当社従業員らによる不正行為について
藤澤一郎氏(以下、藤澤):2023年3月期の決算説明にあたり、まず藤澤より、当社従業員らによる不正行為についてご説明します。
当社大阪本社に勤務する複数の従業員が、特定の工事下請業者と協力し、当該業者に対して水増しまたは架空発注額の一部をキックバックとして受領し接待交際費に費消していたこと、および、当社が当該業者に対して発注する別工事の工事代金に充てる方法等による工事原価の付け替えを行っていたことが判明しました。
キックバック不正により、2015年3月期から2023年3月期までの期間において、当社に発生した損害額は総額で約1億7,300万円になります。このような事態が発生したことは、誠に遺憾であり、株主のみなさまをはじめとする関係者のみなさまに多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを、深くお詫び申し上げます。
原因分析および再発防止策についてご説明します。本不正行為は、内部統制システムによる発見が困難な当社従業員と取引業者の共謀によるものであり、コンプライアンス意識やコンプライアンス教育の不足、一部部門におけるガバナンスやリスクマネジメントのプロセスが有効に働いていなかったこと等が原因に挙げられます。
当社は、この度の事態を真摯に受け止め、社内および協力会社に向けたコンプライアンスの周知と教育の徹底、業務フローの改善等、複数項目に渡る再発防止策を策定しました。今後、再発防止策を実行して、みなさまの信頼回復に全力で取り組んでいきます。なお、本不正行為による2023年3月期の業績に与える影響は限定的なものとなります。
株主のみなさまをはじめとする関係者のみなさまに多大なご迷惑とご心配をお掛けしたことを、あらためて深くお詫びするとともに、今後は再発防止策を実行し、みなさまの信頼回復に全力で取り組んでいきます。それでは、亀井業務本部長より、2023年3月期の決算についてご説明します。
連結業績サマリー
亀井保男氏:亀井より、連結業績のサマリーについてご説明します。スライドには、連結経営指標等のうち経営成績を記載しています。
上から順にお伝えします。期首繰越工事高は前期比207億3,800万円、14.5パーセント増の1,637億8,200万円、受注工事高は前期比226億6,900万円、12.3パーセント増の2,063億3,700万円となりました。当期は、再開発案件および産業施設案件を中心に、受注が好調に推移しました。完成工事高は、前期比230億3,200万円、14.1パーセント増の1,859億6,100万円となりました。
完成工事総利益は、利益率が低下したものの、前期からの繰越工事および期中の受注工事の増加に伴う完成工事高の増加により、前期比19億円、9.2パーセント増の226億2,400万円となりました。営業利益は、完成工事総利益の増加により、前期比8億4,400万円、11.1パーセント増の84億2,800万円となりました。
経常利益は、営業利益の増加により、前期比11億9,300万円、14.7パーセント増の92億8,800万円となりました。当期純利益は、前期比8億4,800万円、14.7パーセント増の66億2,600万円となりました。以上のとおり、受注工事高、完成工事高ともに増加し、利益項目についても増益となりました。
連結業績サマリー
連結営業利益の前期からの変動について、ウォーターフォールチャートにてご説明します。2022年3月期の連結営業利益の実績は75億8,400万円でしたが、2023年3月期の実績は84億2,800万円となりました。
内訳は、完成工事高の増加によりプラス29億3,000万円、円安に伴う為替影響によりプラス3億4,900万円、完成工事総利益率の低下によりマイナス13億7,800万円、一般管理費の増加およびその他の要因によりマイナス10億5,700万円となりました。
連結業績サマリー
当社の業容を示す連結部門別工事高についてご報告します。スライドの表のうち、上段が受注工事高、中段が完成工事高、下段が繰越工事高を示しています。内訳は電気工事、管工事となっており、管工事の内訳として空調工事、水道衛生工事に区分しています。
先にご説明したとおり、受注工事高および完成工事高はともに増加となりました。受注工事高の部門別内訳では電気工事、管工事ともに増加し、管工事の内訳も空調工事、水道衛生工事ともに増加しました。こちらは主に工場、データセンター、海外リゾート施設の熱源工事などの受注によるものです。
完成工事高の部門別内訳では電気工事、管工事ともに増加し、管工事の内訳も空調工事、水道衛生工事ともに増加となりました。こちらは主に工場、データセンター、再開発などの大型案件が順調に進捗したことによるものです。
繰越工事高については、前期からの繰越工事高および期中の受注工事の増加により、前期比203億7,500万円、12.4パーセント増の1,841億5,800万円となりました。部門別内訳では電気工事は減少、管工事は増加し、管工事の内訳では空調工事、水道衛生工事ともに増加となりました。
連結業績サマリー
財政状態の概要をご報告します。スライドの表の上から順にご説明します。純資産は前期末比51億8,200万円、6.7パーセント増の824億2,400万円となりました。総資産は、現預金の増加及び関係会社株式の取得などにより、前期末比94億4,400万円、6.8パーセント増の1,485億4,400万円となりました。
1株当たり純資産は3,841円33銭となり、2023年3月末の株価が2,369円でしたので、株価純資産倍率は0.62倍となりました。また、財務健全性を示す自己資本比率は、前期末から横ばいの55.4パーセントとなりました。
続いて、キャッシュ・フローの概要についてご報告します。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の回収が順調に進んだため、159億4,100万円の資金増となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社株式の取得による支出等により、47億2,900万円の資金減となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払等により、22億1,800万円の資金減となりました。これにより、現金及び現金同等物の期末残高は、期首残高160億3,700万円から93億1,000万円増加し、253億4,800万円となりました。
連結業績サマリー
スライドは、ただ今ご説明したキャッシュ・フローの変動についてのウォーターフォールチャートです。なお、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行3行と貸出コミットメントライン契約を締結しています。連結業績のサマリーに関するご説明は以上です。
受注工事の状況
2023年3月期通期決算のハイライトをご説明します。まずは、受注工事の状況です。リニューアル工事については、小規模案件は増加したものの、前期の大型案件受注の反動により、前期比55億3,300万円、6.2パーセント減の836億9,100万円となり、リニューアル比率は40.6パーセントでした。
直接受注は、産業施設工事や海外工事の受注により、前期比33億800万円、3.8パーセント増の902億9,300万円となり、直接比率は43.8パーセントでした。官庁工事は、前期の大型案件受注の反動減により、前期比115億7,200万円、36.9パーセント減の198億3,000万円となり、官庁比率は9.6パーセントでした。
受注工事の状況
産業施設工事の受注状況です。当社では、工場、研究所、データセンター、物流施設を産業施設工事と区分しています。省力化・デジタル化の進展に伴い、データセンターなどのDX関連の建設投資が堅調となりました。これらの大型案件を複数件受注したことにより、前期比165億4,700万円、22.2パーセント増の911億8,100万円となりました。
また、受注工事高合計に対する比率は前期より3.6パーセント上昇し、44.2パーセントとなりました。なお、産業施設工事は、受注工事高ならびに受注比率ともに過去最高の水準となりました。
受注工事の状況
海外事業の受注状況です。当社の海外事業は、シンガポール支店および現地法人、タイの現地法人、ベトナムの現地法人、台湾の現地法人の4ヶ国を中心に展開しています。
当期は、シンガポールでの大型リゾート施設の熱源工事の受注に加え、タイでも大型工場の受注などがありました。その結果、受注工事高は前期比90億400万円、79.1パーセント増の203億9,000万円となりました。なお、海外工事は、直近5年で最も高い受注工事高ならびに受注比率となっています。
完成工事の状況
完成工事の状況です。当期の完成工事高は、最初にご説明したとおり、前期比230億3,200万円、14.1パーセント増の1,859億6,100万円となりました。内訳として、リニューアル工事はほぼ横ばいに、産業施設工事、海外工事は増加となり、特に海外工事は大幅に増加しました。
繰越工事の状況
繰越工事の状況です。当期の繰越工事高は、受注工事高が完成工事高を上回り、前期比203億7,500万円、12.4パーセント増の1,841億5,800万円となりました。医療関連施設、再開発や産業施設などの大規模案件を中心に、来期以降の出来高に寄与する手持ち工事も豊富に抱えています。また当期は、過去5年間において、繰越工事高が最も多くなっています。
四半期ごとの実績状況
スライドの表は、受注工事高、完成工事高、営業利益について、四半期ごとの実績状況を示したものです。以上で、私からの2023年3月期の決算説明を終わります。
通期業績予想
藤澤:2024年3月期の通期業績予想については、藤澤よりご説明します。
当社グループの通期業績予想は、中期経営計画においてトップラインの拡大を目指しており、受注工事高は前期比36億6,300万円増の2,100億円としました。完成工事高は、前期比140億3,900万円増の2,000億円としました。
完成工事総利益は、一部の手持ち工事において利益改善が見込まれるものの、資機材価格・労務費の高騰などの要因により、前期比17億7,600万円増の244億円としました。営業利益は、完成工事総利益が増加するものの、働き方改革推進に伴うDX投資や継続的な採用増などによる経費の増加を受け、業績予想は前期と比較し、7,200万円増の85億円としました。
株主還元
最後に、株主還元の方針についてご説明します。当社は、株主さまへの利益配当による利益還元を、経営上の最重要施策と考えているため、健全な財務体質の構築に努めています。
また、株主さまへのさらなる利益還元を進めるため、2024年3月期より配当性向35パーセント以上を、新たな配当方針とします。2024年3月期の配当金は、中間配当55円、期末配当55円の計110円とし、前期比10円の増配とする予定です。2024年3月期通期業績予想に関するご説明を終わります。
中期経営計画《 整えるステージ 》 の戦略と施策
佐々木洋二氏(以下、佐々木):中期経営計画の進捗状況、およびサステナビリティへの取り組みについてご説明します。
長期ビジョン「Stage2030」で掲げる「空間価値創造企業」に向けた最初の中期経営計画と、国内外の基盤を整備・強化する「整えるステージ」は、本年度が最終年度となります。ここでは、中期経営計画の数値目標の達成見込み、および重要な事業戦略と位置づけている産業施設工事および海外事業の状況を中心に説明します。
また、「技術力の強化」および「新規事業の開拓」については、サステナビリティへの取り組みとあわせてご説明します。
中期経営計画の進捗〈受注高・売上高・営業利益〉
中期経営計画の目標達成の見通しです。通期業績予想で説明したように、売上高については大型化する工事への対応力の強化や、産業施設や海外など注力分野の拡大により、中期経営計画前の2021年3月期から26パーセントアップとなり、目標の売上高2,000億円を達成する見通しです。
売上高の増加に伴い利益は増加していますが、資機材の高騰、働き方改革の推進にともなう経費増、生産性向上のための投資などにより、営業利益は85億円となる見通しです。
働き方改革と生産性向上
DX推進を中心とする働き方改革と生産性向上の事例をご紹介します。当社では、オフサイト加工の拠点を首都圏と関西圏において整備し、一部稼働を開始しました。大規模再開発等の現場において配管等をオフサイトで加工し、工事現場に運搬、設置するサイクルで現場内の作業を削減し、効率的な施工を推進しています。
当社および協力会社の連携も強化しています。そのほか施工プロセスの見える化システム「Construction Visualizer 4D」、現場支援リモートチームとBIMは、着実に社内に浸透し、活用が進んでいます。特に現場支援リモートチームは、専門のサポート部門を設置し、組織的に対応する体制を取ることで、技術者の時間外労働を削減する推進力となっています。
またBIMについて、今年度からの本格的な運用開始に向け、標準化などの環境を整備しています。昨年度は93件でBIM対応を実施しました。
中期経営計画の重要施策〈産業施設工事の拡大〉
重要施策の状況についてご説明します。産業施設工事の拡大に向けた取り組みについてです。中期経営計画最終年度の産業施設工事の受注は950億円と予想し、中期経営計画前の2021年3月期と比較して45パーセントの増加となる見込みです。
足元では半導体製造施設や車載用電池工場、データセンターなどの受注が拡大しています。また、工事の大型化が顕著となり、全受注高に占める産業施設工事の割合は45パーセント程度と予想しています。高度な設備技術を必要とする産業施設工事に対応するため、2022年4月に発足させたエンジニアリング事業部が受注拡大、施工品質の確保に大きく貢献しています。
中期経営計画の重要施策〈海外事業の強化〉
海外事業の取り組みについてご説明します。中期経営計画最終年度の海外事業受注高は、180億円と予想しています。2021年3月期と比較して84パーセント増加する見込みです。当社は東南アジア、特にシンガポールでの事業に注力しています。今年の2月からは現地法人に加え、持分法適用関係会社のPresico Engineering社とともに、さらなる事業拡大を目指しています。
シンガポール以外では、タイでも大型工事を受注しています。また、2020年に設立したベトナム現地法人が新規受注を獲得するなど、成果も出始めています。
マテリアリティの進捗
続いて、サスティナビリティへの取り組みについてご説明します。当社は、優先的に取り組む重要な経営課題「マテリアリティ」を6項目特定しています。これらの中から、脱炭素社会に向けた取り組み「ZEB関連工事の拡大」と、高品質な医療環境の実現に向けた「再生医療分野への取り組み」についてご報告します。また、廃棄物削減に貢献するフィルター再生事業に関する取り組みもご紹介します。
脱炭素社会への貢献
ZEBの普及拡大についてです。当社は自社ビルの ZEB化による脱炭素化の推進のエネフィスシリーズなどに取り組み、ZEBに関するノウハウを蓄積してきました。その技術やコンセプトが各地域から評価され、多くの賞を受賞しています。
また、2050年のカーボンニュートラルに向けて、国土交通省の政策において建築物の省エネ基準が段階的に強化されており、2024年4月以降は、2000平方メートル以上ある建築物の省エネ基準がさらに強化されるなど、ZEB市場の拡大が予想されます。
ZEBは建築後の継続的なチューニングが重要です。設計・施工・運用のライフサイクルを通して脱炭素社会に貢献していきます。
新たな収益源の開拓
新たな収益源の開拓に関する状況をご説明します。はじめにエアフィルターの再生サービス事業についてです。この事業は半導体メーカーをターゲットとし、これまで廃棄していた使用済みの半導体製造装置用エアフィルターを洗浄、再生するサービスです。廃棄物の削減、CO2の排出量削減に貢献します。
世界的に、メモリーなどの半導体は需要減といわれていますが、これは半導体メーカーにおいてコスト削減の動機付けとなり、フィルター再生サービスに強い関心を持っていただいています。さらに、環境負荷低減は半導体製造においても取り組みが必須となっています。
このような背景の下、再生プラントの増強に投資し、有力な半導体メーカが集積する台湾での営業活動を開始しました。これまでは半導体メーカーから試験的な再生を受注し評価をいただきましたが、今後はCO2削減の強化等を背景に、本格採用に向けて取り組んでいきたいと考えています。
続いて、再生医療分野への取り組みについてご説明します。当社の再生医療関連ビジネスの拠点である神奈川県川崎市にあるセラボ殿町が、厚生労働省から再生医療等製品の製造業許可を取得しました。セラボ殿町にある細胞加工施設は、当社の設備技術を活かして開発した新しいコンセプトを持ち、低コストで高品質な細胞加工を行う施設です。
この方式の細胞加工施設で製造業許可を取得したことは、再生医療分野に大きなインパクトを与えました。当社における再生医療関連ビジネスのキーテクノロジーとなるだけでなく、再生医療分野の実用化と発展に大きく寄与できると期待しています。
サステナビリティへの取り組み
これまで紹介した事業活動の他に、気候変動への取り組みや、健康で働きやすい職場環境づくり、特に時間外労働の削減を目指す全社プロジェクト「SMILE 2024」や待遇面の向上などの施策を通してサステナビリティに取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。以上で、2023年3月期決算に関わるご説明を終わります。
質疑応答:配当方針について
司会者:「配当方針の変更について、取締役会ではどのような議論がありましたか?」というご質問です。
藤澤:現行の中期経営計画において、配当性向は30パーセント以上とする方針でした。昨今の状況を鑑みて配当方針を見直し、もう少し引き上げようという議論を行い、2024年3月期より35パーセントとしました。
また、当社は株主さまへの安定配当をモットーとしています。取締役会では、今後の業績や財務状況により配当を引き下げるという懸念を持たれないよう、株主さまへ配慮する必要があるという議論もありました。
この配当性向は下限値です。今期の利益実績が期初の業務予想を下回った場合も、予想配当110円は下げない方針としています。
質疑応答:施工体制について
司会者:「繰越工事高が高い水準にあります。2024年3月期は微増ですが、さらなる受注増が見込まれています。施工体制や、2024年4月からの上限規制対応は問題ないのでしょうか?」というご質問です。
藤澤:受注工事高は微増であり、前期並みとご理解いただければよいと思っています。先ほどのご説明で一般管理費が増加しているとお伝えしましたが、施工体制と2024年4月からの上限規制については、こちらの費用を使った外部人材やDX等のさらなる活用を通し、対応していきます。オフサイトも一部含まれるとご理解ください。
佐々木:追加でご説明します。本年度は海外でも非常に大きな繰越工事量を確保しています。国内においては2事業部制を取り、人材の流動化を図りました。首都圏や関西圏では大型工事を獲得しながら、地方での大型案件や産業案件にも機動的に取り組む体制を取ることで、対応が可能になると考えています。
質疑応答:人手不足の対応と受注単価について
司会者:「受注に対する人手不足はどのように受け止めていますか? 今後さらに人手が不足するのか、または今期はいったん落ち着くのかなど、方向性やお考えを教えてください。また、それに伴う受注単価の引き上げなどは可能な状況にありますか?」というご質問です。
藤澤:みなさまご存知のとおり、人手不足が解消される方向には向かっていないと思っています。それを補うため、我々はさまざまな方策を実施しています。
現在は市況が好調ということもあるため、受注原価を十分精査し、施工可能な案件に取り組んでいきます。
亀井:来年度から始まる残業時間の規制への対応に取り組んでいきます。現場担当者の作業を少しでも削減するため、現場支援部門を新設しました。働き方改革の推進施策により、内勤の事務部門の社員が当該現場支援部門に異動する見込みです。
具体的には、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の導入により、事務の定型作業の自動化や業務フローの全社統一化、経費自動計算システムの導入や電子商品取引などを考えています。ただし、このIT化に伴う費用が一定規模で発生すると見込んでいます。
質疑応答:今後のM&Aの方針について
司会者:「海外で株式取得を行ったとのことですが、この会社を今後、連結子会社にしていく見通しでしょうか? また、今後も国内外においてM&Aを進めていく方針でしょうか?」というご質問です。
藤澤:先ほどお話ししたとおり、持分法適用会社としたPresico Engineering社については、早期に連結子会社化を視野に入れているものの、当面はシナジーの創出を目指しています。
佐々木:手段としてのM&Aについては、国内外においてグループとして拡大していくためには必要であると考えています。本業である設備工事とシナジーが見込める企業や、新規事業の加速につながるような企業に関しては、積極的にM&Aを活用していきたいと考えています。
質疑応答:再生医療分野における利益水準について
司会者:「新規事業として再生医療分野において進展があったようですが、売上高の見通しに対し、利益はどのような水準になりますか?」というご質問です。
佐々木:再生医療分野における進展は、先ほどのご説明どおり、セラボ殿町のCPFで、再生医療等製品の製造業許可を取ったことです。これにより、細胞製造の受託事業に向けて大きく前進したと考えています。
細胞製造受託については近々プレスリリースの予定もあるため、ここでは詳細は省きますが、将来的には市販薬等の製造にも取り組む予定であり、その時点では10パーセント以上の利益を確保していこうと考えています。
質疑応答:海外工事の事業環境の見方について
司会者:「受注案件の状況やリニューアル分野の動向、産業施設需要の動向およびゼネコンによる取引姿勢の変化など、また海外工事の事業環境の見方について教えてください」というご質問です。
藤澤:コロナ禍において、投資の再開に加えて脱炭素、あるいはデジタル化等々の産業系の取り組みなど、建設市場は全般的に活発です。小規模リニューアルについては、コロナ禍前まで水準が戻ってきており、今後も全般的な建設投資は一定期間続くと思っています。
利益面に関しては、受注先のゼネコンの利益率低下や資機材外注費の高騰等の利益下押し圧力が強く、厳しい状況下ですが、適正な原価を見積もり、客先と交渉し、案件の優先度を定めて利益の確保を目指します。
産業系に関しては、昨今の半導体関連の投資も含めて非常に活発な状況であるという情報が手元に入っています。ただし半導体市況は非常にアップダウンが激しいため、これに関してはまだ確たることは言えないものの、全般としてはそのようなかたちです。
また、ゼネコンの取引姿勢ですが、どちらも業界全体として多くの工事を持っているということもあるため、今まで以上にお互いの状況、特に施工の対応状況を確認しながら、理解を求めて進めていくという状況になっています。
海外工事に関しては、プロジェクトが大型化しています。特にシンガポールは大型化が進んでおり、これについては官庁工事であるため、一定のところまで進まないと受注の可否も見えてこないという状況もあるものの、全般的には非常に好調です。加えてタイについては日系企業の投資意欲がコロナ禍前の水準に戻ってきているため、こちらも引き続き内容を確認しながら取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:リニューアル工事比率と利益率の関係について
司会者:「リニューアル工事比率が減少傾向にあります。トップラインが伸びていく中では、リニューアル工事比率がおのずと下がっていきますが、これは利益率が下がることと同義と考えてよいでしょうか?」というご質問です。
佐々木:リニューアル工事の比率が減少傾向ということですが、トップラインを上げていこうという中で、昨今、新築工事が非常に大型化しているという関係もあり、リニューアル工事の比率は下がっています。
利益面においては、新築工事でも利益を獲得できる案件もあり、改修工事においても利益率がなかなか厳しい案件もあります。利益率はリニューアル工事のほうが比較的高めになる傾向にあるものの、リニューアル工事の比率が下がることが利益率が下がることと同義かといいますと、そうではないと言えます。
質疑応答:取り組んでいる生産性向上施策について
司会者:「一時期に比べると伸び率は鈍化しているものの、建設資材、建設労務単価の上昇が続いています。さらに、来年度からの働き方改革に伴う残業規制により、一段とコストアップが懸念されています。御社が取り組んでいる生産性向上施策を教えていただければと思います。具体的事例があれば幸いです」とのご質問です。
藤澤:まず、建設資材や労務単価の上昇についてですが、確かに上昇は続いており、特に資材のほうは天井で止まっている様相を呈しています。一方の労務単価は上昇しているものの、こちらも伸び率は昨年度よりは下がっているため、このあたりについては、「状況を見ながら」と考えています。
また、働き方改革関連の残業規制等によるコストアップの懸念に関しては先ほど全体説明の中でお話ししましたが、一般管理費増の中で利益が上がらないのは、そのような費用を見込んでいるとご理解いただければと思います。
佐々木:具体策についてお話しします。一般管理費に関して、働き方改革、あるいは生産性向上に投資をしていますが、先ほどの説明でも簡単に触れましたが、1点目はオフサイト加工の推進です。
具体的には、大型再開発等の現場の部品・部材をオフサイトの工場で大量に加工し、それを現場に運び、現場では取り付けるだけというかたちにして生産性の向上を図っています。
2点目は、先ほども亀井がお話ししましたが、組織として現場サポートを行えるようにしていることです。具体的には現場で作成する大量の書類等を、オフィスにあるサポート部門が作成することであり、その体制作りに向けてIT関係の投資をしています。
質疑応答:インフレに伴う業績への影響について
司会者:「インフレに伴う業績への影響について教えてください」というご質問です。
藤澤:こちらについては、昨年度の建設物価全般は5パーセントアップしたものの、実質はもう少し上がっています。受注については先ほどお話ししたとおり、資機材も含めた価格の上昇は原価側に織り込み、受注対応できるものを受注するということで進めていくため、利益減への懸念はないと私は判断しています。
また、市況全体が非常に活発であり、その中でもある程度優先順位をつけながら物件を受注していくため、影響は限定的であると考えています。
質疑応答:為替変動に対する売上高および利益の影響額について
司会者:「御社の為替変動に対する売上高、利益の影響額について教えてください」というご質問です。
亀井:当社はシンガポールに支店を有しています。2022年2月後半から急激な円安が始まっているものの、2023年3月期においては、外貨建て売上や利益に寄与しています。
シンガポールドルは、期初に90円49銭のところ、期末が100円60銭まで円安となりました。この影響において、売上高で約14億円増、利益で3億5,000万円増の為替影響がありました。また、金銭債権の換算により、営業外利益で3億3,000万円の為替差益を計上しています。
なお、2024年3月期の業績予想には、この為替影響は見込んでいません。
質疑応答:産業施設工事の拡大の進捗に対する評価について
司会者:「産業施設工事の拡大の進捗について、2023年3月期から2024年3月期の受注の伸び率が、過去の2桁増から4パーセント程度に減速していますが、どのように評価しているのでしょうか?」というご質問です。
佐々木:産業施設工事については、中計前の受注比率が30パーセント程度でして、今年度は45パーセント程度を目標にしてきました。この先については、半導体等に見られるように景気の変動を受けやすいこともあるため、全体としては受注比率50パーセント程度を目標に、活動していこうと考えています。
新築工事においても、将来の改修工事の受注に向けてストックになると考えて施策を進めていきたいと考えています。
藤澤氏からのご挨拶
それでは、私から最後に一言ご挨拶いたします。本日は当社の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございました。Web形式ということもあり、ご説明がいたらぬ点もあったかと思いますが、ここまでのお時間にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。