2024年10月期 第1四半期 決算ハイライト
明田篤氏(以下、明田):みなさま、こんにちは。トビラシステムズ株式会社代表取締役社長の明田篤です。2024年10月期第1四半期の決算についてご説明します。
まず、決算のハイライトです。売上高は5億6,700万円で、前年同期比116.4パーセント、営業利益は2億200万円で、前年同期比111.2パーセントとなりました。
迷惑情報フィルタ事業のサービス別売上高についてです。モバイル向けフィルタサービスが3億9,700万円で、前年同期比110パーセント、固定電話向けフィルタサービスが5,100万円で、前年同期比116.7パーセント、ビジネスフォン向けフィルタサービスが1億1,300万円で、前年同期比173.6パーセントとなっています。
このように、2024年通期の計画に対して順調に事業を進めることができました。それぞれのサービスの成長の理由については、後ほど詳しくご説明します。
私たちが目指す世界 企業理念・行動指針
当社の事業について、あらためてご説明します。当社は「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」を企業理念として掲げています。この企業理念に基づき、誰かがやらなければならないが、誰もが実現できていない社会課題の解決を、革新的なテクノロジーによって可能にすることを事業方針の軸としています。
現在、私たちは人を守るという視点で事業を推進しています。詐欺被害やグレーゾーン犯罪など迷惑行為に悩む人をなくし、誰もが安心して生活できる社会を実現することに挑戦しています。
取り巻く社会課題の状況
当社が挑戦している社会課題の1つが、特殊詐欺犯罪やフィッシング詐欺です。警察庁の公表によれば、2023年の全国における特殊詐欺の認知件数は1万9,033件、被害総額は441億円であり、1日当たり1億2,000万円の被害が発生しました。
また近年、スマートフォンや携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)を悪用し、個人情報を抜き取るフィッシングや振り込め詐欺の被害が表面化しています。インターネットバンキングでの不正送金の被害の多くがフィッシングによるものです。警察庁が発表したデータによると、2023年の不正送金の被害額は86億円となり、被害額、発生件数ともに過去最多を更新しています。
トビラシステムズの強み:迷惑情報データベース
特殊詐欺やフィッシングなどの社会課題の解決に向けて、当社は強みである迷惑情報データベースを活用し、危険な電話・SMSをブロックするサービスを提供しています。迷惑情報データベースとは、危険な電話番号やSMSに記載されているURL等をブラックリスト化し、ユーザーからブロックする仕組みです。
当社のデータベースの持つ特徴は大きく3つです。1つ目は、警察からのデータ提供です。警察庁から、実際に犯罪や攻撃に使われたとみられる電話番号やURLのデータを提供いただいています。これによって精度の高い情報を入手することが可能となっています。
2つ目は、ユーザー数が多いことです。当社サービスの月間利用者数は約1,500万人であり、同じ規模の利用者数を獲得することは難しいと考えます。多くのユーザーから得られる統計情報を活用しており、ユーザーが多ければ多いほどデータ精度が高まるため、先行者である当社が有利な状況となっています。
3つ目は、大手通信キャリアでの採用です。当社サービスは大手通信キャリアに採用されており、それがユーザー数の拡大へもつながり、参入障壁を強固なものとしています。
この3つの強みで構成されたデータベースが当社の基盤です。当社のサービスがインフラのように当たり前になる社会を目指し、活動を続けることによって、個人の幸せな時間が守られることへと貢献していきたいと考えています。
トビラシステムズの成長戦略
当社の強みである独自の迷惑情報データベースの質的価値・量的価値を高めること、そしてそのデータベースを多領域に展開することが基本的な成長戦略と考えています。
まず、データベースの質的価値とは、具体的にはその保有するデータの項目を増加させることです。これまでも「280blocker」の買収等を通じ、データ項目の増大を図ってきました。
また、データベースの量的価値とは、具体的には約1,500万人のユーザーからのフィードバック情報です。情報量が増えることでデータの精度は高まり、その価値も高まります。
このような唯一無二のデータベースを、通信業界だけでなくその他の市場にも広く展開していくことで、特殊詐欺を防ぐという社会課題の解決に貢献し、当社の企業価値の向上にもつなげていきたいと考えています。
モバイル向けに関する市場規模
モバイル向けフィルタサービスに関するマーケットについてご説明します。現在、私たちのアプリが採用されているオプションパックをご利用いただける方は、推定で約4,053万人以上います。そのうち実際に当社アプリをダウンロードしてご利用いただいている方は、まだ約1,425万人にとどまっています。
当社は、大手通信キャリア3社のオプションパックに採用されており、潜在ユーザー層へのリーチが可能です。そのため、潜在ユーザー層に向け、通信キャリアと一緒にマーケティング施策を行うことなどを通じ、成長していきたいと考えています。
固定電話向けに関する市場規模
固定電話向けフィルタサービスに関するマーケットについてご説明します。固定電話全体では、約5,029万件の契約が存在していますが、当社サービスの月間利用者数は約55万人にとどまっています。
従来の電話がIP電話に移行することによって、当社サービスの利用可能範囲が広がると考えています。具体的には、従来型の回線であれば、外付け型の「トビラフォン」を設置していただくことで、当社のサービスが利用可能です。
一方、IP電話であれば、ホームゲートウェイ型やCATVのネットワーク型における利用が可能となります。新たな機器を購入して電話機に外付けしなくても、オプション契約を追加するだけで、当社のフィルタリングサービスがご利用いただけます。
足元では、J:COMを通じて、専用機器不要で迷惑電話をブロックするサービスが堅調に伸びています。当社の固定電話向けフィルタサービスにおける最も大きな成長可能性は、固定電話回線で大きなシェアを持つNTT東日本・西日本との連携だと考えているため、当社サービスの採用に向け、引き続き積極的に活動していきます。
ビジネスフォン向けに関する市場規模
ビジネスフォン向けフィルタサービスに関するマーケットについてご説明します。これまで多くの投資家から「ビジネスフォン向けフィルタサービスに関する成長戦略を教えてほしい」というお声をいただいてきました。そのため、今回の決算説明から新たにこちらのスライドを追加しています。
当社が提供しているビジネスフォン向けフィルタサービスには、主に「トビラフォン Biz」と「トビラフォン Cloud」があります。
「トビラフォン Biz」は電話交換機(PBX)やビジネスフォンの主装置の手前に付けるものであるため、PBXやビジネスフォンの市場規模を参考にしています。「トビラフォン Biz」は、NTT東日本・西日本のセレクトアイテムに採用されており、複数の販売代理店を通じて販売中です。販売代理店との連携強化も継続的に行っていきます。
「トビラフォン Cloud」は、クラウドPBX市場が主な市場になると考えています。この市場自体は、従来のオンプレミスのPBXなどから、今後はクラウドPBXへの移行がより進んでいくと考えており、市場規模は拡大する見込みです。「トビラフォン Cloud」は主に当社の直接販売を行っており、足元は順調に推移しているため、しっかりとマーケティング施策等を継続していきます。
2024年10月期の業績に寄与する当社の動向
第1四半期のトピックスについて、業績に関わるところを中心にご説明します。当説明会では一部のトピックスのみお伝えしますが、詳細については3月8日に発表した決算説明資料にてぜひご確認ください。
2024年10月期の業績に関する直近の動向についてです。モバイル向けフィルタサービスの固定契約のモデルにおいて、2023年12月から契約金額を引き上げるかたちで契約を更新しました。そのため、第1四半期には2ヶ月分寄与しています。
ビジネスフォン向けフィルタサービスにおいては、2023年11月から「トビラフォン Biz」の端末販売価格を引き上げました。こちらは第1四半期の業績にまるまる寄与しています。
「280blocker」が2023年App Storeトップ有料アプリランキングで1位を獲得
広告ブロックアプリ「280blocker」が、「App Store」にて、2023年に日本で最も多くダウンロードされた有料アプリを表彰する「トップ有料iPhoneアプリランキング」で第1位を獲得しました。
「280blocker」は、インターネット上の広告コンテンツをブロックするアプリです。ブラウザやアプリ上の広告が消えるため、見たいコンテンツをスムーズに閲覧することができます。また、広告表示にかかるデータ通信量を大幅に削減するため、通信料の節約にも効果的です。
マーケティング施策などの効果により、特に2023年下半期において、ダウンロード数が好調となりました。
特設サイト「詐欺SMSモニター」をリリースし、リアルタイムで詐欺SMSの状況を可視化
昨今増加している詐欺SMSの検知状況をリアルタイムに観測し可視化する「詐欺SMSモニター」を公開しました。「詐欺SMSモニター」は、内閣サイバーセキュリティセンターが推進するサイバーセキュリティ月間の関連行事として登録を行っています。
「詐欺SMSモニター」は、迷惑情報データベースに日々蓄積される調査・分析データを活用し、トビラシステムズだからこそ得られる情報をもとに作成しています。サイトでは、詐欺SMSの検知状況をリアルタイムに確認できるほか、当社の調査で確認されたマルウェアに感染している国内のスマートフォン等の端末台数も表示しています。
詐欺SMSの文面は日々変化しており、手口も巧妙化しています。どのような詐欺SMSが発生しているのか、刻一刻と変化するトレンドをチェックし、日々の対策においてお役立てください。
報告セグメントの変更に関するお知らせ
金町憲優氏:トビラシステムズ取締役CFOの金町です。ここからは、私が2024年10月期第1四半期の業績についてご説明します。よろしくお願いします。
まず、2024年10月期第1四半期から報告セグメントの内容を変更しているためお知らせします。従来、「迷惑情報フィルタ事業」を報告セグメントとしており、報告セグメントに含まれない受託開発事業等を「その他の事業」とし、2つのセグメントとしていました。
しかし、前期にホームページ制作運営支援事業である「HP4U」を事業譲渡したことで、その他の事業の重要性が乏しくなりました。また、今後の事業展開等を勘案しても、迷惑情報フィルタ事業を一体的な事業と捉えることが合理的であると判断したため、迷惑情報フィルタ事業の単一セグメントに変更しています。
2024年10月期 第1四半期業績サマリー
2024年10月期第1四半期の業績についてご説明します。売上高は5億6,700万円で、前年同期比116.4パーセント、営業利益は2億200万円で、前年同期比111.2パーセント、純利益は1億5,500万円で、前年同期比128.7パーセントでした。各項目とも前年同期比でしっかり成長させることができ、売上高・営業利益ともに四半期では過去最高となりました。
純利益は一時的な要因として、前期第4四半期にホームページ制作運営支援事業「HP4U」の事業譲渡をして特別利益を計上したため、前四半期比で88.6パーセントとなっています。全体としては、第1四半期も計画どおり順調に事業を進めることができたと考えています。
2024年10月期 第1四半期 サービス別売上内訳
サービス別売上高です。モバイル向けフィルタサービスが3億9,700万円で、前年同期比110.0パーセント、固定電話向けフィルタサービスが5,100万円で、前年同期比116.7パーセント、ビジネスフォン向けフィルタサービスが1億1,300万円で、前年同期比173.6パーセントとなりました。
成長の主な要因について、モバイル向けフィルタサービスは、2023年12月から固定契約モデルの契約更改による契約金額が増加したことや「280blocker」の販売が好調に推移したことが挙げられます。固定電話向けフィルタサービスでは、CATV向けサービスが引き続き好調に推移したことが要因です。
ビジネスフォン向けフィルタサービスでは「トビラフォン Biz」の販売が今期も順調に進みました。「トビラフォン Cloud」についても、足元の数字は開示していませんが、前年同期比で販売を伸ばしています。
2024年10月期 業績予想に対する進捗
2024年通期の業績予想に対する進捗です。売上高については進捗率24.2パーセント、各利益については25パーセントを上回る進捗となっており、業績予想に対して順調に進捗していると考えています。
純利益については進捗率31パーセントとなっていますが、これは当第1四半期に保有有価証券の売却益が含まれるためです。今後についても、現状においては順調に推移すると想定しており、通期としては計画どおりの着地を見込んでいます。
売上高四半期推移(ストック収益、フロー収益)
売上高の四半期推移です。スライドのグラフでは、内訳をストック収益と一過性のフロー収益に分けて記載しています。
当社の基盤であるストック収益は、前年同期比112.6パーセントとなっており、前四半期比においても103.7パーセントと着実に成長しています。これは主にモバイル向けフィルタサービスにおける固定契約モデルの契約更改による契約金額の増加や、ビジネスフォン向けフィルタサービスの販売伸長によるものです。今後もストック収益を着実に積み上げていきます。
フロー収益には「280blocker」の売上や「トビラフォン」および「トビラフォン Biz」の端末代金等を含んでいます。当第1四半期では「280blocker」の販売が好調とお話ししましたが、それがこのフロー収益の増加に表れています。
主な契約モデル別の四半期推移
モバイル向けフィルタサービスの主な契約モデル別の四半期推移です。スライド左側のグラフは、3つの契約モデルの売上構成比の四半期推移を示しています。スライド右側には、それぞれのモデル別の売上高と月間利用者数の前四半期比を記載しています。
これらは3大通信キャリアの契約分のみを含んでおり、サブブランドやMVNOの数値は含んでいませんので参考としてご覧ください。
「月間利用者数×単価」モデルについては、売上高・月間利用者数ともに減少しました。前期第4四半期において、通信キャリアと共にマーケティング施策を実施したため、月間利用者数が増加していましたが、その効果は限定的であったと考えています。通信キャリアと連携し、要因分析や今後の対応施策を検討していきます。
「契約者数×単価」モデルについては、格安スマートフォンへの移行等のトレンドが続いていることから、契約者数は減少傾向です。月間利用者数については、前期第4四半期にもご説明したとおり、当社のサービスを提供しているアプリが各種セキュリティ機能を統合した新しいアプリへと切り替わるタイミングにあります。新旧双方でのアプリ利用者の重複部分を調整することが難しいため、非開示としています。
アプリの入れ替えには半年以上の時間を有しますので、ご理解をお願いします。比較可能な情報の取得ができ次第、開示することを検討中です。
「固定契約(定額契約)」モデルについては、2023年12月から金額アップでの契約更改となったため、売上高が増加しています。月間利用者数については減少していますが、こちらにおいても通信キャリアと連携して対応を検討していきます。今後の動向についても、通信キャリアと連携しながら注視していきたいと考えています。
売上原価の推移
売上原価の推移です。全体としては計画どおりにコントロールできており、前年同期比では各項目ともに増加しています。人件費の増加は人事制度の変更や採用による人員増の影響によるものです。
前四半期比では、各項目が少し減少していますが想定内の変化だと認識しています。特に減価償却費がやや減少したように見えますが、サービスに必要なサーバー等の設備の入れ替えなどによるものです。
通期の着地については、通期業績予想から変更はなく、7億1,200万円の売上原価を見込んでいます。
販管費の推移
販管費の推移です。全体としては計画どおりにコントロールできており、前年同期比では特に広告宣伝費および人件費が増加しています。
広告宣伝費の増加については、「280blocker」を中心に効果の高いマーケティング施策を実施したためです。人件費についても、営業部門の人員増の影響により増加しています。前四半期比においても同様の影響がある一方、その他については採用時期の後ろ倒し等により減少しました。
通期の着地については、通期業績予想から変更はなく、8億8,300万円の販管費を見込んでいます。
営業利益の推移
営業利益の推移です。当第1四半期の営業利益は2億200万円で、前年同期比111.2パーセント、営業利益率は35.6パーセントとなっています。投資の後ろ倒しにより販管費や原価が当初計画よりも抑制された影響で、四半期での利益が初めて2億円を超えました。
今期についても採用等は実施する予定ですので、通期の着地については、通期業績予想の7億5,500万円から変更はありません。
コスト推移(四半期)
こちらのスライドは、四半期でのコスト推移です。適宜ご参照ください。
BS推移
こちらのスライドは、BSの推移です。増減に着目いただくと、現金及び預金、純資産が減少しています。これは2023年12月に自己株式の取得を行ったことによるものです。
明田氏からのご挨拶
明田:2024年10月期第1四半期においては、通期計画に対して順調に事業を進めることができました。今後も「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐトビラになる」という企業理念の下、中長期的な企業価値向上に向け、必要な投資を行いながら継続的な成長を目指していきます。
以上、2024年10月期第1四半期の決算説明とします。最後までご清聴いただき、ありがとうございました。