2025年3月期 決算のポイント

田中伸明氏:みなさま、こんにちは。株式会社ヒップ代表取締役社長の田中です。本日はご視聴いただきありがとうございます。2025年3月期の決算についてご説明します。

はじめに、業績内容について、当期の決算のポイントをご説明します。外部環境は、輸送用機器、半導体、製造装置など、いずれの業種のお客さまも製品開発に積極的で、当社への技術者ニーズは引き続き高い状況でした。

業績の概況とトピックスですが、新卒の未経験者の積極採用により、稼働人員が増加する中でも、高稼働を維持することができました。

顧客企業との連携を深め、技術料金の交渉を行ったこと、処遇改善に向けた取り組みにご理解いただいたことで技術料金が上昇しました。

これらの影響により売上高が過去最高に達し、利益についても当初予想を上回る増益で着地しました。

2025年3月期 決算概要

決算概要です。売上高は59億6,900万円、前期比プラス5.5パーセント、営業利益は5億6,500万円、前期比プラス2.0パーセント、経常利益は5億6,400万円、前期比プラス2.4パーセント、当期純利益は4億1,300万円、前期比プラス6.5パーセントとなりました。

売上高は決算のポイントでお伝えしたとおり、過去最高を更新しました。利益面も増益で当期を終えることができました。

売上原価については、社員への投資を積極的に進めるという考えのもと、前期比6.2パーセントの増加となりました。売上原価の構成要素は主に技術者の給与となります。新卒初任給を含むベースアップ、賞与の増額など、社員の処遇改善に取り組んだことが主な増加要因です。

当期純利益については、社員の処遇改善を積極的に行った結果、賃上げ促進税制の適用を受けられたため、前期比プラス6.5パーセントとなりました。

技術者数

当社の事業にかかわる指標についてご説明します。まずは技術者数です。当期末は771名となりました。前期から23名、3.1パーセント増加しました。

当期の採用数は、4月新卒48名、10月新卒3名、中途29名で、合計80名となります。採用数の合計は概ね前期並みとなりましたが、前期よりも中途採用が進んだことはプラス材料と捉えています。また、定着率が高まったことも技術者数の増加要因の1つです。

技術者の採用環境は今、急激な変化が起きています。メーカーなどにおいてもジョブ型雇用を導入するなど、優秀な人材の採用にさまざまな施策を取り入れています。そのような中でも、当社のキャリア形成に対する考え方や働き方を知ってもらうことで、共感して入社を決めていただく方が増えています。

これからも生涯技術者として、働き方の魅力を高め、技術者を目指す方々にしっかりと伝えていけるように、採用に力を入れていきます。

稼働率(2023年4月~2025年3月)

当期の稼働率は94.6パーセントとなり、前期からプラス0.5ポイントとなっています。

毎年4月に新卒が入社した際には、教育なども必要なため、期初の稼働率が低下します。当期の4月は稼働率90.6パーセントでスタートし、徐々に新卒の稼働が進み、期末時点では96.2パーセントとなりました。

また、当社では技術者のキャリア形成を意識した稼働を推進しています。単に稼働率を高くすることだけを目標とするのではありません。技術者の望むキャリアをヒアリングしながら、本人の適性などを考慮して、プロジェクトへの参画を図っています。

私たちの1つの目標値として、年間の稼働率は95パーセント程度と見ています。

技術料金

技術料金については、当期は4,217円となりました。前期比でプラス127円、3.1パーセントの増加となっています。技術料金は昨年も大きく上昇しましたが、それを上回る上昇となりました。

当社では適正な技術料金の確保を推進しています。サービスの質や技術者のスキルを高め、契約更新や業務内容が変わるタイミングで、お客さまとの交渉を行っています。

最近では、日本企業全体で賃上げに向けた動きもあります。当社としても技術者価値を高めていく方針であるため、お客さまのご理解をいただきながら、引き続き技術料金の交渉を続けていきます。

稼働時間

稼働時間です。スライドは技術者の1日当たりの平均稼働時間を示しています。当期は8.63時間となりました。前期からは0.04時間の減少となっています。

稼働時間は顧客の開発スケジュールや働き方により変化する数字であるため、当社では統制できないものですが、売上高を構成する重要な指標となります。

最近は働く方の健康管理に取り組む企業の動きも広がり、稼働時間に大きな変動は見られません。直近は8.6時間から8.7時間で推移し、今後大きくは変わらないと見込んでいます。

売上高 上位10社 比率

売上高の上位10社の比率です。当期は25.0パーセントとなりました。前期からは0.3ポイント減少しています。

当社は特定のお客さまに偏ることなく、幅広い取引を目指しています。メリットは2つあります。

1つ目は経営が安定することです。特定のお客さまや業種に偏ると、業績や開発スケジュールに影響を受ける割合が高くなりますが、幅広いお客さまや業種との取引は、経営の安定につながると考えています。

メリットの2つ目は、技術者の実践におけるスキルの向上です。技術者がお客さまのプロジェクトに参画し実績を積むことが、本当の意味でスキルを身につけることにつながり、仕事の幅を広げることになります。そのような選択肢を少しでも広げるために、さまざまな業種やお客さまとの取引が重要と考え、取引先を増やすことを目指してきました。

10年前は上位10社比率が34パーセント程度でした。さまざまなお客さまに提案を続け、現在は25パーセントとなっています。引き続きこのような展開で多くのお客さまに提案できるよう、営業活動を行っていきます。

事業分野別売上高

事業分野別の売上高です。輸送用機器は前年同期比プラス7.3パーセントと、前期並みの伸び率となっています。情報処理・ソフトウエアは前年同期比プラス12.7パーセントと、現在最も伸びている分野になります。

輸送用機器では、自動車関連の需要が引き続き高い状況です。当社の構成比においても最も高く、全体の32.3パーセントを占めています。

EVやPHVなどに各社が取り組まれている中で、それらに関連した案件も増えています。また、昨年から防衛関連の開発も増え、前年比較で18パーセントほど売上高が伸びています。

情報処理・ソフトウエアも車載システムや通信関連の案件が増加してきています。

当社を取り巻く市場環境

今後の持続的成長へ向けた取り組みについてご説明します。

まず、現在の市場環境です。顧客の開発投資は増加傾向にあり、異業種間での開発協業などもますます加速しています。米国の関税政策による影響は、現在のところ不透明です。しかし、我々が取引している分野である設計開発のところでは、直ちに影響はないと見込んでいます。

労働環境もますます変化しています。ジョブ型雇用への変革、専門職人材の不足に加え、働く人たちの価値観も多様化しています。そのような中で、専門スキルを持った技術者の価値はますます高まってくると我々は考えています。

創立30周年、その先へ

このような市場環境の中、当社は本年9月に創立30周年を迎えます。そしてその先の100年企業を目指し、昨年から新たなチャレンジとして、ビジネスモデルの再構築に取り組んでいます。「目指す姿」は、技術者と顧客に選ばれる強い会社、そして、キャリア形成を支援する企業です。

技術者は、「成長できる環境で働きたい」「さまざまな設計開発に携わりたい」「組織のしがらみなく働きたい」など、いろいろな思いを持っています。その思いに応えるため、技術者のベネフィットを追求していくことが重要だと考えています。

社員一人ひとりが成長性のある環境で、さまざまな開発現場の第一線において活躍でき、安心してプロの技術を顧客に提供していくことこそ、我々が求められていることであり、目指すべきところだと考えています。

持続的成長へ向けた価値向上イメージ

当社の持続的成長へ向けた価値向上のイメージです。

当社は技術者のための会社として技術者価値が中心にあり、そこを起点として高めていくことこそが、顧客価値・企業価値・社会的価値の向上につながると考えています。そのため、今後の最重要施策としても技術者価値の向上に取り組んでいきたいと考えています。

技術者価値向上・選ばれる企業へ向けた取組み

技術者価値向上・選ばれる企業へ向けた具体的な取り組みです。主に4つの施策を展開していきます。

1つ目は、成長投資として引き続き人に投資していきます。繰り返しお伝えしているとおり、処遇の改善もその1つです。そして教育の見直しを行い、教育にも十分に投資して、技術者がさらに成長していけるプラットフォームをしっかりと作っていきます。

2つ目は、これから技術者を目指す応募者の方々にこのような取り組みをしっかりと伝えていくことで、採用を強化していきます。PRツール、ホームページ等をさらに見直し、我々の考え方が正しく伝わることを目指して採用強化に努めていきます。

3つ目は、営業強化です。我々の営業は全国に拠点を持っており、そこで技術者のフォロー、お客さまのフォローを行っています。

その中で、お客さまにより満足していただくこと、そして新しいキャリアを作っていくためにも新しい開発・受注をしっかりと取っていくことが必要です。これらの活動を通して技術者が成長できる土台作りに努めていきます。

4つ目の施策として、利益率の向上も目指していきます。時代が変わると、やり方がどんどん新しく変化していきます。我々も社内の管理システムやこれまでのルール、制度などを見直し、現在に合った仕組みへと柔軟にアップデートしていきたいと考えています。

これらの施策を通して、さらなる技術者価値向上・選ばれる企業へ向けた動きを加速させていきたいと思っています。

2026年3月期 通期業績予想

2026年3月期の通期業績予想についてご説明します。2026年3月期は、先ほどお伝えした施策を展開していきます。その中で、売上高は前期比プラス4.9パーセントの62億6,100万円、営業利益は前期比プラス0.7パーセントの5億6,800万円、経常利益は前期比プラス0.8パーセントの5億6,900万円、当期純利益は前期比マイナス6.9パーセントの3億8,500万円を計画しています。

利益面は前期と同程度を見込んでいますが、今後の持続的成長のためには、そして力強い会社作りを進めるためには、重要施策である人への投資は重要な位置づけと捉えています。利益をしっかりと維持しつつ、未来へ向けた積極的な投資を進めていきます。

業績予想の前提条件

スライドに、通期業績予想の前提条件となる指標を示しています。稼働率、稼働時間については、概ね前年並みで推移すると予想しています。

採用については、今年4月に新卒が38名入社しました。

中途採用は50名を計画しています。2026年4月入社の新卒採用は、60名の計画です。技術者にとっての魅力をしっかりと高め、採用計画を達成していきたいと考えています。

利益配分に関する基本方針

利益配分に関する基本方針についてご説明します。当社は利益配分に関する基本方針を、本年5月8日付で変更しました。その理由はスライド中段に記載のとおり、株主のみなさまへの利益還元の水準を明確化するためです。したがって、配当性向の目安を設けています。

変更後の基本方針については、配当性向50パーセントを目安に、事業成長とともに累進的配当を目指し、株主のみなさまへの積極的な利益還元を実施していきます。

配当金について

当期および来期の配当についてご説明します。2025年3月期は、期初予想では1株当たり51円でしたが、先ほどお伝えした基本方針に基づき上方修正しました。前期から4円増配の54円となります。これにより配当性向は51.1パーセントとなり、昨年と同水準となりました。

昨年11月に自己株式の取得も行いましたので、総還元性向は62.3パーセントとなっています。

来期については、当社が創立30周年を迎えるため、支えていただいた株主のみなさまへの感謝を示すかたちとして、1株当たりの配当金は普通配当55円に記念配当15円を加えた70円を予定しています。当期から16円の増配となり、配当性向は70パーセントを超える予定です。

これまでも安定的な配当を実施してきましたが、長期にわたり保有する株主の方々にも報いていくために、株主のみなさまへの還元にも力を入れていきます。今後の事業展開の拡大を図りながらしっかりと行っていきたいと考えています。

以上、2025年3月期の決算および2026年3月期の予想についてご説明しました。

田中氏からのご挨拶

当社は今年で創立30周年を迎えます。これもひとえに社員のがんばり、そしてお客さまのご指導、株主のみなさまのご支援のおかげだと考えています。当社は100年企業を目指していますが、まだ30周年を迎えたばかりです。次の70年に向けてしっかりと経営していきます。

どうぞ引き続きご支援のほどよろしくお願いします。本日はご視聴いただき、誠にありがとうございました。