Voicy「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」
オープニング
荒井沙織氏(以下、荒井):「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」をご視聴いただきありがとうございます。今回の放送の司会を担当します、荒井沙織です。
この番組は、個人投資家、アナリスト、ストラテジストなどの方々へのインタビュー、対談などを通して、みなさまとともに投資の知見を深めていくための、ログミーFinance主催のラジオ番組です。
今回の「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」では、“Bコミ”こと坂本慎太郎さんをゲストにお招きして、最近の経済状況にも触れながら、投資家として必要なエッセンスをうかがっていきたいと思います。それでは放送スタートです。
ゲスト・坂本慎太郎氏の自己紹介
あらためまして、今回のゲストをご紹介します。元ファンドマネージャー、元ディーラーで株式評論家としてもご活躍されている坂本慎太郎さんです。本日はよろしくお願いいたします。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):はい、よろしくお願いします。2回目かな?
荒井:はい。
坂本:2回続けて出演ということになってしまいましたが……。「いいんですか?」っていう感じですけど(笑)。
荒井:ビッグゲストでスタートしました、「ログミーFinanceの株式投資ラジオ」です。
坂本:「2本録りしているだけじゃねぇか」ぐらいの話かもしれないけど、そんなことはないかもしれないからね(笑)。
荒井:はい、そうです(笑)。大切に1回1回お送りしております。
坂本:そうですね、はい。
荒井:坂本さんには前回の放送でもご出演をいただいているんですが、あらためて自己紹介として、投資に初めて触れたきっかけから今までの投資歴、ご活動などについて簡単に教えていただきます。
坂本:前回聞いた人がいるとアレかなと思うんですけど、僕は本当に小学校の頃から株式に興味がありまして。熱があったり冷めたりをちょっと繰り返して。バブルがちょうど小学校6年ぐらいからだったんですが、(その時は)日経平均のチャートを描いていました。
荒井:すごいですね(笑)。
坂本:夏休みの研究とかの延長で。
荒井:自由研究?
坂本:そうそう。で、「あっ、なんかめちゃくちゃ株が上がってんな」「下がってんな」みたいな。
荒井:それって、提出して担任の先生はわかってくれるんですか?
坂本:なんか授業があった気がするんだよな。あんまり記憶にないんだけど、でも普通の、ただチャートを描いている話でしたけどね。
荒井:すごいですね。小学生の頃から触れ始めて、その後は?
坂本:その後は大学生の頃に実際売買するようになって中期ぐらいのトレードをずっとやって、結局大学3、4年生の終わり……。4年生ぐらいには自分で生活できていました。学費、食費、生活費を株で賄うと。
荒井:親孝行ですね。
坂本:まぁ、そうね。僕は父が大学の時に亡くなっているので。だから稼がなきゃってわけじゃないんですけど、親孝行って、(親が)いる時にしなきゃいけないよねっていうところですよね。サラリーマンの時はなかなか難しかったですが、フリーになったり、あとは歩合でやっていた証券ディーラー時代、今でもですが、親にちゃんと仕送りをしています。
荒井:株式投資が成功すると、そんなふうに親孝行なんかもできちゃうっていうね。
坂本:わからない。株式投資家はけっこう財布の紐が堅い人が意外と多いからさ。「親に仕送りするぐらいだったら、ほかの銘柄を買いてぇ」っていう人がけっこう多いですよ。
荒井:ドンと集まったら、ドンと還元する……。
坂本:ドンはいいですよ。でも株式も「つみたてNISA」でもそうだけど、コツコツ毎月仕送りするのってけっこう大事なんですよ。仕送りするのって忘れるじゃないですか。そうしたら親から電話がかかってきて、「慎ちゃん、今月はないの?」って聞かれて(笑)。
荒井:(笑)。
坂本:「もう完全に当てにされているわ」みたいな、そんな話ですけどね。
荒井:いや、そりゃそうですよ(笑)。その後プロになられているんですよね。
坂本:そうなんですよ。プロになっているんですが、(その時は)ディーラーとして短期売買をしていました。歩合なんですよね。成績が悪い人はすぐクビみたいな感じの世界なんですけど。
荒井:シビアな世界ですね。
坂本:シビアですよ。3日でクビになった人とかいましたけどね。
荒井:えぇっ!
坂本:実際のところ、自分で証券会社のお金を売買して、儲けを半分ずつみたいな感じでしたけど。26、7歳ぐらいの時にFIREをしまして。それで証券会社を辞めて、株、投資の勉強をしに……。勉強といったら失礼ですが、かんぽ生命に入って、7年半かな、いろいろ勉強をさせていただいて、35歳で独立という感じですね。
荒井:そして、そこから現在までは、メディアへのご出演なども多数されていらっしゃいますよね。
坂本:意外と評論業っていうのはおもしろいですね。投資もいろいろしていますが、株式投資は主として分析業務とちょっとした投資をしているんですが。保険会社に入って、株だけじゃなくて債券とか不動産とか、けっこういろいろな投資をするんですね。
そこで、「あぁ、株式だけじゃないな」って当時思って。いろいろな商品に手を出すって言い方はアレですが、分散しました。太陽光発電所を持ったりとかもそうですし、マンション投資もそうですし。最初はワンルームだったんですけど、もう全部きれいに売って、利益も出して。
今は築古の区分ですね。『ずるい不動産投資: 手間暇かけずに毎月50万円の家賃が入ってくる築古区分マンション投資入門』という本が東洋経済さんから出ているんですが、古い中古マンションを買ってリフォームして貸すっていう実用書があって、意外と売れているので、ぜひ見てほしいなと。
3、400万円のファミリータイプの物件を買って貸すんですよ。そういうのとか、あとはしいたけ投資とか、いろいろな投資を試しています。今一番儲かっているのは、外貨両替機の設置投資ですね。これはコロナの頃にかなりやってきたというのが大きいです。というような副業的ないろんなこともやっているんですが、一応本業は株式の評論家です。
坂本慎太郎氏の最近の投資手法
荒井:今頭出しもいただいているんですが、最近はどのような投資手法を中心にされているのかというのをうかがいたいです。過去から変わっていない部分、そして最近見直してメンテナンスしていっている投資手法、それぞれ併せて教えていただきたいです。
坂本:デイトレードをやらなくなってから……。デイトレードはちょっとレギュレーション上、今はできないんですよ。投資助言の会社に所属しているかたちになっているので。なので短期売買はできないので、長期投資になっちゃうんですよね。
短期をやらないメリットというのは、相場にじっくり向き合えるんですよ。短期売買も向き合えていると思うんですが、ものすごく短期に物事を見てしまう。
一応短期売買も見ながら中長期を見ているんですけど、やはりどうしても短期の思いに引きずられるところがあって。それをいったんお休みしたことによって、俯瞰的に相場が見られるようになってきて、相場の読みが非常に当たるようになっているんですよね。だからそこが自分の中ではかなりのプラスです。
それから実践しているのは「押し目を買う」という。押し目買いのポイントを待っているというのが一番の投資と。性格悪い投資ですけどね。暴落してみんなが困って、「これ、やべぇな」と思っているところで「おっしおっし」と思って買う投資なので、最悪だって思っている人もいるかもしれないですけど。
でも、それを僕が「よしよし」って買わなかったら、みんな「やばいやばい」って嘆いているところをもっと下に通過していっちゃうぜっていうこともあるので、そういう意味ではちょっとだけ貢献しているのかなと思うんですけど。損した人からすると、「こんないいところで買いやがって」って思われる投資だろうなと思う。
かといって、みんながうわーっと盛り上がっているところで「俺も買うぜ」ってみんなが損をして、そこで「いや、俺も損したんだよね」って言う人だったら、この仕事はできないからね。
荒井:そうですね(笑)。
坂本:だったら個人投資家で損した人が集まって居酒屋で愚痴を言っときゃいいじゃんっていう話なので。ちょっとバラバラしましたが、この5年ぐらいで投資スタイルを変えて良かった点と、今、主にやっている株式投資は、やはり押し目買いっていうのが大事かな。それから、あとは業績に着目した投資ですよね。
2024年8月5日、坂本慎太郎氏はどのような対応をしていたか
荒井:現在の投資スタンスにも通じてくるお話になるかと思うんですが、ここからは今回のメインのお話である、経済状況のお話にまいります。
2024年8月5日に日経平均株価がブラックマンデーを超える、過去最大の下落幅を記録しました。そしてその翌日には、日経平均株価が過去最大の上昇幅を記録するなど歴史的な乱高下となりました。この動きの時、坂本さんは何か対応、動きをされましたか?
坂本:そうですね。実は荒井さんとは番組をやっていたから、「お前知ってんだろ」と思っているんですが(笑)。
荒井:はい、そうなんです(笑)。
坂本:その仕事を知らないことを前提で話すんだけれど。
荒井:あの感動をもう一度、お願いします(笑)。
坂本:僕はショート推奨というか、そういうショートポジションをしましょうという話をYouTubeの放送でずっとしていたんですね。
日本株は高すぎるということと、みんなが一番盛り上がっているAIを中心とした半導体関連銘柄の相場はもうバブルでしょうという話をずっとしていて。これがはじける時、日経平均の調整幅ってけっこうでかいよと。
日経平均が持ち上げてきた理由って、大型株が買われた、業績が良くなったから外国人投資家が入ってきたっていうのもあるんですけど、米国発のAIブームで日本の半導体製造装置が売れるから、そこが上がっているというのもありました。
非常にあって強かったんですけど、ただこの半導体関連銘柄はサイクルがやはり早いので、2、3年先の利益まで織り込んでしまったような株価になってしまった。やはり山谷があるので、次は谷を織り込む相場になるんですよ。だからたぶん、今後は利益は増えてきてPER(Price Earnings Ratio)は下がってくるんだけど、株価は下がるっていうふうになる。
2000年以降かな、半導体関連銘柄はずっと同じことが起こってきて。だから、みなさんに「半導体銘柄は売りなさい」「その後苦しいよ」という話をしていて。実際苦しかったんですよね。今でも苦しい。半値になっている半導体銘柄はたくさんあるから。
そういうのがけっこうあって、今でもシコリ玉を持っている人はいるかもしれないですね。含み損を持っている人はけっこういるかもしれない。
なので、そういう人たちに事前に警告をしていたのは奏功して。指数のほうも日本株が特に大きく下がったんだよね。
なんで特に下がったかというと、「日銀の利上げがちょっと早かったんじゃないか?」「幅もでかかったんじゃないか?」と言う人もいるんですけど、外国人投資家の利益確定売りも合わさって、かつNVIDIA中心のハイテクの調整があって……。よく「○○ショック」っていうものがありますが、今回のはまだ(そういう名称が)ついていないよねという感じなので、僕はその複合だろうと思っています。
「やはり来たね」「予想どおりだったな」ということで日経平均が下がって。ゆっくり買い戻すつもりだったんですよ。「みんな余裕を持っていいぞ。すごく下がったからゆっくり押し目買いしようぜ」と思ったら、下がる角度が半端なくて。結局、日経平均が3万1,000円を時間外で割れるところまで行ってしまって、これは買い戻しでしょうと。だってPERが12倍台だったもの。
ここのPERが僕の売りの目線の1つの強力な指標というか、サポーターだったんですけど。日経平均の上値が4万2,000円を超えていた時は、PERが17.5倍ありました。17.5倍ってすげぇ高いんですよ。
だって「日経平均のレンジってどのぐらいですか?」ってみんなに聞くと、「12から15倍です」って言うんだよ。これが17.5倍まで行っているっていうことは、2年ぐらいの増益を織り込んじゃっているから、「早すぎる、高すぎるよ」という話もしていて、(結局)下がったというのが実情ですね。
下がりすぎたから今度は空売りを買い戻してドテン買いと。買い戻して取り戻すということで大勝利、という現状になりました。
荒井さんとやっている番組も見てもらえばと思うんですが、その時の荒井さんの反応は「『そんな下がるわけねぇだろ』って思っていました」みたいな(笑)。ものすごく酷い話とかをされて、先ほどの「すごいな」っていう話になったんですよ。
荒井:(笑)。4万2,000円を超える、狙う動きが高まる中で、そして半導体があんなに盛り上がっているのに、坂本さんは売りなんだなと思って。不安に思っていました。
坂本:めちゃめちゃ冷静だったでしょう?
荒井:はい。
坂本:俺はどこも不安じゃない、と。もう相場がおかしい。「相場がおかしい」っていうのは本当は言っちゃいけないんだよ。自分が間違っているんだからさ。
でも、人生の中で何回かは言っていいと思う。本当に相場に向き合っている人だけ。おかしいんだけど、でも結局4万500円のショートだったから、4万2,500円手前で売ったとしてもそんな損しないじゃん。5パーセントの損じゃん。だからそこは別にいいと思うよ。だって「5パーセントの損をしたら損切りしますか」と言ったら、みんな(それくらいでは)損切りしないでしょう。
だから、4万4,000円とか5,000円とかだったら「すみませんでした」って言えばいいだけで。誰でも間違いはあるんだから、間違いだって認識するまではわからないからね。含み損も全部間違いだって言うと、たぶんポジションなんか取れないから。取った瞬間、ちょっと損したらもう間違いだってなるわけでしょう? だから間違いだと言えるところまではいっていないし、自信を持って「下がるよ」って俺は言っていて。
ただ、みんなイケイケだったから、荒井さんをはじめ、もう本当誹謗中傷がめちゃめちゃ来まして。
荒井:私はしていないです(笑)。心配していました。
坂本:心配していた? あっ、そう。でも意外と誹謗中傷がすごい来て、「お前辞めろよ」とかまで言われて。「おぉ、辞めろとか言われたの久しぶりだな」と思って。「(上値が上がることは)ほぼないよ」と思ったけど、その「辞めろ」って言ったやつ、今何してんだろうって思うよね。
そんな感じで。でも荒井さんは俺と長く仕事をしているから、数々当ててきたのも知っているだろう?
荒井:そうですね。個別銘柄もそうですが、指数の読み方というか、それに関してはご一緒しているこの4、5年の間でも実績がすごくあるので。
坂本:「荒井さん、お世辞言わなくていいよ」って言うけど、事実だから。本当だからな。
荒井:そうなんです。
坂本:でも、僕は信者がつかないようにしているので……。信者を切り離すような行動、言動ばっかり言っているので。だからあまり信者がつかなくていいんですよね。
たまに間違うと言えば、(実際に)2024年1月から6月はちょっと外したから、そういうのもあったけどね。
自分で物事を考えてほしいっていうのはあるんだけど、自分は当たっていると思っているんだよ。今日はちょっと話すと長くなるんだけど、需給と業績をちゃんと見て分析すれば当たるよということですね。
荒井:ぜひこのログミーFinanceの株式投資ラジオをお聞きのみなさんは、ファンになっていただけたらなと思います(笑)。
坂本:最近はあまりログミーさんでのお仕事はないですが、講演とかもやっていますからね。
読めない大きな動きがある状況の時は、どのような対応が望ましいのか
荒井:ということで、2024年8月5日の大暴落があった時は、今お話しされていたような、まさに波に乗った対応をなさったということなんですが、今回に限らず大きな方針として、読めない大きな動きがある状況の時、つまり怖い時ですね。そのような時には、どのような対応とか対処法が望ましいと坂本さんは考えていらっしゃいますか?
坂本:荒井さんもたまに僕が「わからない」っていう発言を聞く時があるでしょう?
荒井:はい。
坂本:それは正直に言っているんだけど……。どっちかわからないっていうことはあんまりないけどね。でも、本当にどっちかわからない時があるんですよ。
例えば、今回であればFOMC(Federal Open Market Committee)が出て、利下げが0.5パーセントだった時の反応。その後に一瞬ちょっと米国株が上がって、その後“いってこい”になっちゃって、次の日からまた上がりましたみたいな状況で。消化できていない時ってわからないんだよね。
それ以外は、短い方向性、長い方向性は自分の中で一応イメージすることはできるので。基本的にわからないっていうことはないので、「対処法がわからん」という時期はないです。
それを丁半博打みたいに「上です(株価が上がる)」「下です(株価が下がる)」って言う人はけっこういらっしゃると思います。でも「根拠は何ですか?」って言ったら言えなくて。「根拠ないのに上とか言っているんですか?」って言ったら、「プラスだったらいいんだよ」みたいな逆ギレされたりするんですけど(笑)。
荒井:まぁ、それはそうなんですけどね。プラスになったらいい……。
坂本:そう。荒井さんって、上行く時とか下行く時って、何を根拠に考えている?
荒井:根拠(笑)? 根拠はあんまりないかもしれませんが。
坂本:でしょう? 根拠がなければ結局わからないんだよ。だからどっちかわからないって、不安になってしまう。
荒井:なので、ラッキーかアンラッキーかになりがちですね。
坂本:なるほどね。だから「こっちか」と思って、(予想が)当たったら結果的にはラッキーみたいな。いや、荒井さん、全部「よりどころは俺の予想です」としとけば、実はクソ儲かっていたかもしれねぇぞ(笑)。
荒井:ラジオでご紹介しているポジションで、過去本当に儲かった時もあったんですが……。その後、自己流で手にすると動かしたくなるものですね。
坂本:「金額が増えてきたから、だからそれでもうちょっと張ってみよう」と。「今までやらなかったこともやるし、あとストラテジーを2つにしてみようかな」みたいな、そういうやつでしょう?
荒井:ポジションをもう1個取ってみようかなとか。別に「動かしていい」と聞いたわけでもないのに、ちょこちょこ自己流で「プラスを取ってやろう」なんていう気持ちで動いているうちに、「あれ、あのプラスはどこに行った?」っていう(笑)。
坂本:その時に「また俺を真似しましょう」というのも1つのよりどころだけど、自分の中で1つ軸があって、そこにもう1回戻ってくれば、たぶん整うはずなんだよ。ずっと迷走している人って、たぶんけっこういると思うんだよね。
そういう人が不安だったり、あと相場は……。まぁ、怖いっていう感情は僕もたまにはあるけど。「怖いけれども、でもここが正しい」とか、「こっちに行くだろう」と思っている根拠がまだないとか。それで、数十パーセントがやられている(損している)のは間違いだけど……。だから僕も2024年1月から6月に(予想を)外した時、先物は2,000円ぐらい損したらロスカットしていたじゃん。
だから、そういうロスカットを決めて粘るとか……。正しいと思うっていうことはぜんぜんあり得るからね。そのあたりは値動きだけとか、あとは方向性だけでわからなくなったり怖いっていう人もいるかもしれない。
自分なりの何かのよりどころがあると思うので、それをもとに上か下か決めて取り組めばいいと思うし、それでどっちかわからなかったら休めばいいんですよ。
投資をする上では、どんなメンタルでいることが大事なのか
荒井:まさに投資戦略においては軸がぶれぶれの私から坂本さんに聞きたいことなんですけど、投資に向き合っていると、やはり自身のメンタル管理も大事になるんじゃないかなと思います。初心者、上級者を問わず、投資をする上では、どんなメンタルでいることが、もしくはどんなメンタルになることが大事だと思いますか?
坂本:これは一言で解説というか回答できちゃうんだけど、メンタルをぶらさないことが一番大事なんだよ。
荒井:ぶらさない?
坂本:うん。
荒井:それは、メンタルというか戦略をということですか?
坂本:ううん。自分のメンタルをぶらさないんだよ。メンタルがぶれるから、みんな嫌なわけでしょう?
荒井:はい。
坂本:だから「メンタルがぶれないように行動しよう」と思っているのが本当は正しいんだよ。でも、みんなメンタルがぶれて、「あぁ、困った、困った」っていう話になるわけじゃん。僕はすごく気をつけているんだけど、メンタルがぶれると弊害がたくさんあって、良くないことがたくさん起こるんですよ。
変なポジションを取っちゃったりとか、あとは、投げちゃいけないところで怖くなって投げちゃったりとか、「冷静な判断ができません」っていう状態がメンタルがぶれるっていうことだと思うんだけど。
メンタルをぶらさないようにするのが一番大事っていう話と、あとは、なぜぶらさないようにするかというと、メンタルって鍛えられるものじゃないんですよ。
荒井:鍛えられないですか?
坂本:鍛えられないよ! 絶対鍛えられない。
荒井:じゃあ、もう性格のような感じで、あまり変わることがないんですよね?
坂本:たぶん何かを荒井さんは間違っていて……。日本人の大半は間違っていると思うんだけど、メンタルって鍛えられるものだと思って自分を逆境に置いたり、野球とかだったらめちゃめちゃ練習したりとか。
荒井:スポ根(スポーツ根性もの)みたいな感じで?
坂本:そう。スポ根みたいな感じのメンタルかと思ったら、違うんだよ。でも今これを聞いている人は「絶対違うよ」って思うと思うんだけど。
中学とか高校とかで部活とかをしてきたので、きつい練習と自分を追い込むっていうことが日本人は超好きなんだけど、自分を追い込んで成長したとか……。例えば、今まで球を投げたら110キロだったのが、130キロになりましたと。「これは成長なんだよ」って言うんだけど、「いや、それはメンタルの成長じゃなくて体の成長」だと。
荒井:まぁ、確かに(笑)。
坂本:身体能力の成長だからね。それをメンタルと一緒にしている人が多すぎるのよ。スポ根ってそれなのよ。
荒井:心技体と教えられてきたんですけど……。
坂本:ないよ、投資なんかに(笑)。
荒井:そうなんですか(笑)?
坂本:確かに最低限は体力と健康が大事だけど、結局トレードなんか、ぶっ倒れながらポチッとクリックしても、気合い入れて「オラァ!」ってクリックボタンを力強く押しても注文が通るのは一緒だから。
荒井:確かにそうですね(笑)。
坂本:力強く注文したやつが勝つかっていうとそんなことはなくて、「昨日寝ていなくて寝不足だよ」ってポチッて押したのと、「二日酔いでやばいよ」って押した「ポチッ」と、まったく一緒だからね。だったら気合いを入れてもしょうがないわけだから。みんな気合いの入れ場所が違う、間違っているんだよ。
あとは、自分を追い込めば儲かる、メンタルが強くなると思う人は、例えば「今まで100万円を売買していたのを1,000万円にしたら儲かる」とか、「今までは含み損が20万円だったら切っていたんだけど、自分の精神を鍛えるために50万円まで含み損を耐えてみよう」って、(そんなことしていたら)お金がなくなるだけだからね。
荒井:はい(笑)。
坂本:そんな話になるわけですよ。だから、メンタルは鍛えられないんだから、ぶらさないことが大事なんですね。ぶらさないというのは、ルールを淡々と守るということと、一番大事なのは、頭で理解して行動をするということが大事です。
またこれが、心技体とぐちゃぐちゃ混ざっちゃうんだけど、頭で理解して行動するというのもいいですが、例えば損切りですね。追証になるまでずっと放置しておいて売らざるを得なくなりました、売りましたってなって、ふてくされて「なんだ、追証になっちゃったよ、ふざけるなよ」とか言う投資家ってけっこういるんだよね。でも、自分で取ったポジションだから。
ただ1つ、追証になったとしても投げる時に大事なのは、「あぁ、俺がこういうふうに思って買った銘柄は、相場が悪くてこういうふうになっちゃったっていうのもあるし、この銘柄の業績が悪かったからすごく下がっちゃったんだ」っていうのを、頭で1回理解してからポジションを解消する。理解して行動すると(いう工程を)中に入れることによって、次の行動につながってくるわけですね。
これをやらないと、ずっとふてくされていたりとか、ブチギレたりとか、メンタルが荒れる1つの要因になるわけですよ。だからやはり理解して行動するというのも大事。
あとは、きっかけもあるんだよね。「メンタルがぶれ始めるきっかけって何ですか?」っていうと、投資も(メンタルの)上下とは切り離せって言っているんだけど、株の上下以外のところにあるかもしれない。例えば「朝、奥さんとケンカしました」とか、あとは「子どもが冷たいです」とか。
荒井:悲しい……。
坂本:あとは「会社の上司にパワハラされました」とか、いろいろメンタルがぶれる要因ってたぶんあって、それを株式市場に持ち込んじゃうの。(そうなると)そこで乱暴な取引をしてしまったりするから。あとは「満員電車でイラッとしました」とかまであるよ。
だから、日常の生活からメンタルをぶらさないようにすることがすごく大事ですねということが、一応の僕の考えかなと思っています。
ふだんの投資で坂本慎太郎氏が意識していること、意識しておくとよいこと
荒井:人生にも通じるようなお話でした。そんなぶれないメンタルを持つこととともに、投資そのものとしては、トライアンドエラーを繰り返して自身の知見を深めていくことも大事かと思います。
利益を出すことももちろん大事なんですが、知識を蓄えたり知見を広げるという意味で、ふだんの投資で坂本さんが意識していること、意識しておくとよいことっていうのは何かありますか?
坂本:1つだけ言うと、株は歴史を繰り返していると思うんだよ。同じような材料が、違ったサイクルでまた盛り上がるというのはけっこうあったりして。
簡単に言うと、航空機の需要とかは意外とそうじゃないかなと思っていて。航空機って、けっこう超景気の山谷に関係ある業種で、例えばテロとかリーマンショックもそうで、リーマンショックがあったから出張もなくなったし、外出もしなくなる。旅行とかもってのほかでってなるような時とかって、航空需要が落ちるし、9.11のテロのように飛行機が(建物に)突っ込んだりしたら「乗りたくないです」ってなって、航空会社がバタバタ潰れたりとかしますよね。
そういうショックがあった時の回復期に、1回潰れた航空会社が、またほかの航空会社を作って、たくさん飛行機を備えたりするじゃないですか。だから飛行機の需要がものすごい膨らむんですよ。
膨らむ時に何をするかっていうと、飛行機の材料がめちゃくちゃ売れるわけですね。例えば飛行機の外側ってチタンでできていて。スポンジチタンというチタンを作れる会社は世界に何社かしかなくて、そういう会社がめちゃめちゃ業績が良くなるとか、そういうものは先回りできるの。だから、アフターコロナの時は「それを買っとけばよかったでしょ」っていう話だったりするんですよ。
そういうかたちで何回も歴史を繰り返すので、1回上がっている銘柄に飛びつくんじゃなくて、上がった理由を大量に収集しておくと、次の先回りができるんですね。先回りするということは上がっている銘柄を買うわけじゃないから、安いところで買えて、好きなところで売れる利点があるわけです。だからみなさん、僕はそれを実践してほしいなと思っています。
荒井:上がった理由を大量に積み上げておくというのは、1つの銘柄とか、1つのセクターで練習していったほうがいいんですか?
坂本:そうですね。1つのテーマで上昇する銘柄はセクターが異なっていたりしますから。先ほどのチタンの会社もそうですけど、ジャムコっていう飛行機のギャレー、厨房機器を作っている会社とかもあるわけで。そういうところは対応してすぐに上がるから。関連の1つの枠として覚えておくと、いろいろな投資ができます。
荒井:じゃあ、「こういう出来事があった時」という、いろいろなシナリオを考えておくといいんですね。
坂本:そうそう。だから前回の(ラジオでお話しした)大統領選もそういうことでしょうね。
荒井:そう聞くと、いろいろとメモを取って研究したくなってきますね。
坂本:そうですね。ただみんなそれが面倒くさくてやらないから、イナゴ投資しちゃうんだよね。今のテーマに飛びつくような投資をしてしまう。
もっともらしい話をする人がいると「それが正しい投資だ」と思っちゃうんだけど、テーマ株投資は単なるイナゴ投資だから。自分で先回りできるようになると、そこから脱出できる。
だからそこをもとに知識を積み上げてほしいと思います。積み上げた知識は減らないですから。お金は減るかもしれないですけど、知識は減らない。
なので、ファンダメンタルズの第1歩目をまだ踏み出せていない人はさっさと踏み出してね、10年、20年積み上げてもらえると、いい投資家になれるんじゃないかなと思っています。
投資を勉強しようと考えている方への応援メッセージ
荒井:それでは最後に、これから投資を勉強しようと考えていらっしゃる方、投資を通して今よりも少しでも豊かな生活を目指しているという方に、応援のメッセージをお願いします。
坂本:そうですね。「がんばれ」とか、「もう自分の使える時間を全力で注ぎ込んで成長するんだ」って言う人がいるかもしれないですけど、僕はそれは反対です。
僕が35歳で評論業ができたっていうのは、それだけ全部の時間を注ぎ込んでいたんですよね。それってもったいなかったなって思います。人間というか、今までの楽しみのバランスが、今考えるとかなり崩れていたなと思うので。
株式投資が好きだっていうのもあるんですが、ライフサイクルの中で、いろいろな楽しいこととか趣味とかをたくさん見つけることがお金持ちになるより僕は大事なことだと思うし、その多様性が実はお金持ちにつながるのかなって思っていて。
最悪、株式投資ばっかりやってお金がなくなってしまった人生になっちゃったら、意外ともったいないじゃないですか。いろいろな経験を持っていたら、「あまりお金持ちになれなかったけど、いい人生だったね」ってたぶん言えると思うんですよ。
株式投資の勉強ばっかりしていて、結局最後にお金がなくなったら「いい人生だった」と言えるかっていうと、僕は言えるけど、ほとんどの人は言えないでしょうね(笑)。「あの時に株をやらなきゃよかった」って言う人がたくさんいるわけだから、
だったら無茶なポジションを取らないのと、あと、使える時間はある程度限定して、いろいろなことをやってください。それがファンダメンタルズ投資につながるから。
僕が『週刊プレイボーイ』に4年ぐらい連載していた『街歩き投資ラボ』っていう、街歩きとか日常の出来事から銘柄を探っていくっていう、考察を常にしているコラムがあるんですが、どうやったらいいのかわからないという人はそのあたりから、立ち読みでもいいので見ていただけたらなと思います。
荒井:ありがとうございます。それでは、本日はこちらで締めたいと思います。あらためまして、本日のゲストは、元ファンドマネージャー、元ディーラーで株式評論家としてもご活躍されている坂本慎太郎さんでした。ありがとうございました。
坂本:ありがとうございました。
エンディング
荒井:今回は“Bコミ”こと坂本慎太郎さんをゲストにお招きし、投資家として必要なエッセンスをうかがいました。みなさま、いかがでしたでしょうか? 本放送については書き起こし記事も公開されますので、気になる方はログミーFinanceのWebサイトをぜひご覧ください。
なお、書き起こし記事内では、次の放送テーマや出演者のリクエスト募集も行う予定です。「こんなテーマを聞いてみたい」「この人に出演してほしい」など、ご希望がありましたらぜひご意見をいただければと思います。
それでは今回は以上になります。また、次回の放送でお会いしましょう。さようなら。