第7回 個人投資家向けIRセミナー&講演会(第4部)
星知也氏(以下、星):ありがとうございます。株式会社うるる代表の星と申します。本日はよろしくお願いします。
いつもこのようなIRの個人投資家説明会では、とくに地方においては平均年齢が70歳、(そのなかでも)ご高齢の方だと90歳近い方の集まりのなかでお話しさせていただくというのが基本スタイルなものであるので、今日はみなさま大変お若い方ばかりで驚いています。
このような若い投資家の方々に直接お話するというのは非常に貴重な機会だと感じています。せっかくみなさまにお集まりいただいていますので、少しでも有意義な情報をお伝えできればと思っていますが、時間が限られていますので、凝縮させていただくようなかたちになります。本日はよろしくお願いします。
|自己紹介
さっそくですが私の自己紹介です。1976年生まれで、昔はいわゆる76(ナナロク)世代と言われていました。北海道札幌市の出身です。
高校卒業後にオーストラリアに1年間、ワーキングホリデーというビザで滞在していて、帰国後に入社した会社で新しい事業を立ち上げ、MBOというかたちで独立した会社です。
|用語集
用語集も、ご高齢の方が多い説明会ではしっかり説明するのですが、今日はおそらく大丈夫だと思うので、省略させていただきます。
本日は、当社の概要と業績のハイライトにくわえ、当社は今期に初めて中期経営計画を公開したためそのご説明と、あとは当社の長期ビジョンのお話をしたいと思います。
|社名の由来
まずは株式会社うるるの社名の由来です。よく「エアコンをつくっている会社ですか」と聞かれますが、違います(笑)。
私がオーストラリアに滞在中にエアーズロックを見て非常に感銘を受けて……(エアーズロックを)見たことがある方もいらっしゃるかと思うのですが、2019年10月でもう登れなくなるみたいなのですが、私は登って非常に感銘を受けたのです。
ここ(エアーズロック)は原住民のアボリジニにとって聖地なのです。ちょうどオーストラリア大陸の真ん中にあるので「大地のヘソ」とか「地球のヘソ」と呼ばれていて、アボリジニがあがめている聖地なのです。だから、もう登ってはいけないということで、10月から登れなくなります。
現在は「登らせてあげる代わりにお金をくれ」ということで、オーストラリア政府にエアーズロックという聖地をリースしているのです。それが10月で終わるようです。
エアーズロックのことをアボリジニ語で「ウルル」と言いますので、当社をそのような地球の中心のような存在になれる会社にしていきたいという想いを込めて、社名を「うるる」とさせていただいています。
|うるるのビジョン
当社のビジョンおよび創業の理由です。当社は「人のチカラで世界を便利に」というビジョンを掲げて創業した会社です。
スライドに説明が書いてありますが、平たく言いますと、在宅ワークという働き方をスタンダードな働き方にしたいということです。
現在はアルバイトや派遣という働き方がもうスタンダードになっていますが、パソコンやインターネットがものすごく普及して、日本の企業においては、労働力不足がこれからますます非常に深刻な社会問題になっていきます。
子どもが小さくて外に働きに出られない、家族に介護が必要な方がいて外に出られない、障害を抱えてなかなか外に働きに出られないといった方々が、パソコン、スマホを使って、時間や場所にとらわれず働ける世の中です。(当社は)「じゃあそのような働き方で収入を得る機会を提供できるような仕組みをつくっていこう」という志を持って創業した会社です。
|沿革
当社の沿革です。会社自体は2001年に起業していますが、それは私が勤めていた会社の1事業部として法人化されていた会社です。
2005年に親会社が傾いてしまったものですから、新規事業は全部撤退ということになり、私の社内ベンチャー事業も撤退するという状況がきたのですが、そのタイミングで会社を買わせてくれと(申し出ました)。
(2005年頃は)まだ事業と言っても売上が100~200万円ぐらいしかないような状況でして、株式を100パーセント買い取って完全に独立したのが2006年です。会社自体は2001年につくられているのですが、実質創業しているのは2006年なので、当社は2006年を第二創業と呼んでいます。
事業の説明はこれからしますが、売上は右肩上がりで伸びてきている状況です。2015年に決算期を9月期から3月期に変えた背景があって、そこだけ売上が半減しているようなグラフになっています。
|うるるが解決する社会課題①
先ほども少しお話ししましたが、当社が解決する社会問題ということで、外に働きに出たくても働けない方々が今までできるお仕事は内職しかなかったのです。今も内職という働き方はあり、市場規模で言うと約2,000億円あるらしいのですが、とにかく内職は搾取される働き方で、時給にすると100円、200円という、すごくネガティブで暗いイメージがあると思います。
(内職は)実際にそのような世界です。インターネットやパソコンを使えばもっと割がよく非常に付加価値の高いお仕事ができるし、企業もわざわざデータ入力のために正社員を雇うのではなく、在宅ワーカーで処理するような時代になってきています。そのように、外に出て働きたくても働けない方たちに収入を得る機会を提供できていると(思います)。
一方で、弊社にも当てはまりますが、企業にとっては2年ぐらい前から急激にアルバイトおよび派遣社員の採用が難しくなってきているのです。半年間募集をかけても1人も採用できないような状況になってきていて、労働力不足というのは日本においてもう深刻な問題になっていて、これからもっと深刻になっていきます。
|うるるが解決する社会課題②
これは本当に特異な例ですが、実際に当社のサービスによって地方で在宅ワークをなさっている方のなかで、月に40万円、50万円稼ぐ方も出てきています。地元で働くよりも、当社のサービスを使って旦那さまの給料よりも高い収入を得る方が現れてきています。
|事業構成
どんな事業、どんなことをすれば在宅ワークという働き方がスタンダードな世界がつくれるか、(事業構成の)現形態がこちらの1枚にまとまっています。簡単にご説明します。
一番最初に、当社はデータ入力の受託サービスを始めました。在宅ワーカーさまにどんなお仕事をしたいですかとアンケートを取ったら、データ入力のお仕事をしたいという人が一番多かったのです。誰でもできるので。
デザインやプログラミングはなかなか難しいということでデータ入力が人気だったのだと思います。それでは当社はデータ入力の仕事を企業から受託して、それを在宅ワーカーさまに再委託するというかたちで仕事を創出しよう、と考えました。すごくシンプルな発想なのですが、当時はまだBPOという言葉も日本にそれほど普及していなかったので、データ入力専門店というかたちでホームページをつくったのです。
「名刺1枚だったらいくらで入力します」「アンケートのシングルアンサー1項目いくらで入力します」「1文字いくらです」というような料金表をつくったのです。
データ入力業界というのは、戦前からある非常に古い歴史のある業界なのですが、それまでは「1バイトいくら」というような料金表で、よくわからないものでした。当社は「1文字いくら」というようにわかりやすい料金表をホームページに載せたところ、お問い合わせがものすごく殺到して、予想以上にデータ入力の仕事をとることができたのです。そして無事在宅ワーカーさまに再委託することができました。
ただ、データ入力の精度は上げないといけません。ワーカーといっても主婦ですから、適当に仕事をする人もなかにはいます。このような玉石混交のなかで、どのようにデータ入力の精度を高めるかというと、同じデータをAさんとBさんに渡すのです。そして突合して、相違点をCさんに直してもらいます。そのように作業することで、理論的には99.98パーセントという入力精度が出るのです。
当社はとにかくそのディレクションを担うのです。自社ではデータ入力しません。とにかく在宅ワーカーさまと企業と繋げ、そして企業に高品質なデータを納品するためのディレクションをすることに徹している入力会社なのです。
普通はデータ入力の会社というと、大量のマシンを購入して、大量のキーパンチャーというオペレーターを雇って、一斉に処理していくものですが、(当社は)1人もデータ入力のオペレーターがいないデータ入力会社というかたちになりました。
そして、無事に大量の入力のお仕事を得たのですが、僕らにものすごく負荷がかかるのです。何百人、何千人の在宅ワーカーさまにお仕事を渡すのならなんとかがんばれるのですが、僕たちが目指す世界は何百万人、何千万人の在宅ワーカーさまが収入を得られるような、(在宅ワークが)スタンダードな働き方である世界でした。
この業態だと在宅ワークがスタンダードにはならないと思ったので、次に始めたのが「シュフティ」です。現在はクラウドソーシングという言葉が普及しましたが、当時はまだクラウドソーシングという言葉もなかったので、単にマッチングサイトと言っていました。
当社を介さず、在宅ワーカーさまと企業さまに、Web上で直接やり取りしていただこうということです。(データ入力の仲介をしていたときの)ボトルネックになっている部分を解決できるのではないかということで、今でいうクラウドソーシングサイトをつくりました。
今ここに、主婦だけではありませんが、おもに主婦の方が40万人ぐらい登録しています。データ入力だけではなく、ライティング、翻訳などの、僕たちが事務作業と呼んでいる簡単なお仕事が「シュフティ」上で常に何百、何千と流通されているという状況がつくれました。
ただ、クラウドソーシングにはクラウドソーシングの問題があり、これだけでは当社が目指している世界はつくれないと考えました。
いくつか課題はありますが、ものすごく搾取されてしまうのです。時給にしたら結局内職と変わらないような金額の報酬になってしまっていたり、お金を払わない企業が現れたり、データを納品しないワーカーが現れたり、双方ともが安心してお仕事のやり取りを行える環境を整えることがなかなか難しい現状がありました。
「これ(サイト)だけつくってあとは勝手にやり取りして」ではうまく行かなかったので、たどり着いたのがCGSというビジネスモデルです。これはCrowd Generated Serviceの略で、在宅ワーカーさまを活用して生成された事業という意味です。当社は在宅ワーカーさまをBPO時代にずっと活用していたので、ノウハウを持っているのです。
そのノウハウを持った当社が、大量の人力を活用しないとつくれないようなプロダクトをつくって、そのプロダクトを企業に月額制でご利用していただきます。
つまり、企業はもう直接在宅ワーカーさまとやり取りする必要がありません。当社がつくったプロダクトを使っていただければいいのです。在宅ワーカーさまとのやり取りは全部僕たちが請け負います。このCGSのサービスが増えれば増えるほど、在宅ワーカーさまのお仕事が創出され、企業にも価値を提供できます。
このサービスで企業にどんなメリットがあるかというと、在宅ワーカーさまを活用するのはものすごく利点があって、のちほど簡単に説明しますが、例えば「fondesk(フォンデスク)」というCGSは在宅のコールセンター業務です。電話受付代行サービスです。
ベンチャー企業などは、電話対応が発生すると全員でランチに行くこともできないような状況なのですが、(このサービスを利用すると)かかってきた電話はもうその会社では鳴らず、在宅ワーカーさまの方で鳴ります。そして、電話があったということが「Slack」などのチャットで携帯に送られ、そこから必要に応じて折り返し電話をしていただけます。
通常の場合、コールセンターは設備投資産業なのです。コールセンターというサービスを始めるとなると、地方に立派な建物を建てて、何百、何千ものブースをつくって、雇用もして、固定費を大量にかけて、それからサービスがスタートします。一方、僕たちは「fondesk」を始めるのに働く場の確保や設備に1円もかけていません。在宅ワーカーさまの家で、在宅ワーカーさまのリソースで、在宅ワーカーさまが払っていただいている通信費で、交通費も払う必要ありませんし、採用費も労務費も一切かからないのです。仕事をしていただいた分の報酬だけを支払います。
このように、在宅ワーカーを使うということにはものすごく合理的でコストメリットがあるのです。そのため、非常に高付加価値なサービスを企業に低額で提供することができます。競争力もあります。このようなモデルで、当社は在宅ワークという働き方をスタンダードにしようとしており、ビジョンで述べた「人のチカラで世界を便利に」というところにたどり着いています。
|事業別 売上高・利益の構成と推移
売上の推移です。2017年3月期からのグラフですが、売上高ではオレンジのところがCGS事業の合計です。2018年からセグメントを分けていますが、2019年では売上のうち12億2,200万円が「NJSS」というサービスによります。1億8,400万円が、先ほど説明した「fondesk」や「えんフォト」などその他のCGSの売上です。
そして薄いオレンジがBPO事業、一番最初に始めたデータ入力等の事業を表しています。この業務はまだ継続しています。現在ほとんどの発注先は国内外のパートナー企業です。在宅ワーカーさまを活用するためには僕らが非常に疲弊してしまうので、中国、ベトナム、モンゴル、フィリピン、などに日本語も入力できるような委託先があり、100社ぐらいの国内外の企業と提携して、現在はほとんどをパートナー企業で処理しています。
そして右側が営業利益のグラフです。ここで先ほどの「CGSは収益率が高い」というお話に繋がってくるのですが、右側の2019年3月期の「NJSS」の利益は7億7,300万円です。売上高の12億2,200万円に対して、営業利益が7億7,300万円出ているサービスなのです。非常に高収益です。
BPOに関しては、8億200万円の売上に対して8,100万円の営業利益です。一般にBPO業界は営業利益率が1パーセントとか2パーセントという世界なのですが、そのようななかで、当社のBPOは約8億円に対して約8,000万円と、10パーセントの営業利益を出しています。
(営業利益率が高い理由は)社内にキーパンチャーを抱えていなかったり、極力固定費をかけずにBPOを営んでいるため、非常に高収益なBPOがつくれているという状況になります。
|CGS事業 入札情報速報サービス「NJSS(エヌジェス)」
もうかなり時間が経ってしまったのですが、今日はこの「NJSS」に関して詳しくお話ししたいと思います。なぜなら、現状において、弊社の営業利益の大半を「NJSS」で稼いでいるためです。
「NJSS」は入札情報速報サービスの略です。全国の官公庁や自治体が民間企業にお仕事をお願いする時には、基本的に入札にしなければいけないのです。入札というと、道路をつくったり、学校をつくったりというような建設工事のイメージがあると思います。建設工事ももちろんあるのですが、実は全体の6割は物品・役務といって、例えばパソコンの調達や、イベントの企画などが占めます。
2020年にはオリンピックがあります。競技場をつくるのは建設工事なのですが、開会式を企画するとなると広告代理店さまが参加することになります。また、ボランティアが着るジャンパーをつくるとなると印刷会社さまなどが参加します。
お弁当なども全部入札になるのです。おにぎり5万個を発注するなどといった案件となると食品をつくっている会社さまが参加します。いろいろな会社さまが参加し、(入札の)6割は工事系ではないものです。
(入札の)全体のマーケットは20兆円以上あるのです。毎年20兆円以上が、国や自治体から民間の企業に発注されています。(「NJSS」は)その情報を一括で検索できるサービスです。
官公庁や自治体は現在だいたい7,500機関あるのですが、「NJSS」がないと、文科省、厚労省、なんとか独立行政法人、なんとか国立病院などといった7,500ものWebサイトに入札情報がランダムに出てくるのです。いつ出るかもわかりません。
そのため、入札に参加している企業はその7,500のWebサイトを日々チェックしないと機会損失を起こすのです。物理的に(全ては)チェックできないため、ほとんどの会社は機会損失を起こしています。(「NJSS」では)この7,500のWebサイトを全部チェックしているのです。
7,500のWebサイトの情報ですから、ロボットを巡回させて情報を自動収集するということも可能なのですが、官公庁の情報はPDFや画像で出たりするのです。そうなるとなかなかロボットで収集できず、人力しか頼れないというような状況があるので、今のところは当社の在宅ワーカーさまによる人力で収集する方法が有効です。
大量の在宅ワーカーさまを活用して、7,500のサイトを日々巡回しています。そして、年間およそ200万案件を収集しています。そのデータベースを企業に、いわゆるSaaSで、月額いくらというかたちで提供しているというサービスになります。
|NJSSの特長
このサービスに関しては、入札情報のほかに落札情報も収集しており、「どの案件をどの企業がいくらで落札した」ということも(記録しています)。もう10年間サービスを継続していて、かなり(掲載元の)ページがなくなってしまいましたが、落札のデータベースも構築しているため、過去にこの案件はどの会社がいくらで落札したのか、10年間分ですが全部ここでチェックできます。そのように、マーケティングにも使えるサービスになっています。
|入札市場概観
16ページからが入札マーケットのお話です。20兆円超のマーケットに対して6割超が物品・役務です。
この入札というマーケットについて、みなさまはたぶんご存知ないかと思います。僕らも「NJSS」を始めるまで知りませんでした。入札に参加するためには資格が必要なのです。その資格(を持つ会社)が、7万社あるのです。これは国の案件に参加できる資格です。自治体はそれぞれまた自治体ごとの資格があるので、それらを全部合わせると、現在はだいたい40万社が資格を持っています。
|NJSSのポテンシャル
その入札の資格を持っている会社さまに対して、現在当社の「NJSS」を有料でご利用いただいているお客さまは約3,000社です。まだまだ認知度も低ければ、入札自体を知らない会社もたくさんございますので、そのような会社にこれから入札を啓蒙していくことも当社の活動の1つになっています。
|NJSS有料契約件数・ARPUの推移
18ページでは、順調に売上を伸ばしていることを示しています。最近は件数もさることながら、単価を上げることに成功してきています。
|CGS事業その他「えんフォト」
次の「えんフォト」というCGSは、幼稚園・保育園にカメラマンを派遣するサービスです。
|CGS事業その他「fondesk(フォンデスク)」
先ほどご説明しましたが、「fondesk」は在宅のコールセンター業務です。当社はこのようなCGSを、売上・利益を上げるため、およびビジョンを達成するための方法論として次々と展開しています。
|BPO事業
BPOに関しても説明があります。24ページには料金表も載せていますが、このように1件の単価をわかりやすくしています。
|クラウドソーシング事業
「シュフティ」に関してはクラウドソーシングビジネスでして、流通額の10パーセントを当社の売上としています。
ただ、弊社の売上の構成のうちでは2パーセントぐらいしかありません。当社は「シュフティ」を運営しているので、クラウドソーシングの会社ととらえられている方も多いです。
「シュフティ」だけ見ればそうなのですが、当社の売上構成比では1、2パーセントです。しかも、(「シュフティ」は)当社がCGSを展開するための土台の役割をしているのです。
つまり、「シュフティ」の一番のヘビーユーザーは弊社なのです。そのため、今は「クラウドソーシングが抱える課題解決が見えるまでは自分たちが最低限使えればいいかな」ぐらいの気持ちで展開しているサービスです。ただ、一般にもオープンにしているので、一般の企業も自由に在宅ワーカーさまにお仕事を発注できるという状況ではございます。
|業績ハイライト(2/2) ~ 2019年3月期 連結BS(要旨)
ここからは中期経営計画の重要なところだけお話しします。29ページにBSの概要を載せていますが、弊社の時価総額は現在約42億円です。そのうち、時価総額の構成の約30億円キャッシュとして持っているため、非常にキャッシュリッチな現状です。借金も2億円ぐらいしかないため、実質的に無借金経営です。
|中期経営計画コンセプト
その約30億円というキャッシュをこれからどう使って(会社を)成長させていくのかというのが中期経営計画のお話になってきますが、短期的な利益追求だけではなく積極的に投資を実行して、企業価値の向上を図ろうと考えています。
今まではお金を使わずに増収増益で成長させていくことが株主に求められていて、株価の上昇につながり、企業価値を上げることだと認識していました。今期に、それが間違いであったと感じました。お金を使って赤字にしてもいいから、企業価値を伸ばすというジャッジのもと、経営方針を大きく変えました。
|現状の課題と中期方針
結果として、今期は一回赤字を掘ります。なにに掘るかと言ったら、一番は「NJSS」に掘ります。
いわゆるSaaSですので、チャーンレートというのをしっかりと見ていき、カスタマーサクセスというチームをつくるなど、体制もしっかり整えていこうということで、大きく3つに投資します。「NJSS」の解約率、すなわちチャーンレートが高いので、「NJSS」の契約数の増加が鈍化してきています。「NJSS」をさらに成長できるサービスにするべく、対策をとろうということで、大半を投資します。
また、ほそぼそと、と言ってはなんですが、「NJSS」はまだまだ認知のたりないなかで運営していたので、認知を高めていこうと(考えています)。
次に、今は「NJSS」の利益に依存している状況ですので、次の「NJSS」となるような(サービスを)次々に仕込んでいます。「fondesk」や「えんフォト」というサービスが出てきていますが、「ネクストNJSS」をどんどん創出していこうと考えています。
最後に、弊社は高収益なのですが、それでも低収益になりがちなBPO市場において、高収益なBPOをつくっていこうと考えています。この3つに投資していきます。
具体的には、「NJSS」の課題は、チャーンレートが高いということです。今までは解約することはあまり気にせずに、とにかく(契約を)とることだけを考えていましたが、今度は継続していただけるような体制を整え、(契約数を)純増させていこうと考えています。
|NJSSマイルストーン
そのために、34ページに具体的な(NJSSの)マイルストーンを示しています。大きく2つに投資します。
1つは、営業プロセスの最適化です。今期1年をかけて、いわゆるSaaSのモデルにしていきます。マーケティングがあって、インサイドセールスがあって、フィールドセールスがあって、カスタマーサクセスがあってというようにそれぞれのKPIを設定して、それぞれのアクションプランを練って投資し、人員を増やしていきます。
次にもう1つ大きな投資としましては、プロダクトのリニューアルです。今までは十何年前に始めたままのプロダクトで、つぎはぎでWebサイトを補強してきていますが、よりスピーディに、より大胆にサービスの価値を上げていくためには、今のプラットフォームのままだと少し負債がたまりすぎてきているので、2年をかけてプロダクトを再構築していきます。
そこに投資をしていきますので、前期は「NJSS」単体で、EBITDAで出していますが、弊社は現時点ではのれん(償却)と減価償却がほとんどないため、ほぼ営業利益を表すと思ってください。「NJSS」だけで12億円に対して7.8億円の利益ですが、今期は売上を据え置いて、利益を7.8億円から3億円にし、4.8億円前期よりも使うのです。
具体的には何をするのかというと、人数を増やすのです。全部人(への投資)です。チームは33名でしたが、今期は61名まで増やして、一気に体制を構築していこうと考えています。
そして最終的に、5年後に売上を21.5億円、利益を13.5億円にしていこうという計画を立てています。
|全社財務目標
「NJSS」以外も含めた全社の計画がスライド35ページです。5年後には売上48億円、EBITDA 15億円(を目指しています)。EBITDA率を32パーセントにしていこうと考えています。
もちろんプロモーションや広告などにも投資しますが、エンジニアの採用など、人への投資が大きいです。
|背景~深刻化する日本の労働力不足
最後に、38ページから、中期経営計画後の未来についてお話しします。日本はこれから深刻な労働力不足を迎えると冒頭にお話ししましたが、38ページのグラフが人口と生産労働人口の推移です。2017年に7,596万人いる労働人口が、2040年には5,978万人となり、約1,600万人減ると統計学的に出ているのです。
今のまま、よほどのことがない限り、現在の日本人1人の平均年収である432万円と(1600万人を)かけ合わせた69兆円分の労働力が、もっと先の2060年では、128兆円、今の約4割の労働力が減ると見えてしまっているのです。
日本の国力にも関わってくるお話かと思うのですが、これだけ労働力が減るということがもう見えているとなると、もちろん政府もほうっておきません。それでは政府が何をしているかというと、働き方改革を進めています。
現在は長時間労働の是正ばかりに目がいってしまっていて、なかなか(働き方改革の本来の趣旨が)見えづらくなっていますが、働き方改革の本来の趣旨は、一人ひとりの生産性を上げようということなのです。労働力が限られていくなかで、一人ひとりの生産性を上げることにより、失われる労働力69兆円分を補おうというようなことです。
|労働力不足に対する代替・補完手段と当社の役割
39ページは完全に当社の予想なのですが、働き方改革がうまくいくことで26兆円分ぐらいは補えるのではないかと考えています。そして、高齢者といってもまだ元気ですから、労働力として活躍できるのではないかと考え、ここでも26兆円分ぐらい補えるのではないかと考えています。
そして、女性の社会進出ということが数年前から言われていて、かなり進んできていますが、どうしても今は待機児童問題がボトルネックになっていて、(働きに)出たくても出られないという状況があるのです。しかし、ここもだいぶいろいろな自治体で対策がとられてきていますから、女性の労働力がもっと活躍できる状況になってきます。ここで7兆円分ぐらいは補えるだろうと考えています。
そして、移民問題などについて最近ニュースでも取り上げられていますが、なんだかんだ言っても外国人の労働力も使わなければ(と考えています)。東京においては、現在はコンビニに行ったらスタッフがだいたい外国人という状況ですから、もっと活用が進んで9兆円は補えるだろうと考えています。
そして、最後に今まで労働力としてカウントされてこなかった主婦、障がい者(を労働力としてカウントします)。あるいはみなさまにおいても、移動中の電車のなかで仕事をしたり、待ち合わせ時間中の5分で収入を得たりといった、細切れでお仕事ができるような環境を当社が提供していきたいと思っています。そのような世界がつくれると、3兆円のマーケットがつくれるだろうと考えています。
このようなかたちで、失われる69兆円は補っていけるのではないかなと(考えています)。そして当社は、そのなかでクラウドワーカー、在宅ワークという働き方をスタンダードにすることで、新しいマーケットをつくっていこうと思っています。
そのために必要なBPO事業、クラウドソーシング事業、そして現在はCGS事業を手がけていますが、上記のような世界をつくるためにプラスアルファとして「今度はこのようなこともやる必要がある」とか「ああいうこともやる必要がある」と言ったことが、当社の新規事業になっていきます。
ただ、現時点においては、BPO、クラウドソーシング、CGSの3つをとにかく進めることが、当社の理想の世界に近づける、そして会社としても成長できると考えています。とくにCGSについては、どんどん新しいCGSをつくっていくことと、今あるCGSを伸ばしていくことが会社の成長戦略となっています。
少し駆け足になってしまいましたが、以上を弊社の概要の説明とします。ご清聴いただき、ありがとうございました。
坂本慎太郎氏より質問
八木ひとみ氏(以下、八木):ありがとうございました。それでは、質疑応答にまいります。まずは坂本さん、今のプレゼンを聞いて、機関投資家ならどこが気になりますか?
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ご説明ありがとうございました。最後の部分で詳細の説明がございましたが、うるるさまは「NJSS」という非常に強いキャッシュを創出する、利益率の高い事業をお持ちなので、やはり会社全体で注目するべきところはあるだろうというところです。
このキャッシュによって、次の事業をいろいろと展開できるということでした。34ページにあるとおり、セグメントの売上・利益について、2019年3月期の「NJSS」のセグメントでは売上が12億円あって、利益が7.8億円あるということで、非常に利益率が高いのですが、こちらを改修して、次世代のシステムにして、さらなる飛躍をするという計画になっていますので、直近は実際収益が落ち込むというところですが、このあとの伸びは見えるのかどうか気になります。
自分も含めた投資家のなかには、やはり「一時的な利益が伸びない」「(利益が)落ち込む」ということに非常に嫌気を持つ投資家がいます。最近は四半期ごとに決算がありますから、そこで自分の思ったとおりの利益が出ないと嫌だという人がいるのですが、僕もずっと言っているとおり、本来、株式投資というのは、会社の長期的な成長をとるという投資が普通だと思います。
ここに来られている方のなかで専業と兼業の比率はどのぐらいなのかということはわかりませんが、(一般的に)だいたい2、3割が専業で、それ以外は兼業というかたちなので、兼業の投資においては、長い期間を考えて会社の成長をとるという投資はありだと思います。
もともとうるるさまの場合は「NJSS」の収益が見えているので、それがまた利益ベースに乗ってくるかたちになると、当然収益に出てくるわけですから、株価も伸びてくるだろうと思うところは、僕が言っている投資のロジックの一つです。
アイディアの部分を今から買うというのも当然ありかもしれませんが、利益が出てくるところに注目するという投資法もあるのではないかと思っています。
時間もないのでそろそろ(質問します)。「NJSS」の改修に伴い人員を61人まで増やすという話をいただきました。この増員ではどちらかというとエンジニアの方(の増員)が多いのかなと思うのですが、それ以外に営業も(増員する)という話があったため、その内訳を教えていただきたいです。
内丸泰昭氏(以下、内丸):代わってご説明します。財務経理部の内丸と申します。おっしゃるとおり、今回の増員ではエンジニアも増加するのですが、先ほど星もご説明申し上げたように、営業体制の拡充にも大きく比率を割きます。
従いまして、2020年3月期にかけて増える人員としては、エンジニア自体は正社員ベースですと6、7名程度を(考えています)。むしろそれ以外、「NJSS」でいうとマーケティングの人員、フィールドセールス、それからいわゆるSaaSビジネスでよく言われるインサイドセールス・カスタマーサクセスといったメンバーを10名以上(増やそうと考えています)。
あとはあまり触れなかった部分なのですが、弊社の「NJSS」というサービスにおける品質管理として、データベースがデータベースとして信頼に足るものなのか、例えば抜けや漏れがないかなどをチェックする部隊であったりを増やしていくことによって、「NJSS」の事業部だけでトータル30名弱増えると(考えています)。
なので、エンジニアが10名弱で、あとは営業体制の拡充にかかる各部門を増やしていくというかたちになります。
ちなみに、それ以外にも全社で、「fondesk」「えんフォト」などの各事業部でも人を拡充しますし、会社が大きくなればコーポレート部門も拡充していかなければならないので、全社的に人数を増やして、今期だけで47名増加させる計画となっています。
坂本:ありがとうございます。
質疑応答:徳島県にスキャンセンターを置く意味とは?
質問者1:ご説明ありがとうございました。2点質問があるのですが、52ページの資料で、徳島スキャンセンター新規開設とございますが、なぜ徳島なのかが少しわかりません。
素人でまったくわからないのですが、スキャン業務というのは実際にものをスキャンするので、もしかしたら、スキャンするものを徳島まで送るのということなのでしょうか。もし送るかたちであればなぜ徳島なのかという疑問もありますし、逆に外国でということはないのかなというのが1点です。
あと、営業体制の件で、フィールドセールスという話がありました。簡単に言うと外回りの営業ということだと思いますが、御社はお客さまをとるにあたって外回りの営業でとる比率はどのぐらいあるのか聞きたいです。以上の2点です。お願いします。
星:ありがとうございます。
まずはなぜ(スキャンセンターを)徳島に開設するのかです。理由はしっかりあるのですが、まずなぜ地方にスキャンセンターを開設するのか説明します。
在宅ワーカーさま、国内の会社さま、パートナー企業も活用するのですが、当社のBPOのビジネスモデルとして、現在はデータ入力の大半を国外で処理しています。その際、アンケート10万枚、名刺100万枚といった大量の原本が弊社に届くのです。この紙を中国にそのまま送ると非常に大きなリスクとコストと時間が発生するので、全部PDFにします。そこで大量のスキャンが発生するのです。
まずデータ化したものを国外に送るというプロセスがあり、今まではその作業をずっと東京都内で行っていました。複合機の上の部分だけみたいなマシンを100台ほど用意し、都内でアルバイトさまを何十人も雇ってスキャンしていたのですが、先ほど言ったようにもうアルバイトが採用できなくなってきていて、時給もすごく高くなってきているため、地方にそのようなセンターをつくったほうがコスト削減になり、人も確保できるという理由から、地方にセンターを作ろうと考えていました。
そうすると、いろいろな自治体がすごく一生懸命企業を誘致しています。家賃の半分を負担してくれるだとか、人を採用したら1人につきいくら補助金が出るなどの条件を見比べて、一番よかったのが、九州にある宮崎県都城市だったのです。
そこにはいろいろなベンチャー企業があるのですが、唯一(の欠点として)北海道と同じく宅配便の配達に中一日かかるのです。そうすると、当社のBPOにとっては致命的な時間のロスが発生してしまいます。
条件のいいところで翌日に宅配便が届くところとして、徳島県の小松島市が挙がってきたので、そこにセンターを置くことに決まりました。人もすごく採用が楽ですぐに集まってきますし、地方は時給も圧倒的に安く、社員のエンゲージメントもはかっているのですが、東京の社員よりもすごくやる気もあります。
作業自体はすごく単調で、朝から晩までずっとスキャンするというお仕事なのですが、それを地方で処理して、コストを削減しようと考えています。
もう1つの「NJSS」の体制についてです。フィールドセールスが外回りで飛び込み営業をかけるということは一切ないのですが、弊社の営業リストには、無料トライアルを実施していただいているお客さまが毎月いるのです。
そのお客さまに対して、まずインサイドセールスが「ご利用いただきありがとうございます、8日間使ってみていかがでしたか」とテレアポをかけます。そして具体的な細かいご説明をするために当社の営業マンが伺うということで、商談のアポをとるのです。そのアポに対して、フィールドセールスがゴールを決めにいくというような営業プロセスになっています。以上です。
質疑応答:「NJSS」の競合サービスに対する独創性について
質問者2:「NJSS」の競合や同業他社などがあれば教えてください。
星:ありがとうございます。「NJSS」の競合他社ですね。
実は当社がこの入札情報速報サービス「NJSS」を始めた時には5、6社ぐらい同じサービスがあり、それなら当社が参入する必要はないなと思っていたのですが、当時の競合サービスを見てみると、ロボットで巡回してスクレイピングで集めた情報しか載っていなかったように見受けられたのです。要するに、抜け漏れがあるように感じたのです。
当社であれば人力リソースがあり、それを活用するノウハウがあるので、抜け漏れないサービスがつくれるなと考え、後発ながらも参入したという経緯がございます。
現状は非常にニッチなマーケットであり、『何々白書』みたいなものが出ていないので、「NJSS」のシェア率が何パーセントかということは正直わかりません。しかし、弊社の「NJSS」の売上は現在12億円あります。他にいくつか競合サービスがあるのですが、いずれも非上場会社さまなのでちゃんとしたデータはありませんが、おそらく全部足しても数億円くらいと見ております。
売上だけから考えた当社の憶測ですが、(市場を)独走しているような状況なのかなと思っています。