第5回 個人投資家向けIRセミナー&講演会(第3部)

山口拓己氏(以下、山口):株式会社PR TIMESの代表を務めています、山口と申します。今から30分から35分ほど、私のお話にお付き合いいただければと思います。

私は新卒で山一證券に入社した後、コンサルティングファームなどを経まして、株式会社ベクトルに2006年に入社しました。そこで取締役CFOを務めながら、このPR TIMESという事業を立ち上げて、代表に就任して今に至ります。

まずはじめに、動画で私たちの事業についてお伝えしたいと思います。こちらをご覧ください。

(動画が流れる/以下は動画内コメント)

山口:人がびっくりする驚きって、わくわくとかどきどきとか、ポジティブなものもあれば、ネガティブなこともあって、今話題になっているフェイクニュースにしても、スキャンダルにしても、これから先も、ずっとそのようなニュースを、普通の人が楽しんで見続ける、読み続けるのは残念だと思っていて。自分たちの事業を通して、お客さまとともにニュースの主役を変える。

社員1:PR TIMESは、ニュースになる前の一次情報が、日本で最も集まるプラットフォームです。プレスリリースは、メディアがニュース報道をするまでは、みなさまの目に広く触れることはありませんでしたが、当社サービスを通じて、プレスリリースがみなさまに閲覧されるようになり、大切な情報が大切な人に届く可能性を高めています。

社員2:企業の方はもちろん、自治体や個人事業主など、幅広いお客さまにPR TIMESをご利用いただいています。私たちは当社サービスが、熱い思いを持って行動し、その情報を伝えたいと願う、すべてのみなさまの力になればと思っています。

クライアント1:私たちが、スリランカのこだわりの銘茶園から紅茶を仕入れ、デザインも自社ですべてしている。「よい商品を作っている」「ストーリーのある商品を作っている」という思いがあったのですが、「それをどうやって多くの方に伝えていけばいいのか」を悩んでいた時期があったのですが。PR TIMESさまを使えば、今まで私たちが持っていなかったお客さまへ、情報をお伝えできるということを知り、利用させていただくことになりました。

クライアント1:たくさんのWebサイトですとか、朝の情報番組にも取り上げられまして、取り上げられた翌日は、お店の前に行列ができていたりですとか、ECサイトも、今まで見たことがなかったほどのご注文数が伸びていまして、びっくりするようなことが続いていました。PR TIMESを使ったことで、日本全国のお客さまに知っていただくきっかけになったと思っています。

クライアント2:お店がオープンする前からご縁をいただいていたので、オープンをきっかけに、PR TIMESさんのプレスリリースを使わせていただきました。各種メディアに取り上げられたのはもちろんなのですが、もう1年以上前に使わせていただいたものが、未だに使っていただいて、いろいろなメディアさまに取り上げていただけるので、自分が想像していた以上に、プレスリリースの効果があることを実感しました。

社員3:PR TIMESとは、PR会社というイメージを持たれがちですが、実際はPRやコミュニケーションの課題を、ネットで解決するサービスを提供している会社です。最近では、その流れをより加速するために、新規事業の立ち上げやM&Aにも積極的に取り組んでいます。

社員4:夢中になって余白の仕事も、自分ごととして楽しめる人。そして、その楽しさをみんなに伝えられる人と、一緒に働きたいと思っています。役職や年齢にかかわらず、情報をオープンにすることで、全員が意思決定し、機会をつかめる環境を用意しています。

山口:目標を高く掲げて、しかもそれを公言するのも重要だなというのは、最近実感していて。一生活者からすると、「無理だろう」と思っちゃうんですよね。それを公言する企業が本気で取り組んで、そのような取り組みを、またニュースとして出してもらえるって、すごくすばらしいことで。また、「自分の仕事も発表していこう」という輪が広がると、私はもっともっと世の中が前進するのではないかなと思います。

(動画終了)

私たちの会社のざっくりしたイメージが、こちらで伝わると思います。残りの時間で、私から会社の事業の話や直近の業績などについてお話しします。

私たちの会社は、今日の会場から1駅の「外苑前」にありまして、社員が61名と、かなり少数で事業を運営しています。

行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ

コーポレートのミッションは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」です。この社会の実現に向けて、全社一丸で取り組んでいます。

主力事業ハイライト

主力事業が、社名でもあるPR TIMESです。従来のプレスリリース……従来というのは、よくFAXや郵送で紙で企業からメディアの記者へ送られてきたものですが、それを超えて、企業とメディア、そしてその先にいる生活者の3者をニュースでつなぐインターネットのプラットフォームサービスです。

ただ、プレスリリースは一般的になかなかなじみがないため、プレスリリースとは何か、そして従来のプレスリリースをどうアップデートして、PR TIMESはどのようにオリジナリティを築いたか、ご説明いたします。

従来のプレスリリース①

1つ目が、プレスリリースです。

従来のプレスリリースは、企業が何かを多くの人に伝えたいと思ったときに、報道機関であるメディアの記者や編集者に渡すドキュメントをプレスリリースと言っていました。そして、記者や編集者が記事や番組に取り上げて初めて多くの人に伝わるというものでした。   でも、メディアで取り上げられるのは極めて確率が低くて、たとえばアメリカの調査データですが、アメリカのデジタルメディアの記者が1年間に受け取るメールの数が3万8,000通。うち、プレスリリースが2万6,000というデータがあり、おそらく日本もほぼ同じような状況です。   一方で、同じ調査によると、記者のうち45%は、1日1記事しか書いていません。

だいたい、100に1つも記事にならないのが実態です。では、記事にならないとどうなるかと言うと、従来は誰の目にも触れることはありませんでした。本当に、米1粒くらいしか取り上げられないのが、従来のかたちです。

PR TIMESが実現するプレスリリース

私たちは、それをメディアの人に取り上げてもらうだけでなく、一般の人にも直接見てもらえるようなWebサービスを立ち上げました。それによって、一定の生活者に伝わります。さらに、プレスリリースが読まれる状況を見て、メディアの人も「ネットで話題」という文脈で取り上げるといった流れが生まれています。

2018年に『起業の科学 スタートアップサイエンス』という本が出て、今でも「Amazon」のベストセラーになっています。このなかにPR TIMESが紹介されています。「日本でもアクティブなVCはPR TIMESなどをくまなくチェックしていて面白そうなスタートアップがいたら問い合わせしている」と記述されています。

要するに、日経新聞に出ているスタートアップは、もう多くの人の注目を浴びていて、種から芽になっているわけです。そこで、種を拾い集めるためにPR TIMESを活用してくれています。

もちろんVC以外の方にもPR TIMESは読まれています。例えば、2019年の一番のヒットは、たぶんタピオカだと思いますが、Googleで検索すると、(画面を指して)このようにトップページにPR TIMESのプレスリリースが表示され、引用回数が多いとあります。

Googleでタピオカを検索した人の数は、このGoogleトレンドのグラフのとおり急上昇しています。「何か調べたいな」と思ってGoogleで検索すると、場合によってはプレスリリースが読まれることもあります。   実際に多くの人がPR TIMESを閲覧していて、現在は月間で約2,000万PVあります。

さらに、PR TIMESで閲覧されるだけでなく、転載先で読まれることも多いです。LINE NEWSにも転載され、(スライドを指して)このようにPR TIMESのプレスリリースがピックアップされ、多く転載されることもあります。LINE NEWSのような転載のパートナーシップを結んでいるメディアは現在、190媒体あります。

このなかには、みなさまもご存知の有名な媒体なども含まれているかと思いますが、最小でも20媒体、中央値で35媒体ほどにプレスリリースが転載されています。

従来はほんの一部のプレスリリースがメディアにピックアップされて、それが伝わっていました。しかし、直接プレスリリースが届くことで、一定程度、世の中に伝わるようになった。これが、私たちが起こした1つ目の変革です。

プラットフォーム?土台??

もう1つ、プラットフォームについてです。インターネットが普及して、「プラットフォーム」という言葉を聞く機会が多くなったと思います。私たちPR TIMESもプラットフォームだと思っています。プラットフォームとは、参加者が増えれば増えるほど、ユーザーの利用価値が高まって、さらにユーザーが増えやすくなる、そのようなサービスです。

昔で言えばクレジットカードで、最近では携帯電話や電子メールなどがそれにあたります。私たちもクライアントやユーザーが増えれば増えるほど、それぞれが利用する価値が高まるような仕組みになっています。

PR TIMESもプラットフォームだから成長が加速

どういうことかと言うと、利用企業やプレスリリースが増加すればするほど、情報やコンテンツを求める生活者や記者の方の利便性は高まります。さらに、もともと企業は「多くの人に伝えたい」と思っていますので、生活者や記者の方が増えれば増えるほど、広く伝えたい利用企業のメリットも高まるわけです。よって、また新しくPR TIMESを利用する企業が増えやすくなる。そのような循環が起こっています。

さらに、私たちのPR TIMESのサイトを閲覧いただくとわかるのですが、利用企業がこれまでのサービスでは伝えられなかったリッチコンテンツをプレスリリースで表現できます。

画像を多く使ったり、動画を組み込んだりと、情報の受け手にとって有益さを追求するといった状況も生まれています。

業績推移

古くから始まったプレスリリース……正確に言うと1906年から始まったプレスリリースを変革した結果、業績は順調に伸びています。事業開始以来12期連続で売上高25パーセント以上の成長を続けており、営業利益もずっと黒字で、上場して4期連続で過去最高を更新し続けています。

ただ、安定成長しているから手堅く経営しているんだろうと思う人は多いですが、それは誤解です。この月次の業績推移からわかるように機会を追求し続けて、時に厳しいリスクを取らないと安定成長は実現しませんし、今期もかなり大きな投資を行う予定になっています。

PR TIMES:利用企業社数の推移

では、私たちは実際にどのようなサービスを展開していて、PR TIMES以外にどのようなサービスがあり、最近どういったチャレンジを行っているかをご紹介したいと思います。

私たちの主力事業であるPR TIMESは、利用企業社数が足元で3万社を超えました。国内の上場企業のうち、36パーセントが利用しています。

PR TIMES:プレスリリース件数の推移

配信されるプレスリリースの数も過去最高を更新しており、月間で1万3,000件を超えていますし、四半期で見ると3万7,000件を超えています。

PR TIMES:プレスリリース素材(画像と動画)の推移

プレスリリースを魅力的にしている要素の1つが、画像や動画の活用です。これは、世界的に見てもPR TIMESだけで起こっていることで、画像や動画をこれだけ多くプレスリリースで活用しているサービスはありません。

この状況も過去最高を更新し続けており、プレスリリースの数を超えて、画像や動画の点数が多くなっていることから、プレスリリースのリッチコンテンツ化がさらに進んでいます。

PR TIMES:パートナーメディアの推移

先ほどLINE NEWSや産経新聞、Googleなど、いろいろな媒体にプレスリリースが転載されていることを紹介していますが、足元では190媒体とプレスリリースの転載のパートナー契約を結んでいます。パートナーメディア数も順調に伸びています。

PR TIMES:THE BRIDGEを2018年4月に買収

ここから、PR TIMESについて、いくつかトピックスをご紹介します。

1つ目がM&Aの件で、THE BRIDGEを2018年4月に買収しています。スタートアップのメディアとしては日本有数で、THE BRIDGEが加わることで、スタートアップの利用が非常に伸びています。

また、2018年は国内で上場した企業が90社ありましたが、そのうち44社に利用いただいています。会社を作ったばかりのスタートアップにも使ってもらい、そして、いわゆる成長企業の証の1つである、上場する企業にも多く使ってもらうといったサービスになっています。

PR TIMES:スポーツチーム・団体を支援するプロジェクト

また、スポーツの分野でも、私たちは新しいチャレンジをスタートしています。スポーツチーム・団体の情報発信を支援する取り組みとして、「SPORTS TIMES」を発足しました。日本スポーツ協会さん、Jリーグ、Bリーグ、卓球のTリーグなどに参加いただいています。

従来、スポーツではプレスリリースはまったく活用されていませんでした。プロスポーツは取材を受けて当然で、メディアが試合結果を伝える、もしくは通信社がスポーツの速報を媒体に売っているといったビジネスが成り立っていました。

私たちは、スポーツチームもしくは協会が、直接生活者の人に伝えるといった取り組みを促進するために、相互パートナーシップでPR TIMESをご利用いただいています。

PR TIMES:クライアントサクセス施策

プレスリリースのコンテンツ価値向上の施策として、クライアントの方が無償で学び合う機会である「PR TIMESカレッジ」を開催しています。

過去に5回開催しまして、累計で2,500名以上の方に、この会に参加いただいています。例えば、菅本裕子さんや、フェンシング選手の太田さんなどにもご登壇いただき、最大で一度に500名集まっていただいたこともあります。

PR TIMES:地方地域展開の拡大

私たちのオフィスは、東京に1拠点しかありません。しかも少数精鋭で、営業の人数もだいたい10名くらいです。そんななかで3万社、さらに今後は5万社と利用企業を伸ばしていくためには、いかにマーケティングして、少人数で、地方企業を利用まで導くかが課題と考えています。地方の金融機関、地方のメディア、地方の自治体と業務提携していきながら、地方企業の利用を促しています。

PR TIMES:リコーと提携

リコーさまとの提携をご紹介します。画像や動画の活用をかなり増やしていますが、より一層のリッチコンテンツ化として、360度の画像や動画をプレスリリースで活用できないかを試行錯誤しています。

そこで、グローバルでもかなり販売実績のある、リコーさまの「RICHO THETA」を活用して、プレスリリースのなかで「RICHO THETA」の画像を使えるようにしました。さらに、営業やマーケティング面でもリコーさまと協力し合いながら、お互いの利用を伸ばしています。

ここまでがPR TIMESの最近のトピックスです。

Webクリッピング:ユーザー数の推移

ここから、その他のサービスをご紹介します。

当社では、PR TIMESとクロスセルしうるサービスラインを増やしています。その1つが「Webクリッピング」というサービスで、2016年1月にスタートしています。これは、プレスリリースを配信した後に、ネット上でどれだけ記事になったか、どれだけSNSで波及したかを収集して分析するツールです。

直近のユーザー数は5,800名を超え、成長率でも非常に高い伸びを示しています。

Jooto:ユーザー数の推移

もう1つが、SaaS型のタスク管理ツール「Jooto」です。これは2017年10月にM&Aで取得したものです。

直近のユーザー数は17万名を超えており、2019年3月にプライシングを大きく変更しまして、4人までの利用であればすべての機能を無料にして、大きく伸ばしました。

Tayori:ユーザー数の推移

こちらもクロスセルサービスで「Tayori」というものです。2016年7月に立ち上げたサービスで、SaaS型のカスタマーサポートツールです。私たちのPRの領域で、「お客さまのお客さま」にあたるカスタマーの存在は、非常に大切だと思っています。そのカスタマーとのコミュニケーションを円滑に行うためのサービスとして「Tayori」を立ち上げました。

直近のユーザー数は2万3,000名を超えており、成長としては非常に高い伸びを示しています。ただ「Webクリッピング」も「Jooto」も「Tayori」も、基本は無料で使えるサービスですので、まだまだ収益のインパクトとしては非常に小さいです。

コーポレート:東証マザーズから市場変更により昨年8月29日に東証1部へ上場

続いて、コーポレートでのアクションです。2018年8月に、東証マザーズから東証1部に鞍替えしています。

コーポレート:企業広告を日本経済新聞に2月26日掲載

2019年2月26日に、日経新聞に全面広告を出稿しています。私たちの事業はPRではありますが、多くの人に伝える手法として、やはり広告も有効だと思っています。また今期、広告宣伝費としてかなり多くの投資をしようと考えています。

コーポレート:2019年度新卒社員が5名入社

また、当社は少数精鋭ではありますが、新卒採用も定期的に行っており、5名が入社しています。

2019年度第1四半期業績

では、足元の業績の推移と業績予想、そして中計における進捗についてご説明します。

2019年度第1四半期の業績は、売上高が6億7,400万円、営業利益が2億円、当期純利益が1億3,500万円です。前年同期比では、売上高が128.1パーセント、営業利益が150.7パーセント、当期純利益が149.9パーセントとなっています。

四半期売上高の推移

四半期売上の推移ですが、グラフを見ていただいても順調に伸びています。

四半期営業利益の推移

営業利益もまだまだ小規模ですので、でこぼこはしていますが、足元では順調に推移しています。

2019年度の業績予想

今期の業績予想についてですが、売上高が28億5,700万円、営業利益が6億3,700万円です。

2019年度業績予想 進捗状況

第1四半期を終わりまして、進捗は非常に高い数字を示しています。

今期の広告宣伝費の計画

一方で、今期は、この後に広告宣伝に大きく投資する予定で、この業績予想の達成もまだシビアに見ています。

中期業績目標の進捗

私たちの中期的な目標は、2016年に開示した中期経営目標です。一番大きな数字としては、「2020年度、営業利益10億円」、その内訳として「『PR TIMES』の利用企業社数5万社」などがあります。上場後の営業利益の平均成長率どおりに伸びていけば、この10億円という数字も達成可能ですが、まだまだ目標は遠く厳しいです。

業績目標を全社一丸で達成すべく、業績コミットメント型で、且つ信託活用のストックオプションを2017年4月に導入しています。潜在株式として288,000株相当になります。業績達成度合いと、各社員の貢献度に応じて事後で付与いたします。組織全体の士気と意欲向上により、業績目標を達成する確度を高めます。

株主の皆様に、中長期的には大きな利益を還元するためにも、大きな利益貢献があった社員とも利益を分かち合うことが有効だと考えております。

最後に、私たちの「PR TIMES」という社名にも入っている、「PR」について、少しお話をさせてください。

「PR」は何かと言うと、いろいろな定義がありますが、私たちは「組織とその組織にとって大切な人たちとの間で、相互かつ長期に有益な関係を築くコミュニケーションを起点としたあらゆるプロセスである」と考えています。

大切な人たちとは誰かと言うと、株主、クライアント、社員、サプライヤー、金融機関、地域や国、メディアなどステークホルダーにとどまりません。自分が思えば思うほど広がるものだと考えています。そして、未来も想像すれば、その未来にいる人たちとの相互利益を長期的な視点で考えることが望まれます。

3年前に上場しましたが、当社の株式を多くの人に売買してもらえるのは、あらためてすばらしいと感じています。事業を通じて社会に役立つだけでなく、当社の事業価値を持続的に高め、株主価値を向上させることで公共の利益にも貢献できるわけですし、一方で「株主価値の低下は公の損失にもつながる」という緊張感を持って、会社経営に取り組むことができます。

私たちは3千数百銘柄ある上場企業のなかの一銘柄に過ぎず、日々売り買いされる対象だとは承知していますが、今回(のIRセミナー)は、長期でさまざまな関係を築いて、事業面でも応援していただける株主の方を増やす新たな試みとして、参加させていただきました。

みなさまにおかれましても、私たちの「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」というミッションに共感いただけましたら、ぜひ、私たちの事業を後押しいただくべく、ご支援いただきたいと思います。どうもありがとうございました。

坂本慎太郎氏より質問

叶内文子氏:ありがとうございました。それでは、山口さんのご発表を受けまして、坂本さんからのご質問をうかがいましょう。機関投資家目線ではいかがでしょうか?

坂本慎太郎氏(以下、坂本):本日はお話をありがとうございました。本日は会社のご紹介ということで参加いただきましたが、業績面やサービスについてお聞かせいただきたいと思います。

PR TIMESさんの料金体系は非常にシンプルになっています。従量課金と言いますか、プレスリリース1本ずつにも当然対応されており、月額課金というかたちもあります。

今日のお話にはなかったところですが、実は従量課金で、普通のPRであれば1本3万円で誰でもできるということです。これは、審査などはなく、本当に誰でもできるのですか?

山口:企業の利用では、かなり厳密に審査を行っていまして、月間で言うとかなりの数をお断りしています。反社会的勢力だけではなく、例えば各種関連法令に違反のおそれがあると判断したものなどがあります。

例としては、仮想通貨交換事業者さまであれば、財務局に登録するなど適切な行政手続きを取らないと、私たちのサービスは使えません。

直近で多いものとして、例えば景表法をしっかりと遵守しているかどうかなどで、あいまいな場合を含めてお断りするケースがあります。

坂本:そのように厳格にしても(利用企業社数は)3万社もあるということですね。ありがとうございました。

また、業績まわりをお聞かせいただきたいのですが、2019年第1四半期の営業利益がけっこう伸びていました。ここはやはり、出稿数の増加が主要因でしょうか?

山口:2019年第1四半期の伸びですね。第1四半期の伸び率で言いますと、プレスリリースの件数はそれほど大きいものではなかったと考えています。

プラスとマイナスの要因がごちゃ混ぜになっていまして、例えば、ゴールデンウィークが10連休で営業日数が少なかったというマイナス面があります。

一方で、元号が令和に変わり、企業発表が多くなったというプラスの面もあります。これでプラマイゼロというところです。ただし成長率としては、足元で若干落ちているのが現状です。大きく伸びたという所感はありません。

坂本:また、出稿数の季節性が、おそらく業績とも連動していると思うのですが、その季節性について教えてください。第3四半期はけっこう伸びるのですが、第4四半期が何年か落ちていますよね。このあたりの要因分析をお願いします。

山口:第4四半期は、営業日数が非常に少ない関係で落ちています。私たちは2月決算で、12月・1月・2月が第4四半期にあたるのですが、12月は年末があり、1月は年始、そして2月は28日、もしくは29日までということで、営業日数が少ない影響でプレスリリース数も売上も落ちます。

坂本:「広告宣伝費を厚くする」というお話がありました。先ほど「新聞に広告を出した」ということでしたが、それ以外の媒体ではどのあたりを考えられているのでしょうか?

山口:第2四半期から第4四半期までで、広告宣伝費は4億8,200万円と、かなり大きな数字を予定しています。基本はマスメディアを考えていますが、実際にどういった取り組みを行うのかは、この後の発表を待っていただけたらと思っています。

坂本:御社のサービスは、上場企業さまの半数弱くらい、3,768社中1,362社が利用ということですよね。

利用していない会社さまの、利用しない理由としては、「東証の適時開示があるから」というものもあるかもしれないのですが、細かいサービスもPRできるため、御社を使ったほうがいいかなと思っています。

そのあたりで、考えられる「利用しない理由」や、営業に行って断られる理由などを教えていただけたらと思います。

山口:大企業では、私たちのサービスはまだまだ従来の方法で代替できるというのが大きな要因です。例えば、みなさまが日々関心を寄せる超大企業、超人気企業であれば、基本的に自分たちが出たいメディアに出ることができ、しかも場合によってはメディアを取捨選択することもあるほどです。

そうした企業からすると、今よりも一層多くの人に知ってもらいたいかというと、単純ではありません。それが大きな要因だと思います。

もう1点、PRの主な効果はマーケティングやリクルーティングだと考えていますが、マーケティングにもリクルーティングにも困っていない企業さまには、おそらく使ってもらえないと思っています。

坂本:つまり、3万社から5万社へ引き上げる部分では、中小企業ないしはスタートアップを中心に広げていきたいというイメージでよろしいですか?

山口:もちろん、5万社の中には大企業も入ります。一貫して上場企業の利用率を出しているのは、その部分のパーセンテージを上げていくという意思表示でもあります。私たちは、大企業もスタートアップも、ベンチャーもIPOを目指す会社も、地域でがんばっている商圏が限られた会社も、すべてに使ってもらいたいと思っています。

坂本:営業の方法についてなのですが、営業担当は10名で、ほかは地方の企業とアライアンスを組んで、協力関係(で展開していく)というかたちですよね? これは代理店というかたちでお願いしているのでしょうか? それとも、普通にサービスを紹介しているなかで「このようなものがあるから、使ってよ」と促すようなお願いをしているのか、その方法を教えてください。

山口:地方のアライアンスは代理店契約ではありません。私たちは代理店制度を取っていないのですが、その理由は利益率が少なくなるからです。

最終的には、すべてのお客さま、すべての企業、すべての働く人にPR TIMESを活用いただけるようになると思っています。代理店を挟むことで短期的には成長できると思うのですが、長期的には利益を失うので、代理店制度は取っていません。

地方の金融機関の方ともアライアンスを組ませていただいているものの、手数料はお支払いしていません。

坂本:ありがとうございました。

質疑応答:メディアを「見る側」の機能向上に向けた投資について

質問者1:昔から私は仕事でPR TIMESを使わせていただいています。今日のお話で、だんだん御社の契約社数が伸びているということで、その分、見る側としては届くものがすごく増えています。一生懸命見ているのですが、毎日届く件数が多すぎて見きれなくなってきています。

今後、「見る側の対策」としての投資をどれくらいのスパンで、どういう計画があるのか、おうかがいしたいなと思います。

山口:プレスリリースの件数が増えていく一方で、メディアの記事の数は、今後おそらく増えないと予想しています。そのような状況下で、メディアの記者にしても一般の生活者の方にしても、プレスリリースを、いかに多くの人に、いかに効率的に見てもらえるかは課題だと認識しています。

2018年3月にAIを活用したプレスリリースの受信のレコメンド機能をローンチしています。ただ、まだまだ精度が低いもので、ユーザーからすると、自分が関心をもつものがうまくレコメンドされない状況です。

今後、メディアや一般の生活者の方に、顕在的な関心事に加えて、セレンディピティのように、自分が想起していないが潜在的に関心を持つだろうプレスリリースをいかに見てもらえるようになるかは、課題の1つだと思っています。

また、私たちのPR TIMES上で見てもらうのも大事なのですが、プレスリリースを転載しているメディア側で見ていただくのも、やはり重要だと思っています。最近ではSmart Newsさまと提携して、そのなかでPR TIMESを見てもらえるようにしました。

またIT系であれば、IT系だけをピックアップして表示している媒体もありますので、そのようなところで見てもらうのも、1つの価値かなと思っています。

質疑応答:地方自治体への展開について

質問者2:地方への展開のところです。一般的な企業以外に情報発信で困っているところとして、例えば地方自治体などもあると思いますが、そのようなところへの展開については、どうお考えでしょうか?

山口:今回は説明を省略させていただいたのですが、地方自治体の利用もかなり伸びています。2016年11月に東証マザーズに上場している、地方自治体向けに特化したビジネスを展開しているホープさまと業務提携して、それを機に地方自治体の利用も伸びています。

ただし、地方自治体の母数は上場企業よりも少ないですので、そこに大きくマーケティング投資して利用を伸ばすことは考えていません。オーガニックグロースの範囲で利用拡大を目指しています。

また地方自治体も地方の企業も、従来は地域メディアに露出することで、情報が「地産地消」されていたのですが、今、課題として考えているのが、地産した情報を他の地域で消費してもらうためのソリューションがないというところです。

とくに、ふるさと納税が解禁されて以降、地方自治体の1つの課題として、他の地域、とくに首都圏の方に地域の魅力を感じてもらいたいというところがあり、それに対する取り組みに力を入れています。そのなかでプレスリリースを活用いただく例は増えています。

また、地方で地方新聞の購読率が高い地域では、今後、新聞が読まれなくなったときに、地域の企業活動を地域内にすら知ってもらうソリューションを失いかねません。

その前に、私たちのサービスをいろいろな地域の方に使っていただきたいと考えています。

質疑応答:成長が鈍化するタイミングについて

質問者3:御社の成長として、プレスリリースの増加はあると思うのですが、プレスリリースが増加すると、(一つひとつを)見る濃度も減っていきますよね。先ほどAIのお話もありましたが、成長が鈍化するティッピング・ポイントとして、何年くらい先を見ているのでしょうか?

もう1点、上場会社のプレスリリースがけっこうあると思うのですが、それをパッと見たときに、「これ、上場会社だったかな」ということがよくわからないときがあります。

そこでお願いと言いますか、「あったら便利だな」と思うものとして、証券コードを書いておいてくれるとうれしいです。

例えば子会社でも「この会社が親会社ですよ」といったことがわかるように証券コードも書いておき、かつ証券コードをクリックすると関連のリストが出てくると、「ああ、これは投資に役立つよね」となると思います。

またGoogleアラートのように、キーワード登録しておくと、1日に1回くらいメールが飛んでくるといった地味なサービスがあれば、もっと使ってもらえるのかなと思います。

投資家には「タピオカ」を登録する人はあまりいないと思いますし、「旧・村上ファンド」を登録する人もいないとは思うのですが、今どきのキーワードを登録してくれる人は、たぶんたくさんいると思います。そのようなアラートサービスを考えているのかを聞かせてください。

山口:機能を提案いただきまして、ありがとうございます。証券コードは、お客さまご自身で登録いただいて、表示されています。一方で、今、機能提案いただきましたとおり、検索機能や一覧性を持たせるといったところは不十分です。

また、キーワード登録などをしてメールなどで受信するというサービスは、すでに行っています。今、あらためてご質問を聞いて、「私たちのサービスの周知度はまだまだだな」と実感しました。

そして、先にご質問いただきました成長の鈍化についてです。私たちがサービスを立ち上げたのが2007年でした。そのとき、プレスリリースに対して世の中が肯定的だったかと言うと、総批判でした。プレスリリースはもう役割を終えていて、「プレスリリースを多く送られてきても、邪魔なだけ」という評価でした。PR TIMESも、当時からポジティブよりもネガティブな評価が多く寄せられていました。

PR TIMESが、これまでに楽観的に伸びるフェーズがあったかと言うと、ほとんどありませんでした。「今後、1~2年は大丈夫」と思った時期はなく、今も足元は非常に厳しく必死です。

一方で、すごく大きな目標としては、当社が掲げるミッションを実現して、社会を大きく前進させると信じて事業を行っています。

「もしかしたら成長が止まるかもしれない」「私たちのビジネスを代替するような、巨人のような存在が現れるかもしれない」と思う一方で、「自分たちのビジネスが世の中を変える可能性がある」といったすごく明るい未来も見ています。

<続きは近日公開>