目次

杉岡伸也氏(以下、杉岡):南海化学株式会社代表取締役社長執行役員の杉岡です。本日は、個人投資家向けWeb説明会に多数ご参加いただき、誠にありがとうございます。

本日の内容はスライドの3点です。

南海化学とは?

会社概要です。当社は「化学品事業を通じて、地球環境と豊かな社会の創生に貢献する」という企業理念のもと、電解製品、硫酸といった基礎化学品や、それらを合成し付加価値を上げたさまざまな化学品を製造販売している化学メーカーです。

幅広い産業や社会公共インフラを支えていると自負しています。それらの強みを活かし、新たに環境リサイクル事業を将来の収益の柱とすることを目指しています。

化学品あるいは電解といったもの自体、また、それらが社会に対してどのような価値を提供しているのか、非常にわかりにくいと思いますので、次のスライドで簡単にご説明します。

南海化学の社会・環境への価値提供

電解とは、「電気分解」の略です。学校の理科の実験で、水を電気分解して酸素や水素を取り出し、燃やした経験がおありの方がいらっしゃるかもしれませんが、原理はまったく同様です。

当社は水に塩を加えたものを電気分解し、発生するNaOH、化学名では水酸化ナトリウム、一般名では苛性ソーダと、Cl2(塩素)、H2(水素)を取り出し、そのもの、あるいはそれらを合成することで、金属の表面処理剤、上下水道・プール用の水処理殺菌剤、あるいは農薬といったものに形を変え、さまざまな産業や社会公共インフラに供給しています。

もう1つの基盤となる硫酸は、当社の場合、他社とは異なり、使い終わった後の廃硫酸を原料として作るというユニークな製法を採っています。言い換えれば、廃硫酸をリサイクルしています。硫酸も基礎原料として、そのもの、あるいは合成により形を変え、同様に多くの産業や社会公共インフラに供給しています。

電解では無限の資源である海水から採れた塩と水が原料であるがゆえに、そもそもの環境負荷が低いです。また、硫酸では、廃硫酸をリサイクルすることで環境負荷低減の価値提供を行っています。

事業内容

スライドでは、当社の事業内容を、セグメント別に円グラフで示しています。当社はセグメントを大きく2つに分けています。1つは化学品事業で売上の8割強、もう1つは各種塩事業で売上の2割弱となっています。

化学品事業は4つのサブセグメントに分けており、一番大きいのは基礎化学品です。スライドの一番右側に記載した例の中で、苛性ソーダは、わかりやすい例で言えば石鹸の原料にもなっています。水処理殺菌剤であるさらし粉はプールの消毒剤、次亜塩素酸ソーダは台所用の殺菌・消毒剤としても使われています。

機能化学品にある酢酸ナトリウムは、簡単に言えばお酢に近いもので、例えばコンビニエンスストアで売っているお弁当の日持ち向上剤といったものにも使われており、食品ロスの削減にも貢献しています。その他、農薬の製造販売も行っています。

もう1つのセグメントである各種塩事業は、電解の原料になるのみならず、塩そのものを加工し、梅干し用の塩を始めとする食品用や、融雪剤あるいは凍結防止剤、土壌改良、イオン交換樹脂再生、ボイラー、飼料、あるいは革製品など、幅広い分野で使われています。

また、他社の工場から出る廃硫酸を引き取り、硫酸を製造する環境リサイクル事業も行っています。世界的な環境意識の高まりから今後の需要の伸びが期待され、当社の成長ドライバーとして位置づけています。

国内外のネットワーク

国内外のネットワークについてご説明します。スライドの地図は、当社グループの拠点を示しています。日本においては本社が大阪府に、支店が東京都、京都府にあります。製造拠点は和歌山県に2工場、高知県に1工場、また中国にも2つの製造販売拠点を持っています。

それぞれ異なる特徴を持ち、それを融合させシナジーを最大化することを目指しています。また、中国の競争力を活用することも当社の強みの1つとなっています。

それ以外に、塩事業を営むエヌエムソルトが和歌山県にあります。こちらは三井物産との合弁会社です。

変革する100年企業

当社の歩みと今後の方向性についてご説明します。当社は1906年の創業以来、120年近い歴史があります。その間、戦争や天災、多くの経済危機といった苦難を乗り越え、変革を遂げながら生き抜いてきました。

直近では、2023年4月に東京証券取引所のスタンダード市場に上場しました。さらなる成長に向け、既存商品の付加価値化、また世界的な環境意識の高まりを捉え、環境リサイクル事業の強化に取り組んでいきます。

業績推移

2019年からの業績推移についてご説明します。売上高は、スライド左側のグラフに示したとおりです。2019年から3年間は不採算事業からの撤退により一時的に売上が落ちましたが、マーケットイン、つまりお客さまのニーズに合う事業への変革を遂げることによって、2022年からはコロナ禍などの厳しい経済下でも着実に増収を維持しています。

スライド右側のグラフでは、経常利益額と経常利益率を示しています。不採算事業の撤退に伴い、2019年3月期には1パーセントだった経常利益率は着実に改善しています。

戦略の差別化

当社の戦略についてご説明します。当社の事業は、他社と異なる戦略を強みとして100年以上を生き抜いてきました。

スライドの図はその一例を示したものです。当社の主力製品の苛性ソーダ市場について、縦軸にお客さまとの距離、横軸に製品のロットサイズを取っています。当社はお客さまのニーズに基づき、近距離を中心に販売しており、図の右上に位置しています。

対角線上に位置するのは、例えばAGC、東ソーといった、いわゆる100万トン規模の大手電解メーカーで、その規模から全国展開を図っています。一方で、当社は地場立脚に徹する異なる販売戦略を取っています。

苛性ソーダを含めた電解製品は、その物性から、苛性ソーダに関しては半分以上、水を加えて輸送しており、商品の販売価格における物流費の割合が非常に大きく、地場立脚に徹する戦略で大手との競争を可能としています。

和歌山工場、青岸工場~顧客と隣接した地場立脚の強み

スライドの和歌山市の地図を見ると、右下に当社マザー工場の和歌山工場があります。その周辺には、みなさまもご存じのような大手を含めた、たくさんのお客さまがいらっしゃいます。

例えば、和歌山工場から少々左側に花王があり、こちらは花王の中でも最大規模の主力工場で、当社の重要なお客さまになっています。左上には日本製鉄、ガス業界最大手のエア・ウォーターもあり、やはり当社のお客さまとなっています。

左の中央付近にある青岸工場は、和歌山市の2つ目の工場です。この場所は住宅がなく、海に囲まれ、工場立地としては非常に適しています。新たな事業展開をしやすい環境にあり、このような地の利も当社のこれまでの発展に寄与してきました。

土佐工場(クロルピクリン/高度さらし粉)においては全国展開

2つ目の差別化戦略についてご説明します。数は多くないものの、必要不可欠な、いわゆるニッチな商品で存在感を示しているのも、当社の強みの1つです。

その中でも、比較的シェアの高いものをご紹介します。

1つは、クロルピクリンです。簡単に言うと、土壌を殺菌し、農作物の病気を抑える農薬です。これを日本で作っているのは当社ともう1社の2社のみです。農作物の安定生産においては不可欠なもので、食糧の安全保障を守る役割も担っています。

もう1つは、高度さらし粉です。プールに使う水処理殺菌剤ですが、これについては数年前まで日本で3社が製造していましたが、その後に最大手が止め、現在は2社のみです。その中でも医薬グレードを作っているのは当社のみです。

国内のシェアは約40パーセントで、国内のみならず海外のあらゆるところに輸出もしています。新型コロナウイルスで殺菌あるいは消毒の重要性を我々はあらためて痛感したわけですが、当社は本商品の製造販売を通じ、人々の健康、安心、安全にも寄与しています。

電解 × 硫酸の強み事例:水硫化ソーダ

当社の特徴であり強みでもある「電解×硫酸」についても、1つの事例を用いて紹介します。電解メーカーの中でも、同時に硫酸の製造を行う会社は非常に限られています。

この特徴を活かした製品の1つが、水硫化ソーダです。当社の硫酸、電解製品である苛性ソーダと水素を合成したものです。水硫化ソーダは、PPS樹脂やプラスチックレンズの原料にも使われています。

PPS樹脂は、東レ、DIC、クレハといった大手化学メーカーで製造されています。PPS樹脂は電気自動車にも使われており、軽量化による燃費の向上を目指し、重い金属から軽量かつ強度が高いPPS樹脂に置き換えられ、市場は電気自動車の成長とともに毎年50パーセント以上伸びています。

軽量化を通じ、燃費を向上させ、環境負荷を下げることにも貢献しています。

今後の成長ドライバー:環境リサイクル事業領域~事例紹介

会社紹介の最後に、当社の成長戦略についてご説明します。当社の成長ドライバーは環境リサイクル事業です。その中核をなす廃硫酸事業と脱塩事業についてご説明します。

スライド左側の廃硫酸事業についてです。当社は硫酸製造企業ですが、産業廃棄物として排出される廃硫酸を原料としたユニークな製法を、リサイクルの概念が乏しかった1950年代から先駆的に採用し、当社環境リサイクル事業の礎になっています。

硫酸はさまざまな産業で利用される、汎用的な酸のため、工場から排出される廃硫酸は日本中のいたるところで発生しています。半導体でも洗浄、エッチング、表面処理など、大量に使われています。

しかし、廃硫酸のリサイクルができる企業は当社を含めて2社と限られ、廃硫酸排出量170万トンのうち、リサイクルされている数量はわずか7万トン程度です。

今後、TSMCやRapidusにより半導体の国産化が進むこと、また環境意識の高まりからも、そのニーズは確実に増えてくるものと思われ、SDGsの観点でも我々の存在価値は高まってくると考えています。

スライド右側の脱塩事業についてです。当社製品である塩素の取り扱いや加工を通じて培われた技術力を活かし、セメントメーカーでの資源リサイクルにおいてボトルネックとなる塩素成分を当社が除去することにより、セメント原料に再利用することが可能となります。それにより、資源リサイクルの向上にも貢献しています。

こちらの高塩素原料水洗事業は、2023年10月から土佐工場にて開始しました。同じ技術を用いて、地方公共団体が運営するゴミ処理炉から発生する焼却灰の塩素除去も可能であり、今後この分野の事業拡大も目指していきたいと考えています。

2025/3~2027/3期 中期計画

2025年3月期から2027年3月期の3年間の中期経営計画についてご説明します。私は2024年6月26日に新社長に就任し、当社の歩みと今後の方向性を踏まえ、2025年3月期から3年間の中期経営計画を策定しました。

本中期計画のスローガンを「サステナブルな明日を創る」とし、今後の成長に向けた環境リサイクル事業強化への思いを込めました。

重点施策として、「収益基盤の強化」「環境リサイクル事業領域拡大」「サステナブル経営の推進」の3つを掲げています。

重点施策①:収益基盤の強化~強い事業を更に強く

重点施策の1点目は、「収益基盤の強化~強い事業を更に強く」です。当社は創業以来、長きにわたり、基盤事業で収益を安定的に支えてきました。基礎化学品は日本の経済成長、すなわち産業の隆盛にしたがって、事業が拡大する分野です。

そのため、「失われた30年」に対応してきた当社のニッチ戦略をさらに強化し、現在日本が直面している地政学リスクや少子化、人口減少に起因する日本経済の停滞など、事業環境の変化に対応していきます。

具体的な施策の1つ目として、新たな顧客獲得に向けた既存製品群の高品位化、差別化を図るための研究開発を推進します。また、利益率が低い製品の見直しを通じた、人員など経営資源のリソースシフトを積極的に行います。

2つ目に、苛性ソーダなどの化学品の小分け機能、製品濃度のカスタマイズ対応といった、顧客へのサービス向上により、当社の強みの1つである地場立脚をさらに強化します。

3つ目に、顧客とのパートナーシップを深め、当社と顧客、双方の適正価格で取引を進めることで、製品の安定供給体制を構築していきます。

4つ目に、当社の強みであるニッチ製品の1つ、高度さらし粉の輸出拡大に向けた、一部設備の増強も行っていきます。

機能化学品については、他企業との連携パートナー戦略を積極的に進め、価格の適正化や製造コストの低減、販売数量の拡大を目指していきます。

アグリについては、日本の少子化や人口減少が顕著に反映される事業でもあるため、海外市場の展開も検討し、安定製造を維持していきます。

各種塩事業は現在、道路などに積もった雪を溶かす、融雪塩の需要が多くなっています。今シーズンはよく雪が降っていますが、今後は地球温暖化の進行によって積雪量が減少し、融雪塩需要自体が減少することも予想されます。

こちらに対応するため、食品加工や飼料などの新規用途開発に向けた品質管理、研究開発の強化を進めていきます。

重点施策②:環境リサイクル事業領域拡大~成長への布石造り

重点施策の2点目は、「環境リサイクル事業領域の拡大~成長への布石造り」です。当社の今後の成長ドライバーは、環境リサイクル事業だと考えています。

その中心である廃硫酸事業は、TSMCやRapidusに代表される半導体の国産化が進んでおり、洗浄やエッチング、表面処理などに使われる硫酸需要が増えています。それに伴い、今後は廃硫酸の処理に関する需要も増えてくると期待しています。

2つ目に、SDGs意識の高まりとともに、廃棄物の再資源化の促進、カーボンニュートラルに向けた環境負荷低減・リサイクル需要も増加が見込まれており、当社の環境リサイクル事業の成長は、社会から必要とされていると実感しています。この機を捉え、廃硫酸事業および脱塩事業の拡大に取り組んでいきます。

3つ目に、廃硫黄回収・全固体電池リサイクルといった、新規事業の創出に向けたマーケティング・研究開発にも注力していきます。当社が長きにわたり、化学品事業で製造してきたナトリウム・硫黄・硫酸については、その対応や処理における技術的知見を数多く有しています。

これらの化学製品が利用される全固体電池も、将来的な有望ターゲットだと考えており、中長期の事業成長に向けた布石も着実に打っていきます。

重点施策③:サステナブル経営の推進~経済価値・社会価値・環境価値の同時実現

重点施策の3点目は、「サステナブル経営の推進~経済価値・社会価値・環境価値の同時実現」です。

当社は1959年から硫酸リサイクルによる硫酸製造を開始しており、リサイクル事業・サステナブル経営の先駆者として取り組んできました。また、環境リサイクル事業を強化することで、環境・社会へより一層貢献していきます。

従業員に対しては、健康管理の推進や女性社員の活躍促進に加え、人材育成、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)施策を推進し、人的資本投資を拡充していきます。

天災が多い我が国においては、BCPも念頭に置いた安全かつ持続的な製販体制の強化に取り組んでいきます。

中期目標

これら3つの重点施策に取り組んだ結果として、2026年度の連結ベースでの目標値は、売上高240億円としています。経常利益率は、一時的な収益である補助金収入を除いて8パーセント、ROEは10パーセント以上に設定しました。

スライドには、2022年度からの推移を示しています。利益率は2023年度以降、コスト増などによりいったん下がるものの、着実な売上成長・利益成長を目指していきます。

投資・株主還元

本中期計画における、投資・株主還元についてご説明します。設備投資は維持・更新をベースとし、収益力の改善に取り組みます。持続的な製造体制強化に向けた、製造基盤強化のための設備投資、および新規事業創出に向けた成長投資もしっかりと行っていきます。

設備投資の規模感としては、本中期計画の3年間では、毎年30億円から40億円、合計100億円を想定しています。投資の原資については、営業キャッシュフローがベースになりますが、2023年の株式上場により自己資本比率が向上し、財務体質も改善していますので、金融機関からの借入余力も十分であり、問題なく対応できると考えています。

株主還元については、一昨年の東証スタンダード市場への新規上場時に自己株式の売出しを行っていますので、まずは配当を基本とし、安定的・継続的な増配を目指していきます。

2025/3期 中間決算概要(対計画)

2025年3月期の中間決算概要について、簡単にご説明します。2025年3月期の中間連結決算業績は、スライドに記載のとおりです。実績値は、売上高87億8,800万円、営業利益5億1,600万円、経常利益6億2,300万円、親会社株主帰属(中間)純利益4億4,700万円となりました。

対計画では売上高は、電解製品や農薬需要の落ち込み等により、計画を若干下回っています。一方、利益は化学品事業、特に基礎化学品が牽引し、営業利益は計画比プラス約26パーセントと、計画を大きく上回っています。

なお、年間業績予想は、2024年5月14日に公表した数値から変更はありません。

2025/3期 中間決算概要(対前年)

一方で、対前年では減収・減益となっています。特に利益は、計画に織り込んでいたものの、従業員の賃上げ、2024年問題による物流費の増加、エネルギー・原材料価格の高騰など、コストが上昇したことに加え、電解製品・農薬の需要減や、天候不順による和歌山県での梅の不作が大きく影響し、塩需要が減少したことなどから、減益となりました。

株主還元(2024年5月14日の期初公表から変更なし)

株主還元についてです。当社は従来、期末15円の固定配当を継続していましたが、2024年3月期より中間配当を実施することとしました。

2024年3月期は中間配当15円、期末配当35円と、年間50円に増配しました。2025年3月期は、中間配当を5円増配し、2024年5月14日に公表のとおり、年間55円を予定しています。今後も安定配当をベースとしつつ、増配および配当性向の向上を目指していきます。

なお、株主還元はより拡充していく意向です。中長期的な成長を目指した投資を行い、株主のみなさまに、事業から創出したキャッシュを継続的に還元できるよう、地に足のついた経営を目指していきます。

以上で、私からのご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:物価高騰の影響について

司会者:「物価高騰の影響について教えてください」というご質問です。

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