本日の流れ
小瀧龍太郎氏(以下、小瀧):それではさっそくですが、今日はこのような流れでご説明します。まず、私たちの社会における役割からご説明します。
社会の中のサトー
小瀧:この図は、当社の主力商品のプリンタからラベルが印字されて、ラベルの上に街をイメージしたものとなっています。これは我々が活躍しているシーンをわかりやすくお伝えするためにこのような絵にしています。
当社はバーコードやQRコード、電子タグなどの自動認識技術を用いたソリューションを多くのお客さまに提供しています。BtoBの会社ですので、私たちの会社がどのようなところで活躍しているのかについて、みなさまの目に触れることは非常に少ないと思います。
私たちが提供しているソリューションサービスはこちらのように、食品スーパーや食品製造業、自動車メーカーや電機・電子メーカーなどの工場、そして病院やEC業界の物流センターなどさまざまな業界のお客さまが対象になっています。
食品表示
小瀧:そしてここからは私たちのビジネスモデルを、みなさまがご自身の生活の中でイメージしやすいかたちで説明していきます。まず1例目ですが、食品スーパーなどでお惣菜やお弁当の売り場に行くと、このようなラベルを見かけると思います。
食品表示法というものがあるのですが、この食品表示法に則ってこのラベルはアレルギーの物質や原材料、消費期限、製造元などの情報を正確に表示しています。これによりアレルギーによる健康被害や食中毒などの防止につながり、消費者の安心・安全を担保しているという仕組みです。私たちはこの表示ラベルといった消耗品や、印字するプリンタ、ソフトウェアなどを提供するビジネスを行っています。
原材料管理
小瀧:次は原材料管理の事例で、イメージとしては食品製造業の現場になります。食品工場は、入荷、保管、製造、出荷などそれぞれの現場で管理業務がたくさんあって、それら業務の効率化ニーズが生じます。その中の1例としてご覧の保管の現場では、仕入れた原材料はそれぞれに賞味期限が違いますので、当然先入れ先出しをしていく必要があります。つまり正確に在庫を把握する、管理する必要があるわけです。そして、この正確な在庫管理が適正な量の発注を可能にし、食材のロスの削減につながります。
私たちはこちらにあるような管理のためのラベルや、ラベルを印字するプリンタおよびソフトウェアなどを組み合わせて、一連のソリューションサービスとして提供するビジネスを行っています。
送り状・不在票
小瀧:3例目です。送り状・不在票と書いてありますが、最近では、インターネット通販が新型コロナウイルスもあって急激に成長していますよね。私たちの生活はますます便利になってきているのですが、この便利さは宅配企業の物流サービスによって支えられているのです。
例えば、荷物ごとの個体の番号をコード化した送り状ラベルや、荷物が受け取れなかった時の不在票ラベルなど、さまざまな仕組みによって物流サービスの品質は担保されているということです。
私たちはインターネット通販企業の物流センターで貼る送り状ラベルや、送り状ラベル自体を自動で荷物に貼り付ける装置を販売しています。
一方で、荷物を運ぶ宅配企業は、荷物を配達する際にお届け先が不在であれば、不在票をその場で発行する必要があります。その際の不在票を発行するためのモバイル型のプリンタや不在票のラベルを私たちは提供しています。
宅配企業で使われているモバイルプリンタのほぼ7割が私たちのプリンタです。荷物を受け取る時に、配達員が腰に付けたり手に持ったりしているプリンタを見ていただきますと、「このようなプリンタはサトーがやっているんだな」とおわかりになるのではないかと思います。
3点照合
小瀧:4例目はヘルスケア産業です。病院を始めとするヘルスケア産業は当然のことなのですが、命に関わりますのでミスが許されません。特に病院での患者の取り間違えや投薬の間違いは医療過誤につながります。
私たちはこのようなミスが起きないように医療従事者の作業をサポートするシステムを提供して、医療の安心・安全に貢献しています。スライドにありますが、患者さまが付けるリストバンド、点滴に付けるラベル、看護師のIDカードの3点を照合するシステムで医療過誤を防ぎ、治療の履歴をデジタルデータ化して記録するといったソリューションを提供しています。
商品としてはこのようなリストバンドや点滴のラベル、看護師のIDカードといった消耗品とこれらを印字するプリンタの提供を行っています。
八木ひとみ氏(以下、八木):かたちがそれぞれ違うので、それに対応したという感じでしょうか?
小瀧:そうですね。病院に販売するプリンタはそのような多用途であると、我々は当然ながらわかっていますので、それに適応した製品を開発して販売しています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):最近、入院すると確かにこのようなかたちで、ピピッとチェックされますね。そのようなところで使われているのですね。
小瀧:リストバンドがあっても管理上大事なのは患者のIDコードがバーコード化されているかどうかです。新興国などでは手書きで書かれていることもあります。
最近では、個人情報保護の観点で名前を呼ぶことがなかなか難しくなっていることもあります。これもあって確実にリストバンドを読んで患者のIDと患者自身をひも付けておくニーズが高まっているわけです。
もしこれらがなかったら・・・
小瀧:代表的な例をご説明してきたのですが、もし惣菜やお弁当パックに先ほどのようなラベルが貼られていない場合、消費期限やアレルギー物質の有無がわからないという状況になりますし、宅配便に貼る送り状であれば荷物が受取日までに届かない、荷物がどこかへいってしまい、今どこにあるかもわからないといった状況も起こりえます。
病院であれば、当然3点照合のようなシステムを利用しなければ安心して医療サービスが受けられないということになります。そのため、正確に管理する必要があるところや、省力化・省人化を行いたい、消費者や患者に安心・安全を届けたいというようなお客さまへのニーズに、情報を印字したラベルを介して人やモノに情報を付ける……タギング・ソリューションと呼ぶのですが、我々は人やモノに情報を付けるこのタギング・ソリューションのビジネスで、お客さまのニーズに応えています。
タギングとは
小瀧:タギングという言葉が出てきましたが、こちらは我々固有の定義を含む言葉となっていますので、少し掘り下げてご説明したいと思います。私たちが定義する「タギング」とはモノや人に情報を付け、上位にあるお客さまのシステムにデータを渡して、それが何であるか、そのモノ自体の状態はどうであるか、人であればどこにいるのか、お客さまが可視化、活用できるようにします。こうすることで、正確さや省力化、安心・安全、環境保全、あるいは購買喚起などの価値をお客さまに提供することを総称してタギングと呼んでいます。
スライドの例でご説明しますと、お弁当に貼り付けられているこのラベルには、先ほどお伝えしたような原材料やアレルギー、消費期限、値段などのいろいろな情報が記載されており、その下にはバーコードがあります。このバーコードと今お伝えしたような情報はひも付けられているのです。
みなさまが商品を購入する際はレジに行き、会計の際にはバーコードをピッと読みとってもらうと値段が出てきますが、バーコードを読んだ時点でひも付けられた情報が販売実績データとして本社に送られます。
全国に店舗展開しているようなお客さまであれば、この販売実績データをもとに分析を行い、その日その週の商品の製造発注、もしくはいろいろな材料があるのですが、そのような材料の発注に役立ててもらう、もしくは商品開発において、いつどのような層のお客さまがいくつ、どこで売れているのかわかりますので……。
坂本:かなり精緻なマーケティングができるということですよね。例えば、天気などまでも全部リアルタイムで情報を得られるため、把握できるということですよね。
小瀧:そうです。今多くのコンビニやスーパーでは天気やお客さまの客層とどの時間にどのような商品が売れているかを分析して、商品の発注量をコントロールしています。これは食品などのロスを極力なくしていくことにもつながりますし、より売れる商品についてその適切な数量やタイミングがわかることでチャンスロスを防ぐのにもつながっています。
バーコードなどの自動認識技術を用いることで大事なのは、正確なスモールデータを集めてお客さまのシステムに届けることでデータを分析し、経営管理に役立てるということです。このようなことを通して各業界の活動や発展、成長に私たちは貢献しています。
タギングを可能にする自動認識技術
小瀧:自動認識技術が何かについて、簡単にご説明します。言葉のとおりで自動的に情報を認識・収集できる技術のことなのですが、バーコードやQRコードはよくご存知だと思います。
類似した技術では、ICタグと言われるRFIDの技術があってSUICAなどに活用されています。そのほか、画像、音声が代表的なものです。最近では人やモノの位置を検知したい、今どこに何がいくつあるか、それがどう動いているかといった位置情報をリアルタイムに取りたいというニーズが高まっています。こういった場合は、例えばセンサーを用いてモノが移動している間にどんな温度や湿度の中で移動しているかというような情報も取れるわけです。最近では、私たちはこのような技術を組み合わせてソリューションとして提供しています。
サトーグループの歩み①
小瀧:次に私たちのグループの歩みをご説明します。今年ちょうど創業80周年を迎えました。1940年に創業者である佐藤陽が戦時中の木材不足を受け、竹を加工することで何かビジネスができないかということで、物資を運ぶ竹籠をつくるための竹加工機の製造販売を行うところから事業が始まっています。
「現場で働く人たちのお困りごとをなんとかしたい」という創業者の思いでスタートしたわけですが、高度成長期に入ると、スーパーが大きく発展しました。店内では、当然ながら、今のようにバーコードラベルはありませんので、従業員が商品一つひとつに値札を手貼りしていました。創業者は1品1品に値札を貼っている作業自体がなんとかならないかという思いから、世界で初めてカチャカチャと手を動かすことで値札ラベルが送り出され、簡単に貼り付けができるハンドラベラーというものを開発しました。
その後、スーパーマーケットは、バーコードを利用した管理システムの導入がどんどん進み始めて、こちらの図にあるように1980年代にはバーコードを印字するプリンタを世界で初めて開発しました。
ハンドラベラーやプリンタという機器以外にも、消耗品(ラベル等)を自社生産して販売するビジネスを行ってきたことが非常にうまくいきまして、今のサトーの発展の礎になっています。
その後、このバーコードを利用するシステムは小売りだけではなく製造業や物流業といったいろいろな業界に導入されるようになり、我々の成長を支えてきたといえます。
私たちはプリンタやラベルの「モノ売り」中心の事業展開をしてきたのですが、市場変化や技術の進展とともに1990年代初頭から、お客さまの現場課題を解決する売り方に変えようということで、「コト売り」を中心としたビジネスモデルに転換して、現在まで進化させてきました。
サトーグループの歩み②
小瀧:「モノ売り」と「コト売り」という言葉を使っているのですが、簡単に言うと「モノ売り」はバーコードを印字したい、ラベルをもっと速く発行したいという単純なお客さまの要望に応えるかたちでプリンタやラベルを販売するモデルです。
一方で「コト売り」はお客さまの現場に行き、お客さまの現場の課題を見つけて、お客さまと一緒に必要な自動認識技術は何か、プリンタやラベル、ソフトウェアや保守サービスはどうあるべきかといった解決策を考えます。例えば、24時間営業であれば24時間の保守サービス体制を整えるといったようなことを組み合わせて、最適なソリューションを提案し、課題解決型の独自のビジネスモデルにしているのが「コト売り」になります。
コト売りを可能にする強み①
小瀧:ここからは当社のビジネスモデルの強みをご説明します。1点目はさまざまな市場、業界の現場を知っているということです。食品市場と言っても食品市場には食品製造業、ファストフード、レストランなどいろいろなものがあります。
製造業であれば自動車や鉄鋼、化学のような業界があります。ヘルスケアでも病院だけでなく、医薬品メーカーや血液の検査センターのようなところがあります。
このようなさまざまな業界のお客さまの現場で、運用や用途の提案を長年行ってきましたので、課題を深く理解することができ、その解決のための知見やノウハウを蓄積してきたわけです。いわゆるカバレッジ力が1点目の強みです。
坂本:最初の原料から製品ができるまでを全部カバーされているからできるのだと思います。このビジネスのマッチングは御社の得意とされているところだと思うのですが、最近のパターンとして、HACCPが義務化されたことがあると思います。
今までの衛生管理の作成や実行および確認といった記録が求められていると思うのですが、その部分の特需はあったのかお伺いできればと思います。
小瀧:HACCPとは、みなさまにもわかりやすく言うと、異物混入や食中毒を起こさないための衛生管理をどのように行うかの基準です。これは食品業界で既に9割程のお客さまが対応されているのですが、ほとんどの場合、紙に手書きしてそれを手入力して目視でチェックするという流れで、人が手作業で行っています。
人手不足の中でこういった作業を行うとミスも出やすく、温度管理されてないものを売ってしまい、食中毒が起こってしまうと困った事態になりますので、今おっしゃっていただいたような特需は最近ありました。
リリースも出ているのですが、大手小売りのイオンさまの400ほどの店舗に、メーカーが店舗ごとに違う冷蔵庫や冷凍庫の温度データをIoTを使って自動で吸い上げ、そのデータをクラウド上で管理する「HACCPソリューション」を販売しています。
カバレッジ力を持っているからこそ、知見・ノウハウがより良いサービスや商品、ソリューションの開発・提供を行えるということです。
コト売りを可能にする強み②
小瀧:2点目は、自動認識技術やいろいろなデバイス、ラベルなどの消耗品等々を組み合わせて、お客さまの現場課題を解決する最適解をつくる力が長けていると言う強みがあります。最近ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が広がっていますので、我々が提案するソリューションはどんどん高度化、多様化しています。
その中で現場課題を解決するために我々は、メーカーとして自社製品を拠りどころとしながらも全てを自前にはこだわらず、パートナー企業と組んでベストなソリューションを提供しています。つまり、2点目はインテグレーション力が我々の強みだということです。
コト売りを可能にする強み③
小瀧:3点目ですが、こちらは導入後のお客さまの現場を最適化し続けることがポイントです。時代とともに社会や市場が常に変化しているのですが、お客さまの現場もそれに応じて当然ながら変化しています。
そうなると、我々がソリューションを導入した後もお客さまと長く深い関係を構築することが非常に重要になってきます。そのために我々は保守サービスに力を入れております。お客さまと常につながっている状態を創り出しているのです。
保守サービスでお客さまの現場の安定稼働を支えていく、サポートしていくことで一つひとつの現場の新たな課題を発見できるような体制をとっているということです。こちらによって、お客さまとの関係もビジネスも広がり深まっていくということですね。つまり、メンテナンスサービス力が3つ目の強みになります。
この3つの強みを一言で言うと「現場力」です。現場を知った上で最適なソリューションを提供し続けることは、非常に時間と手間がかかります。知見を得るには時間がかかりますので、他社はやりたがらないのです。
坂本:むしろ、積み上げがないとできないのだと思います。
小瀧:そうですね。この部分が我々にとっての競争優位性だと言えると思います。
売上高推移
小瀧:売上の推移のグラフです。先ほどお伝えしたとおり、1990年代初頭からビジネスモデルを転換したことによって、国内外で成長を加速してきました。27ヶ国に拠点を構えており、90以上の国でビジネスを行っています。日本事業が約60パーセント、海外事業が約40パーセントという売上構成比になっています。
坂本:海外がだいぶ伸びていましたが、売上の構成比は日本と海外で違うのでしょうか?市場については、おそらく海外は違う部分もあると思うのですが、総合力が活かせる環境が日本と若干アジャストしなくてはならないのか、あるいはそのまま乗るのかということもあるのですが、海外の導入例などを教えていただけたらと思います。
小瀧:先ほど、市場の業界のお話しをしたのですが、まず、日本と海外とでは、ターゲットにしている市場が少し異なっています。例えば北米では、小売業をターゲットにしています。
国土も広いですし、日本のように全地域できめ細かく対応、というかたちにはできないため、ターゲットをしっかり絞ることが大事です。北米は小売業のポテンシャルが大きいためターゲット化しました。活動する中で、アメリカで大手の小売りのお客さまへ今回、新たにソリューションを導入することができました。
非常に重要なポイントなのですが、風穴を開けることによって、先ほどお伝えしたように、現場において、我々はお客さまと一緒にパートナーとして課題解決を行っていくというスタンスですので、お客さまがそれに気付いてくれると、どんどん現場課題を深掘りしていくことができます。これが他社との違いであり、非常に成長が期待できるところです。
一方、最重点国の一つであるインドは医薬品や自動車という「業界」をターゲットにして、活動「エリア」も4ヶ所に決めて集中して取り組んでいます。それ以外は、国土的にもアプローチが難しいため、事業を行わないというかたちにしています。
インドでは、自動化を求められることが非常に多く、ITの先進国でもありますので、日本での水準を超えるソリューションを要求してくるお客さまもいます。現在は、自動化に関する商談が非常に増えています。
話は変わりますが、イギリスで、ごまのアレルギーがあった若い女性が、ごまが入ったサンドウイッチを食べて亡くなったという事件がありました。そのことからイギリス政府はアレルギー表示を法律で義務化したのです。それにより、先ほどのようなアレルギー表示のニーズが出てきました。付随して食材管理、食材の先入れ先出しのための表示ラベルの需要も生まれており、よってイギリスでは食品市場をターゲットにしています。
八木:国によってまったく違うのですか?
小瀧:そうですね、国によってまったく違いますね。
市場・業界
小瀧:こちらは2019年度の市場別の売上構成比です。サトーグループ全体では製造業が33パーセントと一番多く、続いて物流業、小売業がそれぞれ約20パーセントを占めています。
八木:この前物流の倉庫に見学に行った時に、思った以上にバーコードのようなものが使われていると感じたのですが、EC事業が増えてくることで、物流市場の売上構成比は今後変わっていくのでしょうか?
小瀧:結論から言うと、変わっていく、増えていくと見ています。なぜかというと、ECで流通するモノが増えると使うラベルやプリンタが増えるからです。モノが存在する以上必ず移動しますので、いくらDXが進んでIoT化、デジタル化されても、物理的なモノがある以上、移動や管理は絶対必要になります。そのような意味では私たちの売上構成比において物流の割合が上がっていく可能性が高いと思います。
商品・サービス
小瀧:こちらは商品別の構成比になります。プリンタや保守サービスなどを含むメカトロ製品が約40パーセント、ラベルなどの消耗品であるサプライ製品が60パーセントです。当然「サプライ」というくらいですから、こちらはリピートビジネスになりますので、継続的な収益をもたらしています。
お客さまの抱える課題
小瀧:ここからは少し話が変わるのですが、お客さまの課題をタギング・ソリューションを通してどのように解決するかについて、少し触れたいと思います。私たちがタギングを通して解決できるお客さまの課題をスライドの下の段に書いてあるのですが、生産性の向上や安心・安全の向上といった普遍的なものが中心になっています。
これは業界横断的な、普遍的な課題だと捉えています。かつタギング自体も、技術が変わっていけば位置測位や温度、湿度だけではなく、蓋を開けたかどうかの開封検知や中身の重量の変化なども情報としてどんどん取り込めるよう、進化させていく必要があります。
そもそも私たちのビジネス「タギング・ソリューション」は、人やモノの情報をデジタル化して見える化したり自動化したりすることで普遍的な課題を解決しています。このタギング・ソリューションは、社会の動きを見える化して支えるという私たちのユニークな立ち位置の確立を可能にしており、またコアとなるビジネスモデルと捉えています。
食品スーパー:食の安全
小瀧:ここからは、先ほどご説明したような普遍的な課題に対して提供するソリューションサービスの事例をご説明します。ここに示しているのは、先ほどご質問いただいたイオンさまに導入した仕組みになります。
従業員が店内を回って人手で行っていたことを自動でデータを吸い上げて一元管理することで、人手不足もミスも解消し、紙媒体で管理しているものもペーパーレス化するといったことに役立っています。
物流センター:出荷検品
小瀧:こちらは普遍的なテーマである人手不足に対する代表的な取り組み例になります。物流センターにおける出荷検品の作業です。ECはコロナ禍で非常に物流量が増えており、出荷作業をスピーディーにこなさなければならないという状況です。
例えばアパレルのお客さまの物流センターをイメージしていただくとわかりやすいのですが、1品1品のバーコードを読んで受注データとつきあわせながら箱に詰めて梱包して出荷という作業を行っているお客さまも多いです。このタグをRFIDに変えることによって、1品1品のチェックをせずに受注データに基づいて梱包し、それを台車に乗せて読み取りゲートを通るだけで一括で読み取りができるため、かなりの作業時間短縮につながります。導入したお客さまの実績を見ると、80パーセントから90パーセントの時間短縮につながっています。
八木:すごいですね。
小瀧:1点1点読むのと一括読み取りとで80パーセント以上の時間が短縮されるということはイメージしやすいと思うのですが、大事なのはRFIDで一括で読み取った時の読み取り精度の部分でして、こちらはRFIDも製造するメーカーである私たちが直接お客さまに提案しているからこそ、実証実験をしながらニーズにしっかりと応える商品を開発・提供できており、それが非常に大事なポイントだと考えています。
坂本:これらがさらに普及していくのは御社にとって非常に大きなビジネスチャンスであると思うのですが、スーパーの商品がすべてRFID化されると無人レジで効率化できると思うのですが、RFIDタグの価格について、下がってきているとは思うのですが、コンビニに普及していくまでにはまだ単価が少し高いかと思うのです。爆発的に普及する時期はいつごろだとお考えでしょうか?
小瀧:私たちが考えていることとしては、スーパーなどの小売りで売っているような食品や100円、300円の低額商品にRFIDを付けることが、本当に現実的なのかということです。これが1つ大事なところです。
もう1つは、RFIDを付けることで誰の利益になるのかというところです。小売りの生産性が上がるというメリットだけで、食品加工メーカーなどいろいろなサプライヤーが、RFIDを貼るコストや手間を担えるか……。
坂本:誰が払うのかという問題ですね。
小瀧:そうなのです。ブランドオーナーなどメーカー側から見ると「我々にとってはなにがメリットなの?」といったところが問題になります。コンビニやスーパーにおいて、RFIDの活用があまり進んでいない原因はそこにもあると思っています。
ただ、大事なのは現在コロナ禍によってオンライン販売が非常に増えていますので、ブランドオーナーはさまざまな小売りルートを通じてモノを供給する必要性が出てきています。ブランドオーナー自体がマーケティング情報を取得しにくい状況となっている中で、その商品の消費者が購買後どのように使っているのか、そのような細かい情報を直接得たいというニーズが高まっています。
マスマーケティングが通用しなくなっており、購買動向も変わっていますので、そのようなニーズが出てきた時に、我々はモノや人に情報を貼り付け、そのデータをデジタル化して取得することにより、お客さまに貢献しようというビジネスモデルですので、まさに今の話が合致してくるのです。
コロナによる変化
小瀧:続いて、新型コロナウイルスを受けて、我々のビジネスにどのような変化が起きたのか、をご説明します。お客さまの関心事は当然ながら感染予防策であり、こちらにあるように衛生管理や非接触、ソーシャル・ディスタンスなどを確保しながら同時に自動化をはかり、生産性を高めるという以前からの課題もなんとかしたいという状況です。作業者や社員の安全を担保しながら生産性を上げるといったニーズが現在、非常に増えてきています。
私たちは新型コロナウイルスの問題が起こる前から、人手不足に対応する生産性向上や効率化を図るためのソリューションを販売してきました。新型コロナウイルスによってニーズが上積みされてもそれにお応えできるノウハウや知見は十分持っており、活かせると考えています。
食品スーパー
小瀧:その中で、みなさまにイメージしやすいソリューションをいくつかご紹介をしたいと思います。こちらは大手のスーパーにも使っていただいている従業員の体調管理の仕組みです。
先ほどHACCPの話がありましたが、HACCPのソリューションに機能を追加してこのような従業員の体温などを測るソリューションをパーツとして増やし、現在、そのパーツを切り出してサブスクのシステムとして導入しています。
サブスクはクラウドサービスですので、導入が簡単でスピードも速いです。導入したその日からすぐ使えることがお客さまにとっては非常に重要でして、このことが評価されていると思います。
物流センター
小瀧:一方、こちらは物流センターにおける自動化ソリューションの例です。自動化ニーズは以前からありましたが、今、なにが大事かというと、センターで働く人達の安全を担保しながら生産性を高めたいという点です。いろいろな作業員が1ヶ所に集中して作業していたものを自動化することで、作業員の人数も減らしてソーシャル・ディスタンスも担保できます。
このようなニーズが製造業から物流、医薬品のメーカーといったさまざまなところで同じように増えてきているのです。
そのため、我々が提供しているような、非接触で一括読み取りができるRFID、ラベルを自動で貼るなどロボットと連動させた自動化ソリューションへのニーズが今後ますます増えてビジネスを拡大していけると思っています。
中計目標 連結
小瀧:2020年度から2022年度の中期経営計画について少しご説明します。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、今年度の売上は前年比でマイナス10パーセント強と見ています。製造業においては、報道では業績回復傾向にあると言われていますが、その回復スピードは業界によってまちまちです。また、生産活動は回復基調にあるものの、設備投資意欲の回復はもう少し時間がかかるという感触です。したがって、全体の回復には時間を要すると見ています。現在当社では、自動車業界や電子部品業界など業績が好調な業界をターゲットに活動を進めるとともに、短期間で効率的に売れるソリューションづくりを進めています。2022年度の中計の最終年度は売上高で1,185億円、営業利益で88億円、営業利益率で7.4パーセント、ROICで8.0パーセントを目指していきたいと思います。
コロナ禍からの回復も鑑みて、この間売上高は年平均成長率では0.6パーセントにしているのですが、営業利益の年平均の成長率は5.7パーセントを目指したいと考えています。収益構造の改善についてかなり綿密に施策を考えましたので、その取り組みの推進により、利益率を向上させる考えです。
配当
小瀧:2020年度の年間配当です。新型コロナウイルスによる不確実性が継続しているのですが、今年度は中間配当が35円、期末が35円の合計70円を予定しています。
株価 (5年)
小瀧:最後のページになります。5年間の株価の推移はご覧のとおりです。私からのご説明は以上となります。ありがとうございました。
質疑応答:株主還元について
坂本:株主還元について、安定配当を継続するという配当方針のもと配当性向も高く還元されていますが、2020年度の予想は不動産譲渡等さまざまなことがあって配当性向が一時的に低くなると思います。この部分は特別配当として出すのか、それとも今後の積み上げにするのかを教えてください。
小瀧:単刀直入にご回答すると、特別配当は考えていません。また、私たちは配当性向の目標は掲げておらず、安定配当を継続していくことを配当方針としています。また企業理念にもあるのですが、株主、社員、社会、会社の「四者還元」の精神も大事にしています。
今回、特別利益もあるのですが、新型コロナウイルスを受けて、成長への取り組みや収益構造の改革をスピードを上げて取り組む必要がありますので、そのようなところにもしっかり投資し、資金配分していきます。全体を考えてこのように配当を決めています。
質疑応答:競合企業との差別化について
坂本:本日は事業の内容から総合力の話までかなり深くお話しいただき、みなさまにもかなりイメージが湧いたかと思います。御社はけっこう上に抜けていると思うのですが、同じような競合企業との差別化などについてもう少しお聞きできればと思います。
小瀧:グローバル共通の競合先を見た場合、一言でいうと、彼らは間接販売、当社は直接販売をメインにしているところが、違いとなっていると思っています。グローバル共通の競合先は、プリンタの販売台数の観点で規模拡大を推進していますので、売上が上がっても、販売量勝負のため価格競争にもなりやすいですし、自分たちの製品がどこのお客さまにどのような使われ方をしているのかということを知らないで売っていることが多いです。
国内と海外では事情、国柄、国土、状況、我々のリソースも違いますので、海外についてはターゲティングとパートナーシップが大事だと当社は考えています。ターゲットを決めて、お客さまの現場に行き、お困りごとや現場の課題を把握することで「もしかしたら、この課題は業界の共通課題じゃないか」と捉え、そちらの業界に特化したSIerやソフトベンダーとアライアンスを組んでお客さまに販売するのです。そのため、海外ではお客さまの情報・状況を直接にちゃんと把握した上での間接販売にも力を入れております。案件によって組む先が違うというかたちになり、それがラベルを含めた多様なビジネスにもつながるのです。
プリンタの競合他社でラベルのビジネスも行っている会社は非常に少なく、もし行っていたとしても我々がビジネス全体の6割の規模で行っているのに対して、他社はそのようなレベルで行ってはいません。
ラベルのビジネスも保守サービスと同様に、お客さまと継続的につながるという役目があります。これにより社会や市場の変化に応じて、次から次へと変化するお客さまの現場課題に応えるビジネスを行っていくことができます。
私たちはお客さまが困ったときに相談くださるパートナーとして見られることを目指しています。「世界で最も信頼される会社になろう」というビジョンを掲げて、今後も同様のビジネスモデルおよびビジネススタイルで邁進していきたいと思っています。