IRセミナー徹底攻略!セミナーを読み解くhow to 伝授#6 その見方だと実は損してる!?IRセミナーは減点ではなく加点で見るべし!
企業の「歴史・業績・中計」から投資のポイントを読み解く! 坂本慎太郎氏のIRセミナー活用術
IRセミナー徹底攻略!セミナーを読み解くhow to 伝授#6

荒井沙織氏(以下、荒井):みなさま、こんにちは。荒井沙織です。この動画では、ふだんIRセミナーをあまりご覧にならない方や、見ても投資判断にどう活用すればよいかわからない方に向けて、実際のIRセミナーの映像を一緒に見ながら、どこに注目すべきか、どう活用すればよいかを、凄腕投資家が丁寧に解説していきます。

荒井:今回のゲストは坂本慎太郎さんです。よろしくお願いします。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):坂本です。よろしくお願いします。
今日はログミーTシャツを着るのを忘れてしまいました。あとから怒られてしまうのではないかと思っていますが、色は似ているかと思います。
荒井:という感じで、坂本さんといえば、ログミーでも本当におなじみです。
坂本:荒井さんもログミーTシャツを着ていませんし、大丈夫かと思っています。
荒井:2人ともログミーTシャツではないですね(笑)。
坂本:今日はどんな話をするのですか?
荒井:坂本さんにはいつもIRセミナーのMCとしてご登場いただいていますが、ここであらためて、「IRセミナーって、どうして見ないといけないの?」「どんなふうに見ればいいの?」「どう活用すればいいの?」といった観点で、うかがっていきたいと思います。
坂本:「IRセミナーとどう付き合っていくか」ですね。
荒井:そうです。付き合い方を知ることで、IRセミナーをより実のあるものにできるのではないかと考えていますので、そのコツを教えていただければと思います。
坂本:なんとなくIRセミナーを見ている方や、興味のある会社だけ見る方がいらっしゃいますよね。そういう方向けに、「付き合い方」というテーマでお話しできればと思います。
ちなみに、私はログミーのほぼ立ち上げ時期からIRセミナーに出ているのですが、すでに350社くらいが登壇されているのではないかと思います。
荒井:すごいですね。
坂本:今でもたまにリアルで開催していますが、過去のセミナーを振り返ると、当時はリアルで行われていて、150人から200人くらいの方にお集まりいただいていました。
荒井:相当な人数ですね。
坂本:そうですね。新型コロナウイルスが流行する前の時代には、多くの方が会場に集まって、約3社が登壇して、その後、私が講演を行うという形式でした。
その時はお弁当も出ていました。すごいセミナーですよね(笑)。その時代が懐かしいです。
荒井:まるで合宿のようですね。
坂本:まさにそうですね。今はほとんどオンライン開催ですので、さすがにお弁当は出ませんね(笑)。
ただ、会場で行う場合、座り続ける必要がありますので、集中力が生まれるといいますか、真剣に聞いてくださる方が多かった印象です。
一方でオンラインの場合は、いつでもどこでも視聴できる利点がありますよね。そのような意味では、オンライン開催も良いかと思います。
荒井:それでは、数々のIRセミナーをご覧になり、ご質問もされている坂本さんに、今回はさまざまなお話をうかがいたいと思います。
IRセミナーの活用方法

荒井:「IRセミナーの活用方法」というテーマですが、IRセミナーは、なんとなく見ているだけでも楽しいものですよね?
坂本:そうですね。知らないことを知るのは確かにとても楽しいですね。荒井さんもたまに映っていますね。
荒井:たまに出てきたりしています(笑)。IRセミナーは楽しいものではありますが、やはりポイントを押さえておいたほうがよいのでしょうか?
坂本:それはそうですね。なんとなく見ているよりも、やはりポイントを押さえて見たほうがよいですね。
荒井:具体的には、まずどのようなポイントを押さえて聞くべきでしょうか?
坂本:まず、「IRとは何か?」です。PRは多くの方がよく耳にされると思いますし、ご承知かとは思いますが、会社の商品をアピールし、その魅力を伝えることです。
荒井:良いところを伝えたり、宣伝したりするということですね。
坂本:一方でIRとは、会社の財務状況や会社の株式の魅力を伝えるものとイメージしていただくと、みなさん「ああ、そういう内容か」と納得いただけると思います。どちらかというと、商品ではなく投資家に対して会社全体を紹介するものです。
そのため、話の内容も各社で構成が似通っています。多くの場合は、「会社概要」「売上・利益の構成」「成長戦略の概要」「株主還元の考え方」という流れで進められます。
では、どこに注目すべきでしょうか? まず、企業について「どういう会社かまったくわからない」という方は、かなり多くいらっしゃると思います。
例えば吉野家やすかいらーく、イオンなどのBtoC企業であれば、日常的に自分が買い物する企業や接している企業ですので、特徴が理解しやすいのではないかと思います。
荒井:私もそういう企業は株式投資の対象として選びやすいと感じています。
坂本:BtoC企業であれば、街を歩く中で「こういう会社はすごく儲かっているな、人気があるな」といったことがわかりますよね。
一方、BtoB企業で、部品メーカーや「〇〇を作るためのパーツを作っています」といった会社は、その業界で働いた経験がなければ、一般的にあまり知られていないことが多いです。
その企業の工場が家の近くにあるといったケースもたまにありますが、そうでなければ、わからないことが多いため、これらの企業を知ることにはとても意味があると思います。
「当社はこういうパーツを作っています」といった企業の説明を聞くと、「なるほど、この部分に関わっているのか」「この商品が売れたら、関連してこれも売れるのか」ということがわかりますね。
大切なのは会社の歴史

坂本:また、「どういう会社か?」という点について、特に私が大事にしているのは企業の歴史です。
荒井:IRセミナーでは、最初のスライドに沿革が記載されていますね。
坂本:そう、沿革みたいなものがありますよね。そこにはストーリーがきれいにまとめられていることが多いです。
さまざまな歴史とともに、特に社歴が長い企業では、「このような変遷があって現在に至ります」「合併しました」という内容がよく見られます。
また、「過去にこういうことがあり、この製品の需要がなくなったため、別のものに切り替えて、ここを伸ばしてきました」といった事例から、「こういう創意工夫をしているか」「これが今につながっているか」とわかるような要素は重要だと思います。
さらに、私は冒頭での「創業当時は何をしていたのですか?」という質問がとても好きで、必ず聞くようにしています。ただし、毎回あるわけではありません。なぜかというと、カットされていることもあるからです(笑)。
荒井:あまり重要ではないということですか?
坂本:私は重要だと思って聞いていますが、カットした会社が悪いということではありません。理由としては、今の社長が創業社長ではないからわからない、スピーカーが社長ではないから説明できないということがあるためです。
登壇者が創業社長でないのであれば、「〇〇とうかがっています」といった話をすればよいかと思いますが、これが意外とカットされる質問のランキング上位に入るようです。
荒井:聞いていて楽しい部分ですが、カットされるのですね。
坂本:私は、その会社がどのような会社かを知るために、最初に何をやっていたのか、どのような人なのかを知りたいと思っています。そのため、創業に関わる質問をするのが好きです。例えば、人と話していても、そう感じますよね?
荒井:「どこ生まれ?」といったことですね(笑)。
坂本:「どこの中学出身?」というような話ですね(笑)。地元ではそういう話がけっこうあると思います。
荒井:知り合うための第一歩ですね。
坂本:そうです。触れ合うための第一歩として創業について聞きたいと思っていますので、ぜひお話しいただきたいというのが私の気持ちです。
業績の説明でチェックすべきポイント

坂本:そのような内容も踏まえつつ、IRセミナーは進んでいきますが、必ずあるのは業績の説明です。前期、今期(進行期)で、基本的に見るべきポイントは売上と営業利益だと思います。
売上は、当然ながら売上高を指します。営業利益は「実際にこの会社が本業でどれぐらい儲かっているか」を示しています。基本は、その増減を見ることです。
さらに四半期決算では、通期計画に対する進捗率が重要です。例えば第2四半期の場合、会社が設定する目安である50パーセントが分岐点となります。それより少なければ進捗が遅れていることを意味し、多ければ順調に進んでいるということになります。
また、季節性の有無について質問をすると、「こういう事業で、こうだから季節性があるんです」といった回答を得られることがあります。その点については確認したほうがよいと思いますし、説明に含まれていない場合は聞くようにしています。
さらに、円グラフなどでセグメント別の売上高が示されていることがありますが、グラフから「この会社はこういう業界と密接に関わっているのか」といったことがわかります。そこで「〇〇関連銘柄はここ」などと、頭の中で情報を整理することが大切です。
私はよく、円グラフの割合が近年で変わっているかを聞きます。円グラフは説明の最初のほうに出てくることが多く、そのあとの説明につながってフックになるため良い質問だと思っています。
この質問をすることで、「ここの部分は伸びています。その背景はこうです」という話が出てきて、さらに増益の理由やその後の「今後、伸ばすための施策」といった内容につながります。そのため、ここは聞くようにしています。
荒井:坂本さんは業績をかなり重視していらっしゃると感じます。業績に関する説明の中で、追加で質問を挟む場合、いつもどのようなポイントを大切にしていますか?
坂本:業績については、進捗を確認しながら話すこともありますし、今期の業績に関しては、増益・減益となった理由を聞くことが多いです。増益・減益の理由が説明に含まれていなければ、その点を特に確認します。その理由が営業利益だけでなく最終利益にも影響している場合、為替影響や税効果といった要素が加わってくるため、数字に不自然な点があれば尋ねるようにしています。
一般的な話になりますが、通常、営業利益が100億円であれば、最終利益がそのまま100億円になるわけではなく、税金の支払いで差し引かれます。もし、その差し引きがない場合はその点を確認します。
これは当然のことですが、個人投資家の中には最終利益、あるいはPERだけを見る方が一定数存在します。
実際に、税効果による戻りが発生することがあります。例えば前年度が大赤字であれば、次年度は法人税を払う必要がないため、その分が利益に反映され、「今年はとても儲かった。PERが非常に低い」となります。ただし、その翌年は、収益は同じでも税金を払うので利益が減り、「PERが上がっている。割高じゃないか」といった展開になります。したがって、そのあたりは見ておきたいと考えています。
基本的に、そこは企業側も重要視していますので説明があります。それを理解することが大切です。
中期経営計画のポイント

坂本:大事なのはその後の話です。順番としてよく出てくるのは事業内容の深掘りです。会社によって異なるため、ここでは割愛しますが、中期経営計画の話が最も重要だと考えます。
荒井:今後の展望についてですね。
坂本:「3年後に100億円を目指します」「今の〇パーセント増を目指します」などの目標については、なぜそうなるのかを確認します。
それが実際に達成可能かということもありますが、達成できなくても経営者が罰せられるわけではなく、単に投資家の信頼を失うだけです。
もっといえば、3年、5年先の話は、経営者が変更することもできるわけです。変更しても問題はなく、「修正します」と説明すればよいのです。
例えば、経営者が「右肩上がりで成長したい」と想定しつつも、チャンスと思えるような場面があったとします。5年後はこのようなペースでの右肩上がりの成長を考えていたものの、さらに成長するためにタイミングを見て1回投資する、1回屈むといった内容に自由に変更できるのです。
その場合は理由を聞くことが重要です。右肩上がりになるという話であれば、しっかりと右肩上がりになるのか、1年程度の先行きは見えていても、2年、3年の間に何かがあって可変するようなことはないのかなどの要素を深掘りしていくことが求められます。このような説明をしっかりと行う企業は、努力していると感じます。
多くの方がROEを見て「ROEがとても高いから、この会社は良い」と評価しますが、目標に向けて手を打っており、増益の理由を納得できるように説明できる企業であれば、買うまではいかないにしても、チェックする銘柄に入れるなどのアクションを起こすことができるかと思います。
また、中期経営計画においてよく見られるのが、最終年度に利益が急増していることです。例えば、3年間の中期経営計画で、現在の利益が50億円、最終年度の目標が100億円になっている場合、途中までの推移が薄い点線のグラフで、最後の年だけピンと立っているケースがあったとします。
その場合、本当に計画どおりに達成できるのか、具体的には、均等なペースで目標が達成されるのか、それとも微増から最終年度で一気にジャンプするかたちになるのかを確認します。
荒井:そんなにきれいに進むものでしょうか?
坂本:進むパターンもあります。企業に尋ねると、「こういう手を打っているので、こうなる予定です」あるいは「最後にジャンプするようにがんばります」といった回答がありますが、この点はきちんと確認するようにしています。モヤっとしているところについては説明を聞くことが重要です。
荒井:せっかくのIRセミナーですので、曖昧なところは企業の方に具体的に説明していただきたいですよね。
坂本:当然ながら企業としては、最終的に目標を達成すればよいのですが、重要なのはその目標への到達方法です。なぜ到達方法が大事かというと、目標が3年後にあるとすれば、投資期間と関係があるためです。
3年後の目標を念頭に投資する場合、3年間じっと様子を見守る選択肢もあります。ただし、「2年目までは微増だが、3年目に大きく成長する」という計画であれば、多くの人は「ジャンプする時に投資したらいい」と感じると思います。「長期だけど短気」ということです。
荒井:効率的に進めたいですね。
坂本:「長期だけど短気」の意味、わかりました?(笑)。長期で持ちつつ、「上がれよ」というように短気な性格の方がいるということです。
荒井:気持ちが短気ということですね。よくわかります(笑)。
坂本:すみません。説明させていただきました(笑)。そのような方もいるため、「ジャンプする時に買う」という考えも、1つの利益の種かと思います。
荒井:そうですね。だからこそ、投資をするタイミングを見極めるためには、細かな質問が効いてくるわけですね。
坂本:そのとおりです。
よい質問とは?

荒井:次に、IRセミナーでの鉄板の質問についてお聞きしたいと思います。坂本さんはプロの目線をお持ちですが、良い情報を得られるような視聴者からの質問というか、聞き方のコツはありますか?
坂本:私が良い質問だと感じるのは、自分の仕事が甘かった時です。聞くべきポイントが抜け落ちていた時だと思っています。
荒井:聞き漏れていた時ですね。
坂本:そうです。基本的に私は、説明されているスピーカーが資料でカバーしきれていない部分や、レベルが高すぎて理解しづらい部分に注目して質問しています。私自身が理解していることでも、「すみません、これはこういうことですか? 教えてください」と、内容を補完するかたちで質問をすることもあります。IRセミナーはそうした情報の穴を埋める場だと考えています。
例えば、スピーカーが60分間話されて終わるようなかたちよりも、ログミーのように掛け合い形式で進行されるIRセミナーのほうが見やすいと思います。私もいろいろと調整していますので、視聴者の方も安心して見ていただければと思います。
さらに、ログミーの利点として、書き起こし記事を提供している点が挙げられます。当日の説明内容を流し読みしたり、検索したりできますので、ぜひ活用していただきたいと思います。
荒井:坂本さんは書き起こし記事と動画、リアルのIRセミナーをどのように使い分けていますか?
坂本:個人投資家としては、動画を見ることはあまりありません。ほぼ書き起こし記事を利用しています。他の方がMCをされている回でも、動画ではなく、書き起こし記事を見ることが多いですね。
速報性では動画のほうが優れていますが、書き起こし記事を読むほうが時間短縮になるため活用しています。ただし、「この会社のことをまったく知らない」という方は、さまざまな情報を全体的に理解するためにも、動画を視聴することが有用です。特に関心のある企業に関しては、全体を確認されることをおすすめします。
IRセミナーは加点で見るべし

坂本:また、IRセミナーを見て細かい部分に注目して「あれはダメ、これはダメ」と否定的な意見を持つ人がいると思います。しかし私は、そういう投資家のスタンスは少し問題があるのではないかと感じています。
というのも、十数年この仕事をしてきた中でここ最近感じるのは、特に個人投資家の基本的な思考が減点法に基づくものが多いという点です。もし1時間の番組で減点するために視聴するのであれば、悪いですが見ないほうがよいと思います。
視聴は加点する目的や、加点のための土台を築くために行うものです。減点のジャッジをする人というのは、すでにその会社について深く調べたり、あるいは投資したりするほど知り尽くしている人だけだと思います。
荒井:長年投資を実践している方ですね。
坂本:そのとおりです。まとめになりますが、IRセミナーを1時間かけて聞いても、減点するのであれば本当にもったいないです。「どんどん加点していきましょう」ということではありませんが、減点するために見るのではありません。
減点を目的として視聴する方は、土台が整っていて知識があるプロの投資家だけです。初めて見る方にはわかりにくい部分もあると思うため、私は減点を狙うような質問はあえて避けるようにしています。
いきなり減点されるような質問をすると、巻き込まれるようなかたちになってしまうのではないかと思います。
荒井:良くないのかなと思ってしまいますよね。
坂本:そうです。初めて見た人を不安にさせる可能性があり、それが投資の範囲を狭めてしまう懸念もあります。その点については気をつけて進めていきたいと思います。
荒井:IRセミナーは、すてきな投資対象と出会う場という位置付けで、まずは沿革などを見て楽しむことが第一歩ですね。
今回は坂本さんにお話をうかがいました。次回は実際の動画をご紹介いただきながら進めていきたいと思います。
坂本:テーマは「見てよかったIRセミナー」です。
荒井:次回は実際のIRセミナーをご紹介いただきながら、坂本さんのお話をさらに深くお聞きしていきたいと思います。本日はありがとうございました。


