当社ミッション

原田典子氏(以下、原田):みなさま、こんにちは。AI CROSS株式会社代表取締役の原田です。本日は私から、当社の事業および2024年12月期第2四半期の決算についてお話しします。

まず、当社のミッションは「Smart Work, Smart Life」と掲げています。私はアメリカで出産、子育てをして日本に帰ってきた際、アメリカと日本の商習慣の違い、あるいはカルチャーやテクノロジーの違いによって、子育てが非常にしづらい状況を体験しています。

日本は、これからどんどん人口が減るという課題に直面している中でもあります。私のように、子どもを持つ働く女性やさまざまな方が働きやすい環境を、テクノロジーを駆使して作っていくことに貢献していきたいと思ったことが原点となっています。

現在は、人口が減っていく中でも企業が生産性を保つために必要な業務効率の向上の実現を目指し、事業を行っています。

私のアメリカの生活の中では、ショートメッセージやチャットボット、Webチャット、Web会議などを駆使することで、子どもが小さく、家にいてもどこにいても働ける環境が整っていました。

その中でも、特にショートメッセージを使って必要な情報が送られてきた経験をもとに、コミュニケーションの自動化を事業として立ち上げた会社です。

事業に込めた想い

原田:日本では、ショートメッセージの活用はほぼありませんでした。それはカルチャーの違いもありましたし、当時、日本ではショートメッセージよりも先に「LINE」などが広がっているタイミングでした。

電話番号さえあれば情報が簡単に取れるショートメッセージがメールや電話の代わりに使われるのではないかと考え、日本でこの市場を作ってきたことが、メイン事業であるメッセージング事業のスタートになります。

事業

原田:現在は、メッセージングサービス「絶対リーチ!SMS」と、AIサービス「Deep Predictor」の2事業を推進しています。

「絶対リーチ!SMS」は、BtoC企業とユーザーをつなぐコミュニケーション、販売促進のプロモーションなどに使用されるメッセージングサービスです。

コールセンターでお電話している、メールマガジンを送信している、紙のダイレクトメールを送っているところが多くありますが、これらに加え、チャットボットによる自動化やショートメッセージを使用することで、より多くのユーザーに反応してもらえるようになり、コンバージョンを上げることができます。

AI事業に関しては、2018年から研究開発としてさまざまなことを行ってきました。特に、当時は自分たちのチャットやショートメッセージをデータ解析することでもっと効率を上げられないだろうかということで、メッセージングに対してAIを活用してきました。

また、メッセージング事業の他に第2の柱を立ち上げたいという思いから、昨年リリースした「Deep Predictor」というサービスが、現在はAI事業の主軸となっています。

「Deep Predictor」は、需要予測のプラットフォームです。最近はAIブームということもあり、大手企業のみならず、地方にある街のお店や中小企業を含め、すべてのところでデータがたまっている一方で、人の数は減っています。

店舗の来月の売上見込みや新店舗の出店先を決める際、これまで人の経験と勘に頼ることが多かったところを、人の手を借りることなく、データやAIを活用して適正な売上予測と仕入れの最適化を行うことができるようになります。

これまでの需要予測は、データサイエンティストのようにAIの専門知識を持った人がいなければ成り立ちませんでした。ところが、今当社のお客様は6,600社を超えますが、この中でお客さまの声を聞いたところ、社内に優秀なデータサイエンティストを抱えている企業はほとんどいらっしゃらないのが現状です。

「それでもデータ活用したいからなんとかできませんか?」というご相談を受けていくうちに、データサイエンティストがいなくてもデータがあれば予測できるプラットフォームを私たちが開発し、提供することで、さらにDXを推進して業務効率を上げられるのではないかと思い、立ち上げたサービスになります。

kenmo氏(以下、kenmo):御社は「絶対リーチ!SMS」が祖業かと思います。先ほどご説明いただいたかとは思いますが、「Deep Predictor」が事業として立ち上がった経緯は、2018年からAIについて研究開発されている中から「事業化できそうだ」ということで出てきたという理解でよいですか?

原田:おっしゃるとおりです。私たちの強みは6,600社超の顧客基盤であり、お客さまの数は年々増えています。その多種多様な業界や規模のお客さまの需要をベースに新たなサービスを出し、トライアルして、本当にその市場があるかどうかをすぐに判断できるところも強みの1つになっています。

さまざまなAIを提供してお客さまの声を聞いていくうちに、それぞれの課題に対応できるプラットフォームを出せばもっと多くの企業のDXを推進できると考えたことがきっかけです。

メッセージングサービスのビジネスモデル

原田:メッセージングサービスのビジネスモデルについてご説明します。

直販モデルと販売代理店経由のサービス提供型モデルがあります。直販モデルはBtoC企業に直接サービスを提供し、代理店経由では代理店からBtoC企業に提供します。

ビジネスモデルについては後ほどご説明しますが、BtoC企業の主な収益源として1つ大きいのが、従量課金モデルであるところです。Bの企業がCのユーザーにSMSを何通送ったかという配信数と、1通あたりの単価を掛けた売上高になっています。

また、回線は携帯キャリアのものを使い、回線使用料を携帯キャリアに支払います。このようなビジネスモデルが主要なものとなっています。

kenmo:直販モデルと販売代理店経由の比率はどのくらいでしょうか?

原田:売上ベースは開示していませんが、配信数ベースでは2対8ほどの割合となっています。

kenmo:スライド右側のエンドユーザーには、さまざまな利用シーンやニーズがあります。直近で増えてきているニーズやシーンがあれば教えてください。

原田:先ほどお話ししたように、コミュニケーションのDXではコールセンターにおける電話やメールの置き換えが多いです。それらを自動化し、データをためたいというニーズがあります。

コールセンターの一部業務をショートメッセージとチャットボットに置き換えることで人の手をかけなくても済むようにすると同時に、データをためることができるようにします。このコールセンターのニーズは、業界を問わず大きく増えています。

また、EC業者では、ユーザーとのやり取りを販促として使えないかというニーズがあります。最近ではCookieの問題などがあり、広告業界も大きく変化する中で、ショートメッセージの活用が広告にとても効果的だということがあり、試してみたいというニーズも増えてきています。

国内SMS市場の配信数の中期予測

原田:冒頭で、日本にはSMS市場がないとお話ししました。

ない市場において、私たちがキャリアとサービスを作り上げ、毎年30パーセント以上成長してきました。今後数年も、配信数ベースで30パーセント程度は引き続き成長していくと見込まれている市場です。

競争力・強みの源泉

原田:その中での私たちの競争力・強みは、先ほどもお話ししましたが、1つは顧客基盤です。直近では6,600社を超える顧客基盤となり、多種多様で規模も異なっています。

業界も規模も越えてということなるため、私たちが顧客の要望を聞いてさらに新しいソリューションを開発する際、トライアルしていただけるベースがあります。

また、私たちは通信事業のインフラ、ネットワークのエンジニア、SMS以外にも、チャットボットや新規事業を研究開発してきたため、Webエンジニアもデータサイエンティストもいます。

AIを提供すれば、AIのコンサルもできるということで、幅広い人材がいることによるソリューション力も強みになります。お客さまから聞いた要望を自社ですぐに開発し、提供し、試してから市場に出せます。この2つが大きな強みとなり、他社との差別化ができています。

多様な顧客基盤

kenmo:6,600社の顧客基盤と言うと、大企業も非常にたくさんいらっしゃいますが、これまでどのようなかたちで顧客企業を開拓してきたのでしょうか?

原田:まだSMSが認知されていない時は、さまざまなイベントや展示会に出展したり、Webで広告を出したりして広げてきました。現在はSMSやチャットボットが一定程度認知され始めているため、Webからの問い合わせのインバウンドやセミナーでのお問い合わせがあります。

実は、SMSの利用用途はまだ広がってきています。例えば本人認証パスワードが飛んでくるという使い方をしたお客さまから、「別のところでも使えるのではないか」と他部署を紹介していただいたりします。

さらに、セミナーのお客さまに対して連絡を取る手段やフォローアップとして実際に送ると、ユーザーさんが「これはうちでもやりたい」となるなど、既存顧客からの紹介もあります。

私たちは、用途が業界にしっかりはまっているものをアウトバウンドします。このようなインバウンド、アウトバウンド、顧客紹介が、現在の主な拡大ルートです。

kenmo:競合他社にはどのような企業があり、その中で御社のシェアはどのくらいでしょうか?

原田:SMSで言うと、NTT系の企業や上場企業が当社の他に2社あります。私たちのシェアは、通数ベースおよび売上ベースで15パーセントから20パーセント程度となっています。

kenmo:その中で、御社の差別化ポイントや競争優位性についてもお聞かせいただけますか?

原田:SMS専任ではなくAIも行っているため、データ分析をいち早くスタートさせたところが1つの強みになります。

データを使ってより効果的に送らなければ、単価が落ちていきます。お客さまの本当の要望は、何かを送ることよりも、「ユーザーに応えてほしい」ということです。早く応えていただくと、何度も電話したりSMSを送ったりする必要がなくなり、業務効率の向上にもつながります。

データを活用してより付加価値の高いものを提供することで単価を上げられる、AIやさまざまなソリューションを提供できるところが、他社との大きな差別化になっています。

kenmo:今のご解説の中で、リアルタイムでいただいているご質問と重なる部分があったため読み上げます。

「メッセージングサービスやデータ分析のシステムによって、返金滞納者の返金率が上昇する効果は実際に出るのでしょうか? それとも、単に通知するだけの機能なのでしょうか?」というご質問です。

原田:督促に対してということでしょうか?

kenmo:そのとおりです。

原田:返金率はだいたい上がってきています。これまでの督促のソリューションは、何度もメールや電話をするものでした。最終的には弁護士から督促レターが送られていましたが、多くのお客さまは払い忘れていました。

「手違いでたまたま銀行に残高がなかった」という例も一定ありますが、そこに関しては、SMSでリマインドすることによって電話をしなくても忘れずに支払われることがあります。

そのあとは、電話がいいのか、最初から督促状を送ったほうがいいのかといった、チャネルの分析も併せて行っています。それによって、返金率が上がるケースはかなりあります。

FY2024.2Q業績ハイライト(2024年4月1日~6月3日)

原田:第2四半期の業績ハイライトについてご説明します。

業績売上高、各段階利益は、スライドに記載のとおり順調に推移しています。第2四半期までの累積、特に営業利益と経常利益は、上場来最高の数値で着地しています。

売上高(四半期毎推移)

原田:売上高の四半期ごとの推移です。グラフの青色は国内の売上、緑色は海外の売上です。この国内と海外が何なのかをご説明します。

Webサイトで新たに会員登録すると「本当にその人なのか」と、携帯電話の番号にSMSのパスワードが飛んでくる場面が増えてきています。これは「本人認証」と呼ばれる仕組みです。詐欺を防ぐセキュリティ効果が高く、これによりSMSを使う場面が増えてきています。

こちらは、外資の利用が多くなっています。GAFAのように大きな会員を持っている会社やサイトが大量にSMSを配信することで、SMSの利用量が増えてきました。

私たちは海外と国内のお客さまを分け、長年見てきています。海外の特徴については、私たちは販売代理店を経由しているため、SMSを大量に送ってもクロスセルしづらい点があります。また、大量のSMSを送るため、ボリュームディスカウントが利き、単価が下がってきます。

配信量が一気に増えた結果、単価が下がってきたため、2023年ごろからはより単価を上げられる国内のお客さまを開拓しようと取り組んできました。

その結果、海外は減ってきているものの、国内全体の売上高は一気に伸びました。2023年第4四半期を底に、現在は反転しています。

kenmo:スライドでは海外が減っているように見えますが、戦略的に海外を減らして国内を伸ばしているという理解でよいでしょうか?

原田:おっしゃるとおりです。

kenmo:今後も海外を減らし、国内を伸ばしていくのですか?

原田:海外を減らすというより、単価のディスカウントをミニマムにして、それでも利用していただけるお客さまのみに提供しています。

無理にお客さまを獲得しにいかず、完全に国内のリソースにしています。国内での新たな用途開拓、ソリューション、クロスセルに力を入れている状況です。

営業利益(四半期毎推移)

原田:営業利益も、四半期ごとに出っ込み引っ込みがあります。しかしながら先ほどお話ししたとおり、2023年から国内にシフトしたため、利益率は改善しています。

経常利益(四半期毎推移)

原田:経常利益も同様です。

四半期純利益(四半期毎推移)

原田:純利益の推移も同様ですが、CVCの関係で、AIX Tech Venturesという子会社の特損が時々発生します。その特損による出っ込み引っ込みがある状況です。

kenmo:先ほどのお話と関連しますが、利益が上がっている主な要因はコスト削減ではなく、国内が伸びているという理解でよいですか?

原田:おっしゃるとおりです。私たちは、海外および国内の戦略に応じて広告費の見直しを行っています。「人に対して投資したほうがいい」など、その都度コストの見直しも費用対効果をみながら行っています。ただ、主な要因は粗利が改善したことです。

(参考)前年同連結累計期間比

原田:スライドは、参考までにご覧ください。

四半期毎販売費および一般管理費推移(四半期毎推移)

原田:販売費および一般管理費は、人件費、広告宣伝費、研究開発費、その他販管費と、大きく4つあります。

人件費は、年初に予定していた採用が順調に推移しています。研究開発費は、この四半期に新たなプロジェクトのプラットフォームに対して投資を行ったことにより、約2,000万円増加しました。その他販管費は、通常の推移とお考えください。

kenmo:スライドのグラフを見ると、広告宣伝費の割合が非常に低い点が御社の特徴だと思います。なぜ御社は広告宣伝費を抑えられるのでしょうか?

原田:広告宣伝費は主にWebやセミナーに利用しますが、一番効果的なところを見ていく中で、WebはSEOを中心に投資しています。

私たちはDXを得意としており、社内でDXチームを立ち上げ、そこがうまくいっています。社内の業務改善もできつつあり、人に頼らなくてもよい仕組みができています。広告宣伝費は必要なところだけに投資し、社内をDX化することで、営業チームを効率的に回せるようになりました。

FY2024業績予想進捗

原田:業績予想の進捗です。事業の利益がしっかり出ているため、かなり良い状況で進捗しています。

KPIサマリー(四半期状況)

原田:KPIのサマリーです。メッセージング事業の取引社数、配信数、1社あたりのARPU(顧客平均売上高)を開示しています。

メッセージングサービス取引社数

原田:四半期ごとの推移です。取引社数は、主に販売代理店経由で伸び続けている状況です。

新しい業界・用途を開拓する際、直販でお客さまのニーズにきちんと合っているかを見ていきます。そちらが業務にパッケージ化できれば、その業界に強い代理店に横展開し、広げていきます。そのほうが代理店経由の取引社数が伸びることから、継続して伸長している状況です。

SMS配信数

原田:SMS配信数も、売上高の推移と近いです。海外は大量に配信する特徴がありますが、2022年第3四半期をピークに、全体の配信数が減少しました。

しかし国内の開拓が進み、2023年第4四半期から反転している状況です。配信数も売上も、ここから一気に国内が伸びていくフェーズに入っています。

メッセージングサービスARPU(顧客平均売上高)

原田:ARPUは売上高で見ています。海外では大きな顧客が数社あり、そこに売上高が少し引っ張られています。

しかし、国内のお客さま一社ずつがクロスセルできている状況であることから、国内を中心にここから反転させていく状況です。

メッセージングサービス:今後の戦略

原田:今後のメッセージングサービスの戦略です。

SMSもAIもこれからの市場であり、浸透率は約10パーセントと、ニッチな企業にしか使われていないサービスです。したがって、業界、用途、新たなソリューションといったところで、国内に注力していくことが基本方針です。

また、私たちは現在、金融業界でしっかりシェアを取っていく戦略です。そのきっかけは、さまざまな証券会社や保険会社が、督促などの大事な連絡を紙のようなもので送っていたことにあります。そちらを自動化し、データ分析することで金融業界のニーズや課題を把握してソリューションを提供します。

また、人材業界はコロナ禍後、人が足りない状況です。派遣会社や人材紹介会社の課題やニーズは大きく変わってきています。

私たちはそれらを着実にキャッチし、メッセージングのソリューションやデータ分析を提供していきます。そういった業界の知見が溜まってきていることから、お客さまをしっかりグリップし、シェアを取っていく戦略です。

スライド右側に「提供価値の進化」とありますが、私たちはSMSにデータ分析やソリューションを組み合わせています。

これまでのSMSは、「本人認証のツールだよね」「督促のツールだよね」など、ピンポイントで使われるお客さまが非常に多いものでした。しかし、例えばECのお客さまが本人認証で使って電話番号を入手すると、その後のフォローアップではSMSが効果的です。

最初は顧客グリップの部分だけでしたが、フォローアップやその後のプロモーションなど、お客さまとの接点においてSMSや私たちのツールを使っていただくことが増えています。それに伴って私たちもお客さまのデータが増えていくため、新たなソリューションの価値を提供できます。

現在、SMSは本人認証ツールではなく、CXツールとしても認知されつつあります。したがって、ここからARPUを向上させてクロスセルすることによって単価も上げていくことが、私たちの取っている戦略です。

kenmo:スライドに「CXツール」とあります。今後はこちらも、スライド中央の丸で囲われている金融や人材関連サービスの業界で伸ばしていけるとお考えなのでしょうか?

原田:ここは、現在強い業界ということです。今は金融と人材関連サービスが強いのですが、ECや各業界のコールセンターも増えています。不動産もありますが、特に強みを持っているのがこの2つの業界です。

kenmo:今後、伸ばしていきたい業界としては何かありますか?

原田:人材業界は引き続きありますし、不動産業界とEC系もかなりあります。

メッセージングサービス:レベニューモデルの進化

原田:私たちの収益の多くは、スライド左下に記載のとおり、従量課金型モデルでした。こちらは「配信数×単価」に応じて課金していくモデルで、月額固定ではないため、お客さまにとってリスクが非常に低いです。

つまり、新規のお客さまを獲得する際、導入のハードルが低くなっています。また、導入の検討時間も短いことから、私たちにも一定のメリットがあります。

そちらに併せて収益を安定化させるところで、現在は月額定額でのプラットフォーム利用があります。

また、成功報酬型モデル「統合型ソリューションサービス」は、最近リリースした「リピカム」というサービスです。

例えば人材業界では、人材を派遣する際、新しい候補者の獲得は人手不足によって難しくなっています。そのため、これまで連絡をとったことのある人材の掘り起こしツールとして、私たちの「リピカム」というソリューションを使っていただきます。

人材業界では、「派遣会社が1人獲得できたら何円」といった成功報酬モデルも増えてきています。このようなレベニューモデルを、従量課金型モデルから増やすことによって、収益や粗利を上げていきます。高収益を狙い、安定させていくことを考えています。

AIサービスの取り組み

原田:AIサービスの取り組みです。現在は、需要予測の「Deep Predictor」をベースに精度検証を行っています。

各業界のお客さまがさまざまなデータを持っていますが、ホテル業界などにわかりやすい事例があります。ダイナミックプライシングといって、お盆や年末などホテルの需要が高い時には、客室の値段を上げることで一番高く売上が出るようにコントロールします。

今までは人の手で行うことが多かったのですが、私たちのサービスではデータをもとに需要予測をすることで、人の手が入らなくても、より高収益になる価格設定が可能になります。

過去のデータをもとに「Deep Predictor」を使ってAIモデルを作り、それを使っていただきながら精度検証を行っています。

このように、各業界でいろいろな検証を行うことによって、データサイエンティストが入らなくても自動的にAIを活用できるサービスを開発し、出来上がったものを横展開しているフェーズです。

kenmo:今後はAIサービスが第2の柱になっていくと思いますが、一番気になるのは顧客獲得手段かと思います。「絶対リーチ!SMS」を導入している顧客企業にクロスセルしていく戦略なのでしょうか? 

原田:そうですね。現在は営業が定期的にフォローアップしていますので、ニーズがあれば、「実はAIによる需要予測もやっていますよ」とクロスセルしています。ターゲットは、小売、卸、製造などの業界です。

また、新規でセミナーを実施し、メッセージングサービスと同じくインバウンドで顧客を獲得することもありますし、SEOでWebから問い合わせをいただくこともあります。2年ほど前からの生成AIブームとともに、問い合わせ数も非常に増えている状況です。

kenmo:将来的に、このAIサービスではどの程度の売上規模を目指しているのでしょうか?

原田:具体的な数字は出していませんが、メッセージング事業と並ぶぐらいの第2の柱に育てていきたいと考えています。

AI関連の取り組みの一例

原田:最近リリースした、不動産業界で「Deep Predictor」を活用したDX事例です。

不動産業界の方たちは、賃貸マンションの新規顧客を獲得するにあたって、過去に集めた電話番号や新たな顧客リストに電話をかけていくことが多いです。これは非常に非効率的で、応答してもらえる率は7パーセント程度です。

この課題に対し、ユーザーのどの要素が応答率に関連しているのかをAI分析を行いました。年収や地域、性別、年代などの要素を検証した結果、応答率が約30パーセントまで上がり、これを不動産業界でさらに横展開できるよう取り組んでいます。

エリア拡大

こちらはSDGsにも関連しますが、人口減少の課題があります。特にデータサイエンティストなどのAI人材が不足しており、地方では非常に深刻な問題になっています。地方の若い方が東京都や大都市に流出している中で、どのようにDXを推進するのかと考えた結果、私たちは「産官学金」連携で地方DXに取り組んでいます。

具体的には、私たちが自治体から支援をいただき、包括連携協定を結んだ大学で情報系を学んだ優秀な学生のインターンシップを受け入れます。そして学生と当社のデータサイエンティストが、地元企業のDXプロジェクトに一緒に入っていくという流れです。

学生の方はベースとなる知識があるため、実際の案件を経験することで知見がたまっていきます。案件を通じて学生がその企業に興味を持ち、そのまま採用されることもあるかと思います。

私たちとしては、「Deep Predictor」のプラットフォームを自治体に利用いただき、支援していただきながら連携するというパッケージを作っているところです。これが出来上がれば、地方銀行などを販売代理店のようにして展開できるよう、現在は北九州市を中心に取り組んでいます。

私からの説明は以上です。

質疑応答:株主優待の判断について

kenmo:株主優待について質問です。今回は配当ではなく、QUOカード年間3万円分という選択をされました。取締役会等でも賛否両論があったのではないかと推測しますが、この意思決定に至ったプロセスを教えてください。

また、直近の株主数や、この配当は今後も持続可能なのかについてもお聞かせいただければと思います。

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