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株式会社ユアテック1934

東証プライム

建設業

(1)決算ハイライト[連結]

小林郁見氏(以下、小林):みなさま、こんにちは。株式会社ユアテック取締役社長社長執行役員の小林です。本日はお忙しい中、2026年3月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。これより資料に沿ってご説明します。どうぞよろしくお願いします。

はじめに、2026年3月期第2四半期決算概要です。連結決算のハイライトとして、売上高は、配電線工事および屋内配線工事が増加したことなどにより、増収となりました。

利益については、売上高の増加および工事採算性の向上により、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する中間純利益ともに増益となりました。

(2)売上高の増減要因[連結]

売上高の前年同期比の増減内訳です。子会社売上高については、ベトナム連結子会社における大型工事の受注時期が延期となり、工事進捗が見直されました。一方で、配電線工事や屋内配線工事が順調に進捗したことなどにより、前年同期比で約77億円の増加となりました。

(3)営業利益の増減要因[連結]

営業利益の前年同期比の増減内訳です。売上高の増加および工事採算性の向上に伴い、個別売上総利益が増加したことなどで、前年同期比で約23億円の増加となりました。

(4)地域別売上高の推移[連結]

地域別売上高の推移です。

「東北地方および新潟県」は、大型の工場や商業施設、再生可能エネルギー関連工事、特高受変電設備工事が順調に進捗したことに加え、東北電力グループ工事における高経年化設備対策工事や基幹送電網整備工事、さらに競争案件を受注したことにより、前年同期比で約56億円の増加となりました。

「東北・新潟以外」は、大型の商業施設や流通施設の工事が順調に進捗したことにより、前年同期比で約24億円の増加となりました。「海外」は、上期に着工が予定されていた工事の一部が下期に延期されたことや、予定案件の計画中止などにより、前年同期比で約3億円の減少となりました。

(5)決算ハイライト[個別]

個別決算のハイライトです。売上高は、配電線工事や屋内配線工事の増加などにより、前年同期比で約86億円の増加となりました。

利益は、工事採算性の向上などにより、各利益とも増加しました。また、手持工事高についても高水準で推移しています。

(6)工事別受注工事高の推移[個別]

工事別受注工事高の推移です。屋内配線工事は、大型の工場や商業施設などを複数受注したことにより、前年同期比で約115億円の増加となりました。一方、空調管工事は、前年同期に大型商業施設を受注していた影響で反動減となりました。

また、送電・発変電・土木建築工事では、発変電工事において、基幹送電網整備工事や計画案件を順調に受注した結果、前年同期比で約50億円の増加となりました。

(7)工事別売上高の推移[個別]

工事別売上高の推移です。屋内配線工事は、大型の商業施設や工場などが順調に進捗したことにより、前年同期比で増加しました。配電線工事についても、高経年化設備対策工事が順調に進捗したことにより、前年同期比で増加となりました。

また、送電・発変電・土木建築工事は、主に発変電工事において、基幹送電網整備工事や変電所の拡充・改良工事が順調に進捗したことから、前年同期比で増加となりました。

(8)工事別手持工事高の推移[個別]

工事別の手持工事高の推移です。土木建築工事において一部減少が見られるものの、高水準で推移しています。

(9)得意先別受注工事高の推移[個別]

得意先別受注工事高の推移です。民間企業や官公庁といった一般得意先と、東北電力グループに分けて受注工事高を記載しています。

一般得意先は、大型の工業施設や商業施設の受注があったことにより、前年同期比で増加しました。東北電力グループについても、発変電工事や送電工事の増加などにより、前年同期比で増加しました。

(10)得意先別売上高の推移[個別]

得意先別の売上高推移です。一般得意先については、大型の商業施設や流通施設の工事が順調に進捗したことなどにより、前年同期比で増加しました。

東北電力グループについては、高経年化設備対策工事や基幹送電網整備工事、競争案件を受注したことにより、前年同期比で増加しています。

(11)中間連結貸借対照表

中間連結貸借対照表です。資産合計は約2,187億円となり、前連結会計年度末に比べ、約147億円減少しました。

(12)中間連結キャッシュ・フロー計算書

中間連結キャッシュ・フロー計算書です。現金および現金同等物の当期残高は約63億円減少し、約412億円となりました。

(1)2026年3月期通期業績予想

次に、業績の予想および推移についてご説明します。まず、2026年3月期の通期連結業績予想です。中期経営計画に基づく5つの基本戦略、主要施策のもと、グループ一丸となって、増収、増益を目指していきます。

スライドの17ページから22ページにかけて、連結、個別の業績推移および予想、工事別の予想を記載しています。一部、説明を割愛し、21ページについて補足説明します。

(6)工事別売上高予想[個別]

個別の工事別売上高予想です。

前期比で空調管工事は約20パーセント、情報通信工事は約30パーセントの増加を見込んでいます。空調管工事については、複数の大型物件の竣工が計画されていることに加え、大型商業施設などの進捗が見込まれることから、増加の見通しとなっています。

また、情報通信工事については、データセンターや官公庁物件への取り組みに加え、屋内配線や空調管工事に付帯する情報通信工事の受注強化にも取り組んでいることから、増加の見通しです。

(1)配当金の推移

株主還元についてご説明します。まず、配当金の推移です。2026年3月期の配当金は、今回の中間配当で1株当たり36円、期末配当も同額の36円を予定しており、年間配当は1株当たり72円、配当性向は40.5パーセントとなる見込みです。

(2)自己株式の取得

自己株式の取得です。今後も、中期経営計画期間中に約85億円の自己株式取得を予定しており、東北電力だけでなく、一般市場からの取得についても適宜実施する予定です。

(参考)株価の推移

直近1年の株価の推移です。堅調な業績やIR活動の施策効果等を背景に、日経平均株価を上回る上昇率となっています。今後も持続的に利益を伸ばし、資本効率を高めることによって、企業価値の向上に努めていきます。

(1)中期経営計画(数値目標)の見直し

2024年度をスタートとする5ヶ年の中期経営計画についてご説明します。当社は2024年3月に「2030ビジョン」および「中期経営計画」を策定し、資本効率を意識した経営の実現に向け、数値目標として新たにROEを掲げました。

中期経営計画の初年度である2024年度の業績は、工事の順調な進捗や工事採算性の向上により、営業利益とROEは当初目標として掲げた目標値を達成しました。

これを受けて、当社は一層の収益拡大に向け、2025年10月29日に連結売上高を2,700億円から2,800億円に、連結営業利益を135億円から200億円に、ROEを6パーセント以上から9パーセントにと、数値目標を上方修正しました。

新たな数値目標を達成するため、原価低減と生産性向上による収益性の強化により、既存事業のさらなる深化と成長分野への取り組みを加速していきます。

(2)収益性の向上

収益性の向上に向けた事業分野に関する考え方を示しています。具体的には、創業以来の事業エリアである東北・新潟での事業のさらなる深化を前提に、「東北・新潟以外」「海外事業」「再エネ関連工事」「リニューアル工事」の4つを重点事業として設定しています。

これらの重点事業は、当社事業との親和性が高く、いずれも高い成長が見込まれる分野です。各事業の詳細については、後ほどあらためてご紹介します。

(3)経営資源の適切な配分

経営資源の適切な配分に向けた施策です。投資家のみなさまからのご意見等を踏まえ、今回のアップデートでは、キャピタル・アロケーションの中にキャッシュインを追加しています。

キャッシュアウトとしては、成長投資約800億円に加え、安定的な配当や自己株式の取得を実施し、総還元性向50パーセントから60パーセントを目安に、さらなる株主還元の強化に取り組んでいきます。

(4)東北・新潟以外(関東圏他)

収益性の向上に向けた、4つの重点事業についてご紹介します。1つ目は、「東北・新潟以外」です。2024年度の売上実績179億円に対し、2028年度には288億円の売上を計画しています。

屋内配線、空調管、情報通信工事については、建設需要が旺盛な関東圏を中心に、成長市場に強みを持つお客さまへの営業や体制強化を継続しつつ、その他エリアへの進出も検討していきます。

特に、都市部における再開発プロジェクトやデータセンター関連施設の建設需要は高水準で推移すると予測されています。東北電力が推進するデータセンター誘致構想において、関東圏で培った施工実績とノウハウを活かし、受注拡大を目指します。

(参考)東北・新潟以外における近年の主な施工実績

スライドには、関東圏における近年の主な施工実績を掲載しています。参考までにご覧ください。

(5)海外事業

2つ目の重点事業は、「海外事業」です。2024年度の売上実績172億円に対し、2028年度には293億円の売上を計画しています。

当社の海外事業の中核であるベトナムでは、国民の生活水準の向上や製造業などの外資誘致が進み、工場、物流施設の建設や都市インフラ整備が急務となっています。

本計画の達成に向け、シグマ社を中心に大型ホテルや複合ビルでの屋内配線工事、空調管工事、洋上風力をはじめとする再エネ関連工事の受注拡大に取り組んでいます。

(5)海外事業

先日公表していますが、海外で再生可能エネルギー関連の大型事業を2件受注しました。

1つ目は、エジプトでのODA案件で、紅海沿いのハルガダ市郊外における太陽光発電設備の整備工事です。2つ目は、ベトナム沿岸に19基の風力発電機を設置する洋上風力発電所の建設工事です。受注金額は、2件合わせて約150億円となります。

(参考)海外における近年の主な施工実績

スライドには、海外における近年の主な施工実績を掲載しています。参考までにご覧ください。

(6)再エネ関連工事

3つ目の重点事業は、「再エネ関連工事」です。2024年度の売上実績109億円に対し、2028年度には112億円の売上を計画しています。

現在、洋上風力発電については、三菱商事などの事業者が公募で獲得した3海域からコスト上昇などを理由に撤退を表明したため、他の海域を含めて事業の継続性が懸念されている状況です。

しかし、国が洋上風力発電を再生可能エネルギーの主たる柱に位置づけていることから、事業性を確保できるよう制度を見直した上で、早急に再公募を実施することとしています。

したがって、工事の着手は想定よりも遅れていますが、いずれ実施されることを見越して対応を進めるべく、再生可能エネルギー事業本部を立ち上げ、体制強化を図っています。

(6)再エネ関連工事(洋上風力発電の導入)

国は、東北エリアを洋上風力の適地として示しており、2040年までに大型発電所6基から9基分に相当する発電量を導入目標値に掲げています。

当社は、変電所の工事から電線ケーブルの敷設までを手掛ける総合設備エンジニアリング企業として、多岐にわたる工事施工はもちろん、送電ルートの確保についても立地点の土地勘があることや、地元業者との日常的なお付き合いも多いことから、円滑に工事を進めることが可能です。

これらは、地元企業としての当社の強みであると考えています。

(6)再エネ関連工事(基幹送電網整備)

当社の事業基盤である東北では、カーボンニュートラルを見据え、再生可能エネルギーの大量導入に必要となる送電網の増強に伴い、大規模な設備投資が計画されています。東北地方内では約6,500億円、東北から東京間では約2,000億円の投資が必要と試算されています。

当社としても、宮城丸森幹線新設工事や出羽幹線新設工事など、複数の工事を受注しています。この計画における直近の想定売上高は約100億円規模になるものと見込んでおり、今後もさらなる受注拡大を目指していきます。

(7)リニューアル工事

4つ目の重点事業は「リニューアル工事」です。2024年度の売上実績355億円に対し、2028年度には428億円の売上を計画しています。

本計画の達成に向けて、当社はリニューアル営業の特性を踏まえ、過去の工事実績をもとに、建物を時間軸で管理できるデータベースを整備しています。お客さまにとって適切な時期に適切な設備への提案を強化し、受注拡大を図っていきます。

また、全国的にバブル期前後に建てられたオフィスビルなどが改修期を迎えており、建て替えや改装の需要が増加している状況となっています。この機会を逃すことなく、リニューアル工事の受注拡大を図っていきます。

(8)DXの推進による収益拡大

4つの重点事業に加え、経営基盤強化に向けた施策にも注力しています。

まずは、DXに関する施策です。各種施策を展開しており、特にスライド右側の「業務プロセスの最適化を前提としたペーパーレス化」では、契約書や請求書のやり取りにかかる時間が短縮されたほか、印刷費や印紙代、郵送費のコスト削減にもつながっています。

デジタル技術の活用による現場業務の軽減や業務効率化といった継続的なDX推進により、競争力強化を図り、収益拡大につなげていきます。

(9)人財戦略

人的資本の充実に向けた施策です。当社の価値創造の源泉は人財であり、「2030ビジョン」および「中期経営計画」の達成に向け、多様な人財が活躍できる仕組み作りと、すべての社員が積極的に挑戦し続け、夢と誇りを持ち、安心して働くことができる環境整備が大切であると考えています。

この考えに基づき、当社では2024年10月に「ユアテック人財戦略」を策定しました。主要施策として、「人財確保」「人財育成」「労働環境」「エンゲージメント」の4つをテーマに設定し、各種施策の検討、展開を進めています。

(10)人財確保

人財確保に向けた具体的な取り組みです。奨学金代理返還支援制度の導入により、奨学金を返還する社員の生活を支援し、経済的、精神的負担の軽減を図っています。また、当社を退職した方を再度受け入れるジョブ・リターン制度の活用条件を大幅に緩和するなど、人財確保に向けた各種制度を整備しています。

今年度から、定年の年齢を60歳から65歳まで引き上げるとともに、65歳以降は最長70歳まで働くことを可能にする新たな再雇用制度を導入し、シニア層が活躍できる環境を整えました。

また、建設業における働き手不足の解消に向けて、2025年4月1日より施工体制強化委員会を新たに設置しました。各種施策の立案実施により、課題解決に向け積極的に取り組んでいきます。

なお、2026年度からは新たな人事制度や希望勤務地制度を導入します。これにより、社員がより適正な評価を受け、能動的なキャリア形成を実現できるよう、職場環境を整備する予定です。

(11)人財育成

人財育成に関する施策です。当社は、技術継承の拠点として、宮城県富谷市に300人規模の研修施設「人財育成センター」を構え、技術の高度化、専門化などに対応できる人財育成や能力開発に取り組んでいます。

加えて、2015年に「安全啓発センター」を開設し、作業現場で直面する危険を疑似体験できる設備を用いて、グループ会社や協力会社を含む全従業員に危険への感受性を高める教育を行っています。

若年層の育成による技術力の底上げや、お客さま満足度の向上、安全文化の定着を目指した教育を充実強化し、ユアテックブランドである安全、品質、信頼にさらなる磨きをかけていきます。

(12)サステナビリティへの取り組み

サステナビリティへの取り組みです。当社グループは、サステナビリティの推進を優先的に取り組むべき経営上の重要課題と位置づけています。

ユアテックグループサステナビリティ方針のもと、事業を通じて地域や社会が直面する課題の解決に努め、未来世代にわたるステークホルダーとともに、社会の持続的発展と中長期的な企業価値の向上を目指します。

なお、本年7月に当社グループにおける人権尊重の取り組みを一層推進するため、ユアテックグループ人権方針を制定しています。

(1)「ユアテック統合報告書2025」を発行

参考情報をご紹介します。当社は、2025年10月に「ユアテック統合報告書2025」を発行しました。今回の統合報告書では、私の社長就任における心境や抱負、中期経営計画の達成に向けた経営方針、今後の戦略などについてご説明しています。

また、数値目標を見直した中期経営計画の進捗をはじめ、財務戦略や人財戦略、各本部の取り組みを説明しています。当社ホームページに掲載していますので、ぜひご覧ください。

おわりに

当社は、「お客さまの心ゆたかな価値の創造に協力し、社会の発展に貢献します。」を企業理念とし、持続的成長と中長期的な企業価値の向上に努めていきます。

今後も当社への一層のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。私からの説明は以上です。ありがとうございました。

質疑応答:洋上風力発電関連工事の取り組み状況と今後の見通しについて

司会者:「洋上風力発電関連工事の取り組み状況と今後の見通しについて教えていただきたいです。中期経営計画では再エネ関連工事の売上高計画が下方修正されていますが、しばらく受注は見込めないのでしょうか?」というご質問です。

小林:洋上風力発電関連工事案件については、昨今の急激な資材費や建設コストの高騰により一部計画が見直しや先送りとなっており、これに伴い、今後数年は売上の減少が見込まれます。ただし、工事の着手は当初の想定より遅れる可能性があるものの、いずれは実施される見通しです。

そのため、着工時期が遅れている案件などの受注に向けた営業活動を引き続き強化し、受注の拡大に努めていきます。持続的な受注に対応できる施工体制の強化を図り、安定した施工力の確保に努めていきます。

質疑応答:人的資本への取り組みについて

司会者:「人的資本への取り組み状況を教えていただきたいです。また、人財確保や人財育成によって、今後も継続的に受注高、売上高を伸ばしていけるのでしょうか?」というご質問です。

小林:人的資本への取り組みとして、2025年7月に新たな職能分類制度および職能クラス制度の見直しを行い、自身のキャリアデザインをイメージしやすいよう体系化を進めています。

また、施工力の確保に向けた人財確保および人財育成に継続して取り組み、中期経営計画および「2030ビジョン」における数値目標の達成を目指していきます。

質疑応答:受注時採算性向上への対応について

司会者:「受注時採算については今後上げていける環境なのでしょうか?」というご質問です。

小林:建設業法や下請法の改正の影響により、業界全体での理解の進展や、取引先への丁寧な説明を通じて、資材費の高騰や人件費の上昇に対する価格転嫁が順調に進んでいる状況です。また、さらなる効率化施策により、今後も受注時の採算性向上に取り組んでいきます。

質疑応答:東北電力のデータセンター事業誘致による影響について

司会者:「東北電力がデータセンター事業に注力すると思います。その上で貴社に与える影響はどのように考えればよろしいでしょうか?」というご質問です。

小林:東北電力が推進するデータセンター誘致の構想は、当社にとっても大きな受注機会となる可能性があります。東北・新潟管内での工事においては、営業拠点の多さや豊富な工事経験により、優位性を持って工事を進めることが可能です。

また、すでに関東圏で受注しているデータセンター関連工事もあり、もし東北・新潟でデータセンター誘致が実現した場合には、そこで得たノウハウを活かし、受注および施工に取り組みたいと考えています。

質疑応答:2つの大型海外工事の採算性について

司会者:「直近受注した2つの大型の海外工事の採算性については、どのように考えればよろしいでしょうか?」というご質問です。

小林:個別案件の収益性についての詳細な説明は控えます。施工中の管理を十分に行い、竣工まで滞りなく工事が進捗するよう注力し、さらなる収益性の維持および向上に努めていきます。

質疑応答:通期業績予想の進捗と修正可否について

司会者:ここからは、IR取材などでよくいただくご質問とその回答をご紹介します。

「同業他社は上方修正、増配を公表していましたが、実施しないのでしょうか?」というご質問です。

小林:通期業績予想は、物価上昇分の価格転嫁による受注環境の好転や、人的投資に関する費用を総合的に見込んで作成しています。また、上期実績からも通期業績予想に対する進捗は堅調であると捉えています。

引き続き、人財確保や施工体制の維持および強化に努めるとともに、資材費の高騰や為替変動といった外部環境の変化を適切に見極めながら、通期業績予想の修正可否を判断していきます。

質疑応答:中期経営計画の目標設定の妥当性について

司会者:「中期経営計画の目標値見直しについて、2025年度の見通しが好調であるとのことですが、さらに高い数値目標を掲げることができたのではないでしょうか?」というご質問です。

小林:2025年度以降も、ある程度豊富な手持工事量で推移すると見込み、安定した利益の確保を目指していきます。

しかし、社員のエンゲージメント向上に資する人財投資を見込んでいることや、施工力確保に苦慮する状況が好転していないことから、業績の伸びが鈍化するリスクも考慮し、それらを総合的に勘案して数値目標を設定しました。

質疑応答:受注工事量に対する施工力のキャパシティについて

司会者:「受注工事量に対して施工力のキャパシティ不足は生じていないのでしょうか?」というご質問です。

小林:部門によっては施工体制のひっ迫や担当者不足という課題が見受けられるため、2025年4月に施工体制強化委員会を設置し、短期および中長期的な視点で施工体制の整備と現場力向上に向けた取り組みの検討を進めています。

具体的には、協力会社への支援強化や直営体制、設備系グループ会社の強化に加え、全社的な人員配置の最適化、AI活用、DX推進、および最新技術の開発などをテーマとしています。

今後も継続的な受注に対応できる施工体制の強化を図り、安定的な施工力の確保に努めていきます。

質疑応答:主な事業におけるリスクとその対処方法について

司会者:「主な事業のリスクとしてはどのようなものを想定しているのでしょうか? リスクとそれに対する対処を具体的に教えてください」というご質問です。

小林:工事原価の高騰や洋上風力関連工事の一部計画先送りに加え、東北・新潟における人口減少や施工人員不足が挙げられます。

現在、手持工事が豊富な状況を踏まえると、設備投資の縮小や人口減少の影響が直ちに当社事業に及ぶことはないと想定しています。しかし、長期的な視点で強靭な事業基盤を整備していきたいと考えています。

施工人員の不足については、経験者採用を含めた採用活動の強化、労働環境の整備、従業員エンゲージメント向上施策に取り組むことで対処していきます。

質疑応答:東北エリアにおけるデータセンターの建設予定について

司会者:「東北エリアにおいてデータセンターの建設は予定されていないのでしょうか?」というご質問です。

小林:東北エリアにおけるデータセンターの建設については、直近では予定されていません。ただし、東北電力が推進するデータセンター誘致構想などがあるため、東北エリアにデータセンターが誘致されることになれば、関東圏で培ったノウハウを活かし、受注獲得に向けて注力していきます。

質疑応答:「2030ビジョン」の見直しを行わない背景について

司会者:「『2030ビジョン』の見直しは行わなかったとのことですが、収益性は向上しないということでしょうか?」というご質問です。

小林:「2030ビジョン」は目指すべき会社像として、基本方針を踏まえた長期的に掲げる目標であり、足元の物価上昇や適正な価格転嫁を考慮して見直しを図る中期経営計画数値目標とは位置づけが異なるものと考えています。

今回は、中期経営計画の策定時点で見込めなかった価格転嫁や受注環境の好転、工事採算性の向上を反映するため、中期経営計画の数値目標の見直しを行いましたが、「2030ビジョン」で掲げる数値目標の見直しは行わないこととしました。

しかし、収益性やROEを可能な限り向上させていくという方針に変わりはありません。

質疑応答:配当性向の見直しについて

司会者:「配当性向の見直しは考えているのでしょうか?」というご質問です。

小林:連結配当性向40パーセント以上は、成長投資とのバランスを考慮しても適切な水準と考えています。今後も資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、継続的に進捗状況の分析を行い、その中で適切な水準についても検討していきます。

質疑応答:資金調達方法について

司会者:「2025年10月29日に開示された『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてのアップデート』で示されたキャピタル・アロケーションについて、資金調達を見込んでいるようですが、調達の手法は何でしょうか?」というご質問です。

小林:社債や金融機関からの借り入れなどが想定されます。現時点で具体的な手法は固まっていませんが、調達が必要となった際には財務状況や金融市場の動向等を考慮して検討することとなります。

アップデート後の資料に記載の550億円の資金調達は、あくまで目安となる試算額です。基本的には営業キャッシュ・フローをもとに成長投資や株主還元を実施する想定であり、不足分は資金調達で補う方針です。

質疑応答:為替差損を計上する理由について

司会者:「前年同期は為替差益を計上していたのに対し、当第2四半期は為替差損を計上している理由は何でしょうか?」というご質問です。

小林:円対USドルと円対ベトナムドンは、為替レートの動きが同様となる傾向があります。ベトナムの連結子会社については、円安ドン高となると連結決算上の円換算額が増加し、売上高、利益ともに増加します。一方で、円高ドン安に進むと売上高、利益ともに減少します。

第2四半期は円高ドン安が進行したため、借入金額が増加し為替差損を計上しました。当社はベトナムの連結子会社へ主に円建てで運転資金を貸し付けており、前年同期は円安ドン高が進行したため、子会社側の借入金額が減少し為替差益を計上しました。

質疑応答:ベトナムとエジプトにおける再生可能エネルギー事業の業績反映見込みについて

司会者:「先日公表された海外における再生可能エネルギー関連事業の大型案件2件の受注について、業績に反映されるのはいつ頃でしょうか?」というご質問です。

小林:ベトナムにおける「ソクチャン7洋上風力発電所2期工事」については、主に工事が本格化する2026年度に入ってから業績に反映される見込みです。

また、エジプトにおける「ハルガダ太陽光発電設備整備事業」については、プラントの工事が2025年11月から2027年3月に予定されています。プラント完成後に業績への反映を見込んでいます。

質疑応答:投資家が認識する資本コストの根拠について

司会者:「先般公表している『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について』で示された、投資家が算出した資本コストの根拠は何でしょうか?」というご質問です。

小林:当社をガバレッジしているアナリストの方が作成したレポートの内容などを参考にしています。

当社では、CAPMベースで株主資本コストを5パーセント台と算定しています。ROE目標の設定に当たっては、当社算出の資本コストに加え、投資家が想定する期待リターンも考慮して設定しています。

質疑応答:ベトナム連結子会社の減収理由について

司会者:「子会社の売上高について前年同期と比較して減少しているのはなぜでしょうか?」というご質問です。

小林:ベトナム連結子会社において、大型工事案件の受注時期繰延により、工事進捗が見直されたことなどから減収となりました。

質疑応答:2026年度から2028年度までの業績見通しについて

司会者:「2026年度から2028年度までの業績について具体的にどのように見通しているのでしょうか?」というご質問です。

小林:2026年度以降については、労務費や資材費の高騰のほか、洋上風力関連工事の一部計画の見直しや先送りなどにより、業績の伸びが鈍化するリスクも含んでいます。しかし、データセンターの建設を含む民間設備投資は堅調に推移すると見込んでいます。

また、高経年化設備対策工事や基幹送電網整備工事の受注も見込んでおり、手持工事量は安定して推移すると見込んでいます。

質疑応答:中期経営計画の数値目標見直しの可能性について

司会者:「中期経営計画の数値目標について、目標値を前倒しで達成できた場合、再度目標値の見直しを行うのでしょうか?」というご質問です。

小林:今後、想定を超える経営環境の変化などにより数値目標の一部を達成できない場合があるかもしれませんが、数値目標のターゲット年度は2028年度であり、同年度にすべての数値目標を達成していることが重要と考えています。

仮に、一部の項目が数値目標を超えた場合は、その要因を分析し、再度数値目標の見直しが必要かどうかを検討していきます。

質疑応答:物価上昇に伴う価格転嫁について

司会者:「物価上昇に伴う価格転嫁についてはどうでしょうか?」というご質問です。

小林:建設業法や下請法の改正の影響により、業界全体での理解が進展し、取引先への丁寧な説明によって価格転嫁が順調に進んでいる状況です。

今後もお客さまに対して丁寧な説明を行い、ご理解いただけるよう誠実に対応していきます。

質疑応答:中期経営計画達成に向けた収益性向上の施策について

司会者:「中期経営計画の数値目標について、具体的にどのように収益性の向上に取り組むのでしょうか?」というご質問です。

小林:中期経営計画は、「2030ビジョン」の実現に向けた基盤作りのフェーズに位置づけられると考えています。

2025年10月29日にアップデートした「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」で示したキャピタル・アロケーションのとおり、事業投資、設備投資、人財投資、IT・DX投資といった成長投資に総額約800億円を投入し、経営基盤の強化に取り組むことで収益性の底上げを図っていきます。

質疑応答:今年度の通期業績予想を修正する可能性について

司会者:「過去に第3四半期決算の発表時に業績見通しの上方修正を行っていますが、今回も可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。

小林:第2四半期の実績は、通期業績予想に対して堅調に進捗しています。資材費の高騰や為替変動による影響など、外部環境の変化を適切に見極めながら、通期業績予想の修正が必要かどうかを判断していきます。

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