第一稀元素化学工業株式会社とは

國部洋氏(以下、國部):第一稀元素化学工業株式会社の國部でございます。ご視聴いただきまして、誠にありがとうございます。説明会ということで、会社の概要から説明させていただきたいと思います。

今、67期目に入っている、ジルコニウム化合物の世界トップメーカーです。「稀な元素を専門に扱う会社として、一番であり続けたい」という思いで、この長い社名を付け、ジルコニウム化合物の専業メーカーとしてやってきました。

上場時には、名前を横文字にする、あるいは短くするという話もありましたが、かたくなにこの社名を守っています。海外ではDKKと略して呼ばれたり、国内では稀元素、もしくは一稀さんと呼ばれています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):創業のきっかけは、どのようなものだったのか教えてください。

國部:創業者には、化学の分野で世の中に貢献したいという思いがありました。どの元素がいいだろうかといろいろ考えた時に、当時、原子力にかなり注目が集まっていまして、金属ジルコニウムが、ウランなどの燃料棒の被覆管に使われていました。

実験レベルですが、それを国内で初めて作ってみたところ、非常に原価が高く、それだけではなかなか商売にならないということで、他のジルコニウム化合物を作り始めました。最初は撥水剤から始まったのですが、その後、電子材料や光学材料へと事業を展開してきました。

経営理念

國部:我々は、「世に価値あるものを供給し続けるには価値ある人生を送るものの手によらねばならぬ 価値ある人生を送るためにはその大半を過ごす職場を価値あるものに創り上げていかねばなるまい」という経営理念を大切にしています。

この「価値あるもの」「価値ある人生」「価値ある職場」を、我々は「3価値」と呼んでいます。「3価値」の実践活動が我々の存在意義だと肝に銘じて、事業運営を続けています。

どのようなものを作っているかと言うと、スライドの写真にもあるような粉末です。液体もありますが、大半がこのような粉末となっています。

ジルコニウムとは

國部:ジルコニウムとは何なのかをご説明します。まず、原子番号は40番です。周期表の語呂合わせなどで、20番目くらいまではみなさまも覚えているかと思うのですが、40番まではなかなかたどり着きません。

あまり耳にすることのない元素かと思うのですが、実は埋蔵量自体はそれほど少なくはなく、金属の中では14番目です。例えば、ニッケルや銅の2倍くらい、亜鉛に比べると20倍くらいあります。我々は、まだまだこのジルコニウムをいろいろなかたちに変えて、世の中に貢献できるのではないかと考えています。

また、スライドの中央に「鉱石を分解して精製」と書いていますが、海外から鉱石を買って、それを分解し、粉末状の酸化ジルコニウムにしています。今の為替ですと、鉱石のジルコンサンドは1キログラムで500円くらいです。粉末状の製品になると、1キログラムで2,000円から3,000円になります。添加元素によっては5,000円など、もっと高いものもあるのですが、そのような価格帯の製品です。

坂本:産地はどのあたりですか? 主要な産地があれば教えてください。

國部:ジルコンサンド自体のメインの産地はオーストラリアと南アフリカです。加えて、最近、ベトナムにも非常にたくさんのジルコンサンドがあることがわかりました。現在、その鉱石からオキシ塩化ジルコニウムという中間原料を作る工場をベトナムに建てています。

坂本:鉱石は、石のようなものなのですか? それとも、土から精製するのですか?

國部:ジルコンサンドと言われるとおり、砂になっています。黄土色といいますか、茶色っぽくてサラサラの海にあるような砂です。

また、スライドの右側に「化合物になるとさまざまな特性を発揮」と書いています。表題に「無限の可能性を秘めた、夢の素材」と書いているとおり、ジルコニウムそのものは、熱に非常に強い、硬い、酸・アルカリの薬品等にも強いなどの特長があります。加えて、他の元素と複合化すると、非常におもしろい機能を果たします。

例えば、イットリウムという元素とくっつくと、しなやかさと強さを兼ね備えたセラミックスができ、キッチンナイフや歯などに使われます。また、酸素イオンが通ったり、圧力をかけて電気が出るなど、本当におもしろい機能をたくさん出せる元素です。

1つの元素でこんなにいろいろな機能が出せるのは、他にはあまりないのではないかと思っています。存在量はそれほど稀ではないですが、このようないろいろな機能を出せるという意味で、類稀なる元素と考えて、ずっとこのジルコニウムを研究し続けています。

増井麻里子氏(以下、増井):アクセサリーで、ダイヤモンドに近いかたちでジルコニアというのがありますが、あれは関係あるのですか?

國部:キュービックジルコニアというものが、まさにジルコニウムです。我々も昔はキュービックジルコニアを作っていたのですが、中国などで非常に安く作られるようになったため、現在ではもう少し付加価値の高いものに特化して作っています。

当社製品の使用例

國部:具体的な用途をいくつかスライドに示しています。スライドの右上の自動車排ガス浄化触媒用材料が我々の今のメイン事業であり、売上の6割程度を占めています。2020年に経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれ、この分野でしっかりと存在感を示しています。

それ以外には、電子材料・酸素センサーなどがあります。積層セラミックコンデンサ(MLCC)に添加されたり、PZT(鉛、ジルコニウム、チタン)に使われています。また、最近では、二次電池のリチウムイオンバッテリーの正極材への添加剤としても急激に伸びています。

さらに、ファインセラミックスとあるのは歯科材料です。非常に生体親和性がよいのが特徴で、アレルギーの心配がなく、非常に熱に強い、そして硬いといったことから歯科材料に使われます。

ジルコニウムは着色できますので、例えば、1本だけ歯が抜けたとしても、その患者の歯の色に合うものが作れます。日本ではまだ保険適用されていないため少し高いのですが、欧米やインド、中国では、最近非常に増えてきています。

スライドの左上には燃料電池と書いてあります。今は天然ガスを燃料として電気を発電していますが、これがいずれ水素やバイオマス燃料になると、非常にクリーンな発電装置となり、環境にも貢献できる、楽しみな素材だと思っています。

他にもいろいろありますが、主なものはこのようなところです。陰ながらいろいろな分野で世の中に貢献している材料です。

【参考資料】環境分野への素材供給:自動車排ガス浄化触媒用途

坂本:自動車の触媒部分は、プラチナのイメージが非常に強いのですが、これは代替できるのでしょうか? それとも混ぜるのでしょうか? 

國部:自動車排ガス浄化触媒では、貴金属であるロジウム、パラジウム、白金の3つが触媒機能を果たします。しかし、スライドにあるとおり、貴金属だけでは劣化しやすく、長く使っていると機能が低減してしまいます。

ジルコニウムとセリウムからなる助触媒が貴金属をサポートします。スライドでは、ピンク色のマスコットキャラクター「セリアちゃん」が描かれていますが、そのセリウムは、酸素を吸ったり吐いたりします。

三元触媒というのは、HC(ハイドロカーボン)とCO(一酸化炭素)とNOx(窒素酸化物)を同時に無害なものに変えるのですが、そこに酸化・還元が必要になりますので、セリウムが酸素を吸ったり吐いたりすることで、浄化が進むということです。

ただ、セリウムも単体では熱に弱いため、ジルコニウムが必要になります。ジルコニウムが合わされば、10年にわたって触媒性能が発現し続けます。ハニカム担体に我々のジルコニウムとセリウムの化合物がコーティングされ、その上に貴金属が載るようなイメージです。

製造・販売体制は

國部:製造・販売体制についてです。10年くらい前までは、中間原料を中国から買って日本で製品を生産し、国内外のお客さまに販売するというビジネスでした。

前の中期経営計画の中で、原鉱石から中間原料を作るけっこう大きな規模のデモプラントをベトナムに設置して、オキシ塩化ジルコニウムという中間原料を作る体制を整えました。そして、中国の上海、タイのバンコク、北米はデトロイトに販売会社を置いて販売するかたちにしました。

加えて、合弁でロジスティクスの会社も作りました。その結果、我々は鉱石分解から最後の流通までを独自でワンストップで手掛けられる企業グループということになります。

スライドの下の円グラフにあるとおり、輸出比率は半分以上となっており、地域もまんべんなくいろいろなところに使っていただいています。

持続可能な原料調達に向けて

坂本:ベトナムが産地ということですが、ベトナムがよいというのは、地の利やコストなどが理由でしょうか?

國部:ベトナムのジルコンサンドだからよいということは、特にはありません。ジルコンサンドは、66パーセントくらいがジルコニウムで、残りの30パーセント以上はシリカという我々は使わないものが入っており、それが残渣として出ます。

例えば、中国は、中国国内で中間原料を作るため、オーストラリアや南アフリカから持ってきた鉱石からジルコニアを取った後、どうしても残渣を中国内に残すことになります。我々は、ベトナムで鉱石を採って現地で中間原料に加工しますので、残渣を産出国から持ち出さないという点で、ベトナムで作る意味があると考えています。

また、価格については市場があるため、それほどベトナム産が安いということはありません。

スライドには「持続可能な原料調達に向けて」と書いていますが、大きく2つの意味があります。まず、地政学リスクへの対応です。世界の99パーセントのオキシ塩化ジルコニウムは中国のサプライヤーに依存しています。そのため地政学リスクが大きいと言えます。

2010年、2011年の尖閣諸島の事件の後、レアアースが中国から入らなくなった時があったと思いますが、その時は我々も大変痛い目に遭いました。我々はジルコニウムで生きていく会社であるため、主原料であるオキシ塩化ジルコニウムを自分たちで手掛ける必要があると考え、ベトナムに中間原料の工場を作りました。

もう1つは、環境の面です。残渣を国外に持ち出さないことや、我々の工程では、酸・アルカリなどの薬品をリサイクルするなど、環境面にも配慮したプロセス設計をしています。地政学リスクへの対応と環境の2つの面で、持続可能な原料調達ができる体制となっています。

今、操業しているデモプラントで、製造工程などの問題点はほぼ解消できたため、写真にある大きな工場を作っているところです。来年の7月には稼働予定であり、完成しますと、我々のオキシ塩化ジルコニウムの調達比率は、中国とベトナムでそれぞれ5割ずつになります。

このような取り組みができる会社は、中国以外では我々だけです。そのため、このプロジェクトは、日本のみならず欧米のジルコニウム関連のユーザーにも興味を持っていただいており、引き合いもかなり増えてきています。

したがって、このプロジェクトをしっかりと立ち上げ、安定して製品を供給できるようにしたいのですが、当面は我々の使用するオキシ塩化ジルコニウムを作るだけで、外部に販売することは考えていません。ただし、まだ拡張余地があるため、将来的にはそこにも対応していきたいと考えています。

研究開発を加速

國部:先ほど製造・販売についてお伝えしましたが、研究開発についても強化していきます。我々はもともと技術立社として研究開発に大変注力してきましたが、今後はそれをさらに加速させるために、大阪市の住之江区に研究開発センターを作っています。躯体自体はできており、来年には稼働することになっています。

現状は実験室が区切られており、オープンスペースになっていません。一方、新しい研究開発センターには広いスペースをつくり、そこでいろいろなアイデアを出し合ったり、実験の風景を見ることができるレイアウトになります。

また、我々が戦略分野と呼んでいる半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアといった事業をさらに加速させるための評価装置や、中量の試作ラインを導入し、スピードを上げて製品を供給できる体制にしていきます。それによって、特定産業に依存しない収益基盤を作ります。

坂本:メーカーに原料として販売するパターンが多いと思いますが、共同研究や産官学連携の取り組みはありますか?

國部:メインは企業のみなさまからニーズをいただき、個別にカスタマイズすることが多いのですが、大学とも接点があります。最近では、独自の助成金の仕組みを持っており、年間20校くらいに助成金を交付する取り組みを何年も続けています。

坂本:それはすごいですね。また、研究に携わっている方の割合はどのくらいですか?

國部:現在、連結で550人くらいの従業員がいる中で100人くらいが技術系職種となっています。

坂本:割合としてはかなり多いですね。

國部:また、100人のうち50人が研究開発職です。我々は人材の採用を強化しており、毎年一定数の技術者を採用しています。

新中期経営計画の開始

國部:前中期計画では、ベトナムにおける事業や研究開発拠点、また販売拠点を整備しながら、事業基盤を作ってきました。しかし、ここにきてカーボンニュートラルへの取り組みが世界的に加速している影響から、電気自動車の普及スピードが一段と早まっています。

コロナ禍の影響もあり、内燃機関搭載車の販売台数は、我々が2017年時点で想定していた数字には到達していません。我々の売上の6割くらいが自動車排ガス浄化触媒です。触媒が不要となる電気自動車が普及すれば、当然影響が出てきます。

このような環境の変化に対応するため、1年前倒しで前中期計画を終了し、意識も行動も変えるということで、今年から新しい中期経営計画「DK-One Next」をスタートさせました。

増井:新しい中計のポイントについて教えてください。

國部:後ほど詳しくご説明しますが、やはり新規事業をしっかり作っていくことがベースにあります。加えて、人材育成の必要性を強く感じており、我々の「キゲンソらしさ」をグループ全体に浸透させたり、人事制度を変えたりして、高いモチベーションで働ける環境を整えていく必要があると考えています。

自動車の電動化について

國部:中期計画のご説明をする前に、「売上の6割を占める触媒がなくなったら事業が立ち行かなくなる」という誤解を受けることがあり、この点について少しご説明させてください。

ジルコニウム化合物は、電気自動車にもいろいろな場面で使われます。ブレーキは電気自動車にも必要ですし、電装化が進むため、電子部品への需要はこれまで以上に増えると考えられます。さらに、二次電池の正極材の添加剤についても、大変な伸び率となっています。

内燃機関搭載車の減少スピードが想定以上に速ければ、一時的に売上に影響が出るかもしれませんが、長い目で見ると、電気自動車にシフトするからといって、我々の事業が大きく縮小するわけではありません。

「BASC」という電池サプライチェーンの協議会に入り、電池関連の情報も収集しています。

坂本: EVになっても御社の売上があまり落ちないというお話ですが、1台に使われる製品の量を教えてください。

國部: EVで使われる可能性があるものがすべて採用された場合、現在の3倍くらいの数量が使われることになります。ただし、単価が異なることから、事業規模がそのまま3倍になるわけではありません。

また、売上の6割を占める自動車排ガス浄化触媒用材料は、もちろん数量も出ているのですが、この分野の製品はジルコニウムとレアアースを複合化させたもので、レアアース原料の単価が高いため、製品の平均単価も高くなります。一方、レアアースを含まないZrO2(酸化ジルコニウム)の製品は、もう少し単価が低いです。

事業ポートフォリオの変遷

國部:スライドの左端が前期、中央が4年後、右端が10年後のポートフォリオをイメージしたものです。中央の自動車排ガス浄化触媒は4年後まで増える想定をしています。環境規制がどんどん厳しくなっている関係で、我々の触媒に求められるニーズも高まっています。数量としても、触媒が1個だったものが、単純に2個になる分野もあったりしますので、まだまだ自動車の排ガス触媒は増えます。

昨今、あまりにEV、EVと言われることから、すぐに自動車排ガス触媒の事業が縮小していくように思われることがあるのですが、2026年から2027年頃までは、自動車排ガス触媒は拡大していくと考えています。ただし、その後はピークアウトを迎えるため、2032年頃には2026年より少し縮小すると思います。

我々としては、半導体・エレクトロニクス、エネルギー、ヘルスケアといった戦略分野に資源を集中的に投下し、自動車排ガス触媒と同じくらいの事業規模に育てることが、今後の活動におけるメインターゲットと考えています。

戦略分野の市場環境と取り組み

國部:スライドの左上にカーボンニュートラルとありますが、燃料電池、水電解、水素生成など、水素を作る、運ぶ、使うなどいろいろな場面でジルコニウム化合物が使われます。

水素を作る場面では、アルカリ水電解やSOFCの逆反応において、ジルコニウム化合物が電解質や隔膜として使われています。これから到来する水素社会に貢献出来ると信じ、鋭意取り組んでいます。

続いてスライドの右側、歯科材料です。歯科材料は歯以外のインプラントの部分や、将来的には人工骨にもジルコニウム化合物が注目されるようになると考えています。チタンの場合、10年に1度ほど人工骨の交換が必要になりますが、ジルコニウム化合物の場合、20年、30年の耐久性があります。人生100年時代になりますと、さらにニーズが高まるのではないかと思います。

また、「ハイブリッド車を含む電池搭載車の増加」というところに、二次電池と書いていますが、現在のリチウムイオンバッテリーの後に、全固体電池が注目されています。酸化物型であれ、硫化物型であれ、全固体電池にもさまざまなかたちでジルコニウム化合物は使われています。

【参考資料】エネルギー分野への素材供給:二次電池用途

國部:現行のリチウムイオン電池は、スライドにあるとおり、正極材へのコートにより安全性を高める働きがあります。一方で、将来の全固体電池については、酸化物型の場合、電解質にリチウムランタンジルコネート(LLZ)が注目されています。

LLZは反応性が低いため、リチウムイオンを通しやすく、電解質として高い性能を示す素材です。このLLZが車載用全固体電池に採用されるとなると、現在の自動車排ガス浄化触媒材料と比べものにならない販売数量になります。ただし、どの形態の電池が主流になるかわからないため、硫化物型などにも同時に関わっています。

スライドの左下、「DX、スマート化の進行、5G、IoTの普及」というところに、半導体、エレクトロニクスとあります。エレクトロニクスについては積層セラミックコンデンサやPZTに使われており、最近では半導体分野でも研磨材をはじめ、いろいろな工程の微量添加剤として使われはじめています。

事業規模は、まだそれほど大きくないのですが、半導体は日本にとっても、世界にとっても重要な産業であるため、この分野でも、ジルコニウム化合物で世界に貢献できるのではないかと考えています。以上が戦略分野における取り組みです。

増井:ジルコニウム以外の元素は取り扱っているのですか?

國部:例えば、アルミニウムのろう付けに使用されるセシウム化合物や、レアアースであるセリウム、ネオジム、プラセオジム、ランタンも扱っています。お客さまからご要望があり、我々のノウハウを活かせる元素であれば、どのような元素でも対応します。ジルコニウムを核に、ノウハウを展開させながら他の元素も扱っています。

坂本:ジルコニウムの売上の割合はどれくらいですか?

國部:9割以上になります。その次がセシウム化合物です。

新中期経営計画「DK-One Next」のコンセプト

國部:こちらは、現在走らせている新中期計画のコンセプトです。ビジョンは「稀な元素とともに、『100年企業』へ」と定めています。ジルコニウムは本当にいろいろな機能を発現する元素です。これからもその多様な機能を活かしながら「100年企業」を目指していきます。

「100年企業」には2つの意味があります。我々は2056年に100期目を迎えるのですが、その前の2050年にはカーボンニュートラルの達成という目標が設定されており、内燃機関搭載車のピークアウトもあります。

我々にとって大きな環境変化を乗り超えて100期目を迎えられるということは、永続的に成長し続ける企業になっていると思いますし、そうなっていたいとの思いから、「100期目を迎える」ということと「永続的に」という2つの意味を込め、「『100年企業』へ」というビジョンを作りました。

何をもって「100年企業」の基盤を作るのかというのが、「6つの柱」になっています。スライドの下部に、「新規事業の創出」とありますが、新規事業については、すでに売上のある電池関連に加えて、これまで手掛けていなかった分野・ビジネスも強化しながら基盤を拡大していきます。

「収益構造の改革」については、今までも改善活動はしっかり行っていましたが、ここではあえて「改革」という言葉を使っています。抜本的に考え方を変えて、収益を増やしながら新しいものを作っていきます。

「サステナビリティへの取り組み」については、企業として必ず対応しなければならないものです。本業でCO2削減に貢献できる製品を作ることと、我々の工程から出るCO2の低減の双方に取り組みます。

これら6本の柱に、前期、中期、後期でそれぞれ4年間、3年間、3年間の計10年間にわたって取り組み、76期には「100年企業」の基盤を確立することを、新中期経営計画のコンセプトとしています。

主な経営数値・方針(2026年3月期)

國部:主な経営数値についてです。我々は、営業キャッシュフローの範囲内で投資キャッシュフローと配当金を賄うことを財務規律として意識しています。単年では投資キャッシュフローが増えたりすることもありますが、4年間の累計では営業キャッシュフローの範囲内で賄うことを計画しています。

経営目標に記載のとおり、前期292億円であった売上高を、2026年3月期には400億円にすることを目指しています。前提条件として、2021年9月時点の原料価格と為替を適用しています。売上高が400億円になるにもかかわらず営業利益が40億円で「全然伸びていない」と見えるかもしれません。

ここで、EBITDAをご覧ください。こちらは営業利益に減価償却を足したものとご認識いただければと思います。ベトナムの事業や研究開発センター、国内工場などに積極的に投資するため、減価償却負担が増えます。その減価償却負担をカバーしつつ利益を増やしていくことを、この4年間の目標にしています。

新中期経営計画の前期にあたる4年間で215億円を投資する計画で、その内訳は、新事業に100億円、サステナビリティへの取り組みに50億円、革新的なものづくりの実現等に25億円、その他に40億円となっています。

株主還元方針と株主構成

國部:最後のスライドですが、我々の方針としては配当性向30パーセントを目指しています。今期は2円ほど増配しており、引き続き安定した還元をしていきたいと考えています。

坂本:この配当性向は、当期純利益に応じたものでしょうか?

國部:おっしゃるとおりです。

坂本:グラフは簡易なEBITDAのようにも見えますが、「最終利益で30パーセント」のイメージということですよね?

國部:そのとおりです。我々はまだまだ投資もしなければいけませんので、ここをきっちりと維持しながら、将来に向けて事業基盤を拡大させていくことを考えています。

質疑応答:資源価格の状況について

坂本:資材と営業部門の責任者を歴任ということで、これまでもさまざまな市況を見てこられたと思います。そこで、みなさんからも市況に関する質問をいただいています。最近は資源価格のブレが起こっているといった現状について、また、今までの経験を今後の経営にどのように活かしていくのかを教えてください。

國部:スライドに、主な元素の市況を記載しています。オキシ塩化ジルコニウム、酸化ネオジム、酸化プラセオジムで調達金額の8割くらいを占めており、そこが我々の売上に大きく影響する部分です。

オキシ塩化ジルコニウムの価格ですが、少し前までは「1キログラム=2ドル」くらいだったものが「1キログラム=4ドル」近くまで上がり、今は中国の内需が落ちているため、再び価格が下がっています。今後も下がり続けるわけではなく、現在の水準で推移すると考えています。

酸化ネオジムや酸化プラセオジムは磁石に使われるものです。ネオジム磁石はよく耳にされると思いますし、需要は必ず伸びていきます。今、単価が一時的に下がっていますが、今後また上昇していくだろうと考えています。

これらの主原料に関して、前四半期の平均市場価格を翌四半期の製品の販売価格に転嫁させていただき、均すと基本的に利益への影響がないようにしています。2011年、2012年と、レアアース価格の乱高下による大きな損失を出したため、その反省も活かして、お客さまときっちりコミュニケーションをとりながら、主原料の価格変動を見ていただくかたちにしています。

また、オキシ塩化ジルコニウムは自社でも手掛け、レアアースも中国外の産出国および会社からの調達量を増やして、地政学リスクを低減するよう取り組んでいます。

質疑応答:為替変動の影響について

坂本:為替変動の影響は大きいのでしょうか? 感応度を含めて教えてください。

國部:我々は輸入も輸出も行っているため、為替が経営に与える影響は大きいです。今期は、「1米ドル=1円」の円安で年間約6,000万円利益が変動します。

坂本:利益が増えるということですか?

國部:円安になるとプラスになります。売上高では、1億2,000万円から1億3,000万円の増収となります。やはり為替の影響は大きいです。

坂本:円安のほうが利益が増える状況ということですね。当然、資源価格がブレたらまた変わってきますよね。

國部:おっしゃるとおりです。

質疑応答:残渣の再利用について

増井:「残渣は、有用な物質として再利用するのでしょうか?」という質問をいただいています。

國部:化合物にして販売しています。

坂本:ジルコンサンドからジルコニウムを十分に取ったあとにもまだ残っているものを、また抽出するということでしょうか?

國部:そうですね。シリカを主原料にした製品を、ベトナム国内で販売します。中国ではタイヤに混ぜたりセメントに混ぜたりしているようですが、我々は化合物として販売します。

質疑応答:競合他社に対する強みについて

坂本:電気自動車では、ガソリン車に比べて3倍のジルコニウム化合物を使用するとなると、新規参入の競合企業が出てくることが予想されます。その点について、参入障壁も含めて御社の強みを教えてください。

國部:自動車排ガス浄化触媒の分野は、年々環境規制が強化されることから、次々に新しい材料開発を主要な触媒メーカーと共同で進めることができたため、参入障壁が高かったと思います。電気自動車に関してはおっしゃるとおりで、今から立ち上がる分野のため、正極材の添加剤に関しては競合が増えることは間違いないと思います。

ただし、我々は、ジルコニウム化合物で培ってきた粒子制御の技術などを活かして、競合よりも性能の高い正極材の添加剤を供給できることを強みとして、お客さまから評価いただいていますので、今後も技術を磨いていきたいと考えています。

質疑応答:新たに取り扱いを考えている資源について

坂本:新しく取り扱いを考えている資源はありますか? 未来の材料などがあれば教えてください。

國部:いろいろと考えてはいるものの、今はジルコニウムをもっと極めていきたいと考えています。ジルコニウムにはほかの元素のよいところを引き出す力があるため、他の元素と組み合わせることで世の中に貢献したいと考えています。今のところ、組み合わせる元素にこだわりはありません。

質疑応答:ジルコニウムの価格感について

坂本:さまざまな化合物があって、さまざまな組み合わせがあると思いますが、ジルコニウムは、レアアースに比べて安いのでしょうか? それとも高いのでしょうか?

國部:ジルコニウムは、レアアースではなくレアメタルですが、やはり単価は高い部類です。そのため、分野によってはもう少し製品価格を押さえる努力が必要かもしれません。(価格帯の低い元素と)複合化させることで製品価格を押さえることもできるので、まだまだ用途は広げられると思っています。

坂本:「最終的な製品が高いものであれば使いますよ」というところでしょうか?

國部:おっしゃるとおりです。

質疑応答:5年後の会社像について

増井:「5年後に目指したい会社像について教えてください」というご質問をいただいています。

國部:10年後に向けた新中期経営計画を立てていますが、その10年間に次々と新しいものを生み出して、1つの分野に依存しない体制を作りたいと考えています。それらを生み出す従業員が、すごく生き生きしている会社を作りたいと思っており、5年後にはその仕組みがきっちりと確立しており、従業員が10年後の姿をイメージできるようにしておきたいと考えています。

「人」のところは時間がかかりますので、変化には10年かかると思っていますが、5年後には「会社はこうなるんだな」ということを従業員が共有できる会社になっていたいと思っています。

質疑応答:ベトナム新工場の業績への寄与について

坂本:ベトナムの新工場が竣工した場合、業績にどのくらい貢献するのでしょうか? 償却負担が増える部分もあると思いますが、利益率の向上にどのくらい寄与するのかも含めて教えてください。

國部:償却負担が増えることはもとより、中国製のオキシ塩化ジルコニウムと、ベトナム(当社グループ)製のオキシ塩化ジルコニウムの価格を比べると、我々のほうが少し高くなります。それは、(中国メーカーが操業を始められた当時に比べると、)環境面への配慮などで初期投資が大幅に増加しているためです。

したがって、単純に利益がプラスになるかというと、そうではありませんが、中国外で(オキシ塩化ジルコニウムを)作っている会社は当社グループ以外にはありませんので、さまざまな引き合いをいただいています。この強みを活かして、今まで手掛けていないビジネスを組み立てることによって収益化を図っていきたいと思っています。詳細はまだご説明できないのですが、早い段階でプレスリリースできるようがんばっていきます。

坂本:他のほとんどのメーカーは中国で生産しているということですね。

國部:そのとおりです。

坂本:もし今後、さまざまな面で「中国との摩擦」のようなものがあると、かなり注目が集まりそうですね。

國部:そうですね。今回のロシアのウクライナ侵攻で、多くのお客さまが地政学リスクを強く感じられているため、注目度が高まっていることを肌で感じています。

質疑応答:供給のキャパシティについて

坂本:供給のキャパシティについてはいかがでしょうか? 中国から持って来ているものと、ベトナムのものとを合わせるとキャパシティはどのくらい増えるのか、どれくらい余裕が出るのかを教えてください。

國部:原料のことですね。ベトナムの新工場が来年7月に立ち上がれば、当社が必要とするオキシ塩化ジルコニウムの5割をベトナムの子会社から調達することになります。

質疑応答:燃料費の高騰について

増井:燃料費が上昇していると思いますが、その影響はいかがでしょうか?

國部:上期の決算でもご説明しましたように、ガス料金や電気料金の価格上昇がボディブローのように効いており、影響が出ています。当然、我々も自助努力によって吸収しようとしていますが、上昇幅が大きく吸収し切れない場合は、お客さまに丁寧にご説明しなければならない局面も来ると思っています。

増井:燃料費上昇の価格への転嫁は四半期ごとに行っていますか?

國部:主原料はおっしゃるとおりですが、燃料は今まで転嫁していませんでした。

質疑応答:リサイクルなど環境への取り組みについて

坂本:環境関連のお話で「リサイクルや再資源化、省資源化の取り組みがあれば教えてください」という質問をいただいています。

國部:ジルコニウムを生産するときに出る廃棄物を再生土にする取り組みを今期から始めました。また、お客さまにお納めした製品を(ご使用後に)回収し、別のグレードの原料として使用する「リサイクル」にも長年取り組んでいます。

坂本:一度化合物にしてしまっても、意外と回収に耐えうる物質なのですね?

國部:そういう分野もあります。一方、触媒分野は回収できないですね。

質疑応答:ジルコニウムの枯渇について

坂本:ジルコニウムが将来的に枯渇するのかについてですが、埋蔵量は多いというニュースもありますので、そこは問題ないでしょうか?

國部:オーストラリアなどと同じくらいの埋蔵量がベトナムにもあると聞いていますので、枯渇はないと思います。

坂本:安定して供給できそうということですね。

國部:おっしゃるとおりです。