IRセミナー 特別講演「ファンダメンタルズ投資家が押さえておくべきポイント集」
そのIRセミナー、聞き流していませんか?企業分析を深める質問力
IRセミナーで重要なのは「質問力」

坂本慎太郎氏:みなさま、こんにちは。Bコミこと坂本慎太郎です。本日は「IRセミナー実践ガイド」というテーマでお話ししようと思います。
IRセミナーで一番のポイントとも言えるのは「どのように質問したらよいか?」ということです。ログミーのIRセミナーのように時間が限られている中でも、企業に採用されやすい質問についてお話ししたいと思います。
また、IRセミナーや株主総会での質問に限らず、勉強会などの自由な形式で質問できる場面でも役立てられるようなポイントにも触れたいと思っています。
本日の資料は、私が機関投資家として活動していた際に培った、企業への質問のポイントをまとめ、実際の経験に基づいて言語化したものです。
当時、私が企業に接する場面では、どちらかといえば株式よりも、債券や社債を通じて向き合うことが多くありました。ただ、ここで財務の話ばかりしていても少し堅くなってしまいますので、本日は株式投資家の観点から、企業に対してどのような質問をするべきかに焦点を当ててお話しします。
まず重要な点は、質問するためにはその企業についてしっかり調べ込む必要があるということです。これは本日の結論と言ってもよいかもしれません。私もIRセミナーの進行をするにあたっては、1社につき平均3時間ほど下調べをして臨んでいます。
その際に質問内容についても考えますが、単に質問を作るだけであれば、AIに聞けばいくつも答えは返ってきます。そのような作業自体は、誰にでもできます。
しかし、IRセミナーでは、実際に企業と対面で向き合いながら話を聞いていきます。「これが一番話したいポイントだな」「強調したいのはここだな」といった企業が注力している点を、事前に資料を読み込んで押さえたうえで、当日の説明を聞くようにしています。
また、セミナーでは企業側の説明が全体の8割程度を占めます。私が口を挟める場面はかなり限られていますので、質問を入れるタイミングや、何を優先して聞くべきかを考えながら構成を組み、当日に臨みます。
それでも、当日はアドリブが求められる場面もあり、必ずしも想定どおりの展開になるとは限りません。そこがIRの非常に難しいところでもあります。
セミナーの進行自体は、処理判断能力が高く、相手が何を求めているのかを的確に理解できる方であれば対応できると思います。私もこの仕事を6年から7年ほど続けてくる中で、かなり慣れてきた部分があると感じています。
だからこそ、やはり「予習が非常に重要だよね」ということに尽きると思います。そのため、みなさまも質問をする際には、企業についてしっかり予習したうえで臨まれるとよいと思います。
本日の内容は、ファンダメンタルズ分析にも役立つと思います。「どのような質問をすべきか」と「どの部分を注視すべきか」は、ほぼ一致しているからです。これは、日常の投資にも活用できるポイントではないかと思います。
限られた時間で核心に迫る質問設計

それでは、始めていきましょう。重要なポイントは3点です。
1点目は「抽象論を具体的数値へ」です。経営陣の定性的な発言を、数値やKPIに落とし込むための質問技術を磨くことが重要です。
IRセミナーにはさまざまな会社が登場しますが、その中には具体的な数値を詰め続けることを避ける会社もあります。それは、主に個人投資家向けのセミナーだからです。
個人投資家向けのセミナーでは、初心者から上級者まで幅広い層が参加していますが、その大多数は投資を始めて間もない方々です。
一方、機関投資家向けのセミナーや1on1ミーティング、決算説明会の参加者は、内容をよく理解している方ばかりです。そのため、具体的な数値や厳しい質問を交えながら、内容をさらに深掘りしていくディスカッションが行われます。
このようなディスカッションを個人投資家向けセミナーで行うと、人数的にも多いであろう初心者層に「難しい」という印象を与えてしまう可能性がありますので、わかりやすい説明を意識する必要があります。
特にBtoB企業やIT企業の場合には、専門用語が頻出します。専門用語を使って話が進むと、初心者だけでなく、その業態に馴染みのない中級者でも「よくわからない」「何を言っているのだろう」という状況になりかねません。おもしろみが伝わらないどころか、「つまらない」という印象が勝ってしまいます。
若干話は逸れますが、個人的には、上級者の投資家も機関投資家向けの説明会に参加できる仕組みがあるべきではないかと考えています。
また、個人投資家向けのIRセミナーを行う目的として、「会社を知ってほしい」という思いは必ずあると思います。私は、むしろそれが一番大きな目的だと考えています。
ただし、会社によって状況はさまざまです。本来であれば、どのようなIRセミナーにしたいのかを企業への事前アンケートなどで確認し、要望やニーズを把握したうえで、当日の質問項目も含めてやり取りしながら内容をカスタマイズしていきたいという思いはあります。しかし、現状としてはなかなか難しいところがあります。
そして、ニーズが不明確な状況では、上級者だけが納得し、上級者だけがよいと感じるようなセミナーにもできません。それでも、資料から「このようなことを言いたいのだな」というポイントは十分理解できますので、その点を深掘りして聞いています。
このように、「数字を詰め込めばいい」というわけではないのが、個人投資家向けIRセミナーの特徴だと思っています。
「Bコミさん、それでは登壇者の方と事前に打ち合わせをすればいいのでは?」というご意見もあると思います。そのような時間を割き、お互いのニーズがマッチしたIRセミナーを目指すことは、個人的には非常に良いことだと感じます。
しかし、万が一打ち合わせの中で偶発的にインサイダー情報が出てしまった場合、それは大きな問題に発展します。同じような理由から、私は持論として投資家と企業が1on1でミーティングを行うことは禁止すべきだと考えています。
現在ほどコンプライアンスが厳しくなかった時代には、「インサイダーがバンバン出ていたよ」といった話を聞いたこともあります。機関投資家は聞き方が非常に巧みですので、インサイダーにあたるようなニュアンスをある程度引き出せていたのではないかと思います。
また、直近ではほとんど見られませんが、日本経済新聞に業績の観測記事が掲載されていました。これは私の経験も踏まえた話ですが、期中に利益予想が掲載され、最終的な数字を見ると利益予想と一致していることが多いのです。
おそらく記者の方々が非常に優秀で、業績を当てる精度が非常に高いのだろうと思います。一定の取材をもとに、企業自身の予想や『会社四季報』などの市場予想にそのまま頼るのではなく、自分たちで精度の高い数字を予測しています。これは投資の成功にもつながる要素の1つですので、「本当にすごいな」と思います。
2点目が「最大の開示を引き出す」ことです。限られたQ&Aの時間の中で、無駄を省き、核心に迫る質問をすることで、より深い情報を得ることができます。
無駄な質問を控えることは大切なポイントの一つです。私自身も、個人投資家だった頃に「このような質問をしてみようかな」と考えたものの、実際に質問をしてみると意味がなかった経験もあります。核心に迫る質問の構成力が非常に重要だということです。
3点目は「再質問の『型』を装備」することです。ログミーのIRセミナーでは、みなさまから寄せられた質問を、私が企業の登壇者にたずねる一問一答が基本形ですが、通常の説明会では再質問が可能です。回答が不十分だった場合に切り返して質問を重ねることで、自分の質問を深掘りし、確証を得ることができます。
1回の質問で自分が聞きたいことを明確に得るためには、企業への質問内容を工夫することが非常に重要ですので、参考にしてみてください。
よい質問は事前準備から生まれる

それでは具体的な内容に入っていきます。「質問前の準備編」のポイントは、冒頭でも触れましたが、「聞く前に勝負の8割は決まっている」ということです。
スライドには「事前調査・設計・優先順位付け戦略」と書きましたが、事前調査がなければ、よい質問は生まれませんし、どうしても深みに欠けると思います。
ただ、一般的なIRフェアなどでは、ブース型の展示で知らない企業の担当者に話を聞く機会もあるかと思います。そうした場面では、ブースの担当者やチラシを配っている方に、「御社について1分ぐらいで説明してください」「御社の強みを3つ教えてください」と、AIに問いかけるような感覚でいきなり質問してみるのも意外と有効です。
ただし、そのような場では15分前後のミニセミナー形式になっていることが多いので、まずはその内容を聞いてから話を掘り下げるのが礼儀だと思います。
一方、ログミーのIRセミナーではまず40分程度の説明がありますが、それでも十分に深掘りできていない部分があると思います。スピーカーも当然プロですが、すべてを話し尽くしているわけではありません。
また、事前準備をしても「話を聞いてもわからなかった」「わかりにくかった」と感じることはあると思います。私も話の中で気になったことを「こういうことですか?」と質問することがあります。数字や投資に直結する質問ではなくても、説明が不足していると感じた部分について質問することは、まったく問題ないと思います。
「今日のお話の中で、この部分が理解できなかったので、もう一度教えてください」といった質問が寄せられれば、私はむしろ積極的に読み上げたいと思っています。話の補足にもつながりますので、遠慮なく寄せてもらえればと思います。
企業を理解するための情報収集術

事前調査として、どのような内容を事前に確認しておくべきかについてお話しします。
まずは「基本資料の精読」です。当然ながら、セミナーや説明会では、資料が事前に公開されない場合もあります。私自身も気をつけていますが、資料にインサイダー情報が含まれないよう注意してもらっています。
特に、決算発表直後にセミナーが開催される場合は、「B/SとP/Lの数字は外してください」とお願いしています。そのような場合、数字が入っていない資料をもとに事前に質問を準備するのは難しいため、想定される質問は当日受け取るようにしています。
ただし、みなさまはセミナーや講演の資料を事前に閲覧できない場合が多いと思います。基本的には、決算短信、説明資料、補足資料の3点を確認しておくことが重要です。セミナー用に資料を新たに準備する企業も多いのですが、最新の決算説明資料をもとに話をするケースも少なくありません。
基本的に確認すべき要点は、沿革、主な業種や売上の割合などの項目です。これらは決算説明資料に順序立てて記載されています。事業内容や主要取引先なども含めて把握することが1つのポイントです。
その中には「自分たちの会社はどのような会社なのか?」と会社説明が含まれているケースも多く見受けられ、決算説明資料を読むだけで十分な場合もあるほどです。そのため、決算説明資料を確認しておくだけでも大きな違いがあります。
一方、決算説明資料は業績に関する内容のみで、「どのような会社なのか?」「どのようなものを作っているのか?」といった情報を含めない企業もあります。その場合は企業のホームページで、沿革、事業ごとの売上比率、主要取引先などを見る必要があります。
それらは大抵、企業のIRページに掲載されていますが、内容が難解だったり、説明が簡潔すぎたりして、読んでもよくわからないことはあると思います。ただ、そこはまったく気にする必要はありません。私自身も、わからないと感じることはあります。
特に、BtoB企業や、ITコンサルティングを含む専門性の高い分野を扱う企業については、理解が難しい場合もあります。他には例えば、QDレーザのように先端的なレーザ部品や素材を手がける企業は事業内容が非常に難しく、私自身も理解するまでにかなり時間がかかりました。
おおまかな理解はできても、具体的にどのような製品で、どのような用途で使われるのかまで含めて考えると、3時間ほど調べたくらいではなかなか把握しきれません。誰かに講義してほしいと思うほどでしたが、結局は地道に資料を調べていくしかありませんでした。
それこそ、恥を忍んで「Yahoo!ファイナンス掲示板」でも情報を集めました。掲示板の中には非常に詳しい方がいらっしゃるので、個人投資家の方々による詳細な書き込みを参考にしながら、「こういうことなのか」と理解できることもありました。
私は仕事でもあり、趣味でもあってこのような調査をしていますが、みなさまが日常生活を送る忙しい最中、同じことを行うのは非常に大変だと思います。
そこで、短時間で情報を集める方法として、新卒向けの採用情報を見るのがおすすめです。大学生や高校生向けの「リクナビ」や「マイナビ」で、その企業のページを見てみるのです。
新卒募集のページには、投資家以上にその会社に関する知識が少ない人に向けて、「このような会社です」「この会社にはこのような魅力があります」と伝えるための情報が整理されています。会社の沿革や事業内容だけでなく、より具体的でわかりやすい情報が掲載されていることも多いので、ぜひ一度目を通してみてください。
YouTube動画の要約で掘り下げポイントを把握
次に「リスクと詳細把握」です。有価証券報告書や統合報告書には、リスクについても記載されています。「この会社の経営リスクについて」といった項目にひととおり目を通しておくことをおすすめします。『会社四季報』や『業界地図』などを見ておくのもよいでしょう。
「過去の文脈理解」では「過去の質疑応答ログ」と記載しました。特に「ログミーFinance」の良い点として、書き起こし記事があることが挙げられます。説明会の動画をすべて視聴するのは非常に大変ですので、この書き起こし記事を活用いただきたいと思います。
最近では「Gemini」に「YouTube」の内容をまとめてもらう方法もあります。IRセミナー開催後、YouTube動画の要約を「Gemini」で生成し、それを読んでから実際にセミナー動画を見るのもよいと思います。
「ログミーFinance」では本日行われたIRセミナーの動画が配信されていますので、こちらを使って、動画の内容を「Gemini」に要約してもらおうと思います。
(注:要約に関する説明パートは一部割愛しています)
LIFULLが参加していますが、この会社は私がコロナ禍以前から非常に関心を持って、注目している企業の1つでもあります。業務内容もよく知っており、海外展開を少し縮小して次のステップに進む過程も、個人的にお話を聞いてみたいと思っていた企業です。私がこのIRセミナーのMCを務めたかったくらいです。
さて、要約を確認すると、今回は「LIFULL」の社名の由来に関する話題が出ていたようです。会社の由来には、その会社の歴史が関連していますので、意外と質問してみるのもよいかもしれません。私も話をうかがう際に、必ず沿革を掘り下げるようにしています。
限られた時間の中では、沿革がどのように変化しながら現在の業務や事業につながってきたのかという点が、視聴者に最も理解してもらえるポイントだと考えています。
そのような内容が薄かったり資料に記載されていなかったりする時には話をうかがうようにしていますが、NGになることも少なくありません。
社歴が長い企業では、資本の変化や、創業者がすでにいない場合もあるため、スピーカーが意図的にその部分を削除しているのかもしれません。しかし、ここはみなさまも意識して質問したほうがよい点だと思います。
しかし、時間が限られている場合は、こちらが聞きたい内容と企業の優先度に差異が生じることもあります。残念ではありますが、企業の考え方を具現化することが私の仕事ですので、やむを得ないと捉えています。

要約では、国内最大級の不動産住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」や「健美家」のほか、介護事業が加わったことなど、事業内容が非常にわかりやすくまとめられています。
「LIFULL HOME'S」の強みについても話題が出ています。おとり物件や成約済み物件の掲載を減らし、ユーザーをがっかりさせないように取り組む点が評価されています。
今では減少傾向にあると思いますが、不動産業界ではこのような話は昔からあります。IRセミナーでは、LIFULLがそのような事態をなくす取り組みをしているという話題があったのでしょう。
データベースの規模は、件数が600万件以上、加盟店舗数が3万3,000店以上で、サイトを内製しているためAI機能などを実装できる点が強みだと書かれています。
中期経営計画やB/S・P/Lについても触れられています。2回目や3回目などのセミナーに出席する方は、このような点を注意して見ておくとよいと思います。
このように「Gemini」の要約は非常にわかりやすく整理されており、見るべきポイントが明確です。会社概要や会社の強み、中期経営計画、最近の業績、最近の業績が好調であった背景もまとめられています。株主還元や質疑応答についても、しっかりと説明されています。
質疑応答では、「ログミーFinance」らしいポイントとして、AI投資に関する中期目標について言及があり、本格的な貢献はまだ織り込んでいないものの、アップサイドの可能性が示されています。
市場環境については、新築物件の供給が減少している中で、中古市場の拡大が同社にとって追い風となること、同社が強みを持つ賃貸や中古リノベーション市場における展望に期待が集まっていることなども書かれています。
競合他社に対する優位性としてはAIや不動産データベースの活用が挙げられるという話でした。
以上が「Gemini」の要約です。要約だけで終えるのもよいですが、私はさらに深掘りするべきだと思っています。深掘りの方法としては、例えば興味のある部分について「この内容をもう少し詳しくまとめてください」と指示したり、自分の考えを入力したうえで「この観点から整理してください」と活用したりする方法があります。
競合の規模や状況について調査を加えて比較する手法も考えられますが、その際にはハルシネーションと呼ばれる、誤った情報や嘘が入り込む可能性があります。先ほどは企業が実際に説明した内容の要約でしたが、事実関係の正確さは非常に重要なポイントです。
このように、すでにAIを活用している方も多いと思いますが、最近はこのツールがより便利になり、投資にも活用できるようになりました。「YouTube」だけを見ても、長時間のデータの中から重要なポイントを簡潔に抽出する方法として、ボタンを1つ押すだけで関連リンクを発行できるリンク機能を活用することが1つのポイントになると思います。

スライドに戻ります。「期待値の確認」として、コンセンサスと会社計画、修正履歴のギャップ分析と記載しました。修正履歴について確認するには、過去の決算短信を見て比較する方法があります。
ツールに頼る手もあります。例えば、マネックス証券の「マネックス銘柄スカウター」では、どの期に、どの程度業績予想が修正されたのかを確認できます。例として1社を見てみると、業績はおおむね右肩上がりで推移し、それにあわせて業績予想が階段状に上方修正されていることがわかります。つまり、期を追うごとに業績予想が見直されているのです。
全体として業績は右肩上がりを維持しており、保守的な業績のイメージを持っている特徴があります。そこで「もう少し上方修正があるかもしれない」という可能性を頭に入れながら、今後の業績を見ていくことができます。
「事業ドライバー」は、どのような仕事をしているのかという点です。セグメント別のKPIとして、例えば事業が3つある場合、それぞれの売上や利益をまず確認することが必要です。また、可能であれば単価、数量、解約率などについても確認していくべきです。
ただし、これらは開示されていない場合も多いため、解約率などが不明であれば聞くことを検討します。工場の稼働率なども重要なポイントとして聞いておくべきだと思います。
「株主還元方針」では、配当性向やDOEについては詳しく説明があると思います。そのほか、自社株取得の余力などもポイントになると思います。また、企業の方向性や方針はこれらは押さえておくべき重要な要素です。
「資本政策・財務」では、発行済株式数や希薄化リスク、財務制限条項などがあります。
以上のようなポイントを、事前にチェックしておくとよいと思います。
他社比較で見えてくる「聞くべき論点」

業界データ・競合比較の情報収集方法についてです。
情報源の確保として、まず一次情報である企業のIRサイトなどから収集します。市場環境の調査には、業界地図や統計データ、官庁の統計などが利用できます。専門家向けの情報では「Bloomberg」「QUICK」などもあります。そのほか、アナリストレポート、コンセンサスを見ておくとよいでしょう。
比較軸の設定についてです。粗利率、販管費、営業利益、成長性、効率性などが挙げられます。これらの情報をもとに他社と比較を行うことで、これから話を聞く会社の弱点や実は強みとなる理由を把握できますので、質問のネタ作りに活用することができます。
アウトプットとしては、横並びの比較表を作ってみることが重要です。特にP/LやB/Sの比較を行うことで、「何かおかしいぞ」と感じる点が見つかるはずです。このような比較を通じて、聞いてみたい内容が具体的に浮かび上がるでしょう。
例えば利益率が高い理由、あるいは低い理由をたずねるだけでも興味深い話が得られることがあります。「他の会社はこの数値が高いのに、なぜ御社は低いのですか?」というポイントが出てくる場合もあり、意外とおもしろい発見があります。
ご自身で利益率が低い理由を見つけた場合には、それを踏まえて「御社は同業他社と比べてこのような背景から利益率が低くなっていると思うのですが、実際にはどうしてこのような状況になっているのですか?」と質問することもできます。
また、「この低採算の部門は、業界の中でも3番手、4番手に位置しています。コストをかけて維持しておくわけにはいかないと思いますが、売ることは考えていないのですか?」といった質問では、企業の方向性が見えてくることもあります。
「いやいや、なんとかします」という回答があるかもしれませんし、逆に「他の会社から買って補うことで、もっと稼働率を高めるんですよ」という新たな話題が出てくるかもしれません。
このように自身の仮説も交えながら質問することは、1つの重要なポイントだと思います。
質問設計フレームワーク

では、実際にどのような質問をしていけばよいのでしょうか?
「ログミーFinance」のIRセミナーでは、寄せられた質問をもとにテーマを設定し、仮説を立て、どの指標で検証するかを考えたうえで、実際に登壇者へ投げかける質問を決めています。その後は、回答の内容に応じてフォローの質問も行います。
質問を考える過程では、曖昧な質問を避けるために、自身がどの部分に焦点を当てたいのかを明確にする必要があります。
例えば、IRセミナーであれば、成長性、収益性、資本効率、キャッシュフローといった観点があります。この4つのうち、自身はどこに焦点を当てたいのかを整理し、そこに優先順位もつけながら質問を決めていくとよいと思います。
質問リスト作成テンプレート

こちらのスライドには質問のテンプレートを用意しました。ご自身で埋めてみることで、「ログミーFinance」のようなIRセミナーでも良い質問ができるのではないかと思います。
実は今回の資料を70ページほど作成していましたが、50分ですべてをお伝えするのは難しく、今回は7ページ分しかお話しすることができませんでした。今回のセミナーが好評であれば、あらためて続きをお話ししたいと思っています。
採用されやすい質問、されにくい質問
最後に、採用されやすい質問について、みなさまにお伝えしておきたいと思います。
質問の際には絶対に避けるべきことがいくつかあります。まず、自分の意見を含めないようにしてください。質問は簡潔に行い、聞きたいことだけを問うのが重要です。
株主総会などでは、まず名前や所属を名乗る慣例がありますが、そこから前置きが長くなってしまいがちです。「社長ね、私ね、御社の株をもう30年持っていて、ようやく株価が買値に戻ってきたんですよ。買値に戻ってきてすごく嬉しいけれども、この30年は何だったのかと私は思ってるわけでね……」といった話が続くと、聞きたいことが伝わりにくくなってしまいます。
ただ、社長の内心では「30年保有していてようやく買値に戻ったと言っているけれども、配当を30年間受け取っているのであれば、インカムとキャピタルを考えるとどれだけ儲かっているのだ」と思っていたかもしれません。このような話は小話としてはおもしろいものの、簡潔に質問してほしいと思います。
株主還元について聞きたいのであれば、余計な部分を省き「株主還元の方針を教えてほしい」と要点を端的にまとめることが理想的です。
すると「株主還元はお示ししたとおりDOE5パーセントを基準に実施します」などの回答があり、そこへ社長が「実は弊社はDOE5パーセントをずっと続けてきており、配当も1回も無配もありません」と話を付け加えることもあります。
また、質問ではなく「社長を応援しています!」といったコメントが寄せられることもあります。これはその場が盛り上がることもありますので、百歩譲ってよしとしますが、その一方で、人格否定のようなコメントが寄せられることも多々あります。
「10年前の出来事で、御社はとんでもなかった」「後処理はどうするんだ」などという話題が出たときには、私も非常に困ります。
IRセミナーの質問では、セミナーの内容に対する質問や、その中の話題を補足するような質問が基本だと考えています。そのような趣旨から外れるコメントについては、読むことが難しい場合が多いです。IRセミナーには不要な話だと思うからです。できる限り、ご覧いただいた方々の知識や理解が深まるような質問を選びたいと考えています。
また、「どうしてもこの質問を読んでほしい」という場合は、当日のQ&Aで質問するのではなく、ぜひ事前に質問をお寄せください。
実際に、事前に質問をお送りくださる方々もいらっしゃいます。非常に良い質問が書かれていることもあり、企業側に「この点について多く質問が寄せられていますが、いかがですか?」と事前に打診したうえで、その質問を読むこともあります。このように、より充実したQ&Aにもつながると考えています。
本日は「ログミーFinance」を通じたIRとの向き合い方を中心にお話ししました。
質問を考えることは企業分析につながります。本日お話しした企業分析の方法や質問の考え方などを、今後の取引や分析などに活かしていただければと思います。
「ログミーFinance」には動画だけでなく書き起こし記事もありますので、非常にスムーズに情報収集が可能です。ぜひ活用してみてください。


