本資料の記載内容
吉村寛氏(以下、吉村):株式会社ナック代表取締役社長の吉村です。当社の会社説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。本日は、会社説明及び先日発表した長期ビジョンと中期経営計画について、スライドの目次に沿ってご説明します。よろしくお願いします。
ナックグループ概要
吉村:はじめに、会社概要についてご説明します。当社は1971年に創業し、今年で創業54年目を迎えます。本社は東京都新宿区の新宿センタービルに構えています。
1999年、東京証券取引所の市場第一部に上場し、2022年の市場再編によりプライム市場へ移行しました。株価は6月11日の終値で550円となっています。
2025年3月末時点の連結子会社数は15社で、グループ会社を含み、拠点数は169拠点です。北海道から九州にかけて、全国に営業所を設けています。
沿革
吉村:当社は1971年に、株式会社ダスキンの創業者である鈴木清一氏に感銘を受けた西山由之が、東京都町田市でダスキンフランチャイズの販売ディーラーとして加盟したのが始まりです。
多摩ニュータウンを抱える東京都西南地区から始まり、神奈川県湾岸地区、さらに千葉・埼玉と、次々に商圏を広げてきました。創業から10年あまりで、当時のダスキンフランチャイズチェーン約2,500店中、第1位の売上を達成しています。
現在は、北海道、中部地方、関西地方、九州にも営業拠点を有し、40年にわたり売上・顧客件数で日本一を継続中です。ダスキン事業は、創業から変わらずナックの中枢を担う事業となっています。
当社には、創業のダスキン事業を中枢とするレンタル事業をはじめ、5つの事業セグメントがあります。商品や市場はさまざまですが、いずれも「暮らし」「住まい」を軸に展開してきました。
関本圭吾氏(以下、関本):沿革について、質問が1つあります。レンタル事業などがある中で、建築コンサルティング事業と住宅事業は、先ほどの「住まい」と「暮らし」でいえば、毛色が異なるように思います。この経緯について、お聞かせください。
吉村:現在展開している5つの事業を開始したきっかけをご説明すると、まず創業のダスキン事業において、お客さまのお宅を訪問するうちに、清掃用品の貸し出し事業だけでなく、ハウスクリーニング事業なども手掛けるようになりました。そして、お客さまの要望で住宅営繕を受けたりしているうちに、住宅にも関わるようになりました。
実は、住宅業界はコスト管理が比較的弱いのですが、我々ダスキンのように小さな商売をしていると、コスト管理が非常に厳しいため、そのような強みを活かし、建築業界に対してコンサルティング事業を開始しました。最終的には新築販売事業に行き着いたという流れで、住まいのクリンネスからスタートし、住まい全般の事業にまで発展した経緯があります。
他のビジネスについても少しご説明すると、クリクラ事業ではフランチャイズ本部を運営していますが、新たなレンタルビジネスの1つとして、暮らしに必要不可欠な「水」に着目し、2002年に「クリクラ」ブランドの宅配水事業を開始しています。
さらに、これも毛色が異なりますが、2013年にはインターネットの拡大という社会変化に対応するため、通販事業をスタートしました。化粧品、健康食品、生活雑貨など、我々の「ダスキン」や「クリクラ」のお客さまにも提供できるような商品をチョイスしています。
現在は、新たな取り組みとして5つの事業セグメントに属さない事業も推進しています。こちらは後ほどご説明します。
関本:「暮らし」と「住まい」に関わるところで展開してきたということですね。
創業
吉村:当社の企業理念は、「企業は損得に非ず、常に善の道を歩み、広く社会に貢献するために発展成長を第一義とすべし」です。
創業者である西山が会長職になった2005年からは、西山とともにナックを成長させてきた寺岡豊彦が10年間社長を務め、2015年からは3代目として、私、吉村が社長を務めています。
ナックの強み
吉村:ナックグループの2つの大きな強みをご説明します。1つ目は、「安定した顧客基盤」です。現在、クリクラ事業で約43万件、ダスキン事業をはじめとするレンタル事業で約32万件、通信販売(美容・健康事業)で約10万件、グループで約90万件の、毎月コンタクトを取る定期顧客を有しています。また、定期顧客以外にも、スポットで購入するOB顧客などを合わせると、年間で約130万件の顧客基盤に対してアプローチを行っています。リピート商品のみならず、さまざまなクロスセル商品の販売を手掛けています。
2つ目は、「市場の変化を一早く察知し、顧客の求めるサービスを一早く提供」できることです。これは、お客さま一人ひとりと直接的なコミュニケーションを取る、ナックの軸である「Face to Faceの営業」によるダイレクトマーケティングにおいて、長年培ってきたものです。納品・注文・問い合わせなどの過程において、お客さまと直に接することで、深い関係性や信頼を築いています。生の声をスピーディにキャッチし、新たなサービスや商品につなげることが可能となっています。
おかげさまで、当社の抱える定期顧客のボリュームは、さまざまな業界での認知度も高く、多くのメーカーやサービス産業のみなさまから商品や企画が持ち込まれています。そのため、商品開発の必要がなく、旬のタイミングでトレンド商品をスピーディに販売し、売上に結びつけることができています。例えば、「ハズキルーペ」や「ミラブル」、「リファ」の商品などが非常に好評です。さらに、最近話題になっているリカバリーウェアの「Bakune (バクネ)」とも大きな商いをしています。
季節商材としては、年末に「Oisix(オイシックス)」とおせちのコラボ企画を展開するなど、さまざまな企業との取引が売上につながっています。自社配送により、ラストワンマイルを押さえていることで、有力企業とのアライアンスを可能にしています。
事業一覧
吉村:次に、当社グループの事業セグメントについて、主力事業であるクリクラ事業とレンタル事業を中心にご説明します。
スライドの円グラフのとおり、クリクラ事業とレンタル事業で売上の50パーセント以上、営業利益の70パーセント以上を占めています。
クリクラ事業の紹介
吉村:はじめに、クリクラ事業についてご説明します。
クリクラについて
吉村:当社は2002年に、三井物産系のアクアクララ・ジャパン社のフランチャイズ加盟店として宅配水ビジネスをスタートさせました。しかし、2004年にアクアクララ・ジャパン社が経営破綻したため、自社ブランドの「クリクラ」を立ち上げました。
現在、販売網として全国29店舗の直営店、フランチャイズ本部として全国約400社の加盟店を抱え、フランチャイズビジネスを展開しています。事業開始から20年以上継続している、老舗のウォーターサーバーブランドです。
クリクラについて
吉村:埼玉県本庄市には、1万坪ほどの敷地に総額60億円を投じたフラッグシップとなるプラントを構えています。全国には43の製造プラントと、11のメンテナンスセンターを保有しています。
また、2011年には、東京都町田市にR&Dセンタークリクラ中央研究所を建設しました。最新の設備と専門の研究員のもと、検査や分析を自社で実施しており、業界では最も進んでいると思っています。
クリクラの強み
吉村:現在、ウォーターサーバー業界では、宅配業者が自宅に配達し、ボトル自体はお客さまが廃棄する使い捨てのワンウェイ方式が多く、大手企業の参入も見られます。さらに近年は、機械に水を注いで浄水し、温水と冷水が蛇口から出てくるボトル不要の浄水型ウォーターサーバーが急拡大しています。ウォーターサーバーの種類はさまざまで、レッドオーシャンと化しています。
では、当社の「クリクラ」は、どのような特徴や強みを持って差別化を図っているのかというと、念頭に置いているのは高度な「安全性」の追求です。「クリクラ」の水は、検査基準が少なく品質が不安定な天然水ではなく、国が安全管理を行っている水道水を原水としています。以前は天然水を取り扱っていましたが、厳しい水質安全基準のもと、取り扱いを辞めてきたという経緯があります。
この水道水を純水になるまでろ過し、一般的なミネラルウォーターの品質基準に、さらに10項目の自主基準を設け、安全性を確保しています。そこに良質な天然のミネラルを、日本人の好みに合うように配合し、おいしくて、品質基準と安定性の高い商品を製造しています。なお、昨年よりニュースで取り上げられている有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)については、水道水を原水としているため、安全性や安定性を担保しています。
また、「クリクラ」では年に一度、必ずサーバー交換を行っています。これも他社が行っていない、唯一無二の差別化要素の1つです。「クリクラ」では、サーバーを分解して内部の汚れをフル洗浄し、メンテナンス済みのサーバーと1年間使用したサーバーの機械の交換を行うことで、安心安全の追求を徹底しています。
クリクラの安心安全への取り組み
吉村:環境衛生の専門家である大学教授を迎え、メディアに向けて説明会を実施するなど、ウォーターサーバーの適切な衛生管理方法についても、さまざまな訴求を行っています。
クリクラの強み
吉村:先ほどお伝えしたとおり、「クリクラ」は全国43ヶ所に製造工場を構えており、地産地消を推進し、長距離輸送等によるCO2排出の抑制を目指しています。製造工場を全国に設けることで、一時騒がれていた「物流の2024年問題」についても、深刻な問題には発展しませんでした。
また地域に工場を設置し、災害時は、備蓄水のインフラとして全国の自治体と連携する体制を整えています。
クリクラの強み
吉村:さらに当社は、少子化という、もう1つの大きな社会問題に対し、乳児に対する最高レベルの安全性を武器にしています。全国の産院や日本産科婦人科学会の「はじめての水プロジェクト」において、約600の産院に「クリクラ」を提供し、ママに愛されるウォーターサーバーとして数々の賞を受賞しています。
その他にも、多様なニーズに応えるため、2021年には炭酸水も飲めるマルチサーバー「クリクラShuwa(シュワ)」を、2022年には、自宅の水道水を給水して使用するサブスク型の浄水型ウォーターサーバー「feel free(フィールフリー)」を発売するなど、業界に先駆けて、新たなターゲット層の開拓や、市場のニーズに合わせた商品開発を実施し、事業の拡大を図っています。
関本:クリクラ事業について、1点お聞きします。ビジネスモデルとして、水の事業はいくつかあると思いますが、御社は水の販売から利益を得ているという理解でよいでしょうか?
吉村:宅配水の「クリクラ」では、定期訪問で顧客から注文を受けて販売するボトルの料金が収益源となっています。さらに、最近顧客が増加している浄水型ウォーターサーバー「feel free」は、定額のサブスクモデルのため、サーバーのレンタル料金が収益源となります。
また、フランチャイズ加盟店に対しては、ボトルやサーバー、その他商品の販売代金が基本的な収益源となっています。
関本:利益構造でいえば、どのようなものが事業セグメントのコストになるのですか?
吉村:当社は直営店も全国展開しています。そのため、近年のコスト上昇の要因としては、人件費や車両費が大きいです。また、加盟店運営においては、商品を開発して販売しているため、部資材や原材料費などが挙げられます。
レンタル事業の紹介
吉村:レンタル事業についてご説明します。
レンタル事業の紹介
吉村:レンタル事業は、創業のダスキン事業と、飲食店向けに害虫駆除を手掛けるオリジナル商品のウィズ事業、総合ビルメンテナンスや賃貸物件の原状回復工事を行う子会社で構成されています。
当社のダスキン事業では、「ダスキン」のフランチャイズディーラーとして、家庭や企業に対してモップやマットなどのクリンネス商品をレンタル・販売する「ダストコントロールサービス」、家事代行やプロのお掃除、庭木の手入れなどを提供する「ケアサービス」があります。さらに、最近では介護用品や福祉用品をレンタル・販売する「ヘルスレントサービス」と、3つのサービスを提供しています。
ウィズ事業は主に飲食店に対して、自動でゴキブリなどの害虫を駆除する装置をレンタル・販売しています。こちらは約300社の販売代理店を抱え、ともに全国展開しているビジネスです。
(株)ダスキンとの資本業務提携契約
吉村:2018年8月には、フランチャイズ本部であるダスキン社と、50億円の成長投資を実施する資本業務提携契約を締結し、さまざまな事業を展開しています。この6年間で120以上のサービス拠点を増設しており、現在は投資回収フェーズに入っています。前期は、年間30億円以上の売上増加につなげています。
また、前期より、ダスキン社との新たな展開として、エアコンや給湯器などの住設機器販売のテストマーケティングを進めています。
関本:レンタル事業についてお聞きします。基本的には、ダスキン製品のレンタルなのでしょうか? また、収益や費用といった、ビジネスモデルについても教えてください。
吉村:事業内容について、主にダスキンのビジネスを展開していますが、一番大きいのはダスキン社から仕入れた商品のレンタルを行う、クリーンサービス事業です。
「ケアサービス」は、高齢化社会の進行に伴って生じる、家にまつわるさまざまなお困りごとに対応する生活関連サービスで、家事代行やハウスクリーニング、庭木の手入れなどです。コストについては、クリクラ事業と同様、労働集約型のビジネスのため、人件費や配送に伴う車両の関連費用が主なコストとなっており、今後、課題を解消していく中でも重要な位置を占めています。
「ダスキン」も「クリクラ」も、近年のコスト増にはどうしても対応しきれない部分がありますので、2022年には値上げを実施しています。
関本:値上を着実に進められるところが、付加価値の高さだと思います。
建築コンサルティング事業の紹介
吉村:建築コンサルティング事業についてご説明します。
建築コンサルティング事業の紹介
吉村:建築コンサルティング事業は、中小零細工務店の支援を行うコンサルティング部門と、住宅フランチャイズを展開するナックハウスパートナーで構成されています。コンサルティング部門では、中小零細工務店に対して営業戦略・商品開発・IT化などのノウハウを提供しています。1992年に事業を設立し、建築業者向けコンサルとしては最大手であり、現在では全国約7,000社の工務店との会員ネットワークを有しています。
近年は、資材高騰、職人不足、働き方改革への対応、建築基準法の改正など、複合的な要因により建築不況が発生しています。その課題解決を目的としたソリューションビジネスを展開しています。また、AI・DXを積極的に活用した商品開発や顧客サポート、会員工務店組織による建築部資材の共同購入などにも力を入れており、今後も商品アイテムと販売チャネルの多様化を図っていきます。
住宅事業の紹介
吉村:住宅事業についてご説明します。
住宅事業の紹介
吉村:当社の住宅事業では、3つのグループ会社を展開しています。ジェイウッド、秀和住研は、北海道から東北エリアで注文住宅を販売しています。ケイディアイは、主に東京23区エリアで分譲住宅や不動産の販売を展開しています。
美容・健康事業の紹介
吉村:美容・健康事業についてご説明します。
美容・健康事業の紹介
吉村:美容・健康事業は、インターネット社会を迎え、新たな販売チャネルへのチャレンジを目的として、2013年に化粧品の通販を行うJIMOS社の株式を取得し、通信販売業界に参入しました。その後、通販のみならず、レンタルビジネスの主要顧客である主婦層に対し、大きなシナジーが見込まれると考え、化粧品やサプリメントといった美容・健康領域への参入を進めています。具体的には、サプリメント販売を行うベルエアー社、化粧品の受託製造を行うトレミー社なども買収しました。
JIMOS社の「MACCHIA LABEL(マキアレイベル)」で販売している「薬用クリアエステヴェール」は、20年連続で美容液ファンデーション通販の日本一を獲得しているベストセラー商品です。もともと「薬用クリアエステヴェール」の製造委託先であったトレミー社を買収し、自社製造とすることで、さらなるコスト優位性を生み出しています。また、昨年に引き続き、株主優待品として決定した「薬用マイクロバブルローション」が、「薬用クリアエステヴェール」に次ぐヒット商品として売上を伸ばし、第2の柱に成長しています。
以上が事業セグメントについての説明になります。
当社は、「クリクラ」や「ダスキン」、JIMOS社が販売する「薬用クリアエステヴェール」など、各ブランドや商品はある程度認知されているのですが、社名の「ナック」と紐づいていないのが課題です。そのため、IR説明会の開催などで、認知拡大に向けた取り組みを行っている状況です。
関本:事業の全体感についてです。5つの事業のご説明がありましたが、事業ポートフォリオとして、各事業をどのような位置づけ(安定事業や成長事業など)で考えているのでしょうか?
吉村:定期顧客を抱え、ストックビジネスであるレンタル事業、クリクラ事業は安定事業であり、現在の当社の主力事業でもあります。特にクリクラ事業は自社ブランドとして、約400社の加盟店とともに全国展開しています。どちらの事業も以前と比較すると市場環境は厳しくなっていますが、新規出店やグループ間シナジー、ラストワンマイルを活かした新たな販売チャネルの拡大などにより、増収を維持しています。
中期経営計画でも発表していますが、この2つの事業と美容・健康事業については、今後3年間を投資フェーズとし、事業拡大に向けた投資を行っていくつもりです。また、この顧客基盤を活かした新たな商品・サービス・コラボレーションなどを積極的に導入し、関連するM&Aも検討している状況です。
2025年3月期の業績
吉村:2025年3月期の業績です。連結売上高は597億9,100万円、営業利益は30億700万円、経常利益は30億1,900万円、親会社株主に帰属する当期純利益は13億6,500万円、1株当たりの当期純利益は31.82円となりました。
当期純利益の減少に関しては、当社の保有する投資有価証券について、一部減損処理を行い、5億円弱を特別損失として計上したことによるものです。
事業別の業績はスライドのとおりです。また、2025年3月期終了時点のROEは6.05パーセント、6月11日時点のPBRは1.03倍となっています。
関本:スライドのセグメントごとの業績に関して、クリクラ事業とレンタル事業は、増収減益となっています。また、建築コンサルティング事業と住宅事業の営業利益はほぼ同額になっていますが、なぜ、この2つの事業の利益が大きく伸びているのでしょうか?
吉村:まず、減益の主な要因についてです。クリクラ事業では、需要拡大に伴って、顧客獲得が順調な浄水型ウォーターサーバーに集中的な広告等の先行投資を行い、販促費が増加したことが影響しています。
レンタル事業では、主にダスキン事業での新規出店による人員増加が影響しています。また、当社の祖業であり最大の社員数を抱えているため、賃上げなどの影響も大きくなっています。
次に、建築コンサルティング事業と住宅事業で利益が伸びた要因についてです。建築コンサルティング事業では、建築業界の冷え込みを察知した拠点の統合や、納品物のデータ化といった費用の効率化が寄与しています。
住宅事業では、ジェイウッドの数年ぶりの黒字転換や、M&Aにより、当社グループで展開する住宅フランチャイズ「エースホーム」の、最大かつ最優秀加盟店であった秀和住研が加わったことで、利益が増加したことが影響しています。
業績
吉村:過去10年間の業績はスライドのとおりです。2021年3月期には、不採算の住宅事業子会社レオハウスをヤマダ電機に売却し、連結から切り離したことで、収益構造が大きく変わりました。譲渡後、営業利益率は順調に回復しています。
⻑期ビジョン2035
吉村:長期ビジョン及び中期経営計画についてご説明します。まずは、今年1月に発表した「長期ビジョン2035」についてです。策定に至った背景ですが、前回の中期経営計画を2020年10月に公表後、新型コロナウイルスの影響で、急激かつ大きな外部環境の変化がありました。この急激な外部環境の変化に対応するため、長期ビジョンを策定し、実効性のある施策を実施するとともに、最適な投資実行や事業ポートフォリオの構築が必要不可欠と考えました。
長期ビジョンでは、10年後の2035年に、ナックグループが目指すべき姿として、「ラストワンマイルを最大限に活用してLTV(ライフタイムバリュー)最大化」を掲げ、売上高1,000億円、営業利益率8パーセントを目標にしています。長期ビジョン達成のため、スライドにもあるとおり、「LTV最大化サイクル」を構築していきます。
まず、営業エリアや取り扱いサービスを拡大します。現在は90万件にとどまっていますが、100万件を超える定期顧客(ミリオンカスタマー)の構築を目標に据えています。顧客基盤のさらなる拡大により、販売機会を増やすだけでなく、顧客密度を高め、配送の効率化も図ります。
また、定期訪問を通じて顧客ニーズを察知します。店舗販売、通信販売以外の有力な販路として、さまざまな企業とのアライアンス・コラボ企画などを強化していきます。
中期経営計画2028
吉村:決算発表と同時に公表した「中期経営計画2028」についてご説明します。本中期経営計画は、長期ビジョン達成のための投資フェーズの位置づけとなっており、3年間で売上高が増加するのに対し、営業利益は横ばいで推移する見込みです。
クリクラ、レンタル、美容・健康といった定期顧客を保有する事業において、積極的な投資を行う一方で、市場環境が厳しい建築コンサルティング事業や住宅事業では、現状を維持しつつ、新たな分野への参入を模索していきます。レンタル事業では、ダスキン事業にて新規エリアへの出店による営業エリアの拡大を図ります。
関本:スライドのグラフには、クリクラ、レンタル、美容・健康事業の数値がまとめて記載されています。これらは大きく伸びる想定ですが、それぞれ同程度で伸びるのか、どれかが牽引するのか、これらの内訳について教えてください。
吉村:経営上の意識としては、個々の事業をまんべんなく伸ばすというより、事業部横断的に、商品・サービスを提供できる体制を整えていきます。一見、つながりがないように見えるかもしれませんが、「住まい」でつながっているため、グループとして最大限の相乗効果を出す方針です。そのために、グループ全体の顧客データを最大限活用できるシステムの構築に力を入れていきます。
これらの基盤を利用できる商品・サービス、M&A等については、社長直轄の専門チームで常に検討しています。
関本:スライドの「美容・健康」に、広告投資に関する記載がありますが、それ以外では、どのようなものがボトルネックになるのでしょうか?
例えば、「販売のための人員が大事である」「良い新商品が開発できるかどうかにかかっている」といったところについては、どのようにお考えでしょうか?
吉村:ダスキン事業やクリクラ事業などは労働集約型のビジネスのため、人材確保を常に最重要課題としています。そこで、社員の株式報酬制度の導入といった従業員へのインセンティブプランの充実や、スポット人材の積極採用によって機会損失を極力なくし、事業を運営していきたいと考えており、現在、力を入れています。
新たな取組み
吉村:当社グループで行っている新たな取り組みについてご説明します。前期に子会社化した企業が商標権を保有していた、韓国食品スーパー「Yesmart(イエスマート)」事業では、現在4店舗を運営しています。今期も数店舗の出店を検討しており、直営店にて運営ノウハウを蓄積したのち、こちらもフランチャイズ展開を計画しています。
また、ワインの輸入・販売を行うTOMOEワインアンドスピリッツ社もM&Aで取得しています。こちらはBtoBの卸販売をしていた企業なのですが、グループシナジーを活かし、当社グループの持つ顧客基盤に対してBtoC販売を仕掛けていきたいと考えています。「クリクラ」のビジネスモデルと似ていますが、ワインセラーを無料で貸し出し、ワインを定期的にお届けする、「ワインのサブスク」サービスをテスト販売しています。
サステナビリティ戦略
吉村:サステナビリティについてです。当社グループでは、全国に展開する自社営業所や工場における太陽光発電、地熱発電など、再生可能エネルギーの利用を促進し、そのノウハウをもって企業の省エネコンサルティングや省エネ住宅の販売を行っています。
2021年9月にはTCFD提言への賛同、2024年には当社として初の統合報告書を発行し、環境に配慮した事業運営を知っていただくとともに、さらなるサステナビリティへの取り組みを強化しています。また、こども家庭庁などが推進する「こどもの未来応援国⺠運動」に参加しており、寄付付き商品の開発・販売なども行っています。
サステナビリティ戦略
吉村:クリクラ事業では、他社が行っている使い捨てボトルとは異なり、使用した空ボトルを自社配送員が回収し、洗浄して再利用しており、2009年には宅配水業界で初めて「エコマーク」を取得しました。ボトル1本のリユースにつき、年間換算でレジ袋768枚、ストロー6,000本の環境負荷軽減に貢献しています。
また、製造工場を全国に設けることで、長距離輸送によるCO2排出を抑制しています。さらに、リユースできなくなったボトルを再利用し、定規やボールペンなどの文房具に作り替え、発展途上国の学校や福祉施設に寄付しています。
他にも住宅建材として、また水源の保護という観点で、10年以上にわたり、年間数百本レベルの苗木の植樹活動を続けています。
配当方針及び株主優待
吉村:株主還元についてです。当社の配当方針は、純資産配当率4パーセントかつ配当性向100パーセント以内で、第2四半期末と年度末を基準日として年2回の配当支払いを行っています。進行期である2026年3月期の配当金は、前期と同額の年間22円を予想しています。
中期経営計画にて投資フェーズとお伝えしましたが、株主還元は現在の水準から下げることなく実施していく予定です。
配当方針及び株主優待
吉村:株主優待では、より多くの方に当社グループの魅力を知っていただくために、自社グループ商品の贈呈を行っています。毎年商品は異なりますが、ここ数年は、好評な化粧品や健康食品など、販売価格で数千円から1万円程度の商品を贈呈しています。
優待品の内容は、昨年大変好評だった「薬用マイクロバブルローション」を今年も採用しました。なお今年は、福祉を起点に新たな文化の創出を目指すヘラルボニー社とコラボしたパッケージデザインで贈呈します。今後も株主のみなさまに喜んでいただけるよう、ラインナップの充実を図り、優待制度を継続していくつもりです。
最後になりますが、当社グループは「クリクラ」や「ダスキン」など、みなさまの「暮らし」や「住まい」に直結するサービスを展開しています。2025年には「長期ビジョン2035」「中期経営計画2028」を発表し、今後も安定的な収益力の向上はもとより、積極的なIR広報活動を行い、成長投資・株主還元など、当社グループをより理解していただくとともに、さらなる企業価値向上への取り組みを行っていきますので、よろしくお願いします。
以上をもちまして、ご説明を終了します。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:2024年3月期の営業利益の減少について
荒井沙織氏:「好調だった業績がやや緩やかに見えます。ダスキンと業績は比例するのでしょうか?」というご質問です。
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