2020年3月期決算説明会

久野貴久氏:代表取締役社長の久野です。はじめに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々へ、謹んでお悔やみを申し上げるとともに、罹患された方々には心よりお見舞いします。また、このような過酷な環境下において、国内外で献身的にご尽力してくださっている皆様に対しあらためて敬意を表するとともに、感謝します。このような環境下、当社は従業員の感染防止に最大限に配慮した中で、生活に欠かせない食品の供給者として、安定的な供給に努めていきます。

また、植物の力を通じて社会に貢献するという、当社グループの社会的責任を果たしていきます。それでは、日清オイリオグループ株式会社の2019年度決算の概況ならびに今後の見通し等について、ご説明します。

決算概要

最初に、2019年度の決算概要についてご説明します。2019年度の連結業績ですが、売上高は3,334億円、営業利益131億円、経常利益126億円、親会社株主に帰属する当期純利益が82億円となっています。

計画との対比では、相場および市況の要因から売上高は下回ったものの、各段階利益では計画数値を上回り、特に営業利益ベースでは、中期経営計画の目標利益130億円を上回ることができました。

セグメント別実績

セグメント別の売上高、営業利益の内訳は、5ページに記載のとおりです。営業利益は前年比1.4パーセント増加となっていますが、そのセグメントごとの増減要因については6ページにてご説明をします。

セグメント情報:営業利益の増減要因 通期実績(対前年比)

営業利益は、前年度から全体で約2億円の増加となっています。油脂・油糧および加工食品のセグメントでは、アマニ油などの付加価値品の販売ならびに業務用における中食・外食向けの販売などが好調に推移し、販売数量が増加しました。

搾油採算についても、米中貿易摩擦や、中国が一部のサプライヤーからのカナダ産菜種の輸入禁止を継続した影響による相場変動などから、前年対比で改善しています。また、物流費、販促費でコスト増となったものの、セグメントトータルでは12億円の増加となりました。

加工油脂セグメントでは、国内でのチョコレート製品、製菓原材料等で1億円増加しました。一方、海外については、ISF社における付加価値品の販売は引き続き堅調に推移したものの、期末でのパーム油の先物取引の時価評価により、14.5億円の一時費用を計上しました。

その結果、海外加工油脂はその他の海外子会社を含め12.5億円の減少となり、セグメントトータルでは11.5億円の減少となりました。ファインケミカルセグメントでは、MCTなどで前年を上回り、2億円の増加となっています。

セグメント情報:増減要因の内訳

各セグメントにおける営業利益増減要因の内訳については、7ページの詳細でご確認ください。

中期経営計画の進捗(油脂・油糧および加工食品)①

続いて、これまでの中期経営計画の取り組みならびに進捗状況についてご説明をします。油脂・油糧および加工食品については、付加価値カテゴリーの販売拡大、汎用油カテゴリーにおける安定収益の獲得に注力して取り組んできました。

まず、ホームユースの分野における付加価値カテゴリーの販売拡大におきましては、従来の「焼く・炒める・揚げる」といったクッキングオイルの用途から、「味・香り・健康機能」を手軽に料理に取り入れ、食のシーンを豊かにする「かけるオイル」の分野を市場開拓し、油脂における新たなマーケットの創造・拡大に取り組みました。

右のグラフにもあるとおり、当社のオリーブ油・ごま油・サプリ的オイルなどの付加価値カテゴリーの販売は、この中期経営計画を通じて1.4倍まで拡大し、マーケット全体の伸びを上回っており、市場を牽引してきました。

かけるオイルは今後もさらなるマーケット拡大を牽引する重要なカテゴリーと位置付けており、加えて油ならではのおいしさや健康価値を活かした商品を精力的に投入し、市場開拓に取り組んでいます。

中期経営計画の進捗(油脂・油糧および加工食品)②

また、業務用分野における付加価値カテゴリーにおいても、人手不足などを背景とした調理工程の簡便化や料理品質の安定化などの課題解決を目的とした、業務用機能性オイルの販売数量が2倍に拡大しました。今後もニーズ共同発掘型の営業提案の継続により、さらなる拡販を図っていきたいと思います。

汎用油カテゴリーにおける安定収益の獲得については、適性な販売価格の形成と拡大する中食・外食市場における需要の獲得による収益拡大に加え、ホームユースにおけるヘルシーオフや業務用の長持ち油など、機能性の高い戦略商品を積極展開しています。

汎用油カテゴリー内での販売構成をこうした戦略商品にシフトすることにより、収益の安定化を進めてきました。こうした付加価値カテゴリー商品および機能性の高い戦略商品の拡販や、適性な販売価格の形成を通じて、当セグメントにおいては原料や為替等の相場変動に左右されにくい収益体質を築いてきました。

中期経営計画の進捗(加工油脂)

続いて、加工油脂セグメントの取り組みをご説明します。このセグメントにおいては、マレーシアのISF社が利益を牽引していますが、欧州顧客などが要請する高い品質水準への対応を進め、収益性の高い販売構成にシフトしてきました。

今後の東南アジアを中心としたチョコレート市場の拡大も見込まれる中、当社の取り扱うチョコレート用油脂などのパーム加工品の生産能力を高めるとともに、中国に販売拠点、イタリアに生産拠点を新たに設置し、主要顧客に向けたサービス強化、拡販に向けた投資を実行しました。

また、インドネシアにはサリムグループとの合弁によるチョコレートの製造・販売会社を設立し、今後の成長マーケットに向けた販売体制を構築しています。シンガポールの製菓原料の会社を含め、ISF社を中心としたグローバルプラットフォームを強化しており、これらの連携によって、さらなる収益力の拡大に取り組んでいきます。

一方、こうしたパーム油産業に携わるうえで、サスティナビリティの観点からの取り組みも重要性を増しており、社会的な要請という側面も超えて、当社事業の継続性といった観点からも主体的に取り組むべきテーマであると考えています。

そうした中、当社は持続可能性に配慮したパーム油の調達を拡大しており、認証油比率や搾油工場までのトレーサビリティ割合、苦情処理手続きなどを自社ホームページで公開し、情報透明性の強化にも取り組んでいます。

中期経営計画の進捗(ファインケミカル、ヘルスサイエンス)

続いて、ファインケミカル事業では、化粧品原料を中心に拡大する需要を獲得し、収益が拡大しています。国内ではインバウンドで急増する需要を獲得し、海外では中国を中心としたアジアにおける化粧品市場の拡大を見通すなかで、スペインのIQL、中国の販売子会社の連携強化により、欧州・アジアでの販売を拡大しています。

右のグラフにもあるとおり、同セグメントにおける利益水準は、この中期経営計画を通じて1.2倍程度まで拡大しています。また、今後も一定の市場成長が見込まれることから、横浜磯子工場における生産能力増強を進めており、今年度の竣工を目指しています。

こうした設備投資や拠点間連携により供給網を強化し、成長市場への販売拡大に向けた準備も着実に進めています。続いて、ヘルスサイエンス事業においては、MCTオイルを中心とした事業拡大に取り組みました。

当社ではスポーツや美容を切り口にしたコミュニケーション戦略を展開しており、今後のさらなる拡販に向け、MCT認知率の向上に取り組んできました。認知率は2016年10月の24.3パーセントから、2020年3月には32.3パーセントまで上昇しました。

販売面では量販店、ドラッグストアへの営業体制の強化により、MCTオイルの販売は、3年間で2.9倍に拡大しました。また結晶性油脂についても、病院、介護施設、介護領域でのサンプルワークを実施するとともに、地域を限定して販売を開始しました。

2019年度実績および経営目標

こうした取り組みを通じて、中期経営計画「Oillio Value UP 2020」で掲げた経営目標のうち、営業利益の水準は1年前倒しで達成するとともに、営業キャッシュフロー累計500億円についても、おおよそ達成に近い水準まで進捗しました。

また国内海外ともに、原料や為替などのさまざまな変動要因による業績影響が避けられない事業ですが、国内汎用油の安定収益の獲得、多様な付加価値型ビジネスの拡大、海外事業の拡大といった戦略取り組みを進めてきたことで、下のグラフにもあるとおり、連結全体での利益水準は着実に向上してきており、環境変化に左右されにくい財務体質に変化しています。

ROE、EPSについては、中期経営計画の目標に対して厳しい状況ではありますが、引き続き付加価値戦略のさらなる推進および強化による利益体質の強化に取り組みつつ、最適な資本構成に向けた取り組みを着実に進めていきます。

2020年度業績見通しにあたって

続きまして、2020年度の業績見通しについて、ご説明します。皆様ご承知のとおり、新型コロナウイルスの影響は世界各国で多数の犠牲者、罹患者が出るきわめて深刻な状況となっています。完全な収束に向けては依然として見通しが不透明な状況が続いており、経済活動においても世界的な需要の大幅な減少をはじめ、大きな影響を受けています。

社会生活、企業経済活動が大きく制約を受ける現況は非常に厳しく、また収束に向かったとしても景気回復には時間が掛かることが予想されることから、当社の事業影響を見通すなかでも、需要面での影響が今年度いっぱい続くことを前提として考えています。

当社は生活に欠かせない食品の供給者として、安定的な生産および供給に努めるとともに、コロナ禍という厳しい環境下でも、中期経営計画の最終年度である2020年度において基本方針に則った戦略を着実に遂行していきます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響①

新型コロナウイルス感染拡大が、当社グループの業績に与える影響要因を個別に見ますと、飲食店・居酒屋・ホテルなどの外食産業や、各国の渡航制限によるインバウンド事業など、需要の大幅な減少が顕著に表れている状況です。また、4月以降はさらに大きな影響が出ているものと思われます。

加えて、海外では特に、活動制限による操業面での影響も出ています。一方で、外出自粛、休校措置、テレワークの推進により、家庭での内食需要は拡大していますが、全体としての消費マインドの低下、節約志向は一定期間続くものと想定されます。

新型コロナウイルス感染拡大の影響②

当社グループの事業運営状況については、国内はおおむね予定どおり操業していますが、外食から内食への需要がシフトしたことにより、ホームユース製品と業務用製品の生産バランスの大幅な変動が生じており、一部で影響が出ています。

海外のグループ会社は、マレーシアや欧州など、一時的な生産活動の縮小あるいは停止がありましたが、現在は生産活動は再開しています。事業面への影響ですが、現時点で確認できている市場動向として、3月の外食の売上は、東日本大震災時よりも悪化した、前年比82.7パーセントとなっています。

さらに4月以降は緊急事態宣言もあり、販売は大幅な減少となっています。一方ホームユースでは、内食需要増加により、3月以降のスーパーマーケットの売上は、食品・調味料ともに110から130パーセント程度で推移しており、販売は拡大する見込みです。

ファインケミカルについては、インバウンド需要の消失、外出自粛の影響などにより、化粧品原料の販売が大幅に減少する見込みです。海外もロックダウンによる活動規制等により、需要が減少しています。

2020年度決算見通し

こうした状況を踏まえ、現時点での2020年度の業績見通しは売上高3,200億円、営業利益104億円、経常利益108億円、親会社株主に帰属する当期純利益72億円としています。主な前提条件ですが、油脂販売においては、ホームユースでは数量増となる一方、業務用の大幅減少により、油脂全体では10パーセント程度減少すると見ています。

搾油採算については、ミールバリュー低下により、前年比では悪化すると見ています。加工油脂では、ISFの販売数量が前年比10パーセント減、ファインケミカルでは、化粧品原料の販売数量が前年比30パーセント程度減少すると見込んでいます。

2020年度セグメント別見通し

2020年度見通しの売上高、営業利益のセグメント別内訳は、19ぺージに記載のとおりです。営業利益ベースで前年比20パーセント程度の減少を見込んでいますが、この主な増減要因については20ぺージで説明します。

セグメント情報:営業利益の増減要因 通期見通し(対前年比)

営業利益27.5億円減少の内訳ですが、油脂・油糧および加工食品では、主に業務用における数量減、ミールバリュー低下による搾油採算の悪化、また戦略商品の拡販を進めるうえでの販管費増加もあり、35億円の減少を見込んでいます。

加工油脂では、ISF社の販売数量減少等による減益要因はあるものの、当期は昨年度計上したパーム油の時価評価の戻りを織り込んでおり、結果、海外加工油脂は12億円の増加を見込んでいます。国内加工油脂の2.5億円増加とあわせ、セグメント全体では14.5億円の増加を見込んでいます。

ファインケミカルは、化粧品原料の数量減により、5億円の悪化を見込んでいます。ただしこの業績見通しは、年間推移が見通せない状況下で、あくまでも前提を置いた見積もりに基づいているため、今後の状況変化により重大な影響が見込まれる場合は、すみやかに開示します。

2020年度の基本方針①

新型コロナウイルスの影響により厳しい業績を見通していますが、当社は従業員の感染防止に最大限に配慮したなかで、生活に欠かせない食品の供給者として、安定的な供給に努めます。

また中期経営計画「Oillio Value UP 2020」の最終年度として、次の基本方針に則った戦略を実行し、植物のちからを通じて社会に貢献するという当社グループの社会的責任を果たしていきます。まず基本方針の1つ目は、国内汎用油の安定収益の獲得です。

新型コロナウイルスの影響により、業務用を中心に、需要の大幅な減少が見込まれますが、拡大する内食需要に対して安定供給を果たし、またサプライチェーン全体のさらなる効率化を図り、競争力強化を進めていきます。

2つ目が、海外事業の拡大の継続です。国内同様、海外についても、世界的な消費の低迷や生活・生産活動停滞等が懸念され、戦略の遂行に遅れが生じるものの、欧州、アジアを中心としたグローバルサプライチェーンの構築を着実に進めていきます。

2020年度の基本方針②

そして3つ目が、多様な付加価値ビジネスの追求です。当社は本中期経営計画において、付加価値ビジネスを追求することで収益の拡大を図っていきました。その結果として、付加価値製品の利益が着実に伸長しています。

2020年度についても、新型コロナウイルスの影響が見込まれますが、これまでの方向性に何ら変わりはなく、付加価値ビジネスを徹底的に追及し、さらに収益を拡大していきます。最後に、成長を支える基盤の強化です。環境課題への対応をはじめとした、社会課題の解決の推進体制を構築し、ESGを重視した経営をさらに加速していきます。

また、新型コロナウイルス収束後の人々の行動変容を想定し、デジタル技術の活動など、新たなリソースにより組織能力を強化することで、2021年度からはじまる次期中期経営計画につなげていきます。

株主還元政策

続きまして、株主還元についてご説明します。配当については、安定的な利益の成長を成し遂げ、その利益を適切に株主の皆様に還元していくことが重要であるという考えのもと、配当性向30パーセント程度とする配当方針を、2017年度から継続しています。

2019年度については、自己株式の取得30億円を実施したことから、総還元性向は68.8パーセントとなりました。今後についても、持続的な成長のための投資とのバランスを取りながら、中長期的な視点で、可能なかぎり総還元性向の引き上げを図っていきたいと考えています。

以降のページでは、本日ご説明を割愛しました、財務情報や相場、市況の情報について掲載していますので、ご参考いただければと存じます。最後になりますが、新型コロナウイルスの影響により、総需要は大きく落ち込んでいますが、いずれは収束し、世界経済も徐々に回復してくるものと考えます。

一方で社会的変容が進み、働き方・消費者心理・市場構造などが大きく変化すると考えられます。2020年度は中期経営計画の総仕上げとして、環境課題をはじめとした、社会的課題解決の取り組みの加速、油脂を基軸とする多様な付加価値化のさらなる追求、事業インフラを含めた構造改革の推進によって、2021年度以降の飛躍に向けた確固たる礎を築き上げることを目指したいと考えているため、今後とも変わらぬご支援のほど、よろしくお願いします。

以上、2019年度決算の概況ならびに2020年度見通し等について、ご説明させていただきました。