2021年10月期第1四半期決算説明
明田篤氏(以下、明田):こんにちは。トビラシステムズ株式会社代表取締役社長の明田篤です。本日は、2021年10月期第1四半期決算についてご説明します。
本日の決算説明の流れですが、はじめに簡単に事業概要として弊社の事業を説明させていただき、続いて「ハイライト」をご説明します。 その後、2021年10月期第1四半期決算概要、2021年10月期通期業績見通し、2021年10月期第1四半期アクションプラン進捗状況までご説明します。競争優位性以降については、参考資料のため説明は割愛させていただきます。
企業理念
決算数字のご説明の前に、あらためて当社の事業概要と競争優位性について、簡単にご説明します。
当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」という企業理念のもと、テクノロジーで社会の課題解決に挑んでいきたいと考えています。
トビラシステムズの迷惑情報フィルタ事業って何︖
私たちの主力事業である迷惑情報フィルタ事業は、ニッチではありますが、事実上競合の存在しないサービスです。警察との提携により、日々犯罪に使われた電話番号情報などをデータベース化しています。
また、独自の調査情報、利用者のみなさまの着信拒否情報や発着信統計情報などをデータベース化し、独自のアルゴリズムで迷惑な電話をフィルタするサービスを提供しています。
特殊詐欺などの犯罪から守られるだけでなく、多くの方が迷惑と感じるようなセールス電話の着信も警告表示します。
最近では、給付金をかたった詐欺電話、迷惑メールや、新型コロナウイルスの社会問題に乗じた詐欺が話題となっていますが、当社データベースでは素早くこうした動きをとらえ、フィルタすることができています。
事業内容
この迷惑フィルタを用いて、モバイル向け、固定電話向け、ビジネスフォン向けと、さまざまなかたちでサービスを提供しています。
2020年10月期においては、迷惑情報フィルタ事業で、売上全体の約92.5パーセントを構成しています。その中でも、特に売上構成比が大きいのがモバイル向けフィルタサービスです。その売上構成比は約78.4パーセントとなっており、今後の3年程度の売上成長が最も期待できるサービスとなっています。
固定電話向けフィルタサービスが約11.9パーセントです。固定電話向けの成長は、モバイル向けよりも時間軸としては長くかかる可能性がありますが、成長ポテンシャルとしてはモバイル以上に大きいと私たちが考えているサービスです。
そして、ビジネスフォン向けフィルタサービスは、現状は約2.2パーセントですが、将来の収益の柱に育てたいという思いから、現在、積極的に投資を行っているサービスとなっています。
最後に「その他事業」ですが、ホームページの月額モデルの事業や受託事業として、過去に開発したシステムの保守サービスを主に手がけています。収益性と成長性の観点から、迷惑情報フィルタ事業に資源を集中投下しており、「その他事業」は積極的に展開しない方針ですので、以後説明は省略させていただきます。
ハイライト
2021年10月期第1四半期ハイライトについてご説明します。2021年10月期第1四半期の業績は、売上高および営業利益ともに計画どおりに進捗しています。 売上高は3億3,500万円、対前年度比で23.9パーセント増加となりました。営業利益は1億2,300万円、対前年度比で22.7パーセントの増加となりました。
第1四半期のトピックスとしては、大きく3つあります。1つ目は、将来の事業成長に向けた布石です。良質な電話関係のサービスを提供する株式会社シンカへの出資、新たなセキュリティサービスの検討、「トビラフォンCloud」のアライアンス先の拡大等を図りました。
2つ目は、組織体質の強化です。働き方の多様化を推進するため人事制度を改革し、将来を期待する従業員への譲渡制限付株式の付与も行いました。
3つ目は、DXを推進する企業として、場所を選ばない働き方に向けて、事業所の大きさを縮小したことです。テレワークの推進で出勤の必要性が減少したことから、東京・大阪のオフィスを効率的に移転しました。
新たなセキュリティサービスへの挑戦
先ほど、新たなセキュリティサービスの検討を始めたというお話をさせていただきました。
私たちは、2年ほど前から携帯電話に届くショートメールのフィルタサービスを提供しています。このサービスは、ショートメールに記載された危険な電話番号情報や危険なURL情報を自動で判別し、ブロックするサービスです。
当社は、携帯キャリアからショートメール情報を収集することができており、月間約1億件のメール情報を収集・分析し、累計16万件以上の迷惑メールデータベースを構築することができました。
最近においては、実在する金融機関、宅配業者、ECサイトなどになりすましたメールを個人に送り、URLから偽のWebサイトへ誘導して個人情報を取得する、いわゆるフィッシング詐欺の報告件数が、この1年間で約6倍に伸びています。
このようなフィッシング詐欺に対して、迷惑メールデータベースを活用することにより、新たなセキュリティサービスを提供することができないか、検討しています。
具体的には、このデータベースに登録されたなりすましサイト情報を、金融機関、宅配業者、ECサイトを運営する企業に対して、付加サービスとして提供することができないかの検討、提案を行っていきます。
では、2021年10月期第1四半期決算概要について、常務取締役の後藤よりご説明します。
業績サマリー(1/2)対前四半期、対前年同期⽐
後藤敏仁氏:常務取締役の後藤でございます。私から、第1四半期の決算概要のご説明をさせていただきます。
業績サマリーの1点目は、第1四半期における対前四半期、対前年同期比です。第1四半期の売上高は3億3,500万円と、四半期の業績において過去最高を達成しました。前年同期比で23.9パーセントの増加、四半期推移では1.2パーセントの増加となっています。
営業利益は1億2,300万円、前年同期比で22.7パーセント増。対前四半期ではほぼ横ばいという状況になりました。
業績サマリー(2/2)業績進捗率
業績サマリーの2点目は、業績予想に対する進捗状況についてです。売上高の進捗率は、通期で23.8パーセント、また上期業績予想に対する進捗率は49.3パーセントとなっています。当社はまだ成長過程にある企業ですから、徐々に売上高が高くなる傾向が続いています。
そのため、通期計画に対して23.8パーセントという進捗状況は、ほぼ計画どおりとお考えいただいてよいと思います。
一方で、営業利益以下の利益項目については、通期の計画に対して23.8パーセントの進捗率、上期業績予想に対しては51パーセントとなりました。僅かではありますが、売上高の進捗よりも、利益計画の進捗の方が進んでいる状況です。
これは、業務執行上のコスト削減ができたもので、例えば株主総会運営費用、外部委託費などの見直しによってコストダウンができたというのが1つの理由です。もう1つは、マーケティング関連費用を多少抑制したことが主な要因になっています。
マーケティング関連費用については、広告への投下費用を少し抑えて、代わりに人員体制への投資を先に進めたため、一時的に広告投下費用が少なくなっていますが、事業拡大を目指して、通期の予算計画の中では予定どおり使っていこうと考えています。
売上内訳
売上の内訳についてのご説明です。主力の迷惑情報フィルタ事業は3億1,600万円、全体の売上構成では約94パーセントになっています。前年同期比で29.6パーセントの増加、上期の業績予想に対する進捗率は49パーセントと、堅調な推移となりました。
モバイル向けの売上については2億6,500万円、前年比で25.5パーセントの成長となりました。これまでのところ、想定の範囲内での成長ペースとなっています。
固定電話向けの売上は3,800万円、前年比で40.4パーセントの成長となっています。この四半期では旧製品からの切替需要があったため、一時的に予想を上回る販売状況となりました。
具体的には、ソフトバンク社を通じて提供していた固定電話向けの迷惑電話ブロックの装置があるのですが、PHSサービスの終了に伴ってサービス終了となったため、この切替需要があったということです。
私たちの製品では、迷惑電話を止めるためのブラックリストが当社のサーバーに蓄積されており、日々、定期的にその装置からサーバーにアクセスしてブラックリストの更新を行っています。
以前は、PHSの回線を使った方式でこの更新の仕組みを提供していた端末があります。PHS自体がサービス終了になったことに伴い、この端末をお使いのお客さまについて、継続的に迷惑電話ブロックを利用されたい方に対して、ソフトバンク社ではなく、直接当社の製品を購入いただき、インターネット回線または電話回線を通じてブラックリストを更新する方式の端末をご案内しました。
このキャンペーンは、通常どおり購入するよりも多少安く購入できるのですが、2月まで実施しています。当社の第1四半期は昨年11月から今年1月までのため、少し2月に差しかかりますが、第2四半期の固定電話向けの販売需要は一時的に予想を上回る可能性があります。
引き続き私たちの迷惑電話ブロックを利用されたいという方が多かったのは、私たちとしても非常にありがたいと考えています。
ビジネスフォン向けは1,100万円と、まだまだ事業サイズとしては小さいものの確実に育ってきています。
「トビラフォンBiz」というハードウエアタイプの商品があるのですが、特にこの四半期においては、この商品の販売が比較的大口の契約を受注できたこともあって伸びました。
また「トビラフォンCloud」については、新機能のリリースを行ったり、プロダクトへの投資もしっかりと進めており、顧客の開拓面においても、主にベンチャー企業からの引き合いを多くいただいています。
営業利益の増減分析(対前四半期⽐)
営業利益の増減分析です。先ほどご説明したとおり、固定電話向けの端末販売やビジネスフォン向けのハードウェア販売が伸びたことにより、販売原価が通常よりも多く計上されています。一方、販管費については、むしろ前四半期よりも僅かに減少しています。
詳しい要因については、次ページ以降にてご説明します。
2021年10⽉期 四半期コスト推移
通期のコスト推移についてご説明します。コスト的に大きなギャップが出ている項目はほとんどなく、計画の範囲内で予算をコントロールできています。
細かな点では、通常よりも端末販売が伸びたため原価が多めに計上されていること、また広告の投下費用を多少後ろ倒しにするという計画にしたことで、一時的に広告宣伝費が下がっていることが挙げられます。ただし、通期でのコスト計画に大きな変更はありません。
財務状況
最後に、BSに関する状況です。この四半期では、自己株式の取得、配当金支払いなど、株主還元のための財務活動を行いました。この結果、現預金と純資産が減少しています。
自社株買いした自己株式については、今後入社してくる優秀な社員に対しての株式報酬制度などに充当していく予定ですが、一時的に純資産が減少したことに伴い、資本効率は改善しています。
また、今後も企業の成長に対して有効と思われる投資を積極的に行っていく予定です。現状の現預金は9億4,000万円のため、投資余力としてはやや少ない印象がありますが、財務安定性は引き続き高い状況にありますので、借入の活用も検討しながら、積極的に企業の成長のための投資も検討していきたいと考えています。
当社を取り巻く事業環境
2021年10月期の通期業績見通しについてご説明します。通期業績見通しについて、定量的な数字のご説明の前に、当社を取り巻く事業環境についての認識と、それに対する私たちの取り組み状況についてご説明します。
この四半期では、緊急事態宣言の再発令もあり、また業種によっては非常に大きな経済的ダメージを受けています。個人のみなさまにおいても、賞与の削減などが話題となり、個人消費の落ち込みなどが懸念されるところです。
市場環境としては、携帯電話業界全体で新料金プランが各社から発表され、通話料の低価格化や、携帯販売のオンライン化が、今後進むことが予想されています。
私たちが提供している迷惑電話フィルタは、携帯ショップの店頭でオプションサービスとしてご案内されることで、新規契約者の獲得やアクティブユーザーの獲得を行っています。
オンラインによる販売方式が一定程度進んだ際に、私たちの基本的なユーザー獲得モデルに影響が出るかどうかについて、私たちは非常に注目しています。
ただし、この1年間の見通しで申し上げると、すぐにこうしたリスクが顕在化して業績に大きな影響を与える可能性は、かなり小さいと見ています。
その理由は、私たちの契約モデルです。よくも悪くも固定契約という契約方式においては、売上のアップサイドもダウンサイドもないため、こうした販売方式の変化に伴う影響はありません。
現在の売上成長の柱となっている「月間利用者数×単価」のキャリアさまのユーザー数は、契約者数に対する利用者数から見てもまだまだ開拓余地が残っているため、販売方式による影響はほとんど受けないだろうと見ています。
また、よく投資家のみなさまから「携帯料金が値下げの方向に向かうと、当社のサービスに対する値下げ圧力もかかるのではないか」というご質問をいただきます。当社サービスは事実上、競合の存在しないサービスであり、すでに1,000万以上のユーザーを獲得しているため、この点についても短期的に影響があるという見方はしていません。
したがって、今期の業績予想に対する影響はほとんどないと見ています。一方で、中長期的に影響を受ける可能性は完全には否定できないということで、危機感を持って見ています。
これまでのようなユーザー獲得方法ではないユーザー獲得手段として、キャリアさまを通じてプッシュ通知等でご案内したり、ショートメール等で契約者さまにご案内するなどのユーザー掘り起こし施策等について、積極的に検討を進めて、少しでも影響がないようにしていきたいと考えています。
通期業績⾒通し
通期の業績予想について、業績自体は第1四半期は堅調に推移しているため、見通しに変更はありません。予定どおり、今期も増収増益を図り、将来の成長のための人員体制への投資や事業への投資も行っていきます。配当予想についても、11.7円から変更はありません。以上で、私からのご説明を終了します。
それでは、アクションプランの振り返りについて、代表取締役社長の明田よりご説明します。
FY2021 アクションプラン
明田:今期、当社は中期経営計画を策定しました。こちらは既存ビジネス、新規ビジネス、M&A戦略の3つの柱によって成り立っています。これらの柱を支えるために、今期においても組織体制の強化に取り組みます。それでは具体的なアクションプランについてご説明します。
迷惑情報フィルタ⽉間利⽤者数推移
既存ビジネスとして、月間利用者数の状況についてご説明します。月間利用者数は、約1,133万人を突破しました。
固定契約の携帯キャリアは、旧アプリから新アプリへの移行により一時的に減少しましたが、売上に連動する「月間利用者数×単価」契約の携帯キャリアは、引き続き順調に成長しています。
国内に、携帯電話は1億8,000万、固定電話は5,400万ありますが、当社が提供している利用者は、そのうちの5パーセントにも満たない、非常にポテンシャルの大きなサービスです。
競合が存在しない唯一無二のデータベースを持っていますので、引き続き、ユーザー数を増加させられるように、通信キャリアさまといろいろな施策について協議し、すべての電話に当社のデータベースが提供され、迷惑電話をなくす日を必ず実現したいと考えています。
モバイル事業の成⻑率内訳
モバイル向けフィルタの成長率の内訳についてです。第1四半期では、固定契約の条件を改善することができたことから、売上成長率が向上しました。第1四半期においては、条件改善の影響は2ヶ月分計上されており、第2四半期においては3ヶ月分すべてが計上されます。
モバイル向けフィルタ事業における成長ドライバである「月間利用者数×単価」契約においては、提供方法が変更されて伸びが緩やかになっていますが、対策については急いで検討を進めている状況です。
新規ビジネスにおけるアクションプラン
新規ビジネスである「トビラフォンCloud」におけるアクションプランについてご説明します。第1四半期においては、中期経営計画アライアンス戦略第1弾として、株式会社シンカへの出資を実施しました。
当社サービスである「トビラフォンCloud」と、株式会社シンカが提供する「カイクラ」という製品において、シナジー創出のため、それぞれの機能の特徴を活かしてサービスの融合、統合的運用のために検討を行っています。
今後も、第2弾、第3弾と、「トビラフォンCloud」に限らず、当社のサービス、データベースの利用について積極的にアライアンスパートナーを模索してまいります。
新規ビジネスにおけるアクションプラン②
新規ビジネスである迷惑情報データベースを活用した、新しいセキュリティサービスについてご説明します。
現在当社は、携帯キャリアからショートメール情報を収集しており、このメール情報を分析し、危険なサイトのURL等を集めた迷惑メールデータベースを構築しました。
このデータベースは、なりすましサイトなどに悩まされている金融機関、宅配業者、ECサイトを営む企業等に興味を持っていただいており、迷惑メールデータベースを提供する等の新しいセキュリティサービスとして紹介、提案を行っています。今後、このサービスについても展開を検討していきます。
組織体質の強化におけるアクションプラン①
組織体制強化におけるアクションプランについてご説明します。従業員の成長を加速するために、譲渡制限付株式付与制度を導入しました。導入の目的は、従業員に、業績に対するインセンティブを付与することにより、株主のみなさまと一層の価値共有を進めることを目的としています。
この譲渡制限付株式制度の付与の条件は、中長期的かつ継続的な勤務を促すために、3年間の譲渡制限期間を設けています。また、一部の従業員に対しては、一定の業績目標達成を解除条件と設定しています。
この制度は、従業員一人ひとりが業績に対して責任を持つことができ、成長の加速に有効なものであると認識しています。また、優秀な人材の確保のためにも有効な制度であることから、今後も株式の付与を検討していきます。
組織体質の強化におけるアクションプラン②
最後に、組織体質の強化についてご説明します。第1四半期においては、優秀な人材への接触が可能となり、採用に関して順調に進めることができました。
原価部門は3名採用予定のところ、2名の採用を行うことができました。また、販管費部門においては、入社はしていないものの、2名について内定済みとなっています。今後の事業推進体制において、非常に期待が持てる仲間が集まり、楽しみにしています。
以上で、2021年10月期第1四半期決算説明を終了いたします。引き続き、トビラシステムズをどうぞよろしくお願いいたします。
質疑応答:偽SMS詐欺について
高井ひろえ氏(以下、高井):迷惑メールや迷惑電話は、今では他人ごとではなくなっています。例えば最近では、宅配業者の不在通知を装った「偽SMS詐欺」が横行しているとのことなのですが、そのような詐欺も御社のサービスで防ぐことができるのですか?
明田:当社は、私の祖父が迷惑電話に悩まされていたことから開発に着手したサービスになります。電話のみならず、最近ではショートメッセージ、ショートメールを使った詐欺が増えており、その理由は、電話番号さえわかってしまえば、誰でもそこにメッセージを送れてしまうところを悪用されているからだと考えています。
2年ほど前から、ソフトバンクとその対策を開始して、現在はauにも提供していますが、月間1億件近いメールを分析して危険なURLをデータベース化し、それを提供しています。
質疑応答:迷惑電話フィルタの料金体系について
高井:御社のサービスの迷惑電話フィルタは、キャリアで携帯を契約する時に提案いただくオプションパックの中に入っているということですが、いくらで利用できるものなのですか?
明田:国内では、大手通信キャリアは3社あり、各社でそれぞれ料金体系が異なるケースはありますが、だいたい500円かそれより少し高いくらいのサービスとしてパック化して提供されている状況です。
高井:数百円で詐欺被害から守ってもらえるという、ありがたいサービスなのですね。このオプションパックの契約者が4,400万件で、そのうち迷惑電話フィルタの利用者が1,085万件ということですが、追加費用は必要なく御社のアプリを利用できる潜在ユーザーである3,315万件は、迷惑電話フィルタの存在を知らないから利用していないのでしょうか?
明田:オプションパックにはさまざまなサービスが含まれており、それを合わせて安く使えるお得なサービスになっているわけです。
オプションパックというもの自体は、私たちが迷惑電話、迷惑SMSアプリを提供するだいぶ前から販売されていたものになるため、契約しているものの、そもそも当社のサービスを知らないという方たちが非常に多い状況です。
それが、料金を払っていて使える状況であるにもかかわらず、まだ使われていない方が多い状況が発生している理由になっています。
質疑応答:迷惑情報フィルタ事業で競合がいない理由について
高井:御社の強みとして、迷惑電話フィルタの基になるデータベースを持っている競合他社がいないということですが、これは存在しないのですか?
明田:当然、このサービスを始めた当初は、独自で集めたわずかな情報と、警察からいただける情報で始めていました。現在はすでに1,133万人を超える方にこのサービスをご利用いただいており、その方たちから日々情報提供されるものが膨大な量になっています。それを日々、システムと人手で確認して、データベースとして鮮度を高めている状況です。
このように、情報を集めて精度を高めるということは、後々新規参入してきた企業が実現するのは非常に難しい状況になっているため、事実上競合が存在しない、唯一無二のデータベースとなっています。
高井:他社の参入障壁が大変高い事業を行っているのですね。
質疑応答:迷惑情報フィルタの利用者数の急増について
高井:月間利用者数が、昨年度に337万人から1,085万人と大きく増加し、その後も着実に増加していますが、これはどのような施策で増加したのでしょうか?
明田:そもそもこのサービスは、迷惑電話や特殊詐欺を撲滅したいという思いで開発したもので、最終的にはすべての電話機に対してこのサービスを提供していきたいと考えています。
ただし、そこに一気に到達するのは非常に難しいことでもあるため、まずはセキュリティのオプションサービスとして提供しています。その段階的な取り組みの中、もともとは1つのサービスだったものが、パック化することによって、より多くの方に使われるようになりました。
その後、この1年間で非常に利用者が増えた理由として大きなところは、今まではセキュリティアプリをいくつも入れなければ、そのオプション全体を利用することができなかったものが、1個のアプリを入れさえすれば、それがすべて利用できるようになったからです。
利用者側のメリットとなる改善を日々行っており、また、わざわざアプリをインストールしなくても、初めから携帯に入っていてすぐ利用できるという状況を、通信キャリアと当社で開発して提供しています。
利用者を増やすためのさまざまな施策が生きてきた結果が、1,000万件突破に反映されているのではないかと考えています。
高井:契約した方が自分で操作しなくても、携帯を使った瞬間から守られているという状況を作ってあげたということですね。
明田:いかに利用者のハードルを下げるかを考えながら開発しており、それが少しずつ生きているような状況です。
質疑応答:利用者増加に向けたプロモーションについて
高井:利用者増加に向けたプロモーションとして、具体的にどのようなことを行っているのですか?
明田:プロモーションについては、通信キャリアが主となり、私たちがそれをサポートしています。大きなものとしては、サービスを利用できる状態なのにまだ利用していない方が大勢いるため、そうした方たちに向けて店頭で、またはショートメッセージ等でのプッシュ配信を使ってお知らせすることで、まず認知してもらう取り組みを行っています。
もう1つは、インストールして利用開始するまでのハードルを下げていく機能面での改善を、日々行っている状況です。
高井:ショートメールでこのようなサービスをプロモーションしていくと、どういう影響がありますか? 実際に拝見して「よし、登録しよう」という方が増えていくものですか?
明田:当社のこのサービスは、迷惑電話、迷惑メールをブロックすること以外にも、知らない番号からかかってきた際に、それが会社であったり、レストラン、ホテルなどのいわゆるお店の電話番号であれば誰なのかがわかる機能もあり、とても便利です。
男性、女性にかかわらず、知らない番号からかかってくると「これは出ていいのか?」となりますよね。
高井:確かに、おっしゃるとおりですね。
明田:基本的には出ないと思います。ただし当社のサービスを使っていると、それが誰かということがかなりの確率でわかるため、使っていただくと非常に手放せないアプリになっています。知っていただくと「利用を始めてみようかな」ということで使っていただける方は多いです。
高井:かかってきた電話番号にかけてみるのも怖いため、ネットで1回調べたりしますが、手間がかかりますからね。
明田:それが自動的に行われ、なおかつすごく精度の高いデータベースが使われている点が、当社の特徴になっていると思います。
高井:個人の方だけではなく、法人の方にもすごく便利そうなサービスですね。今後はどのようなプロモーションをする予定で、どれくらいのペースでの利用者数の増加を見込んでいますか?
明田:先ほどご説明したとおり、最終的にはすべての携帯電話、すべての固定電話にこのデータベースを使ってもらいたいと思っています。そうしなければ特殊詐欺、迷惑電話はなくならないと考えていますので、どうすればそこに早く到達できるかという観点で、日々社内でも検討して、通信キャリアとも協議を重ねている状況です。
高井:具体的に、月間利用者数が1万件増加した場合、売上にはどれくらいの影響があるものですか?
明田:そこは、私たちが通信キャリアと取り交わしている契約形態によって異なるため、なかなか簡単に申し上げることができないのですが、通信キャリアとの契約の中には「年間でいくら」と固定されている定額の契約もあれば、実際にアプリを利用開始してもらった方がいれば当社が対価をいただけるものもあり、また、利用しているかどうかにかかわらず、オプションパックに契約いただいた段階で、当社に対価をいただける契約形態もあります。
その複合的な売上になっているため、「1万人増えたからこれくらい」というのは難しいわけです。ただし、利用者が増えるということは当然売上にもつながっていきますし、データベースの精度の向上にも関わってくるため、月間利用者数をいかに増やしていくかは非常に重要な指標になっています。
質疑応答:モバイル事業以外の成長戦略について
高井:今後、モバイル事業以外の成長戦略はどのようにお考えですか?
明田:主に2つあると考えています。まず、迷惑電話から始めたデータベースは、ショートメールの迷惑メールフィルタサービスに拡張されたことによって、迷惑メールから得られるフィッシング詐欺、なりすましWebサイトのデータベースが、すでに16万件以上データベース化されています。
現在、この情報は通信キャリア向けにしか提供していないのですが、これを利用したい企業、例えば金融機関やECサイト、宅配業者など、フィッシングで狙われてしまう企業からのニーズが非常に高まっていると、提案を通じて実際に感じています。
迷惑メール、迷惑電話だけではない、フィッシング詐欺のデータベースとしての展開が非常に期待できると考えています。
高井:ECサイトを装ったフィッシングメールを、なるべく早く発見して排除するサービスなどをお考えということですね。
質疑応答:携帯電話のオンライン販売の増加の影響について
高井:今後、大手キャリアが格安プランを導入していくことで、販売はショップではなくオンラインにどんどん移行していくと思われます。御社にとって、どのような影響があるのでしょうか?
明田:現在、私たちも情報収集している段階で、まだ格安プランの全体像が見えてきていない状況というのが正直なところではあるのですが、重要なことは2つあると考えています。
1つ目ですが、1,133万人の利用者には、基本的には月額で利用いただいているため、この新プランの発表によって、すぐさま当社の業績に影響が出ることはまずありません。
2つ目に重要なところとして、通信キャリアが格安プランを出してきたことは、私たちとしては、10年に1度の通信業界の大きな変革の時だと捉えています。ここはリスクという面でも、いち早く情報を入手して対策を行っていかなければならないと考えており、その反面、逆にこの機会を活かせるチャンスもあると考えています。
そこで何かできないかという検討も、日々社内で行っている状況です。
質疑応答:株式会社シンカへの出資について
高井:株式会社シンカへの出資についてですが、「カイクラ」とはどういうサービスですか?
明田:シンカへの出資については、当社の重要な成長戦略の1つとして考えています。M&A、出資の第1弾になるわけですが、シンカが提供している「カイクラ」というサービスは、電話とデータベースということで当社に非常に近いサービスです。
顧客情報として持っているデータベースがあり、電話がかかってくると同時にそれを表示させることによって、非常にスムーズな対応ができるのがサービスの一番の強みになっています。
私たちも、電話とデータベースという非常に近い領域でビジネスを行っているため、「シンカの成長に私たちも投資したい」という思いで、今回出資させていただきました。
具体的な事業上のシナジー、連携については、今まさにシンカの社長とも話を進めている状況です。こちらについては非常に期待いただきたいという思いとともに、業績においても、お互いに貢献できるようなものにしていきたいと考えています。
高井:今後の展開が楽しみですね。
質疑応答:組織体制の強化について
高井:組織体制の強化としてさまざまな施策を取られているということですが、具体的にどのようなことをしているのですか?
明田:今回、一番大きなトピックとしては、譲渡制限付株式を従業員向けに付与したことだと考えています。通常、譲渡制限付株式(RS)は、一部の役員や幹部に付与するケースが多いのですが、当社の場合、一定以上勤めた方であればほとんどの方にRSを付与しました。
その意図として、株式を使ったメリットは、みんなが一体になれるのが大きいと思っています。これは上場時から思っているのですが、例えば具体例を挙げると、組織は成長するにつれて、後からまた優秀なメンバーが入ってきたりするわけです。そうすると昔からいたメンバーの中で、その方を100パーセント応援できないといった感情が生まれてくる可能性もあると思います。
しかし、当社の株式を持っているということは、後から入ってきた優秀なメンバーが活躍してくれれば当社の業績も上がって、株式の評価も上がって、昔からいるメンバーもメリットが大きいわけです。
一体となって会社を成長させて、業績も伸ばして、株価もしっかり高めていくということを、同じベクトルで一丸となって戦っていけるという点で、非常に強力なカードになってくるのではないかと考えています。
実際に、2月に付与された以降はそのような考え方が浸透してきて、より社内が1つに団結しているという実感があります。
高井:会社の雰囲気も変わりつつあるわけですね。
質疑応答:社長が思い描く未来について
高井:明田社長は、5年後、10年後の未来をどのように思い描いていますか?
明田:まず、社会問題になっている特殊詐欺や迷惑電話についてですが、特殊詐欺だけにかかわらず悪質なセールスも含めると、日本は真面目な方をだましてしまう詐欺が非常に多い状況です。
冒頭で「私の祖父がきっかけでこのサービスを始めた」と申し上げましたが、まずはそれをしっかりやり抜いて、すべての固定電話、携帯電話にこのデータベースを提供して、本当の意味で迷惑電話を撲滅させることを、なんとしても実現しなければいけないと考えています。
その上で、当社は「テクノロジーで社会の課題解決に挑んでいきたい」と考えているため、誰かがやらなければいけなかったが、成し遂げていなかった課題を、私がテクノロジーで解決していきたい、そのような会社に育てていきたいと考えています。
高井:今後のチャレンジとご活躍に期待が高まります。明田社長、本日はありがとうございました。