業績ハイライト

引屋敷智氏:みなさま、こんにちは。代表取締役社長の引屋敷です。本日は決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。それでは、2024年2月期の決算説明を行います。

まず、業績ハイライトです。売上高は前年比7.8パーセント増、約3億5,000万円増の約48億円となりました。要因として、2023年10月から始まったインボイス制度への対応がERPの需要をさらに大きくし、受注が好調に推移しました。

また、インボイス制度に関するカスタマイズの利益率がかなりよく、全体的に収益を押し上げた格好となっています。売上総利益も前年比で1億円弱増加しました。

一方で、営業利益は前年比19.3パーセント減、約8,000万円減となりました。要因として、E-Commerce事業の利益率の低下に加え、現在進行中の大規模な研究開発の費用増が挙げられます。

人員の採用は東京地区、大阪、福岡の3拠点で積極的に行うとともに、ベトナムの拠点も開設していますが、前期、今期と日本国内での採用を積極的に行っており、その分、教育費などの販管費が増加しました。

社員数は2023年末と比較すると17名減少しています。2023年12月にEC事業を分割し合弁会社に移籍した関係でこのような数字になっていますが、その特殊要因を除くと実質的には15名増員と計画どおりです。

稼働率についてです。私どもの業界は受注量に基づきエンジニアが稼働しますが、いわゆるプロフィットの事業、プロジェクトに関わるエンジニアの稼働率をKPIに設定し、当社では約60パーセントを適正な稼働率としています。

それ以外では、社内のイベントや事務作業などで約40パーセントと共通で稼動するため、概ね適正な基準を維持しています。

全体的にはERP事業が好調で、稼働率が非常に高くなりましたが、EC事業に加え、まだ規模が小さいAI事業において業務量が足りず、稼働率は60パーセントをキープするかたちとなりました。

当社のMVV

事業概要です。当社について簡単にご紹介します。当社では、お客さまの要望どおりにプロダクトを作るのではなく、基本的には私どもが作ったソフトウェアプロダクトを使っていただいたり、お客さまのニーズに合わせてプロダクトを少し手直しして使っていただいたりすることをミッションとしています。

自社パッケージを作り、それを提供していくことが私どもの事業の柱となっています。

各事業概要

各事業概要についてご説明します。ソリューション事業では、お客さまの要望に合わせて作り直す、あるいは機能をアドオンしてパッケージを提供しています。前期はE-Commerce事業、ERP事業、AI事業の3つをソリューション事業として区分していました。

クラウド・SaaS事業では、インターネット上に当社の製品を置いて、それをお客さまに使っていただきます。基本的にはお客さまの要望に基づいた個別対応はせず、サービスとしてご提供するものです。

データベースの開発ツール「SI Object Browser」、プロジェクトの進捗や採算を管理する「OBPM Neo」をサービスとして提供しています。

もう1つ、形態としてはSaaS事業に含まれますが、新規事業としてプログラミングのスキル、エンジニアのスキルを判定する「TOPSIC」と、新規事業や業務改善のアイデアを社内で出し合い、それを比較評価する「IDEA GARDEN」を提供していました。

当社のビジネスユニット

当社のビジネスユニットとして、事業をソリューション型とサービス提供型(SaaSモデル)の2つに大きく分けています。それぞれの特徴についてご説明します。

ソリューション型はお客さまの要望を聞いて、その業務特性を加えて手直しし、パッケージ製品を提供します。そのため、大型の案件となると1件当たり10億円近くの商談となり、プロジェクトチームを組成して製品をお客さまにご利用いただくまで、平均で約2年がかかります。

ソリューション型の3事業については幅広い知識が必要です。業務、製品、インフラ、ネットワークなど、さまざまな知識を兼ね備えてお客さまに対応しなければならないため、エンジニア一人ひとりの育成・教育が大変で、時間がかかります。

サービス提供型(SaaSモデル)は、基本的に私どもが作った製品に対して、お客さまの業務を合わせて使っていただくというサービス形態をとっています。そのため1年や2年もかかるプロジェクトではなく、1ヶ月、2ヶ月で自社に導入でき、使っていただけます。どちらかというと規模が小さいため、より多くのお客さまにご利用いただき収益を上げていくビジネスモデルです。

2024年2月期 決算 (損益計算書)

2024年2月期の決算について、もう少し細かくご説明します。P/Lです。売上高は前年比7.8パーセント増、約3億5,000万円増と伸びています。

ただし、売上増にあわせて売上総利益率を上げることができませんでした。E-Commerce事業、その他AI事業での売上総利益率の低下があり、残念ながら全体の売上総利益率は低下しました。

さらに積極的な採用、大規模な研究開発投資の結果、販管費が増え、営業利益は前年比で8,000万円ほど下回りました。

一方で、2023年12月にE-Commerce事業を分割譲渡し、デジタルガレージ社の子会社と合弁会社を設立しました。その結果、譲渡益が計上され、当期純利益は大幅に増加しています。

2024年2月期 決算 (貸借対照表)

B/Sです。資産、負債に特に大きな変動はありませんが、先ほどお伝えした分割譲渡により、現金及び預金が大きく増加し、それに伴い利益剰余金が増加しています。

セグメント別実績

セグメント別実績です。E-commerce事業は2023年12月に事業分割しましたので、10ヶ月の成績となりますが、順調にそのまま12ヶ月とした場合にも、前年比でやや減少しています。

ERP事業は、前年比で大幅に増加しています。インボイス対応の影響もありますが、ERP業界は相変わらず需要が堅調で、引き合いも増えており、受注残が多く積み上がっています。

AI事業です。2023年2月期の売上高は6,700万円と順調でしたが、2024年2月期は製造業のみなさまが投資を中断するケースが続き、2024年3月から始まる2025年2月期にキャリーオーバーする案件が増加しました。そのような関係もあり、売上が小さくなり、事業利益も大幅な赤字となりました。

Object Browser事業では、開発ツールとプロジェクト管理を行っています。現在、IT業界は需要が旺盛で、他社を含め堅調です。売上高・事業利益ともに増加しています。

インキュベーション事業では、「TOPSIC」と「IDEA GARDEN」に取り組んでおり、この4年から5年でさまざまなものを作って売り出してきました。

AI事業もまだ黒字化していませんが、新規事業は赤字の事業が多いため、一昨年は2つの事業を撤退し、前期はアイデア創出サービスの「IDEA GARDEN」の撤退を決定しました。

収益に悪影響を与える損失を出している事業を撤退するということで、撤退の影響により売上高は減少したものの、事業利益は若干ですが損失を縮小させることができました。

若手IT人財の採用と育成状況

重要指標であるKPIについてです。ソリューション事業では、ERPの比率が非常に高くなっています。スライドには新規採用数と新入社員率の推移を記載していますが、ERP事業では積極的に採用し、人数を増やしています。

冒頭にお伝えしたとおり、ERP事業は、業界、業務、製品、ITなど非常に多くの知識が必要で、かつ、お客さまと対峙する場面では、その業界あるいは業務に関しての深い知識も必要になってきます。

エンジニアが一人前になるには概ね3年から4年がかかりますが、戦力化した後に生み出せる成果についても、KPIとして見ています。2024年2月期現在、新卒採用3年以内、キャリア採用2年以内の一人前になる前段階の社員の比率が40パーセント程度に達しています。

この社員を早期に戦力化する仕組み作りをするということで、2020年度あたりから人数を増やしてきましたが、その方々が戦力となり、成果をもたらしてくれています。結果として、スライド右端のグラフに記載のとおり、1人当たり付加価値が少しずつ上がってきています。

当社では内部社員の他、パートナー、ベトナムの子会社を含めた戦力を活用して、なるべく多くの案件をこなしていくことがERP事業の課題です。

ストックビジネスの現況

SaaS事業に関しては、お客さまに長く使っていただくことと、いかにお客さまの数を増やすかということで、新規のお客さまを獲得するとともに、既存のお客さまをなるべく離脱させないようにする必要があります。

「OBPM」「TOPSIC」のチャーンレート(解約率)は、ともに業界平均と比べてもかなり低い水準で推移しています。

「OBPM」は、MRR(月次経常収益)をさらに増やしていく必要があり、こちらも順調に増えています。

「TOPSIC」は、まだ市場には浸透していません。競合他社を見ても、日本企業がプログラミングのスキルを自社内で判定し、エンジニアの評価につなげる、あるいは教育につなげていく文化ができていません。そのため、啓蒙活動を行いつつ顧客数を増やしていくことが重要な施策となります。

事業ドメインの集中と変革

経営戦略です。2024年2月期の結果の反省も踏まえて、2024年、2025年の2年間の経営戦略についてご説明します。

私どもは「パッケージを生み出す」というミッションのもと、さまざまな分野のパッケージを作ってきました。パッケージを作ると、人のリソースが必要になります。営業であれば営業担当を採用しなければいけませんし、マーケティングにも新たなコストと人員を割かなければいけなくなります。

当社の現状の規模で、多くの分野、あるいはまったく異なる分野に進出するのは、非常に非効率だと考え、赤字事業については将来性に鑑み、前期から撤退しています。

今後は、私どもの強みに特化していこうと考えています。1つ目は企業向け業務システムです。当社は、ERPのようなエンタープライズでの業務改善や業務改革のシステム作りを強みとしてきましたので、企業向け業務システムを当社のコアビジネス領域とします。

2つ目は開発支援ツールです。IT業界では開発が業務となりますが、「Object Browser」、あるいは業務システム開発においては、ノーコード・ローコード等のコーディングレス開発ツールを自社で開発しています。このように業務システムだけではなく、日々の業務に必要なツールも、当社のコアビジネスになっていくと考えています。

3つ目はAIです。現在は、画像認識、外観検査しか行っていませんが、生成AIをどのようにして業務に組み込んでいくかということで、こちらを今後の重点的な強化領域とします。

今後はこの3つの領域に特化し、他社との差別化を図るため積極的な投資を行っていきます。

真の「システムインテグレーション」に変革

私どもは業務領域として、企業内の業務システムを構築する領域に非常に強く、社名にも「システムインテグレータ」がついています。

現在はアプリケーション領域として生産管理や販売管理、会計、データ管理、物流などを強みにしていますが、今後は、現在の業務領域から少しずつ広げて、コンサルテーションやインフラ、アーキテクチャなどに拡大していきたいと思います。

人的資本経営と価値提供型人材の育成

「人」は私どもの宝であり、財産ですので、人的資本経営を行わざるをえません。人材育成では、非常に時間のかかる参入障壁の高い方々を教育しなければいけませんので、今後も積極的にいろいろな方法を使い、なるべく早く戦力化できるよう育成していきます。

国籍や性別に関しては、女性が働きやすい環境作りに加え、ベトナム拠点を開設しましたが、ベトナム人に本社や福岡、大阪で積極的に働いていただき、その後ベトナムで活躍していただくというように、多様性を尊重した働き方を根づかせていきます。

働き方に関しては、やりがいだけでなく働きやすさを常に追求しながら、従業員が働きやすく、楽しく働ける環境を整えていきます。

また、当社では「相互尊重」という言葉を大事にしています。相互尊重し、自分が育っていける環境があるか、常に社員からフィードバックをもらいながら、年間を通して満足度を高めていけるような施策を実施していきます。

2024年2月期、注力した4つの課題とその成果

2年経営計画についてご説明します。スライドには、前期に挙げていた課題を記載しています。私どもは売上高が50億円にまだ満たない会社ながらも、平均で2億円から3億円のECやERP、プロジェクト管理などの基幹システムをプライムベンダーとして手掛けている非常に珍しい会社です。このような会社はあまり世の中にありません。

そのような強みを活かしつつ、さらなる強みを目指して、新しいお客さまをさらに増やさなければいけません。そのために、新規顧客開拓力の強化に加え、営業もそうですが、開発が良いシステムをお客さまに提供できるよう努めてきました。こちらについては、組織的な取り組みをもとに、ある程度評価できる仕組みができたと考えています。

開発エンジニアの確保と早期戦力化についてです。早期戦力化はまだできることはたくさんあるものの、ようやく前期あたりから、4年前くらいに採用した方が徐々に戦力化してきており、1人あたりの付加価値が上がってきている状況です。

インキュベーション事業の収益化については、AIも含めてまだ足りない部分があります。市場性の評価もそうですが、さらに私どもの製品、サービスを認知していただくところから強化していかなければいけないと感じています。

新規主力事業の創出については、先ほど注力していくとお伝えした業務系、かつツールを使ってAIに取り込むといったキーワードをもとに、大型の研究開発投資を進めています。

また、当社ではこのようなコアの領域に集中するということで、EC事業を分割譲渡しました。資金も手元にあるため、このような事業に共感していただきシナジーを生むような会社とは、手段を選ばず連携していきたいと思っています。

2年経営計画 2032年に向けた長期ビジョン(将来像)

昨年度には、2032年に向けた10年計画を作りました。売上高は2028年に71億円、2033年に120億円を達成すべく、新規ビジネスを創出していきます。それを拡大していくのが私どもの重要なミッションであり、これができるかできないかによって、今後の計画に大きく影響してくると思っています。

その第1弾として、今期からSAPのパブリッククラウド上で動く「SAP S/4HANA Cloud Public Edition」ビジネスを開始しました。従来、ERP(GRANDIT)で20年近く培ってきた知識を活かし、3年後には売上高5億円を目指しています。

2年経営計画 2025年に目指す姿

マイルストーンとなる、2年後の2025年に目指す姿についてご説明します。スライド2段目に記載のとおり、システムインテグレータという社名のもと、トップレベルのシステムコーディネーターとして、お客さまのことを第一に考え、業務課題を解決していく会社、真のシステムインテグレータとして生まれ変わろうというものです。

そのため、ビジネスモデルにきちんと集中し、新規事業の創出に特化していきます。そして継続的に、1パーセントの利益率、1パーセントのコスト改善を日々積み重ね、まずは営業利益率10パーセントを取り戻そうという目標を掲げています。

これを実現し、あわせて持続的な成長とガバナンスの強化を両立して、株主のみなさまの価値を最大化していこうと考えています。

2年経営計画 業績予想

業績予想です。2年後の2026年2月期の売上高は50億円、営業利益は3億3,600万円としています。こちらは現時点の計画ですが、改善を図り、新規事業を生み出すことで営業利益率10パーセントを目指していきます。

セグメント別業績予想

セグメント別の業績予想です。ERP事業は、引き続き好調に推移すると予想しています。今期も受注残が積み上がっており、工期が概ね2年のため、今から始めたものは来年度まで受注残が積み上がっていくかたちです。

Object Browser事業も受注が好調です。こちらはストック型のため、積み上がっていきます。それ以外のAI事業やインキュベーション事業に関しては、事業利益はまだ若干の赤字ですが、認知度向上とともに早期にお客さまを獲得し、黒字化できるよう努力していきます。

2025年に向けた基本方針

2025年に向けた具体的な方針です。収益構造については、継続的に1パーセントの改善を図っていきます。また昨今は、どの会社も賃金レベルを上げています。私どもは今期から新人事制度を設定し、運用を開始しました。今期は概ね7パーセントの賃上げをしました。本年度は、評価制度、報酬制度とともに安定した運用に移行していきます。

加えて、人材の育成を早期に仕上げていかなければいけないと考えています。さらに大型の投資による事業の成長を図っていきます。そのためにも多くの人材を育て、優秀な人材を採用して強い組織にしていきます。

最終的にはTSR(株価上昇+配当金)向上を目指し、株主のみなさまに向けてトータルの利益還元を増やしていきたいと考えています。

株主還元

株主還元についてご説明します。基本的に、私どもは配当性向30パーセントを掲げていますが、今後はさらに利益体質にし、配当性向もより高く設定できるような収益基盤を構築していきたいと思います。引き続き、株主優待も行っていきます。

SDGsの取り組み

SDGsの取り組みです。こちらも引き続き、地域に根ざした活動を行っています。埼玉県のために使われる「埼玉ESG債」や、埼玉県内の「子ども食堂ポータル」を作成支援する活動、あるいはさいたま市内の中学校の就業体験など、今後も継続して取り組んでいきたいと考えています。

以上で、私からのご説明を終了します。