システムトレーダーが知るべき売買ルール

中原良太氏(以下、中原):こんにちは、株式予報の中原良太です。

今週は売買ルールとは何かというテーマで、動画セミナーを進めていきたいと思います。システムトレードをやっている方にとっては、すごく役に立つ内容だと思いますので、ぜひ最後までお付き合いいただけたらなと思います。

そもそもなんでこんな動画セミナーを収録しようと思ったかと言うと、システムトレードをやっている方とたまにお話をすると、売買ルールを過大評価している方が多いような印象を受けたんです。「売買ルールさえあれば自分の成功は約束されているんだ」みたいな勘違いをされている方が多々いらっしゃるようでして。決してそんなことはありません。

売買ルールとはそもそも何なのかについて僕なりの解釈と考察を共有できたらなと思い、この動画セミナーを収録することにしました。少しでも考え方に違いが生まれたりとか、「あ、ちょっと今までの捉え方間違っていたな」と思うところがあればいいかなと思っています。ぜひ最後までお付き合いください。

ということで本講座の目的は、まず売買ルールをどう捉えるべきかというのを、僕なりに考察してみることです。今回お話しすることが必ずしも正しいとは思っていないんですけれども、僕が信じている捉え方を共有できればなと思っています。

そもそも売買ルールとは何なのかをまず復習したいんですけれども、システムトレードをやっている方にとっては当たり前の話なんですが、株をトレードするために必要なルールだと考えてください。ルールを構成する要素は6つです。これは僕の本の「株2年生の教科書」でお伝えしている概念です。

どんな要素があるかと言うと、4W2Hという6つです。具体的には「WHY」、どうして儲かるのか。「WHERE」、どこで取引するのか。「WHEN」、いつ取引するのか。「WHAT」、何を取引するのか。「HOW」、どうやって取引するのか。「HOW MUCH」、いくら取引するのか。この6つをすべて兼ね備えたものを、売買ルールと呼んでいます。

当たり前の話ですけれども、利益を出すためにはその確固たる根拠が必要です。なので「WHY」、どうして利益が出せるのかを徹底的に吟味する必要があります。その次に「WHERE」、どこで取引するのか。どんな証券口座でどこの国の株式を取引するのか。「WHEN」、いつ。どんな相場状況に向けて取引をするのか。そして「WHAT」。何を、どの銘柄を取引するのか。そして「HOW」、どうやって取引をするのか。どんな注文を発注するのかとかですね。「HOW MUCH」、何株分買うのか。いくら取引するのか。

この6つのポイントをすべて押さえた上で、利益につながりやすい売買ルールというのを考えていく。そしてルールに則って取引をしていく。これが、システムトレードという考え方です。

この6つのポイントをすべて押さえないと、あやふやになります。正直、たとえこれらを全部考えなくたって、利益を出すことはできるんです。ただ、なんで利益が出たのかわからない。だから地道にPDCAサイクルを回すことができないということに陥ってしまいますので、売買ルールの6つのポイントを押さえた上で、自分はどういう取引を行うのかというのを徹底的に考えていく必要がある。

売買ルールは運用する上で必須アイテムなんじゃないかなと僕は考えています。

冒頭でもお伝えしましたが、「売買ルールを持っていればいくらでもお金を生み出すことができるんだ」というのは、完全な間違いだと僕は考えています。売買ルールというものは不完全で、相場の状況に合わせて常に改良をしていく必要があるものなんじゃないかなと思っています。例えば相場が「良くなった」とか、「悪くなった」とか、あとは「今まででは考えられなかった事件が起きた」とか。

相場というのは生き物に例えられるくらいで、常に変わっています。ですので、100年前、200年前に通用していた取引手法が今にも通用するかと言われると、疑問が残るんです。もちろんずっと通用している取引手法はありますが、すべてがそういうわけじゃないんです。

なので、状況に合わせて自分自身が変わっていかなければいけませんし、売買ルールや投資戦略も改良していかなければいけないと考えています。「売買ルール=金のなる木」という考え方は、もう完全な間違いだというのが僕なりの考えです。

ここからが大事なんですけれど、「じゃあ売買ルールってなんなのか?」と言うと、「このように取引すれば利益を出せるのではないか?」というアイデアを凝縮してまとめた、仮説だと考えています。料理で言うと、レシピみたいなものです。「こういうふうにすれば、おいしいものができるんじゃないかな?」というのをまとめたものを、売買ルールと呼ぶのだと考えています。

それさえあれば利益を出せるのではなくて、出せるかもしれない仮説です。これがあれば利益を出し続けることができるなんてことは、到底ありえません。さらに磨いていって何度も試行錯誤を繰り返しながら、本当に利益を出せるようになるまで、経験と改善が必要になってくる。

当たり前の話なんですけれども、こういった点を必ず押さえておかなければいけないかなと考えています。

売買ルールは仮説、磨き続けるべき

何度もお伝えしていますが、仮説というものは磨くものです。仮説とはあくまで「成功するためのアイデアの集まり」であって、「成功を約束されたもの」ではないんです。「売買ルールを持っています。だから僕は成功します」というのは、「僕はいいアイデアを持っています。だから成功します」と言っているのと一緒です。

はたから見て、そんなこと言っている人って「え!?」って思いますよね。「いやいやいや、ちょっと考え直そう」と言いたくなりますよね。売買ルールもそれと一緒で、そんなものを持っていたところで、利益が約束されているわけではない。アイデアを持つことは大事なんですけれども、そのアイデアをきちんと磨いて、状況に応じて自分で対応していく。

そういう力を持っていないと、結局は利益を出せるようにならないと僕は考えています。売買ルールは、持っていればいいものではなくて、磨き続けるもの。持っているのは当たり前だから、それをさらに磨いていって、さらに良くしていく。一生かけて磨き続けていくものだと思っています。成功を約束されているなんて、思ってはいけないと思っています。

だからこそ、僕らはずっと試行錯誤をしなければいけないわけなんですけれども、じゃあシステムトレードをしていく上で、どういうふうに試行錯誤を繰り返していけばいいのか? その一連の流れをまとめてみました。

それが、このスライドです。システムトレードのPDCAサイクルをまとめてみました。PDCAサイクル、初めて聞いた方もいるかと思うんですけれども、これは「PLAN」・「DO」・「CHECK」・「ACTION」という、4つのステップの頭文字を取ったサイクルのことを示しています。それぞれ何をするかと言うと、計画して、実行して、確認して、改善案を出すという4つです。

これをひたすら回し続ける。これを試行錯誤と呼ぶわけなんです。この4つのステップがどれも欠けてもいけないというのが、システムトレードで成功するための一番の秘訣かなと僕は考えています。

これを回さなくなった途端に劣化が始まるというか、時代遅れにどんどんなっていって、最終的にはいずれ利益を出せなくなるものだと考えています。大抵の方が、この4つのすべてのステップをやらないんです。1個か2個しかやっていないという方が多いので、全部をやるというのが、非常に大事なポイントかなと思います。

トレーダーの4類型とPDCA

参考までに、理解を深めるために先週の動画セミナーでお伝えしたこのトレーダーの4類型、4つのタイプというのになぞらえて、それぞれのPDCAサイクルについて考えていきたいと思います。

先週の動画セミナーでは、トレーダーには4つのタイプがいると申し上げました。それぞれどんなタイプかと言うと、「負け犬タイプ」「迷走タイプ」「頭でっかちタイプ」「成功者タイプ」。この4つのタイプがいるとお伝えしました。

もう100名以上のトレーダーの方とお会いして、行き着いたのがこの4類型です。システムトレーダーとして成功するためには、この右上にいる成功者タイプにならなければいけないと考えています。

迷走タイプも、頭でっかちタイプも、負け犬タイプも、トレーダーとして成功することはできないと断言します。それだけ、この類型は大事だと思っています。成功者タイプに入るために大事なのが、先ほど申し上げたPDCAサイクルなんです。このPDCAサイクルをきちんと回せるかというのが、トレーダーとして成功できるかどうかの鍵になってくると思っています。

じゃあそれぞれのタイプは、どんなふうにPDCAサイクルを回しているのか。成功者タイプの人以外は、PDCAサイクルを回せていないんですけれども……。具体的にどんな感じなのかというのを、タイプ別にご紹介していきたいと思います。

まず、負け犬タイプの人はPDCAサイクルをどういうふうに回しているかというと、ひたすら「DO」をやります。「DO」しかやらなくて、「CHECK」も「ACTION」も「PLAN」もやらない。「あ、良い銘柄がある。買おう」だけです。

結局、振り返りもしないし、計画も練らない。結果的には(要因は)よくわからないけど利益が出たら喜び、損失が出たら悔しがるということをひたすら繰り返しているだけ。ギャンブラーと一緒です。こういうタイプの人は結果的に腕が上がらないので、何度繰り返したところで収益が改善することもなく、ずっと泥沼を泳いでいるような生活を繰り返すことになると思います。

短期的な成功はありうると思うんですけれども、長期的にずっと成功し続けることは、不可能に近いと考えています。ですので、負け犬タイプの人はこの「CHECK」、「ACTION」、「PLAN」、この3つをちゃんと踏襲できるように、基礎的な技術を身に付ける必要がある。勉強すべきことについては、先週の動画講座をぜひ参照してほしいんですけれども。

次、頭でっかちタイプの人。僕はけっこう頭でっかち寄りなんです。こういう人は何をするかと言うと、ひたすら「PLAN」と「DO」だけやります。「CHECK」・「ACTION」はやりません。インプットばっかやって、アウトプットはほぼやらないタイプです。例えば売買ルールを買うけれど改良はしないとか、セミナーには参加するけれど、自分では考えないとか。

ワークショップ系の学習方式が大嫌いなタイプの人が、この、頭でっかちタイプかなと思います。ひたすら「PLAN」と「DO」をやって、自学自習はするけれども、創意工夫をしないタイプと言えばいいですかね。自らの工夫を入れ込まないタイプ。

だから、何かしらの教材に則って計画は練る。実践もする。けれどもそこから先の創意工夫とか改善というところにまでは手が伸びない。ですので、「PLAN」、「DO」、「PLAN」、「DO」でうまくいった・うまくいかないだけしか集計しない。腕を磨くというよりは、あちこち手を出して、ごった煮状態になってしまうと言えばいいですかね。

自分で改良するということができないタイプが、頭でっかちタイプかなと考えています。これが2つ目のタイプです。

3つ目のタイプが迷走タイプなんですけれども、負け犬タイプと似ていて、ひたすら「DO」を繰り返す。何かを実践してはやめ、実践してはやめ……ということを繰り返しています。なぜこんなことになるかと言うと、そもそも仮説を持っていないからです。

アイデアはある。いろいろ工夫もする。でも「PLAN」がないから、長期的な方向性が決まらないままひたすらあっちに行ったり、こっちに行ったりを繰り返している。「PLAN」がないので、「CHECK」・「ACTION」があっても、次の「PLAN」にならないんです。「DO」しかやっていないのと一緒ということになるのかなと思っています。

こういう迷走タイプの人は長期的な思考法とか、長期的に着実に利益を重ねていくための考え方、思考のフレームワークを、まず習得する必要があるんじゃないかなと個人的には考えています。

最後が、成功者タイプ。当たり前なんですけれども、全部やっています。自分で売買ルール組み立てて、実際に運用して、ちゃんと仮説どおりの成績が得られたかを確認して、成功事例を確認して、失敗事例を確認して、さらに良い戦略に仕上げていく。改良もする。売買ルールを自分で作る、そして実践する、改良する。この3ステップにPDCAサイクル全部を役立てていくということをやっています。

これができないと、結局利益を出せませんので、成功者タイプになりたいと思っている方はPDCAサイクルをきちんと最初から最後まで回せるようになるというのが、第一の目標なんじゃないかなと考えています。これができるようになったら、PDCAサイクルを複数回す。

逆張り戦略、順張り戦略、押し目買い戦略、デイトレ戦略、空売り戦略……なんていうふうに、いくつもPDCAサイクルを回して、どんどん利益を出せる幅を広げていく。それで事例をどんどん研究していくというのが、非常に大事なポイントだと思っています。

大事なのは、事例の学習です。市販の売買ルールを買ってもいいでしょうし、とにかくいろんな手法を手に入れて、自分で創意工夫を重ねながら、どんどん高めていくというのが大事かなと思っています。

ということで、今週お伝えしたいのは以上です。最後に今日お話ししたことをまとめていきたいと思います。

本講座のまとめ

今日一番お伝えしたかったメッセージは何かと言うと、「売買ルールとは、『仮説』である」ということです。売買ルールは、金のなる木ではありません。利益につながりそうなアイデアの集合体であって、それさえあれば利益が出せるなんて、ちゃんちゃらおかしいわけです。「良いアイデア持っているよ! だから俺は大金持ちだ!」と言っているのと一緒です。そんな人が周りにいたら、止めますよね。

売買ルールとはあくまで仮説であって、それを磨いていかなければいけないものです。ですから、システムトレーダーとしてやっていかなければいけないのは、PDCAサイクルを回して、ひたすら自分の持っている仮説・売買ルール・投資戦略というのを磨いていくことです。一生かけて磨いていくものだと思っています。

それをさぼった瞬間から、ただの頭でっかちタイプになったりとか、迷走タイプになったりしてしまうものだと思います。そうならないように、日々PDCAサイクルを回し続けるのが大事なポイントかなと思っています。

PDCAを回さなければいけないんですけれども、それぞれ何をしなきゃいけないのか?

「PLAN」、売買ルールを自分で組み立てる。「DO」、実際に運用しながら結果を記録する。「CHECK」、仮説どおりの結果かを確認する。「ACTION」、事例を研究する。改善策を練る。この4つのポイントをひたすら押さえて、ずっとPDCAサイクルを回し続けるというのが、利益を出し続ける成功者になるために必要な要素だと思います。システムトレードをやっているあなたも、ぜひ、この4つのポイントを押さえながら、自学自習を進めてみてはいかがでしょうか。

非常に大事なポイントだと思いますので、ご紹介させていただきました。今週は以上です。最後までご視聴いただきまして、ありがとうございました!