2024年12月期決算及び中期経営計画説明

中野剛人氏:株式会社eWeLL代表取締役社長の中野です。本日は決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。2022年に上場して以来、3回目の決算発表及び2025年から3ヶ年の中期経営計画の説明になります。あらためて日頃より当社を応援していただいているみなさまに、心より感謝申し上げます。

それでは、資料に沿ってご説明します。

事業概要 在宅医療における訪問看護領域

まず、当社のご説明の前に、事業の前提となる日本の医療の領域についてご説明します。

こちらの図は左から右に人の一生を表しており、医療領域を4つの矢印に分けています。「健診・予防」「急性期医療」「慢性期医療」「終末期医療」の4つの領域のうち、訪問看護は右手のピンクの「慢性期医療」「終末期医療」にあたります。

例えば、救急車で病院に運ばれて手術をするのは「急性期医療」で、手術が終わって回復していく療養は「慢性期医療」になりますが、これまでは両方とも病院の中で完結していました。それが今は、国策により、手術が終わったら患者は自宅へ帰されて、在宅で慢性期医療を行うように変わっています。

そして後ろのグラフは高齢者人口を表してますが、ご覧のとおり、今後このピンクの側が加速度的に増えていきます。

事業概要 在宅医療における訪問看護領域

この在宅での慢性期医療を実現するための体制が、こちらの厚生労働省が出している図となります。

これを実現すると、医療費が35パーセント削減されることが調査で明らかになっており、政府としても待ったなしの国策となります。地域包括ケアで医療と介護の連携は欠かせませんが、専門性の違いなどから連携は極めて難しい状況です。

例えば、介護のヘルパーの「電球を替えた」「シーツを替えた」というのをドクターが聞いても意味がないですし、ヘルパーにドクターが診断や治療内容を説明しても、どのように生活援助に必要かわからないケースもあります。

そのため実際の現場では、両方のことをわかっていて、医療保険と介護保険の知識を持つ訪問看護が間に入って、はじめて医療と介護の連携ができています。つまり、この図の随所に記載されているとおり、訪問看護は慢性期医療の中心的な役割を担っています。

事業概要 iBowとは

しかし訪問看護は、利用者が年々増加しているにもかかわらず、担い手となる訪問看護師数は需要に追い付いていないため、限られたリソースで多くの患者をケアする負担が増え続けています。

しかも、いまだアナログで業務を行っているステーションが多く、記録などの業務に膨大な時間を使って、専門性の必要な看護ケアに十分な時間を割くことができない状況が常態化しています。

その訪問看護の課題をDXで解決するのが、我々が提供する訪問看護専用の電子カルテ「iBow」です。「iBow」には、患者の情報、医療従事者がケアにあたった身体的・精神的情報、在宅での療養経過の情報などが日々記録されていきます。

これらの重要な慢性期の医療データは、手書きではなく電子化することで活用可能なかたちで蓄積されます。「iBow」は5万4,000人の医療従事者に日々利用されており、延べ74万人の患者の療養生活を支え、月間170万件、累計7,200万件の慢性期医療データを2014年から蓄積し続けています。

ビジネスモデル

その「iBow」の料金体系はサブスクリプションで、月額1万8,000円の基本料金と、1訪問ごとに100円をいただく従量課金を採用しています。このサブスクリプションモデルには非常に重要な意味があります。それは、我々が常に「使いやすさ」を追求し続ける必要があるという点です。

もし「iBow」が買い切り型のシステムであれば、導入して終わりになってしまう可能性があります。しかし、サブスクリプションモデルである以上、毎月料金をいただくため、常に「iBow」を改善し、使いやすさを維持し続けなければお客さまに選ばれ続けることはできません。

このモデルこそが、「iBow」が常に進化し、「誰でも簡単に使える」価値あるシステムであり続ける原動力となっています。そしてこの料金体系には、もう1つ重要な意味があります。1訪問100円は、訪問看護のビジネスモデルに非常に合致しています。

訪問看護ステーションは医療でありながら独立採算制となっており、収益構造としては、看護師が患者宅を1回訪問するごとに、国民皆保険から約8,500円の報酬がステーションに支払われます。つまり、訪問件数を増やせば増やすほど売上が上がる仕組みとなっています。

そのため、訪問件数を増やして経営を安定させることが非常に重要となります。「iBow」はこの訪問件数を増やすための強力なツールとなります。

書類作成や移動時間の無駄を省き、レセプトも記録から自動作成することで、看護師の業務時間を大幅に削減します。その結果、看護師は生み出した時間でより多くの患者を訪問でき、ステーション全体の収益向上に繋がります。

さらに、ステーションが「iBow」で効率化し訪問件数を増やせば増やすほど、1訪問100円の仕組みで我々の売上も伸びるため、ステーションと共に成長できるビジネスモデルとなっています。

また、開業したばかりで訪問件数の少ないステーションにとっては、1訪問100円の料金体系なので費用負担も軽くて済みます。つまり、ステーションの成長段階に応じた柔軟なコスト設計となっており、あらゆるステーションに適した体系となっています。

2024年12月期 決算ハイライト

それでは、2024年12月期の決算ハイライトについてご説明します。

第4四半期は契約件数が過去最高を更新し、178件となりました。昨年と同水準の新規契約にプラスして、大口の法人さまから段階的に複数ステーションの契約をいただいたことが過去最高の結果となりました。

これにより、期末の契約数も当初掲げていました目標の3,024件を上回り、期末契約数は3,028件となっています。第4四半期にご契約をいただいている大半が4月から売上に寄与するお客さまとなりますので、2025年12月期に向けてもすばらしいスタートが切れていると考えています。

また、第3四半期にもお伝えしましたが、「AI訪問看護計画・報告」は12月末の「iBow」契約者のうち、27パーセントのステーションにご契約いただきました。10月の時点で当社想定より多くのステーションに使っていただいていることをお伝えしましたが、8ヶ月間の無料期間にほぼ全てのユーザにこのAI機能を体験していただき、2025年1月の有料化以降もこのように多くの方に使いたいと思っていただけています。

またこれにより、医療分野の人手不足という大きな社会課題を解決できる一助になっていることも、当社の社会的意義を感じています。

このAIサービスは、我々が10年以上にわたり蓄積してきた訪問看護の医療データを基盤としている点が最大の強みです。他の汎用的なAIサービスと根本的に異なるのは、7,200万件を超える医療の臨床データからAIが学習しているため、ハルシネーションと呼ばれるAIの誤った生成が起きにくく、医療文書として高い精度を実現できている点です。

これは他社の安価な保険請求支援サービスとの圧倒的な差別化のポイントになっていると考えています。

業績予想、KPIは当社水準を上まわって達成し、特に営業利益は業績予想を上回る水準で着地できており、配当も増加させています。詳細については後ほどご説明します。

2024年12月期実績

それでは、2024年12月期の詳細をご説明します。

①2024年12月期通期業績サマリー

まず、売上高・営業利益・営業利益率についてですが、先ほどもご説明したとおり、いずれも業績予想に対して上回る水準で着地することができました。

こちらもサマリーですので、詳細は次のページ以降でご説明します。

②通期業績推移

こちらは、通期の業績推移となります。2018年12月期以降で6期連続の増収、2020年12月期の黒字化以降で4期連続の増益となり、強い利益基盤の安定した成長体質の企業経営となっています。

また、上場した2022年12月期以降は40パーセントを超える営業利益率を継続しています。高利益率・高成長が当社の強みと考えていますので、引き続き維持できるよう事業運営を継続していきます。

③サービス別収益(クラウド売上高推移)

次に、サービス別の収益についてですが、まずは、クラウドサービスからご説明します。

「iBow」「iBowレセプト」共に堅調に増加したことで予算を上振れして着地しました。前年同期に比べて22.4パーセントの増加となっています。

クラウドサービスに含まれる「法定研修サービス」ですが、10月から11月に助成金を活用した申し込みが増加しました。

「法定研修サービス」には、法律で定められている義務化の研修以外にも訪問看護のみなさまの経営や制度への理解などという業界全体のスキルアップを目的としたe-ラーニングも含まれており、人材育成の面でも活用できることで、10月以降申し込みが増加したという背景がありました。

さらに今後も訪問看護に特化して学習内容の拡充を予定しており、毎年のように改正されるさまざまな制度に対する理解を深めていただき、業界全体のガバナンス強化に寄与していきたいと考えています。

③サービス別収益(BPaaS売上高推移)

続いては、BPaaSです。今回の決算から、これまでBPOと呼んでいた事業を、BPaaSと名称を変更しています。

当社のサービスは自社で開発したクラウドSaaSを基盤に、AIや自動化テクノロジーと人材の知識と経験を業務プロセスに活用した効率的なレセプト業務を行うだけでなく、制度改定に関するご質問やご相談、提出書類の作成支援、国のDX化に向けたオンライン資格確認やオンライン請求の申請補助など日々の業務で発生する細かなお困りごとを解決する総合的な業務支援サービスであり、一般的なBPOサービスと比較しても高い収益性を実現していることを明確にするために名称を変更しました。

営業施策としては、新規契約の申込みをいただいた後に1社ずつDX化に向けた課題の抽出と、当社のさまざまなサービスを活用する方法をお伝えするキックオフミーティングを実施する流入と、すでに電子カルテの「iBow」を活用している顧客に対するクロスセル営業を強化したことにより、契約件数の増加と顧客単価の上昇がみられました。

新規契約の獲得だけではなく、質の高いサービスを提供することにより契約継続率77パーセントと非常に安定してきており、顧客満足度を高める取り組みも着実に効果を出しています。

④主要KPI KPI推移サマリー

続いてKPIですが、こちらが全体のサマリーとなります。次のページ以降で、詳細についてご説明していきます。

④主要KPI 契約ステーション数推移

まず契約ステーション数の推移ですが、2024年12月末の目標としていました3,024件に対して、上振れ着地しました。第4四半期の新規獲得件数は過去最高の178件となっています。過去最高となった要因の1つとしては、多くの事業所を有する法人との段階的な契約を獲得したことにあります。

新規契約において2024年12月期は、新たなフェーズになっていると考えています。電子カルテ「iBow」をコアとして、付帯する新たなサービス展開を始めた2021年から4年間でAI機能やe-ラーニングなどの多くのサービスを提供する複合的なサービスとなってきました。

これにより訪問看護ステーションのさまざまな課題に向き合い、解決提案のコンサルティングを行う新規契約が加速していきました。来年度以降も新たなプロダクトやサービス展開が予定されているため、新規契約数もさらに向上を期待できると考えています。

なお、稼働開始し売上に寄与するのは2025年4月の見込みであるため、AO開設中ST数も173件と増加しています。

解約数は小規模ステーション中心ではありますが、通期で見ると177件の解約と増加しました。対策については後ほどチャーンレートのページでご説明します。

④主要KPI 顧客単価推移

続いて、顧客単価の推移となります。特にBPaaSが単価成長を牽引し、8万1,300円となりました。

目標に対して0.1パーセント下回るかたちとなりましたが、これはAI有償化の契約をより多く獲得するために無償期間を3ヶ月伸ばす戦略を実施し、「AI訪問看護計画・報告」の課金開始時期を2025年1月にした影響となっています。

④主要KPI レベニューチャーンレート推移

続いてチャーンレートになりますが、昨年に対して0.08ポイント増加の0.19パーセントとなりました。第2四半期、第3四半期と0.2パーセントを超える水準で推移していましたが、第4四半期には0.13パーセントとなりました。

これまでと同様に、ステーションの閉鎖による要因が大きいものの、経営不安によるキャッシュフロー改善のため、無料や安価なシステムへの切り替えも増加傾向にあります。我々のサービスの価値をより理解してもらえるよう、顧客接点の増加による解約防止に向けた施策をスタートしています。

顧客の状況、状態変化をいかに早期にキャッチアップできるかが顧客ロイヤリティ維持の肝となっているため、創業より私が最も顧客との関係性で重要と考えている「一番初めに相談される相棒となる」ようカスタマーサクセスチームの活動に力を入れていきたいと考えています。

ただこれは今日・明日で即効の改善が見られるものではなく地道な活動が必要ではありますので、システムの改修、社内体制の強化、外部リソースの活用も含めて強化していきます。

④主要KPI シェアの推移

KPIの最後にシェアですが、昨年に対してプラス1.1ポイントの17.5パーセントとなりました。

業界内での認知も進んでおり、ステージが徐々に変わってきている状況にあると考えています。引き続き、訪問看護に特化した電子カルテとして、開発を強化しシェアを高めていくよう取り組んでいきます。

また訪問看護業界全体のシステムを活用したガバナンスをあらためて訴えていきたいとも考えています。訪問看護事業においては、属人的な運営体制になりがちですが、保険制度に定められた運営を行うことが重要です。

保険請求を行っている訪問看護ステーションにおいては、厚生労働省が示している電子カルテのガイドラインを遵守すること、そして毎年のように変化する法令改正を理解し遵守できるよう、当社のシステムとサービスを活用していく必要性を提案していきたいと考えています。

⑤営業利益の増減要因

こちらは、営業利益の増減要因となります。特にクラウドサービスの売上総利益の増加が大きく、販管費は本社移転の固定費用の増加などもありましたが営業利益は増加しました。

⑥サービス別収益(売上総利益)

サービス別の売上総利益率ですが、クラウドサービス、BPaaSともに当初の想定よりも改善しています。

クラウドサービスは、期初に開発部の人員強化やサービス安定化のためのサーバー増強などを行い、80パーセントを切る見込みとしていましたが、最終的には80パーセントちょうどの売上総利益率となりました。

BPaaSについても、採用を先行させた影響で期初は落ち込んでいましたが、第4四半期には目安としていた60パーセントまで回復しています。引き続き、BPaaSは採用と教育を行い、継続的な成長に向けて、体制を整えていきます。

⑦営業費用 売上原価

今回から営業費用のご説明を追加しています。まずは売上原価からご説明します。

期初から開発部門やBPaaSでの積極的な採用を進めており、労務費率についてはおよそ11パーセント前後で推移しています。

また外注費については、サーバーの費用や各種サービスの保守費用が含まれており、2024年12月期は、ダブル法改定に伴う「iBowレセプト」の改修や、ユーザーの増加に対応するサーバー強化などで外注費率が増加しています。

⑦営業費用 販管費

続いて販管費ですが、採用は主に原価計上される開発のメンバーやBPaaSのメンバーが多かったため、営業の人員強化を行いましたが、人件費率は低下傾向にあります。

その他経費については、本社移転に伴う地代家賃の増加や、顧客満足度調査などの費用が含まれています。

⑧従業員数の推移

次に従業員の推移となります。今期の予定人員の獲得は予定どおり達成されました。

2024年12月期は、マルチプロダクト戦略が実現できる開発体制の強化、そしてBPaaSの採用を強化しました。他業種からの転職、医療機関系からの転職など、多くの知識や経験を持っている優秀で人間性が良い人員が獲得できました。

引き続き開発やBPaaSの部門の採用は強化しますが、営業部門においても、顧客数が増える事やアップセルとクロスセルを強化するため、カスタマーサクセスチームを中心とした顧客接点の強化に向けた人材強化の取り組みを行っていきます。

⑨貸借対照表サマリー

決算の説明の最後となりますが、貸借対照表です。自己資本が現状積み上がっている状況にあり、よく投資家のみなさまからもどのように次の投資を行なっていくのかというご質問を受けています。

当社としては、M&Aなどノン・オーガニックな成長戦略に必要な資金を鑑みると、ある程度手元資金を保有し、機動的な投資ができる体制を整えることが重要だと考えています。引き続きROEなど、さまざまな指標を見ながら財務の健全性を高めていく方針です。

ここまでが、2024年12月期の決算説明となります。

中期経営計画数値目標

続いて、中期経営計画の数値目標についてご説明します。

①3ヵ年中計数値目標

まず売上高・営業利益計画になります。当社の強みの1つである高い営業利益率は維持しつつ、売上高成長率も追い求めることで、2027年に売上高50億円を目指します。

特に2025年については、アップセル・クロスセルの強化により売上高の成長率目標を30パーセントとしています。チャレンジングな目標ではありますが、好調なAIサービスやBPaaS、「けあログっと」などさまざまなサービスを強化しつつ、軸となる「iBow」の契約件数の増加を目指していきます。

②中計数値目標の前提(主要KPI)

続いて、数値目標の前提であるKPIについてご説明します。

契約数ですが、引き続き、市場の動向からすると訪問看護ステーションは一定程度の増加を見通しています。他社サービスからの切り替えや、既存のユーザーさまの新規ステーション開設のニーズなども取り込みながら契約数は着実に伸ばす方針にあります。

顧客単価については、2025年12月期からはAIサービスを本格的に開始します。既に約27パーセントのステーションにAIサービスの課金をお申し込みいただいており、顧客単価の上昇に寄与するものと考えています。

また、AIサービスによる事務負担軽減や「けあログっと」の活用などで訪問件数を増加させることで、「iBow」についても着実に顧客単価を伸ばす施策を取っていきます。

最後に、チャーンレートですが、足元の状況を鑑みると、引き続き小規模ステーションの閉鎖や安価なサービスへの切り替えのニーズが一定程度発生すると考えています。

これまでもご説明してきましたとおり、解約阻止に向けた対応を強化していきますが、チャーンレートは従来よりも高い水準になると考えています。解約の分析を継続的に進め、中長期的に顧客満足度を上げられるよう対策を行っていきます。

③AI訪問看護計画・報告

中期計画における成長ドライバーの1つである「AI訪問看護計画・報告」についてですが、1月末の時点で816件となりました。

これは「iBow」をご契約いただいているステーションの27パーセントに当たります。第3四半期にご説明した際には、4パーセント程度のご契約でしたが、12月までの試用期間を経て、実際の導入検討を行ないやすかったことが要因として考えられます。

また、多くのご質問をいただいていました「AI訪問看護計画・報告」の売上貢献については、イメージしやすいよう右の図のとおり、まとめています。

1訪問あたり20円の課金ですので、仮に500訪問されているステーションの場合、AIの部分だけで毎月1万円となります。これにより、1ステーションあたりの顧客単価は15パーセント程度上がるものと考えています。

なお、計画上はご契約いただいている1ステーションあたり、平均1万円程度の顧客単価上昇を見込んでいます。

④営業利益増減分析・投資サマリ

2025年12月期の営業利益の増減分析となります。引き続きクラウドサービスの売上総利益増加を成長ドライバーとし、これを実現するための人材強化、広告強化などを行なっていきます。

その他経費としては、全契約ステーションに対する顧客満足度調査や「けあログっと」の関連費用が増加する予定となっています。

成長戦略について

最後に、中長期の成長戦略についてご説明します。

①中長期ビジョン

中長期のビジョンについてですが、引き続き在宅医療のプラットフォーマーとしてのさらなる進化を掲げています。

高成長・高収益モデルで在宅医療に貢献するための戦略をご説明します。

②2025年度の位置づけ

これまで2025年問題の解決を1つのマイルストーンと掲げていましたが、遂にその2025年が到来しています。2025年問題について改めて触れておきますと、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となることで、医療と介護の需要が急激に増加します。

具体的には、2025年には75歳以上の後期高齢者人口が約2,200万人に達し、全人口の18パーセントを超えると予測されています。慢性疾患や認知症などの複合的な医療・介護ニーズを持つ利用者が増加すると同時に、生産年齢人口が減少することで、担い手不足が深刻化します。

こうした背景もあり、訪問看護は医療と介護の複合的なニーズに対応できるため、利用者が増加することが予想されていますが、医療・介護業界全体でアナログな運用が続いています。看護師のみなさまが、一人でも多くの利用者をみれるようになることをサポートすることが重要と考えています。

③基盤強化期間の業界動向(法改定)サマリー

この2025年を前に、昨年、6年に1度の診療報酬と介護報酬のダブル法改定が行われました。

訪問看護全体にとってはプラスの改定となり、看護師のベースアップや専門性の高い処置に対する加算など新たに評価される要素が増えました。24時間いつでも駆けつけられる看護師のいるステーションへの評価の増加などです。

また、地震や台風、大雨といった自然災害や感染症の蔓延などに対してのBCP対策や、さまざまな患者の複雑化したニーズに対応できるように法定研修の取り組みが求められています。

これらの対応には、リアルタイムで、綿密な情報連携が必要であり、今後ますますカルテの電子化などのDXが重要となってきます。

④在宅医療のプラットフォーム

こうした法改正や情報連携が求められる中で、当社は「在宅医療のプラットフォーマー」としてさらなる進化を目指していきます。

現代医療を取り巻く現状、それは情報格差と非効率性の壁です。医師、患者、そして地域社会、それぞれの立場から見れば、必要な情報が届かず、最適な選択肢が選びにくい状況が散見されます。従来の医療データだけでなく、インフラデータや口コミデータなどの「見える化」は、さまざまな意思決定を支援するものになります。

例えば、医療機関の空き状況や日々の服薬の情報、得意な医療ケア、地域内の評判など、一見すると、まとめる必要のない情報かもしれませんが、早く適切な退院先を探したい医療ソーシャルワーカーや、職場を探している看護師、救急搬送された先の医師など、見る角度によって有益性は全く異なります。

このようなデータの非対称性を解消し「見える化」できるようになるのが、「けあログっと」だと考えています。

「けあログっと」は、これらのファクトデータを活用し、地域医療の連携を強化し、病院、訪問看護ステーション、薬局、それぞれのステークホルダーが、データを通じて繋がり、協力し合うことで、在宅医療に新しい価値を提供できると考えています。

⑤成長戦略の全体像

戦略としては、引き続きデータとテクノロジーを活用したマルチプロダクト戦略を基本として、従来よりもスピードを上げて連続的に新規プロダクトをリリースし、アップセル・クロスセルの売上比率を継続的に高めていきます。

既に、2025年12月期では「AI訪問看護計画・報告」の課金が開始されており、順調な滑り出しとなっています。

⑥プロダクト戦略

続いて、今後どのようなプロダクトの開発をしていくのかを、こちらでご説明します。

まず、今年の春にリリースを予定しているのが「AI訪問看護スケジュール」になります。 訪問看護では、利用者のニーズに応じた訪問をする必要がある一方で、移動時間の短縮は効率的な看護を行うために避けては通れない課題になります。また、突発的な訪問の発生やキャンセルの発生など、利用者の都合に合わせた調整が必要となります。

この「AI訪問看護スケジュール」を「iBow」内で導入することにより、患者情報の一元管理と訪問スケジュールの最適化の2つが同時に行えるようになり、1件でも多く訪問を増やして安定した事業運営を行なうことに寄与できるほか、患者さまのQOL向上にも繋がると考えています。

当社は今期より、看護師採用支援サービスを開始する予定です。訪問看護業界における最大の課題は、看護師の採用となっています。日本看護協会の調査によると、訪問看護ステーションの看護職採用倍率は最も高い水準の4.18倍となっています。

現在の人材紹介市場には構造的な問題があります。人材紹介会社を利用すると、看護師1人当たりの採用コストが約100万円から150万円と高額になる傾向があり、悪意のある紹介会社にとっては、紹介成立で売上が発生するため、採用後の早期退職やステーション閉鎖などの問題が発生すると、さらに収益機会が発生するという利益相反の構造にあります。

この課題に対して、当社は「無料」の人材紹介サービスで解決します。市場の17パーセントの訪問看護ステーションのファクトデータを保有し、テクノロジーを活用できる当社だからこそ、ステーションと看護師、双方に適切な情報を「見える化」することができます。

具体的には、ステーションは、看護師の多様な働き方をとらえ、直行直帰の可否、残業の有無、インセンティブなど、求人票だけでは本当のことが分からない情報を提供することができます。

その結果、ミスマッチを減らせるだけでなく、これまで当たり前に支払ってきた採用コストの削減分を看護師のインセンティブや福利厚生に回すことでステーションの魅力を増加させ、業界全体の改善につながります。

これにより、看護師は適切なステーションを選べ、ステーションはより良い採用ができるようになり、訪問件数が増加し、我々のビジネスモデルが強化されると同時に、業界全体の発展にも寄与します。

訪問看護に特化し、ファクトデータを蓄積してきた当社だからこそ、この取り組みを実現し、推進すべきだと考えています。

⑦成長投資方針

続いて、成長投資方針についてご説明します。

連続的に新規プロダクトをリリースするための開発体制強化と開発投資、そして複数のプロダクトを前提とした営業体制への強化や広告投資とカスタマーサクセスの強化を行なっていきます。

⑧株主還元、資本政策

続いて、株主還元になります。2024年12月期の配当は、予想に対して1円増配の12円の方針です。現状の資金水準や配当性向などを総合的に勘案し、1円増配することとしました。合わせて2025年12月期の配当は3円増配の15円とする予定です。

先ほどもご説明したとおり、財務の健全性を意識しつつ、キャッシュフローの創出能力はあると考えていますので、安定的・継続的な配当ができるよう効率的な運営を引き続き行なっていきます。

⑨中長期成長イメージ

最後に、中長期の成長イメージとなります。在宅医療を牽引するテクノロジーカンパニーとして、クラウドサービスとBPaaS、データビジネスの3つの事業を柱に、成長を加速させていきます。

そして、地域包括ケアプラットフォーム「けあログっと」の成長など、在宅医療のプラットフォーマーとしての地位を確立しつつ、データビジネスの構想をさらに推し進めていきたいと考えています。

我々はミッションである「ひとを幸せにする」を体現し、全てのステークホルダーに応援していただける企業となれるよう、さらなる成長を続けていきます。

以上となります。ありがとうございました。

質疑応答:業績について

質問:業績が好調な要因は何でしょうか?

ここから先は無料会員登録で続きをお読み頂けます

既に会員登録がお済みの方はログインして下さい。

登録することで、本サービスにおける利用規約プライバシーポリシーに同意するものとします。

※本登録案内のメールが確認できない場合、迷惑メールフォルダやゴミ箱に自動的に振り分けられている可能性がありますので、今一度ご確認いただきますようお願いいたします。