が進捗した影響により、売上高総利益率が改善し、売上高営業利益率が前年と比べ1ポイント改善しました。

1. 2025年3月期 決算概況(3)売上高 前年比増減要因分析

売上高の前年比増減要因を詳しくご説明します。

前年から約28億円の増収のうち、約18億円が製品販売価格改定効果によるもので、特に化成品事業の自社製品が大きく貢献しました。

また、インキ事業の販売活動強化とグラビアインキの事業承継による製品販売数量が増加したことで、販売数量増加による増収は約8億円となっています。

1. 2025年3月期 決算概況(4)営業利益 前年比増減要因分析

営業利益の前年比増減要因を詳しくご説明します。

前年から約5億円の増益のうち、交易条件の改善による利益増加要因が大きく寄与しました。当社における交易条件とは、販売価格差異と、原材料価格差異のネット影響額を指します。

2025年3月期は製品販売価格改定により、原材料価格の上昇分を適切に販売価格へ転嫁する事ができました。その他、利益減少要因として、棚卸資産の適正化を進めており、棚卸資産減少の影響があります。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -サマリ-

セグメント別では、インキ事業と化成品事業は、前期に実施した製品販売価格改定の効果等により前期比で増収増益、加工品事業はネトロンが生産体制の再構築に伴う一時的な経費増加や受注減等により業績が悪化した影響が大きく、前期比で減収減益となりました。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -インキ事業-

インキ事業は売上高163億円で前期比プラス12.5パーセント、セグメント利益5億6,000万円で前期比プラス95.3パーセントとなりました。

製品販売価格改定効果や数量が増えた結果、オフセットインキ、グラビアインキ、インクジェットインクのいずれも増収となり、オフセットインキとインクジェットインクのセグメント利益率向上が利益面で寄与しました。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -インキ事業-

内訳として、オフセットインキは製品販売価格改定の進捗、オフセット輪転インキの数量増が寄与しました。グラビアインキは製品販売価格改定の進捗、下期から販売を開始した株式会社T&K TOKAからの事業承継製品の売上が寄与しました。T&K TOKAからの事業承継製品については、後ほど、当期のトピックスとして、その内容についてご説明します。

インクジェットインクは受注体制を整備し、受託元との関係強化に努めた結果による受注数量の増加が寄与しました。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -化成品事業-

化成品事業は売上高225億円で前期比プラス5.6パーセント、セグメント利益6.0億円で前期比プラス217.7パーセントとなりました。製品販売価格改定効果等により自社製品、受託製品ともに増収となりました。また、化成品事業の全体最適に向けた生産体制の再構築に着手しています。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -化成品事業-

内訳として、自社製品は自動車用途やフィルム・容器用途などの主要製品の販売を強化した結果、売上が増加しました。受託製品は低収益製品の価格是正と高収益製品獲得の取り組みを強化した結果、売上が増加しました。

但し、低収益製品の採算是正は不十分であるため、整理が必要だと考えています。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -加工品事業-

加工品事業は売上高78億円で前期比マイナス1.6パーセント、セグメント利益3億3,000万円で前期比マイナス35.1パーセントとなりました。土木資材は好調に推移したものの、ネトロンの業績が悪化した影響が大きく、減収減益になりました。

1. 2025年3月期 決算概況(5)セグメント別業績 -加工品事業-

内訳として、ネトロンは生産体制再構築による一時的な費用増加が利益面で影響しましたが、今後は生産性向上による収益性の改善が見込まれます。

ネトロンについて、事業紹介の時にも簡単にご説明しましたが、どのような製品であるかイメージしにくいと思いますので、少し詳しくご説明します。

右上に包装用途のネトロンの写真を掲載しています。みなさまも目にしたことがあるのではないかと思いますが、主にミカン用ネットやオクラ用ネット等に使用されています。また、写真はありませんが、水処理用資材やボンベカバーなどの工業用途にも使用されています。

土木資材は防災・減災用途で使用されるジオセル工法の販売活動を強化した結果、売上が増加しました。ジオセル工法についても事業紹介の時にも簡単にご説明しましたが、ネトロン同様に少し詳しくご説明します。

右下にジオセルを展開した写真を掲載しています。ジオセルとは高密度ポリエチレンを立体形成した、ハニカム状土壌安定枠の総称になります。当社はジオセルを中心部材とした防災・減災用途向けの各種工法を開発し、生産、設計、施工指導まで一貫対応するビジネスモデルを展開しています。

ジオセル工法は法面保護や軟弱な路盤補強などに使用されるのですが、従来のコンクリート工法と比べ、施工が簡単であり、施工期間も短く済み、さらに、壁面の緑化が可能であるため、サステナビリティの観点からも有用な工法となります。

1. 2025年3月期 決算概況(6)当期トピックス グラビアインキの事業承継について

当期トピックスとして、2023年より進めていた株式会社T&K TOKAからの同社グラビアインキ関連事業の承継が完了したことをご報告します。

当社はインキ事業において市場が安定しているグラビアインキのパッケージ用途への取り組みを強化する考えを持っていたところ、UVインキおよび機能性材料への集中を進めるため、グラビアインキ関連事業を非注力製品群と位置付け撤退を検討していたT&K TOKAと双方の意向が合致したことから、本事業承継を進めることにしました。本事業承継により、当社は医薬包装製品の分野に新規参入することになります。

また、新規参入にあたり、当社連結子会社である荒川塗料工業との生産面での連携による シナジー効果も期待できます。なお、2025年3月期より一部の製品販売を開始していますが、2026年3月期より本格的に業績に寄与する見込みとなっています。

インキ事業全体の成長につながる取り組みになりますので、今後も活動を強化していきます。

1. 2025年3月期 決算概況(7)連結貸借対照表

連結貸借対照表については資産効率を高めるための、債権流動化の取り組みや、自己株式の取得による自己株式の減少などにより、総資産は約16億円減少しました。

1. 2025年3月期 決算概況(8)連結キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローについては、製品販売価格改定による収益力の向上などによりフリー・キャッシュ・フローは継続的にプラスを維持しています。

ここからは、2025年3月期の株主還元についてご説明します。

2. 株主還元(1)株主還元方針・取り組み

当社は、株主価値を中長期的に高めるため、持続的に成長するために、「株主資本の活用の最大化」「強固な財務基盤の確保」「株主還元」の3つのバランスを取ることを資本政策の基本としており、2025年3月期の取り組みとして、自己株式の取得を実施しました。

また、2025年3月期業績に基づき増配を予定するなど、継続的な株主還元の向上に努めています。

2. 株主還元(2)配当金・配当性向

2025年3月期の年間配当額は前年から110円増配し、通期で190円を予定しており、配当性向は42.7パーセントとなります。

なお、2026年3月期の年間配当額は2025年3月期から20円増配し、配当性向は41パーセントを予定しています。

2. 株主還元(3)株主優待制度

また、株主優待としてオリジナル「QUOカード」の贈呈を実施しています。

3. 2026年3月期 業績予想(1)次期業績予想

2026年3月期業績予想についてご説明します。

当社グループは、2026年3月期から2028年3月期までの3ヶ年の中期経営計画「TOKYOink 2027」を策定しました。詳細については、後ほどご説明します。

初年度である2026年3月期の業績予想は売上高460億円、営業利益13億円、経常利益14億5,000万円、当期純利益13億円を見込んでいます。全社での売上高と営業利益はほぼ2025年3月期と同等の数値としています。根拠については、セグメント別にご説明します。

また、当社製品の多くは中間製品であり、最終用途は多岐にわたります。さまざまな生活用品に使用されていますので、当社の業績は日本国内の消費動向の影響を受ける傾向があります。そのため、世の中が年末にかけて需要が高まる第3四半期が当社にとっても売上が増加する時期であり、結果として、下期偏重型となっています。

3. 2026年3月期 業績予想(2)セグメント別戦略

2026年3月期のインキ事業は、オフセットインキにおける市場縮小の影響はあるものの、機能性インキ・コート剤と事業承継した医薬品包装用途を中心にグラビアインキの事業規模拡大に努めていきます。

3. 2026年3月期 業績予想(2)セグメント別戦略

2026年3月期の化成品事業は、撤退を含む低収益製品の整理を本格的に進めていきます。そのため、減収減益になる見込みですが、高収益製品との入れ替えを進めることで、事業の成長を図っていきます。

3. 2026年3月期 業績予想(2)セグメント別戦略

2026年3月期の加工品事業は、ネトロンの生産性向上と受注回復に努め、最も成長が期待できるジオセルを中心とした土木資材の販売活動を強化することで、増収増益を目指していきます。

1. 長期ビジョンとパーパス・理念(1) 長期ビジョン 「TOKYOink Vision 2030」

ここからは2025年度、2026年3月期から2028年3月期までの3ヶ年の中期経営計画「TOKYOink 2027」についてご説明します。

はじめに、「長期ビジョンとパーパス・理念」です。

当社は創立100周年を迎えた2023年12月に2030年に目指す姿としての長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」を策定しました。2031年3月期には売上高500億円、営業利益28億円、ROE8.0パーセント以上を経営目標に掲げています。

1. 長期ビジョンとパーパス・理念(2) パーパス(存在意義)

また、長期ビジョン策定にあたり、これからの社会に対して当社グループは何ができるのか、当社グループの存在意義は何であるかについて問い直しました。

当社グループは主要のインキ、化成品、加工品の3事業を通じて、印刷インキなど情報を「伝える」製品、プラスチック着色剤など身の回りを「彩る」製品、防災・減災用途に使用される土木資材など生活を「守る」製品を多く供給しています。

これからも、当社グループの製品の供給により、人々の暮らしを支え続けたいという想いを込めて、「『伝える』『彩る』『守る』ことで、豊かな未来を実現する」という、パーパスを設定しました。

2. 前中期経営計画「TOKYOink 2024」の振り返り(1) 全社経営指標

前中期経営計画「TOKYOink 2024」の振り返りです。

過去2回分の中期経営計画の営業利益およびROEの推移を示しています。直近は製品販売価格改定の進捗や高付加価値製品の伸長により、業績は回復基調にあります。

2. 前中期経営計画「TOKYOink 2024」の振り返り(2) 事業別業績ハイライト

前中期経営計画最終年度である2025年3月期のセグメント利益について、インキ事業は2023年3月期に実施したオフセットインキの減損損失計上および製品販売価格改定の進捗やインクジェットインクの需要回復などもあり、計画達成となりました。

化成品事業は想定以上の着色需要の減少や、受託製品の収益性が悪化したことから計画未達となりましたが、製品販売価格改定が進捗したことで直近の業績は回復基調となっています。

加工品事業はネトロンの業績悪化影響が大きく計画未達となりましたが、土木資材は好調に推移しました。

3. 経営環境と市場動向(1) 経営環境

経営環境と市場動向です。

当社グループではサステナビリティを重要な経営課題と捉えています。そのため長期ビジョン「TOKYOink Vision 2030」策定の際、サステナビリティの観点から、経営環境の変化による重要なリスクと機会を抽出しました。

3. 経営環境と市場動向(2) 事業別市場動向

想定される事業別の市場動向はこちらに記載のとおりとなります。後ほど、ご覧いただきますようお願いします。

4. 「TOKYOink 2027」 基本方針と経営目標(1) 基本方針・全社経営目標

「TOKYOink 2027」基本方針と経営目標」です。

当社グループは2031年3月期の長期ビジョン達成に向けて、期間中に3期の中期経営計画を策定し、具体的な施策を推進することにしています。

「TOKYOink 2027」は2期目の計画であり、さまざまな変革を実践する期間と位置付けており、最終年度である2028年3月期は売上高480億円、営業利益20億円、ROE5. 5パーセントを経営目標に掲げています。収益計画と資本政策・財務戦略を両輪で進め、目標達成を目指す方針としています。

具体的な内容については次ページ以降でご説明します。

4. 「TOKYOink 2027」 基本方針と経営目標(2) 事業別経営目標

経営目標達成に向け、各事業において、汎用製品から高付加価値製品へのシフトと高効率化に取り組みます。特にインキ事業と加工品事業において、製品ポートフォリオ変革により利益率を向上させることが、目標達成に向けてポイントになると考えています。

5. 事業ポートフォリオと成長戦略(1) 事業ポートフォリオの見直し

事業ポートフォリオと成長戦略です。

下段の表は3期分の中期経営計画期間での主な取り組みを記載しています。本中期経営計画「TOKYOink 2027」における主な取り組みは中央の表に記載しています。本中期経営計画期間において、既存事業では、高付加価値製品、サステナブル対応製品を増やしつつ、周辺領域を探索し、事業領域拡大を目指します。

また、生産体制の再構築を進め、効率を高めることで収益性の向上を図り、営業利益を拡大させます。さらに、次期中期経営計画期間中の新規事業立ち上げに向けた探索を行っていきます。

5. 事業ポートフォリオと成長戦略(1) 事業ポートフォリオの見直し

先ほど、本中期経営計画最終年度の2028年3月期では、特にインキ事業と加工品事業のセグメント利益率の向上を目指すと申し上げました。

但し、2031年3月期のインキ事業は、オフセットインキの市場縮小に伴う収益の低下をグラビアインキ、インクジェットインクの伸びでカバーするのは難しいと考えており、売上・利益ともに減少すると想定しています。

一方で、2031年3月期の加工品事業は、土木資材を中心とした継続的な成長により、売上・利益ともに増加を目指します。さらに、2031年3月期の目標を達成するためには、新規事業立ち上げが必要になりますので、本中期経営計画期間においては、既存事業の周辺領域を中心に探索を進めていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(1) インキ事業

事業別戦略と製品別計画です。

インキ事業において、オフセットインキは売上規模の維持に努め、グラビアインキとインクジェットインクの売上の拡大を目指します。収益性の高いグラビアインキ、インクジェットインクの構成を増やすことで、利益の拡大を図っていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(1) インキ事業 ① オフセットインキ

オフセットインキの中で、オフセット輪転インキは主にチラシなどの商業印刷に使用されます。当社は生産、設計、販売面において長年、オフセット輪転インキに関するノウハウを蓄積しており、他のインキと比べ、高いシェアを獲得しています。

また、オフセットインキの市場は縮小傾向ですが、近年、縮小幅は縮まってきており、今後も一定の印刷需要は残ると考えています。そのため、当社の強みを発揮できるオフセット輪転インキに資源を集中することで対応力を強化し、シェア拡大による収益の獲得を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(1) インキ事業 ② グラビアインキ

グラビアインキは需要が高まっている機能性インキ・コート剤と新たに獲得した医薬包装製品を中心に事業規模の拡大を目指します。

機能性インキ・コート剤は顧客ニーズに対応するために技術的な提案などの対応力を求められます。そこに、新たな医薬包装製品の対応も加わりますので、より一層、開発体制を強化していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(1) インキ事業 ③ インクジェットインク

インクジェットインクは受託製品に必要な対応力向上と差別化された自社製品の開発により利益拡大を目指します。

また、将来的な成長を見据え、モビリティ領域を中心とした塗装代替としての提案や、熱の発生が少ないなど、環境負荷低減に寄与するEB硬化インクシステムの開発を行っていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(2) 化成品事業

化成品事業は自社製品の販売強化とASEAN地域での販売促進および受託製品における製品構成の見直しにより収益力改善を目指します。

また、一時的な経費増加になりますが、将来を見据え、本中期経営計画期間中に化成品事業全体の最適化に向けた生産体制の再構築を進めていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(2) 化成品事業 ① 自社製品

当社の主要製品であるマスターバッチは、プラスチックの成型加工時に添加することで、さまざまな機能を付与することができます。色を着ける用途だけではなく、成形加工時の効率向上や、フィルムなどの成形物への酸化防止機能付与などがあります。

一例になりますが、食品包装フィルムに酸化防止機能を付与することで、内容物の消費期限延長に寄与するなど、サステナビリティ対応ニーズに貢献できる製品となっています。

他にも当社は多くの機能性包材用途マスターバッチをラインナップしていますので、それらを中心とした高付加価値製品の販売を強化することで、収益の拡大を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(2) 化成品事業 ② 受託製品

受託製品は、顧客ニーズの実現に向けた技術提案の強化により高付加価値案件を獲得することで、収益性の向上を図ります。一方で、低収益製品の整理に向けた取り組みを粘り強く進めていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(2) 化成品事業 ③ 海外(タイ)

当社の化成品事業は、主要製品として機能性包材用途製品と高いシェアを獲得している自動車用途を含むモビリティ用途製品があります。

タイを中心としたASEAN地域では当社と関わりのある日本企業も進出しており、当社の主要製品の需要が期待できると考え、当社としては初の海外生産拠点を10年ほど前に設置しました。

軌道に乗るまでに時間を要しましたが、モビリティ用途、機能性包材用途を中心に着実に成長を遂げていますので、今後も販売活動を強化し、収益の拡大を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(3) 加工品事業

加工品事業は、利益率の高い土木資材を中心にネトロンの業績回復を含む、各製品セグメントの成長・改善により収益拡大を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(3) 加工品事業 ① ネトロン

ネトロンは、生産体制再構築等による一時的な収益性悪化からの回復を急ぎつつ、需要が高まっている水処理用資材の販売を強化することで収益拡大を目指します。また、新規用途探索に向けたマーケティング強化も進めていきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(3) 加工品事業 ② 一軸延伸フィルム

一軸延伸フィルムは、食品包装や産業用途において、特長を活かせる市場開拓やリサイクル性向上に寄与する提案強化等により収益の確保を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(3) 加工品事業 ③ 土木資材

土木資材は、政府が進める国土強靭化計画を背景に需要が高まっていますので、ジオセルに関する新規工法の開発や既存工法のブラッシュアップに取り組み、事業規模拡大を目指していきます。

6. 事業別戦略と製品別計画(3) 加工品事業 ④ 農業資材

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農業資材は、高い断熱性を有し、農業ハウスの冷暖房の燃料使用量削減に貢献する機能性農業資材エナジーシリーズを展開することで農業の省資源化の実現を目指していきます。

7. 経営資源の最適配分戦略(1) 基本方針・キャッシュアロケーション

経営資源の最適配分戦略です。2025年3月期から2028年3月期までにかけてのキャッシュアロケーションの基本方針についてご説明します。

キャッシュインの主な原資は、営業キャッシュフロー、BS(バランスシート)マネジメントに加え、必要に応じて有利子負債の活用も検討します。BSマネジメントとは簡単に申し上げますと、保有する資産を一層効率的に活用し、キャッシュを創出することですが、取組みについてはのちほどご説明します。

この期間の総キャッシュインは200億円を見込んでおり、投資170億円、株主還元30億円という配分を計画しています。当社はこの期間を「変革期」と位置づけ、株主還元を強化しつつ、成長に向けた投資を重視する方針です。

投資は「成長・サステナビリティ関連」、「研究開発(R&D)」、「戦略投資(M&A)」の3領域を中心に、持続的な企業価値向上を目指す内容に重点を置いています。これら140億円の投資配分の金額は明記していますが、環境変化や投資機会に応じて柔軟に対応していきます。

ここからは、「資本政策・財務戦略」になります。

8. 資本政策・財務戦略(1) 資本政策・財務戦略 サマリー

資本政策・財務戦略についてご説明します。

当社の資本政策・財務戦略として、1つ目が株主資本の活用最大化です。こちらが先ほど申し上げましたBSマネジメントになります。次に、2つ目として強固な財務基盤の確保、最後に株主還元の充実を掲げています。

資産効率を高めるため、政策保有株式の縮減や債権流動化、老朽化・未活用・余剰資産の売却を推進し、キャッシュを創出すると共に、調達余力を確保し、成長投資に備えた資金戦略を強化していきます。

また詳細は次ページでご説明しますが、配当や自己株式取得による株主還元を行い、株式流動性を高めるための株式分割も検討し、株主還元と成長の両立を図ります。

8. 資本政策・財務戦略(2) 資本政策・財務戦略 ~株主還元~

当社は、安定的かつ継続的な配当を基本としつつ、配当性向40パーセント以上またはDOE1.0パーセント以上を配当方針としています。DOEについては、万が一業績が悪化した場合でも確実に配当を実施するために設定しています。

2025年3月期、2026年3月期と連続増配を予定しており、今後も業績目標の達成に応じた配当還元により、株主価値の向上を目指していきます。

また自己株式の取得も行い、キャッシュアロケーションの説明でも申し上げたとおり、2025年3月期から2028年3月期までに総額30億円の株主還元を計画しています。

8. 資本政策・財務戦略(3) ROE改善方針と施策

ROEをデュポン分解した指標から、ROE改善のために当社が取り組むべき事項を説明します。

まず、最重要である売上高当期純利益率ですが、こちらは事業別戦略等で申し上げたとおり、収益計画の確実な遂行により、改善を図ります。

次に財務レバレッジですが、先ほど説明しました株主還元の強化により、最適資本構成の見直しを図ります。総資産回転率も先ほどご説明しましたBSマネジメントの各種施策を着実に遂行することで、資産効率を高め、回転率の向上を目指していきます。

9. サステナビリティへの取り組み(1) サステナブル対応製品

サステナビリティへの取り組みについてご説明します。

幅広い分野に世の中になくてはならない製品を供給している当社グループだからこそ、環境課題低減、社会課題解決の取り組みは責務だと考えています。

責務を果たすためにも、環境負荷低減、社会課題解決に寄与し、付加価値の高いサステナブル対応製品を伸ばすことで、持続可能な社会の実現に貢献しつつ、収益の拡大を目指します。

2031年3月期までにサステナブル対応製品の売上高比率を50パーセントまで高める目標に対し、インキ事業と化成品事業は汎用製品からの置き換え、事業の特性上、サステナブル対応製品の比率がもともと高い加工品事業は事業規模拡大により、目標達成を目指していきます。

9. サステナビリティへの取り組み(2) ESGへの取り組み

次に、ESGに関する取り組みについてご説明します。

環境の「E」に対して、当社グループは気候変動への対応は企業として重要な社会的責任と捉えています。2031年3月期までに2014年3月期比で温室効果ガスの排出量を50パーセント削減することを目標に各種施策を進めていきます。

9. サステナビリティへの取り組み(2) ESGへの取り組み

社会の「S」に対して、長期ビジョンの実現、中期経営計画の目標達成には人的資本への取り組みが重要であると考えています。

パーパスの浸透と多様性の確保などにより人的資本を高め、活気ある職場作りに向け、従業員の健康への取り組みを進めていきます。

9. サステナビリティへの取り組み(2) ESGへの取り組み

社会の「S」に対する続きになりますが、企業にとって、安全はすべてにおいて優先されるべきと考えています。従業員を守るための安全・安心な職場の実現を目指します。

また、企業も社会の一員であるため、社会に貢献すべきだと考えています。社会貢献活動を通じて、地域社会と良好な関係を構築し、同時に従業員育成も図ります。

ガバナンスの「G」に対して、健全な企業運営を行う上でガバナンス体制の強化は必須と考えています。必要な取り組みを確実に進め、企業価値向上、競争力強化に努めていきます。

続きまして、「DX・知財戦略」になります。

10. DX・知財戦略(1) DX・知財戦略

DX・知財戦略についてご説明します。

まず、DXに関して、業務の最適化と新たな価値創造に向け、IT戦略を策定したうえで、ITツールやシステムの全体最適化やIT・DX人材の育成を進めます。

次に、知財戦略に関して、競争優位の確立、利益率向上、企業価値向上に向け、知的財産投資戦略の検討を段階的に進めていきます。

11. モニタリング体制とKPIマネジメント(1) モニタリング体制とKPIマネジメント

モニタリング体制とKPIマネジメントについてご説明します。

ROE向上に向け、収益性と効率性の観点から必要な施策を進めます。なお、戦略・施策の進捗については、PDCA管理、KPIマネジメントを実施し、経営層が管理・監督していきます。

12. 計画達成に向けて(1) 経営目標の達成に向けて

最後に「計画達成に向けて」についてご説明します。

ここまでのご説明に対し、ROE8.0パーセントの目標達成時期が2031年3月期では遅いと感じられる方もいらっしゃると思います。

当社としても目標の早期達成を目指していく所存ですが、そのためには、低収益製品の整理、高付加価値製品へのシフト、収益力の高い新規事業の創出が重要な課題であると認識しています。

課題解決のためには、供給責任対応、製品コスト上昇への対応、先行投資の実施等、時間を要する取り組みが必要になりますが、迅速かつ確実に進めることで、目標の早期達成を目指します。

事業戦略と資本政策を両輪で進め、計画を達成し、企業価値向上に努めていきますので、これからの当社グループにご注目、ご期待いただきますよう、よろしくお願いします。

私からの説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。