2019年3月期第2四半期決算説明会

孫正義氏(以下、孫):孫でございます。まず、決算説明のプレゼンに入る前に、一言私からお伝えしておきたいことがございます。それは、私どもソフトバンクグループと、サウジ投資部門でありますPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)との関係に、今回のカショギ氏の事件(トルコで、サウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏が殺害された事件)が、どのような影響を与えたのかということであります。おそらく、多くの人々の関心がそこにあるでしょうと思いましたので、そのことについて先に一言、触れさせていただきたいと思います。

今回のこの事件は、決してあってはならない、大変に悲惨な事件であったと認識しています。これはカショギ氏、一個人の大切な人生(が失われた)ということに加えまして、ジャーナリズム、言論の自由に対する、大変な問題を提起するものでありました。そのような意味で、私どもはこの事件に対して、強い遺憾の意を示したいと思っています。決してあってはならない、悲惨な事件であったと思っています。

先日、サウジでイベントがありました。そのイベントに、私は参加をいたしませんでした。参加を取りやめました。しかし、サウジには行ってまいりました。それは、サウジの政府の高官のみなさまに直接お会いして、私どもの懸念をしっかりとお伝えする目的もあったからでございます。ぜひ、事件の真相が1日も早く解明され、そのことの責任のある説明がなされることを、心から願っています。

一方、私どもはすでにサウジの国民のみなさまから、投資に関わる資金をお預かりしています。この資金は、サウジの国民のみなさまにとって大切な、今後のオイルにのみ頼ることのない経済の多様化、そういう責務を負った資金であります。このような悲惨な事件があったということは事実でありますが、一方、私どもは、サウジの国民のみなさまの将来に対する責務を、国民のみなさまに背を向けることなく、果たすべきであるとも思っています。

そういう意味でも、しっかりと事件の真相が究明され、その説明がなされることを、心から願っている状況でございます。

話題をすっかり変えまして、ちょうど一昨日(2018年11月3日)、ソフトバンクホークスが野球の日本シリーズに、チャンピオンシップを争って試合が行われ、日本シリーズのチャンピオンシップを昨年(2017年)に続き、いただくことができました。これは監督、そして選手のみなさん、スタッフのみなさんの絶え間ない大変な努力の結果だと思います。みなさんに感謝を申し上げたい。とくに、心から応援いただいた多くのファンのみなさまに、心からお礼を申し上げたいと思います。

それではさっそく、決算発表のプレゼンをさせていただきたいと思います。

「SoftBank 2.0」。

この言葉を、2年ぐらい前から使い始めました。創業以来のソフトバンクの姿に対して、もう一度創業するつもりで「SoftBank 2.0」ということで、推し進めるという発表でありました。

この10年間ぐらい、「ソフトバンクの本業は通信会社である」と、多くの人に思われてまいりました。しかし、ボーダフォン・ジャパンを買収してモバイルの通信に入ったのは、ほんの10年ぐらい前であります。創業間もない頃から、ソフトバンクは情報革命の会社である。「情報革命をすることが本業である」と申しておりました。

しかしこの10年間は、その情報革命はほとんど「通信会社を通じての情報革命」と、多くの人々には思われていたと思います。

私が考える情報革命は、決して1社で行うものではなく、志をともにする、ビジョンをともにする多くの同士とともになしていくものだと。

ちょうど幕末の坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛。多くの人々が日本の幕末を維新するためにいろんな角度で協力し合って、維新を成し遂げました。情報革命も1人の人間、あるいは1つの会社で成せるものではないと我々は思っております。

ですから、ビジョンをともにする、志をともにする。「群れ」でそれを行っていきたいと思っているわけです。この「群戦略」も、この2年間何度も申し上げてまいりました。

営業利益①

さて、こちらのグラフ。これが、ソフトバンクグループの営業利益であります。

この20年間ぐらいの、グループの営業利益。とくに、2006年にボーダフォン・ジャパンを買収してから10年間ちょっとのあいだは、通信会社としての色合いが強かったと思います。

営業利益②

これに新たに、私どもはVision Fundを加えたわけであります。このVision Fundが、ブルー(SVF事業)であります。

ご覧のように、Vision Fundをソフトバンクの事業に加えることによって、まさに「SoftBank 2.0」にふさわしいような利益の加速が始まったと、このグラフを見てもご理解いただけるのではないかと思います。

Vision Fundを発表した直後は、何をやるんだろう(と思われていたかもしれません)。過去18年間のあいだに、ソフトバンクの投資に対するリターンが44パーセントぐらいのIRR。利益を、毎年毎年複利で44パーセントの価値を伸ばしてきました。

そのような事実を発表したことがあると思いますが、このVision Fundを発表した2年前の時点で、18年前と比較して、もはや多くのベンチャー企業は価値が高くなりすぎている。もう1つの問題は、Vision Fundは投資する金額が大きすぎる。したがって、IRRは大きく下回るであろう。過去の44パーセントを大きく下回るであろうということを、多くの友人からも言われました。

私はそこで、あえて議論して反論することよりは、あくまでも結果の事実で示すことを心に誓ったわけであります。

市場は、すでに高すぎる。投資金額の規模が大きすぎる。この2つの懸念に対しての結果が、こちらのグラフであります。私はイケる。Vision Fundは十分イケる、かなりイケる。こう思っているわけであります。

しかもこの数字は、(2018年度の)半期で1兆4,000億円の営業利益ですが、通期で見てこの勢いを下げることなく続けていきたい。おそらく、今までソフトバンクが体験したことのない規模の利益を出すことができると思っております。

来年(2019年)には今年の規模、これをまたはるかに超えて、もしかしたら日本経済が体験したことのないレベルの営業利益を出せるのではないかと、内心思っているところであります。

今まで10年後、20年後のことを何度も口にして、その度に「ペテン禿げ」とか(笑)。いろんな「大風呂敷」ということで、言われてきたわけです。

(しかしながら)だいたい5年後、10年後のことを数字で言って、実は一度も外したことがない。下回ったことがないのが、私の内に秘めた……「内に秘めた」と言いながら口に出している(笑)。そういう自信であり、自分に対するプライドであります。来年、再来年、さらに伸ばしていきたい。言い訳なしで、伸ばしていきたいと思っております。

連結業績

さて、具体的な中身をもう少し解説したいと思います。

こちらが、売上・営業利益・純利益の数値であります。

売上高

さらにそれを事業分野別で見たのが、こちらです。売上の内訳です。

営業利益③

営業利益の内訳がこちらです。

冒頭にありましたように、Vision Fundを除いてみても、この10数年間順調に、毎年ほぼ同じように伸びていることがおわかりいただけたかと思いますが、とくにこの2年間、Vision Fundの貢献が非常に大きくなってきているということであります。

財務の状況

また、ソフトバンクグループは、常に大きな有利子負債を抱えております。

ですから、「もうすぐ『ソフトパンク』」ということは何度も言われたわけですが、決してパンクすることのないように……2000年の時のインターネットバブルのいろんな意味での私どもの反省だとか、あるいはリスクマネージメントというものの体験からもバランスを崩すことのないように、純有利子負債は私どもの利益の数倍の範囲のなかにというふうに、考えているわけであります。

国内通信 営業利益

また、最近ソフトバンクの国内事業であります通信事業を中心としたソフトバンク株式会社を「上場させたい」「上場申請をする」ということを発表させていただいているわけですが、そちらの内容について、少しコメントをさせていただきたいと思います。

この国内の通信事業、継続して伸びております。売上・営業利益ともに伸びておりまして、とりわけ営業利益の伸びは9パーセント。

国内通信 調整後フリーキャッシュフロー

フリーキャッシュ・フローの伸びは、11パーセントでありました。

スマホ純増数

スマホも順調に数が伸びております。

また、私どもはブランドを3つで展開しております。ソフトバンクモバイルとしてのメインのブランドに加えまして、Yahoo!モバイルのブランド、さらに最近はLINEモバイルとも資本提携をし、この3つのブランドで展開しております。

マルチブランド戦略

とくに私どもは、大容量のデータをお使いになるソフトバンクのモバイルを中心としたお客さま。それに加えまして、より低価格で、「そんなに大量のデータは使わない」「より低価格でモバイルを使いたい」というお客さま向けに、ワイモバイルということで出しております。

ワイモバイルは、3GBで(月額が)1,480円(から)と。

格安スマホ 市場シェア

低価格のスマホ市場のなかでは、圧倒的No.1のポジションを持っております。

また、それに加えまして、ソフトバンクモバイルのブランドでは「ウルトラギガモンスター」ということで、50GBで(月額が)3,480円(から)。

1GBあたりのデータ料金

それに加えまして、動画だとかSNSが無料でデータパケットをカウントすると。

結果、1GB当たりの単価は国内で圧倒的に安くて、おそらく競合他社の半額か3分の1ぐらいだろうと思います。

このGB単価は、米国やヨーロッパのモバイル通信事業者に比べても、我々は世界でもっとも安い事業者の1つではないかと思います。

よく価格について問われる時に、低価格のデータをあまり使わないお客さま向けのサービスが中心に語られますが、実はお客さまのうちの8割のみなさまは、とくに若者を中心にYouTubeだとかInstagramだとか、その他いろいろなSNS……LINEだとか。AbemaTV、Hulu、GYAO!とか、こういうものをたくさん使っている若い世代がいます。

こちらのみなさんは、格安スマホというよりは、大容量のデータを使いたいわけですね。その大容量のデータというのは、実はこちらにあるこのサービスだけで、我々のデータトラフィックの43パーセントに相当するんです。

データトラフィックの43パーセント。とくに動画を中心として、InstagramだとかSNS、こういうものを中心として43パーセントに相応する。このブランドのサービスだけで43パーセントに相当するわけですけれども、それを私どもは、0円カウントで提供するということで行っているわけです。

ですから、そういう意味で考えますと、先ほどのGB単価よりも、さらに4割引でカウントすべきだというのが私どもの主張であります。

料金プラン

とにかく言いたいことは、大容量でもGB単価が世界でもっとも安いレベル(のソフトバンク)と、あるいは小容量のデータを使うお客さまにも、シンプルでわかりやすくS・M・Lというかたちで、低価格スマホとして提供しているワイモバイルと。

両方のサービスのどちらでカウントしても、どちらの方向で見ても安いというのが、私どものサービスであると。

端末分離プラン

また、今年(2018年)の9月には、「端末とサービスを分離すべきだ」というご指導等が政府からも行われておりますが、私どもは即刻そのご指導に対応し、真っ先にこの端末とサービスの分離プランというものを打ち出して、新規のお客さまにはほとんどこの分離プランを中心に、ほとんどもうこれのみと言っていいぐらいの状況で、サービスを提供し始めております。

ワイモバイルも、来期(2019年)からそのようにしたいと思っています。

(水を飲む)

:ちょっと風邪をひいておりまして、のどと声がかれておりますが……すみません(笑)。

日本市場 スマホ比率(個人)

スマホの市場は、日本はまだ成熟しておりません。まだスマホ以外のお客さまが、実はたくさんいると。

日本市場 スマホ契約率(法人)

とくに法人は、スマホ以外のお客さまがまだまだ半分以上という状況であります。

ですから私どもは、スマホのユーザーをこれからもっともっと増やして、より高付加価値で世界的に見てもより安いパケット単価のサービス、また、もっとも繋がる、もっとも高性能なネットワークを提供していきたいと思います。

Beyond Carrier戦略

それに加えまして、「Beyond Carrier戦略」ということで、通信以外のサービスも日本国内でしっかりと広げていきたいと思っています。

新規事業の創出

その鍵になるのが、冒頭に申し上げましたVision Fund(投資先)との連携であります。

最先端ビジネスモデルを日本で展開

国内の通信事業のサービスのお客さま、そして「Yahoo! JAPAN」……企業のお客さま。そういうお客さまに向けて、Vision Fundの新規事業を国内にたくさん持ってきて、それらをジョイントベンチャーとして、大いに日本で花咲かせていきたい。

「Yahoo! JAPAN」を20年前に作ったように、続々とAIの新しい時代に向けて、サービス展開をジョイントベンチャーで開始したい。

WeWork Japan

例えば、WeWork Japan。

今、急激な勢いで伸びています。すでに、もう利益が出始めました。

DiDiモビリティジャパン

DiDiモビリティジャパン。こちらも、大阪で開始しました。

PayPay

PayPay。

こちらも、アリペイのようなサービスを日本で積極的に展開したいと思っていますし。

ヤフーとの連携深化

「Yahoo! JAPAN」との連携も、ますます深めていきたい。

トヨタ自動車との戦略的提携

また先日は、トヨタさんとも(戦略的提携による)ジョイントベンチャーを発表させていただきました。

新領域の拡大

このように、新規の事業領域を一気に拡大していきたい。

FinTech、ロボット、シェアリング、セキュリティ、AI、IoT、クラウド、その他ということで、ここにある新規の事業を、ジョイントベンチャーを中心に、Vision Fundとの連携を中心に続々と増やしていきたい。

構造改革の取り組み

また、国内の従来のルーティンワークに相当する仕事は、できるだけロボット化を図りたい。

「ロボット」と言うと「Pepper」を思い浮かべるかもしれませんが、国内のホワイトカラーのソフトバンクモバイル本社の中の仕事で、ルーティンワークになっているものがたくさんあります。

これをデジタルロボットということで、バーチャルロボットで業務プロセスを置き換える。それにAIを加えるということで、もうすでに2,000件以上のデジタルロボットが、我々の日常業務をこなしています。これをすることによって、残業を減らすことができました。

成長領域への人員シフト

さらに、人員を4割削減したいと思っています。ソフトバンクモバイルの通信事業に関わる社員数を、4割削減したい。なぜやるのかと言うと、先ほどから申しています、低価格のいろんなサービスをやっていくためには、我々の経費の……業務の効率をよくしていかなければいけません。

そのために、無理して人をはがすのではなくて、RPAでデジタルロボット化して、社員の業務プロセスを一気に効率を上げるということであります。そうすることによって、我々はいろんな価格・サービスにも対応できると思っています。

通信事業と新規事業の両輪による成長

それは(何になるかと言うと)上場を控えて、これからもソフトバンクの通信事業を中心とした国内の事業は、増益していく。増収していく。こういうことを、しっかりと我々は目指していきたい。コミットしていきたいと思っているわけです。

「低価格になるから、利益が減益してもいい」ということは、ゼロから創業したソフトバンクとしては、絶対にそんなことは言い訳として使いたくない。あくまでも、多くのみなさまに求められる低価格化にしっかりと対応しながら、なおかつ事業としての責任は、株主のみなさま、多くのみなさまに対してしっかりと果たしていきたいと思っています。

そのために、人員は、涙を流すかたちで社員を減らすのではなくて、彼らが笑顔でもって新しい事業に取り組めるように、新規事業を続々と増やしているわけであります。つまり、削減は単なる削減ではなくて、成長事業へシフトするということであります。

2018年度 見通し

ということで、国内事業の増収増益。これを、株式上場を控えて、しっかりと再確認させていただきたい。

安定した5,000億円以上のフリーキャッシュフローを保っていきたい。

そして、新規事業をどんどん増やしていって、上場にしっかりと備えていきたい。

上場した結果、ソフトバンクグループには潤沢な資金が手元に入ります。この潤沢な資金を使って、さらなる成長のために、先ほどのVision Fundの資金の供給に回していきたい。あるいは、純有利子負債の支払い等にも回していきたいと考えているわけであります。