新価値創造を社会実装まで見据えた投資を開始する
河中敏弘氏(以下、河中):2024年7月期第2四半期決算説明会を開始します。本日のスピーカーは、代表取締役の金武祚、専務取締役の益田和二行、取締役研究担当の金英一、取締役管理部門担当の東山寛尚、そして経営企画部の河中です。よろしくお願いします。
まずは3月11日に発表した業績予想について、一言ご報告します。数字については先日報告したとおりです。原材料調達難による製造遅延と、それに伴う広告宣伝実施の後ろ倒し、コールセンター等の顧客応対品質強化への注力、そして利益面では、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の今期の研究開発費が確定したことにより、スライドのような数値となっています。
その結果、現時点では売上高、営業利益ともに下方修正という見通しとなりました。
株主還元
株主還元についても、配当金は20円で据え置いています。2024年1月5日に自己株式取得を発表しました。従来の基本的な株主還元方針からは大きく超えるものとなっていますが、我々としては1月の状況で、今後の財務状況等の見通しから株価がかなりディスカウントされていると判断し、自己株式10億円の取得を決めました。現時点において、基本的な還元方針として総還元性向20パーセントということは変えていません。
今回の下方修正について、金武祚よりご挨拶も兼ねて一言述べさせていただきます。よろしくお願いします。
金武祚氏(以下、金武祚):みなさま、こんにちは。代表取締役の金です。3月11日に下方修正について正式発表しましたが、一言で非常に残念だと考えており、私も責任を感じています。
1年間、一生懸命みなさまと働いた上での下方修正ということで、それは株価にも反映していると思っています。コロナ禍の問題やウクライナとロシアとの関係、また1月に能登半島地震があり、この影響も続くであろうということ、いろいろなことが諸条件としてあります。
これも事実だと思いますが、もう1つ、主体的に要因を分析したところ、社長としては私たちの内部にいろいろな改善点があるのではないかと考えています。
私たちは2019年に売上高100億円を目標とし、達成しました。その時に私を含め役員たちが勢いのあるうちにもっと売上を上げようとギアを入れた結果、700億円近くまで一気に上がりました。これは大げさにいうと、10年後か20年後かに振り返った際に、ファーマフーズの歴史的な大躍進として捉えられる大きな成果であると私は今でも確信しています。
しかし、内部で課題も見えてきました。これは内部でも外部でもいわれますが、「ファーマフーズという会社は一体どのような会社なのか?」ということです。
もう1つは、バイオ企業としてライフサイエンスに寄与するという点において、「具体的にどのように寄与するのか。またそれが薄れているのではないか」という指摘を内外から受け、私も同様に思いました。
これを受け、一昨年ぐらいから幹部以上が集まり、私たちのビジネスモデルを改めて再考してきました。
例えば、開発にどのような焦点を合わせるか、組織も従来型ではなく外部からプロフェッショナルを入れて強化しようか、投資の仕方はこれで良いのか、広告の出し方など大筋で改める点があるのではないかなど、内部でかなり議論しました。
結果としては、「現在十分に実績があるので、広告宣伝費を2割ぐらいカットしてでも売上を伸ばせる方法があるのではないか」と私が全員の前で提案しました。今でも私は最も誠実な会社の1つと思っていますが、誠実であるべき姿というのはどのようなことかということも、寝泊りしながらでも議論するべきだと考えています。
このように、一昨年ぐらいから私たちは舵取りの切り替えを行ってきたつもりです。変化をしながら成長はそのまま続けようという欲の深い話ですが、その影響がまだ波に乗れていないのが現状ではないかと考えています。
数値的に見ると位置的マイナスのように感じますが、方向性や将来の潜在力アップについては、大きくプラスになると確信しています。
このような視点が抜け、数字だけが出回るため、顕在している数字はこのようなものですが、潜在力は非常にあるということを今回の説明会でみなさまと分かち合いたいと社内で話しました。
例えば、ファーマフーズはバイオ企業ですから、「創薬事業はどうなっているか」ということについて、相手先があることなのでなかなか言えないこともありますが、担当者に同席してもらい雰囲気だけでも着実に進んでいることを発言すべきではないかとお願いし、ここに座ってもらいました。
新しい分野にもいろいろと取り組んでいます。BtoBからBtoCへビジネスモデルを転換し、コンビニ展開以外にもさまざまなことを行っていますが、私が「新しい分野でがんばっている」とお話しするよりも、アグリ事業や創薬事業の担当者がお話ししたほうがわかりやすいと考えています。
また、私は3ヶ月間海外に行っていました。今までは海外というとアメリカと中国において、三菱商事を中心に大手商社を通して事業を行ってきましたが、ベトナム、タイ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、マレーシアの6ヶ国を足すと、少なくとも約6億人弱、成長率も6パーセントから7パーセントあります。
このようなところは、もちろん今までの商社とも連携していきますが、私たちが独自で主体的に開拓するべきだということで5年間進めてきました。不確実なこともありますが、大きな成果が見えるようなものもありますので、みなさまにお知らせしようと考えています。
数値的な決算も大事ですが、それは過去のことを示しているものです。私はまだがんばりますので、未来形で私たちを評価したり批判したりしてご期待していただければと思います。みなさま、どうぞよろしくお願いします。
セグメント別ハイライト
河中:数値の部分である第2四半期の業績ハイライトについて専務取締役の益田よりご説明します。
益田和二行氏(以下、益田):全体的な流れは先ほど金からご説明しましたが、ここからはセグメント別で数字を追って細かくご説明します。まず連結ですが、先ほどお伝えしたとおり、開発費の増加と商品の原材料の調達の遅れなどがあり、非常に厳しい状況になっています。しかし研究開発に投資もしており、新商品およびチャネルの開拓にも力を入れて取り組んでいるため、これから成果が出てくると確信しています。
BtoB事業においては「ファーマギャバ」の販売が好調に推移し、16パーセント増加しています。医薬品製造受託は非常に安定的な収益の財源となっており、11.2パーセントの増加です。しかし今年1月に発生した能登半島地震により売上に少し影響が出てきています。
売上への影響だけでなく工場の被災も少なからずあり、こちらの投資は後半に負担としてのしかかってくる部分があります。それも踏まえた下方修正だということです。
BtoC事業については先ほどお伝えしたとおり、原材料のメーカーの出荷制限などが非常に多くありました。詳しくいうと、医薬品原料メーカーが行政から指導を受ける事態もいくつかありました。
これにより出荷停止や製造の延期、生産数の減少など、各商品に影響が出てくるものもあります。2月、3月、4月ぐらいで元に戻ってくるとは思いますが、例えば8週間の製造の禁止、稼動の禁止、出荷の禁止などの措置を受けたメーカーがいくつかあったのも事実です。
1つでも物が入らないと最終商品というのはなかなか作れないため、現在も原料の調達に非常に苦慮している部分は正直ありますが、先ほど申し上げたとおり春先からは戻ってくると見通しを立てています。
したがって、やはり法令遵守はもちろんですが、今後の課題としては調達先への対応なども非常に注視していかなければいけないと思っています。
そのような意味で、売れる商品の入荷が遅れるということがあっても、それを良い機会と捉えて、広告の質を上げる、コールセンターの質を上げてお客さま対応ナンバー1を目指すなどの取り組みをしてきました。これを約1年続けた成果も後で発表したいと思います。
バイオメディカル事業に関しては、後ほど担当役員から報告をしますが、粛々と進めているところです。
最後に中期経営計画2026「新価値創造 1K」プロジェクトです。既存の売上プラスの新しい事業で売上を作っていくところに関しても、NEDOでの補助金がきっかけとなって、実現が可能に近づいてきていると我々も感じています。
これを受けて繊維事業、アグリ事業、蓄電の技術という3部門で研究開発を進めていくことにより、「新価値創造 1K」プロジェクトの既存売上プラスアルファのところでしっかりとした売上基盤を作っていく、基盤の基盤ができたのではないかと考えています。以上がハイライトです。
連結売上高
連結の売上高です。半期を過ぎた時点で合計が約316億円となっています。昨年の実績は約350億円でマイナス9.9パーセントという結果となっています。理由は先ほどお伝えしたとおりです。
セグメント利益
セグメント利益は、合計が15億3,500万円でプラス約24億円になっています。主な原因としては、先ほどお伝えしたとおりです。研究開発費は少し増えたものの、広告宣伝費の適正化を積極的に行った側面と、売れると見込んでいた製品に対する広告を打てなかったという側面があります。そのようなものを含めた結果となっています。
四半期連結業績推移
四半期売上の推移です。プラスで推移していますが、そこから伸ばしていくためにどのようなところに投資をしていくかははっきりしており、そちらに注力して後半にしっかりと利益を確保し、発表している数字よりもプラスアルファになるよう、全社を挙げて取り組んでいきます。
アイテム別売上
細かいセグメントについてご説明します。BtoB事業の数字はスライドのとおりです。主に「ファーマギャバ」が国内外で好調に推移しています。医薬品製造販売については先ほどお伝えしたとおり、一部のOEMメーカーへの行政指導などもあり、一定のOEMメーカーに受注が集中しているような状況となっています。
その受け皿となっている工場の1つが明治薬品です。こちらは非常に好調に推移しており、稼働率も100パーセントを超えているような状況です。
また、流通のセブン-イレブンでのドリンク販売や、ドラッグストアでの医薬品や機能性食品の販売なども好調に推移しており、こちらは今後に期待しているという状況です。
「睡眠ラボ」新商品グランプリ2024年春夏 トレンド賞受賞
スライドの写真は、ファーマフーズブランドとして、新たにコンビニやドラッグストアなどで販売していこうと力を入れている商品の1つで、現在、拡販するため努力しています。
ファーマフーズの機能性食品は、流通から非常に期待していただいており、今後特定の流通とのコラボなどもしていこうという動きがあります。そちらについても近々報告できるのではないかと思っています。スライドはその一例です。
機能性表示食品受理件数
引き続き、GABAについては機能性食品の受理件数が1,000件を超え、突出して1位となっており、各方面での採用が非常に広がっています。特に台湾でのGABAの販売が非常に増えているという報告も受けています。中国は横ばいであるものの、台湾やアメリカが好調であることと、このような国内での受理件数が増えていることが、大きく伸びた要因となっています。
四半期業績推移
四半期の業績予想はスライドのとおりです。最終製品の販売において、今後、売上の増加を目指していくことは、従来の方針としては変わっていませんので、そちらに注力していきたいと思っています。
法令改正に業界をリードして徹底的な対応
BtoC事業について、いろいろな法令改正がありますが、この半年間は、Webでの注文やコールセンターへの注文に対する応対品質向上のため、徹底して指導を強化してきました。
例えば、個人情報の取り扱いだけではなく、定期購入の誤認を防ぐために「定期購入の認識がある」というチェックボックスを、二重に付けてもらうことなどです。また、コールセンターにおいては、最後にもう一度確認をして「翌月にいくらの請求で、何日頃に何の商品がいくつ届きます」というクロージングを徹底的に行っています。
このような取り組みにより、お客さまからの信頼をしっかりと勝ち得ることで、売上が将来的により伸びていくということにももちろんフォーカスしています。先ほど金がお伝えしたように、企業として誠実であることを十分に意識した対応に、全社を挙げて取り組んでいます。
応対品質の強化で、クレームゼロを目指す
この取り組みを1年間続けたところ、クレームの件数がおよそ10分の1に減っています。消費者センターに定期誤認などの相談があったのですが、これが非常に少なくなってきていることも、この取り組みの成果となります。
CRM施策に注力、既存顧客の離脱防止・再購入に取り組む
また先ほどお伝えしたように、新商品がなかなか商品として入荷してこないという、厳しい時期ではあったのですが、その間に、お客さま対応の質を上げるとともに、既存顧客への販売に注力してきました。
離脱防止や、エンゲージメントの強化、ロイヤリティの向上、クロスセル・アップセルなどの取り組みをしたことで、非常にLTVの向上にもつながっています。
これらが向上し、プラス新規顧客をしっかり獲得できれば、今まで以上に収益率の高い、ビジネスになるのではないかと期待しています。
広告宣伝費と定期顧客件数
広告宣伝費と定期顧客件数については、スライドのようなグラフになっています。広告宣伝費をかけていないため顧客件数は減っていますが、スライドのグラフを見ていただければ、この割合が適正であることがわかるかと思います。
スライド右側に記載しているのが、各商品の毎月定期のお客さまの割合となっています。年間定期でお得にご購入いただけるという取り組みも行っていますが、全体を超えても年間定期の数が10パーセントを超えてきているため、現状では収益率アップにも非常につながってきています。
四半期業績推移
スライドは収益と売上の相関図ですが、一応プラスのほうで来ていますので、収益が取れるような状態を保ちながら、プラスに転じていけるように、今後も努力していきたいと思っています。
今後2年で50品以上の新製品を計画
今後2年間で50品以上の新製品の開発を計画しています。先ほどお伝えしたように、今年は新商品の開発や、原材料の入手困難という状況で停滞していた部分があるのですが、来期からは、スライドに記載のように、さまざまなお悩みに対する商品の展開を考えています。
我々としては、それぞれにベンチマークがあり、その商品の売上を意識しています。そのようなマーケットから、ある一定の割合の売上を上げ、1つの商品で最低でも20億円の売上を目標に取り組んできています。それぞれの市場にポテンシャルがあると思います。
例えばスライドの15番に記載の「月経不順、月経異常、月経痛など」の新製品については、更年期でお悩みの方向けの有名な商品をベンチマークに置いています。ある一定数の売上があるところで我々の商品を出して、それぞれに合った配合素材にオリジナリティを持たせて、売上を伸ばしていくという戦略を取っていく予定です。ご期待いただければと思います。
四半期業績推移
バイオメディカル事業については、スライドに記載のような状況で開発が進んでおり、投資先行の結果が継続しています。こちらについては後ほど担当役員から詳しくご説明しますが、研究開発に積極的に投資していることが、このグラフからもおわかりいただけるかと思います。
私からは以上です。ここからは代表取締役の金より、中期経営計画についてご説明したいと思います。
中期経営計画2026 「新価値創造 1K」プロジェクト
金武祚:専務からもお話があったとおり、これからいろいろな製品を出して、私たちの体力と体質に合った、ベンチャー魂を持ったプライム市場の上場企業としての「新価値創造 1K」プロジェクトが今ちょうど佳境に入ったところです。
新製品を作り、新しい市場を私たちが創造するということを担う新組織を作ることを考えています。
「バイオものづくり革命推進事業(NEDO) 」契約
バイオものづくり革命推進事業については、準備期間だけでも数年かけており、研究開発に関しても、極端に言えば20年くらいかけて取り組んできました。私たちは卵の会社として、卵黄や卵白などありとあらゆることに高度利用してきたのですが、最後に残る卵殻膜は日本だけでも1万トンくらい捨てています。
現場に行けばわかると思いますが、卵殻膜はすぐ腐敗するので臭くなります。これが手つかずのままでは私たちは卵の会社と言えないのではないかと考え、約20年かけて取り組んできたことに、ようやく答えが出てきました。
それが、卵殻膜を日本全国で集め、それを液状化、つまり可溶化するということです。この技術は非常にキーテクノロジーなのですが、液状化したものを繊維にし、それをナノファイバーにして、EVの電池素材であるスーパーキャパシタにすることを現在行っています。またそれを土に還元するという、非常におもしろい素材です。
一番キーとなる液状化卵殻膜、つまり液化については、ご存じのように卵殻膜というのは爪や髪の毛と同じ硬たんぱく質です。溶けないものを溶かすということと、それもデザインしたある個々の特定の部位で切ることによってその効果を出すということを、今まで神戸大学と組んで行ってきました。これはNEDOの「バイオものづくり革命推進事業」と契約して取り組んでいるものですが、私はこの事業の評価が社会ではまだまだ非常に低いと感じています。
これは私たち1社だけでなく、アカデミアの先生やダイワボウレーヨンや三洋化成工業、豊田通商などの企業と組んで、私たちが主体となって進めています。このようなものの導出を行うと、すばらしいものができると考えています。
「ovoveil(オボヴェール)」については後ほどお話しします。電池素材についても信州大学の先生と進めており、今後大々的に発表できると考えています。データが出揃ったので、特許を出してから発表したいということで、記者会見を行えればと思います。卵殻膜ペプチドについても、担当者が進めています。
このようなものを集めて、それを高度利用、アップサイクルすることに対して、私たちは全面的に経済産業省から後押しを受け取り組んでいます。これ1つをとっても、私たちはもっと評価されるべきだと自負しています。
卵殻膜繊維- New York Fashion Weekに登場
具体的にはこちらのスライドのとおりです。私たちは卵殻膜の繊維を「ovoveil(オボヴェール)」と呼んでいますが、「ovo」というのは卵で、「veil」というのはこのような繊維のことです。いろいろ作っていたら、これはおもしろいということで、ニューヨークの世界4大ファッションショーで、私たちの繊維を使いたいということになりました。
これもご縁があり、アーティストであり京都大学の教授でもある土佐尚子先生が、「いろいろな繊維でデザインしてアートを手掛けて、卵の殻、薄い膜で、それも未利用の捨てられている、いわゆる不必要なものを必要なものに変えるという、このようなテクノロジーは聞いたことがない。一緒に取り組みたい」というお話をいただきました。
これはファッションデザインとして極めて好評であったということで、非常に高い評価と驚きで受け入れられたということです。
卵殻膜繊維 - Financial Times誌に掲載
この取り組みについて、『Financial Times』に私たちの取り組みが詳細に掲載されています。スライドでは重要なところだけを抜粋し、赤線を記しています。「Kyoto-based Pharma Foods International, the creator of the fabric.(京都のファーマフーズという会社がこの素材を作った)」と記載されています。
土佐先生が「これを大阪の万博でぜひお披露目したい」ということで、今はその大量生産の佳境に入っています。
高く評価された理由は、カシミアによく似ているからだそうです。パリの一流のアパレル会社の前で「あなたたちは動物を虐待している」というデモがあり、世の中の上流階級の人々は、今はカシミアはもちろんミンクなどのショールを使いません。
そこで、今まで使われておらず、また捨てられていたようなものから作られた素材というのは、「まさにこれはイノベーティブだ」ということで、『Financial Times』に記事が掲載された後、当社にはいろいろなところから問い合わせがあります。テレビや新聞社も取材にくる予定です。
20年間続けてきた取り組みが「このようなことをできるとは、さすがバイオの会社だ」という評価に手が届くまで、これから一緒にがんばりたいと思っています。
東南アジア市場開拓
スライドは、ここ3ヶ月行ってきたことを、先日社内でプレゼンをした時の資料です。主にはベトナム、カンボジア、タイの3ヶ国を、90日かけて回ってきました。
まずスライド右側のタイのIchitan Groupという会社です。飲料ではタイ最大の会社であり、キューさんというオーナーと会いました。タイではグリーンティー、お茶、抹茶ドリンクで最大の会社との仕事が決まりました。
スライドには記載していませんが、「静岡」というマークを使っています。「これは勝手に使っているのですか?」と聞くと、「いいえ。静岡の抹茶や高級茶を十数年独占的に使っているため、静岡県からこのマークを使ってよろしいということで使用してきた。ブランドの次は機能性の特徴がないと今後は競争力がなくなる」ということでした。
そこで、スライドに記載のとおり、GABA飲料を開発することを決めました。これはおそらく出ると非常におもしろいと思います。Ichitan Groupという会社ですので、みなさまご協力いただけたらと思います。
次は、スライド中央の写真にあるVattanac(ワタナ) Groupです。こちらの社長は41歳です。
カンボジアではおよそ200万人が粛清されたと聞きますが、現地の人によると、実際にはその数倍ということでした。「キリングフィールド(ポル・ポト政権下のカンボジアで、大量虐殺が行われた刑場跡の俗称)」にはそのような歴史があり、カンボジアの人口構成は今、20歳代の若い人が多くを占めています。
そのような中で彼は成長し、41歳で銀行やホテルやデパート、レジャーランド、ビール会社、飲料メーカーなどの会社を営んでいます。
当社のGABAを利用しているサントリー社のノンアルコール飲料を見せたところ、その存在を知らなかったということで、会議の席にいたワタナのドイツ人担当者へビールへの機能性原料として検討するよう指示がされていました。Vattanac Breweryでは、スライドに記載の取り組みを手掛ける予定です。
次にスライド左側のベトナムのVEDAN社です。工場敷地の視察に行きましたが、約37万坪と広大なところです。従業員が3,000人から4,000人ほどいました。VEDAN社では主に米加工品を取り扱っています。やはり日本の主食は米ですので、ライスプロテイン、ライスペプチドの共同開発について協議してきました。
このような事例は数多くありますが、みなさまが私たちの技術を欲していることはよくわかりました。私としては訪問してよかった部分と、これまでの反省点としては、私もしくは幹部が内向きだったことです。
私たちはこれまで国内市場に向けて展開してきました。しかし東南アジア市場に目を向けてみれば、約6億人規模で若い世代がいて成長率が高い市場です。ここに向けて展開しない手はないだろうということです。私たちが考える海外といえば、東南アジアということです。社内でも話していこうと思っています。
東南アジア地域の現地大手食品メーカーと共同開発を進めると、今後非常に伸びると思っています。問題は価格です。現地価格で、現地の方の手が届く価格に設定することが必要です。したがって、生産場所を考えて進めていくことも課題としています。
アグリ事業-バイオスティミュラント
アグリ事業については、本日は担当者の熱い思いを聞いていただければと思います。
金英一氏(以下、金英一):私たちはもともと機能性素材を通じて世の中のヘルスケアを変え、貢献していきたいと考えてきました。食品、化粧品、医薬品に関しては、少しずつ前に進んでいると思っています。
私たちは新たに、別の角度で世の中の役に立ちたいと考えています。特に食料危機、農業危機に対して、トライできるのではないかと取り組んできました。
その1つの答えが「バイオスティミュラント」だと考えています。「バイオスティミュラント」は肥料でもなく、農薬でもない、新たなアグリ用資材です。私たちは今、3種の開発を行っています。スライドに記載の「植物内生酵母」「GABA発酵液」「卵由来ペプチド」です。
「卵由来ペプチド」については、NEDOの「バイオものづくり革命推進事業」で採択され、取り組んでいるものになります。
「植物内生酵母」と「GABA発酵液」は、ここ2年、3年の圃場実証で非常に有益な効果が得られてきたため、2024年春から農業法人向けに本格的に開始したいと考えています。
【ミニトマト】
一例として、三重県のあさい農園と共に取り組んだ試験をご紹介します。あさい農園はミニトマトの生産量が日本一で、この業界のキーオピニオンリーダーである農家です。
あさい農園ではロックウール栽培をしていますが、そこで私たちの「GABA発酵液」をテストしていただいたところ、2023年秋冬の収量が8パーセント以上増加したという結果が得られました。
ここだけではなく、豊田通商系列のベジ・ドリーム栗原など、全国で約20拠点以上の農場で試験を出しています。1つずつ結果が出ているため、食品、化粧品に続く新たな市場、新たな価値としてトライしたいと考えています。
金武祚:これは温室栽培ですね?
金英一:そうです。環境制御型の栽培施設になります。アグリが1つ目の事例ですが、それに続く新しい価値として、医薬品、バイオについて担当者よりご説明します。
創薬開発
東山寛尚氏(以下、東山):創薬事業について、取締役の東山よりご報告します。ニワトリ由来の抗体を作成する独自技術「ALAgene(アラジン) テクノロジー」をもとに、私たちは自己免疫疾患治療を目指した抗体医薬品を開発し、2021年に田辺三菱製薬とライセンス契約をしました。ライセンス契約以来、田辺三菱製薬さまでは非臨床試験を順調に進め、現在に至っています。
開発の進捗状況については、定期的にご報告いただいています。3月上旬の報告会に私自身も参加しました。Phase 1の臨床試験に向けて、極めて順調に準備が進んでいる状況です。臨床試験の時期に関しては機密事項となっており、この場ではお話できないことが残念です。
臨床試験に入るための各種準備、非臨床試験の毒性試験など、治験薬製造、および臨床試験デザインについては、順調に着実に進めていますので、みなさまもどうかご安心いただければと思います。
金武祚:相手先があり、非常にデリケートな内容のため報告が難しいですが、確実に進んでいると見ています。投資家のみなさまも、アナリストの方も非常に関心が高いと思われるため、代表取締役としても、しっかりと責任を持って実行していこうと考えています。
東山:開発した抗体医薬品を初めて臨床試験に出すという、私たちにとっても歴史的な瞬間を迎えようとしており、ぜひみなさまもご期待いただければと思います。
その他、がんや炎症性疾患など、アンメットのニーズが高いさまざまな案件の疾患領域に対して抗体医薬品の開発を進めています。最善を尽くし進めていくことで、新たなパイプラインの研究開発をご報告できるように、開発を進めていきたいと考えています。この点に関しても、ぜひご期待いただければと思います。
1.現状評価①資本収益性
河中:資本コストと株価について、私たちの考えをみなさまに簡単にご説明します。冒頭で「株価がディスカウントされている」と申し上げましたが、収益性についてはROE、ROICともに、資本コストを上回っています。ただし、ROICについては、改善余地があると見ています。総資産をどう活用していくか、投下資本をどう活用していくかに対しては、まだまだ改善の余地があると思っています。
1.現状評価②PBR
PBRについても、約3倍の水準にあります。これで十分だと思っているわけでは、決してありません。PBRを分解すると、ROEはそれなりに稼いでいますが、PERが低いです。すなわち、将来の利益成長の見通し、成長の画が見えづらい現状があるという問題意識を持っています。
1.現状評価③PER
PERは過去の水準から見ても、極めて低い水準であるため、現状は安いが今後どのようにて上がっていくのかを、みなさまと対話しながら成長期待を高めていきたいと思っています。
2.企業価値向上に向けた取り組み方針
課題をまとめると、ROICや利益率を向上させていくことはもちろん、株主資本コストの低減や成長期待を高めることの3つが、大きな取り組みを行う上での課題だと認識しています。
資本収益性を高める財務バランスの追求
ROICのさらなる向上については、先ほど新製品開発を50件以上計画していると報告がありましたが、これに限らず、広告宣伝費の最適化や、アセットの側面から見た借入金と投資のバランスを取っていきます。
攻めという意味では、明治薬品の製造工程における現状設備の最適化や、今後の新工場建設を計画することで、競争力を高めていきたいと思っています。
顧客基盤を活かしたCRM施策による収益強化
CRM施策についてです。これまで行ってきたテレビやインターネット広告などのペイドメディアだけでなく、現在のお客さま、あるいは解約されたお客さまに対して我々の製品をご案内していくことで、従来の広告宣伝費による売上とは別の収益を上げていくことが、今後の取り組みとして重要になってきます。
新規事業、新製品の育成による事業ポートフォリオの再構築
研究開発がさらに重要になってきますが、「ニューモ」以降のヒット商品をどのように作っていくか、売上を作っていくのかを、研究の側面から取締役の金英一が説明します。
金英一:冒頭でもお話したとおり、ファーマフーズはユニークで、イノベーティブで面白い機能性素材を作る企業だと私は考えています。その部分が得意で、今まで食品、化粧品、医薬品に取り組んできました。
今後は新たなカテゴリー、新たな販売チャネルに拡大できると確信していますし、そこに対して大きなチャンスがあると考えています。いくつかある機能性素材の中で、特にGABAにフォーカスしてお話しします。
みなさまご存じのとおり、GABAは機能性素材として、スライド左下のカテゴリーで今まで伸ばしてきました。今後はそれで終わらせるのではなく、例えば、新しい機能性素材として、eスポーツや食欲満腹感、いろいろなところで新たな機能性をヒト試験で見出していきたいと思います。
あわせて今年ISO17025を取得し、品質の面からも他の追随を許さない、GABAのトップメーカーとしてリードしていきたいと考えています。食品機能性だけではなく、国内から海外へと位置づけ、これまではアメリカや中国を中心に販売してきました。
さきほど代表取締役から説明したとおり、東南アジアを中心に、新たな市場チャンスが見えてきています。今朝もベトナムの大手製薬会社が来社し、GABAについてどのようなチャンスがあるかを議論しました。非常にホットになっています。
国内、国外と合わせて、BtoBだけではなくBtoCに広げていくため、昨年は自社ブランド品をコンビニエンスストア中心に展開してきました。いろいろと試行錯誤しながら1年間取り組んでいるなかで、今後より広がっていくと実感しています。
成果の1つとして、「睡眠ラボ」という商品が日本アクセス主催の展示会でトレンド賞を取得したことも、そこに紐づいていると考えています。
食品だけではなく、アグリの分野でもご紹介しましたが、トマト、パプリカ、稲、いちご、の4つを重点作物として、そこに対する「バイオスティミュラント」の開発として、私たちはGABAを取り上げています。
2024年春から販売しますが、すでに取引のあるパートナーさまからは、「ぜひこれを使ってみたい」「購入したい」という意向を聞いていますので、ぜひ期待していただけたらと思います。
GABAだけではなく、今後は私たちの抗体を食品、医薬品へとさまざまに広げていけるチャンスがあるため、ぜひ期待していただきたいと思います。
市場との対話機会の増加及び非財務情報開示の充実
河中:このような取り組みをみなさまにアピール、またしっかりとお伝えすることが、今までできていなかったという反省もあり、このような機会を十分に増やしていきたいと思っています。
また、ESGスコアについても、取り組みはしっかりしていたつもりではあるものの、しっかりとお伝えできていなかったためにスコアが低いという現状となっています。これを高めていくため、可能な限りみなさまとの対話に取り組んでいきたいと思っています。
研究開発投資、設備投資、人的資本への投資を増加させる
将来への成長投資としては、研究開発、設備投資も今後しっかりと取り組んでいきたいと思っています。1つは卵殻膜のプラットフォーム構築事業です。もう1つは、新製品を増やしていく中で、まだ決定していないものの、自社工場の実現に向け計画を練っている段階です。
新工場建設を計画中
益田:新工場については、今はまだ設計図を作る前段階でのヒアリングなどを行っており、まずは用地を確保するため一番古い工場を壊している状況です。
壊し終わるのが今期の末、7月から8月を予定しており、壊した時点でしっかりと案が出て契約し、1年間かけて計画を立て、そこから2年間で建設する予定です。そのような流れで新工場を建設しています。
何を作るかについては、さまざまな議論がありますが、今までの古い工場では対応できなかった分、いずれは駄目になるとわかっていますが、新しい投資として怖がらずに積極的に実行していきます。
しかしあまり大きいものを作りすぎると、工場は非常に負担になる場合もあります。慎重かつ大胆に、計画を練って進めていきたいと考えています。
M&Aを活用しながら、ヘルスケア企業としての評価を高める
河中:成長していくために外部の力も取り込んでいこうと、引き続きM&Aも積極的に案件として探しており、必ず実現させるために動いています。いつかみなさまにご報告できる日が来ると信じています。
以上で、ご説明を終了します。