アジェンダ
石田裕樹氏:みなさま、こんばんは。YCPホールディングス(グローバル)リミテッド 取締役兼グループCEOの石田裕樹です。我々の2024年12月期第1四半期の個人投資家向け決算説明会を開始します。
我々は、通常の日本企業とは異なるかたちで東京証券取引所に上場しているため、はじめにそちらについてご説明します。その後、2024年12月期第1四半期の事業ごとの業績、2024年12月期(通期)の業績予想についてご説明します。
はじめに: JDR (日本型預託証券) とは
我々はJDR(日本型預託証券)という新しいスキームを使って東京証券取引所に上場している、いわゆる外国企業です。外国株上場ではなく、日本の証券にして上場しています。
我々はシンガポール法人ですが、シンガポール法人の株式を信託銀行、我々の場合は三菱UFJ信託銀行に預け、信託銀行がその株式を裏付ける証券を発行し、発行された証券が東京証券取引所に上場しているというかたちです。
これまでの外国株は、外国法人がそのまま東京証券取引所に上場する枠組みになっており、さまざまな取引上の制約もありました。JDR自体は、例えばREIT(リート)やインデックス系の預託証券、日本株と同じように、みなさまが売買できることが一番の特徴です。
証券化を通じて株式を間接的に保有していただくため、「議決権はどうなるんですか?」というご質問をいただくのですが、そちらについては、JDR受託者である三菱UFJ信託銀行が現株式の株主として、みなさまに代わって我々に対して議決権を行使をすることになります。技術的には複雑ですが、日本株への投資と同様に、議決権の行使が可能です。
配当も、日本企業かつ日本に上場している会社と同じように、みなさまは配当を受けることができます。日本株への投資とほとんど同じように投資が可能であるというのが、JDRのスキームです。
投資参考指標のご案内
JDRがはじまってからまだ5年程度しか経っておらず、JDRを利用した上場銘柄はいまだ3社です。そのため、いくつかシステム面の課題があると認識しています。
最も大きな課題として、みなさまは証券会社の取引プラットフォームで株を買ったり売ったりされると思いますが、その際、我々の時価総額が適切に表示されていないということがあります。
現在の我々の時価総額は、138億9,000万円です。140億円弱のはずですが、一部の取引プラットフォームでは、おそらく80億円や70億円と表記されています。これは、株式の一部であるJDRだけに株価を掛け合わせているためです。
本来であれば、時価総額を算出するためには、すべての発行済株式総数と株価を掛ける必要がありますが、未だにそのような対応になっていません。加えて、例えばPERなどの業績の表示も未だにされておらず、このような点でご不便をおかけしている状況を強く認識しています。
一方で、我々が上場して2年強の間、日本証券取引所のみなさまとかなり密にこの点について連携しています。
先日の「SusHi Tech Tokyo」のようなスタートアップのイベントをはじめ、3月には日本証券取引所グループのホームページにも、「これから日本証券取引所をアジアのスタートアップのハブにしていくんだ」ということがリリースされました。
つまり、JDRを使って多くのアジアのスタートアップにグロース市場(旧・東証マザーズ市場)などへ上場してもらい、招き入れるということです。
先ほどお伝えしたように、いくつかの課題があることは強く認識していますが、東京証券取引所のみなさまと毎月のように議論を重ねています。ある意味で、国策として整備されたJDRですので、可能な限り早く課題を解決し、我々だけでなく多くのアジアのスタートアップが東京証券取引所を目指すような制度にしていきたいと考えています。
1つ前のスライドに戻ります。例えばアメリカでは、実際にADRという制度が整備されており、ADRの日本版ということで、JDRという名前がついています。ニューヨークの証券取引所に上場している会社のうち、すでに約4割がADRを使った外国法人になっており、日本のトヨタやソニーも、ADRを使ってニューヨークの証券取引に上場しています。
日本証券取引所の「東京をアジアのウォール街にする」という熱のこもった政策に賛同し、我々はJDRを活用して上場しました。このような大きな流れの中で、さまざまな方面からお力添えをいただきながら課題の解決にあたっているということを、まずはみなさまにご説明しました。
自己紹介
私は、外資系の証券会社であるゴールドマン・サックス証券で勤務していましたが、いわゆる証券業や投資銀行業務とはまったく違うことに携わってきました。
具体的には、日本のゴルフ場や温泉旅館などに資金を投入して会社を立て直し、より良いかたちで上場する、あるいはお譲りするという業務です。さらに日本企業のためになるかたちでお役に立ちたいと考え、独立して会社を作ったのが13年前のことです。
会社概要
実は、YCPホールディングス(グローバル)リミテッドは、2011年8月に日本で創業した会社です。13年前に日本企業を支援するために独立したわけですが、それが当時のヤマトキャピタルパートナーズであり、現在の我々の日本法人の中核企業であるYCP Japanも、もとはヤマトキャピタルパートナーズです。
そのような仕事をする中で、2013年から2014年頃には、非常に多くのお客さまから「日本だけでなく、アジアのお手伝いもしてほしい」「うちの事業をシンガポールやタイ、あるいは中国に持っていってほしい」「中国の事業がうまくいっていないので、立て直してほしい」といったご要望をいただくようになりました。
当時は日本に親会社を置き、その子会社というかたちで上海やバンコク、シンガポールに会社を作っていきました。しかし、日本の親会社に入ってくれる優秀なコンサルタントを数多く集めることができなかったり、入ってくれても数年後に中国やアメリカの会社に転職してしまったりと、非常に苦戦しました。
アジアの中で日本の子会社だというと、どうしてもやや角が立ちます。そのような中で、日本と中国、東南アジア、最近でいうとインドを兄弟分に置くようなグローバルカンパニーを作ろうという思いのもと、最初は香港に本社を移転しました。2021年にはシンガポールに本社を移転し、現在はシンガポール企業としてグループを統括しています。
そのような意味で、普段の私はシンガポール、東京、香港、成長著しいインドをぐるぐると回りながら、グループ全体の経営にあたっており、先週は東京に、今週は香港にいます。努力の甲斐があったおかげか、現在は470名、直近では500名ほどの仲間に囲まれ、ともに仕事をしています。
2013年に本社を香港に移転させた当時は、グループのメンバー30人のうち、日本に26人、中国に2人、シンガポールに1人、タイに1人という構成でした。
それから約10年経ち、おかげさまで日本を超えるようなプロフェッショナルを擁するに至っています。特にインドは200名弱、東南アジアも120名強の体制になってきています。名実ともにアジア全域をカバーする、非常に国際色豊かなプロフェッショナルファームに育つことができたと思っています。
「アジアをカバーしているのはわかりました。しかし、YCPにはどのような強みがあって欧州や北米にも拠点があるのでしょうか?」というご質問がありました。アジアにフォーカスしたファームとして、シンガポールという良くも悪くも無色透明で国際色豊かな金融都市に本社を構えながら、日本と中国、東南アジアとインド、場合によっては中東も含め、等距離の経営に務めているのがYCPホールディングス(グローバル)リミテッドです。
一方で、欧州と北米に拠点を構えている理由は大きく2つあります。1つは、例えばニューヨーク、シカゴ、サンディエゴなどに本社があるアメリカ企業に我々の北米チームが日参し、アジアの戦略案件を発注いただいています。欧州でも、オランダ、パリ、ベルリン、ロンドンにプロフェッショナルが在籍し、アジア戦略をコンサルティングとして打っていくための拠点があります。
もう1つの理由は、我々がアジアの会社、特に日本企業のお手伝いをしていく中で、「アメリカやヨーロッパでもやってくれないか?」「アメリカやヨーロッパのYCPには人が多くないことは理解しているが、アジアの枠組みと同じことをアメリカやフランスでも取り組めないだろうか?」というご要望があることです。
我々はヨーロッパや北米にそこまで強いわけではありませんが、一部のアジア企業がグローバルに調査、戦略、思案をされる中、そのようなニーズを受けてサービスを提供しています。このような理由で、欧米にも拠点を設けています。
現在のコンサルタントの人数は、約500名です。後ほどご説明しますが、我々のチームを活用し、自身でも事業にチャレンジしています。コンサルタントとは別に、我々が自分たちで作っている連結事業の社員が約300名いらっしゃり、すべて合わせると約800名のグループ会社です。
事業概要及び当社グループの報告セグメント
我々の最も重要な事業は、経営に関するコンサルティング機能を提供するという、創業時からのマネジメントサービスです。しかし、経営戦略あるいは戦略コンサルティングは非常に専門性が高く、求められるレベルも高いサービスですので、売上を2倍、3倍にすることは簡単ではありません。
株主のみなさまから、「3年で倍くらいの売上を作りなさい」というような大きな期待を受けて上場していますが、戦略コンサルティング事業だけでは実現が非常に難しいものです。そこで、もう少しスケーラビリティのある、インタラクティブなデジタルマーケティング、あるいはeコマース(EC)の対応、さらにはサプライチェーンといった領域に特化した専門チームを作りました。
各専門チームが事業を伸ばし、グループ全体のビジネスをより大きくするということを、ソリューション事業として直近約2年間で手がけています。さまざまな戦略コンサルティングや経営ソリューションをお客さまに提供するだけでなく、自分たちで事業を作るというチャレンジに、すでに10年ほど取り組んでいます。
自分たちが作った事業や、外部から買収した事業によってグループを大きくしていくというチャレンジが、プリンシパル投資事業です。マネジメントサービス、その周辺領域のソリューション事業、プリンシパル投資、以上の3つを連結させて経営にあたっています。
過年度の業績推移と今期業績予想
過年度の業績推移と今期業績予想です。おかげさまで、2023年度は121.8百万米ドル、180億円強の売上を達成することができています。
上場した2021年度の売上は、73百万米ドルでした。我々はシンガポール企業のため、決算を米ドルで締めていますが、円ベースでは2021年の売上80億円強から、2年経った現在は約185億円と、倍以上の売上を作ることができています。みなさまにご支援いただきながら、良いかたちで会社の経営を舵取りできたのではないかと思っています。
引き続き円安の影響で、米ドルで示すとどうしても売上が下がって見えますが、今期の期首には円ベースで約200億円の売上を計画し、みなさまに開示しています。
FY2024 Q1単体 グループ連結業績
四半期ごとの業績推移です。事業部ごとにご説明します。
マネジメントサービス事業のご紹介
マネジメントサービス事業です。スライドのとおり、我々はYCP Solidiance、YCP Auctusという2つのブランドで、戦略コンサルティングのサービスを展開しています。
特徴は繰り返しご説明していますが、1つ目はアジア全域でサービスを提供できることです。日本初のコンサルティングファームとしては、最もグローバル化が進んだファームだと思っています。お客さまとさまざまな経営課題を解決する中で、「アジアならやはりYCPだよね」と言っていただけるようになっているのではないかと思います。
2つ目の特徴は、現場常駐型で、非常に期間の長いプロジェクトをいくつも受注していることです。スライドで示しているように、部門横断で大きな企業変革を実行する時、例えばM&Aをする時に「M&Aをしたらどうですか?」と言って終わるのではなく、もちろん戦略の立案も行いますが、我々はそこから実際に戦略を導入することを得意としています。
このような実行支援を、数ヶ月から数年と長期間にわたってお客さまに提供し、このストーリーを、お客さまに価値として確実に導入しきるところまで伴走します。
3年から5年かけてプロジェクトを受注することになるため、結果として毎月安定的に売上が上がるという意味でも、会社の経営の安定化において非常に重要なポイントだと考えています。
マネジメントサービス事業の業績
マネジメントサービス事業の業績です。2023年から2024年にかけて大幅な減収に見えており心苦しいのですが、中身としては、さまざまな向かい風がある中でも、ほとんどの地域で横ばい、あるいは若干微増させながら事業を経営できています。
唯一、日本だけが大幅に減収となっています。これは、昨年から今年にかけて20パーセントほど円が弱くなっていることにより、業績をドルベースで締めた際の影響が大きくなっているためです。
また、いくつかの大きなプロジェクトが失注、あるいは期ずれにより、第1四半期ではなく第2四半期に着地するかたちになっています。この期ずれの発生によって、第1四半期はやや苦しい状況となっていました。
大きく業態が狂ったり、会社が直面している状況が大きく変わったりしたわけではなく、米中関係の悪化や、中国における経済の減速などの影響を受け、コンサルティング業界はグローバルに下振れしている会社が多いと認識しています。
弊社も他社と同様にそのような厳しい状況の影響を受けたのですが、本来計上すべきだった売上を一部計上できなかったことは、我々の経営の努力不足だと考えています。
シェンクオ社の完全子会社化 (2024年4月)
我々は、ビジネスを自助努力で大きくするためにさまざまな活動をしていますが、M&Aにも積極的に取り組んでいます。2024年4月1日時点でシェンクオ社を買収しており、第2四半期から業績が連結されるかたちになっています。
シェンクオ社は香港に本社があり、パリにも大きなオフィスを持つ、ヨーロッパ系のコンサルティングファームです。例えば、フランスのダノン社やドイツのアディダス社、アメリカのテーラーメイド社などのヨーロッパ系の会社で、アジアの戦略を提供しています。
もちろん変動はありますが、売上は年間5億円から6億円です。この会社を4月1日からグループの傘下に収め、YCPホールディングス(グローバル)リミテッド として経営しています。
ソリューション事業のご紹介
ソリューション事業です。マネジメントサービス事業の売上を大きくすることが難しい状況の中で、約2年前から、もう少しスケーラビリティのあるソリューション事業に取り組んでいます。
例えばデジタルトランスフォーメーション(DX)や、ECプラットフォームを提供するインタラクティブソリューション、部品調達の安定化やコスト削減を提供しているサプライチェーンソリューションなどの領域で、一昨年あたりから少しずつサービスを展開してきています。
ソリューション事業の業績
ソリューション事業は、大きく売上を伸ばすことができています。前年同期の円ベース1億円の売上から、今期は5億円の売上を作ることができています。
昨年8月にConsus Global社を買収し、グループの傘下に収めています。2023年12月期第3四半期は8月、9月の2ヶ月だけ計上し、第4四半期は3ヶ月フルで計上しました。今期第1四半期も売上が大きく伸びているため、3ヶ月フルで計上できたことが非常に大きく貢献しています。
それ以外にも、デジタル領域やお客さまのeコマース化を支援しているインタラクティブ領域がそれぞれ成長したため、このセグメントの売上は約5億円になっています。
ドルで見ると3.5百万米ドルと、やや軽減したかたちになりますが、円ベースの数字などはもっと伸びており、グループ全体で大きく成長することができています。2年前からソリューション事業への進出に取り組んできて、ようやく一定の結果を出すことができつつあると思っています。
プリンシパル投資事業の概要
プリンシパル投資事業です。なぜこの事業を手がけているかというと、我々の本業はコンサルティングチームでお客さま向けに一生懸命サービスを提供することですが、「せっかくチームを作っているのだから、自分たちの事業を作ってみよう」と考え、チャレンジしてきました。
3つのキーワードのうち、基本的にはパーソナルケア領域とペットケア領域の2つに重点的に資金と人員を投下しながら、会社の成長にコミットしています。
また、将来的にはこの2つの領域に続く何かがあるのではないかと考え、それ以外の領域にも投資しています。それ以外の投資先は、戦略投資領域としてまとめて整理しています。
①パーソナルケア領域のご紹介
1つ目のパーソナルケア領域です。株主のみなさまには、この領域で弊社が投資している事業のブランドの商品券を、株主優待のかたちでお配りしています。
一番大きなブランドは「ALOBABY」という、乳幼児向けのオーガニックスキンケアブランドです。これは「Amazon」でも一番売れているブランドで、高評価をいただいています。
例えばドラッグストアなどオフラインで物を買うのではなく、インターネットで好きなブランドを探し、好きな商品を直接買う時代が来るのではないかと考え、現在、我々が得意としているDirect to Consumer(D2C)には約10年前からチャレンジしています。
その最初のブランドが、「ALOBABY」です。私の周囲の子どもができた方々にも、特に日焼け止めのクリームなどを買っていただいていたり、「ALOBABY」が我々の投資先であるとは知らずにご支援いただいているお客さまも増えてきていたりと、大変うれしく思っています。
このように、SOLIAではD2Cでブランドを開拓し、大きく伸ばしていきたいと考えています。
パーソナルケア領域の業績
パーソナルケア領域の業績は、円ベースでご説明します。2023年12月期第1四半期の売上収益は9.7億円でしたが、2024年12月期第1四半期ではすでに13.6億円と、40.2パーセント伸長しています。セグメント利益も、前年同期比38.1パーセント成長しています。
引き続き、新規顧客を確保するために、四半期で3億円、年間で12億円から13億円の広告宣伝費を投下しています。我々はお客さまにダイレクトに商品を販売しているため、さまざまなマーケティング施策も行い、新規のお客さまにできるだけリピートしていただきたいと考えています。
このように将来に向けて投資しているため、しっかりと利益に貢献できる事業規模に育っています。
四半期ベースでは若干下がっているように見えるのですが、先ほどご説明したように、我々のブランドの中で、現在は乳幼児向けのブランドが非常に人気となっています。「赤ちゃん 日焼け止め」とお調べいただくと、「ALOBABY」が出ると思います。
この日焼け止めの需要は、どうしても第2四半期に集中します。4月から5月はお出掛けのシーズンになり、暑くなっていく中で、日焼け止めをお求めいただくお客さまが増えます。そのため、第2四半期に売上が大幅に伸長し、第3四半期、第4四半期に入ってくると、次はかさつきを防ぐミルクローションなどの販売が増えてきます。
このように季節性がありますので、過年度の資料を見ていただくと、毎年だいたい第2四半期の業績が一番良い結果になっています。そのような意味で、第1四半期は閑散期にあたりますが、非常に大きく売上を伸ばすことができています。
②ペットケア領域のご紹介
2つ目のペットケア領域です。主に、動物病院へ投資しています。
我々はデジタル領域や海外ビジネスが得意な会社ですが、M&Aも得意としています。また、ペット業界のコンサルティングには、創業来12年から13年取り組んでいます。
その中で、実は動物病院では、事業承継にお悩みの院長がかなり多いと理解しています。人間対象の医師であれば、お子さんも医師というケースをよく聞くと思いますが、獣医師業界においては、お子さんへの事業承継が非常に珍しい状況です。我々は企業として、この7年から8年で、そのような承継にお悩みのお客さまの受け皿になっています。
現在、MRIやCTを備えた高度医療病院を4施設、1次診療を担っている動物病院を7施設、合計11病院の承継を完了させています。
YCP Lifemateでは、M&Aで得られる諸々のシナジーや、我々が得意としているデジタル化を活用し、病院のオペレーション業務のデジタル化なども進めながら事業拡大に努めています。
ペットケア領域の業績
ペットケア領域の業績です。こちらも、売上を円ベースで前年同期比26.8パーセント伸ばすことができています。
2023年12月期第1四半期は、動物看護師の国家資格化という、100年を超える動物医療の歴史の中でも非常に大きな変化がありました。その対応で、前期第1四半期は業績の維持に非常に苦戦したのですが、2024年12月期第1四半期は、しっかりと黒字を維持することができました。
③戦略投資領域のご紹介
3つ目は戦略投資領域です。例えば、香港では「三田製麺所」というつけ麺屋、シンガポールでは「哲平食堂」という海鮮丼屋、札幌ではインバウンドの方向けに「はちきょう」といういくらのかけ放題がある居酒屋を展開しています。
香港やシンガポール、タイなどにある明治屋やドン・キホーテで売られているお惣菜の一部を、我々がセントラルキッチンで加工して提供しており、シンガポールではそのような食品加工サービスも行っています。
戦略投資領域の業績
戦略投資領域は、グループの連結業績に迷惑をかけないかたちでいろいろとチャレンジしています。売上は約6億円、収益はトントンで、複数領域への投資にチャレンジしている状況です。
中期経営計画:グループ連結
今期全体の業績は131.4百万米ドル、約200億円を目指すとご説明しています。
また、今年2月に中期事業計画の改訂版を開示しており、「2026年までに165.2百万米ドル、約250億円の売上を目指します」とご説明しています。スライドに示しているとおり、祖業であるマネジメントサービス事業は、本当に緩やかに拡大させていくしかないと思っています。
一方で、2年前から新たに取り組んでいるソリューション事業を大きく伸ばすことによって、グループ全体の成長を加速させていきたいと考えています。
約250億円という計画を示していますが、この計画にはM&Aを一切含めていません。直近では、2024年4月1日にシェンクオ社のM&Aについてご説明しました。同様に、常時5社程度とさまざまな角度で議論しており、我々はアジア発のコンサルティングファームという意味では、ほぼ随一の規模になってきています。
アジア全域をカバーできる戦略でM&Aも行い、デジタルにも触れているコンサルティングファームという意味では、かなりの規模になっています。
シェンクオ社のほか、過去に我々がM&Aを行ってきたオークタス社やソリディアンス社などのように、グループとして一緒にやっていこうという仲間や、そのようなことに興味をお持ちのコンサルティングファームの経営者のみなさまなど、現在、本当にたくさんのお声がけをいただいています。
もちろん日本で上場されているコンサルティング会社の中にも、大きな会社からブティック系の会社まで多々ありますが、日本企業かつ上場しているだけであれば、おそらくできていないことです。
しかし、我々は日本人で日本発ではありますが、シンガポールに根を張り、日本と中国、インド、東南アジアを等距離に置いて展開しています。そのストーリーによって「そんな会社があるんだね。一緒になって、ぜひともこのグループを大きくしていこう」と言ってくださる、本当に大勢の経営者の方々との出会いをいただいています。
いったん現時点では、必達目標に約250億円と掲げていますが、そのような会社とのM&Aを実現させながら、いち早く売上収益300億円、400億円、それに準ずる営業利益30億円、40億円をみなさまにお示しし、株価として還元していきたいと考えています。
私からのご説明は以上です。
質疑応答:信用買い残への対策について
「信用買い残が多すぎて、投資に不安があります。何か対策はあるのでしょうか?」というご質問です。
東証のホームページでは、信用買い、信用売りの残数を日々開示しています。その中で、我々の株に関しても三百数十万株は信用買いであると理解しています。
一方で、大量保有報告書をご提出いただいている個人投資家の方の中には、何億円という相当な額の株式を買っていただいている方がいらっしゃり、私自身も、直接面識を持たせていただいています。
その方の大量保有報告書を拝見する限りでは、ポジションの一部を信用買いで購入されていると認識しています。数字で見ても、概ね同様の数字が出ています。我々を信頼して強く応援してくださる株主の方が大量保有報告書を出され、その持分の中で信用買いをしてくださっているということです。
「どこかで売却をしよう」というよりも、長期保有で投資いただいていると理解しているため、引き続き応援いただきたいと思っている株主のお一人です。
したがって、我々も発行体としては大きな心配はしていません。そのような投資家の方がいらっしゃるとご理解いただければと思います。
質疑応答:日本での認知度について
「日本発のシンガポール企業とのことですが、日本での認知度はどのくらいでしょうか?」というご質問です。
まず、我々は日本発のシンガポール企業ということで、おそらく日本のコンサルティング業界において、かなり認知していただいていると思います。
この10年弱の間、我々のような日本チームでは毎年新卒も採用しており、現在約10名です。そこに対し、本当にトップの大学の方も含めて400名ものご応募をいただいています。
それ以外に、中途採用でも毎月100名近くから強く入社を希望される、多くのご応募があります。それらはコンサルティング業界のみなさまからのご応募のため、おそらく相応の認知をいただいているのではないかと思っています。
私が直接お客さまに話をしに行くと、「YCPですよね、実はシンガポールの会社なんでしょ?」と言っていただくこともあります。私個人で加盟している経済同友会でも「最近変な上場をした会社ですよね?」「そういったアジアの会社が東証に来ることは良いことなので、がんばってください」というお話をいただいており、相応の認知をいただけているのではないかと思っています。
質疑応答:日本で上場した背景について
「最近はめっきり少なくなった東証の外国株ですが、日本で上場した意図を教えてください」というご質問です。
私も証券会社にいましたので、外国株を横で見ていました。15年ほど前に、少し流行したと理解しています。
流行した理由は、やはり現在、我々がJDR上場した理由と同様です。アジアの証券取引所で多くの取引高があり、適切な株価がつくマーケットは、実はあまり多くないと言われています。
1つは、香港のメインボードです。こちらは、東証プライム市場のような位置づけです。その下に、GEMというスタートアップ向けの取引所がありますが、ほとんど取引されていないような市場になっています。
スタートアップ向けでは、おそらく中国国内の深圳のボードがありますが、そこでは当然ながら、通貨としては人民元で調達することになります。
実は、国際的にドルやシンガポールドルなどと非常に安易に両替ができる「円」で、かつ、これだけの取引高をスタートアップに提供している取引所は、アジアの中には日本しかありません。
グローバルではNASDAQ、ヨーロッパではロンドンにAIMという市場があります。しかし、アジア企業がアメリカやロンドンに行っても、おそらく「東京って旅行で行くのは良いけど、どんな国だっけ?」「シンガポールってそもそもどこの国の都市だっけ?」となってしまいます。
実際はシンガポールという1つの国で、1つの都市しかない都市国家ですが、そもそも現在はこのようなことが理解されにくい状況の中、同じアジアに、東証のように魅力的な取引高のある取引所があります。このような理由から、15年ほど前に外国株が流行しました。
一方で、先ほどもお話ししたとおり、外国株投資には特別なライセンスや申請が必要になるために、実際はほとんど流行しなかったというのが実態だと思っています。
それを解消するために東証のみなさまが作られた制度が、JDRです。制度自体は7年前にでき、そこから我々を含めた3社を1社ずつ丁寧に上場させていきました。
そのような中で、例えば今は米国企業がJDRで上場していますが、どのような課題があるのでしょうか? また、我々はシンガポール企業として上場しましたが、シンガポール企業が上場すると、どのような課題があるのでしょうか?
今、このようなことを1歩ずつ確かめながら進めており、我々としても、東証がアジアのウォール街になることは非常に大事なテーマだと考えています。そのために手を挙げて日本上場したというのが、東証上場の背景です。
質疑応答:株主還元策について
「御社の株主還元策について教えてください」というご質問です。
まず、我々は2021年に上場し、その時調達した金額が約30億円です。この30億円を使いながら、当時売上約80億円の会社を、現在の売上約170億円の会社へと、我々自身を企業変革させているところです。
我々自身は、お客さまに機能としてM&Aを提供しているため、M&Aが得意な会社だと自負しています。みなさまからお預かりした資金や毎年の営業利益で稼いでいる資金を非常に大切に使いながら、我々の業容を大幅に拡大できる機会がまだ本当にたくさんあると思っています。
そのためにも、いったんは配当を出すのではなく、自社の中で内部留保し、留保した資金をM&Aに積極的に使いながら、より大きな業容を作ることで、より高い株価でみなさまに還元していきます。
ゆくゆくは、その中で安定して一定の利益が出せるようになり、そこまでの内部留保が必要ではなくなるタイミングで、配当を含む株主還元を図っていきたいと思っています。
一方で、なにもないというのも、応援していただいているみなさまに申し訳ないということで、先ほどもお話ししたとおり、弊社の投資先であるSOLIAの優待券をお配りしています。
私の母なども株を買ってくれており、優待券で応募してくれていました。赤ちゃん向け商品の説明が多くなりましたが、男性向けの商品も展開していますし、シャンプーやトリートメントなど、女性向けのヘアケア商品も展開している会社です。
この幅広いブランドや商材の中からみなさまのニーズに合う商材を選び、弊社を応援していただければと思っています。
質疑応答:ペットケア領域が伸びている背景について
「ペットケア領域の伸びが大きくなっている背景を、もう少し詳しく教えてください」というご質問です。
ペットケア領域は、基本的にはM&Aによって大きくしています。もう少し長期の数字をお示しできればと思っていましたが、昨年1月には北海道江別市の病院を承継し、今年4月にはつくば市の病院を承継しています。このような病院が期中で貢献してくれることによって、売上を伸ばしている側面もあります。
また、我々はデジタルマーケティングが得意であり、1つの病院に投資すると、その周辺にデジタルマーケティングを展開します。例えば、つくば市在住のペットを飼っている方に向けて「我々はこういうふうにやっている病院です」とアプローチしていきます。
また、「Google検索」や地図などで調べると、我々の病院がスポンサードされたかたちで出てきます。あるいは、検索時にはランキングで上位に出るようなことを駆使しながら、新規の患者さんの数を増やしながら、病院そのものの売上を伸ばしてきました。
ペットケア領域の投資先は、M&Aと通常の成長努力との掛け算で会社を大きくしてきました。
質疑応答:説明時に意識していること
初めてご参加いただいた方から、「話が上手ですね、意識されていることはありますか?」というご質問です。
ありがとうございます。そのような意味では、実は我々は「IRの説明があまりうまくない」とよくご指摘をいただいています。株主のみなさまからは「もう少し工夫しなさい」という厳しいお言葉もあります。
非常にグローバルに展開しているため、どうしても海外の国名が挙がったり、グループ全体で社内の議論はすべて英語で行っていたりすることから、海外では当たり前の言葉遣いであっても、「やたらと片仮名が多い」というお叱りを受ける機会も非常に多くあります。
できるだけ適切な日本語でご説明しなければならないと感じていますし、わかりづらいご説明もあったかと思います。
特にコンサルティング業界では、お客さまである本当にプロの経営者の方々と、日々コミュニケーションを取っています。プロの経営者の方のさまざまな経営課題を解決するお手伝いをしているため、そのような方々と話している内容が必ずしも非常にわかりやすいわけではありません。そのようなわかりにくい話を少しでもかみ砕き、みなさまにご説明できればと思います。
例えば、現在は中国で景気が減速しているため、我々はなかなか苦労しているとお話ししました。一方で、インドでは国内需要が非常に活発になっているため、著しく売上を伸ばしています。
普段は日本で生活されているみなさまは、このようなことを新聞などで読んだことがあるかもしれません。しかし、「自分事としては感じにくいな」ということを、我々のような会社を通じて、「アジアって今こんなふうになってるんだ」とできるだけ感じていただければと思っています。
アジアの中でみんなが一番大好きな国は日本であり、私自身も日本人として誇りを持っています。しかし、そうはいっても、経済成長として中国が現在のかたちとなり、インドは非常に大きく成長してきています。そのような中で、日本企業駐在のみなさまが、さまざまな世界の最先端で非常にがんばっており、我々はその後押しもしています。
また、本日のような、投資家のみなさまとの会話の中でも「今アジアではそのようなことになってるんだ」「そんなふうに日本企業が海外でがんばってるんだ」「そんなところで日本企業はいろいろ苦労してるんだ」といったことを、少しでも感じていただけるような会社になっていればと思っています。
我々のみならず、JDRの制度を使って東京証券取引所に上場する会社は、おそらくこれから増えてくると思っています。みなさまにとっても、そのような会社に投資をする機会が増えていき、アジアが身近になればと思っています。
現在、東証には三千数百社が上場しています。例えば、全体の1割となる300社のアジアのさまざまな会社が東証に上場すれば、そのような方々が大勢東京に来て「やっぱり日本は良い国だよね」と言ってくれます。あるいは、日本の投資家のみなさまが「投資してるインドの会社があるから、インドに行ってみようかな」と思い、実際に訪れると「実はもうこんなに近代化されているんだ」という新しい気づきになります。
まさに、より国際色豊かな組織、あるいはコミュニティを作っていく一助になりたいという思いで、グループ一同でがんばっているところです。
石田氏からのご挨拶
本日は、非常に遅い時間からのスタートにもかかわらず、大勢の方々に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
本日お話ししたとおり、現在、グループの約500名でがんばっているところです。そのような状況を、ニュースレターというかたちでもみなさまに配信しています。ぜひご登録いただき、長期的にご支援、応援をいただければと考えています。
本日はお忙しいところお時間をいただき、ありがとうございました。引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。