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齋藤真氏:株式会社ジャノメ代表取締役社長の齋藤です。本日は、2025年4月からスタートした中期経営計画「Move! 2027」について、内容をご説明します。

スライド左下にイメージロゴがありますが、この「Move! 2027」という計画名称とイメージロゴは、計画達成へ突き進んでいくスピード感と、各施策にかける情熱をテーマとして命名・作成しました。

本日のアジェンダです。まず、前中期経営計画「Reborn 2024」の内容と達成状況を振り返ります。

目標値の達成状況

「Reborn 2024」で掲げた事業戦略の多くは着実に遂行してきましたが、長期化するロシア・ウクライナ情勢や緊迫する中東情勢、中国の需要回復の遅れなどにより、外部環境が大きく変化しました。

また、家庭用機器事業ではコロナ需要の反動、産業機器事業では市場の投資抑制等の影響もあり、計数目標とした売上高・利益水準・ROEともに目標未達となりました。

事業別戦略の振り返り:家庭用機器事業

事業別戦略の振り返りです。ミシンを中心とする家庭用機器事業においては、インド市場での販売強化や国内での学校向け施策の拡充、パイロット店舗である「ボビナージュ」の多店舗化を実施しました。

ミシンのさらなる売上・収益拡大に向けては、「JANOME」ブランドの確立・強化や、ニーズを踏まえた新製品投入に改善の余地があり、継続課題としていきます。

事業別戦略の振り返り:産業機器事業

ロボット・プレスを中心とする産業機器事業においては、インドに新しい販売拠点として、JANOME Industrial Equipment India社(JIE-India社)を設立しました。そして部品の内製化や生産工程の自動化を推進し、Eco認証の取得などの取り組みを実施してきました。

インドをはじめとした重点拠点での販売拡大や、生産技術を駆使した高付加価値製品の販売拡大に成長の余地があり、継続課題としていきます。

事業別戦略の振り返り:IT関連事業

IT関連事業においては、家庭用機器事業で使用する貿易システムの改修完了や、開発経験者による課題解決型営業を活用した顧客の獲得などのさまざまな実績により、業績は順調に推移しました。しかしながら、グループシナジー創出に向けたサービス領域拡大にさらなる余地があると認識しています。

以上、「Reborn 2024」で認識した課題については、「Move! 2027」でも取り組みを継続し、さらに進化させるかたちで利益成長につなげていきたいと考えています。

企業理念と長期ビジョン

当社は長年にわたり、「世界の人々の豊かで創造的な生活の向上を目指す」「常に価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献する」という企業理念のもと、事業を展開してきました。

今般、中期経営計画の策定を機に、ジャノメが長期的に目指す姿として、新たな長期ビジョン「つくる歓びを伝える会社」を定めました。

長期ビジョン

長期ビジョン「つくる歓びを伝える会社」には、企業理念をベースとして、「日常生活で使うものや、芸術作品を“つくる”(作る・創る)」「生産現場や研究機関で、様々なものを“つくる”(造る・創る)」「アプリ・システムでラクになる仕組みを“つくる”(作る)」といった、JANOMEグループが携わる「もの・こと」づくりへの思いが込められています。

このビジョンの実現に向けて、今般、中期経営計画「Move! 2027」を策定しました。

基本方針

本中期経営計画「Move! 2027」の計数目標として、最終年度である2028年3月期の売上高は435億円、営業利益率は9.2パーセント、ROEは8.1パーセントを設定しました。

目標達成に向けた基本方針として、事業ごとの戦略に加え、人事戦略と財務戦略の方針を策定しました。各戦略については、後ほど詳しくご説明します。

経営指標

スライドには、計数目標を達成するための事業別売上高の目標および戦略の概要を記載しています。事業ごとの戦略については、これから詳しくご説明します。

家庭用機器事業

家庭用機器事業の戦略です。基本方針は、「ブランドアイデンティティの確立・強化」「製品投入によるシェア拡大」です。

現状、米国・欧州・豪州などの重要市場は成熟しており、消費者のニーズが高度化・細分化しています。一方で、インドなど一部地域では電動ミシンの普及途上にあり、今後さらなる成長が見込まれます。

そのため、ブランドアイデンティティの確立・強化を目指したブランド・機能・サービスを含む付加価値の提供と、市場固有のニーズに沿った新製品の投入により、シェア拡大を図っていきます。

また「ブランドアイデンティティの確立・強化」に向けた取り組みとして、ブランド戦略・マーケティング戦略に関する全社横断的な体制と組織を構築します。

さらなるマーケティング戦略の深化、消費者ニーズを踏まえた研究開発、販売戦略ならびに販売チャネルやエンドユーザーの方々との関係強化、サービス面の充実によるモノ売りからの脱却のサイクルを通じて、「JANOME」ブランドを強化していきます。

家庭用機器事業

主要な市場である北米・大洋州・欧州・日本・インドの将来的な市場規模について、1年間当たり平均でどの程度の成長が見込まれるかを示すCAGRと目標とする市場シェアは、スライドに記載のとおりです。ご参考までにご覧ください。

各市場での目標達成に向け、シェアアップに努めていきます。

産業機器事業

産業機器事業の戦略です。基本方針は「重要市場への注力」「高付加価値製品の販売強化による売上・収益性の強化」です。

前中期経営計画では、インドの拠点設立、中国の新規案件獲得や既存取引先との関係強化など、重要地域での販売を推し進めてきました。

本中期経営計画においては、さらなる追加拠点の設立や、拠点機能・人員の強化、新たな領域への進出を視野に入れた営業活動の強化等を通じて、さらなる売上の拡大を図っていきます。

さらに、単体で販売されることが多かったロボットや、プレスを組み込んだ装置化製品の販売を拡大し利益率の向上を図るとともに、生産体制の最適化や継続的な原価改善活動を実行し、収益性の強化を図っていきます。

生産管理

家庭用機器事業、産業機器事業の成長戦略を支えるため、生産管理部門では前中期経営計画までの取り組みの継続に加え、生産能力の拡大や生産体制の効率化を図っていきます。

研究開発

研究開発部門では、従来は技術を起点とした開発・生産・販売体制と、販売チャネルのフィードバックによるサイクルで競争優位性を担保してきました。

本中期経営計画ではさらに事業戦略も組み込んだ上で、要素技術ならびに製品の開発を推し進め、適時・適切なタイミングで製品を投入できる開発体制に高度化していきます。

IT関連事業

IT関連事業の戦略です。基本方針は「他事業の価値向上に向けた連携強化及び既存事業の収益性維持」です。

既存の事業領域については、生産性向上の取り組みを継続することで、高い収益性の維持に努めていきます。

課題となっている他事業との連携については、外部企業との連携等も視野に入れながら、ソフトウェア開発技術の進化と評価を推進します。また、家庭用機器事業や産業機器事業の成長戦略に沿った各種アプリの開発等を通じて、グループシナジーの創出といった新領域に挑戦していきます。

人事戦略

人事戦略としては、「優秀な人財の確保」「キャリアパス形成支援」「働きやすい環境の整備」「成果に応じた評価・報酬」という4つの視点から、多様な人財の配置や人事制度改革といった施策を実行していきます。

これにより人的資本価値の進化を図り、従業員の働きがいの向上と、JANOMEグループの事業推進力強化の好循環を構築していきます。

資本収益性と市場評価(現状認識)

財務戦略です。計数目標であるROE8パーセント以上、ならびに当社が目指す水準であるPBR1倍以上の達成に向けて、これまでご説明した各事業における成長戦略に加え、「株主還元の強化」と「資本効率向上」のための施策を実行していきます。

株主還元

株主還元です。配当については、長期間での安定した配当を実施し、中長期的な利益成長に応じた増配を目指します。

加えて累進配当を意識し、DOE3パーセント以上かつ、連結配当性向40パーセント以上を目安に配当を実施していく考えです。

並行して、資本市場の動向を踏まえながら機動的な自己株式の取得も実施していきます。

利益成長に応じた増配と、機動的な自己株式取得といった株主還元の実施を通じ、株主のみなさまに将来性を感じていただけるよう努めていきます。

キャッシュアロケーション

中期経営計画3年間におけるキャッシュアロケーションです。営業活動による150億円と、資産効率化や政策保有株式の縮減等による30億円で、計180億円程度のキャッシュを創出する計画です。

キャッシュアロケーション

キャッシュアウトとなる投資の内訳は、まず成長投資に105億円、このうち既存設備の維持更新を除く85億円を戦略投資と位置づけ、各事業の成長戦略の実現に向けた投資を積極的に実行していく考えです。

残りの75億円については、自己株式の取得ならびに配当の原資とし、株主のみなさまへ還元を実施していきます。

このような戦略的なアロケーションにより持続可能な成長を実現していくことで、株主のみなさまに当社の将来性を感じていただけるよう努めていきます。

企業価値/株主価値の向上に向けて

資本コスト・株価を意識した経営の実現に向けた対応策についてご説明します。スライドに記載した取り組みを検討することについて、2024年2月に公表しました。

本中期経営計画3年間においては、「利益成長」「株主還元の強化」「資本効率向上」「サステナブル経営」に関する具体的な取り組みを実施していくことで、企業価値ならびに株主の価値の向上を図り、PBR1倍以上を目指していきます。

マテリアリティ

最後に、サステナブル経営の推進についてご説明します。重要な経営課題として、「事業活動に関連するマテリアリティ」「経営基盤に関連するマテリアリティ」を特定しました。

これらのマテリアリティへの取り組みを、中期経営計画3年間の施策に反映させることを通じて、企業価値の向上を図っていく所存です。

齋藤氏からのご挨拶

中期経営計画「Move! 2027」についてのご説明は以上となります。今お伝えした中期経営計画の戦略を着実に実行し、成長投資と株主還元を両立させながら、持続可能な成長を実現していきます。

今後も長期ビジョン「つくる歓びを伝える会社」を目指し、企業価値の向上に努めていきます。ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。