2020年3月期 決算サマリー

沓掛英二氏:沓掛です。本日は野村不動産ホールディングス決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。このようなコロナ禍の状況下ですので、電話会議での開催としました。ご理解をいただければと存じます。限られたお時間になりますので、さっそくご説明します。

まず、決算説明資料の4ページをご覧ください。2020年3月期は売上高6,764億円、営業利益819億円、事業利益828億円、経常利益730億円、当期純利益488億円と、売上高および各利益ともに過去最高となっています。部門別の業績はのちほどご説明します。

2020年3月期の年間配当は、期初にお伝えしたとおり、1株あたり80円とします。

2021年3月期の業績予想については、新型コロナウイルス感染症が当社の事業活動および経営成績に与える影響により、業績予想の合理的な見積もりが困難であるということから開示せず未定としています。今後、合理的な見積もりが可能となった時点で、速やかに開示していきます。なお、当期の年間配当金は前年度と同じく、1株あたり80円とする予定です。

2020年3月期 部門別決算概要

6ページをご覧ください。右側のグラフは、2019年3月期と2020年3月期の事業利益の主な増減について部門別に影響を示したものです。

住宅部門は事業利益249億円、前年度とほぼ同程度でした。都市開発部門は前年比11億円の増益です。サービス・マネジメント分野は3部門とも順調に推移し、前年度比28億円の増益となっています。

結果としては、2019年3月期の実績との比較では32億円の増益となります。また、2019年4月に開示していた期初の予想との比較では、28億円程度の上振れとなりました。

2020年3月期 財務関連データ

8ページをご覧ください。ROAは4.7パーセント、ROEは9.1パーセントとなっています。引き続き、中長期的な目標としてのROA5パーセント、ROE10パーセント以上を目指していきます。なお、右下のグラフのとおり、自己資本比率は30.5パーセントと、指標とする30パーセント水準を維持しており、健全な財務状態にあります。

【 住宅部門:部門別業績 】

続いて、主な部門ごとの業績を簡潔にご説明します。15ページをご覧ください。まず、住宅部門です。

国内住宅分譲における計上戸数は、前の期には5,890戸だったものが4,739戸と、1,151戸減少しています。これは個別の物件および全体の利益額、利益率を重視し、販売スピードや期ごとの計上戸数に過度にとらわれないという、当社の付加価値を訴求していく戦略を貫いたものです。

その結果として、前年度と比べて粗利率が向上し20.4パーセントとなっており、物件ごとの利益をしっかり確保することができたといえます。なお、2020年3月期に計上した物件は、ほぼ2月までに販売を終えていたため、この期における新型コロナウイルス感染症による影響は軽微に留まっています。

また、収益不動産としての賃貸住宅の売却額、売却益も順調に増加しました。結果として部門全体では、売上高は減少しましたが、事業利益は期初の予想を上回り前年とほぼ同水準を確保しました。

【 住宅部門:住宅分譲 主要指標】

続いて、16ページをご覧ください。左上の表は契約戸数です。2020年3月期は4,353戸の分譲住宅の契約を行ないました。その結果として、右上の表にあるとおり、期初時点においてすでに今期計上を予定する物件を1,451億円相当の2,069戸を契約完了しています。

緊急事態宣言が出されて以降は、モデルルームの営業を中断していますが、一定の契約済み計上戸数は確保できています。また粗利率はお伝えしたように、20.4パーセントと、前年度から1.3パーセント向上しています。

なお、今期以降の事業用地については、右下の表のとおり、新たに6,200戸、売上高で3,800億円相当を取得し、累計で1兆4,000億円相当のストックとなっています。

【 住宅部門:20/3期の主な計上物件】

18ページをご覧ください。2020年3月期に計上した分譲住宅の代表的な物件です。

とくに大規模な開発用地に、住宅に加えて商業施設、保育施設、サービス付き高齢者住宅など、複合的に開発することでエリアにおける利便性の高い生活を供給するということで、プラウドシティ日吉、プラウドシティ吉祥寺や、都心型好立地物件であるプラウド恵比寿ヒルサイドガーデンなど、さまざまな利便性に優れた物件がご好評をいただきました。

また日吉においては、当社が住宅共用部の一部を保有し、担当者を配置して継続的にエリアマネジメント活動を進める取り組み「ACTO」を第1号案件として実施する予定です。

いずれも、当社の付加価値を高めていくといった戦略を訴求していくものにつながっていると思います。

【 都市開発部門:部門別概要 】

続きまして、都市開発部門をご説明します。21ページをご覧ください。都市開発部門においては、昨年度策定した中長期経営計画にもとづく賃貸資産、ポートフォリオの戦略的な入替を含む収益不動産売却が順調に進みました。

賃貸売上は2019年3月期に一時的なテナント退去精算金を計上した反動や、資産売却を行なった影響で減少しました。また、3月には新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、フィットネスクラブの「メガロス」が1ヶ月営業を停止したことや、運営するホテルの稼働率低下による影響を受けました。

一方で、収益不動産売却による増益がそれらを補い、部門全体として増収増益となっています。

【 都市開発部門:収益不動産 主要指標 】

24ページをご覧ください。都市開発部門では、売上高1,068億円の収益不動産を売却し、176億円の粗利となっています。この中には、賃貸ポートフォリオの戦略的入替によって固定資産から振り替えて売却したものも含まれています。

収益不動産開発用地は合計で21案件、予定総投資額1,520億円相当を確保しています。また、前の期に引き続き、2020年3月期においても固定資産から棚卸資産への振り替えを実施しています。それらを合わせて、収益不動産の事業ストックは5,250億円相当となっています。

以上、2020年3月期の業績についてお伝えをしました。

2021年3月期 業績予想について

続いて、今期の業績予想と新型コロナウイルス感染症の当社への影響についてご説明します。9ページまでお戻りください。冒頭でお伝えしましたとおり、今期については新型コロナウイルス感染症の影響によって、現時点での合理的な業績予想が困難であるため、予想を開示していません。現時点での認識をご説明します。新型コロナウイルス感染症の拡大が、不動産、デベロッパーである当社に与える影響は大きく3つのタイプに分類されます。

1つ目は、一定期間の収益が逸失してしまい、戻らないタイプのリスクです。これは営業の自粛や休業、または経済活動自体の不活性化により、一定期間の収益が損なわれてしまうというものです。具体的には、当社が保有する商業施設を中心とした賃貸物件のテナント様に対する賃料の減免、運営するフィットネスクラブの営業休止や、ホテルの稼働率低下による直接的な収入源などです。

2つ目は、逸失せずとも収益を得る機会が先送りされてしまうリスクです。営業活動を自粛することで分譲住宅の販売スケジュールが遅れたり、工事の中断等によって建物の竣工が遅延するといったものです。これらは、収益機会自体は失われず、その分が蓄積し、いずれ取り戻せるものですが、その時期がいつになるのかという点では、現時点では正確な予測が困難です。

3つ目が、ものやサービスの価格が下落するリスクです。これは、一時的な市況の悪化によって引き起こされるもので、混乱がおさまれば回復する可能性もあります。しかし、その中では、当社でいえば分譲住宅の販売価格やサービス・マネジメント分野で提供するサービスの対価が下落する、または保有する資産の評価が変動することも考えられます。

以上のタイプごとに、どの事業がどの程度の影響を受けるか、それらを合理的に見積もり、取るべき戦略を判断していく必要があります。

新型コロナウイルス感染症の影響について

続きまして、10ページをご覧ください。当社の展開する主な事業がどのような影響を受けるかを図示しています。影響1〜3は前ページの3つのタイプを示しています。

数字は部門ごとの事業利益額です。なお、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮する以前の段階では、当期は2020年3月期に比べて、住宅部門では計上戸数の減少による減益を想定し、都市開発部門は収益不動産の売却増による増益となることを見込んでいました。

各部門、各事業の影響を今後精査していきますが、とくに2つの点についてご説明します。

都市開発部門の賃貸需要については、商業施設を中心に賃料の減免等による収益の逸失が既に発生しており、また、この先どの程度継続されるか注意深く見ていく必要があります。ただし、影響を受ける商業施設は当社の賃貸事業売上のうち、約18パーセント程度に留まりますので、全体としての影響は限定的といえます。

また、収益不動産事業に関しては、短期的には一時的な不動産市況の混乱が想定されます。その場合には、当社の自己資本比率30パーセントを超える優良な財務体質を活用し、一時的に資産を保有して賃料収入を得ながら、環境悪化局面での無理に売却を急がず、適切なタイミングを柔軟に見極めていきたいと。結果として、短期的な売却量、売却益が減少する可能性がございます。

もちろん、不動産市況はオフィス、物流、商業など、アセットタイプによって異なります。また、売却先も上場リート、プライベートリート、プライベートファンドなど、多様化しています。それぞれの置かれている状況、ニーズが異なります。もっとも適切なタイミング、手段での売却を行なっていきたいと考えています。

同時に、仮に不動産価格が下落するような局面になれば、次の事業機会に向けた優良案件の取得を行ない、次の成長につなげていくという戦略もあります。結果として、短期的には売却量による回収が減少する一方で、投資が増加することで一時的にバランスシートが拡大しROA、ROEが低下する可能性もあります。

ただし、短期的な市況変動にとらわれず賃貸資産ポートフォリオのマネジメントを行ない、高い資産効率と利益の安定性を両立する事業ポートフォリオを構築していくという、中長期の方向性に変更はございません。

株主還元について

続きまして、11ページをご覧ください。2020年3月期は、期初にお伝えしたとおり、1株当たり80円の配当を実施しました。これに加えて、80億円の自己株取得を完了していますので、総還元性向は46.5パーセントとなりました。

今期については、業績予想はお示ししていませんが、配当は1株当たり80円を維持する予定です。株主のみなさまへの安定的な配当は、当社の重視するところです。

加えて、当社は新型コロナウイルス感染症の影響が読み切れていない中でも、この水準の配当を維持するのに十分な財務の健全性を保持していると考えています。

事業環境変化に対応した施策①

12ページをご覧ください。日本国内はかねてより少子高齢化や超高齢社会と捉え、共働き世帯や単身世帯の増加など、さまざまな要因によりライフスタイル、ワークスタイルの変化が進んでいます。

当社は、この環境変化を新たな事業機会へとつなげるべく取り組んでいます。ライフスタイルの変化は、住まいへのニーズの多様化につながります。世帯のあり方や変化に合わせて求められる住宅のかたちは多様化していますが、それに加えて、今回在宅勤務が一気に普及した、あるいはニーズが高まる中において、働く場所、また落ち着いて作業する場所の確保という、新たな認識も生まれています。

また、今までより長い時間、家の中、その地域で過ごす経験をしたことによって、住宅の快適性、また利便性、また地域へのつながりや結びつきがより一層重要になることが予想されます。

こうした新たなニーズが生まれてくることは、当社の主力事業の1つである分譲住宅においては新たな事業機会へとつながると考えられます。環境変化に対応する1つの例として、現在開発中の複合開発「KAMEIDO PROJECT」をご紹介します。

住宅、商業施設、学校が一体となった利便性の高い開発であり、多様なコミュニティ形成や地域の未来を見据えた価値創造を目指す、地域共生をテーマにしたまちづくりです。

住宅としては、ニーズの多様化に合わせた幅広いタイプの間取りやプランを用意し、ライフスタイルの変化に合わせたリフォームの柔軟性を高める仕組みや、室内全体を快適に保ちながら環境性能にも優れる全館空調システムなどを導入しています。

さまざまな方に、長く住まい、訪れていただけるまちづくりを目指しています。このような取り組みは高い評価をいただいていると認識しています。

事業環境変化に対応した施策②

続いて、13ページをご覧ください。これは、働き方、ワークスタイルという面では、テレワーク、在宅勤務だけではなく、多様なワークプレイスの提供が重要です。

従来型のオフィスに加えて、シェアオフィスやサービス付オフィスといった、新たな働く場所の姿が求められています。例えを挙げれば、代表マンションの一角に共用部としてのワークスペースを設けたり、都心近郊の駅前商業施設の一部にシェアオフィスを展開するなど、住む場所と働く場所の融合といったことが実際にはじまっています。

当社では、サービス付小規模オフィスである「H1O(エイチワンオー)」Human First Office、シェアオフィスである「H1T(エイチワンティー)」Human First Timeという新たなかたちのオフィススペースを提供しています。

オフィスを実際に利用する方を第1に考えてニーズに応えるという、マーケットインの発想が生み出した新たな事業機会です。

世界がかつて経験したことのない困難な局面を迎えていますが、引き続き当社は住まう方、働く方、施設を訪れ利用する方々の多様なニーズに応える不動産の開発、不動産関連サービスの提供を通じて、よりよい社会、住み続けられるまちづくりへの貢献、グループ企業理念の「あしたを、つなぐ」の実現に向けて進んでいきたいと思います。

本日はご清聴ありがとうございました。