2025年3月期決算・中期経営計画説明会
仲野真司氏:代表取締役会長の仲野です。本日はウェルネオシュガーグループの2025年3月期決算・中期経営計画説明会に多数ご参加いただき、誠にありがとうございます。
開会に際して一言ご挨拶申し上げます。当社にとって2025年3月期は、10月の日新製糖及び伊藤忠製糖との完全統合を経て、名実ともに事業会社としての「One WELLNEO」が誕生した記念すべき年となりました。
この大きな節目の年の通期決算を、計画を上回る実績でご報告できることを大変うれしく思います。また、この間の多くのステークホルダーのみなさまのご支援とご尽力に厚く御礼を申し上げます。
足元では、人件費や物流費、製造諸経費の高騰をはじめ、現在の中期経営計画の策定時点では想定していなかったレベルの構造的なコスト上昇の圧力が、収益の下押し要因として重くのしかかってきています。しかし、「One WELLNEO」としての各種PMIの取組み、さらには今般実現した東洋精糖との合流等により、2026年3月期の業績見通しについても増益基調の予想を掲げることができました。
この当社グループのポテンシャルをさらに強靭でサステナブルなものとしていくために、私どもは単なる寄せ集め企業ではなく、より大きな「One WELLNEO」として、立体的に再構築していく内部固めが重要なステージにあります。
その一環として、昨年公表しましたとおり、本年10月に九州の第一糖業の合併を実施するとともに、新たに当社グループに加わった東洋精糖とのPMI推進、シナジー追求にも精力的に取り組んでいく所存です。当社が誕生して2年半、足元ではPMIの各種作業が進行中ですが、ここにまた新たな仲間が合流し、私たちのPMIは2階建て、3階建てへと進化の途上にあります。
走りながらの統合プロセスは、実に負荷の高いオペレーションではありますが、そのモメンタムがあるからこそ、グループの構成メンバーが過去に安住することなく、新しい「One WELLNEO」の推進力を生み出してくれています。
現在のウェルネオシュガーグループの母体となった精糖会社各社は、それぞれ当社グループのSugarセグメント、Food & Wellnessセグメントにおいて、必要不可欠なピースを有しています。そして、それぞれの会社が統合前の姿のままでは決して見ることのなかった景色に向かって、私たちはエキサイティングな時間をもがき楽しんでいると言っても過言ではありません。
グループのスケールアップに伴い、組織運営のマインドセットや行動規範についても、私たちの成長ステージにふさわしいものに再構築していく必要があります。
人的資本経営やサステナビリティ経営の推進については、急がば回れの精神で、まずは多様なバックグラウンドを持つメンバーを、新しい「One WELLNEO」の経営理念のもとに幅広く巻き込み、地に足のついた意識改革等、行動変容の積み重ねに地道に取り組んでいます。
砂糖屋のビジネスは決して飛んだり跳ねたりするものではありませんが、「業界のリーディングカンパニーの一翼を担う」というありたい姿の実現に向けて、当社は挑戦を続けていきます。そんな当社の2025年3月期の成果、そして今後の取組みについて、本日はじっくりとお聞きいただければ幸いです。よろしくお願いします。
(1)2025年3月期決算-概要-
大場健司氏(以下、大場):執行役員財務部担当の大場です。私からは、2025年3月期の決算と2026年3月期の見通しについてご説明します。
まず、2025年3月期のウェルネオシュガー連結決算です。なお、当社は国際財務報告基準(IFRS)を適用していますので、これからご説明する財務数値はこちらに沿った表記となっています。また、2025年3月期から、報告セグメントを「Sugarセグメント」と「Food & Wellness」セグメントに変更しています。
2025年3月期は売上収益、営業利益以下の各段階利益ともに、2024年3月期及び公表数値を上回る決算となりました。売上収益については、主力の精製糖事業でコスト上昇に対する実売価格への反映を進めたことなどから、前期比48億7,700万円増収の970億6,900万円となりました。営業利益は、前期比22億2,100万円増益の80億2,400万円となりました。
増益のポイントについては、後ほどご説明します。スライドの表の一番下にあるとおり、親会社の所有者に帰属する当期利益は55億6,500万円となり、前期比及び公表数値比ともに増益となりました。
(1)2025年3月期決算-ポイント-
当社は2025年2月7日より、東洋精糖の普通株式に対して金融商品取引法に基づく公開買い付けを実施し、2025年3月31日付で同社を当社の連結子会社としています。なお、2025年3月期末においては、取得原価の配分が完了していないため暫定的な会計処理を行っています。
Food & Wellnessセグメントでは、「沖縄・奄美のきびオリゴ」が10月にリニューアル新発売となり、併せてテレビコマーシャルなどの販促施策を実施したことなどから、好調な出荷を継続しました。また、千葉工場内に新たに竣工した美浜バイオプラントに「カップオリゴ」の生産設備を導入し、増産体制を整備しました。
Sugarセグメントは、「きび砂糖発売40周年プロモーション」を実施した効果もあり、高付加価値品である「きび砂糖」の出荷が好調に推移しました。
(1)2025年3月期決算-業績要因分析(営業利益の増減理由)-
スライドは、当期の営業利益のウォーターフォールチャートです。左側から2024年3月期の営業利益、各変動要因、そして一番右側は2025年3月期の営業利益となります。Sugarセグメントにおいては、コスト上昇に対する実売価格への反映を進めたことや、有利な条件で原料調達ができたことなどから、営業利益は前期比31億6,500万円の増益となりました。
Food & Wellnessセグメントでは、フードサイエンス事業における機能性素材に関する研究開発費用や人件費の増加、フィットネス事業における減損損失5億8,900万円を計上したことが影響し、前期比6億4,700万円の減益となりました。
(1)2025年3月期決算-キャッシュ・フロー計算書-
キャッシュ・フロー計算書のポイントは2点です。1点目は、投資活動によるキャッシュ・フロー区分に、東洋精糖の株式取得による支出として62億5,900万円を計上したことです。なお、この金額は、株式取得対価から同社の現金及び現金同等物を控除した純額となります。
2点目は、財務活動によるキャッシュ・フロー区分に、運転資金の借り入れとして、短期借入金の純増額78億1,000万円を収入に計上したことです。
(1)2025年3月期決算-財政状態計算書-
2025年3月期の財政状態計算書は、東洋精糖の新規連結に伴い、資産・負債が前期比で大幅に増加しています。また、同社を連結したことに伴い、非支配持分14億7,000万円を認識しています。
参考 2025年3月期決算 原料価格の推移
スライドは参考情報です。海外原糖市況、2025年3月期の為替相場情報を記載しています。
(2)2026年3月期見通し-概要-
2026年3月期の見通しについてご説明します。東洋精糖がグループ会社に加わることから、2026年3月期の売上収益は1,140億円、営業利益は85億円、税引前利益は85億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は59億円と、前期比で増収増益となる見通しです。
なお、参考として、東洋精糖の2025年3月期(日本基準)の損益情報を記載しています。
(2)2026年3月期見通し-ポイント-
2026年3月期見通しのポイントについてご説明します。
Food & Wellnessセグメントにおいては、フードサイエンス事業で「沖縄・奄美のきびオリゴ」や美浜バイオプラントで増産体制を確立した「カップオリゴ」の販売拡大を目指します。加えて、サイクロデキストランについても設備投資を進め、需要の拡大に対応できる供給体制を構築します。フィットネス事業では、総合型店舗における子ども向けスクール事業の強化と採算を重視した経営により、早期の業績回復を図ります。
Sugarセグメントにおいては、今後も不透明かつ厳しい市場環境が見込まれますが、採算を重視した経営に努めます。Sugarセグメントの営業利益のポイントは、次のページでご説明します。
(2)2026年3月期見通し -業績要因分析(営業利益の増減理由)-
スライドは、2026年3月期の営業利益のウォーターフォールチャートです。Sugarセグメント、Food & Wellnessセグメントともに、東洋精糖がグループ会社となったことが増益に寄与します。
Sugarセグメントにおいては、引き続きコスト上昇に対する実売価格への反映を進めるものの、原料コストの上昇や各種経費の増加などにより、前期比5億2,300万円の減益となる見込みです。
Food & Wellnessセグメントにおいては、フィットネス事業で前期に減損損失を計上したことから、前期比7億1,600万円の増益となる見込みです。
(1)経営理念
山本貢司氏:代表取締役社長の山本です。私からは、中期経営計画「WELLNEO Vision 2027」について、昨年から進捗した部分を中心にご説明します。
今回、当社のパーパス「糖のチカラと可能性を切り拓き"Well-being"を実現する」をベースに、目指す姿をビジョンとして新たに描きました。ビジョンの策定においては、私たちがこれまで大切にしてきた想いや、パーパスの実現に不可欠な価値観などを丁寧に見直し、コーポレートメッセージである「心と体に『いいね』を」を起点に、目指す姿をストーリー仕立てで表現しました。
少し文字が細かいですが、スライド中段の右側をご覧ください。抜粋して読み上げると、「"いいね!"と誰もが微笑む瞬間のために、私たちは挑戦し続けます」「糖のチカラと可能性で"NEO"な答えを創り出すことを約束します」「砂糖だけではない会社、それがウェルネオシュガーです」と記載しています。
このように、ビジョンの中では消費者や取引先をはじめとする、さまざまなステークホルダーにお届けしたい新しい価値を提示するとともに、その実現に向けた私たち自身の挑戦に対する決意を込めています。
さらに、「挑戦」「多様性」「持続可能性」という3つのバリューをパーパスやビジョンを実現するための判断基準、行動基準とすべく、わかりやすい表現で再定義しました。
これによって、ビジョンがパーパスとバリューのブリッジを果たすかたちで、パーパス、ビジョン、バリューが三位一体となったウェルネオシュガーの新理念体系が完成しました。
ウェルネオシュガーグループとしては、今後、役員、社員一人ひとりが、このビジョンの実現に向けてバリューを実践していきます。そして、砂糖事業で培ってきた力や砂糖の持つ力を砂糖のみに限定せず、糖あるいは糖由来の技術を起点とした機能性素材へと幅広く展開し、みなさまの"Well-being"を実現していきます。
(2)中期経営計画 WELLNEO Vision 2027-基本方針、定量目標-
本中期経営計画「WELLNEO Vision 2027」は、2025年3月期から2028年3月期の4年を対象としており、今期が2年目になります。基本方針は変わらず、SugarセグメントとFood & Wellnessセグメントの両輪で"Well-being"を実現すべく、引き続き両事業の強化・拡大を図ります。
定量目標についてです。2025年3月期実績及び2026年3月期計画に関しては、すでにご説明しましたので割愛します。最終年度の2028年3月期の目標は変わらず、営業利益+持分法による投資損益で101億円、親会社の所有者に帰属する当期利益70億円、親会社所有者帰属持分の当期利益率(ROE)9パーセントを目指します。
101億円の内訳としては、全社費用13億円を見込み、Sugarセグメントで90億円、Food & Wellnessセグメントで24億円の達成を目指します。また、後ほど財務戦略パートでご説明しますが、本目標を実現するための投資枠については、最大約420億円の投資枠を設定しています。
(2)中期経営計画 WELLNEO Vision 2027-重点戦略-
スライドには、定量目標の達成に向けた4つの重点戦略を掲げています。1つ目の重点戦略は、Food & Wellnessセグメントの事業拡大です。具体的には、既存注力事業であるフローラデザイン素材の積極拡大と、フードサイエンス事業全域におけるM&Aを通じたインオーガニックな成長です。
2つ目の重点戦略は、Sugarセグメントの基盤強化です。統合シナジー効果の拡大、業界再編の波を捉えたさらなる基盤拡充策の推進を行います。
3つ目の重点戦略は、人的資本経営の推進です。"挑戦"を良しとするオープンな組織風土の醸成と、多様な個人の成長と活躍を通じて、働きがいのある職場と"Well-being"の実現を目指します。
4つ目の重点戦略は、サステナビリティ経営の推進です。おいしさと健康の両立に役立つ製品・サービスの提供によって、生活者のみなさまの"Well-being"に貢献することを目指します。また、自然環境に対する社会責任を果たし、自然との共生を実現していきます。
(2)中期経営計画 WELLNEO Vision 2027-重点戦略-
スライドでは、重点戦略の取組みの1つを記載しています。今年2月にTOBを行い、新たに当社グループに加わった東洋精糖について簡単にご説明します。東洋精糖は、1927年に設立された歴史ある会社です。今年3月に子会社化を行い、今後スクイーズアウトにより完全子会社とする予定にしています。
東洋精糖は、長年ユーザーにご愛顧いただいている砂糖事業に加え、ルチン、ヘスペリジンという機能性食品素材を保有しており、先ほどご説明したSugarセグメントの基盤強化と、Food & Wellnessセグメントの事業拡大という2つの重点戦略の推進を加速させていきます。
(3)重点戦略①Food & Wellnessの事業拡大|Food & Wellnessの事業概要
重点戦略の1つ目の柱である、Food & Wellnessセグメントの事業概要について簡単にご説明します。Food & Wellnessセグメントは、フードサイエンス事業とフィットネス事業に大きく分かれます。
フードサイエンス事業については、スライドのとおり、東洋精糖が加わったことで、機能性食品素材、食品添加物素材、医薬・化粧品素材のラインナップが増えました。さらにツルヤ化成工業やツキオカフィルム製薬の持つ製剤加工機能や、マーケットイン型の提案営業の強化などの掛け合わせにより、着実に領域を拡大していきます。
フィットネス事業については、日新ウエルネスにて、関東エリアにおけるフィットネスジム事業を行っています。ここからは、各重点戦略について深掘りしながらご説明します。
(3)重点戦略①Food & Wellnessの事業拡大|フローラデザイン素材の積極拡大-既存事業の拡大-
前期に実行した既存事業の拡大について、営業・マーケティング、生産・設備投資、研究開発の3つの観点でご説明します。まず、営業マーケティングです。当社が保有する機能性素材の中には、オリゴ糖、ケストースやサイクロデキストランといった複数の腸内・口腔フローラデザイン素材がありますが、まだ市場に幅広く認知されているとはいえず、認知度向上に向けた施策を実行しました。
当社の主力商品の1つである「沖縄・奄美のきびオリゴ」は、テレビコマーシャルをはじめ、各種デジタル広告などのPR施策を実施し、実際にご覧いただいた方もいらっしゃるかと思います。今後も業界No.1ブランドを目指し、拡販を継続していきます。なお、世界で当社だけが製造・販売する口腔フローラ素材のサイクロデキストランについても、生活者や顧客企業の認知度向上に向けた各種施策を実施中です。
続いて、生産・設備投資です。当社が保有するガラクトオリゴ糖は整腸作用を有し、熱・酸に強く分解されにくい加工特性もありながら、コスト優位性があることが特徴です。
製造能力増強に向けた千葉工場への設備投資も予定どおり実行しており、すでにテスト生産に入っています。千葉工場内に新たに竣工した美浜バイオプラントではサイクロデキストランの増産に向けた設備投資も実行中で、今期中の本格生産開始を目標としています。強化された製造能力と機能性の訴求により、今後もガラクトオリゴ糖、サイクロデキストランはじめとする機能性素材の拡販に取り組む予定です。
最後の研究開発面に関しては、引き続き藤田医科大学とのプレ・プロバイオティクス共同研究を継続しており、当社の機能性素材の1つであるケストースを中心に、有用な研究結果が出てきています。加えて、昨年10月からは腸内細菌叢の分析を手がけるベンチャー企業のメタジェン社とアドバイザリー契約を結び、当社保有の機能性素材の価値向上に向けた種々取組みを行っています。
(3)重点戦略①Food & Wellnessの事業拡大|フードサイエンス事業の成長-領域拡大-
東洋精糖の加入により、これまで当社が強みとしていたオリゴ糖やサイクロデキストランなどのフローラデザイン素材に加え、新たにルチンやヘスペリジンといったポリフェノールと、その機能性の根幹となる糖転移技術が加わりました。
ポリフェノールと一言でいっても、その種類は自然界に5,000種類以上あるといわれており、抗酸化作用が高いことに加え、それぞれ独自の機能があります。
東洋精糖の主力商品の1つであるルチンには毛細血管を強化する働きがあり、特に目のピント調整、眼精疲労の軽減といった機能が特徴です。一方、ヘスペリジンには血管拡張作用があり、それによる足や顔のむくみの解消といった機能が特徴です。
いずれも水に溶けにくい難水溶性の物質ですが、糖転移と呼ばれるブドウ糖1分子を酵素の作用で他の物質に結合させる技術により、水溶性をおよそ10万倍高めることができます。この技術により、ルチンやヘスペリジンの優れた生理機能は保持しつつ、体内への吸収性を飛躍的に高めることが可能になります。これが糖転移技術です。
これらの技術や素材を掛け合わせていくことで、これまで当社が保有していた素材だけでは達成できなかった"Well-being"に貢献できると考えています。すなわち、口腔や腸内フローラの環境を整え、歯垢形成の阻害や便通を良くするだけではなく、血管の強化による眼精疲労の軽減や血流・血圧の改善といった特定機能性の訴求を通じて、より広義の「健康」を追求できるようになります。
また、お互いの知見や研究機能を結び付け、お互いの販路を活用することを通じて、それぞれの会社だけでは到達できなかった新たなステージに進むことができると確信しています。
我々精糖会社は、長年人々に幸せを運ぶ砂糖を提供し続けてきました。例えば、泣いている赤ちゃんを即座に笑顔にできる素材は、砂糖以外になかっただろうと思っています。
その貢献度は今後も色褪せることはありませんが、人々のニーズが時代とともに変わっていくことは当たり前のことです。砂糖の取りすぎが良くないとするならば、我々は砂糖からかたちを変え、人々の健康に資する素材を開発して世の中に提供しなければなりません。
当社も東洋精糖もそのような砂糖屋の矜持を持ってきた会社です。今回、そのような会社同士が結合し、より強い矜持と信念を持って結束していくことこそが、この度の合従連衡の強みの1つだと確信しています。
どの精糖会社も歴史的に安心・安全な砂糖を提供して社会に貢献してきましたが、時代の流れもあり、砂糖だけでは駄目だと考え、砂糖屋としての矜持を持ちつつ、砂糖以外の素材開発にリソースを注いできた経緯があります。
そのような会社が融合すれば、砂糖屋としての矜持が自然なかたちで協心結束していきます。独立独歩で進んでいくのとは異なる、相乗効果が発揮されるということです。私の個人的な意見ですが、このような観点でも、精糖会社の合従連衡が進む要因があると私は思っています。
当社の代表的な機能性商品「沖縄・奄美のきびオリゴ」をはじめとする、オリゴ糖やサイクロデキストランの原料は砂糖です。東洋精糖の糖転移も、糖を別の素材に付加して機能性を高める技術です。
当社のパーパスである「糖のチカラ」が鍵であり、今後も当社だからこそ開発できる高品質な製品を生み出し、社会に貢献していきます。
なお、Food & Wellnessセグメントの事業拡大については、これまで説明したような自社のみのオーガニックな成長のみならず、引き続きM&Aや業務提携を含めたインオーガニックな成長を通じて、マーケットイン型の事業拡大を狙っていきます。
(4)重点戦略②Sugarの基盤強化|統合シナジー最大化の進捗状況
続いて、Sugarセグメントです。まず、経営統合シナジーの最大化の進捗状況についてご説明します。
定量的には、2028年3月期まで15億円規模の統合シナジーの実現を目指しています。具体的な金額の開示は控えますが、2025年3月期でも着実にその成果が出始めています。調達・生産・営業のどの分野においてもシナジーが出ていますが、金額的には原料調達でのシナジーが一番大きく表れています。
これは、昨年10月にウェルネオシュガーとして完全統合したことにより、原料糖の取り扱い量が大きくなり、かつオペレーションの幅が広がったことにより、有利な条件での原料調達ができた結果となります。
また、その他では当社内の4工場における製造出荷拠点のアロケーション変更や、「きび砂糖」に代表される付加価値製品の販路拡大、コスト上昇に対する売価への反映を適切に実施したことによる効果などが挙げられます。
今後は、今年から東洋精糖がグループに加わったことによる調達・生産・物流・営業の各分野での統合シナジーの最大化を図っていきます。
具体的には、調達面では原料コストのさらなる低減、包装資材の見直しなどのコストダウンを進めていきます。生産面では5工場体制になりましたが、工場ごとの強みを活かした最適な生産体制を敷き、各工場の情報交換も進めながら使用ユーティリティの削減も進めていきます。物流面ではデータに基づいた輸送方法や物流拠点などを検討し、物流コストの削減に努めていきます。営業面では販売データに基づいた戦略を立案し、最適化を同時に進めていきます。
これらのシナジー拡大のサポートのため、DX施策として、2027年3月期の基幹システム統合を目指しています。
(4)重点戦略②Sugarの基盤強化|業界再編の進捗状況
業界再編の進捗状況です。製糖業界は統合や工場の集約が続いており、例えば2000年と比較すると工場数は8工場減少、来年にはさらに1工場が減る見込みです。また、メーカー数も2000年比較で7社減少しており、さらに今年10月には当社グループである第一糖業の名前がなくなる状況です。
直近状況はスライドのとおりですが、その動きは過去に例を見ないほど加速しています。当社関連では東洋精糖の子会社化に加え、今年10月には第一糖業を吸収合併する予定です。当社以外では、DM三井製糖グループの関門製糖が来年9月をもって生産終了するというニュースもありました。
今後もさらなる再編や集約化が予想される中、当社としても基盤強化を追求するとともに、柔軟に生産拠点の最適化を推進する方針です。
(5)重点戦略③ 人的資本経営の推進
人的資本経営の推進についてご説明します。2025年3月期は新組織文化と事業・人材の可能性を広げる基盤整備として、3つの施策を実施しました。
1つ目は、冒頭でもご説明した新理念体系の構築と展開です。新しく策定したビジョンとアップデートされたバリューについて、全組織長が集合し、ワークショップを開催しました。さらにその組織長自らが実行役となり、各職場単位で新理念と自分自身をつなげる対話共創プログラムも展開しました。
2つ目は、新人事制度の運用開始です。この制度では個の成長と自律を促進するため、組織目標達成への取組みが社員一人ひとりの成長と組織のつながりを深める仕組みを導入するとともに、自らの意思で公募職務にチャレンジできる機会を提供しました。
3つ目は、HR-Techの活用です。これは、当社人材のスキルや意欲などを可視化し、経営・事業の貢献に資する人材の育成と、活用の基盤になる仕組みです。2026年3月期以降もこの取組みを加速させることにより、社内外の優秀な人材から「選ばれるウェルネオシュガー」となっていきます。
人材がいきいきと活躍し、成長することで、当社の企業価値の向上へとつながる好循環を生み出す、当社らしい人的資本経営を進めていきます。また、スライド右側に記載している2030年を目標とした主要KPIについては、2026年3月期以降も着実に伸長するように取り組んでいきます。
(6)重点戦略④ サステナビリティ経営の推進
サステナビリティ経営の推進についてご説明します。この度「サステナブル・ビジョン2030」を策定しました。スライドにも示したように、ウェルネオシュガーのWと各マテリアリティのKGIに含まれる"Well-being"の頭文字「W」の形を、象徴的に中央に配置しています。こちらは当社のオリジナルデザインであり、役職員が親しみやすさを感じ取れるもので、新理念体系とマテリアリティを一覧できる概念図として構成しています。
また、サステナビリティ経営をより力強く推進するため、マテリアリティごとに分科会を設置しています。この分科会には関連部署のメンバーだけではなく、やる気のある手挙げメンバーを加えることとしました。これにより、部署の事情や既成概念にとらわれず、全社目線で活発な議論が交わされ、多種多様な意見から適切な施策を検討できる仕組みとしました。
このように、当社グループでは「サステナブル・ビジョン2030」の実現に向け、全社一丸となってサステナビリティ経営により一層取り組んでいきます。
(1)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応 -現状認識、方針、取組み-
大場:執行役員財務部担当の大場です。私から、財務戦略についてご説明します。当社の2025年3月期のROEは株主資本コストを超える7.7パーセント、PBRは1倍を超えています。このような現状認識のもと、中期経営計画期間最終年度となる2028年3月期にROE9パーセント、連結当期利益70億円の達成を目指します。
本取組みにおいて、2025年3月期は、サステナビリティ経営の推進として「サステナブル・ビジョン2030」を策定、さらなる資本効率の向上として投資審査ルールの刷新、ROEと連動した役員報酬制度の導入などの施策を実施しました。
(1)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応-株主資本コストを上回るROEの実現-
近年の資本コストや資本収益性の指標は、2023年1月の経営統合の影響もあり、改善傾向にあります。今後も株主資本コストを上回るROE水準を継続的に実現するために、Sugarセグメントでの基盤強化を通じた収益性向上、Food & Wellnessセグメントでの成長投資の推進などにより、持続的な成長を目指します。
(2)キャッシュアロケーション
キャッシュアロケーションについてご説明します。スライド左側の図は、昨年公表した中期経営計画4期間累計のキャッシュアロケーション表です。右側の図は、中期経営計画1年目である2025年3月期のキャッシュアロケーション表です。
中期経営計画4期間累計では、営業キャッシュ・フロー、資金調達などのキャッシュインに対して、270億円から420億円程度の投資、株主還元として約130億円のキャッシュアウトを計画しています。
中期経営計画1年目である2025年3月期においては、キャッシュアウトとして東洋精糖の株式取得で62億5,900万円、また、精製糖事業の基盤維持やフードサイエンス事業の成長に関して28億2,000万円の設備投資を実施しました。株主還元についても33億3,700万円の配当を実施しており、残る中期経営計画期間においても、投資・株主還元へ戦略的に配分していきます。
なお、東洋精糖の株式取得については、2026年3月期に追加取得14億円を予定しています。
(3)株主還元
当社は連結配当性向(DPR)60パーセント、または親会社所有者帰属持分配当率(DOE)3パーセントのいずれか大きい額の配当を実施することを基本配当方針としています。
2025年3月期の年間配当額は、Sugarセグメントにおける増益の影響により中間配当46円、期末配当56円の年間102円となります。また、2026年3月期の年間配当額は、連結配当性向60パーセントに基づき、1株当たり年間108円の見込みとなります。