個人投資家向けIRセミナー

依藤敏明氏(以下、依藤):日本空調サービスの依藤です。当社はふだん裏方業務に徹することが多く、なかなか公の場に出る機会がないのですが、今回は知名度拡大のため、説明会を行うこととしました。よろしくお願いします。

現在、動画配信サービス「TVer」でCM動画を配信しています。プレゼンの前にその動画をご覧いただきたいと思います。

ご視聴いただきありがとうございました。こちらのCM動画は、当社の主要なお客さまである病院にフォーカスし、当社の存在意義を「生命をまもる空間をまもる、という使命。」というキャッチコピーで表現しています。

Contents

依藤:それではこれより、スライドに沿って、当社の事業内容、業績、成長戦略などについてご説明します。

会社概要

依藤:まずは会社概要です。本社は名古屋市名東区照が丘にあります。事業は、総合建物設備メンテナンスサービス業を展開しています。

拠点は国内に83拠点、海外に10拠点あります。海外拠点のうち5拠点は中国、そのほか、ベトナム、タイ、バングラデシュ、ミャンマー、シンガポールにそれぞれ拠点があり、国内外を合わせると93拠点となっています。

増井麻里子氏(以下、増井):ここからは、質問を挟みながら進めていきます。まず、創業のきっかけを教えていただけますか?

依藤:私は直接聞いたことはないのですが、設立当時は空調といえば暖房のみで、例えば小学校などにもストーブしかありませんでした。その後、「今後はおそらく冷房も普及し、空調という業界にスポットが当たるだろう」と、将来性を見越して会社を興したと聞いています。

従業員数

依藤:従業員数は総勢3,158名、その8割以上にあたる2,538名が技術系従業員です。技術力は当社の強みですので、技術力向上に向けた教育カリキュラムを設けるほか、昇格と公的資格をリンクさせています。保有資格の重要度や難易度によって点数をつけており、資格を持っていないと昇格できないような制度となっています。

インストラクター制度は、新卒などの若手社員を、概ね入社3年以上の社員が上司となり3年ほど教育していく制度です。

増井:新卒には、理系大学や高専の卒業者が多いのでしょうか?

依藤:およそ7対3の割合で、理系出身者が多くなっています。

増井:採用は国内外の各拠点の近くで行っているのですか?

依藤:全国に支店や営業所があるため、基本的にはその地域で社員を採用することが多いです。なお、新卒は80名から100名をめどに採用しています。

株式情報

依藤:株式情報です。株価は12月1日時点で800円程度、時価総額は283億円から290億円の間で推移しています。

配当性向51.4パーセント、配当利回り3.79パーセント、株主数は1万1,917名となっています。PER13.57倍、PBR1.27倍、ROEは10パーセントを目標としており、現時点では9.4パーセントとなっています。

スライド右側のグラフは、配当利回りを示しています。毎年この程度の水準をキープしています。

続いて、株主総利回りです。TOPIXからは若干アンダーパフォームとなっており、IR活動の強化が必要であると認識しています。

経営方針

依藤:経営方針についてお話しします。当社は、長期ビジョンとして「全てのステークホルダーの幸せ向上」を掲げています。

「社会的価値創造」のため、「お客様に安心感を与える最適な環境を維持するために、技術力と人的資源を結集させ、高品質サービスを提供する。」を経営理念としています。

このような事業活動を通して、お客さまの事業活動におけるサステナビリティに貢献することで、「経済的価値の創造」につなげていきます。

ビジネスモデル・事業内容

依藤:当社のビジネスモデル・事業内容です。スライド右側の図をご覧ください。PMは、当社の営業所・支店から、部材や工具などを積んだ車でお客さまの施設に出向き、業務を行う部門です。

FMは、お客さまの施設に常駐してメンテナンスサービスと日常の維持管理を行う部門です。病院のような大きな施設が特に多く、そこに通勤するかたちで業務を行います。

RACは、PM、FMなどから派生する設備の入替工事を行う部門です。当社はメンテナンスサービスを主力事業としているため、お客さまが設備を長く良い状態で使えるよう日頃から点検・整備していますが、経年とともに部品供給がなくなったり、入れ替えが必要になったりした時は、RAC部門が設備の入替工事を行います。

PM・FM・RACという業務について、それぞれに特化した企業はかなり多くありますが、この3つをすべて展開している企業は、全国的に見てもおそらく当社以外にはありません。スライド左側には当社のビジネスモデルを記載しています。この図から、維持管理サイクルのどの段階においても自社対応が可能だということがおわかりいただけると思います。

設備の入れ替えやリニューアル工事、その後のメンテナンスまで、長期にわたってマネジメントできることが当社のビジネスモデルであり、強みとなっています。

業務内容(病院での業務例)

依藤:業務内容です。こちらのスライドでは病院での業務例をご紹介しています。グレーの枠で囲んだ部分は、他の設備会社でも対応しているような中央監視業務、日常測定業務、定期メンテナンス業務などです。

当社が得意としているのは青い枠で囲んだ部分の業務です。ソリューション提案では省エネや効率化について提案し、環境診断業務では手術室などの環境測定を行います。手術室はオフィスビルと違い、ほんのわずかな埃も存在してはいけない空間です。そのような場所の環境測定や、消毒・除染作業にも自社対応できるところが当社の強みです。

このような事業展開が、お客さまの事業活動のサステナビリティ向上につながり、また、当社の評価にもつながっていると思います。

増井:こちらのスライドにはたくさんのサービスが記載されていますが、御社のサービスは、パッケージ化したかたちでお客さまに契約していただくのですか? あるいは、オプションでいろいろ組み合わせることができるのでしょうか?

依藤:このような業務は、特に病院からの依頼が多いです。病院には仕様書があり、その中に必要となる業務項目が記載されていますので、そこから積算を行います。ただし、これを自社で行うのか、他社の協力会社に依頼するかで差が生まれます。

他社の協力会社に依頼すると、お客さまへの対応にタイムラグが生まれ、スピード感が失われてしまいます。そのような点からも、すべての業務を自社で行えるところが当社の強みの1つであると思っています。

創業からの歴史

依藤:創業からの歴史についてご説明します。1964年の設立以来、スライドの棒グラフのとおり、右肩上がりに成長しています。2019年に中期5ヵ年経営計画を策定し、今期が最終年度となっています。

「2019中期5ヵ年経営計画」の間にコロナ禍という大変厳しい時代を迎えましたが、そのような状況下でもしっかりと成長できています。契約に至らなかった案件も多くありましたが、例えば病院の陰圧化対策など、新型コロナウイルス感染症対応の業務が増えたことで、業績が大幅に下がることなく最終年度を迎えられたのではないかと思っています。

また、2023年4月にリリースしたとおり、給与水準の引き上げを行っています。当初の目標売上高は550億円でしたが、現在は560億円を目指して取り組んでいます。

創業当時と今後の目標

依藤:創業当時と今後の目標です。創業当時から、「海外進出」「東証・名証上場」「全都道府県進出」という3つの目標を掲げてきました。最後の全都道府県進出については、2018年3月に達成することができました。

現在は新たな目標として、「全てのステークホルダーの幸せ向上」を掲げています。お客さまへの高付加価値サービスの提供、従業員の満足度と技術力の向上、株主さまへの安定した還元の実施を行い、世の中の発展に貢献したいと考えています。

国内市場規模

依藤:我々の働いている空調業界の市場規模についてご説明します。富士経済が発表した「2020年版 空調・熱源システム市場の構造実態と将来展望」によれば、日本国内の空調・熱源システム市場は約2.2兆円と推計され、そのうち約3割が新規案件、それ以外が既設案件となっています。

当社が得意とし、傾注している分野は、約7割を占める既設案件です。ターゲットとする市場は1.5兆円程度と推測しています。当社の売上は約500億円と、シェアとしてはまだ3パーセントほどですが、伸びしろと市場価値は十分にあると考えています。

メーカー問わず自ら対応できるという強み

依藤:当社の強みは、メーカーを問わず、自ら対応できるところにあります。特に病院や工場には多種多様なメーカーの設備が入っています。今、こちらの会場内だけでも数社の設備機器が見受けられますが、当社は独立系企業のためメーカーの制約を受けません。

独立系企業の強みは、どのメーカーの機器にも対応できる点です。複数のメーカーが入っている現場で設備が故障すると、施設の担当者はまず設備メーカーに連絡します。しかし、メーカーというのは多忙で、故障したからといってすぐに対応してくれるわけではありません。

当社には、メーカーを問わずどのような機械でもメンテナンスできる技術者が揃っているため、お客さまから高い評価を得ています。

安定性という強み

依藤:安定性という強みについてお話しします。当社の売上高は、年間契約が約4割を占めており、これが安定性につながっています。

年間契約は特に病院が多く、だいたい3年から5年の複数年契約となっています。1年ごとに病院の施設管理担当者が変わると、現場を覚えてもらうだけでも大変です。そのため、当社と一度契約すれば、よほどのことがない限り変更なく長期的にお付き合いいただけます。そのようなことから、当社は病院に傾注し、評価を得ることで年間契約案件を維持しています。

製造工場等は、最近スポット契約が多くなっています。昔は工場にも年間保守契約があり、期初に決定した契約を1年継続していたのですが、最近は依頼の都度見積もりを出して契約するスポット契約が増加傾向にあります。

また、当社はさまざまな業種にサービスを展開しています。この多業種展開による景気リスク分散を図りながら、安定的な成長につなげています。

増井:病院で3年から5年の複数年契約をしている場合、契約を更新する割合はどの程度なのでしょうか?

依藤:あまり利益が出ていなければ、当社側が戦略的に契約を終了することもあります。ただし、次にどこかで病院が新設された時は、当然そちらをターゲットにしながら契約数を伸ばしていきます。先ほどお伝えしたように、一度契約をすると変えにくいという特徴があり、また、当社は東京圏の大病院はほぼ受託しており、病院業界の中では一定の知名度と評価を得ているため、契約が打ち切られるという可能性は少ないです。

高度な技術力という強み

依藤:特殊な環境を有する施設の売上高が7割を占めていることも強みの1つです。このように特殊な環境に傾注している理由についてご説明します。

病院や製造工場では、シビアな空気環境が要求されます。例えば、なかなかオフィス空間では求められることがない、温度が25度一定、湿度が40パーセント一定といったシビアな環境には、高度な技術力や有資格者が必要となります。

当社は、同業他社が少なく、参入障壁の高い特殊な環境にフォーカスしています。また、対応できる会社も少なく、切り換えるためのスイッチングコストや、会社を探すためのサーチコストも大きいため、長くお付き合いさせていただけるお客さまが多いのです。

特殊な環境を有する施設に傾注する理由

依藤:特殊な環境を有する施設に傾注する理由についてご説明します。スライドのグレーの部分は一般ビルを表しています。例えば会議室の空調が故障して使えなくなったとしても、修理するまでは別の部屋を使うなど代替ができるため、緊急性は低いといえます。

スライド中央のブルーの部分は病院です。手術は1年後、2年後くらいまで予定が入っており、手術室が使えないとなると、当然手術ができなくなるため、人の命に関わる話になってきます。このような代替ができない施設では、定期的にしっかりと設備をケアすることで故障が起きないようにしており、それが当社の強みでもあります。

製造工場も同様です。生産ラインが止まってしまうと、工場の売上に大きな影響を与えることになります。製造工場のようにシビアな空調が求められているところには、当然リスクもありますが、競合他社も少ないため、当社は特殊な環境を有する施設に傾注しています。

幅広く、難易度の高い業務にも対応

依藤:例えばどのような業務を行っているのか、スライドに写真を載せています。一般的な空調のメンテナンスとは違う、特殊な仕事をしていることがわかる写真だと思います。これは環境性能測定・診断、クリーン機器のメンテナンス、環境衛生管理、高性能フィルタメンテナンス、作業環境測定の様子です。

先ほどもお話ししましたが、病院の手術室や、特に半導体関連企業のクリーンルームなどは、埃が飛ばないようにしなくてはなりません。そのような施設の空気環境を維持するためには、特殊な機械、測定機器、技術者が必要となり、用意するにはかなり費用がかかってしまいます。当社はこの「誰もができるような仕事ではないところ」に傾注しているため、競合他社が少ない分野になっているのだと思います。

八木ひとみ氏(以下、八木):先ほど給与水準のお話もありましたが、技術力が高い人材でなければ対応できない分野だということでしょうか?

依藤:そうですね。当社ではさまざまな公的資格の取得を推奨しているほか、現在技術研修センターも建設していますので、しっかりと技術力を高めていきたいと考えています。当社はものづくりの会社ではなく、人でお仕事をいただいている会社なので、技術者の育成には力を入れています。

増井:拠点も多いため、1人の従業員の方がいろいろな技術の資格を持つようなかたちでないとなかなか大変ですね。

依藤:地域によって顧客層も変わりますので、例えば病院に常駐している社員は、病院の設備管理に必要な資格を持っていたり、オフィスビルが多い地域ではオフィスビルに特化した空調機器に強い社員がいたりと、全員が全員同じ資格を持っているわけではなく、市場と地域性によってさまざまな社員がいる状況ですね。

八木:おっしゃるとおり、スライド右上の写真などは一般的な設備維持管理のイメージとは少し違いますね。

依藤:どちらかというと研究者のようなイメージですよね。

大型病院のシェア

依藤:当社は大型病院の管理を得意としていますが、スライドには600床以上の病院における受託割合を記載しています。大学病院クラスになると、600床規模の病院が多くなります。

その中で当社のシェアは11.4パーセントとなっており、ある程度のシェアが確保できているのではないかと思っています。

スライド左下の同受託割合推移のグラフをご覧ください。先ほどご質問もいただきましたが、受託率についてはこのあたりの水準を維持できるように営業活動を行っています。

統括管理・環境性能維持に関しては、省エネ提案などを積極的に行っています。昨今は電気代が非常に高くなっているため、病院などで省エネ提案を行って、実際に省エネにつながると、かなり喜んでいただけます。当社はこの部分でも評価されています。

増井:今後、大型病院のシェアはさらに伸ばしていく方針ですか?

依藤:今後、高齢化が進む中で、病院がなくなることはないと思います。老朽化すれば当然建て直し、もしくは新しく病院ができます。そのため、増えるかどうかはわからないものの、減ることはないと思っています。

増井:サーチコストやスイッチングコストがけっこう高いというお話しもありましたが、乗り換えを促進するような営業を行うのでしょうか? それとも新しいところを積極的に押さえにいくのでしょうか?

依藤:新しい病院には、積極的に営業をかけています。

また、病院を建てた後、どのように運営していくのかを支援するコンサル企業から、管理方法について相談を受けることもあります。そこから、「日本空調さんも参加しますか?」とお声がけいただき、新規受注となることもありますね。

病院における省エネ実績(一例)

依藤:スライドには、病院にフォーカスした省エネ実績を記載しています。

古い病院ほど、無駄なエネルギーを使っているところが多くあります。こちらは10年で削減したエネルギー量を示した図です。CO2換算では、37.3パーセントの削減となります。

当然のことながら、病院に行かれる方はなにかしら体調が悪い方が多いため、暑い・寒いということがあってはなりません。そのため、病院の空調機器はかなり余裕のあるスペックで設計されています。そのようなところに当社の社員が入り、「この部屋はここまで温度を下げる必要はないでしょう」「こんなに暖房はいらないでしょう」というかたちで無駄なところを削ります。

常駐者がしっかりと見ることによって、スペックに余裕のあるところは省エネが実現でき、これだけエネルギー使用量が下がったという事例です。

中長期的な成長戦略

依藤:中長期的な成長戦略についてです。当社は太陽光事業にも注力しています。以前は太陽光パネルを設置して、発電した電気を売電するモデルが主流でしたが、今は太陽光発電によって得た電気を自分たちで消費して、電気代を下げる風潮にシフトしてきています。当社はそこに力を入れています。

バリデーション・トータルサポートは、医薬品製造工場などにおいて、薬を作る条件、環境などが最適かどうかを科学的に分析して、その根拠を示す業務です。こちらもなかなか競合他社が少ない業務のため、中長期的な成長戦略として傾注していきます。

続いて、海外展開についてお話しします。国内でお付き合いのある日系企業が海外進出されて、工場を持つ時に、「日本と同じクオリティを担保して欲しい」とお声がけいただくことがあります。そのようなかたちで海外へ進出をしていますが、まだ軌道に乗っておらず、利益にはつながっていません。しかし、売上は間違いなく年々伸びています。

八木:海外は病院ではなく、主に工場がメインでしょうか?

依藤:日系企業の工場をメインに展開しています。

より安全に空間を除染する新手法の特許取得及び、追加出願

依藤:より安全に空間を除染する新手法の特許取得及び、追加出願についてです。スライド左側の黒色の部分に記載しているのが一般的な除染薬品です。除染手法としてホルムアルデヒドなどの薬品を使うのですが、今までは発がん性物質が含まれていたり、手で触れると火傷してしまったりと、危険性がある薬品を使用していました。そのようなきつい薬品ほど効率的に除染ができるからです。

スライド中央の取得特許をご覧ください。こちらは2023年4月17日に特許申請が下りています。「過酢酸(ガス状)+低濃度の過酸化水素溶液」に、十分な除染能力があることを発見し、特許を取得しました。

また、この特許を取る過程で、新たな発見があり追加出願をしています。こちらは「酢酸(ガス状)+低濃度の過酸化水素溶液」で、より安全な除染が可能になるというものです。現在、追加出願しており、早ければ年内に特許を取得できるだろうと推測しています。

スライド下部に、どのような施設で使うのか例を記載しています。再生医療施設や医薬工場、食品工場などは当然除染の必要があり、今までは少し危ない薬品を使っていました。しかし、当社が出願しているのは本当にリスクが少なく、世界初の除染方法です。あまり大風呂敷を広げるとよくないかもしれませんが、アメリカやヨーロッパなどでも採用されることになれば、少し大きな話になるだろうと我々も期待しているところです。

技術研修センター建設の進捗状況

依藤:技術研修センター建設の進捗状況についてご報告します。現在、名古屋市南区に技術研修センターを建設中で、竣工予定は2024年の9月です。クリーンルームや病院の模擬設備などを設置し、現場で即戦力となる技術者の育成を目的としています。研修所の稼働を社員のみんなが本当に楽しみにしています。

2023年3月期経営成績 1/4

依藤:業績ハイライトです。メンテナンスサービス売上高は、12期連続で過去最高を更新しています。その下の段のリニューアル工事完成工事高も順調に推移し、過去最高の売上高となっています。

親会社株主に帰属する当期純利益は、2022年3月期にかなり大きく上がっていますが、これは政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却による利益が計上されたためです。これにより、2023年3月期は下がっているように見えています。

2023年3月期経営成績 2/4

依藤:受託施設別売上高です。グラフからもおわかりいただけると思いますが、病院及び研究施設を示す青いグラフが、順調に右肩上がりで伸びています。製造工場等、その他の特殊な施設、オフィスビル等も概ね順調に伸びている状況です。

2023年3月期経営成績 3/4

依藤:年間契約売上高は年々安定してきています。先ほど病院はどうなっているのかというお話がありましたが、安定して受注できていますので、急に下がることはない状況です。

また、スポットメンテナンス他売上高は、病院及び研究施設と製造工場等がしっかりと成長しているように思います。リニューアル工事完成工事高も、ほぼすべての部門で右肩上がりとなっていますので、順調に受注が伸びている状況です。

2023年3月期経営成績 4/4

依藤:海外の売上高は、若干苦戦しています。中国を示す青いグラフが、若干下がっています。中国ではコロナ禍の影響が特に大きく、過去のトレンドとの比較も難しいところです。

しかし、それでもシンガポールなどはしっかりと伸びています。緑のグラフを「その他」としていますが、ここにはタイとベトナムが稼働国として含まれています。これらの国は市場が潤沢で、国民の平均年齢も若いため、市場の伸びしろは十分にあるのではないかと考えています。

数字として見ると、まだ利益が若干マイナスではありますが、今後はしっかりとプラスに持っていきたいと考えています。

増井:シンガポールの工場というのはどのような業種でしょうか?

依藤:シンガポールはお菓子工場の他、いろいろな工場がありますが、どちらかというとオフィスビルの仕事が多くなっています。シンガポールは年中暑い国ですので、冷房をガンガン効かせているような建物が多くあります。そのような場所には、かなり大きな設備が導入されていますので、主にそのメンテナンスや機械の入れ替えなどを行っています。

増井:工場だけではないということですね。

依藤:おっしゃるとおりです。

2024年3月期業績予想

依藤:2024年3月期業績予想です。新型コロナウイルス感染症対策や、不安定な国際情勢、物価上昇、また、供給制約の影響もまだ続いています。そのような中で、省エネや省コスト等をしっかりと提案することによって増収増益を目指すことに取り組んでいます。

スライド右側の黄色の表が、「2019中期5ヵ年経営計画」の目標数値です。2024年3月期はその最終年度にあたります。先ほどのような状況の中でも、560億円の売上を目指しつつ、なおかつ人件費においては平均6.8パーセントの賃上げを行いました。今はしっかりとそれを吸収しながら、利益を残せるようにがんばって取り組んでいるところです。

2024年3月期2Q対予想進捗率

依藤:第2四半期の予想進捗率です。スライドには前年度と今年度の第2四半期を比較したグラフを記載しています。

今年度の上半期はかなり良いスタートを切ることができ、そのまま終えることができました。賃上げで給与水準が上がった部分をしっかりと吸収しながらも、前年度より数字が伸びています。

長期ビジョン達成に向けて

依藤:長期ビジョン達成に向けてということで、人的資本の価値向上により、資本生産性の向上にしっかりと取り組みます。そこから持続的な株主価値向上へとつなげ、「全てのステークホルダーの幸せ向上」を実現したいと考えています。

人的資本の価値向上

依藤:人的資本の価値向上に向けて、2021年4月から4つのプロジェクトを立ち上げています。人に関するもの、社員の満足度に関するもの、技術力の向上に関するもの、そして教育に関するものの4つです。教育については、新たな技術研修センターを建設しています。各種プロジェクトを重要な経営課題と考え、積極的に取り組みを進めています。

八木:御社には技術社員の方が多いということでしたが、営業を担当されている方ももちろんいらっしゃると思います。その中で人手不足感、人材不足感が高まっているのは、やはり技術社員のほうであるため、新たな技術研修センターを作られているのでしょうか?

依藤:技術研修センターは技術だけではなく、さまざまな分野の研修をできるように建設しています。営業担当者はどちらかというと、座学よりも現場に出て学ぶことが多いのではないかと思います。ただし、営業担当者も技術についてより詳しく知っているほうがお客さまと話がしやすくなります。そのため、当然営業担当社向けの勉強会にも取り組んでいきたいと考えています。

八木:毎年コンスタントに新卒の方を採用しているようですが、基本的には中途採用よりも新卒採用に重きを置いているのでしょうか?

依藤:基本的には新卒採用を行って、このような技術研修センターなどでしっかりと研修し、技術力を高めていくところに重きを置いています。

株主還元の状況

依藤:株主還元の状況です。2022年3月期は、投資有価証券の売却により、特別配当としてプラス13.5円をお支払いしています。

2023年3月期は通期で28円となり、2022年3月期に特別配当をお支払いした関係上、減配と言われ、かなり悔しい思いをしました。それでもコンスタントにしっかりとお支払いできていると思います。今年度に関しては中間配当15円、通期で30円となる予定です。

増井:配当性向50パーセント相当ということですが、下限や上限などはあるのでしょうか?

依藤:下限や上限は特に設けていません。配当性向50パーセントを目標としています。

財務KPI

依藤:「2019中期5ヵ年経営計画」の最終年度である、2024年3月期の財務KPIです。売上550億円、営業利益30億円、親会社株主に帰属する当期純利益19億円、EPS54円です。EPSは配当性向50パーセント維持の数字となっています。

ROEは2023年3月期において9.4パーセントですが、10パーセントを目標に取り組んでいきたいと思っています。これらを達成することにより、新たな中期経営計画につなげていければと考えています。

全てのステークホルダーの幸せ向上を目指して

依藤:長期ビジョンを実現させるための、当社の考え方を総括していきたいと思います。

まず非財務資本については、従業員、技術力、満足度をしっかり高めていきます。当社の重要な人的価値を高め、社会的価値の向上を図ることで、売上・利益をしっかり増加させ、株主さまへ還元するという考えで経営しています。

そして、ステークホルダーとの目的を持った対話を通し、持続的な株主価値を創出することが、「全てのステークホルダーの幸せ向上」につながると考えています。

増井:EPS向上を目指しているということですが、どのような取り組みをされているのでしょうか? また、成長戦略で最も力を入れているのはどのようなことでしょうか?

依藤:成長戦略で最も力を入れていることは、やはり特殊な環境を有する施設への傾注です。特殊な環境を有する施設の受託割合を増やすことで、競合他社の少ない環境で仕事ができるため、利益が安定すると考えています。

EPSの向上については、しっかりと売上・利益を伸ばして還元することが一番の目標です。そこに対して真面目に取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:病院領域での競合他社について

八木:「600床以上の病院のシェアが11.4パーセントというお話がありましたが、残りのシェアには、例えば空調機器メーカーが入っているのでしょうか? それとも御社のように管理を専門に行っている競合他社がいるのでしょうか?」というご質問です。

依藤:当社と同じような業態の会社としては、非上場の比較的小規模の会社が多数ありますので、残りのシェアにはそのような会社が入っています。

八木:同じような業態の会社であっても、御社には強みがあるということですね。

依藤:そのとおりです。管理はできるがメンテナンスや工事はできないという会社がほとんどで、当社のように管理だけではなく、メンテナンスや工事も行うことができる会社はなかなかないと思います。

質疑応答:物件獲得について

増井:「新築時以外でも物件獲得のチャンスはあるのでしょうか?」というご質問です。

依藤:当社は新築案件を扱っていないというお話をしました。そのため、既存の建物にしっかりと営業がアプローチをかけていきます。

例えば、今依頼している会社にあまり満足していない、あるいは今入っているメンテナンス会社の動きが悪いという施設に、「では1度当社を使ってみませんか?」とお声がけしたことで、お付き合いがスタートした既存顧客はやはり多いです。

また、もちろんコンサル会社などから紹介されることもありますし、お付き合いのあるゼネコンやサブコンから声をかけてもらうこともありますので、いろいろな切り口から仕事を増やしてきています。

質疑応答:海外展開について

八木:「海外展開している地域と展開時期についても教えてください」というご質問です。

依藤:バングラデシュやミャンマーにも進出はしていましたが、やはり国が安定していないことと、危険性もあるということで、現状は休眠中となっています。

また、国内でお付き合いのある日系企業がどこかに工場を出す場合、その1社だけではなかなか商売が成り立たないため、工業団地の中にお付き合いのある企業がたくさん進出した時には、新しい国にもチャレンジしたいと思っています。

質疑応答:半導体工場への営業について

増井:「半導体工場の建設が進んでいますが、この分野への営業はされているのでしょうか?」というご質問です。

依藤:今、九州の熊本において世界的に有名な半導体企業の工場が進出していますが、もちろんそこに当社も入っています。

もともと当社は、日本国内の有名な半導体会社とほとんどお付き合いしていますので、そのような企業からお声がかかることもあります。

また、サブコンやゼネコンは、メンテナンスを行う会社をあまり持っていませんので、お客さまから「そのような会社を紹介してほしい」というお話が出ると、当社を紹介してくれることもあります。このようなケースは非常に多いですね。

八木:病院と同じくかなり特殊な環境や、特殊な設備が必要な案件ということですよね?

依藤:おっしゃるとおりです。空間を冷暖房するだけの機械ではなく、特殊な機械を動かすための冷房装置などもあります。それが故障してしまうと、機械自体が温度上昇異常で止まりかねません。そのような設備のメンテナンスはかなり重要であると思っています。

八木:先ほど「シビアな環境」とお話しされていましたが、やはりそのくらいしっかりコントロールをしなければ、工場の稼働もままならないという状況なのですね。

依藤:そのとおりです。

質疑応答:東京や大阪での株主説明会・懇談会について

八木:「東京や大阪での株主説明会・懇談会の復活はないのでしょうか?」というご質問です。

依藤:一時期、コロナ禍の影響により、リアルでできることが減ってしまいました。その中で、IR活動もWebで実施することが増えていき、そのままWeb半分、リアル半分という状況が続いています。

しかし、当社のIR活動はいろいろなところで行っていきたいと考えています。冒頭でもお話ししたように、当社はまだ知名度が低いため、しっかりと会社を認知していただくという意味でも、機会があればどんどん実施したいと思っています。

ただし、従前実施していた株主説明会・懇談会について、説明会は今期Webで実施したものの、懇談会は株主数増加や会場手配などの都合上、復活は難しいと考えています。

質疑応答:太陽光の実績について

増井:「太陽光発電事業の実績についてもう少し詳しく教えてください」というご質問です。

依藤:太陽光発電事業については、北陸にある当社のグループ会社が得意としています。あるメーカーの太陽光パネルの出荷数は、当社がNo.1だと聞いていますので、相当な数ではないかと思っています。

質疑応答:正社員の割合について

八木:「従業員の正社員比率が年々増加していますが、じわじわと正社員の割合を引き上げているのでしょうか? あるいは引き上げていく方針なのでしょうか?」というご質問です。やはり人材に関して気になっている方が多いようです。

依藤:正社員の割合は引き上げています。契約社員で入社したとしても、1年後に正社員登用試験にチャレンジすることができます。

基本的には本人が希望すれば、当社のために真面目にがんばってくれている社員は正社員にしています。契約社員の方は少なく、正社員比率は高いほうだと思います。

増井:新卒の早期戦力化というお話がありましたが、だいたいどのくらいで戦力化されるのでしょうか?

依藤:3年はかかると思います。ただし、例えば半年ほど技術研修センターでしっかりと教育した場合には、その3年が、2年や1年半に短縮されることもあると思います。それが会社にとって大きな力になってきますので、そこを目指したいと思っています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:大株主の中に光通信の創業者がいらっしゃいますが、何か仕事上の関係があって株式を保有されているのでしょうか?

回答:特に関係はありません。

<質問2>

質問:今回紹介のあった特許は国際出願していますか? また、出願国はどちらでしょうか?

回答:PCT(国際出願)は提出済ですが、現時点で特許を申請している国はありません。

<質問3>

質問:メンテナンス契約の単価の改定はしないのですか?

回答:特に今期は賃上げや物価高を見積り価格にしっかりと転嫁を進めています。

<質問4>

質問:海外で病院の建設運営を行っているような会社との業務提携等は考えていらっしゃいますか?

回答:将来的な可能性としてゼロではありませんが、現状は日系製造工場を中核として、安定した収益基盤の確立を目指します。