(1)会社概要(2023.3.31時点)
佐藤善通氏(以下、佐藤):個人投資家のみなさま、エクシオグループ経営企画部コーポレート・コミュニケーション室の佐藤です。この度は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
本日は、当社について知っていただけるよう、会社概要から始め、事業紹介、中期的な成長戦略、株主還元方針などをご説明したいと思います。よろしくお願いします。
会社概要を簡単にご説明します。当社は1954年5月に創立しました。来年で創立70周年を迎えます。
2022年度の連結売上高は6,276億円、昨年度末時点の従業員数はグループ全体で1万6,772名です。本社は渋谷にあり、国内はもとより海外でも幅広く事業を行っています。
(2)沿革
佐藤:創業以来の歩みです。1954年に通信建設会社である「協和電設」として創業しました。その後、1991年に事業の拡大に合わせて、「協和エクシオ」に社名を変更しています。
「エクシオ」はラテン語に由来し、「自ら殻を破って外に出る」という意味があります。当時、新たな領域に挑戦して、一層の飛躍を目指そうという気持ちを込めて、この社名にしました。
2000年代に入ってからは、M&Aによってグループを構成する会社数も増え、事業領域もどんどん拡大していきました。そして一昨年、「協和エクシオ」となってから30年目を迎え、「自ら殻を破る」という心を大切にしながら、グループ会社とともに大きく成長したいという思いを込めて、「エクシオグループ株式会社」へと商号変更を行っています。
現在は、売上高6,000億円を超えるところまで事業を拡大しています。
(3)ビジョンとパーパス
佐藤:一昨年の社名変更を機に、当社グループのブランドの再定義を行いました。パーパスと呼ばれる社会における存在意義を表す言葉を策定しています。
策定にあたっては、グループ全従業員へのアンケートや、お客さま・パートナー企業へのインタビューを実施し、ステークホルダーのみなさまの思いや期待を集約し、社内での議論を経て作成しました。
グループパーパスは「“つなぐ”力で創れ、未来の“あたりまえ”を。」です。当社グループが創業以来培ってきたさまざまな技術と、当社の事業に関わっている多くの方をつないで、未来のプラットフォームを創り社会に貢献することが使命だと考えています。このパーパスをグループ社員一人ひとりの志として事業を進めていきたいと思っています。
(4)事業概要
佐藤:具体的な事業内容をご説明します。当社グループの事業は、「通信キャリア事業」「都市インフラ事業」「システムソリューション事業」の3つに分けられています。
2022年度末の事業ごとの売上高は、スライド下段に記載のとおりです。通信キャリア事業が約40パーセント、都市インフラ事業とシステムソリューション事業がそれぞれ約30パーセントの比率になっています。祖業である通信インフラ事業はすでに50パーセントを切っている状況です。
スライド上段には、事業領域のイメージ図を掲載しています。こちらをご覧いただくと、当社の事業がさまざまな領域・分野で営まれていることがご理解いただけると思います。
増井麻里子氏(以下、増井):質問を挟み込みながら進めたいと思います。3つの事業それぞれにさまざまな分野があるのですが、足元ではどのような受注が増えているのでしょうか?
佐藤:特に都市インフラ事業とシステムソリューション事業が増えています。都市インフラ事業では、日本にも相当数できてきたデータセンターの事業が好調です。それに加え、官公庁の事業もあります。また、高速道路のインフラの更改も好調です。
高速道路にもいろいろな設備がついていますので、通信設備や照明設備なども含めて、工事を行っています。
(4)事業概要-通信キャリア
佐藤:セグメントごとの事業をご紹介します。まず、通信キャリアの事業についてです。こちらのセグメントでは、通信キャリア向けの各種通信ネットワーク関連の工事を行っています。みなさまの家庭やオフィス、携帯電話から、基地局あるいは電話局を通じて通信をつなげていくことがこのセグメントのミッションです。
固定回線の工事だけでなく、今お伝えしたようなモバイル通信も含めたあらゆる工事を行っています。
みなさまも街中で電話工事を行っている場面を見たことがあると思いますが、それがまさにこのセグメントが担う業務です。
光ファイバーや5G、将来的には6Gという話もありますが、進化を支える通信技術に対するアンテナを高くしながら、通信インフラを支え続けていきます。
(4)事業概要-都市インフラ
佐藤:都市インフラ事業についてです。こちらのセグメントは、通信キャリア事業で培ってきた技術力を活かし、電気や環境、土木といった領域に応用して発展を遂げてきました。
土木関係では、通信ケーブルのトンネルを掘る技術が応用されていますし、電話局などの通信設備は電気が必要な設備ですので、当然ながら電気関連の技術も必要です。もちろん通信関係の技術もありますので、そのような諸々の技術を組み合わせながら、CATV会社や鉄道事業者の通信設備、オフィスビルやデータセンターの電気設備などを手がけています。
他にも無電柱化や下水道工事などのトンネルを含めた都市土木工事、近年は太陽光発電や再生可能エネルギー関連工事なども手がけています。また、ユニークなところでは廃棄物処理プラントのような環境系の事業もあり、いろいろな領域で活躍しているのがこのセグメントの特徴です。
(4)事業概要-システムソリューション
佐藤:システムソリューション事業についてです。こちらも、通信キャリア事業で培った技術を活用しています。ぱっと聞くと、通信キャリア事業とシステムソリューション事業との関連がわからないかもしれませんが、実は電話交換機も内部にソフトウェアが組み込まれており、その開発を行うための技術を蓄えてきました。
ソフトウェアの受託開発に加えて、サーバやLANといった通信サービスの提供、あるいはGIGAスクールや自治体のデジタル化といったDXの推進も手伝っています。
また、近年事業を拡大しているグローバル事業はもともと、このセクションから新規事業として始めた経緯があります。そのため、現時点ではシステムソリューションセグメントに含まれています。
(5)グループ体制と拠点
佐藤:現在、エクシオグループは135社で構成されるかなりの大きな企業グループとなっています。
グループ各社がそれぞれの技術や強みを持っているため、それらを活かして複数の企業でプロジェクトを進めたり、ジョイントベンチャーを組んだりしています。また、それぞれの営業基盤を活かしてクロスセルを行うなど、グループならではのシナジーを活かした経営を行っています。
海外については、シンガポールを拠点にグローバル事業を推進しており、東南アジアを中心とした世界各国で事業を展開しています。
(6)近年の業績推移
佐藤:業績の推移です。前年度の売上高は6,276億円と、過去最高を更新しました。ただし、営業利益は325億円で、不採算事業やキャリアの投資抑制等の影響により減益となっています。
今年度は売上高6,300億円、営業利益340億円を目標に進めています。さらなる構造改革を行いながら、都市インフラ事業とシステムソリューション事業を中心に成長していきたいと思っています。
増井:スライドのグラフには、2025年度の目標として営業利益率7.5パーセントと記載されていますが、こちらに向けての取り組みを教えてください。
佐藤:利益率を上げていくためには、生産性を上げていくことと、収益性を上げていくことの2つの方向性があると思います。従来の通信キャリア事業は、今後も大きな伸びは期待していませんので、構造改革やDXにより生産性を高めながら、収益力を上げていくことが重要です。
そこで創出された人員をリスキリングし、成長産業である都市インフラ事業やシステムソリューション事業にシフトさせていきます。好調な部門ですので、こちらの収益を増やしていくことも組み合わせながら、利益率をどんどん上げていきたいと思っています。
(7)株主還元
佐藤:株主還元についてです。配当には以前からDOEの基準を設けています。ただし、2023年度からは基準値を従来の3.5パーセントから4.0パーセントに引き上げています。その結果、2023年度は年間配当120円となる計画であり、12期連続の増配です。
また、当社は2022年度まで18年間連続減配なしで、「日経累進高配当株指数」の構成銘柄にも選定されている状況です。
中期経営計画の目標であるROE9.0パーセント、そして将来的には10パーセントを目指して資本収益性を高めていきたいと思っています。
当社は、来年4月に「1:2」の株式分割を行うことを決定し、先ほど発表しました。これは、来年から新NISAが始まることもあり、みなさまに数多くの株を保有し、応援していただきたい考えからです。そのようなことも含め、株主さまの利便性を高める観点でも、株式分割を行うこととしました。
荒井沙織氏(以下、荒井):12期連続で増配予定、そして18年間減配なしというのは本当にすばらしいことだと思うのですが、配当金に対してはどのようなポリシーをお持ちなのでしょうか? また、2025年の3月末時点で株を保有している方への提供をもって、株主優待を廃止するというリリースがありましたが、その背景なども教えてください。
佐藤:株主さまへの利益還元は、当社の最優先事項の1つだと考えています。ただし、企業価値を向上させていくために一番重要なのは、稼ぐ力を増やしていくことだと思います。
一方、自己資本を積み上げすぎないという観点も重要であると思っていますので、そのような理由で配当金の基準をDOE4.0パーセントに引き上げました。
当社は総還元という点での約束はしていませんが、基本的には確実に配当していきたいと考えてDOE基準を設けていますので、自己株の取得や消却も含めて継続的に実施していきたいと思っています。
株主優待の廃止について、現在は1,000株以上保有している方に「QUOカード」を配っています。しかしながら、非常に限定的であることに加え、海外の投資家のみなさまからは逆に「送っていただかなくてもけっこう」と言われてしまうこともあります。そのような背景もあり、すべての株主さまに平等に還元したいと議論した結果、配当金に統一することとしました。
DOEを4.0パーセントに上げたのと同時に実施してもよかったのですが、このような契機がありましたので配当金に統一し、優待については廃止していきます。ただし、楽しみにしている株主さまもいらっしゃると思いますので、今すぐにではなく、来年度まで優待を実施し、それをもって廃止とします。
荒井:そのあたりは、新NISAが始まることも意識しているのでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。多くの方に株を持っていただきたいと考えているため、今回の株式分割もそうですが、そのようなかたちでどんどん還元していきたいと思っています。
(1)2030ビジョンについて
佐藤:2030ビジョンと中期経営計画についてです。当社は2021年5月に、2030ビジョンと5ヶ年の中期経営計画を発表しました。長く通信インフラの構築に関わってきた我々としては、事業を通じて社会課題の解決を図っていくことを非常に大事にしています。そのために、これまで培ってきた多様なエンジニアリングの力をつないで融合していくことが重要だと考えています。
我々は、現場のエンジニアリングとソフトの開発といった、ハードとソフトの両方を持っていますので、そのような強みを活かして今後も社会貢献を続けていきます。国内外含め、社会から必要とされるグループであり続けたいという思いを込めて、「Engineering for Fusion」という2030ビジョンを作成しました。5ヶ年の中期経営計画は、10年後の2030ビジョンをバックキャストして作成しています。
(2)2030年に向けたエクシオグループの果たす役割・貢献領域
佐藤:スライドでは、2030年に向けてエクシオグループが果たす役割と貢献領域を示しています。
当社が2030年に目指す4つの社会として、「カーボンニュートラルな社会」「健康で生き生きと暮らせるスマート社会」「グローバルで多様性を享受する社会」「貧困・格差が解消される社会」を定義し、社会における事業活動をイメージして取り組んでいます。
(3)2030年に目指すポートフォリオ
佐藤:スライドは、2030年の我々のあるべき姿がどのようなかたちなのか、目指すべきポートフォリオを考えて作ったものです。
当社はもともと、通信建設事業から始まっていますので、前回の中期経営計画を作った時には、通信キャリア事業が全体の3分の2を占めていました。
しかし、その後のグローバルな展開やM&Aによる業容拡大などを経て、今では通信キャリアの売上は、全体の半分を下回っています。通信建設会社と言われていますが、様相が大きく変わっています。
今後も、成長分野の都市インフラ事業、システムソリューション事業が伸長し、2025年、2030年を見据えると、各事業がおおむね3分の1ずつになっていくと考えています。景気や社会動向に左右されにくいポートフォリオを構築していきたいと思っています。
(4)中期経営計画の目標
佐藤:中期経営計画の数値目標です。2025年度の目標として、売上高6,300億円、営業利益470億円、営業利益率7.5パーセント、ROE9.0パーセント以上、EPS280円以上を目指しています。
実は一昨年、瞬間風速的な特需もあり、ROEはすでに9.3パーセントに到達していました。しかしながら2022年度は減益ということもあり、7.3パーセントにとどまっています。
ただし一度は目標に到達しているため、この目標は我々にとって十分に到達できるものと認識しています。2025年度には継続的に9.0パーセントを超えていくことを目標に、経営基盤をしっかり作り上げたいと思っています。
(5)セグメント別戦略
佐藤:セグメント別の領域です。祖業である通信キャリア事業については、現在モバイルの5G展開を積極的に進めています。それにしっかり取り組むとともに、コア事業でもあるため、収益性・生産性も着実に向上させていきたいと考えています。国際的な技術動向にもアンテナを高くし、通信キャリアの投資状況にも柔軟に対応していきたいと思っています。
都市インフラ事業については、通信・電気・土木・プラント技術を融合させたかたちでの成長を目指していきます。BIM/CIMを含めた建設DXも進めていきたいと思っていますし、昨今話題になっている環境エネルギー分野や再生可能エネルギー分野、老朽化インフラ再生などの社会的課題にも対応していきます。
システムソリューション事業については、高付加価値事業に挑戦して拡充していくとともに、定期・定額的にお金が入ってくるような保守運用・セキュリティなどのリカーリングビジネスにも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
ワンストップでお客さまに対応できる、「ソリューションプロバイダ」としての成長が求められると考えています。
増井:システムソリューション事業の戦略についてお聞きしたいと思います。スライドに「XaaSエンジニアの育成」とありますが、クラウド化の需要見通しについて教えてください。
佐藤:企業や官公庁においては、オンプレミスでカスタマイズして作っていく事業やシステムがどんどん少なくなってきています。クラウドを活用して事業プロセスを変えていこうというDXの流れがあり、その中で我々もクラウドサービスを推進したいと考えています。
PaaSやIaaSなど、世界的により一層拡大していくと思っています。その1つの例が、データセンターです。データセンターが拡大しているのは、携帯電話などが普及していることもありますが、クラウド事業が急速に発展しているからだと思います。我々はこのような市場をしっかり捉えて進んでいきたいと考えています。
増井:まだその余地はあるということですね。
佐藤:情報通信白書等を見ても、「いつ下げ止まるんだろう」という勢いですので、この事業は今後も伸びていくと考えています。
(6)取組み状況(都市インフラ:エネルギー)
佐藤:都市インフラ事業の取り組みを2つご紹介します。スライド左側に記載のとおり、先ほどもお話ししたデータセンターの市場が非常に活況を呈しています。
データセンターにおいて我々が手がけているのは主に電気関連の設備ですが、先ほどお伝えしたとおり、その他にもいろいろな技術を持っています。ですので、通信や空調、建物自体も作っていき、お客さまとのつながりを活かしながら、対応領域をさらに広げていきたいと考えています。
スライド右側の写真は、建築中の木質バイオマス発電所のプラントです。自前の設備で、再生可能電力としての自社売電を行う予定で建設を進めています。
地元の山林から出る未利用材などの資源を有効活用し、自治体と一緒に事業を進めていくことになります。2024年以降に本格稼働の予定です。
(6)取組み状況(システムソリューション:グローバル)
佐藤:グローバル事業のトピックスをご紹介します。シンガポールに新グローバル本社ビル「The Pulse」をオープンしました。各所に分散していたグループ会社9社をこのビルに集約し、より効率的で積極的な事業展開を進めていきます。
このビルはスライドの写真にあるとおり、オープンスペースや緑、フォーマル/カジュアルな会議スペースを配置しています。1,000名を超える従業員のウェルビーイング、いわゆる働きやすさに配慮した設計となっています。
(6)取組み状況(システムソリューション)
佐藤:システムソリューション事業の取り組みについてご説明します。このセグメントにおいては、中期的な目線で、従来の下請けでのシステム開発の枠を超え、一気通貫型の「ソリューションプロバイダ」を目指して取り組んでいます。
そのために、いろいろなサービスを開始したり、ビジネスを変えたり、あるいはリファービッシュビジネスに取り組む会社をM&Aしたりしています。特徴と強みを持つグループ会社と共創しながら、進めているところです。
昨年度は中核のIT会社を2社設立しました。そこにいろいろなグループの英知を集結し、効率よく生産性を上げていきます。
(1) M&Aの取り組み
佐藤:その他、経営基盤の取り組みについてご説明します。
まずはM&Aの取り組みです。我々は、事業成長していく手段として、M&Aを活用してきました。今後も積極的に活用したいと考えています。
グループの成長に資する企業を数多く取得してきましたが、それぞれの会社が強みを持っており、そのシナジーが着実に発揮されて利益貢献も進んでいます。今後も引き続き、進めていきたいと考えています。
(2)R&Dの取り組み
佐藤:R&Dの取り組みについてです。従来エクシオグループでは、現場レベルの改善が特許につながる事例はありましたが、組織的に研究開発に力を入れるということは行ってきませんでした。
今後も事業成長を続けていくためには、将来の事業環境の変化に備える種まきもしていきたいと考え、今回、R&D方針を作りました。
将来のための投資という意味では、現場を変革するDX化も進めています。それらを合わせて年間売上の1パーセントを目標に、投資していこうと考えています。
それぞれの分野で強みを持ったグループ企業の知見を最大限に活かすためにも、R&Dが必要だと思っていますので、R&Dを推進する体制を整えています。
(1)ESG経営の実践(マテリアリティ)
佐藤:ESG経営についてです。2030ビジョンにおいても、ESG経営を進めることを表明しています。
昨年、持続可能な事業運営を行っていくために、マテリアリティ(重要課題)の特定を行いました。それぞれSDGsの項目とも関わりがありますので、各従業員がこのような項目を意識しながら、事業運営や社会貢献をできるよう進めていきたいと思っています。
(2)ESG経営の実践(環境)
佐藤:気候変動問題についても、意識して取り組んでいます。先ほど、再生可能エネルギーの発電所のお話をしましたが、2021年にTCFDコンソーシアムにも加盟し、TCFD提言への賛同を表明しています。
また、社内でも「サステナビリティ推進室」という組織を作るとともに、ガバナンス機関としての「サステナビリティ委員会」も設置しています。これらによって取り組みを加速し、統合報告書等を含めた情報開示を積極的に進めていく予定です。
(3)ESG経営の実践(外部評価)
佐藤:スライドでは、ESG関連の取り組みについて、外部機関からの評価をご紹介しています。スライド下部に記載のCDPからも、国際的な気候変動の枠組みにおいて、2022年度「B」評価をいただきました。今後もさらなる取り組みを進めていきたいと思っています。
(1)ROEの向上
佐藤:企業価値の向上に向けてのスライドです。みなさまもご承知のように、東京証券取引所からPBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業に対し、対策をとるよう要請があり、当社も社内で議論を進めています。
スライドに記載のとおり、ROEを意識した経営を行い、2025年度の中期経営計画の目標であるROE9.0パーセント達成を目指して進めていきます。資本効率を高める努力をしながら、しっかりと「稼ぐ」ための基盤を作っていきたいと思います。
増井:スライドに、「資本コストを上回る成長を続けることで企業価値向上につなげる」と記載があります。「PBR=ROE÷(株主資本コスト-期待成長率)」という式がありますが、資本コストや期待成長率がどの程度あると推計していますか?
佐藤:資本コストの捉え方は、いろいろあると思いますが、当社は7.0パーセント程度だと思っています。2022年度のROEは7.3パーセントですので、ギリギリです。
増井:そうですね。
佐藤:足元のPBRも1倍を少し超えた程度ですので、資本市場における当社への期待は、まだ低いと思っています。
しっかりと稼ぐ力をつけてROEを上げていくことで、投資家のみなさまに期待されるような会社にしていきたいと思っています。
増井:ROE9.0パーセントに向けて、しっかりと取り組んでいくということでしたね。
佐藤:おっしゃるとおりです。
(2)キャッシュアロケーション方針
佐藤:キャッシュの活用方針についてです。今年の決算発表でも示しましたが、事業で創出されるキャッシュは、EBITDAベースで、中期経営計画の5ヶ年で2,000億円を超える規模感になると想定しています。成長投資をしっかり行いながら、株主さまへの還元も継続して積極的に行っていきます。
ただし、場合によってはEBITDAで不足する部分も出てくると思いますので、有利子負債を適切に活用しながら実行していきたいと考えています。
また、不要資産や政策保有株式の売却も進め、成長投資の原資として有効に活用していく方針です。
増井:スライドに「低コスト調達によるWACC低減」と記載があります。御社は手段として、どのようなものを想定していますか? 負債コストに関しても、格付けは高いものをお持ちですが、今後は少しレバレッジを効かせる方向に行かれるかと思います。格下げの可能性もゼロではないと考えていますが、そのあたりも教えてください。
佐藤:ネットデット(純有利子負債)やEBITDAの倍率、自己資本比率はまだ比較的余裕があります。さらに、現在は格付けが「A+」ですが、企業群の状況などを見ると、負債を拡大する余地があると思います。
ただし、今後も我々はM&Aを続けていくつもりです。また、今後大きな投資を行うことになると、そのようなところをしっかり考える必要があります。
基本的には格付けを見ながら、格付けを落とさない範囲で負債をコントロールしていきたいと思っています。
増井:それでは、最後に一言お願いします。
佐藤:少し宣伝させてください。最近始めたYouTubeの公式チャンネルで、社員の働く姿や木質バイオマス発電などをご紹介しています。これからも、積極的に情報発信していきたいと思っていますので、よければご覧いただき、チャンネル登録していただけるとうれしいです。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:通信キャリア事業の足元の状況と今後の見通しについて
増井:「通信の受注売上が落ち込んでいますが、足元の状況と今後の事業環境の見通しを教えてください」というご質問です。
佐藤:通信キャリア、特にモバイルのキャリアは、ここ最近安定して伸びてきていましたが、ご存じのように、国内の通信料金が高いという話がありました。政府からの要請に応じて、割引の効いた料金設定を行った結果、各キャリア事業者が厳しい経営状況になり、投資をかなり抑制しています。
我々の通信キャリア事業は各キャリアの投資抑制が響いてくるため、足元で収益が落ちている状況です。ただし、5G等通信設備への投資は今後も行っていかなければならないと思っています。
先般、NTTドコモさまが、つながりにくい都市部に300億円を投資する話がありました。また、楽天モバイルさまが「プラチナバンド」という、非常につながりやすい周波数帯を獲得したこともありました。今後はそのような投資も出てくると思いますので、我々も期待しています。
質疑応答:人財の確保と人財不足による影響について
荒井:「建設・ITはともに人財不足が懸念される業界ですが、御社では人財の確保ができているのでしょうか? また、人財不足による事業への影響はあるのでしょうか?」というご質問です。
佐藤:人財の確保は、当社グループにおいても非常に重要な課題だと考えています。
先ほどもお伝えしましたが、通信キャリア事業を含めて、構造改革やDXを進めています。そのようなところで生産性を上げていくことにより、人財リソースが創出されてきます。
当社では、創出されてきたリソースを、都市インフラやシステムソリューションの成長事業に持っていくことを行っています。当然ながら、経験者のキャリア採用やM&Aで、会社ごと技術者を確保することも進めています。
システムソリューション、特にシステム系の人財が足りないと世の中では言われており、市場で取り合いになっています。
エクシオグループは、もともとエンジニアリング、現場の仕事をする会社だというイメージが非常に強かったと思います。そのため、IT系の人財確保が難しいということで、IT系の中核会社を作り、システムの会社として採用を進めています。
それにより、市場の相場も見つつ、会社として新入社員の初任給を高めに設定しながら、なんとか人財が確保できている状況です。
荒井:現場の採用状況でいえば、足りているということですね。
佐藤:おっしゃるとおりです。2024年度の採用については、我々が思うレベルにまで到達していると考えていますが、今後の事業成長を考えるとさらなる人財確保が必要な状況です。
しかし採用市場はいまだ厳しい状況であり、かつ我々はブランディングできていないところがあります。そのため、ブランディングも含めてしっかりと学生にアピールしていきたいと思っています。
荒井:条件面で辞めにくい環境を作るということでしょうか?
佐藤:そのとおりです。当社は、社内の処遇や雰囲気などが非常にいいと思っています。辞める方もそれほど多くありませんので、そのようなところもしっかり大事にしていきます。「社員のエンゲージメント」と言われていますが、働き方もしっかりと見ながら進めていきたいと思っています。
質疑応答:競合他社の状況について
増井:「競合はどこですか? また、全体のシェアはどの程度でしょうか? コムシスホールディングスさまと、目指す方向に違いがあると思いますか?」というご質問です。
佐藤:通信建設という分野でいえば、競合他社はコムシスホールディングスさまと、ミライト・ワンさまになると思います。この3社は同じように、もともとNTT(旧電電公社)の通信建設事業から出ている会社です。
多くの同業他社をM&Aしながら、現在は当社、コムシスホールディングスさま、ミライト・ワンさまの3社に集約され、その結果、ほぼ均等に、3分の1ずつ市場を分け合っている状況です。
ただし先ほどお伝えしたように、当社の通信建設事業は半分を切っています。そのような意味では、都市インフラ事業においては、きんでんさまや関電工さまが競合他社になりますし、システムソリューション事業では、DTSさまやTISさま、ネットワンシステムズさまなど、競合他社がたくさんいます。昔は3社で競い合っていましたが、現在は各分野で強い会社がいるため、競合他社が増えています。
増井:インフラもプレイヤーが多いのですね。
佐藤:おっしゃるとおりです。我々の競合他社と言われているコムシスホールディングスさま、ミライト・ワンさまも、近年の事業展開において特徴があります。
我々は3つの事業を均等に進めていますが、コムシスホールディングスさまは社会インフラの事業が非常に強いです。一方、ミライト・ワンさまはIT系の仕事が非常に強く、ドローンなども手がけています。今後はそれぞれが、特徴を持った事業を進めていくと思います。
事業領域の拡大により、競合は3社だけではなくなっており、我々も世の中のいろいろな動きを見ながら、事業を進めていかなければならないと思っています。
質疑応答:顧客の新規開拓について
荒井:「顧客の新規開拓などはあまりされないのでしょうか? 事業によって違ってくるかと思いますが、それぞれお答えください」というご質問です。
佐藤:通信キャリア事業は、お客さまがほぼ決まっており、NTTグループ各社やKDDIさま、楽天モバイルさま、ソフトバンクさまがメインになります。
以前のソフトバンクさまや楽天モバイルさまのような、新たな事業者が出てくれば、新規開拓もありえますが、今のところは決まったお客さまになります。
都市インフラ事業では、幅広い事業を行っていますので、例えばデータセンターでいえば、大手のクラウド事業者やゼネコンがお客さまです。また、我々は都市インフラ事業で高速道路なども手がけていますので、NEXCOさまがお客さまになりますし、下水道などのトンネルでは、自治体がお客さまです。我々は事業を拡大しているため、お客さまの層もどんどん広がっています。
システムソリューション事業では、従来はNTTコムウェアさまやNTTデータさまなど、NTTグループさまからの下請けから始まっていますが、今では民間のお客さまを含め、元請けのお客さまも増えています。
最近は官公庁でデジタル化が進んでいますので、自治体や官公庁からダイレクトに注文を受けることもあります。またGIGAスクールにおいては、小中高校や教育委員会などもお客さまになります。
増井:指導も込みでということでしょうか?
佐藤:おっしゃるとおりです。物を売って終わりではなく、実際に学校に入って指導を行ったり、場合によっては人を直接派遣したりしています。
質疑応答:EV充電器について
荒井:「EV充電器の設置は事業として期待できますか?」というご質問です。
佐藤:現在はEV充電器と、電力会社と一緒に手がけている系統用蓄電池があります。
再生可能エネルギー、例えば太陽光は日中だけですので、発電には波があります。しかし大きい蓄電池を置いて均質化する、つまり夜に排出すれば、日中に貯めた電力を有効に使うことができます。このような系統用蓄電池の事業があります。
EV充電器の事業はこれからだと思いますが、広がっていると思います。日本はまだ遅れていると感じます。
増井:そのあたりはどのように見られているのでしょうか?
佐藤:我々は、シンガポールでもEV充電インフラの構築などを行っていますし、日本でも、テラモーターズさまなどと組んで、充電器を取り付ける事業を始めています。
そういう意味では、ある程度市場が拡大してくれば何千、何万という数になりますので、非常に期待しています。
荒井:国内とシンガポールなどの海外と、どちらから着手されたのですか?
佐藤:最初は国内からだったと思います。しかしながら、海外は国の主導があるため、展開が非常に早いです。国の主導があると加速する部分もありますので、国内でも大いに期待しています。
荒井:まずは動き出すところからですね。
佐藤:おっしゃるとおりです。国内では、EV自動車自体がまだそれほど普及していませんので、これからの事業だと思います。
質疑応答:新規事業の立ち上げについて
増井:「新規事業の立ち上げは検討されていますか? 積極的に進めていく方針ということですが、新規事業はありますか?」というご質問です。
佐藤:何を新規事業とするかにもよりますが、例えば、EV充電器や再生可能エネルギーなども新規事業だと思います。
先ほどお伝えした木質バイオマス発電などは、自前で発電所を持って発電し、売電していきます。そのような事業も、我々の技術を活かせるものであれば、進めていきたいと思っています。
増井:現在、セグメントとしては3つあり、その中で取り組まれるということですね。
佐藤:おっしゃるとおりです。新規事業としては、都市インフラ事業の部分が多いと思います。また、システムソリューション事業でも、今後、新たなクラウドサービスが出てきます。できるところから積極的に進めていきたいと思っています。
質疑応答:5G回線の拡大に伴う需要と業績への寄与について
増井:「5G回線の拡大に伴う需要、業績への寄与は大きいですか?」というご質問です。
佐藤:こちらは、我々も期待したいところです。5Gもかなり普及してきていると思います。ただし日本全国津々浦々になると、まだ必要なエリアも多くあるため、5Gの基地局を作っていかなければならないと思っています。
キャリアの投資動向をにらみながらにはなりますが、日本全国どこでも、柔軟に対応できる体制を作っています。
増井:5G端末の方が増えると、データ量も増えていきますよね。
佐藤:最近は動画を使っている方が多くなり、それにより都市部がつながりにくいという話が出ています。そのような増強なども、これから必要になってくると思います。
増井:キャリアの投資が進むということですね。
佐藤:NTTドコモさまなどはすでに表明されていますが、増えてくると考えています。
荒井:さらにデータセンターの拡大にもつながっていくと思いますね。
佐藤:データセンター事業もさらに拡大していきたいと思っています。
佐藤氏からのご挨拶
本日は、貴重な機会をいただきありがとうございました。我々は今後とも事業を拡大するとともに、経営基盤を強化していきます。投資家のみなさまにも還元できるよう、しっかりと取り組んでいきたいと思っていますので、ぜひとも応援をよろしくお願いします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:減少トレンドの通信キャリア事業の来期以降の見方について、中期的に売上減少はどの程度で下げ止まる見通しでしょうか? 「通信利益のマイナス影響を他事業でカバーできない」といった事態が起きることはありませんか?
回答:通信キャリア事業はNTTドコモさまの通信品質改善に対する追加投資や楽天さまのプラチナバンド獲得などの動きもあり、今期がボトムで来期以降緩やかに回復に向かうのではないかと期待しています。
また、当社の中での取り組みとして構造改革を続けており、上期では100名程度の社員を成長分野である都市インフラ事業やシステムソリューション事業へシフトさせる取り組みを行いました。これにより、通信キャリア事業の生産性・収益性の向上を図るとともに成長分野におけるさらなる事業拡大を進めていく考えです。
引き続き、中計の目標である営業利益470億円の達成に向けて取り組んでいきます。
<質問2>
質問:御社の配当方針並びに自己株式の取得など、株主対策等の方針も素晴らしいと思っています。 自己株式の取得に関して、「自己株式の取得総数と取得価額の計算からすると取得単価が極端に低額であるため、少なくとも直前の株価より、高く設定した方がいいのではないか?」という点について、会社の考え方を教えてください。
回答:ご意見ありがとうございます。当社においては、自己株式の取得の際には取得株式数ではなく取得予定総額を確実に実施することに重きを置いています。将来的な資本効率性を高めるため、自己資本額を必要以上に積み上げないように還元を行うということで実施しており、いわゆる“自己資本の払戻し”が中途で終了してしまうリスクを排除するため、あえて取得単価は低めに設定しています。