1.連結業績

八木徹氏:株式会社近鉄百貨店、代表取締役専務執行役員の八木です。2025年2月期の決算概要について、決算説明資料に基づいてご説明します。

まず、当年度の連結業績についてです。百貨店が牽引し、増収増益を確保しています。売上高は、百貨店での特選ブランドやフランチャイズ事業の強化に加え、免税売上や外商売上による高額商品を中心に好調に推移しました。また、子会社の株式会社シュテルン近鉄においても、新車販売が好調に推移しました。

これらにより、売上高は前年比16億100万円、1.4パーセント増収の1,151億700万円となっています。

営業利益は主に百貨店での増収に加え、フランチャイズ事業の進捗などによる利益率の改善に加え、コスト削減も継続したため、前年比14億5,000万円、37.2パーセント増益の53億5,300万円となりました。

経常利益は前年比12億8,300万円、33.2パーセントの増益で、51億4,800万円となっています。

本年の特別損益については、特別利益に政策保有上場株式の売却による投資有価証券売却益2億3,200万円を計上しました。特別損失には、賃借土地返還に伴う支払補償費と、店舗改装に伴う固定資産除却損等を合わせ、4億2,000万円を計上しています。前年比では、特別利益が7億4,600万円の減少、特別損失は5億4,500万円減少しました。

法人税等を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は、前年比7億600万円、25.4パーセント増益の34億8,400万円となっています。各段階利益でコロナ禍前の2019年度を上回りました。

1.連結業績

販売費および一般管理費の増減についてです。当期における販管費計は528億1,200万円となっています。社員の処遇改善に伴う人件費の増加や、子会社の株式会社Kサポートが第3四半期から連結除外となり、業務委託の連結相殺がなくなったことによる諸費の増加により、前年比10億8,100万円の増加となりました。なお、コロナ禍前の2019年度と比較すると、13.7パーセントの削減となっています。

2020年度から取り組んでいる、コスト構造改革による販管費の圧縮については、今後も引き続き推し進め、さらなる効率化を図っていきたいと考えています。

2.セグメント別の業績

セグメント別の業績についてです。卸・小売業はシュテルン近鉄の輸入車販売が好調に推移したため、セグメント売上高は148億7,800万円で、前年比9.9パーセントの増収となりました。セグメント利益は3億7,500万円で、前年比14.5パーセントの増益となっています。

内装業は、株式会社近創で工事受注が好調に推移したことにより、売上高は40億3,700万円と、前年より5.1パーセント増加しました。しかしながら、前年度に高益率の大口受注があったため、営業利益は8億7,300万円で、前年比2.2パーセントの減益となっています。

不動産業は、賃貸収入により売上高は2億9,100万円、前年比1.2パーセント減となり、営業利益は2億1,600万円で、前年比3.4パーセントの減益となっています。

その他事業は、連結子会社であったKサポートを、第3四半期より連結除外したため、売上高は28億5,300万円で、前年比14.9パーセント減となりました。営業利益は6,600万円で、前年比39パーセントの減益となっています。

3.連結貸借対照表

連結貸借対照表についてご説明します。負債・純資産合計は、減価償却による建物および構築物の減少などにより、前期末に比べ9億7,500万円減少し、1,143億8,800万円となっています。

負債については、借入金の減少などにより、前期末比で22億3,400万円減少し、758億1,200万円となりました。

純資産については、株式需給緩衝信託からの自己株式の取得により増加したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前期末比で12億5,800万円増加し、385億7,600万円となっています。なお、当期末の自己資本比率は33.7パーセントです。

4.2025年度業績予想

業績予想についてご説明します。2026年2月期の連結業績予想には、大阪・関西万博へのオフィシャルストア出店による増収を織り込み、第2四半期累計では、売上高は599億円、営業利益は20億円、経常利益は18億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は15億円を見込んでいます。

通期においては、売上高は前期比5.1パーセント増収の1,210億円、営業利益は54億円、経常利益は48億円、親会社株主に帰属する当期純利益は35億円を見込んでいます。

4.2025年度業績予想

2026年2月期の個別業績予想です。第2四半期の累計では、売上高は503億円、営業利益は18億円、経常利益は17億円、四半期純利益は15億円を見込んでいます。

通期においては、売上高は前期比6.7パーセント増収の1,010億円、営業利益は44億円、経常利益は百貨店の本店の改装費を織り込み38億円、当期純利益は31億円を見込んでいます。

なお、2025年2月期の期末配当については、2025年1月10日の公表どおり、1株当たり20円としています。また、2026年度2月期の期末配当予想も、同じく1株当たり20円を予定しています。

最後に、「スタンダード市場上場維持基準への適合に関するお知らせ」を開示しています。2025年2月末に、流通株式比率がスタンダード上場維持基準の25パーセントを超え、26.6パーセントとなりました。その結果、当初計画より2年前倒しで、すべての上場維持基準に適合しています。私からのご説明は以上です。

INDEX

梶間隆弘氏(以下、梶間):代表取締役社長執行役員の梶間です。続いて、本年度よりスタートする中期経営計画についてご説明します。

当社は約10年後の2036年に、「大軌百貨店」の開業から数えて創業100周年を迎えます。今回の計画では、まず「10年後にありたい姿」を設定し、そこからバックキャストするかたちで、2028年度までの中期的に行うべき事業戦略について策定しました。

その中で、中期ビジョン「新たな価値創造事業会社=百“価"店へと生まれ変わる」を掲げ、4つの重点施策として、「『百“価"店事業』への進化」、「新たな事業ポートフォリオへの種まき」、「将来への基盤整備」、「『資本コストや株価を意識した経営』の実現」を掲げています。

なお、資料は全部で53ページあります。本日は、旗艦店「あべのハルカス近鉄本店」のリモデルを核とした「『百“価"店事業』への進化」など、特に中期経営計画の重点施策について詳しくご説明したいと思います。

II.長期ビジョン

当社が目指す長期的な姿は、「くらしを豊かにするプラットフォーマー」となることです。これは、近鉄商圏に「暮らす」「働く」「訪れる」人々に向け、多種多様な「価値」を提供する“場"を有する事業者となることを意味します。

百貨店事業で培った「店頭での接客力」、外商というお客さまに寄り添う「人的サービス」、ECやアプリなどの「デジタル対応」といったさまざまな顧客接点を活かし、百貨店内の事業のみならず、近鉄グループ力も活かした、さまざまなモノ・コト・サービスを提供する企業を目指します。

今後も近鉄グループを代表する小売業として、進化への歩みを止めず、くらしのプラットフォームを通じて「豊かなくらしと価値ある生活文化」を創造・提供することで、商圏顧客のLTV最大化を目指します。

III.中期経営計画(2025〜2028年度)の概要

中期経営計画の概要について、ポイントをご説明します。最初にお伝えしたように、中期ビジョンとして「新たな価値創造事業会社=百“価"店へと生まれ変わる」を掲げています。

「百“価"店」にはモノを表す、貨物の「貨」ではなく、多様な価値提供を表す、価値の「価」を用いています。これには、従来の百貨店業にとらわれず、お客さまのニーズの変化に合わせたサービスや、新たな事業へのチャレンジも含め、会社が生まれ変わり、新たな価値を提供していきたいという想いを込めています。

今回の中期経営計画では、あべのハルカス近鉄本店・外商を核に、既存の「百“価"店事業」をより強固にしながら、事業環境の変化に対応した基盤強化により、さらなる成長を目指していきます。

III.中期経営計画(2025〜2028年度)の概要

中期経営計画の経営数値目標についてご説明します。スライドに記載のとおり、計画最終年度である2028年度は、連結営業利益65億円、連結ROE9.0パーセント以上を目標とします。株主、従業員および地域社会への還元のバランスを図り、持続的な安定成長を目指していきます。

この目標を達成するため、4年間で350億円の投資を計画しています。成長投資として200億円を計画しており、収益基盤である「あべの・天王寺エリア」への100億円の積極投資に加え、将来の成長への基盤整備に対する投資も実施します。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

中期計画で取り組む重点施策4点をご説明します。1点目は、既存事業における「百“価"店事業」への進化です。最重点項目として、旗艦店である、あべのハルカス近鉄本店のリモデルに取組みます。

あべのハルカス近鉄本店は、2024年で10周年を迎えました。開業直後から課題にスピード感を持って対応し、コロナ禍においても積極的に施策を強化してきました。

10周年を経た、あべのハルカス近鉄本店では、本計画期間においてリモデルを実施し、常に期待される「価値創造百貨店」へと進化させます。4年間で全館10万平米の約3割をリモデルし、顧客層の拡大、次世代顧客獲得を図っていきます。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

具体的な施策として、都市型「価値創造百貨店」としての魅力を深耕します。

ラグジュアリーゾーンをさらに強化するとともに、今後、主要なターゲットとする富裕層に特別かつ快適な体験を提供するため、コンシェルジュ・サロン機能を備えた富裕層向けの会員限定サロン「プレミアムサロン(仮称)」を新設します。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

食品売場では、「毎日が楽しい」「何度も行きたくなる」デパ地下を構築します。定住人口の多い足元商圏の強みを活かしつつ、広域から上質な顧客を集客するため、4年間で食品売場の約3割をリニューアルします。

お客さまの支持が高い惣菜・菓子の強化、「地域の美味しいが、買える・食せる」地域共創の取組みに加え、来店動機となるバリエーション豊かなレストラン街を構築します。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

今回のリモデルでは、ライフスタイルや購買行動の変化に対応するため、ファッションゾーン・ライフスタイルゾーンも再構築します。

ファッションゾーンでは、「セレクトショップゾーン」「コンバインファッションゾーン」の強化に加え、フロア全体のテーマに合わせた「スクランブルMDゾーン」を構築していきます。

また、各ショップの最優良顧客を対象に、ブランドやショップの垣根を超えた提案やサービスを提供するファッションコンシェルジュ・サロン「ハルカスクローゼット(仮称)」を新設します。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

さらに、世代関係なく滞在できるコミュニティ型スペースの設置、POPUP・催事強化、体験の提供、近鉄グループ協業による「語りたくなる売場づくり」など、あべのハルカス近鉄本店のリアルならではの強みを活かしたコト・サービス・体験を強化し、足元商圏に加え、広域からの集客強化を図ります。

インバウンド顧客に対しても、インバウンドサロンの機能向上、店舗施設を活用した本格的な日本体験などのコト消費の提案を通じ、おもてなしを強化し、リピーター化を目指します。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

2点目は、あべの・天王寺エリアの魅力最大化への取組みです。あべの・天王寺エリアは、都会のターミナルでありながらも緑や文化を有する、大阪市内でも有数の文教地区です。また、足元商圏には大規模居住地が広がり、新幹線・関西国際空港・大阪国際空港にもダイレクトアクセスのできる好立地にあります。

このあべの・天王寺エリアを、近鉄グループや周辺商業施設、地元企業と連携し、交流人口も定住人口も1日を過ごすことができるよう、キタ・ミナミとは違う個性を確立し、魅力アップを図ります。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

あべのハルカス近鉄本店に隣接する、「Hoop」「and」についてもリモデルを実施するほか、2025年7月には、地上4階建の医療モール「あべのウェルビーイングテラス」を開業します。それぞれに異なる館の役割・機能を発揮し、「ハルカスタウン」の醸成を目指します。

これらを実現するため、あべの・天王寺エリアに4ヶ年で総額100億円の投資を計画しています。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

3点目は、全社顧客戦略の推進です。全社顧客の再定義により新たな顧客政策を推進し、近鉄商圏の顧客LTV最大化につなげます。

具体的には、外商、KIPS、友の会といった組織別顧客に加え、近鉄グループ顧客ID統合を活用し、近鉄グループ各社の顧客を当社の顧客候補として再定義します。

また、保有カード別・組織別ではない顧客層別政策を、特に上位層については外商組織を中心に推進し、優良顧客へのランクアップ、VIP顧客化を進めていきます。

さらに、富裕層への取組みを強化します。特にあべのハルカス近鉄本店に新設する会員制プレミアムサロンやアテンドサービス、ライフコンシェルジュサービスなどの提供により、接遇やサービス面を強化し、外商売上高を現在の約2割増まで伸ばす計画です。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化 (4)地域店の進化

4点目は、地域店の進化です。地域店は「近鉄百貨店」として地域の価値向上に貢献し、駅前立地にある地域のインフラ機能として、必要なモノ・コト・サービスを提供し、なくてはならない存在であり続けます。

コロナ禍を経ての構造改革により、地域店は営業利益段階での全店舗黒字化を2年連続で達成しました。本中期経営計画期間においては、利益を安定継続させるため、収益構造改革、コスト構造改革、働き方改革、この3つの改革をさらに徹底し、もう一段階の店舗構造改革を進めていきます。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

館としては、低層階に百貨店機能を集約し、デパ地下や上質なライフスタイルを提供する一方で、中層階から上層階には地域のマーケットニーズに合わせ、大型専門店や地域コミュニティ・サービス機能を導入し、地域に必要なモノ・コト・サービスを提供する「価値提供型」店舗への進化を目指します。

また、各地域店にあべのハルカス近鉄本店で取り扱う商材の窓口機能を構築し、地域商圏のお客さまに対するサービスの最大化を図っていきます。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化 (5)自主事業の進化

5点目は、当社事業における柱の1つへと成長した、自主事業の進化です。業種・店舗数を拡大してきたフランチャイズ形態については、「量」から、事業の生産性向上を目指す「質」への転換を図っていきます。また、フランチャイズ事業で培ったノウハウを、「百“価"店事業」の深耕や新たな事業ポートフォリオの構築など、他の事業に活かし、全社でのさらなる成長を図っていきます。

2023年から参入した農業事業では、いちごの生産に加え、2024年度よりマンゴーの生産へと拡大しています。生産から販売まで自社社員が一気通貫した事業運営を行い、自社ブランド化することで、高収益化を図ります。

IV-1.「百“ 価 ”店事業」への進化

6点目は、大阪・関西万博の取組みです。関西拠点の百貨店として、「2025年日本国際博覧会」の取組みを推進し、2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博の会場内にオフィシャルストアを出店します。

百貨店のノウハウを活かし、大阪・関西の人気企業とのコラボ商品や、地元企業とのオリジナル商品を開発・販売し、世界に向けて大阪・関西、日本の魅力を発信します。

IV-2.新たな事業ポートフォリオへの種まき

2つ目の重点施策は、新たな事業ポートフォリオへの種まきです。グループの強みや資産を活用し、ポートフォリオの多角化を推進し、将来を見据えた新たな「成長の柱」を生み出していきます。

具体的には、グループ会社を核とした食品製造・小売事業への参入、グループ会社である建装事業の強化・拡大、法人外商の商事事業への取組みを強化、フランチャイズ事業をベースとした自主事業での外部施設進出などに取り組みます。

IV-3.将来への基盤整備

3つ目の重点施策は、将来への基盤整備です。事業環境の変化に対応し、今後の成長を支えるため、人的資本経営、DX戦略を積極的に推進します。ここでは、ポイントのみ簡単にお伝えします。詳細は44ページから48ページをご参照ください。

人的資本経営については、事業の成長・拡大の根源となる、人への投資を積極的に進め、処遇改善や人事制度改革を行います。

IV-3.将来への基盤整備

DX戦略では、中期経営計画の4ヶ年において、すべての事業と実務領域において取組みを加速します。

IV-4.「資本コストや株価を意識した経営」の実現

4つ目の重点施策は、「資本コストや株価を意識した経営」の実現です。キャッシュアロケーションについては、4ヶ年で450億円のキャッシュインを計画しています。

改装投資やDX投資などの成長投資に約200億円、施設工事・システム投資などの更新投資に約150億円を計画しています。別途、戦略的投資枠として、事業成長を押し上げる投資が見込める場合、約100億円の借入枠も活用します。

IV-4.「資本コストや株価を意識した経営」の実現

現状、当社の連結ROEは株主資本コストを上回り、連結PBRも2倍を上回って推移しています。今後は、収益性向上と株主還元方針の見直しにより、連結ROE9.0パーセント以上を目指していきます。

中期経営計画の着実な実行を通じて収益性を向上させ、連結売上高営業利益率は5パーセント以上を目指します。そして、自己資本が着実に蓄積されている状況を踏まえ、将来の事業展開に備え財務体質の強化を図る一方で、安定的な配当を継続するというこれまでの方針から、2025年度より、財務健全性を維持しつつ、業績に応じた株主還元を強化する方針にシフトしていきます。

また、2025年度より連結配当性向目標として30パーセントの目安を新設します。

創業から2036年で100年、チャレンジをし続けてきた企業として、我々は進化を続けます

当社は創業から2036年で100年目を迎えます。チャレンジをし続けてきた企業として、我々は進化を続けます。私からのご説明は以上です。

質疑応答:大阪・関西万博の影響について

質問者:明後日4月13日に大阪・関西万博が開幕しますが、この影響が少しずつ増えていく実感を持たれていますか? あるいは、これから期待できる部分があるのでしょうか? 足元の見通しを教えてください。

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