市場環境

大成俊文氏(以下、大成):ダイコク電機株式会社、代表取締役専務の大成です。本日はお忙しい中、当社決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。2025年3月期の決算についてご説明します。

まずは、市場環境についてご説明します。警察庁の集計によると、パチンコ業界では小型店舗の閉店が多く、2024年12月末時点のパチンコホール店舗数は6,706店舗で、前年比94.7パーセントと減少しました。1店舗当たりの平均設置台数は496台、前年比プラス12台と大幅に増加し、引き続き店舗の大型化は進んでいます。

パチスロ全体の設置台数は8年ぶりに増加しており、パチンコからパチスロへの移行がトレンドとなっています。2022年11月から導入されたスマートパチスロがファンの支持を得て、パチスロ機全体の設置割合は52.1パーセントと順調に普及が進んでいます。

販売台数においても、2024年4月から2025年3月のパチスロ販売台数約68万台のうち、スマートパチスロは86.5パーセントの約59万台を占めており、今後もこの流れは続いていくと思われます。

一方、2023年4月から導入されたスマートパチンコが2024年8月より普及が進み、設置割合は14.1パーセントとなっています。パチンコ機全体の販売台数約85万台のうち、スマートパチンコは31.4パーセントの約26万6,000台を占めており、こちらも今後割合が増えると思われます。

遊技機の稼動状況は、前年度比102パーセントと好調です。特にスマートパチンコの稼動は、従来機と比較して121.2パーセントとなっています。スマートパチスロの稼動は、ほかのAT系機種と比較し127パーセントと、スマート遊技機のほうが好調な稼動となっています。

2025年6月にはスマートパチスロの「ボーナストリガー」、7月よりスマートパチンコの「ラッキートリガー3.0プラス」といった新しい遊技性を持った機種を導入予定で、期待も高まっています。

連結損益計算書

2025年3月期の実績について詳細をご説明します。まずは連結損益計算書です。通期の連結業績では4期連続の増収を達成し、営業利益および経常利益も増加しました。

売上は前年同期比6.6パーセント増の574億1,500万円、営業利益は前年同期比1.8パーセント増の122億1,200万円、経常利益は前年同期比1.1パーセント増の122億3,100万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比8.7パーセント減の77億2,700万円となっています。

売上高 増減要因

売上高の増減要因についてご説明します。情報システム事業では、パチンコホール向け製品等の売上高が、カードユニット「VEGASIA」の販売が引き続き好調に推移したことや、新紙幣流通に伴うカードユニットの改刷対応、情報公開端末の新製品「REVOLA II」と「DUALINA」の販売台数が好調に推移したことにより、前年同期を上回りました。

サービスは、主要サービスが堅調に推移し、スマート遊技機登場による市場変化への対応に関連した「MIRAIGATEサービス」の加盟店店舗数が増加したこともあり、前年同期を上回りました。結果、情報システム事業の売上高は前年同期比5.5パーセント増の521億2,600万円と、過去最高売上の増収となりました。

売上高 増減要因

アミューズメント事業は、パチンコ向けハードビジネスの終息に向け、表示ユニットなどの販売が減少しましたが、パチンコ向けコンテンツ・ソフトの受注は増加しました。子会社の元気株式会社のゲーム事業における『首都高バトル』の、新タイトルリリースによる販売好調も寄与し、部品・その他の売上は上がりました。

結果、アミューズメント事業の売上高は、前年同期比1.1パーセント減の44億5,100万円となりました。

営業利益 増減要因

営業利益の増減要因についてご説明します。情報システム事業は、カードユニット「VEGASIA」の販売および新紙幣流通に伴う改刷対応の需要増がありましたが、人件費など販管費の増加により、前年同期比1.4パーセント減の144億600万円となりました。

アミューズメント事業は、事業の見直しにより利益改善し、前年同期比7億4,600万円増の3億5,600万円となりました。

連結貸借対照表

連結貸借対照表についてご説明します。総資産は業績が好調に推移したこともあり、棚卸資産が減少しています。当社は企業価値の向上に向けた事業領域の拡大を目指しており、子会社を増やしたことに伴うのれんの計上、第三者割当増資引受に伴う関係会社株式の計上、「箱根ガラスの森美術館」を運営する固定資産の取得などにより、固定資産が増加しています。

こちらの投資を実行したことなどにより、現金および預金は減少しています。結果、前連結会計年度に比べ20億1,500万円減の572億6,600万円となりました。負債は、第4四半期の営業債務計上額が前期に比べて減少したことなどにより、前連結会計年度末に比べて65億8,200万円減の119億7,800万円となりました。

純資産は、従業員向け株式交付信託(RS信託)による自己株式の増加や、配当金の支払いなどがありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、前連結会計年度末に比べ、45億6,700万円増の452億8,700万円となりました。純資産が増加し総資産が減少したことにより、自己資本比率は79.1パーセントとなりました。

キャッシュフロー計算書

キャッシュ・フロー計算書についてご説明します。営業キャッシュ・フローは、76億6,600万円のプラスとなりました。主な要因として、支出として仕入債務の減少がありましたが、収入として税金等調整前当期純利益の増加や、売上債権や棚卸資産が減少したことが挙げられます。

投資キャッシュ・フローは、「箱根ガラスの森美術館」の土地や建物、美術品などの固定資産の取得や、株式会社七葉の株式の取得による支出があったことにより、マイナス78億4,500万円となっています。

財務キャッシュ・フローは、増配を行った配当金の支払い等により、マイナス32億9,500万円となっています。現金および現金同等物は169億6,000万円となり、34億7,400万円の減少となりました。

2030年ビジョン

栢森雅勝氏(以下、栢森):代表取締役社長の栢森です。新たに策定した2030年ビジョンおよび、2025年度を初年度とする中期経営計画についてご説明します。中期経営計画策定にあたり、2030年をターゲットとしたゴールを設定し、向かうべき方向性を定めました。そちらが「Make CX Amazing〜未知の顧客体験を世界に〜」です。

現在、コンピューター技術が大きく変わっていく状況にあります。クラウドやビッグデータ、AIなどはインターネットを通じてすぐに誰にでも実感、利用できる変化で、デジタルトランスフォーメーションと呼ばれています。

当社はこれまでパチンコ業界でコンピューターに関わって、さまざまな変革を進めてきました。それらの実績を踏まえ、デジタルトランスフォーメーションが価値を発揮する領域を顧客体験にあると考え、新しい顧客体験を創造することで新たな市場を創出していきます。

そのため当社は、2つのチャレンジを推し進めます。1つ目はデジタルトランスフォーメーションにより、新たな遊びの未来を創造する挑戦です。デジタル技術とデータを駆使し、これまでの体験を塗り替える新しい顧客体験を作り出します。

また、最先端技術を融合させたスマートエンターテインメントを実現し、個々の嗜好に合わせた没入感ある次世代のパチンコ体験を具現化します。

2つ目は、他業種への進出と事業領域拡大への挑戦です。既存の枠にとらわれない自由な発想で新たな価値を提供する、事業領域への進出を推し進めます。また、AIやVR、AR、映像、音響、インタラクティブ技術を活用し、フードエンターテインメント事業、観光事業など、新たなエンターテインメント体験を創造し提供します。

中期経営計画基本方針

中期経営計画の1つ目の柱である、3年後の目指す姿についてご説明します。2025年度を初年度とする中期経営計画は、2030年ビジョンに向けた第1フェーズと位置付け、成長に向けた事業基盤の拡大と積極的な成長投資を通じて、企業価値の持続的向上を実現します。

情報システム事業においては、AIやビッグデータを活用した業界のDXリーダーとなり、新しい技術を単に既存の製品に適用するのではなく、新しい技術で従来の機器やサービスでは実現できなかったシームレスな価値を提供し、店舗の運営プロセスを変革していきます。

アミューズメント事業は、ファンに支持される自社パチスロ機のリリースによる知名度、市場シェアの拡大を目指します。新規事業は、新たな事業領域への挑戦と複数の成長の柱の確立を目指します。ここで今までの我々の経験やノウハウなどを活かすことができると考えています。

中期経営計画基本方針

中期経営計画の2つ目の柱である、経営基盤強化についてご説明します。人材戦略では、挑戦し続ける力、イノベーション力により、元に戻ることができない変化を作り出すことができる人材の育成と採用を実施していきます。

サステナビリティへの取り組みでは、AIを活用した依存症リスクへの対応など、ステークホルダーのみなさまとともに持続可能な社会の実現と、グループの成長を目指していきます。

中期経営計画基本方針

中期経営計画の3つ目の柱である、財務・資本戦略についてご説明します。キャッシュアロケーションにおいては、既存事業からのキャッシュ・フローや余剰資金を、新規ビジネスの獲得に向けたM&A投資に活用するなど、事業基盤の拡大のために投資を行いつつ、株主還元により資本効率の改善を図っていきます。

資本コストを意識した経営については、事業ポートフォリオ改革により成長市場へ経営資源を投入しつつ、既存事業では収益力を強化し資本効率を向上します。また、下限配当金の設定やIR活動の強化により、エクイティスプレッドをプラスに転換し、拡大していきます。

2030年ビジョン

中期経営計画における積極的な成長投資を通じた企業価値の持続的向上の先に目指す、2030年の事業ポートフォリオについてご説明します。2030年には、収益力の高い既存事業から創出されたキャッシュを事業補完性が見込める新規事業やM&Aに活用し、持続的に収益拡大することで事業ポートフォリオを改革し、新規事業のウェイトを25パーセントまで高めていきます。

引き続き事業環境や収益の状況、配当性向などを総合的に勘案し安定配当を行うことを基本方針とし、2025年度から2027年度は年間80円の下限配当金を設定します。

2026年3月期 連結業績予想

中期経営計画初年度となる2026年3月期の業績予想です。売上高は前年同期比23.4パーセント減の440億円、営業利益は前年同期比56.6パーセント減の53億円、経常利益は前年同期比56.7パーセント減の53億円、当期純利益は前年同期比54.7パーセント減の35億円となっています。

新紙幣対応の終了に加え、スマートパチスロの導入が一段落したことにより、業績は通常の水準に戻ると見込んでいます。なお、研究開発費、減価償却費、設備投資は、引き続き高水準を維持します。

2026年3月期 連結業績予想

紙幣改刷対応およびスマート遊技機の急速な導入による一時的な収益増加、いわゆる特需はいったん落ち着き、本中期経営計画の開始に伴い、事業基盤の拡大と先行投資のフェーズに移ります。

2026年3月期 セグメント別業績予想

セグメント別の業績予想です。情報システム事業については、特需の終了により、業績は通常の水準に戻ると見込んでいます。アミューズメント事業は、当社初となるスマートパチスロの市場投入により増収となるものの、次機種以降の開発費により減益を見込んでいます。

新製品・新サービス開発と今後の展望

製品およびサービスの今後の展望についてご説明します。情報システム事業の新製品として、「BiGMO XCEL(ビグモエクセル)」をリリースしました。発売から12年にわたりご好評をいただいている「BiGMO PREMIUM」の後継機として、業界最大級の21.5インチの縦型液晶を搭載したホール情報端末です。

また、精算機とPOSが一体となったコンパクト設計のセルフ端末「TJ-01」もリリースしました。ホール・スタッフ・ファンの三方にとって「やさしい」操作性と運用性を提供します。

また、新サービスとして、ホールの集客とファンの要望を支援するAI活用型マーケティング支援サービス「サイトセブンFAN+(サイトセブンファンタス)」をリリースします。

スマートパチスロは、2025年5月にリリースしたDAXEL『L ようこそ実力至上主義の教室へ DE』に続く機種を開発中です。

ゲーム事業では、ご好評をいただいているGenki『首都高バトル』の正式リリース版が、2025年9月にリリースを予定しています。

配当

配当です。当社は安定配当をベースに、業績に応じた利益還元を実施しています。2025年3月期については、中間配当は40円、期末配当は80円とし、年間配当は過去最高の120円としました。

2026年3月期は、業績に応じた利益還元を実施するとともに、年間80円の下限配当金を設定しています。また当社では、株主のみなさまに中長期にわたり保有していただくため、保有株式数および継続保有期間に応じて、1,000円から5,000円の「QUOカード」を贈呈する株主優待制度を実施しています。

サステナビリティ(SDGs)

サステナビリティ(SDGs)への取り組みについてご説明します。当社は、東証プライム企業の一員として、コーポレートガバナンスコードが定めるサステナビリティに関して、基本方針やマテリアリティを定め、具体的な取り組みを推進しています。

特に経営理念にある「イノベーションによる新しい価値づくり」に沿った「小学生向けプログラミング教室」は、ステークホルダーのみなさまに大変ご好評をいただいています。

今後は、「会社ゴトから自分ゴトへ」を合言葉に、社員一人ひとりがサステナビリティやSDGsを「自分ゴト」として捉えることができるよう取り組んでいきます。

以上、私からの発表となります。ご清聴、誠にありがとうございました。

質疑応答:2026年3月期業績予想について

司会者:「2026年3月期の業績予想ですが、改刷需要がないにしても売上等が低く見えます。他に原因はありますか?」というご質問です。

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