会社概要

竹内在氏(以下、竹内):セレンディップ・ホールディングス株式会社代表取締役社長兼CEOの竹内です。本日は、会社概要と当社の中期経営計画の戦略、直近の決算についてご説明します。

まずは会社概要です。本社所在地は愛知県名古屋市です。私どもはちょうど4年ほど前に上場しましたが、そこから急速に拡大しており、現在の従業員数はグループ全体で1,000名を超えるような状況になってきています。

グループ会社一覧

竹内:グループ会社についてはどんどん拡大している最中ですが、私どもはモノづくり事業、つまり製造業がグループの中心になっています。さまざまな分野でモノづくりを行っていますが、中心となるのは自動車部品を製造する会社です。

金属プレス加工や樹脂成型、めっき加工など、さまざまな部品を作っています。加えて、デザイン領域や試作品製作、ファクトリーオートメーション領域などの多方面からモノづくりを行っています。

一方で、プロフェッショナル・ソリューション事業では、人材ビジネスやコンサルティング、設計・開発のエンジニアが所属して受託開発を行う会社があります。さらには、インベストメント事業において投資会社を経営しています。

以上が、現在の当社グループの全体像です。

当社のミッション・ビジョン・バリュー

竹内:私どもが取り組んでいるのは、中堅・中小製造業の復活です。みなさまもご存じのとおり、日本の製造業は世界においてどんどん力をなくしていると言われています。

中国をはじめとした海外で安くて高品質なものが次々に生まれており、昔ながらの日本のモノづくりが衰退しかけています。そちらに対し、私どもが事業承継というかたちで経営のバトンを受け取り、経営の近代化を通じて進化させ、その会社を再成長のステージに押し上げます。

当社は、グループを挙げてこのような取り組みに注力しています。

日本の中堅・中小製造業の危機

竹内:先ほどお話ししたとおり、日本の製造業はどんどん衰退してきています。一番大きな要因が、経営者の高齢化です。日本の経営者における高齢化が進み、現在の平均年齢は63歳超とも言われるほど高齢となっているのが現状です。

その意味で、私どものように事業承継というかたちでバトンタッチを受ける企業への潜在的な需要はどんどん高まってきています。これから大量廃業時代を迎える中で、私どもが後継者として名乗りを上げることで、次世代の成長につなげていきたいと考えているところです。

解決すべき5つの課題と課題を解決する当社のビジネスモデル

竹内:中堅・中小企業が解決しなければいけない課題は、大きく分けて5つあります。先ほどご説明した高齢化もそうですが、日本のマーケットがシュリンクしていることも1つの大きな課題です。

また、今までの日本の「高品質・低価格」のモノづくりから、付加価値が企画や販売へシフトしていることも課題と言えます。

さらには人手不足として、高齢化と同時に少子化も大きな問題になっています。日本の製造現場はまだアナログのモノづくりですので、労働集約的なモノづくりから変わっていかなければいけないことも課題です。

その中で、現場管理や品質管理、原価計算などのコーポレート機能といったことも課題と挙げられています。私どもは、こうした経営課題を解決していきながら、次なる成長ステージに乗せていくことをビジネスモデルのコアと位置づけています。

当社は事業承継を総合的に解決するトータル・ソリューション・カンパニー

竹内:当社は事業承継のトータル・ソリューション・カンパニーとして、大きく分けて3つの基盤を用意しています。

1つ目は、M&A実行基盤です。事業承継を行う上でスムーズにM&Aを実行するための基盤として、企業を見つけるところから最終的なファイナンシングまでの一連のプロセスを社内で完結できるような人材を抱えています。

2つ目は、経営管理基盤です。約3ヶ月から6ヶ月で、M&Aした会社を上場企業の管理基準レベルまで一気に引き上げます。そのために、バックオフィスのシェアードサービスとして買収した企業へのサービス提供体制を持っていることと、私どもが「プロ経営者」と呼んでいる社長やCFO、テクノロジーのトップであるCTOなどの経営人材を送り込めることが、私どもの特徴です。

3つ目は、モノづくり基盤です。私どもが対象としている製造業の一番重要なところは、やはり製造現場です。その中で、品質や生産性などを向上するためのテクノロジーや方法論を社内で持っていることが、私どもの特徴になります。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社はM&Aを繰り返して現在の事業ポートフォリオに至っているとのことですが、これらのグループ会社をどのように組み上げてきたのでしょうか? 自動車関連事業を中心にしているとは思いますが、M&Aの広げ方に対するお考えや歴史のようなものがあれば教えてください。

竹内:先ほど課題のところでもお話ししたとおり、私どもにとって生産性は非常に重要ですが、中堅・中小企業の生産性は上がりにくいです。

坂本:設備にお金もかけきれないですし、良い人材もいると思いますが、やはり大企業のほうが人材は揃っているからでしょうか?

竹内:おっしゃるとおりです。やはり中堅・中小企業は「ないないづくし」で、「お金もない、人もない」というところがあります。そのため私どもとしては、ポートフォリオ内の一つひとつの企業の単位を大きくしながら、必要な機能をホールディングスから子会社へ提供していこうと考えています。

したがって、ポートフォリオを作っていく上では、シナジー効果が図りやすい領域を対象としています。技術領域や、場合によっては販売領域を重んじながら、シナジー効果が高められる企業にどんどんグループに入ってもらい、徐々に大きくしてきたという歴史があります。

坂本:「ないないづくし」と言えども、光る技術のようなものを持っており、そこでシナジー効果が図れそうであれば対象になるのでしょうか? 

竹内:コア技術やマーケット、お客さまの質など、どこかにキラリと光る部分がなければ、その先の成長曲線が描きにくいと考えています。それらを私どもは「奥行き」と呼んでいますが、ビジネスの奥行きがある会社が当社グループのターゲットになります。

セレンディップ・フューチャーファクトリー / 三井屋工業(株)東北工場

竹内:私どもはさまざまな企業をグループに迎えて再成長のステージに乗せていますが、ここではその1例をご紹介します。セレンディップ・フューチャーファクトリーというかたちで、私どもが出資している三井屋工業の1つの工場についてです。

従来の日本の製造業は非常に労働集約的で、場合によっては大変多くの人員を割いて仕事をしてきました。また一般的に、すべての工場内には紙と鉛筆とホワイトボードがあります。そこで、この工場は「可能な限り無人化していこう」「可能な限り紙と鉛筆とホワイトボードはなくしていこう」というコンセプトでスタートしました。

いろいろな構想を固めていく中で、アナログからデジタルへの置換、人からロボットへの置換などの置き換えを行った結果、今までの3分の1ほどの人数でオペレーションができるようになりました。これが当工場の特徴の1つです。

もう1つの特徴は、紙と鉛筆とホワイトボードを完全になくすことができたということです。

セレンディップ・フューチャーファクトリーは「スマートファクトリーを作ろう」というコンセプトでスタートし、結果的にそれを実現することができました。その意味では、中堅・中小企業のうち、とりわけ自動車部品製造業においては、非常に大きなエポックメイキングな工場になったというのが1つの結論です。

坂本:最近は自動搬送ロボットの技術もかなり上がっており、「マテハンがあれば、もういらないよ」というかたちで自由度がけっこう高くなっていると聞きますが、このあたりも省力化に大きく寄与していますか? 

竹内:テクノロジーは日進月歩ですので、「いかにスタンダード化し得るテクノロジーを取り込んでいくか」「いかに新しいテクノロジーを幅広くサーチできるか」について、サーチと導入とをずっと繰り返しながら、組み合わせとして、このような工場を作ってきました。

坂本:ここまでのご説明の中で、御社の理念や「奥行きのある企業をグループに入れていきたい」というお話が大変印象に残りました。

上場企業の他社にも、このようなM&Aを繰り返してシナジーを出し、売却まで行く企業はあると思います。しかし、それを生業にするかたちでM&Aをしながら拡大し、事業承継に力を入れているのは御社の特徴のように感じます。

いろいろなM&Aの会社が上場していますが、御社との違いを今一度教えてください。

竹内:最近は、M&Aを積極的に行っている会社が特に増えてきています。その中における私どもの特徴は、先ほど基盤のところでもお話ししたとおり、基本的に外部のリソースに頼らずにすべてのプロセスを社内で完結できる点です。

最も重要なのは、その会社を次の成長ステージに乗せていけるかどうかです。なぜなら、M&A自体は資本力があればできてしまうからです。

坂本:「どこでもできる」という言い方はよくありませんが、「買えばよい」という話ですね。

竹内:おっしゃるとおり、「買えばよい」というところがどうしてもあり、資本力さえあれば買収することができますので、売上利益という意味では足し算となります。

しかし、私どもは掛け算に近い部分で、その会社が持っているポテンシャルを最大化し、次の成長ステージに乗せていけるかどうかにチャレンジしています。そのため、経営ができるプロ経営人材を社内で育成し、私どもが事業承継でバトンを受けた企業にどんどん送り込んでいきます。

その中で、プロパー社員をどのように成長させていくかといったかたちで、タレントマネジメントに注力しているのが1つの大きなポイントです。

もう1つのポイントは、やはりIT・DXの部分です。労働集約的なアナログのモノづくりからデジタル化に取り組み、先ほどご説明したスマートファクトリーのようなかたちで事例を作っていきます。

このようなロールモデルを作ることで、紙や言葉でご説明してもなかなかご理解いただけなかった部分に対し、パッと事例と見せられるようになったことが大きな変化だと感じています。

M&A基本方針 セレンディップ投資ポートフォリオ(SIP)

竹内:投資およびM&Aの戦略についてご説明します。私どもは徐々に拡大してきましたが、スライドに記載のとおり、1つの投資の基本方針を前提としています。基本的には、7対2対1の割合で投資を進める方針です。

70パーセントは、安定的に成長しているセクターが対象となります。国際競争力が高く日本がまだ世界で伍していけるセクターで、わかりやすく言えば自動車関連もその1つです。ほかには建設機械や医療機器など、まだ世界で日本が戦えて最先端のテクノロジーを持っている分野には積極的に投資する考えを持っています。

したがって、70パーセントの部分は私どもにとってかなりディフェンシブな投資となります。安定的に投資できますので、ここがセレンディップグループの骨格であり、基盤を作っている部分と言えます。

20パーセントは、最先端のテクノロジーや高付加価値、高い独自性を持ち、高成長や高収入が見込める分野が対象となります。例えば、スマート工場のテクノロジーやデザインなどの領域に対して投資を行っていきます。こちらは、業績のボラティリティが高いためチャレンジングな投資となります。

残りの10パーセントは、どちらかと言うと「人ビジネス」が対象となります。コンサルティングや設計・開発、IT・DXなどの領域のノウハウを持った人材に対し、投資を行っていきます。

ロールアップ型M&Aにより、単品売りから総合提案へ

竹内:基本方針のもとに取り組みを進めることで数がどんどん増えていきますが、当社グループの企業数は一定範囲で収まっています。それはロールアップを行っているからです。

先ほどご説明したように、私どもはプロ経営者を実際の経営現場に投入し、企業の再成長を促しています。その中でシナジーを図れそうな企業をベースに、母体となる企業に統合していく戦略をとっています。

1社ごとの単位が小さすぎるとどうしても生産性が上がらず、人もお金もないという状況が続きますので、企業の単位をある一定の事業規模までできる限り高めていきます。業種や業態によって大きく変わりますが、だいたい数百億円レベルの事業規模まで拡大できると、人の問題やお金の問題がかなり解消されます。

坂本:そうなるとすでに上場企業レベルだと思います。

竹内:おっしゃるとおりです。ただし、そのくらいの塊にしていかなければ経営上のジレンマは解決しません。お客さまへの提案力も含めて技術力や付加価値を高めていかなければならないと考えると、同領域の企業をM&Aしてロールアップを進め、新生企業とするのが良いと考えています。

直近では、今年4月にユニクレアという会社を作りました。スライド右上に記載のとおり、私どもがM&Aした佐藤工業株式会社と株式会社イワヰをロールアップした会社となります。

両社のように、個人の名字が社名に入っている会社は地方にもよく存在します。これらの企業を同じ技術領域の中で1つの塊にし、ユニクレアという新生企業を作ってきたというのが1つの大きな変化です。

坂本:すべてがそうなるわけではないと思いますが、ユニクレアの下に記載されている三井屋工業やエクセルなども、将来的にはユニクレアのようなかたちでロールアップされるイメージですか? 

竹内:基本的に、シナジー効果やボリュームが必要な事業体は1つの会社にしていく方針です。

一方で、スピード感も非常に重要です。小回りが必要な企業や規模感を求めない企業に関しては、スタンドアローンで存在してもまったく問題ないと考えています。その会社の業種・業態、その会社の「形(なり)」について考えていきながら、必要に応じてロールアップをしていくのが1つの大きなポイントです。

中核企業を起点に、ロールアップ型の事業承継M&Aは放射状に拡大・進化

竹内:当社グループでは、さまざまな領域でシナジーを図っていきます。短期的にシナジー効果を発揮しやすい分野と、長期的にシナジー効果を発揮しやすい分野とに大きく分かれますが、私どもはホールディングスから各企業へさまざまなシェアードサービスを提供できます。それにより、人材面などは非常にシナジーが図りやすいです。

例えば、会社ごとに持っているさまざまなお客さまを、クロスセリングはなくともグループ企業間で相互に紹介することもあります。とりわけ自動車部品の製造業は系列というかたちが色濃くありますので、逆に言えば、その系列を横断して営業できる体制をどんどん組み上げていっています。

それにより、トヨタ系、スバル系、ホンダ系などの系列の垣根を飛び越え、新たなご提案ができるようになりました。また、自動車以外の分野に関しても、大手企業との大きな口座をそれぞれの企業が持っていますので、そのような部分でもお客さまの相互紹介ができるようになりつつあるのは大きなポイントです。

一方で、時間のかかるシナジーとして挙げられるのは、やはり共同開発です。

坂本:メーカーと一緒に開発するということですね。例えば新車が出る場合は、その何年か前から一緒に進めるというかたちでしょうか?

竹内:おっしゃるとおりです。例えばEVのようなものであれば、テクノロジーとして私どもがR&Dしなければいけない部分も当然あります。グループ企業間における横での共同開発もありますが、やはり開発にまつわることは非常に時間がかかりますので、シナジー効果にも遅効性が生まれます。

このように、早期で刈り取りができるシナジーと長期で時間をかけて生まれるシナジーの2つがありますが、グループ企業間の横連携も徐々に進んでおり、より付加価値のある提案がお客さまにできるようになってきています。

坂本:御社の中で、横連携を担っている方はいるのでしょうか? 内部を改革できるプロ経営者はいるとのことですが、M&Aされたグループ企業を横断して見る方が経営者以外にいるのかが気になります。

竹内:まさに、当ホールディングスがそのような機能を担っています。経営者同士や開発者同士の交流を推進するほか、1つのテーマで伴走しながら開発をリードしていきます。

もともとは一つひとつの企業が単体で動いていたため、兄弟会社として連携したりシナジーを図ったりするのは、言うは易しですが、実際はなかなか難しいところがありました。そこを私どもが中に入ってリードし、グループ内でのお見合いのようなものを推進します。

やはりお見合いをする人間のテクニックが重要で、最初はお互い恥ずかしがりながら、なかなか会話が発展していかないのですが、あるテーマに向けてどのように結果・成果を出していくのかを少しずつ推進していきます。

坂本:仲人的なかたちですね。

竹内:おっしゃるとおりです。

海外拠点を持つエクセル・サーテックカリヤの参加により、当社のグローバル化が一気に加速

竹内:直近のM&Aについてです。私どもは、今までは国内に製造拠点を持ち、国内のお客さまに製品をデリバリーするドメスティックなグループ企業でしたが、昨年度買収したエクセルと今年買収したサーテックカリヤの2社は海外に大きな製造拠点を持ち、エクセルについては海外の売上高が日本の売上高を超えるぐらいのモノづくり企業です。

2社が入ったことによって、日本のテクノロジーやモノづくりを一気に海外に売れるようになりました。会社によって拠点は異なりますが、東南アジア、アメリカなどさまざまな拠点から日本の企業を海外に売り込むことができています。

従来は日本のメーカーに売ってきたものを、海外の自動車メーカーに対して販売できるようなかたちに今ようやくなってきており、今後さらに加速させていきたいと考えています。

セレンディップ・チャレンジ500 / 2024年6月公表

竹内:中期経営計画についてです。昨年6月、一昨年末の決算が200億円弱ぐらいのタイミングで中期経営計画「セレンディップ・チャレンジ500」を発表しました。

「500億円の売上高を目指す」と発表した当時は、株主のみなさまにも「200億円の会社が500億円なんて、大風呂敷を広げたな」と見られました。従業員からも「2.5倍の売上目標は簡単ではないでしょう」と見られていたのですが、昨年度末は252億円で着地しました。

今はM&Aをいくつか加速しており、今年度の業績予想400億円を発表して、非常に良い進捗度合いで進んでいます。そのような意味で、既存企業のオーガニックグロースとM&Aグロースの2つが重要になるということです。

また、これまで少しずつ作ってきた海外進出やEV対応、フューチャーファクトリーなどの成長戦略の歯車がようやくかみ合うようになってきたことが、進捗が加速している1つの要因だと思っています。実際に、3年間で500億円を達成できる状況になってきています。

セレンディップ・チャレンジ500達成に向けて大きく前進

竹内:スライドに記載しているとおり、今期は「連結売上高400億円、営業利益ベースで18億円を目指す」と発表しています。昨年度買収したエクセルと今年度買収したサーテックカリヤを単純に合算すると、すでに1年前倒しで500億円を達成しています。利益ベースでもほぼ達成できている状況です。

ただし、非常にわかりにくいのですが、M&Aを発表してから売上を連結化するまでに3ヶ月から6ヶ月ぐらいかかり、寄与するタイミングがずれます。昨年度は4社買収したのですが、昨年度買収したエクセルは今年度から1年間分の売上と利益を取り込むかたちになり、今年度買収したサーテックカリヤは第3四半期から取り込むことになります。

したがって、今期は半期分の取り込みがあるということです。それを勘案しても、「セレンディップ・チャレンジ500」が1年前倒しで達成できる状況になっています。

坂本:スライドに「2025年内に中期経営計画のアップデートに向けた検討を開始」と記載されているのですが、アップデートされた中期経営計画のトピックがあれば教えてください。

竹内:先ほどご説明したことを1つずつ愚直に進めていくことになりますが、とりわけ力を入れるのはM&Aと海外進出の2点です。

M&Aについては、今までは1社、2社でも社内で混乱が起きて苦しい状態でしたが、昨年度は4社がM&Aでき、今もある程度スムーズに進んでいます。ようやくプロ経営者や内部のオペレーションがそのような数をこなしていける状況になってきたということが、1つの大きな特徴です。

海外については、セレンディップグループをどのようにグローバリゼーションさせていくのかということです。言語の対応、海外の商慣習の対応など、まだ進化していかなければいけない部分はありますが、そのようなことができるようになりました。

今後は、海外企業そのもののM&Aもスコープに入ってくると考えています。今、セレンディップの成長曲線の第2章に徐々に入り始めており、その準備や体制がかなり整ってきています。

坂本:スライドの左下にあるように、買収した会社の売上規模も大きくなってきていますが、「このぐらいの規模だったらいける」というような自信がついたというところもありますか?

竹内:そうですね。今まで私どものグループ企業は50億円から100億円ぐらいの事業規模で、いわゆる『下町ロケット』的な町の企業でしたが、海外に拠点を持っている会社が増えてきました。事業規模も100億円から200億円ぐらいになり、従業員数も数百人レベルになってきています。そのような意味で、今はかなりバージョンアップしていっています。

【2025年3月期】連結業績サマリ

竹内:直近の決算についてです。昨年度は、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべての経営指標において過去最高のレコードを残すことができました。

過去最高件数である4件のM&Aを実施し、その効果も売上利益の向上につながっています。個々の企業もオーガニックグロースしており、M&Aも順調に成長できたというのが昨年度の結論です。

当期純利益は非常に大きく見えていますが、これはいわゆる負ののれんが出ているためです。普通はM&Aした時にのれんが発生し、毎年償却していく必要があります。その会社が持っている純資産よりもかなり安く、当社としては適正価格で買収した結果、負ののれんが出ています。

【2026年3月期】通期業績予想

竹内:今年度の業績予想についてご説明します。「売上高400億円、営業利益18億円を目指す」という中期経営計画から変更はありません。

この中には、今までのグループ企業の合算値のみが含まれており、今年度M&Aした企業は含まれていません。今年度買収したサーテックカリヤの分はこれにプラスされるため、よほどの天変地異がない限りはこの売上・利益を達成できると思っています。

連結業績推移および2025年3月期業績予想

竹内:連結業績推移および2025年3月期業績予想です。CAGRで見ても、過去も含めてかなり高い成長を維持できています。

先ほど「セレンディップ第2章」とお話ししましたが、さらに大きく飛躍していくための準備が完璧に整った状態です。それが数字面で顕著に表れ始めるのがこの1年から2年だと思っています。

質疑応答:M&Aで売り手から選ばれる理由について

坂本:御社はM&Aに力を入れてきて成長されているとのことですが、ライバルが多くいると思います。御社が良いと思う企業は他社にとっても同様で、取り合いになる部分があると思います。価格で決めることもある一方で、売り先の株主が御社と組みたいと考えて一緒になるパターンが多いのではないかと思います。御社が売り手から選ばれる理由を教えてください。

竹内:基本的にはコンペで選びますが、さまざまな売り手のオーナーに会って話を聞いて、その中からベストパートナーを選定したいと考えています。

中には「1円でも高く売りたい」という人もいらっしゃいますが、私どものグループに入っていただいた企業のオーナーの共通項として、「この会社を自分ではできなかった次の成長ステージに乗せてほしい。乗せてくれるパートナーを選びたい」とおっしゃるケースが非常に増えています。プロ経営者の派遣や製造現場の改善・改革などが実行可能、もしくはそのような実績が出ていることをご覧になって選んでいただくということです。

同業者もしくはファンドのような会社など、さまざまな会社と比較検討されていますが、当社は今までほとんど負けたことがありません。かなりの高確率で当社を選んでいただいています。私どもはこれだと決めた企業には、かなり熱心にプロポーズしています。

また、場合によってはすでに売却いただいたオーナーに会っていただいたり、買収した会社の従業員と直接会話してもらったりしています。実績によって良いサイクルが生まれますし、オーナーの不安を解消する1つのきっかけにもなっていると思います。

坂本:利益だけを求めるのではなく、シナジーを生むような経営をバランス良く行われていると思うのですが、その手綱はプロ経営者にもあると思います。プロ経営者は、どのような経歴の方が多いのですか? また、将来的には内製もあるのか、プロ経営者の下に取締役で入って実績を積むのかなど、イメージがあれば教えてください。

竹内:私どもの行っている経営は、どちらも短距離走ではありません。短距離走は非常に簡単で、コストカットすれば良いだけです。「不要不急の投資をせず、人もできる限り少なくする」というのは短距離走としては正解かもしれませんが、私どもは長距離マラソンのような経営を進めていきます。

そのような中でしなければいけないのは、やはり投資です。一番大きい投資は人材投資で、教育、育成を行います。さらに設備投資、研究開発も含めて投資していきます。

それを実行しているのがプロ経営者ですが、私どもが定義するプロ経営者というのはチームです。スーパーマンのような社長が1人入って、その会社を劇的に良くするようなことは難しく、やはり万能型の方はいらっしゃらないです。

竹内:社長だけではなく、その右腕となるCFOやCOO、CTOなど、さまざまな「Cレベル」の人たちをその会社の状況に応じてチームというかたちでセットして送り込み、実際にそのメンバーが経営していき、場合によってはプロパーを引き上げていくということを行っています。

私どもは、将来的にはプロパーの人間が経営できるようにしたいと考えています。その会社に長く従事し、技術も深いレベルでわかっていて、お客さまやその会社、製品に対して愛情深く、「染みついた」人間が必要です。その人間が経営できるように、タレントマネジメントのようなものも含めて「プロ経営者化していく」ことによって、その会社が発展すると思っています。

中距離という意味では、プロ経営者を送り込んで、その会社をある一定の巡航高度の経営レベルまで引き上げていきます。加えて、人・製品を育てることによって次のステージに乗せて、それをプロパー経営者が経営し、世の中になかった製品を出せるようになっていくことを理想的なゴールとして考えています。

質疑応答:M&Aに至る割合について

坂本:「M&Aは売り手市場と言いながら、売りたい人もたくさんいて、買いたい人もそれ以上いると思いますが、御社は検討したうちの何割がM&Aに至るのでしょうか?」というご質問です。

竹内:先ほどご説明したように、これから超高齢経営者時代、大量引退時代を迎えていく中で、「当社に合うであろう企業」をご紹介いただいています。それが年間約200社です。昨年度は200社の中から4社を選んだかたちです。

毎日1社、2社は必ずご紹介があり、その中にはすばらしい企業もあれば、残念ながら業績も含めてそうでもない企業もありますが、多くの方が後継者不足で悩んでいます。年齢的にもバトンタッチをしたいがその先がなく、藁にもすがるような思いで、新聞を読んで直接ホームページからお問い合わせいただくケースも増えています。

そのような意味では、200社は重いです。いろいろ悩まれて、日本の今の状況そのものを反映したような会社ばかりです。できる限りご期待に沿えるようなかたちで私どものグループに入っていただき、大きな船として成長していきたいと思っています。

質疑応答:M&Aで1案件に費やす時間について

井上綾夏氏(以下、井上):昨年のM&Aの実績が4件で、今後も増えていくと思われるのですが、1案件に平均でどのくらいの時間を費やされているのですか? 

竹内:ケースバイケースですが、お会いしてから最終的な合意に至るまでに、短いケースでも半年、通常は8ヶ月から12ヶ月ぐらいかけています。私どもは、おそらく普通の会社よりもかなり長い時間をかけていますが、それは「買った・買わない」「いくらで売る・いくらで売らない」のような話ではなく、次の中期経営計画を一緒に作るためです。お互いに未来図に共感していかなければ良い結婚にはならないというのが、私どもの基本的な思いです。

井上:今商談している案件が来期、再来期に出てくる可能性があるということでしょうか?

竹内:おっしゃるとおりです。そのようなパイプラインという意味では、今すでに話し合いをしている会社は何社もあり、場合によっては今期中にも次なるM&Aをしていきたいと思っています。

昨年度は4社M&Aをしましたが、今年はまだ1社目です。ここから昨年度と同程度の数のM&Aをしていく前提で、話し合いを続けています。

竹内氏からのご挨拶

竹内:今、社会課題になっている高齢経営者問題、バトンタッチ先がないという事業承継の課題に対して、私どもはできる限りスムーズに、多くの会社を次の成長ステージに乗せていくという事業を行っています。

今後、この事業はさらに重要になると思っていますし、マーケットも拡大すると考えていますので、ぜひ私どもの会社に注目していただけたらと思っています。よろしくお願いします。