当決算のポイント

田中稔三氏:キヤノン株式会社2017年12月期の第3四半期(7月-9月)の連結決算がまとまりましたので、その概況につきまして、説明をさせていただきます。

今回の第3四半期の業績の、サマリーでございます。

世界経済は、日・米・欧など主要先進国におきまして、引き続き雇用環境の改善が続いております。中国を始めとした新興国も、緩やかなる拡大が続いております。

このような中で、当社は現行事業の回復を加速させながら、新規事業の拡大に一層注力して、事業の構造改革の転換をさらに推し進めております。

その結果、この第3四半期は、売上が対前年で30パーセント近く増加いたしました。また、営業利益につきましても倍増となるなど、大幅なる増収増益を果たしたわけでございます。

2017年第3四半期

年初から3四半期連続で増収増益を達成しておりますが、これは2010年以来、7年ぶりということでございます。

その現行事業につきましては、まずカメラは、レンズ交換式カメラの新製品が堅調に推移するとともに、コンパクトデジタルカメラの高付加価値モデルも伸びまして、増収となっております。

レーザープリンターは、消耗品を中心に力強い回復が続いております。また、フラットパネルディスプレイの露光装置も、当社製品の性能の優位性が、市場の旺盛な需要を捉えまして、販売台数を前年比で実に4倍以上に伸ばしております。

新規事業につきましても、キヤノントッキ株式会社の有機EL蒸着装置、あるいはネットワークカメラが順調に販売を拡大させるとともに、東芝メディカルシステムズ株式会社の新規連結影響もございました。それにより、新規事業全体では、売上が前年ではほぼ倍増という格好になっております。

業績サマリー

この結果、当四半期の全社の売上は、対前年27.7パーセント増の9,945億円となりまして、大幅な増収を達成しているわけでございます。

利益につきましても、現行事業及び新規事業の順調な販売増による数量効果に加えまして、主力製品での高付加価値製品へのシフト・値下げ抑制がございました。それにより、営業利益は対前年で101.1パーセント増、ちょうど倍増でございますけれども、805億円という水準でございます。

売上・営業利益変化

続きまして、今の(2017年12月期)第3四半期の、ビジネスユニット別の売上の状況でございます。

まず、オフィスビジネスユニットでは、ラインナップが完成した次世代カラー機が、引き続き順調に販売を伸ばしております。

また、新たに投入いたしました新興国向けの普及価格モデルが、コストパフォーマンスの優位性によりまして、新規顧客開拓に寄与しました。このことから、カラー機全体の販売台数は、2桁成長を果たしております。

レーザープリンターにつきましては、一昨年(2015年)から順次投入を開始した新製品のラインナップが、この上期(2017年12月期第1・第2四半期)に完成いたしました。新製品の販売構成比率を上昇させるとともに、消耗品の販売が前年を大きく上回りまして、対前年で10パーセントを超える増収となっております。

以上の結果、オフィスビジネスユニットの売上高は、前年同期と比較いたしますと、8.1パーセントの増収となっております。

続きまして、イメージングシステムビジネスユニットでございます。レンズ交換式デジタルカメラでは、当社は引き続き、新製品を継続的に市場に投入しております。その新製品を中心に、販売は堅調に推移しております。

前年同期が熊本の震災の影響によりまして(供給不足になり、販売が落ち込んでいたため)高い水準であったために、当四半期の販売台数131万台は対前年5パーセント減となりますが、計画は上回る結果になっております。

また、コンパクトデジタルカメラでは、震災からの回復が続く中、携帯性に優れた「( PowerShot G シリーズの新製品の)G9 X Mark II」などのプレミアムモデルが好調を維持しました。これに加えまして、エントリーモデルも想定を上回って推移いたしまして、対前年では13パーセント増の85万台を販売いたしました。

インクジェットプリンターにつきましては、市場が下げ止まりを見せる中で、引き続き新興国を中心に大容量インクモデルの販売を伸ばし、全体の販売台数が前年を上回りました。これとともに、昨年(2016年)から投入を開始いたしましたホーム向けの戦略製品が、日本を中心に今なお高価格を維持しておりまして、売上の増加に貢献しております。

以上の結果、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、前年同期と比較いたしますと、9.0パーセントの増収でございます。

次に、メディカルシステムビジネスユニットでございます。国内シェア1位のCT装置に加えて、超音波診断装置の新製品が、その画像技術の高さを評価されました。これにより、従来の放射線科だけではなくて、循環器系あるいは産婦人科にも販売領域を拡大させるなど、順調に推移しております。

次に、産業機器その他ビジネスユニットでございます。スマートフォンの有機EL採用が本格化する中で、引き続き需要が旺盛な有機ELディスプレイ製造装置が、当四半期も大幅に売上を増加させております。

以上の結果、産業機器その他ビジネスユニットの売上高は、前年同期と比較いたしますと、35.9パーセントの大幅な増収でございました。

2017年最新見通し 前提条件

続きまして、今年(2017年)12月期通期の、業績の見通しでございます。

まず、第4四半期の為替レートでございます。足元の状況を勘案しながら、米ドルは前回同様112円を据え置いておりますが、ユーロにつきましては、125円から132円に見直しております。

2017年年間見通しのポイント

世界経済につきましては、地政学的なリスクなどの不透明感はございますけれども、アメリカを牽引役として欧州あるいは日本・中国などの主要各国も引き続き、回復基調が続くと見ております。

こうした中、当社は現行事業の回復と新規事業の拡大を継続しながら、事業構造の転換をさらに推し進めることによって、年間では4年ぶりとなる増収増益を達成できる見込みでございます。

収益基盤でございます現行事業につきましては、今期、全事業増収増益になる見通しでございます。中でもカメラにつきましては、レンズ交換式デジタルカメラ・コンパクトデジタルカメラともに、販売台数が当初の計画から改善するとともに、製品の高付加価値シフトにより、5年ぶりに増収となる見込みでございます。

複写機やレーザープリンターは、ラインナップの揃った新製品が牽引して、今後も高い販売水準が続く見通しでございます。

また、露光装置では、フラットパネルディスプレイ用の装置の販売台数を、昨年(2016年)の2倍以上に高めるなど、現行事業の回復を加速させてまいりたいと考えております。

新規事業につきましても、圧倒的な競争力を持つ有機EL蒸着装置は、対前年で7割増。ネットワークカメラも市場の拡大にともないまして2割増と、大幅な増収となる見込みでございます。

さらに、メディカルシステム事業も、CTや超音波診断装置など、画像診断装置の継続的な新製品の投入によって、年間を通じて好調を維持する見込みです。新規事業の売上は、対前年で倍増となる見通しでございます。

このような状況を踏まえまして、前回の見通しから、売上高で300億円・営業利益で200億円、それぞれ上方修正をいたしました。

業績サマリー

この結果、売上高では、対前年19.9 パーセント増の4兆800億円。営業利益は、対前年52.9パーセント増の3,500億円となります。

増収増益を目指して11年ぶりになりますけれども、第4四半期につきましても、年初からすべての四半期で増収増益を果たす。当社は今年、創立80周年という記念すべき年でございます。その記念すべき年にふさわしい、飛躍の年にしてまいりたいと考えています。

オフィス①

続きまして、2017年12月期の、ビジネスユニット別の売上の状況でございます。

まず、オフィスビジネスユニットです。複写機は、この上期(2017年12月期第1・第2四半期)にラインナップを完成させました、次世代カラー機の販売を伸ばして、シェア拡大を図ってまいります。

このラインナップは、画質あるいは操作性の高さ・メンテナンスコストの低減などの点で、優位性を持っております。こうした点を活用して、顧客への提案の幅を広げ、売上を伸ばしてまいります。

レーザープリンターでは、市場はマルチファンクションプリンターへのシフトが進んでおります。当社もこうした市場の変化をとらえて、今年の上期に、ハイエンドの新製品を発売いたしました。

こうした新製品によるラインナップの強化により、さらなるシェア向上を図るとともに、安定した消耗品の販売につなげてまいりたいと考えております。

オフィス②

以上によりまして、オフィスビジネスユニットの売上高は、前年と比較して3.3パーセントの増収を見込んでおります。

イメージングシステム①

次に、イメージングシステムビジネスユニットでございます。レンズ交換式デジタルカメラは、当社の販売が想定を上回って推移したことから、年間の販売見通しを、対前年3パーセント減の550万台に上方修正しました。また、市場につきましても見直しを行いまして、対前年1パーセント減の1,140万台といたしました。

当社は今年(2017年)、エントリーモデルからハイアマモデルまで、ミラーレスを含めて6機種の新製品を発売しております。オートフォーカス機能やネットワーク対応の強化など、さまざまなニーズに幅広く対応することによって、シェアの拡大を図ってまいります。

コンパクトデジタルカメラにつきましても、高付加価値のDシリーズの販売が想定以上に推移していることから、年間の販売見通しを、対前年で1パーセント減の400万台に上方修正いたしました。また、市場につきましても同様に、対前年で10パーセント減の1,350万台にしております。

インクジェットプリンターにつきましては、校長な大容量インクモデルに加えまして、今年(2017年)の秋に発売予定の小型プラットフォームを採用した、ホーム向けの新製品とオフィス向けの新製品により販売を伸ばして、対前年で2パーセント増の販売を計画しております。

イメージングシステム②

以上によって、イメージングシステムビジネスユニットの売上高は、前年と比較しまして、3.4パーセント増となる見通しでございます。

メディカルシステム

次に、メディカルシステムビジネスユニットでございます。当社の強みであります高精細を特徴とする、画像診断装置のラインナップを拡充して拡販につなげていくとともに、収益性の向上を目指して、原価低減や経費効率の改善に取り組んでまいります。

産業機器その他①

次に、産業機器その他ビジネスユニットでございます。スマートフォンの有機ELパネルシフトにより、顧客の投資需要が拡大する中で、フラットパネルディスプレイ露光装置・有機EL蒸着装置ともに生産体制の増強に努め、販売を伸ばす計画でございます。

また、ネットワークカメラにつきましても、引き続き市場は2桁成長を続ける見込みでございますので、製品ラインナップの拡充と映像解析ソリューションの提供によって、高い成長を目指してまいりたいと考えております。

産業機器その他②

以上によって、産業機器その他ビジネスユニットの(グロス)売上高は、前年と比較して24.9パーセント増となる見通しでございます。

配当の推移

最後に、別のリリースで今日(2017年10月24日)みなさまにお知らせしておりますとおり、本日開催の当社取締役会におきまして、創立80周年の記念配当を行うということを決議いたしました。その配当につきまして、補足をさせていただきたいと思います。

当社はここ数年にわたりまして、新たな成長を目指して、事業の構造転換を進めてまいりました。この(2017年12月期)第3四半期におきましても、先ほど説明したとおりに現行事業が予定どおり回復し、新規事業も拡大を示しております。事業の構造転換が想定どおり、順調に進んでいると言えると思います。

こうした中、新規事業の更なる拡大や、想定を上回る現行事業の収益性の改善を見込んで、これも先ほどご説明したように、通期の業績見通しを上方修正いたしました。それと合わせて、株主のみなさま方の日ごろのご支援にお応えするために、本日、記念配当の決議に踏み切ったわけでございます。1株当たり10円の記念配当でございます。年間の配当では、従来の150円から、160円とする予定でございます。

過去に当社が行った記念配当につきましては、その翌年に普通配当に切り替えております。今回の記念配当につきましては、もちろん、今のところは最終的には決めておりませんが、将来は同様の取り扱いを検討していきたいと考えております。

外部環境は総じて景気回復基調にある一方で、地政学リスク等もございます。当社は、年間ベースで4年ぶりとなるような増収増益を目指して、グループで一丸となって、今年を創立80周年にふさわしい飛躍の年にしてまいりたいと考えております。

私からは以上でございます。ご清聴、どうもありがとうございました。