2020年3月期決算説明会
田川智樹氏:社長の田川でございます。本日はアナリストのみなさま方、多数ご参加いただきまして、誠にありがとうございます。ただ今から、アリアケジャパン株式会社第42期2020年3月期決算説明会を開催いたします。
また本日は、新型コロナ緊急事態宣言、感染防止策として三密を避ける観点から、このような電話会議形式の説明会になったことをご理解いただくよう、よろしくお願い申し上げます。それでは、詳細を藤田から説明する前に、簡単に概況をお話しさせていただきます。
2020年3月期の概況ですが、連結決算は米国を除いてお話ししますと、大幅な売上増で国内が413億円、対前年5.6パーセント増。連結で523億円、5.3パーセント増。また営業利益率は、国内21.7パーセント、連結で22.5パーセントと、増収および利益確保もできまして、極めて順調な結果となりました。
アリアケジャパン、欧州、アジア、いずれも好調で、全体として私どもの選択と集中の成果が出たと考えております。
また、企業の持続的成長の目標に、顧客満足をはじめ、ステークホルダーの満足追求、財務的な観点からの健全性、強固な財務体質について積極的に取り組んできました。また、技術開発や新商品開発の強化にも取り組んできました。
今後は、アフターコロナを見据えて、逆風の中に勝機ありという喩えのように、不況こそチャンスであるということで、今後とも強固な企業集団を作り、積極的な価値創造を行なって、引き続き1,000億円を目指してチャレンジしていく予定です。
引き続きみなさま方のご支援のほどをよろしくお願いいたします。それでは詳細について藤田からご説明いたします。お願いします。
藤田和裕氏:ありがとうございます。それでは経営管理室、藤田より決算説明会資料に沿って、約20分ほどで説明させていただいたのち、質疑応答に移らせていただきたいと思います。
ご公表のとおり、本会計年度におきましては、年度のはじめの昨年4月以降、米中貿易摩擦による海外経済の不確実性の高まりに加えて、今年の2月より世界規模で広がりました、新型コロナウイルスの感染拡大による、国内および海外の経済の下振れリスクの影響が顕在化しました。
その結果、国内におきましては、当会計年度の最後の月である3月に、先行きが懸念される不透明な状況で推移しました。なお、連結子会社の海外子会社に関しましては、12月決算のため当会計年度におきましては、新型コロナウイルスの影響は出ておりません。それでは、決算説明会資料に移ります。
2ページから5ページの各ページとも、終わった期の2020年3月期の実績を一番右に置き、過去4年間の推移を棒グラフでお示ししております。
濃い青色が連結で、薄い青色が単体です。その前に、まずは全体を総括させていただきますと、連結におきましては、2019年3月期に米国の子会社を売却したため、対前年では減収減益となりました。
なお、仮に米国を除いて勘案すると、増収増益と順調に推移しております。一方、単体におきましては、年間をとおしコンビニエンスストアに代表される中食向けが好調で、それが牽引して増収、営業利益および経常利益で増益となり、いずれも業績予想に対しては上回りました。
単体が好調であったこと、リエンジニアリング効果が出てきたベルギーを主体とするヨーロッパの勢いが、米中貿易摩擦の影響を受けた中国を中心とするアジアの成長をカバーした結果、最終的には連結の業績予想はいずれの項目においても上回りました。
売上高推移(単体・連結)
では、2ページの売上高推移をご覧ください。2020年3月期の右側の濃い青色の連結の売上高は523億2,900万円で、前年比マイナス7.5パーセント、42億2,100万円の減収です。
左側の薄い青色の単体の売上高は413億7,100万円で、400億円の大台に乗って、前年比プラス5.6パーセント、21億9,400万円の増収です。
期初来の、とくに中食向けの好調によるもので、2019年3月期は厳しい国内食品事業環境が続くなか、コンビニは大きく落ち込みましたが、終わった期は当初想定していなかったPB製品の売れ行きが思いのほか好調でした。
なお、連結から単体を引いた、主に海外拠点で構成される連結子会社の売上高は、109億5,800万円と、米国の子会社売却により対前年64億1,500万円の減収となりました。
営業利益の推移(単体・連結)
次に3ページの営業利益です。連結は117億8,900万円、前年比マイナス1.3パーセント減益。一方、営業利益率は22.5パーセントと、前年より1.4ポイント高くなりました。単体は89億9,800万円で、プラス8.7パーセントの増益。営業利益率は21.7パーセントと、前年より0.6ポイント高くなりました。利益の増加要因につきましては、単体業績の概要のところでご説明いたします。
経常利益の推移(単体・連結)
4ページに移りましては、経常利益でございます。連結119億800万円で、前年比マイナス5.1パーセントの減益。経常利益率は22.8パーセント。単体は92億3,300万円で、プラス2.3パーセントの増益。経常利益率は22.3パーセントでした。
親会社株主に帰属する当期純利益の推移(単体・連結)
5ページの当期純利益につきましては、連結は83億7,500万円、対前年でマイナス83億200万円。単体は66億3,300万円、対前年でマイナス118億500万円。2019年3月期がひときわ飛び抜けた数字になっておりますが、米国子会社の譲渡に伴う売却益の計上によるもので、終わった期にはそれがありません。
なお、当期純利益につきましても業績予想を上回りました。では次に単体の業績について詳しく見ていきます。
【前期比較】単体業績の概要
まずは6ページです。先ほど申し上げたとおり、単体の売上高は対前年21億9,400万増加して、413億7,100万円となりました。終わった期の2020年3月期は、その前の年の2019年3月期のコンビニが大きく落ち込んだこともありますが、当初想定していなかった中食のPB製品の好調な売れ行きが寄与しております。
しかしながら、1月から3月の第4四半期におきまして、とくに最終月の1ヶ月は、新型コロナウイルスの影響により外食向けが低調となり、国内の売上は最後の3ヶ月では対前年マイナス0.1パーセント、1,400万円の減収となりましたが、営業利益は期初からの採算を重視した販売戦略を進めた結果、対前年プラス3.8パーセント、7,900万円の増益を確保いたしました。
利益につきましても、営業利益は89億9,800円で、対前年プラス8.7パーセント。7億2,300万円の増益です。一方、経常利益は92億3,300万円で、前年比プラス2.3パーセント、2億500万円の増益です。
【前期比較】単体業績の概要〔利益変動要因〕
利益の増加要因につきましては、7ページの階段チャートをご覧ください。営業利益の増益7億2,300万円の内訳は、グラフの左から見ていただくと、売上増による9億1,000万円の増益の中、荷造運賃などの物流関連のコスト増となりました。
固定費については、主に労務費の増加を租税公課および減価償却費の減少で1億5,600万円に抑えられた結果、営業利益率が21.7パーセントと、対前年で0.6ポイント改善しております。
次に、経常利益の2億500万円の増益についてです。さきほど申し上げた営業利益の増加7億2,300万円などの増加要因と、減少要因であるデリバティブ評価益のマイナス3億5,000万円や、為替差損益のマイナス1億5,800万円等のネットによるものです。
【計画比較】 単体業績の概要
次に計画との比較につきましては、8ページをご覧ください。単体の売上高は、当初計画に対し11億7,200万円上回り、営業利益につきましては4億9,800万円上回りました。
【計画比較】単体業績の概要〔利益変動要因〕
これは9ページの階段チャートのとおり、計画に対する増収による増益は4億1,200万円ありましたが、それに加えて、計画時に想定した修繕費などの固定費が抑えられたことにより、計画を上回りました。
経常利益につきましては計画費2億3,300万円上回りとなったのは、当初想定よりも為替損益が影響したことによります。さて、次に主要子会社の業績について見ていきたいと思います。
売上高(前期・計画比較)
まずは10ページの売上高の前期および計画との比較の表をご覧ください。ここにお示ししている数字は、アリアケジャパンへの輸出などのグループ間取引を除いた連結調整後の数字です。これに沿ってご説明いたしますが、連結調整前の現地通貨ベースの数字につきましては、別にある決算のポイントをご参照ください。
終わった期の2020年3月期の米国につきましては、売却したため、当然ながら売上はございません。なお、一番下の連結合計を見ていただきますと、仮に2019年3月期の米国を除いたベースで勘案いたしますと、為替中立ベースで売上高はプラス5.8パーセントの増収となります。
アジアにつきましては、中国、台湾に加えて、インドネシアがここに含まれます。アジア3国合計で、2.5億円の増収、為替中立では5.8パーセントの増収でございます。
アジアの売上の中で約7割を占める中国については増収です。通期の増収率は、対前年プラス6.3パーセントです。4月から9月までの9ヶ月間は、米中貿易戦争を背景に、中国の国内景気の減速の影響を受け、増収率はプラス4.9パーセントでしたが、10月から12月の残り3ヶ月は、外食ユーザーの回復がありました。
台湾につきましても増収です。通期の増収率は、対前年プラス11.5パーセント、1月から9月までの増収率はプラス5.3パーセントでしたが、10月から12月の残り3ヶ月は外食ユーザーが回復した結果でございます。
インドネシアは日本向けの生産・輸出が軌道に乗るなか、外食向けに売上が立ち始めております。アジア合計では、計画に対しましては、売上は8.4億円下回りました。
次に欧州ですが、これはフランス・ベルギー・オランダ、3社の合計で1.86億円の増収です。為替中立では8.9パーセントの増収です。3拠点が連携し、売上を伸ばし、とくにオランダの既存顧客からの受注増が貢献しました。
また、単体であるアリアケジャパンは、戦略的に原材料調達をグローバル規模で行なっており、良質な原材料がある欧州からアリアケジャパンへ、輸出を増強しております。
アリアケジャパンが海外拠点から輸入する原材料の約5割をベルギーおよびフランスが占めている関係で、その調整額は必然的に他の拠点に比べて大きくなります。計画に対しては、欧州合計の売上高はほぼ計画どおり推移しました。
EU商圏の顧客獲得を推進する一方で、欧州の豊富かつ良質な畜産原料を日本へ供給する重要な原料輸出基地としての機能をさらに強化してまいります。今後の欧州およびグローバル展開のため、フランスにスプレードライヤーを導入し、粉末商品の販売も促進する計画でございます。
営業利益(前期・計画比較)
次に11ページの営業利益の前期および計画との比較の表をご覧ください。米国の利益に1億円が計上されているのは、会計ルールに沿って、一昨年度末に実現利益の戻りが計上されており、第1四半期に計上された一過性のものです。
こちらも同様に、連結合計を見ますと、2019年3月期の米国を除いたベースで勘案いたしますと、連結決算では、為替中立で営業利益はプラス12.1パーセントの増益となります。アジアの営業利益につきましては、1.3億円の増益、為替中立では10パーセントの増益です。
地域別概要
中国および台湾は増益でした。一方インドネシアは、日本向けの輸出を差し引いた調整後は8,500万円の赤字となります。計画に対しては、アジア合計の営業利益は1.2億円下回りました。
次に欧州ですが、営業利益は3.6億円の増益、為替中立では73.1パーセントの増益です。これは増収による増益以外に、ベルギーおよびフランスでは日本への輸出を増やし、稼働率が上がったことや、ベルギーでのリエンジニアリング効果により対前年大幅な利益増が寄与したもので、計画に対して欧州合計の営業利益は1.9億円上回りました。次に設備投資についてです。
設備投資の推移(連結・単体)
14ページをご覧ください。終わった期の2020年3月期の単体につきましては、主に九州第2工場の設備増強等で6.4億円を実施いたしました。一方、海外子会社につきましては総額9.8億円を実施し、その主な内訳として、ベルギーで6.3億円、フランスで2億円です。
減価償却費の推移(連結・単体)
減価償却費については15ページのとおり、終わった期の2020年3月期の単体については9.6億円、海外子会社につきましては総額6.3億円の計上となっております。
なお、次のページの業績予想とも関連しますが、今期の設備投資の計画につきましては新型コロナウイルス拡大により建設業者や機械納入業者にも影響が出ており、当初の予定より遅れが出ている関係で、国内外とも現在改めて見直ししております。
2021年3月期(第43期)業績予想
それでは次に、16ページの今期の業績予想についてです。引き続き国内・海外において販売を拡大し、成長を目指す方針には変わりなく、それぞれの市場においてさまざまな施策を展開してまいります。
しかしながら、新型コロナが世界規模で広がっている影響により、現段階では合理的な業績予想の算出が困難であるため未定とさせていただきます。今後、業績への影響を慎重に見極め、合理的な予想の開示が可能となった時点で、速やかに公表いたします。
新型コロナウイルス感染症の影響
では、その新型コロナウイルスの感染症の影響ですが、17ページをご覧ください。単体のアリアケジャパンにつきましては、政府や自治体の指導および自社の事業継続計画に基づき、九州工場、営業所および本社において、感染防止策を徹底した上で、通常の生産・開発・営業活動に注力しております。
海外の6拠点につきましては次のとおりです。中国は2020年2月10日より稼働を再開して以来操業中です。なお、1月24日から2月9日までの間は、行政指示によって稼働を停止しておりました。中国以外の海外の工場におきましては、年初来通常どおり操業中です。
原材料の調達におきましては、いずれの工場においても特段問題はございません。販売状況につきましては、外食産業の一部のお客様に影響が出る一方、食品加工メーカー等の一部のお客さまより例年に比べ受注が増えております。通常と違う厳しい事業環境のなか、全社一丸となって業務を推進しており、詳細については現在精査中でございます。
では最後になりますが、18ページです。いずれコロナが収束し、アフターコロナの世界がやってきます。企業に求められるのは、持続可能な経営のもと、新たな価値観に基づくイノベーションを進めることが重要であると考えます。
従いまして、アリアケグループは、社会課題や突発的事象に対して、ビジネスモデルの強みを活かし、事業展開で社会に貢献、イノベーションによる持続的な世界にも挑戦してまいります。
社会にはさまざまな問題が山積しております。少子高齢や健康志向により、外食・食品産業では人手不足などの問題や、人工ではなく健康的な天然調味料を調達する需要が高まっております。
これらの恒常的な課題に加え、新型コロナウイルスのような世界的に拡大する疫病や、毎年発生する大規模な自然災害に代表される突発的事象など、人類を取り巻く環境は不確実性が増す中、食の安定供給リスクも顕在化しております。
アリアケグループは、畜産系天然調味料のパイオニアとして構築してきたビジネスモデルの強みを発揮し、課題解決やリスクの低減にアリアケの強みを発揮して、日々貢献しております。
1つ目の強みとして、高度な生産能力・技術力が挙げられます。最新鋭のコンピュータで制御された工場で、おいしく、健康的で、高品質、安全な食品を大量に生産し、その安定供給を実現していきます。
2つ目の強みといたしましては、高度な品質や衛生管理能力が挙げられます。品質マネジメント認証ISO9001をはじめとする数々のコードで、グローバル認証の取得など、高度な管理体制を構築しています。
2019年には、さらに高度な食品安全マネジメントシステム、FSSC認証を取得し、品質・衛生管理能力を常に高度化し、食の安全への貢献を増進しています。3つ目の強みとして、グローバルな生産体制が挙げられます。
日本を含む世界7ヶ国に生産拠点を有し、良質な原料の安定調達により、国内外のニーズに対応した製品の製造で、食のグローバルな安定供給を実現しています。これら3つの強みのシナジーにより、高品質・安全・安心な約2,500種類の天然調味料を製造して、世界に安定供給することで、社会に貢献していきます。
また、持続的な事業基盤の構築のため、環境や社会との共存関係の発展にも取り組んでいます。自然の恵みを原料とする食品会社として、原料の仕入れから製品の出荷まで、事業の全工程が環境への配慮から成り立っています。主力製品であるスープの原料には、畜産のガラを有効活用しています。つまり、事業の起点そのものが天然資源の有効活用であり、循環型社会プロセスの一翼を担っております。
そのほかにも、残渣の有効活用、エネルギーの有効活用、温室効果ガスの排出削減、廃棄物の削減などにも取り組んでおります。また、豊かな自然を共有する地域社会や人材等の共創にも注力しています。
事業所による近隣社会の振興。就学支援などによる健全な人材の育成により、社会との共生を発展させることで、持続可能な事業基盤を構築しております。これらはすべて、幅広にESGやSGDsと深く関わっております。
アリアケグループは、これからも社会的利益に寄与するイノベーションを追求し、持続的な成長に挑戦してまいります。以上、駆け足でございましたが2020年3月期決算の概要でございます。ご清聴ありがとうございました