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澤井光郎氏(以下、澤井):サワイグループホールディングス株式会社代表取締役会長兼社長の澤井光郎です。先の決算説明会で「寂しい」と言ってしまったためか、今日はたくさんの方々にお集まりいただき、ありがとうございます。
このたびサワイグループホールディングスでは、新中期経営計画「Beyond 2027」を策定しました。その内容について、スライドに示した順でご説明します。
「START 2024」期間中の振り返り
2018年から毎年改定を行い、4年目の2021年から始まった前中期経営計画「START 2024」の振り返りを行います。
当社が2030年度に目指したい将来のビジョンを描き、その実現に向けた最初の3年間として、「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」「米国事業における将来の成長に向けた事業投資」、新規事業への進出による「新たな成長分野の開拓」この3つの柱を掲げて取り組んできました。
中核である国内ジェネリック医薬品事業では、毎年の薬価改定や、小林化工から始まった品質に起因する供給不足、また、原価高騰といった環境の中、プラス面・マイナス面ともに、さまざまな要因が発生しました。
2017年に本格進出した米国事業からは、原則撤退しました。一方で、新規事業への取り組みを開始しました。その結果、2020年度の実績に対して、米国事業の非継続化の影響もあり、連結全体の売上収益は5.5パーセント減少、コア営業利益は30パーセント減少しました。
国内ジェネリック医薬品事業は、連続薬価改定等により大変厳しい環境だったものの、供給不安という環境の中、増産体制強化により生産数量が増加したことに加えて、新製品の一番手上市、また、単独上市による販売数量増加により、シェアは1パーセント上昇し、売上収益は15パーセント増収で着地し、EPSやROE、ROICの改善も実現しました。
「START 2024」国内ジェネリック医薬品市場シェア拡大
1つ目の柱である「国内ジェネリック医薬品市場におけるシェア拡大」の振り返りです。強みである高度な特許戦略と製剤技術力を活かし、3年間で65品目を上市しました。その売上合計は約353億円となりました。
「START 2024」国内ジェネリック医薬品市場シェア拡大
小林化工からの生産設備の譲り受けや第二九州工場新固形剤棟の建設など、3年間で約585億円と設備投資を積極的に行いました。ジェネリック医薬品の供給不足解消の先導となるべく、200億錠以上の自社生産体制の確立に目途がついたところです。
「START 2024」新たな成長分野の開拓
2つ目の柱である「新たな成長分野の開拓」の振り返りです。デジタル医療機器やPHR(パーソナルヘルスレコード)など、既存事業で培った強みを活かせる新規事業への取り組みを開始したところです。
「START 2024」財務戦略総括
財務戦略の総括です。成長ドライバーである研究開発投資に736億円、供給不足の対応や将来成長に向けた設備に約700億円の投資を実施しました。
株主還元においても、1株当たり年間130円の配当を安定的かつ継続的に実施し、3年間の配当総額171億円を実現しました。
長期ビジョン達成に向けた課題認識
以上の前中期経営計画の総括を踏まえた、2030年のビジョン達成に向けた課題についてです。まず環境変化の著しい国内ジェネリック医薬品事業において、コンプライアンス・ガバナンス体制の構築など、持続可能なビジネスモデルの確立が大前提となります。
将来にわたってジェネリック医薬品産業の中核を担い、リードするため、これからの3年間はその体制を整備する重要な期間と位置づけています。今後起こりうる産業構造の変化に対応できる体制構築と、コスト競争力の強化、資本効率の改善を図る必要があります。
そしてなによりも、その実現においては、価値創造の源泉である人的資本の強化が最も重要であると認識しているところです。
これらの課題を踏まえて、あらためて2030年度に目指したい将来のビジョンについてご説明します。
グループ企業理念
グループ企業理念とマインドについては、スライドのとおりです。
Visionとサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)
2030年度に目標とするビジョンです。すでにジェネリック医薬品は社会インフラとなっています。当社は国民の生命と健康を守るため、高品質なジェネリック医薬品を安定供給し続け、業界をリードする存在となることを目指します。
そのためにも、中核であるジェネリック医薬品に加え、予防や診断領域まで含めた製品やサービスを提供することで、社会課題の解決と社会の発展に寄与していきます。
事業環境の見通し トレンド・技術
当社を取り巻く事業環境の認識です。高齢化社会の進展により、ますます医薬品の需要が増えてきます。
一方、人手不足の中での労働力確保、つまり労務費も増えていきます。AIやデジタル技術の改革が進み、医療やヘルスケアに対するニーズは、ますます多様化・高度化していきます。
事業環境の見通し ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境
スライドは、ジェネリック医薬品業界を取り巻く環境をまとめたものです。社会的課題として、高齢化社会の進展、それに伴う保険医療財政が悪化する中で、安価で安全なジェネリック医薬品がますます求められているにもかかわらず、いまだ供給不足は解消されていません。
この課題解決に向け、2024年度の薬価制度改革では、さまざまな政策が盛り込まれました。すべての企業において、品質の確保された医薬品を安定供給するための体制整備と増産余力の確保、持続可能な産業構造の実現に向けた対策の実行が求められています。
ジェネリック医薬品産業の在るべき姿の実現
厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書では、品質の確保された医薬品を安定的に供給できるよう、「①製造管理・品質管理体制の確保」「②安定供給能力の確保」「③持続可能な産業構造」の実現を目指し、「5年程度の集中改革期間を設定して、実施できるものから迅速に着手しつつ、供給不安の解消、再発防止を着実に実施する」としています。
この3つの柱に沿った安定供給体制の実現に向けては、新中期経営計画において「信頼される企業基盤の確立」を土台としてテーマに取り組みます。医薬品不足を解消するためにも早期に自社の生産能力を拡大させ、企業間の連携や協力を推進していきます。
事業環境の見通し ジェネリック医薬品市場見通し
ジェネリック医薬品市場の見通しです。ジェネリック医薬品市場は、人口の高齢化により、2030年度まで年平均7億錠増え続けると予想しています。
当社では生産能力を増強させることで、2026年度にはシェアを現在の17パーセントから21パーセントに引き上げ、2030年度にはシェア25パーセント以上の拡大を目指します。
Sawai Group Vision 2030 定量目標
2030年度の目標数値です。国内ジェネリック医薬品事業はビジネスチャンスが到来しているという認識でおり、売上目標は、2021年度の計画から400億円上方修正し、3,000億円を目指していきます。
250億錠以上の生産能力体制を整え、国内数量シェアは25パーセント以上を目指します。すべての医薬品メーカーでNo.1となる240億錠を販売し、日本の社会インフラになくてはならない存在として、社会的責任を果たしていきます。
また、資本収益性のさらなる改善に向けた取り組みを推進することで、ROEは13パーセント以上、ROICは10パーセント以上とします。
本中期経営計画の位置づけ
ここからは新中期経営計画「Beyond 2027」についてご説明します。今回の中期経営計画は、長期ビジョン達成に向けた中間点に当たります。最終年の2027年のその先を見据えた成長を目指すこと、そしてその中で生じうるさまざまな困難や限界を乗り越えること、そのための強い意志を「Beyond」という言葉に込めています。
本中期経営計画の土台を「信頼される企業基盤の確立」とし、長期ビジョン達成に向けた道筋をつけていきます。ジェネリック医薬品事業においては、品質確保と生産能力拡大のために経営資源を集中します。
また、次期中期経営計画の飛躍に向けた体制の確立と長期成長を見据え、ジェネリック医薬品事業とのシナジーが期待できる成長分野への投資を継続します。加えて、本年1月17日に開示した「事業ポートフォリオと資本政策の見直しの基本方針」を踏まえ、関連指標を重視した経営を推進していきます。
重点テーマ
成長を実現する上での重点テーマです。事業戦略と経営基盤を切り口とし、それぞれ3つのテーマを設定しました。これらを土台とし、信頼される企業基盤を確立することが、すべての大前提になります。
次のスライドより、それぞれの詳細についてご説明します。
信頼される企業基盤の確立
スライドは、昨年から全社を挙げて取り組んでいる当社子会社における不適切試験に対する再発防止策です。外部の識者にも入っていただき、5つの再発防止策を着実に実施しています。
取り組み内容や進捗状況は、当社ホームページで定期的に開示・更新しています。
信頼される企業基盤の確立
スライドに記載のとおり、信頼性保証体制の確立のために、MES/LIMSをはじめとしたシステム導入と人員体制の強化を計画しており、実効性のある投資を行っていきます。
信頼される企業基盤の確立
承認書点検やGMP監査等は、外部機関の活用により客観性を担保し、職員の教育も含めてKPIを設定することで、定期的に進捗管理していきます。
事業戦略①・② ジェネリック医薬品市場における着実な成長とビジネス持続性の確立
事業戦略の重点テーマである「ジェネリック医薬品市場における着実な成長」と、「ジェネリック医薬品ビジネスの持続性確立」についてです。
これらを実現するための施策と必要な成長投資について、中でも特に重要な「新製品の着実な開発と上市」、および「投資済み生産設備の稼働率向上と増産」に関してご説明します。
事業戦略重点テーマ① ジェネリック医薬品市場における着実な成長 新製品の着実な開発と上市
シェア拡大のドライバーは、新製品の売上増加です。当社にしかできない高い製剤技術力をもって、競争優位な品目開発や単独上市を実現し、他社を凌駕することで収益とシェアの拡大を図ります。
事業戦略重点テーマ① ジェネリック医薬品市場における着実な成長 投資済み生産設備の稼働率向上と増産
もう1つのドライバーは、安定供給力の強化です。トラストファーマテックと第二九州工場新固形剤棟の稼働率向上と、既存工場の生産効率向上を実現させます。
前者においては、最終年度に向けて着実に生産数量を増やしていきます。後者においては、可能な限りあらゆる手段を講じることで、全体での収益拡大と改善の両立を目指していきます。
事業戦略重点テーマ①、② ジェネリック医薬品市場における着実な成長 、ビジネス持続性の確立 FY2030に向けた自社生産能力の増強
2030年に向けた自社生産能力拡大の道筋です。将来の需要拡大を見据えて実施してきた生産設備や人員の先行投資による安定成長を実現させ、当社は業界随一の生産能力と販売数量を誇ることを目指します。
今後の新製品発売をはじめ、ジェネリック医薬品の供給不足を早期に解消させるため、また、今後の業界再編・集約を見据えた能力拡充に積極的に取り組み、現状185億錠の自社生産能力を、中期経営計画中に220億錠以上へ引き上げていきます。
加えて、2030年には生産能力を現状から35パーセント引き上げ、250億錠体制の確立を目指します。そのため、自社工場の建設や他社との提携など、あらゆる手段を講じることで、さらなる生産能力の向上を図ります。
事業戦略③ 成長分野への継続的投資
事業戦略の最後のテーマは、成長への継続投資です。医療機器の「レリビオン」は今年度の販売開始予定、NASHの治療用アプリは2027年の上市を予定しています。いずれもスライドに記載のタイミングでの収益貢献を見込んでいます。
また、新たな展開として、地理的に近く、経済成長が進む中国、ASEAN地域をターゲットに、サワイジェネリックの海外輸出を実施します。ジェネリック医薬品の市場成長も高く、日本のジェネリック医薬品というブランド価値も期待できるところです。これらについては、2030年度以降の長期での成長を見据えて取り組んでいきます。
経営基盤の強化① 持続的成長を支える人財の創出
ここからは、経営基盤の強化に関する重要テーマである「持続的成長を支える人財の創出」についてご説明します。
当社グループが中長期的に成長し続ける上で、高品質・高付加価値のジェネリック医薬品を一番手上市し、安定的に供給することは必須条件です。とりわけ品質、生産、研究部門の強化が重要になります。
成長戦略に欠かせない多様な人財の確保と育成を基本とし、人的資本への投資を着実に推進していきます。
経営基盤の強化② サステナビリティへの取り組み
2つ目は、「サステナビリティの取り組み」です。前中期経営計画で掲げた環境目標のうち、CO2排出量に関する目標を一部見直しました。政府目標レベルに合わせて、2030年度のCO2排出量を2013年度比46パーセント削減し、2050年までにネットゼロに取り組んでいきます。
経営基盤の強化② サステナビリティへの取り組み
人財や環境面以外に、ジェネリック医薬品トップメーカーとして、コーポレートガバナンスをさらに深化させます。
製薬企業は信頼・信用が第一であり、一度の過ちが致命傷になりかねません。ジェネリック医薬品業界がこれからも成長を続けていくためには、当社も含め、ガバナンスやコンプライアンスの遵守がなによりも大切です。
行政処分を受けた12月22日を法令順守記念日にするなど、役職員一同、行政処分を忘れることなく、グループガバナンスの深化に取り組んでいきたいと考えています。
経営基盤の強化③ 資本効率改善のための取り組み
最後のテーマは「資本効率改善」のための取り組みです。1月17日に公表したとおり、P/L中心から、バランスシートやキャッシュフローを含めた資本コストを意識した経営に転換し、株主のみなさまの期待にお応えできるよう、経営改善に取り組んでいきます。
経営基盤の強化③ 資本効率改善のための取り組み
資本コストを意識した経営には、経営層だけでなく、社員一人ひとりが自分事として意識し、能動的に活動できるか否かが重要となります。
ROICの逆ツリーを活用することで、各部門のKPIや現場レベルの主要施策に落とし込み、全社一丸となって資本効率の改善目標達成を目指していきます。
経営基盤の強化③ キャッシュアロケーション
3年間のキャッシュアロケーションです。ジェネリック医薬品事業で生み出した営業キャッシュフロー約1,450億円と、米国事業・資産売却資金約450億円の合計約1,900億円を原資とし、成長の源泉である研究開発投資をはじめ、生産能力増強や信頼性保証体制強化といった設備投資に優先して配分します。
また、株主還元については、米国事業や政策保有株の売却などにより、520億円規模での配当と自己株取得を実施します。
引き続き、継続的かつ持続的な成長に向けた設備投資や成長投資、株主還元を強化していきます。
株主還元方針
当社では、株主のみなさまに対する利益還元を、経営の重要課題の1つとして位置づけています。資本コストを一層重視し、安定的かつ継続的な配当を実施する上で、基準とする指標を配当性向からDOEに変更し、3.0パーセント以上とします。
配当総額は本中期経営計画期間の3年間で190億円以上とし、あわせて330億円プラスアルファの自己株式取得を実行します。
これからも株主のみなさまの期待に応えていくため、資本効率の向上と株主還元の充実を図っていきます。
定量目標
最後に、本中期経営計画期間の目標数値です。最終年度の売上収益は、ジェネリック医薬品事業で2,190億円、新規事業で10億円、連結合計では2023年度実績に対して431億円プラスの2,200億円を目指していきます。
また、コア営業利益は2023年度実績に対して91億円プラスの330億円、ROEは10パーセント以上、ROICは8パーセント以上とします。
澤井氏からのご挨拶
最後に、一言考えを述べます。今般、厚生労働省の「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」のまとめが示したように、当社を取り巻く環境はこれから大きく変化していきます。
そして当社はこの変化を、ジェネリック医薬品事業のビジネスチャンスであり、患者さん、医療関係者さま、卸業者さまなど、医薬品不足で困っている方の問題解決に寄与できる大きなチャンスだと捉えています。このチャンスを確実につかむために、品質確保と生産能力拡大に経営資源を全集中したいと考えています。
加えて、事業ポートフォリオと資本政策への見直しの基本方針を踏まえ、先に申し上げた関連指標を重視した経営を推進します。
当社は事業そのものが社会貢献であり、医療費の増大という社会的課題に対して、毎年約3,000億円の医療費節減に寄与してきました。
持続可能な社会保障制度と医療アクセス向上のために、引き続きジェネリック医薬品事業を中核とし、社会とともに持続的に成長・発展するヘルスケアグループとして、1人でも多くの人々の健康に貢献できるよう努めていきたいと考えています。
以上でご説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:薬価設定の前提について
質問者:本日のご説明の中で、生産数量の増加や新製品の着実な上市について詳しくお示しいただきました。今回の中期経営計画、あるいは「Vision 2030」の中で、薬価に対してどのような前提が置かれているのか、定量的、あるいは定性的にでも構いませんので、教えてください。
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