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田中義一氏:みなさま、おはようございます。共和電業代表取締役社長の田中です。本日はお忙しい中ご出席を賜り、誠にありがとうございます。
本日は会社概要、2023年12月期の決算概況および事業の状況、2024年の業績予想と取り組みについてご説明します。
会社概要
はじめに、会社概要についてです。当社は東京都調布市に本社があります。設立は1949年で、今年6月に創立75年を迎えます。
当社では、「計測を通じ、お客様と共に社会と人の安全を実現し、安心な未来をつくる」というグループ経営ビジョンのもと、お客さまに各種計測事業を提供しています。計測機器の販売や、計測コンサルティングを通じて、お客さまとともに社会や地域の安全に寄与し続けていくことを目指しており、今後も安心な未来づくりに貢献していきたいと考えています。
グループ会社・事業系統図
当社グループの概要です。山形共和電業では、当社の主力製品である「ひずみゲージ」や各種センサを、甲府共和電業では、測定器や記録器類を製造しています。
共和計測では、試験装置や検査装置等の設計・製造のほか、ニューテックとともに、各種計測機器の設置やデータ収集、データ解析等の計測コンサルティング業務を行っています。
共和サービスセンターでは、当社製品の修理・点検・校正業務を、タマヤ計測システムでは、ダムの堤体観測機器や気象観測機器等の設計、製造販売を行っています。
当社では、主にグループ会社で製造した製品やサービスを、当社を通じて販売するかたちで事業を行っています。
連結子会社の異動について
昨年11月に公表しましたが、連結子会社であるKYOWA DENGYO(THAILAND)CO.,LTD.(KYT社)は、株式の一部譲渡によって、2024年12月期(今期)より当社の連結対象から外れることになりました。
今後は当社代理店として、ASEAN地域の海外販売を引き続き担っていきます。なお、本件による連結業績への影響は軽微です。
業績ハイライト
2023年12月期(当期)の決算概況についてご説明します。
業績ハイライトです。自動車試験分野を中心とした売上増と生産増に伴う原価率改善により、増収増益を達成しました。特に、汎用品を中心とした一部電子部品の調達難が解消し、影響を受けていた測定器関連の生産が回復しました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、収益性の向上とともに、投資有価証券売却益という特殊要因もあり、大幅な増益となりました。
売上高・営業利益推移
売上高・営業利益の推移です。売上高は前期比7.8パーセント増の149億100万円となりました。
前期は電子部品等の調達遅延に伴う生産リードタイム長期化の影響や、自動車関連分野の需要減少などにより業績が停滞しました。
当期は一部電子部品の調達遅延に伴う影響もありましたが、供給状況が徐々に改善されるとともに、部品の早期調達や代替製品の提案などを推進したことで、年度後半には生産遅延が解消していきました。その結果、自動車試験分野を中心とする特注・システム品や海外子会社の売上増により、増収となりました。
営業利益は、増収と生産増に伴う原価率改善により、前期比71.4パーセント増の11億700万円と、大幅な増益になりました。
受注高・受注残高推移
受注高・受注残高の推移です。受注高は147億700万円と、前期比で微増となりました。当期は運輸・交通インフラ分野における大型受注の需要が一巡しましたが、自動車試験分野を中心とした企業の旺盛な設備投資意欲により、受注は堅調に推移しました。
当期末における受注残は、年度末に高速道路向け設置型車両重量計測システムの大口売上があったことから、前期比で約2億円減少していますが、受注残高は依然として高い水準にあります。
収益の増減内訳
収益の増減内訳です。営業利益は、売上増により3億9,100万円、原価低減効果により2億5,700万円増加しました。
一方で、コロナ禍の収束に伴う行動制限解除を受け、展示会をはじめ積極的な営業活動の促進を図ったことや、諸経費の高騰、社員の賃上げに伴う労務費増などにより、販管費が1億8,800万円増加し、営業利益は4億6,100万円の増益となりました。
営業外損益は、為替差益の減少やコミットメントライン設定に伴う手数料の発生により4,500万円減少しましたが、経常利益は前期に比べ4億1,500万円の増益となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益を1億2,800万円計上したことや、賃上げによる法人税額特別控除を受けるなどの特殊要因があった結果、8億9,800万円と、前期に比べ3億2,200万円の増益となりました。
財務のポイント
財務の概況です。資産については生産停滞リスクを回避するため、電子部品を中心に、部品・原材料の在庫を積み増しました。その結果、棚卸資産が前期末比で5億1,600万円増加し、資産合計で4億4,800万円増加しました。
負債については、支払手形および買掛金が増加した一方で、短期借入金を4億円返済しました。その結果、負債合計では前期末比で1億5,600万円減少しました。
純資産は、配当金の支払いや自己株式取得による減少がありましたが、利益剰余金積み増しにより、前期末比で6億500万円の増加となりました。その結果、自己資本比率は71.4パーセントと、前期末比で1.5ポイント上昇しました。
財務のポイント キャッシュ・フローの概況
キャッシュ・フローの概況についてご説明します。当期は営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなりました。
その主な要因は、高速道路向けの大口工事案件などの売上が期末に集中したことにより、売掛債権が増加したことや、棚卸資産の増加によるものです。この状況は一過性であるため、増加した売掛債権の回収が進むことで、営業活動によるキャッシュ・フローは改善すると見込んでいます。
また、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フローも、有形固定資産の取得や借入金返済などの支出がありました。その結果、当期末における現金および現金同等物の期末残高は57億9,000万円となり、前期比で15億6,400万円減少しました。
配当金について
配当金についてです。中期経営計画において、2022年から2024年までの3年間は配当性向50パーセント以上としています。これにより、昨年11月公表の配当予想を修正し、前期から3.5円増配の1株あたり16.5円を予定しています。
主要事業分野の売上高
事業の状況についてご説明します。売上高は、前期に比べ自動車試験分野が大きく伸び、主要事業分野すべてで増収となりました。
主要事業分野の売上高【工業計測分野】
工業計測分野について、当期は半導体関連産業の成長を期待していましたが、当初の想定よりも市場の成長が鈍い状況となっています。
そのような状況の中で、幅広い分野における需要に対応し、建設関連や石油関連のシステム製品が業績に寄与した結果、前期比1.7パーセント増となりました。
今期は市場情報の収集を強化し、顧客ニーズを先取りした積極的な提案による営業活動で、販売力を強化していきます。
主要事業分野の売上高【自動車試験分野】
自動車試験分野は、脱炭素社会の実現に向けたEV化の推進により、新車開発に伴う計測需要が増加しています。
当期は、自動車衝突試験システムを中心とした需要が増加したことから、前期比19.4パーセント増となりました。
今後の見通しですが、新車開発はEVだけではなく、水素を燃料としたエンジン車など、今後もより一層開発が活発化していくことが見込まれます。
また、EV車は大容量バッテリーを搭載することで、従来のエンジン車よりも車体重量が増加することから、安全性だけでなく操縦安定性など、さまざまな面で自動車に影響を与えます。
当期は、自動車衝突試験を中心とした需要が増加しましたが、今後は操縦安定性試験など、新たな試験分野の需要も増加していくことが見込まれ、今期においても業績のけん引役となる見通しです。
主要事業分野の売上高【運輸・交通インフラ分野】
運輸・交通インフラ分野は、鉄道向けの車両熱検知システムの売上が一巡したことにより、鉄道関係が大きな減収となりました。しかしながら、高速道路向けの設置型車両重量計測システムの大口工事案件を中心とした売上増により、前期比11.5パーセント増となりました。
今期、運輸・交通インフラ分野の大口需要は一巡しますが、鉄道向け車両熱検知システムが更新時期を迎えることから、新型温度検知センサの精度検証を進め、更新需要への対応を推進し、業績を確保していきます。
主要事業分野の売上高【環境・防災・エネルギー分野】
環境・防災・エネルギー分野は、堤体観測装置の更新需要を中心としたダム関連が堅調に推移しました。
また、当期は再生可能エネルギーや原子力といったエネルギー関連や、その他環境計測関連も好調に推移した結果、前期比5.8パーセント増となりました。
本分野は着実な成長を続けており、引き続き魅力的なフィールドエンジニアリングを提供していくため、当社グループ全体で連携し、計測サービスの技術力・対応力の向上を図っていきます。
主要な海外地域別の売上高
海外地域別の売上高についてご説明します。海外売上高は、前期比5.9パーセント増の20億9,800万円、海外売上高比率は14.1パーセントと、ほぼ横ばいの状況となりました。
アメリカでは、前期から取り組んでいた西海岸地区の顧客開拓が実を結び、測定器を中心とした販売が好調に推移した結果、前期比31.4パーセント増となりました。
中国は景気低迷の影響を受け、前期比1.3パーセント減となりました。リピート需要の減少や景気低迷の影響が大きく、前期に届かない業績となりましたが、販売店を増やし、現地電気自動車メーカーの顧客を獲得するなど、販売網の拡大に取り組んでいます。
タイは、測定器を中心とした販売が好調に推移し、前期比22.7パーセント増となりました。欧州では、エンジン車完全廃止の方針により、エンジン周辺の試験で使用される自動車向け高温用ゲージの需要が減少し、前期比10.3パーセント減となりました。
しかし欧州委員会はこの方針を撤回し、e-fuel(合成燃料)の利用に限り、従来のエンジン車の販売を認める方針に転じていることから、今後は復調していくことが見込まれます。
製品事例紹介
海外を中心に販売が増加している製品事例についてです。今回ご紹介するのは、電子回路基板の信頼性評価に関する計測技術です。
当社ではPCASシリーズとして、電子回路基板の応力計測セットを販売しており、海外を中心に売上を伸ばしています。
電子回路基板は、基板上に多くの部品をはんだで接合していますが、基盤への部品実装時や輸送時など、基盤に機械的な力が加わると、はんだを通じて部品が故障する可能性があります。その影響値を、研究開発段階で応力計測により明らかにすることが、信頼性の高い電子回路基板の実現に有効となっています。
電子回路基板の実装密度は年々増加しており、実装部品が増えるにしたがって、はんだ接合箇所が増加し、計測が必要な回数が増えていきます。
このように、電子回路基板の技術が高度化していくにつれ、基板応力計測の需要も高まっている状況です。
2024年の業績予想
2024年12月期の業績予想と取り組みについて、ご説明します。
2024年12月期の連結業績は、売上高157億円、営業利益12億円、親会社株主に帰属する当期純利益は9億円を見込んでいます。
配当については、今期より中間配当制度の導入を予定しています。株主総会における承認可決が条件となりますが、第2四半期末で8円、期末で8.5円、年間16.5円の配当を予定しています。
2024年業績達成に向けた取り組み
2024年の業績達成に向けた取り組みについてです。
当社は「お客様視点に立ったモノづくり・コトづくり」という原点に立ち、お客さまに提供する価値の向上に向け、商品やサービスの強化を図っていきます。
そのための施策として、今期も引き続き、中期経営計画で設定した4つの基本戦略に基づいた取り組みを推進していきます。
技術開発の面では、製品とサービスが融合した、お客さまの課題解決につながる商品化を進めていきます。
また、中長期視点で市場開拓と技術領域の拡大につながる基礎開発や技術取得に取り組み、新たな技術基盤を確立することにより、お客さまの期待に応えていきます。
生産面の取り組みでは、山形工場の生産工程の再構築計画の策定を中心に、工程の全体最適化・高度化に向けた施策を進めていきます。お客さまの希望納期に合わせた生産の仕組み作りや、サプライヤーと一体となった品質向上に取り組んでいきます。
近年注力しているフィールドエンジニアリングにおいても、グループ全体で連携し、機器設置・保守点検業務の効率化を図っていきます。これらの取り組みにより、収益性向上を目指します。
販売面では、計測機器の提供から計測サービスの実施まで、トータルソリューションとして提案できる当社の強みを活かし、多様化する顧客ニーズに対応していきます。
成長が期待される産業やエリアを中心に、多様な計測ニーズに対応可能な計測技術を提案し、お客さまが抱える困りごとの解決に貢献していきます。
また、Webを活用した販売促進を行っていくなど、新たな顧客の開拓に向け、デジタルを活用した販売力の強化を行っていきます。
成長を支える事業基盤の強化としては、社員の働きがい向上と、会社の成長を促す業務体系作りに向けた新人事評価制度の運用開始や、リスク評価と連動したサステナブル経営の実践などに取り組み、持続的な成長を下支えする環境を整備していきます。
これらの取り組みを確実に実行していくことにより、お客さまにとっての付加価値向上に努め、業績達成に向けて取り組んでいきます。
トピックス① 活躍の場は、“宇宙へ” インターステラテクノロジズ社のパートナーシッププログラムへの参画
トピックスをご紹介します。1つ目は、民間のロケット開発会社であるインターステラテクノロジズ社のパートナーシッププログラムへの参画です。
昨年11月より、製品の取引先の関係から一歩踏み込み、ロケット開発に貢献するパートナー企業として、「みんなのロケットパートナーズ」に参画しました。当社はインターステラテクノロジズ社の技術者への、ひずみゲージ講習会開催などの技術支援を行っています。
トピックス② 将来の技術者育成への貢献 計測技術で学生フォーミュラを支援
2つ目は、学生フォーミュラへの支援です。学生フォーミュラは自動車技術会が主催する競技会で、主役である学生が自ら構想・設計・製作した車両により、モノづくりの総合力を競い、産学官民で支援して、自動車技術ならびに産業の発展・振興に資する人材を育成することを趣旨とし、レーシングマシンの性能、コストマネジメント、プレゼン力など、モノづくりの総合的な力を競います。
当社は、参加チームへの計測機器の貸し出しや計測作業を支援することで、車両開発をサポートしました。社会の将来を担う技術者育成に貢献することで、当社グループの経営ビジョンの実現に向けた取り組みを行っています。
トピックス③ 新技術への挑戦
最後に、当社の新技術への挑戦についてご紹介します。当社が参画している、次世代バッテリレス無線センシング技術に関する研究が、総務省SCOPE事業において成果展開推進賞を受賞しました。
本研究は、次世代IoTの無線通信技術として注目されている「バックスキャッタ通信」の実用化に向けて、 慶應義塾大学、神奈川工科大学をはじめ、13団体が参画した共同研究です。
「バックスキャッタ通信」は、ごくわずかな電力消費で通信が可能であり、消費電力によっては無線で給電も行えることが特徴の技術です。
当社は社内の技術開発だけでなく、大学や研究機関など、社外との共同研究にも取り組んでおり、基礎技術の研究、新技術の開発を積極的に取り組んでいます。将来的には、国際規格に適合したバッテリレス無線センシング技術の確立に向けて取り組んでいきます。
おわりに
以上で私からのご説明を終わります。これからも企業価値向上に向け、各施策を確実に実行していきますので、何とぞご支援賜りますようよろしくお願い申し上げます。
本日はご清聴ありがとうございました。