会社概要

楠元健一郎氏(以下、楠元):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の楠元です。今日は師走のお忙しい中、ご視聴いただき誠にありがとうございます。

初めてご参加いただく個人株主の方々も多いとうかがっていますので、まず簡単に私どもの会社の概要をご説明します。

設立は1948年とかなり古い会社です。もともとは、暁印刷という印刷会社でした。その後、印刷業界は構造的に非常に厳しい時代があり、私どものもともとのオーナーといいますか、すかいらーくを創業された横川4兄弟のみなさまが暁印刷の資本支援に入ったところからご縁が始まっています。そのため、ヴィア・ホールディングスが外食業を始めたのは2001年で、まだ四半世紀経つか経たないかという歴史です。

もちろん、資本を支援したということですが、印刷業は得意な分野ではありません。まず印刷業の構造改革をする時に、テコとなるような収益源の1つとして、得意な外食業を副業として始めたところから、ヴィア・グループがスタートしています。

現在は外食業専業になっていますが、2013年ごろ、暁印刷の事業を別の印刷専門会社にお引き受けいただき、2013年から当社はヴィア・ホールディングスとして、外食業専業の業態に変わりました。したがって、外食業専業としては11年のまだ若い会社です。

スライド右上のとおり、店舗数は直営・FC含め300店舗強あります。グループ会社としては、扇屋、フードリーム、紅とん、一源、一丁の5つがあり、看板の数では約26業態ほどありますが、主にこの5事業態の中で事業を行っています。

店舗展開

エリアについては、北海道から九州まで全国幅広く、36都道府県に展開しています。

ブランド紹介(扇屋/パステル)

先ほど二十数業態あると申し上げましたが、中心となっている代表的な業態を4つほどご紹介します。

まずは、一番直営店舗が多く、160店舗弱ある「やきとりの扇屋」です。50店舗を超えるチェーン店の中で、おそらく備長炭を使って焼いているお店はそうは多くないのではないかと思いますが、焼き師認定制度を設け、備長炭で本格的な炭火焼き鳥を展開している業態です。

「ビルイン型」と私どもは呼んでいますが、駅前のビルの中に入っている「ザ・居酒屋」としての焼き鳥屋のほかに、地方の郊外のロードサイドに、ファミリーレストランのようなかたちで焼き鳥屋を展開しています。もちろんそこでお酒も提供しているという珍しい業態です。店舗数では郊外のロードサイド型店舗が非常に多く、そちらをメインとして行っています。

みなさまがイメージされる「居酒屋としての焼き鳥屋」と、3世代にわたってファミリー層にご利用いただける「ファミリー型の焼き鳥屋」という、非常に珍しい業態で展開しています。

スライド右側は「Pastel」です。こちらはフードリームの業態の中に入っています。ご存知の方も多くいらっしゃるのではないかと思いますが、一時期一世を風靡した「なめらかプリン」を主に展開しているレストラン業態です。「Pastel」の「P」はパスタ・ピザ・プリンのことで、この3つの柱で、主にイオンやマルイなど、いわゆるショッピングセンターのインショップとして展開しています。

ブランド紹介(紅とん/一丁)

あと2つの代表的な業態をご紹介します。スライド左側は「日本橋 紅とん」です。こちらは読んで字のごとく、焼きとん業態です。

先ほどの「やきとりの扇屋」のような郊外展開型ではなく、東京23区内にあります。スライドには「働くみんなのエネルギー源!」がコンセプトと書いてありますが、少し前までは「働くお父さんのエネルギー源! 」と言っていました。これこそ「ザ・居酒屋」という焼きとん屋で、サラリーマンをターゲットに、東京都内で23店舗展開している業態です。

スライド右側の「魚や一丁」は、札幌発祥で、北海道名物を中心としたお刺身居酒屋です。ロゴの「一丁」の白い文字は、北海道の青い空や海、雪の大地をイメージしています。50人、70人という大型の宴会を受け入れることが可能な大型の居酒屋で、首都圏で4店舗展開しています。

業態ポートフォリオ

小型、大型、都心型、郊外型、ロードサイド型、ビルイン型といったさまざまなタイプに加え、お酒や食事、カフェなどの目的でご利用いただけるような業態を、全300店舗のうち、20業態ほど取り揃え、多角的に展開している会社です。

続いて、2025年3月期第2四半期、ならびに上期の決算実績について、CFOの羽根からご説明します。

業績サマリー 第2四半期連結決算(2024年4月1日〜2024年9月30日)

羽根英臣氏:2025年3月期の連結決算について、ご説明します。

当第2四半期においては、経済活動の正常化が進み、人流の戻りが見られた一方で、真夏の酷暑や台風などの天候不順、原材料の価格高騰、エネルギーコストのさらなる上昇、さらには2024年問題に伴う物流の制約や労働人口の減少など、依然として不透明な経営環境が続いています。

このような状況の中で、当社グループでは、事業再生計画に基づき、メニューミックスによる顧客粗利の改善や、食材ロスの低減、店舗の営業オペレーションの見直しにより、労働生産性の向上に努めるとともに、人手不足や事業環境の変化への対応を進めてきました。

これらの施策に加え、当社グループでは、客数増加を大きなテーマとして掲げ、各業態のメインアイテムの品質向上と、そのための技術の再構築といった本質回帰に徹底して取り組むとともに、新規顧客の集客施策や、SNSを活用した認知度アップの実験も進めてきました。

店舗数については、この7月に「日本橋 紅とん」を東京都江戸川区の西葛西に新規出店し、売上高、利益ともに順調に推移しています。

一方で、不採算店舗や契約更新を行わなかった店舗については、閉店を行っており、前期末と比べ店舗数は1店舗減少し、9月末時点で311店舗、うちFC店舗は30店舗という体制になっています。

これらの結果、売上高は前年の第2四半期と比べ、3億円増加し、87億4,000万円となり、既存店の売上高は、コロナ禍前の水準を上回る101.5パーセントという実績になっています。

営業利益は、前年の第2四半期と比べ、1億1,000万円増加し、1億9,000万円の黒字です。経常利益も前年の第2四半期と比べ、1億1,000万円増加し、1億6,000万円の黒字となりました。

中間の当期純利益も、前年の第2四半期では3,000万円のマイナスということで、若干の赤字が残っていましたが、当第2四半期では1億1,000万円の利益が改善したことで、8,000万円の黒字化を達成し、営業利益以下の利益の項目がすべて黒字化という決算になっています。

業績サマリー 連結業績推移(第2四半期)

第2四半期の連結業績推移についてです。スライドのグラフでお示ししたとおり、6年前の2019年3月期第2四半期は、売上高が135億円と、当第2四半期の約150パーセントの売上高がありました。直営の店舗数も454店と、現在の約160パーセントの店舗数を有していましたが、経常利益はマイナスの2億8,700万円と、この第2四半期から赤字になっています。

その後、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2023年3月期の第2四半期まで、5年間連続で経常損失を計上していました。

その中で、当社グループは2021年4月にADR手続きを行っています。そこで策定した事業再生計画に則り、事業の仕組みを抜本的に見直し、事業再生に向けた構造改革を着実に実施してきました。

また、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類に変更されたこともあり、2024年3月期第2四半期は売上高が84億円、経常利益が4,700万円ということで、実に6年ぶりに黒字化を達成しましたが、当期は売上高が87億円、経常利益が1億6,200万円と、前期の実績を上回り、増収増益を達成しています。

当社グループでは、これまでの黒字化に向けた再生フェーズから、再成長フェーズへと歩みを進めるため、適正な規模に向けたリストラクチャリング中心の店舗戦略から、新店の出店体制の確立や、新業態、新コンセプトの業態開発を行うことで、再成長に向けた店舗戦略へと大きな転換を行い、着実に進めていく所存です。

以上をもちまして、2025年3月期第2四半期の連結決算についての説明を終わります。事業の状況については、社長の楠元よりご説明します。

既存店舗 売上高 推移 前年比/2019年比

楠元:ただ今ご説明したような決算の状況ではありますが、足元の事業の状況、ならびに今後の取り組み方針について、お話しします。

スライドの折れ線グラフは既存店舗の売上高推移を示したものです。先ほどCFOの羽根からご説明したとおり、昨年の中間決算ではまだ営業経常利益が赤字という状態でしたが、今年は中間決算からすでに黒字を確保できています。

早いもので、すでに忘れかけているのですが、昨年5月のゴールデンウィークまでは新型コロナウイルスは2類で、5類に変わったのはゴールデンウィーク明けでした。昨年4月いっぱいは、まだ新型コロナウイルスが2類の中で、一定程度の精神的な制約を受けながら消費が行われていたということです。

一方で、今年は最初から5類で正常化されていたということもありますが、世の中の回復のピッチが速かったため、上期から黒字が確保できました。非常に良い流れの中にあるかと思います。

スライドの折れ線グラフは、青色が前年比、黄色が2019年比の既存店舗売上高推移を示しています。2020年4月に新型コロナウイルスの緊急事態宣言などがありましたので、コロナ禍前にあたる2019年度と比較しています。

売上高は今年度に入ってから、前年比・2019年比どちらも上回った状態で推移しており、数字の上では、アフターコロナを順調に推移しています。

損益分岐水準

この場では従来、損益分岐水準を示しています。先ほど羽根からの説明にもありましたとおり、私どもは新型コロナウイルスが始まった2021年3月期は大きな赤字で、いわゆる債務超過に転落しました。

先ほどの棒グラフでも示したとおり、経常利益という段階で見ると、2019年3月期からすでに経常赤字に入っていた会社です。もともと業績がやや下降気味で、黒字転換を求めているところに新型コロナウイルスが直撃した状態でした。

そこでADRを活用し、金融機関のみなさまから資本支援をいただき、ファンドから資金、資本を支援いただいた上で、正常化に向かっての再生というフェーズに入ってきました。

スライド左端の数字は、再生に入る直前である2021年のADRの時点で、黒字化する損益分岐水準を理論的に算出したものです。2021年4月、ADR再生計画上の損益分岐水準はコロナ禍前2019年度の比較で、売上高が75パーセントまで戻った場合、来店客数に換算すると73パーセントまで戻れば、損益分岐になるとの前提のもとで計画を立てました。

しかしながら、みなさまご承知のとおり、新型コロナウイルスが推移していく中で、人々の行動様式が変化しました。例えば、深夜帯のお客さまはまだ戻ってきていませんし、新型コロナウイルスの2類の中だったため、宴会はまったく復活していませんでした。

このように行動様式の変化した中、戦争などいろいろなことが起きました。その結果、円安に大きく振れ、いろいろなことで原材料費や光熱費が急激に上がっていきました。さらに、国民の収入水準を上げていくという政治の動きもあり、人件費もどんどん上がっていきました。

このようなマイナス要因を加味し、当社は損益分岐水準を見直しました。スライドの「現在」に記載のとおり、損益分岐水準は、コロナ禍前と比べて75パーセントまで復活すれば良かったものを、95パーセントまで引き上げなければならなくなりました。来店客数も、73パーセントまで復活すれば良いと思っていましたが、83パーセントまで戻らないと損益分岐は超えてきません。

この現実をしっかりと見ながら、スライドに記載したようなマイナス要因が起きたのであれば、構造変化と構造改革によって、コロナ禍からの脱出を乗り切る必要があると考えています。そこで、収益構造改革として、原価対策と、メニューを組み替えるメニュー戦略で、いろいろなコストを吸収していきます。そのような取り組みを「メニューミックス」と先ほど羽根がお伝えしました。

その過程の中では、当然ながら、生産性を改善しなければいけません。これはシンプルな効率化はもちろん、より生産力を上げていく、お客さまに応えることができる価値を付けていくためには、生産性の改善が必要なってきます。つまり、単なる効率化だけではなく、いろいろな意味での生産性の方法の改善が必要だと考えています。オペレーションそのものを見直し、オペレーションの再構築を行います。

一方で、人件費が上がっており、人手不足も顕著になっています。そのへんを考えながら、人員の最適化を行います。

現在の損益分岐水準は、ありとあらゆる収益を目指す構造を、今までの前提条件をすべてひっくり返して再構築した上での水準です。直近の上期の実績は、コロナ禍前の2019年度と比べて、売上高が101.5パーセント、来店客数が84.5パーセントと、損益分岐水準をしっかりと超えてきています。

この状態をより磨き上げて、安定的に成長させていくことで、損益分岐を超える「再生フェーズ」をこのへんでしっかりと終わらせていきます。現在は、これをどのように伸ばしていくかという「再生超フェーズ」へ移行しようとしています。

事業動向

主要な4業態の足元の状況について簡単にお話しします。「やきとりの扇屋」は、160店舗を超える最大勢力ですが、先ほどの羽根の説明の中で「本質回帰」という言葉がありました。

「本質回帰」とは何かについては後ほどご説明しますが、基本的にはスライドに記載のとおり、それぞれの業態の冠になっているメイン商品、「やきとりの扇屋」では焼き鳥をまず徹底的に品質、つまりお客さまにとっての商品価値と、それを高めるための技術も磨き上げていきます。

こちらは人員不足の対策も含めてですが、技術を高めていき、そこに私どもの差別化と言いますか、他の同じような業態との差別化の中で、品質とそれを裏付ける技術をもう1回磨き直していきます。これがまさに本質であり、原点にしっかりと立ち戻ってやり直すことに、この2年半はずっと注力してきました。

その中で実現できるメニューがやはり増えてきます。できることが増えていくことによって、メニュー戦略に柔軟性等大きな幅が広がります。その結果、お客さまにレジで払っていただく客単価を堅調に上げることができました。

もう1つ大事なことは、お客さまに気持ちの良い体験をしていただける営業力です。スライドに社内コンテストなどの実施と記載していますが、こちらは世間でロールプレイング大会と言われるものです。

販売コンテストをいろいろな角度、テーマで繰り返し実施します。こちらはアルバイト従業員を中心に参加していただくわけですが、みなさまに楽しみながら営業力をつけていただくことを繰り返し実施することで、サービス力の向上に努めてきました。

その結果、技術とそれぞれのメニューの幅広さと、メニューの組み替え、そこにおける原価のコントロールに、営業力を一体化させて、抜本的な収益構造改革が進んでいます。

「やきとりの扇屋」は約160店舗ありますので最大勢力とお話ししましたが、「やきとりの扇屋」でしっかりとできていることを、他の業態でも、均一的に施策として実行しています。

他の業態の業態特性に合わせて、方法はアレンジし直すものの、基本的にはメイン商品の品質、技術の向上、メニュー戦略による客単価の上昇、社内コンテストによる営業力の強化を行っていきます。これらを合わせて抜本的な収益構造、収益を生み出す構造をコントロールとメニュー構造を変えていくことで、その裏付けとなる技術を高めることで改善していっています。

したがって、スライドの「Pastel」の項目にも、同じようなことが書いてあります。特に「Pastel」については、世の中の流れの中で、ディナータイムでのお客さまの需要が少しずつ減ってきています。

そこで、ランチ、ティータイムに注力し、同じようにその時間帯におけるメイン商品やそれに対する技術にしっかりと注目しながら、そのへんの構造改革に努めている途上です。

事業動向

「日本橋 紅とん」も、「やきとりの扇屋」の説明とほぼ同じです。「やきとりの扇屋」では炭で焼き鳥を焼きますが、「日本橋 紅とん」も炭で焼とんを焼いていますので、基本的には同じです。

ただし、「日本橋 紅とん」に関して言えば、東京23区内を中心とした本当に「ザ・居酒屋」として、主に酒飲みの、と言ってしまうと怒られてしまうかもしれませんが、多くのサラリーマンをターゲットにしています。

したがって、メイン商品の1つに生ビール、基本的にアルコールドリンク全般のことを指しますが、やはり最初の一杯は圧倒的にビールを飲まれるお客さまが多いため、生ビールの品質にとことんこだわろうと考えています。

フードとお酒の象徴としてのビールの品質が上がること、そこに対する意識がしっかりと高まることによって、そのほかの商品全般の品質や、それを提供する時のサービスなどに対して、従業員のみなさまの意識が必然的に自然と向いていきます。このような改善を行っています。

「日本橋 紅とん」は、1つのパイロットケースとして、全業態の先陣を切って、その実験に取り組んでいます。代表として、グループ内の他の業態に良い影響を与えてくれており、非常に重要なベンチマークとしている業態です。

「魚や一丁」も、同じように都心部にありますが、こちらは大型の総合居酒屋です。基本的に刺身や魚料理と、北海道メニューに特化した業態です。宴会需要が非常に厳しい中で、宴会の需要がコロナ禍の後にどのように回復していくのかを見る上で、重要なベンチマークとなっています。

宴会の需要は今、おかげさまで非常に順調に戻ってきていますが、宴会の行われ方は変わってきています。コロナ禍前には1回の宴会される人数が30人、50人という大型が多かったのですが、最近は10人から20人というサイズで収まってきています。また、遅い時間の二次会やはり少ないなどの傾向があります。

そのような傾向をしっかりと捉えながら、品質とそのほかの価格戦略により、十分に利益を上げていける状態に持っていきます。

ただし、他の業態に比べて相対的に難しいのは、よくマスコミでも取り上げられていますが、気象変動に伴う、海洋環境の急激な変化による影響です。秋にサンマが獲れないといった状態ですので、水産物の原価のボラティリティが非常に大きい業態です。

今後どのようにしてそのへんをコントロールしていくのか、私どもとしても注目していきたい業態として注力し、改革に努めているところです。

事業動向 成長ロードマップ

先ほどから、ADRと赤字の時期についてお伝えしてきました。社内的には、成長ロードマップにおいて現在を、再生から再成長への「第3フェーズ」と位置付けています。

2020年4月、新型コロナウイルス拡大によるはじめての緊急事態宣言からスタートしたフェーズ1は、事業のリストラクチャリングです。ここはあくまでも、まずは出血を止めて利益が出るよう、基本的な財務上の体質を改善していく段階であり、事業そのものに大きなメスを入れられる状態ではありませんでした。

フェーズ1をしっかりと乗り切った上で、2021年後半から始まるフェーズ2では、業態そのものに手を入れ、収益構造を改革していきました。業態のあり方、本質を磨き、どのようなかたちで、どのようなところに自分たちの存在意義をしっかりと置いて再生させていくのかを徹底的に議論し、いろいろな施策を試した時期です。

その結果として、昨年度の黒字化を見た段階がフェーズ3です。昨年度、今年度、今年度末までがフェーズ3です。

先ほどから、何度も言葉として出ている「新たな収益を生み出す構造改革」が、結果として、昨年度に最初の答えが出ています。まずはそれを安定化させ、今後どのようにさらなる変革を図るかというフェーズに来ています。

スライドのフェーズ3の2番目に「新業態、新コンセプトの業態展開」とありますが、いずれにしても、今お話しした収益構造を展開し、しっかりと磨き上げて、安定化させていきます。

結果として、プロセスの中では価格の戦略や、それを実現するためのオペレーションの転換や、今後の人口減による人手不足に対する生産側としての工夫をどう変えていくかについて、非常に大きなオペレーション転換が必要になってきます。

それにより、結果として業態には少しずつ変化が生まれてきます。これが新業態、新コンセプトにつながり、リブランド、リプレイスにつながっていくのではないかと考え、取り組んでいるところです。

加えて、このような時代ではありますが、スクラップアンドビルドもしますし、純粋に店舗数を増やしていく再拡大の準備も行っています。

新店を出店するにあたっては、単純に数を増やすということではなく、新しい収益構造と新しいオペレーションに生まれ変わった状態で、新店を出していくことを始めています。これを丁寧に作り上げ、磨き上げて、大きく展開することで、再成長をより確実なものにしていきたいと考えています。

最後の項目に「新経営システムへの移行と資本デザイン」と記載しています。ご承知のとおり、ADRという中で既存の金融機関のみなさまからデット・エクイティ・スワップ、債務の株式化をしていただき、ファンドから資金を入れていただいて、債務超過の解消と再成長資金を調達しました。

結果として、まだ経済的な配当まで復活できていません。きちんとした配当の再開に向けて、今後、資本をどのように再デザインし組み替えていくか、どのようなかたちに持っていくかが、私どもが課題として取り組んでいく大きなテーマの1つと考えています。これがフェーズ3の全貌です。

事業動向 第3フェーズ

業態転換について、いろいろなかたちでの実験を新店で行っているとお伝えしましたが、いくつか具体的にご紹介します。

まず、「大衆食事処 みよちゃん食堂」です。これは、埼玉県入間郡三芳町藤久保で展開している店舗で、駅で言うと東武東上線の鶴瀬駅から歩いて15分ほどのところにある、ロードサイド型の「やきとりの扇屋」の店舗を業態転換したものです。

もともと炭火を使って焼き鳥を焼いている「やきとりの扇屋」ですので、その炭台を活かし、ランチでも、夜でも、お酒を飲む目的ではなくても食堂目的だけでご来店いただき、しっかりとした定食を食べていただくような、昭和の大衆食堂のイメージです。

昭和の大衆食堂というのは、夜は定食メニューのおかずで1杯、2杯飲んでから、最後にご飯を食べて帰るというお客さまが非常に多かったと思います。その昭和の大衆食堂を現代版にややアップデートした業態で展開しています。

始めてもう1年半強経ちますが、最初の1年はいろいろ手探りでした。このような食事に特化した業態はあまり展開してこなかったものですから、ここで1つ実験して、1年間時間をかけて、夜の焼き鳥屋としての顔を残しつつ、食堂の色を強く出していきました。昭和の大衆食堂の色をどのように出していくかという実験に1年間かけて、今年度、最終的なスタイルが決まりました。メニューも何回か転換しながら、今年度から黒字に転換しています。

今年度の残り4ヶ月の間に、これをもう少ししっかりと利益が出るような状態にして、可能であれば来年度以降、何店舗か展開していけるところまで、完成できるのではないかと確信しています。これは、将来的に展開していく業態として、1年かけて確実に育ったと思っています。

事業動向 第3フェーズ

同じように「やきとりの扇屋」の実験です。どうしても焼き鳥居酒屋の顔が強いのですが、地方のロードサイドのお店はファミリーレストランのような使われ方をするとお伝えしました。ご家族4人で来られたうち、お父さんだけはビールを飲むというようなことが多かったのですが、お食事だけの動機でも来ていただきたい、顧客ターゲット層をより広げていきたいということもあります。

スライドの「宅麺」については、「入店困難の人気ラーメン」と記載しています。いわゆる行列のできるラーメン店、予約が何ヶ月も先まで取れないラーメン店というのは、よく食べ歩きのテレビ番組で紹介されるのをご覧になったことがあると思います。「宅麺」は、そのような有名店とコラボレーションして、家庭でも食べられるような、有名店の味を冷凍品で届けている業者です。

今回、「宅麺」と私どもでコラボレーションして、定期的に銘柄を入れ替えながら、私どものお店で有名店のラーメンをご紹介しつつ楽しんでいただくということを始めています。これは焼き鳥を食べながら、ビールを飲んだ後の締めでもよいですし、「宅麺」のラーメンを目的としてご来店いただいてもよいということで、来店動機の幅を広げて、お客さまのターゲットを広げます。

ラーメンを食べに来たお客さまにも、メニューを見て「ここは焼き鳥屋なのか」「次は焼き鳥を食べに来てみようかな」という動機を持っていただけるような、そのような意味での二毛作、あるいはダブルネームのような実験をしています。

非常に好評で、最初は3店舗から始めたのですが、実験する店舗を30店舗、さらに50店舗に広げました。もしかしたら全店展開できるようなところまでいけるかもしれないと思っています。

以前、台湾まぜそばの「麺屋はなび」や、うな丼の「宇奈とと」など、二毛作・ダブルネームの実験をいろいろと行いました。そのような実験に取り組み、いろいろなことを学んだ結果として、「宅麺」とのコラボレーションも非常に順調に進んでいると考えています。

事業動向 第3フェーズ

「日本橋 紅とん」についてです。先ほど23区内を中心にお店を出しているとお伝えしましたが、昨年8月に初めて23区から外れた吉祥寺の、いわゆる飲み屋街に新規オープンしました。

23区外といっても、吉祥寺はほとんど23区のようなもので、新宿や渋谷のようなマーケットです。ただし、やはりビジネスマンというよりは、週末にショッピングに来るお客さまや昼間から飲むお客さまもいる街です。

ビジネスの方でも、どちらかというと土日に働いて平日にお休みを取るような、例えばアパレルショップの店員や美容室の方など、サラリーマン以外のターゲット層にいろいろなことを当てています。

看板はどう見ても「日本橋 紅とん」で、「日本橋 紅とん」をご存じの方であれば「どこから見ても『日本橋 紅とん』ですね」と思われるお店作りなのですが、中に入ると実はメニュー構成やサービスの中身、置くお酒の種類を少しずつ変えています。

どのようなお客さまに、どのような利用をしていただければ、私どもの「日本橋 紅とん」をご利用いただくターゲット層を広げられるのか、23区内のビジネスマン以外の方々のマーケットをどのように開拓していくかということで、大きな実験を行っています。

スタートから非常に好調に推移しています。街の構造が少しずつ変わったり、猛暑で井の頭公園に遊びに来る方々が少なかったり、いろいろなことがあって、業績の上下変化はありますが、吉祥寺への出店は今のところ基本的にしっかりと利益を出してくれていますので、おもしろい実験結果が出るのではないかと考えています。この結果をどのように横展開していこうかと今、わくわくしているところです。

併せて、この真逆に、既存店があった西葛西店があります。東京メトロのガード下の店舗で、耐震工事の兼ね合いもあり、実は2年後の撤退が決まっていましたので、早めに立地を変えて、すぐ近隣で新しい「日本橋 紅とん」に打ち替えて出店しました。

どうせ出店するのであれば、出店する以上は次の新しい収益構造、勝ち構造を持った新店をと考えました。先ほどの吉祥寺とは異なり、既存のお客さまをターゲットにしますが、新店だからこそできる新しい設備と、人の少ない状態で営業ができるような新しい仕組みを組み込んだ店舗として、メニューはある程度一緒でも、少人数でより広いお店で営業できるというオペレーション実験として、この店はオープンしています。

今年7月にオープンしましたので、まだ4ヶ月しか経っていませんが、かつての既存店よりも、はるかに上回る売上と利益を出してくれています。そのような意味では、同じ売上でもおそらく効率性が高くなっている店舗ですので、収益性についても、今後これを横展開していくことが十分できると思える実験ができています。

事業動向 第3フェーズ

西葛西で既存店を別の店に打ち替えられましたので、残った2年間では、「日本橋 紅とん」に対してまったく新しい「大衆酒場 魚とん」の実験をします。今まで魚を扱ってこなかった「日本橋 紅とん」が魚を扱うという業態の実験ですが、これはこれから答えが出ますので、今はそのような取り組みをしているというご説明にとどめたいと思います。

事業動向 第3フェーズ

12月20日に「Pastel」の中でも最大規模の売上を持っている「Pastel」マルイファミリー海老名店が、丸井と協力してリニューアルオープンします。マルイファミリー海老名全体のリニューアルに合わせて、先ほど来お伝えしている新しいオペレーション、新しい技術、新しい収益構造を持った店舗の実験として、今までの一般的な「Pastel」から「PASTEL Dining」という新しいコンセプトショップに生まれ変わります。

中身は基本的には「Pastel」なのですが、そこにいろいろな付加価値をつけて、「PASTEL Dining」として生まれ変わります。コンセプトショップとして、いろいろなコンセプトを実験として行い、既存の「Pastel」に移植できるものは海老名店から切り出して埋め込んでいきます。

地域共創や地域共生、お子さまたちへの学びの場となるようなワークショップなど、多岐にわたる付加価値を多く試し、ただの「Pastel」ではない、体験価値を高めていくという実験を今月から行っていきます。来年度の種まきとして、ぜひご期待ください。

事業動向 第3フェーズ

このような事業構造を持ちながら、今後は「人的資本への投資再開」を行っていきます。今後、労働人口は減少し、労働時間数も減少していきます。103万円の壁の問題もなかなか議論が進んでいませんが、いずれにしても、多くの採用を望めない時代です。

そのような中で、どのように人を大事にして、少人数で今まで以上の価値を出していくかということに昨年度から投資し始め、今年度からは本格的に、教育面、採用面、トレーニング面、仕組みを変えるための投資を行っています。

事業動向 第3フェーズ

ADRの会社でまだ金融機関のみなさまからご支援いただいた優先株が残っている状態の中、次の資本デザインに向けた今できる最大の資本政策として、新株予約権を発行しています。本件については、いろいろなご意見があることは十分承知しています。

しかし、今後、資本デザインを作り直していく中で、通過するプロセスで私どもにできる方法論として、新株予約権は極めて効果的かつ有効的な手段だと思っています。マーケットをもう少ししっかりと見ながら、新株予約権の発行による資本的、資金的効果を十分に取り込み、今しばらく、この状況を見つめていきたいと思っています。

スライドの一番下に「調達スキーム」と記載していますが、既存の金融機関のみなさまに、このような状況の中でも、業績の回復に合わせて新たな資金調達についてのご協議のテーブルに着いていただいています。新たな資金調達についても、今後、複数の方法論の中で模索していきたいと思っています。

株主優待

11月の業績回復に伴い、客数という意味でより多くのお客さまにご来店いただきたいということもあり、宣伝効果も含めて、株主優待制度を少し見直しました。

多くの株主のみなさまに、ぜひお友だちやご家族、知人、親類の方々をお誘いいただけるよう、来店しやすいように見直しました。投資という意味もありますが、今後もぜひ、私どもの店をご利用いただけるように、新しい株主優待制度を一度ご覧になっていただければありがたいと思います。

以上、お伝えしたいことがたくさんあったものですので、早口で大変申し訳ありませんでしたが、足元の施策、事業の状況から、今後の見通し、進んでいく方向について、一気にご説明しました。最後までご清聴いただき、ありがとうございました。