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杉本眞氏:レシップホールディングス代表取締役社長の杉本でございます。本日は、当社の2024年3月期通期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の説明項目ですが、ご覧いただいている順に、ご説明させていただきます。なお、決算説明資料の巻末には、ご参考資料として、当社の会社概要や事業内容、業績推移等の資料もございますので、必要に応じて、ご参照いただきますよう、お願い申し上げます。
2024年3月期:通期業績の要約
新型コロナウイルス感染症が、5類感染症に移行されたことに伴い、移動需要が本格的に回復しました。
当社の主要な取引先であるバス・鉄道事業者さまの輸送量の回復と、それに伴う業績の回復が鮮明となっています。2024年3月期は、これらの事業者さまの設備投資がしっかりと回復したという手ごたえのある1年となりました。
また、7月の新紙幣発行を控え、関連売上も増加し、好調な業績となりました。産業機器分野についても、バッテリー式フォークリフト用充電器の需要が底堅く推移していることに加 え、価格改定の効果も表れました。
以上により、輸送機器事業、産業機器事業ともに増収、各段階利益は過去最高となりました。
2024年3月期:通期業績の要約
それでは、まず最初に、2024年3月期通期の決算数値についてご説明させていただきます。 当社グループの連結業績につきましては、売上高は前期比59.2パーセント増の226億8,400万円、営業利益31億6,400万円、経常利益35億5,700万円、親会社株式に帰属する当期純利益は24億1,600万円となりました。
2024年3月期:通期 売上高の増減要因
続いて、売上高の増減要因を、各市場別の売上増減およびその他要因にブレークダウンしますと、ご覧いただいている通りです。
輸送機器事業では、バス市場が大幅に増加し、鉄道市場・自動車市場の売上も増加となり、増収となりました。
産業機器事業では、全市場の売上が増加し、増収となりました。この結果、売上高は前期に比べ、増収となりました。
2024年3月期:通期 営業利益の増減要因
続いて、営業利益の増減を、売上・原価・販管費による要因にブレークダウンしますと、ご覧いただいている通りです。
原価要因による利益の良化につきましては、商品構成が変化したことによるもの、販管費要因につきましては、パソコン等事務用機器の購入費用、外部委託費用、試験研究費等の増加によるものです。
2024年3月期:通期セグメント別業績
次に、事業セグメント別の業績についてですが、こちらのページに記載の通りです。
輸送機器事業:通期業績
まず、輸送機器事業につきましては、売上高は、前期比79.5パーセント増の180億9,600万円、営業利益は27億8,500万円となりました。
輸送機器事業:通期業績
輸送機器事業における各市場別の状況についてご説明します。バス市場につきましては、移動需要の回復に伴う、バス事業者の設備投資意欲の回復により、運賃収受システムの導入に伴うシステム開発案件や、運賃箱、ICカードリーダライタなどの売上が増加しました。
また、新紙幣発行に伴う運賃箱の改造・ソフト改修などの売上も増加し、増収となりました。鉄道市場につきましては、引き続きニューヨーク市地下鉄車両用灯具の納入が順調に進行しております。
加えて、鉄道市場においても新紙幣発行に伴う運賃箱改造・ソフト改修などの売上が増加し、増収となりました。自動車市場につきましては、自動車用LED灯具の売上が増加し、増収となりました。
損益面につきましては、増収に加え、商品構成の変化による原価率の低下により、黒字となりました。
産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業):通期業績
産業機器事業につきましては、売上高が、前期比10パーセント増の45億5,100万円、営業利益が4億3,600万円となりました。
なお、EMS市場の売上高は、2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」を適用したことにより、従来基準の適用時より18億円程度減少して推移しております。
産業機器事業(エネルギーマネジメントシステム事業):通期業績
電源ソリューション市場につきましては、バッテリー式フォークリフト用充電器の需要が底堅く推移していることに加え、価格改定の効果も表れ、増収となりました。
エコ照明・高電圧ソリューション市場につきましては、燃焼器具用変圧器等の売上が増加し、増収となりました。
EMS市場につきましては、産業機器向け基板実装売上が増加し、増収となりました。損益面につきましては、増収に加え、材料価格の値上がりを踏まえた価格改定の効果も寄与し、黒字となりました。
連結損益計算書
続きまして、連結損益計算書の状況は、こちらのページに記載の通りです。
連結貸借対照表
続きまして、連結貸借対照表の状況は、こちらのページに記載の通りです。
研究開発費、設備投資、償却費の推移
続きまして、研究開発費と設備投資の状況についてご説明します。研究開発費につきましては、通期は、主に、キャッシュレス決済端末や、デジタルサイネージシステム、運賃箱・ICカード関連機器の開発などに充当しました。
来期も同様の開発に対し、6億円の投資を予定しています。また、設備投資につきましては、2025年1月に稼働開始を予定しているレシップ電子の新工場や太陽光発電設備、金型などに充当しました。
来期も引き続きレシップ電子新工場に関する建物、機械装置などへ投資を継続するほか、工場設備の更新などに対し、16億円の投資を予定しています。
2025年3月期:通期業績予想
続きまして、2025年3月期通期の業績予想と配当について、ご説明させていただきます。
まず、通期の連結業績予想について、ご説明します。2025年3月期の連結業績予想につきましては、売上高が前期比7.4パーセント減の210億円、営業利益10億円、経常利益9億円、親会社株主に帰属する当期純利益5億5,000万円を見込んでおります。
引き続き、運賃箱を含めた設備投資需要が堅調に推移する見通しですが、前期にあった運賃収受システムの導入に伴うシステム開発や、新紙幣対応に関する改修売上、加えて、産業機器分野にて事業譲渡を行った高電圧変圧器事業の売上減少により、減収となる見込みです。
損益面は、減収に加え、商品構成の変化による原価率の上昇と生産量の増加に伴う製造経費の増加、レシップ電子の新工場に関する償却費の増加により、減益となる見込みです。
トピックス― 新紙幣対応
続いて、当社の業績に大きな影響を与える、新紙幣の発行に伴う需要について、詳細をご説明します。
2024年7月に予定されている新紙幣に対応することを目的とした運賃箱の改造・買替需要は、2024年3月期下期から2026年3月期ごろまで続く見込みです。2024年3月期は、運賃箱を制御するソフト改修が売上の中心となりました。 加えて、新紙幣発行が需要の契機となり、大規模な運賃収受システムの導入案件が増加し、システム開発売上が増加しました。
2025年3月期以降は、このような売上の比重が少なくなり、代わりに運賃箱本体の更新売上が増加する見込みです。
このような商品構成の変化が、2025年3月期の製品原価の増加に影響を与えています。
2025年3月期:配当の状況
次に、配当についてご説明させていただきます。
2025年3月期の配当予想につきましては、前期と同額の8.5円を予定しています。引き続き、成長投資と株主還元のバランスをとりながら、企業価値向上に取り組んでまいります。
また、昨今のトレンドも鑑み、資本コストや株価を意識した開示の必要性も認識しております。こちらにつきましては、社内での検討を進め、開示できる準備を進めていく所存です。
新中期経営計画
最後に、2024年4月よりスタートした3か年の新中期経営計画についてご説明いたします。
新中期経営計画は、「RT2026(Reach our target 2026)」というテーマで、こちらに記載の重点課題に基づき取り組みます。まず、前中期経営計画の振り返りからご説明します。
前中期経営計画の振り返り①
2021年3月期からはじまった前中期経営計画は、コロナの長期化が当社の主要な取引先である バス・鉄道事業者さまの業績に大きな影響を及ぼし、長らく、厳しい状況が続きました。
計画期間の前半は、売上・利益ともに伸び悩みましたが、最終年度にはようやく回復の兆しが表れ、売上高200億円、営業利益率5パーセント、ROE8パーセントという目標を達成することができました。
特に、2024年3月期は、コロナ禍からの回復に加え、2024年7月を予定している新紙幣発行に伴う需要も重なったため、例年とは異なる商品構成となり利益率の良化につながりました。
一方、ご覧のとおり、市場動向による需要の増減に影響を受けやすく、売上・利益が安定しないという課題を改めて認識することとなりました。
前中期経営計画の振り返り②
次に、重点課題ごとの振り返りです。2030年に「モノ+コトへの事業構造の変革」を達成することを目指し、国内事業においては新たな事業展開と新しい価値の提供に取り組みました。
これから挑戦する新たな市場として、バス・鉄道事業者と関係の深い観光市場をター ゲットに定め、観光市場向けの新サービスをリリースすることができました。また、既存製品である乗務員支援システムやバスロケについて、社会課題や市場ニーズに合わせたさらなる開発も進行しています。
今後の課題としては、これらサービスについて、安定した収益が計上できるビジネスモデルの構築と収益性の向上に取り組む必要があると考えています。
海外事業においては、米国バス市場において、大型のAFC導入案件を受注することができました。また、鉄道市場でも鉄道灯具の納入を進めています。
今後は、この次となる案件の獲得継続と、米国の体制強化に取り組むことで、さらなる成長につなげます。
このように、前計画では、事業構造変革に向け、新たな収益源となる芽を見つけ、育てはじめることができました。
新中期経営計画の位置づけ
新中計は、長期ビジョンからのバックキャストにより、ビジョン実現に向けたアクションプランとして策定しました。
第2フェーズとなるRT2026は、前の中計で種まきを行った収益源を、当社の成長を支える事業となるまで育てあげる期間と位置づけています。
中期経営計画「RT2026」の概要・重点課題
このような振り返りのもと、策定した新中期経営計画概要はこちらです。
長期ビジョン達成に向け、大きくふたつ、事業構造の変革に向けた基本戦略と、それを支える全社戦略です。
基本戦略は、「海外事業の確立」「新規領域の拡大」「収益性・効率性の追求」に取り組 み、持続的に成長できる事業構造への変革を目指します。
これらを支える経営基盤を強化するために、「経営効率の向上」「新たな企業文化の醸成」の全社戦略に取り組みます。そして、計画の最終年度である2027年3月期には、売上高240億円、営業利益率5パーセント、ROE9パーセントの達成を目指します。
中期経営計画「RT2026」の概要
計画期間中の経営指標の推移見通しは、こちらに記載の通りです。2024年3月期は、新紙幣発行に伴う運賃箱の改造・ソフト改修売上が増加したことに加え、運賃収受システム導入に伴うシステム開発売上が増加したことにより、売上・利益が大幅に増加しました。
新紙幣対応に伴う関連需要の増加は2026年3月期ごろまで継続する見通しです。一定の売上・利益が見込まれる間に、海外事業の成長、新製品・サービスの創出と収益化による事業構造の変革を進めます。
中長期的な成長イメージ
国内市場は人口減少により縮小傾向にあり、新紙幣関連売上が落ち着いたあとには、成行では売上が減少することとなります。
このような経営環境の中でも、持続的な成長を続け企業価値を向上させるために、さきほど申しあげた基本戦略に基づき、今後の育成分野に対する積極的なチャレンジを行ってまいります。
重点課題① 海外事業の確立
ここからは、重点課題の詳細についてご説明します。ひとつめの基本戦略は「海外事業の確立」です。人口減少により縮小が予想される国内市場に対し、今後も成長が期待できる海外、とりわけ人口増加により公共交通需要が高まる米国市場を中心に、海外事業を確立させます。
米国では、2023年に大型案件の受注を獲得することができ、2026年3月期の売上計上を予定しています。バス市場、鉄道市場における現在進行中の案件の次となる案件の獲得継続と、米国向け製品ラインナップの拡充による売上増加により、海外売上比率20パーセント以上の達成を目指します。
トピックス:米国AFC(運賃収受システム)事業の歩み
続いて、米国事業の進捗についてご説明します。米国で当社がターゲットにする路線バスは7万台から8万台の市場規模と想定しています。
米国の公共交通は、行政によって運営されるため、設備投資は入札によって決まります。入札条件として、実績が重視されるため、実績が獲得できるまで長らく投資フェーズにありました。
しかしながら、2023年のカリフォルニア州での導入案件を評価していただき、規模の大きな案件を継続的に獲得することができました。今回の大口受注の獲得を契機に、米国事業の人員体制を強化し、米国でのシェア拡大を目指します。
トピックス:米国AFC(運賃収受システム)事業の戦略
続いて、米国AFC市場における、戦略についてご説明します。米国で一般的に流通している運賃箱は、大型でキャッシュレス決済機能なども備えた多機能型であることが特徴です。
一方、各事業者のニーズに合わせ、運賃箱に備え付けの機能を使わず、別のキャッシュレス端末を併用するケースが少なくありません。米国の運賃箱業界では寡占が進み、細かなニーズに合わせた製品が提供されていないからです。
また、移民による人口増加が特徴的である米国では、現金決済の需要が底堅く推移すると見込んでいます。このような状況に着目し、当社は現金収受に特化した運賃箱を開発しました。
現金収受に特化した運賃箱という特徴で競合と差別化を行い、キャッシュレス決済に強みを持つメーカーとも協力することで、今後の販路拡大を目指します。
トピックス:米国事業で目指すビジネスモデル
続いて、米国市場で目指すビジネスモデルについてご説明します。
米国では、日本と異なり、製品の納入だけでなく、合わせて一定期間のO&M契約も受注することが特徴です。
受注獲得の継続と導入台数の増加により、持続的な利益の獲得が期待できます。また、現在、米国市場ではバスは運賃収受システム、鉄道は照明灯具のみのラインナップとなってい ます。
国内では、これらの製品を基盤として徐々に周辺製品のシェアを伸ばしてきた歴史があり、米国市場でもこのような展開ができる余地がないか、市場ニーズの調査を行い、売上拡大を目指します。
重点課題② 新規領域の拡大
次に、ふたつめの基本戦略である「新規領域の拡大」についてご説明します。これまでの事業での製品や販路を活かし、周辺市場への参入や新サービスの投入を推進します。
たとえば、バス・鉄道事業者さまと関係の深い観光市場での新たなサービスの展開や、バス市場での車両データを活用したソリューション提案など、事業領域の拡大に取り組みます。
モノだけではなく、モノとサービスを組み合わせた提案により、売り切りではなく継続的な収益が得られるビジネスモデルの構築により、2027年3月期までの収益化を目指します。
トピックス:モバイルチケット QUICK TRIP (2024年3月リリース)
「新規領域の拡大」に関するトピックスとして、モバイルチケットをご紹介します。現在、スマホによるモバイルチケットは、利用客層やすでに導入済みのサービスとの兼ね合いなど、事業者のニーズに合わせ3タイプで展開しています。
購入したモバイルチケットを、乗車時などに、乗務員にスマホを見せる方法で運用されており、利用者のスマホだけで完結するため、事業者さま側の初期投資が不要である点が好評です。
2024年3月には、観光市場をターゲットとし、WEBアプリ版モバイルチケット、QUICK TRIPをリリースしました。アプリをダウンロードする必要がなく、多言語にも対応しているため、インバウンド観光客でも使いやすいことが特徴です。
また、観光施設のチケットと乗車券のセット売りなど、さまざまなモバイルチケットを事業者が自分で作成することもでき、事業者の業務負担軽減・ペーパーレス化・窓口混雑解消など、観光にまつわるさまざまな課題解決への貢献が期待できます。
重点課題③ 収益性・効率性の追求
次に、みっつめの基本戦略である「収益性・効率性の追求」についてご説明します。こちらは既存事業についての戦略です。既存事業には、売上・利益ともにまだまだ伸ばせる余地があると考えています。
製品のラインナップ拡充、価値向上、コストダウンにより、お客さまに満足していただいた結果としてのシェア拡大ができるよう、各市場における顧客ニーズに誠実に向き合い、売上の積み上げに取り組んでまいります。
また、2024年3月期は、高電圧変圧器事業の事業譲渡を行いました。最適な事業ポートフォリオ構築のための事業の選択と集中も、引き続き検討を続けてまいります。
トピックス:レシップ電子 生産能力の増強
「収益性・効率性の追求」に関するトピックスとして、レシップ電子の新工場建設についてご紹介します。
プリント基板実装を中心に、EMS事業を行うレシップ電子は、昨今、自動車に搭載される電子部品の増加により、引き合いが増加してまいりました。設備投資の増加やサプライチェーンの国内回帰の動きもあり、今後も相応の受注増加を見込んでおります。
このような受注増加に対応するために生産能力を増強することを目的とし、新たに工場を建設し、2025年1月からの稼働開始を予定しています。
新工場では、車載向け製品を中心に、専用の一貫製造ラインを構築する予定です。今後は、車載向け製品だけでなく、成長市場の新規取引先を開拓し、売上拡大を目指します。
④重点課題 経営効率の向上
続いて、全社戦略である「経営効率の向上」についてご説明します。デジタル技術を活用し、開発・製造・営業など、あらゆる部署での業務の効率化を目指します。
営業では、営業支援システムを導入します。新規事業では、これまでとは異なる顧客へのアプローチも行っていくため、データの見える化による効率的な営業体制を推進します。
また、引き続き作業現場の自動化・省人化を進め、生産性向上による工数削減を目指します。合わせて、組織体制の再編を行い、部門横断的な活動や意思決定が迅速に行うことができる体制を構築します。
重点課題⑤ 新たな企業文化の醸成
続いて、「新たな企業文化の醸成」についてご説明します。
長期ビジョン、新中計を実現し、事業構造を変革するためには、企業文化も変革しなければいけません。
人事制度改革やリスキリングなどを実施し社員ひとりひとりがオーナーシップを発揮して、個々の能力を最大限に活かすことができる環境づくりを行っていきます。
また、「快適な日常の実現」という経営理念のもと、社会課題とお客さまの困りごとを解決する製品開発を行うことで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
最後に、ようやくコロナの影響がなくなり、回復の兆しが表れてまいりましたが、長期的には当社を取り巻く経営環境の厳しさは変わっておりません。
新中期経営計画に着実に取り組むことで、持続的な成長への道筋をつけてまいります。ステークホルダーのみなさまには、引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。以上で、説明を終了します。