2021年度 業績ご報告
小林:それでは、ベネッセグループの今後の戦略についてご説明します。まず、2021年度の総括からご説明します。冒頭の事業報告映像でも紹介しましたが、一部の事業で新型コロナウイルスの影響があったものの、全体では、営業利益ベースで54.1パーセント増であり、大幅な増益となりました。
一方で、ベルリッツの売却により、純利益ベースでは65.9パーセントの減益となりました。ただし、これは2021年度に限った減益ですので、次のスライドで詳細をご説明します。
ベルリッツの株式譲渡について
ベルリッツの売却・株式譲渡についてご説明します。グループ連結への影響は昨年度第3四半期までとなっており、売上は第4四半期分の約80億円の減収、営業利益に与える影響は軽微でした。一方で、売却に伴う関係会社株式売却損が95億円となり、法人税などの減少が38億円あったものの、純利益に与える影響がマイナス57億円となっています。
ただ、この影響は昨年度限りのものであり、今年度からは大幅な税金削減効果・ROEの大幅な改善を見込んでおり、結果として企業価値向上に寄与するものと考えています。
エグゼクティブサマリー
続いて、今年度の計画・見通しについて、全体戦略および各事業ごとの戦略とあわせてご説明します。
まず、今回ご報告する内容の概要をご説明します。1点目は、中期経営計画で設定していました、2022年度末において新型コロナウイルスの影響からV字回復を果たすという目標に対し、実現が見えてきているということ、また重要指標の1つであるROEの大幅な改善を見込んでいることです。
2点目は、2025年度の中期経営計画の目標達成に向けて、既存事業をさらに磨いていくとともに、既存事業の周辺領域での成長と新規領域への取り組みを、より積極的に行っていきます。
3点目は、中期経営計画に対し、財務戦略をより明確にし、資金投資のあり方を今後の重要なKPI・戦略目標にしていきます。
2022年度通期見通しハイライト
今年度の計画見通し数値です。スライドのとおり、売上が4,260億円、対前年マイナス1.4パーセントですが、これはベルリッツ事業の売上が売却によって剥落したことが主な要因になっています。
営業利益は250億円、対前年24.0パーセント増、当期利益は135億円、対前年135パーセント増という計画を組んでいます。特に、企業の収益性を測る代表的な指標であるROEは、0.7パーセントから8.8パーセントと、大きく改善する計画となっています。
中期経営計画(2020年秋発表)の目標の確認
2020年秋に発表した中期経営計画の表です。2021年度から2025年度の5年間を2つのフェーズに分け、各々の位置づけと財務目標を設けており、今回は右下の2023年から2025年度の財務目標をより具体化していこうと考えています。
2025年度の財務KPIのアップデート
具体化したものが、こちらのスライドになります。2025年度の目指すべき売上高・営業利益をそれぞれ5,000億円以上・400億円以上とし、成長の幅の内訳を、既存事業と、新しく取り組むべき既存事業の周辺領域で明確化しました。
そして、収益性を測る指標であるROEの達成年度を、2025年度から2023年度へ2年前倒しし設定したことが、前回との大きな差になっています。中期経営計画策定時点より、内容をより明確化するとともに、より早期に収益性の改善を図ることで、企業価値を高めるよう見直しを行っています。
2025年度に向けた重点テーマ
2025年度の目標実現に向けて、各事業ごとの成長のポイントおよび新しい領域として取り組んでいくテーマについてご説明します。スライドにあるように、既存事業(オーガニック)の変革やスピードアップによる成長と、周辺領域(インオーガニック)の成長を目指していきます。
また、新規領域で取り組むべき事業として、大学・社会人領域と海外展開を重点テーマと位置づけています。
さらに、既存事業領域・新規事業領域ともに成長に不可欠なことはDX活用となります。昨年設立したベネッセイノベーションパートナーを核に、DX推進も強力に進めていきます。
【国内教育】「進研ゼミ」「こどもちゃれんじ」会員数
各事業ごとの重要なテーマ・ポイントについてご説明します。まず、4月の「進研ゼミ」、国内「こどもちゃれんじ」の会員数は、スライドにありますように、249万人、対前年8.3パーセント減となりました。
減少の主な要因は、新型コロナウイルス感染症の長期化によるお子さまの学習意欲低下、保護者の経済不安、少子化の加速、および学校での授業の不安定さによる教材の低活用層の退会などです。
このような状況ではありますが、2022年度は継続施策の強化やマーケティングの効率化により、利益を確保する計画としています。また、2023年度以降は、現状ニーズの多様化や、より活用しやすくすることを目的とした「次世代の進研ゼミモデル」の構築を図っていきます。
【国内教育】「進研ゼミ」の成長戦略
「進研ゼミ」の成長戦略として、スライドのように考えています。既存の講座事業の変革として、本来、進研ゼミの強みの基本価値である、人の力を活かしたサービス強化・活用促進、そして体験型マーケティングモデルの確立によるマーケティング変革の構築です。
一方で、学校の教科の学びだけでなく、お子さまお一人おひとりの可能性や興味・関心を広げる支援として、多様な学びのメニューを充実させ、オンライン習い事サービス「チャレンジスクール」として展開をしていきたいと考えています。
【国内教育】学校向け教育事業
学校向け事業です。スライドの右側にあるように、義務教育領域において、学校でのデジタル学習の進展に伴い、有償のデジタル教材「ミライシード」の活用校数が順調に増え、現在9,000校を超えています。今後も日本の義務教育領域でのデジタル学習の確立に向けて、さらに強化していきたいと考えています。
一方で高校領域では、進路が多様な高校向けの進路支援を強化していくことで、学校現場の新たなニーズに応えていくとともに、大学や専門学校とつなげることで、収益をつくっていく高大接続の領域を強化していくと考えています。
【国内教育】塾・教室事業
塾・教室事業です。スライドにあるように、2020年度は新型コロナウイルス感染症で事業そのものが傷みましたが、昨年度の段階ですでにV字回復を果たすことができています。今年度も順調なスタートを切っており、この業界でのシェアをさらに高めていくために、今後はM&Aも積極的に考えていきたいと思っています。
【K&F(キッズ&ファミリー)】中国こどもちゃれんじ事業
中国こどもちゃれんじ事業についてご説明します。中国こどもちゃれんじ事業の4月会員数は95万人と、対前年15.2パーセントの減少となりました。この主な要因は、昨年度前半からデジタル学習を活用した競合との競争環境の激化であり、この時期に競合は収益性を目的としない販売攻勢をかけてきたと分析しています。
一方で、年度途中から中国政府の大きな政策転換があり、これら競合の行きすぎた事業活動にストップがかかり、現状は競争環境は大きく緩和してきています。この動きを受けて、今年の2月から3月にかけては、新規獲得も継続も順調に回復していましたが、足元ではコロナウイルス感染症によるロックダウンの事業影響が出ている状況ではあります。
ロックダウンが明けつつある中で、再度事業の回復に向けて事業活動を進めているところであり、早期の回復を目指していきます。
【介護・保育】介護事業
介護事業は、国内の事業の中で新型コロナウイルス感染症の影響を最も強く受けた事業です。この影響で今年3月の入居率が90.1パーセントと、対前年でマイナス2.5ポイント下げることになりました。
一方で、足元の状況は、お問い合わせ数および見学数もコロナ前まで戻ってきており、お客さまのご入居ニーズがあることは確認できています。さらなる営業の強化を実行し、早期の回復に取り組んでまいります。
【介護・保育】介護・保育:ベネッセ版介護DX
また介護事業では、スライドにありますように、サービスの質をさらに高めていくために、人とテクノロジーを融合したセンシングホームのサービス開発、および専門性の極めて高いスタッフの知見を全体のサービス力向上に結びつける「マジ神AIソリューション」という取り組みも進めているところです。
今後も施設介護事業のサービス力向上のため、ベネッセらしいユニークで先進的な取り組みを加速させていきます。
【大学・社会人】大学・社会人:既存領域と新たな領域での成長
事業別の最後のご説明です。今後の新たな取り組みである、成長領域として捉えている大学・社会人領域にも積極的に取り組もうと考えています。特に社会人の学びは、先進国の中でも日本が大きく遅れている領域です。
一方で、この領域の国内での市場はすでに1兆円の規模となり、年々増加している状況ですので、教育のベネッセとして挑戦していくべきテーマであると捉えています。
2025年度に売上400億円を目指していますが、さらにその後には1,000億円の事業にするという強い気持ちで取り組んでいきたいと考えています。
財務戦略:キャッシュアロケーションと資本政策
このような取り組みを通して、先ほどもご説明したとおり、2025年には売上5,000億円以上、営業利益400億円以上を目指して取り組んでいきたいと考えています。また、その際の財務戦略としては、スライドのように考えています。
既存事業の変革・成長のための投資、将来を見据えたM&Aを含めた戦略投資、そして株主還元資金、および財務体質強化としての資金と、使用可能な資金において目安となる数値を明確にしながら、健全で安定的な企業運営を進めていきたいと考えています。
配当について
なお、今年度の配当は10円増配の60円を予定しています。今後も事業成長を通して企業価値を高め、配当性向35パーセント以上を実現することで、株主のみなさまのご期待にお応えしていけるように取り組んでいきます。
さいごに
最後になりますが、こちらのスライドにありますように、大きな環境変化の中で、その変化を的確に捉えながら、大胆な変革を進め、かつ新たな挑戦に果敢に取り組んでいくことで、さらなる成長を目指していきます。
株主のみなさまにおかれましては、私どもの取り組みに対するご理解とご支援を、引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。ご清聴ありがとうございました。以上で、報告を終了します。