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上原靖氏(以下、上原):沖縄セルラー電話株式会社の上原です。本日はみなさまの貴重なお時間をいただき、ありがとうございます。

「沖縄セルラー」は、なかなか耳馴染みのない会社名だと思います。会社名に沖縄とついているため、沖縄県に本社があることはご存知かと思いますが、ぜひご理解を深めていただければと思っています。

本日はスライドに記載のとおり、「沖縄セルラーとは」、昨年発表した中期経営計画とその中間期の状況のご報告、最後に株主還元の3章立てでご説明します。

会社概要

上原:まず「沖縄セルラーとは」についてお話しします。創業は1991年6月で、スライド右上に顔写真を記載している代表取締役社長の菅は、親会社のKDDIでコンシューマー営業の本部長、そしてKDDIの子会社であるUQコミュニケーションズの社長などを歴任し、2021年に当社の社長として就任しました。それ以来、今期が3期目となります。

当社の所在地は那覇市の松山で、久茂地エリアというビジネス街付近にあります。スライド右下の写真が本社ビルで、10年前の2013年に竣工しました。この場所は、以前日銀の那覇支店があった場所で、そちらが入札され、我々の本社となっています。

そのため、1階のエントランスにあるエレベーターホールには、日銀の大金庫で使われていた金庫の扉をモニュメントとして飾っています。総会の際に、株主のみなさまはそちらを通って上へ行きますので、ぜひご覧いただければと思います。

沿革

上原:会社の沿革です。1991年6月に設立されました。その経緯を少しご紹介したいと思います。

前年の1990年10月に、県内の有力企業と本土の経済界のみなさまが集まり、「沖縄懇話会」という沖縄の経済振興のための懇話会を開きました。その中で京セラ、第2電電の創立者である稲盛和夫氏より「沖縄県に携帯電話会社を作ろうじゃないか」と提案したところ、みなさまに賛同いただき、当社が設立されたという経緯があります。

KDDIが親会社となり、県内の優良企業のみなさま、合計43社の出資により誕生しました。設立後、たった5局の携帯電話基地局で沖縄本島をカバーし、1992年10月に携帯電話サービスを開始しています。

その後、携帯電話1本を生業として、これまで活動してきましたが、2010年1月に当時沖縄電力の子会社であり、固定通信関連を担っていた沖縄通信ネットワーク、現在のOTNetを子会社化しました。

そして、2010年3月からFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)という、光インターネットサービスの提供を開始しました。これにより、モバイルとFTTHの両面を提供する県内唯一の総合通信事業者となり、これらをセットで販売した結果、通信シェアをかなり伸ばすことができました。

さらに、2019年11月には、再び沖縄電力と、今度は業務提携によって、一般家庭向けの電力供給事業の「auでんき」サービスの提供を開始しました。その3年前から、親会社のKDDIがすでにサービスを提供していましたが、少し遅れて沖縄電力との業務提携を実現することができました。

このように、我々は「沖縄のために」という声から生まれた、沖縄のための総合通信事業の会社です。

増井真理子氏(以下、増井):少し質問を挟みながら進めていきたいと思います。

先ほどご説明があった御社の沿革について、2000年まではDDIセルラーグループが7社ぐらいあり、御社が唯一KDDI本体に吸収されませんでしたが、それはなぜでしょうか?

上原:当社は、沖縄県の経済の振興のためにという、みなさまのお声がけによって設立されました。あの稲盛和夫氏も、他の企業の取締役は辞退していきましたが、当社については最後まで取締役として従事されており、沖縄の経済振興に対して、強い思いがありました。

そして、1997年にKDDIの子会社の中では唯一、上場しました。2000年にはDDIセルラーグループと日本移動通信が合併し、株式会社auが誕生しています。この会社もKDDIに合併されますが、その時点でも「沖縄セルラーは独立したままでいこう」という、みなさまの声がありました。

我々が十分な業績を上げなければ、当然「元に戻ってください」ということになるかもしれません。ですので、しっかりと業績を伸ばしていくことが必要だと考えています。

経営の理念

上原:このような経緯で設立された沖縄セルラーの経営の理念について、設立時から掲げていることが4点あります。

1点目の「事業を通して沖縄経済の発展に貢献すること」は、今の設立の経緯につながるところだと思います。

私も、サービス開始前の1992年7月に入社しました。毎朝朝礼があり、この朝礼の際に4つの経営理念を大きな声で唱えていました。最後にある「沖縄県の名実ともにトップ企業になること」については、サービス開始前から唱えていたため、当時は「本当かいな」と思っていましたが、今では本当にトップ企業となり、沖縄県で一番の利益を上げています。また、時価総額でもNo.1になり、実現できていると感じています。

沖縄セルラーサマリ

上原:当社のサマリです。スライド左側が財務関連、右側が株式関連となっています。まずは左側をご覧ください。

総資産が1,196億円、純資産が1,011億円、自己資本比率は82.6パーセントと、強固な財務基盤があることが伝わるかと思います。さらに、当期純利益が108億円、1株あたりの利益を示すEPSは204円でした。ROEについても11.1パーセントと、11パーセントを超えています。2桁となっているため、上場企業としては合格といえるのではないかと思います。

このように、当社は財務基盤の安定性に加えて、収益性も高い状態を維持しています。

増井:会場にいる方からも質問がありましたが、御社のサマリを見ると、プライム市場を十分に狙えると思いました。市場の変更、つまりプライムへの移行などは考えていますか?

上原:みなさまが客観的に見られても、十分だと思われるように、我々もそのように思っています。

上原:そこで、スライド3ページに戻って、下から2番目に記載した従業員数をご覧ください。439人という人数は、後ほどご説明する子会社2社を含めた連結の人数です。利益の規模を考えると、かなり少人数で運営していると思います。

ですので、我々としてはプライムも狙えるものの、そのためのいろいろな準備を進めていくにあたって、まだマンパワーが足りません。そして、そのパワーについて、まずは業績を伸ばすことに使っていこうという状況で、そのあたりも含め、今後の課題になると思っています。

上原:6ページのスライド右側の株式関連をご覧ください。株価については一昨日、2023年11月30日の終値ベースで3,375円でした。昨日、また株価が上がり、高値を更新しています。この11月まで高値の更新を何度か続けています。

時価総額は2023年11月30日現在で、1,651億円となっています。1株あたりの配当金は100円を予想しており、配当性向は43.3パーセント、利回りは2.98パーセントという状況です。

沖縄セルラーグループ体制図

上原:当社グループの体制図です。親会社であるKDDIが51.1パーセントを保有しています。

また、スライド左下に記載のOTNetを、沖縄電力から我々の子会社としました。現在、当社が77.5パーセントを保有しており、そのうち20パーセントほどは沖縄電力に保持し続けていただいています。沖縄電力も持分法の対象ということで、いろいろとご協力いただいています。

スライド右下には、沖縄セルラーアグリ&マルシェと記載しています。こちらは、新規事業関連を推進し、観光、アグリ事業を手がけている企業です。

沖縄セルラー 事業概要

上原:当社の事業概要です。スライド左側が主軸となる通信事業ですが、その中でもモバイルとFTTH、光インターネットサービスがあります。モバイルについては、「au」に加えて、「UQ Mobile」「povo」の計3ブランドで展開しています。

FTTHについては、OTNetのインフラを使った「auひかり ちゅら」に加え、世帯の密度が薄い自治体エリアについては、「ひかりゆいまーる」という、NTTが各事業者に卸している光コラボレーションサービスを利用し、シェアを伸ばしています。

スライド右側の成長領域については、2019年から開始の「auでんき」に加え、ソリューション事業、子会社である沖縄セルラーアグリ&マルシェの事業、そしてヘルスケア事業などを成長力として展開しています。つまり、通信を成長力の軸とし、多彩なサービスを提供しているという事業概要になります。

モバイル契約数

上原:各事業について簡単にご説明します。まずは、モバイルの契約数です。スライド左側のグラフに、契約数の推移を記載しています。四半期ごとに並べていますが、足元でも右肩上がりにしっかりと伸びている状況です。前期の2023年9月末には、契約数が66万契約を突破しており、今期も順調に純増しています。

スライド右側のグラフでは、沖縄県内におけるモバイルのシェアを表しています。当社のシェアは約5割で、2人に1人の割合でご契約いただいています。

ちなみに、全国でのトップシェアはNTTドコモで約4割、親会社のKDDIは約3割となっています。このことからも、沖縄県内での当社のシェアの高さがご理解いただけるかと思います。

増井:モバイルサービスの3ブランドのうち、どこが一番伸びているのでしょうか?

上原:全体では「au」の母数が多いものの、伸びという面では「UQ Mobile」が伸びています。

他社もおそらく同様だと思いますが、主力となる既存のブランドから、少しリーズナブルなブランドに移行している傾向があります。

ただし、「UQ Mobile」にはリーズナブルな料金プランがありますが、使い放題プランは「au」のほうにもあります。そのため、仮に「au」から「UQ Mobile」にランクダウンしても、「やはりもっと使いたい、使い放題で安心して使いたい」という方が、再び「au」に戻るような動きがあります。ですので、いずれはその流れを加速させ、また「au」にシフトさせていきたいと考えています。

増井:2021年にスタートした「povo」は、翌年にサービス内容を変更されましたが、それ以来、「他社からの乗り換えがすぐに増えた」というようなことはあったのでしょうか?

上原:「povo」については、インターネットでの手続きとなります。さまざまなトッピングを行えるという特徴もあり、若い方々を中心にご契約されていますが、「携帯電話端末の購入も一緒に行いたい」という理由で、ショップでの契約を希望されるお客さまが多い状況です。

そのため、店舗で手続きする「au」や「UQ Mobile」の契約数が圧倒的に多く、「povo」は一定数で、大きな変動がありません。1ヶ月あたりの利用料金も「au」や「UQ Mobile」のほうが当然高くなるため、我々もそちらのマーケティングを強めています。

FTTH契約回線数

上原:FTTHです。こちらの光インターネットサービスについても、スライド左側に契約回線数を記載していますが、ご覧のとおり右肩上がりで順調に伸ばしています。

前期、2023年9月末時点の契約回線数は12万2,200回線で、スライド右側に記載のとおり、沖縄県におけるシェアは約3割となっています。先ほどのモバイルの5割に比べるとまだ少ないものの、セットでご契約されるお客さまが多いため、できる限りそのような契約の獲得を強化していき、モバイルのシェアに近づけていきたいと思っています。

また、スライド右下に記載したように、光インターネットの沖縄県におけるサービスの普及率は、全国の63.7パーセントと比較すると57.9パーセントと、5ポイント以上遅れています。しかしながら、毎年その差を縮めているため、市場の伸びに比例してシェアをアップすれば、今後まだ高めていくことができると考えています。

auでんき

上原:成長領域の1つである「auでんき」についてです。こちらは残念ながら右肩上がりとはなっていません。スライド左側の総契約件数を見ると、2022年9月末までは順調に伸びていましたが、昨年、石油や石炭など電気の燃料が高騰したことが影響しました。

今年は一定額までをお客さまに請求できますが、昨年にその上限額を越えてしまい、超えた分は事業者が負担し、逆ザヤになる状況でした。そのため、昨年11月からは燃料費の調整額の上限を撤廃し、お客さまに請求するかたちになりました。

お客様に損がないよう、値上げになることについて丁寧にご説明しました。結果としてお客さまは沖縄電力へ契約を変更し、前期の第3四半期・第4四半期は大幅な純減となりました。

ただし、今年6月から大手の電力会社も値上げに転じ、同じ料金に戻ったため、当社では営業力を強化しました。その結果、今期の第2四半期より純増に転じています。また、2023年9月末の状況を見て、今後も想定を上回る獲得が進むだろうと考え、期初予想の純増件数1,200契約を、1万契約へと上方修正しています。

増井:これは、沖縄電力から御社へ回帰される方がかなり多いということでしょうか?

上原:そのとおりです。「auでんき」に変えることで「Pontaポイント」がつくため、毎月の請求料金は沖縄電力と同じで、なおかつポイントバックがあることになり、お客さまにとってまったく損ではなくなりました。そのため、お客さまが当社へ戻ってきている状況です。

増井:契約料は発生しないのでしょうか?

上原:契約料はありません。

事業創造による沖縄の課題解決

上原:事業創造による沖縄の課題解決です。ソリューション事業・アグリ事業・ヘルスケア事業において、デジタルの力で企業の経営課題や沖縄の社会課題の解決を目指しています。

生物多様性への取り組み

上原:社会貢献活動を4点ご紹介します。

1点目は、生物多様性への取り組みです。国内初の「Starlink Business(スターリンクビジネス)」を活用した外来種調査によって、西表島の生物多様性保全に貢献しています。

西表島は石垣島の西側、台湾側にあり、そのほとんどがマングローブ林のジャングルで、人が住んでいるのは海岸線の一部です。そのため、島の中央部は携帯電話の電波が届かない地域がほとんどとなっています。

そのような中、西表島にはイリオモテヤマネコなどの特別天然記念物をはじめ、絶滅が危惧される動植物がかなり多くあります。この要因として、外来種が絶滅危惧種を侵してきているということで、スライド右側の写真にあるように、動植物の種類を判定するスマホアプリ「Biome」を使って、クラウドで種を判定していこうという取り組んでいます。

しかし、先ほどお話ししたとおり電波が届かないため、イーロン・マスク氏のスペースXが展開している衛星通信サービス「Starlink Business」を活用します。スライド左側の写真のようにアンテナを立て、そこからWi-Fiを飛ばして通信環境を整え、外来種調査を行いました。なお、こちらは環境省や県、自治体の方にご協力いただき、調査を進めています。

カーボンニュートラル実現への取り組み

上原:2点目は、カーボンニュートラル実現の取り組みです。スライド左側の写真は基地局の鉄塔で、その前にあるのが太陽光パネルです。昼間は太陽光パネルで電源を確保し、太陽光の電気がなくなった後は、沖縄電力提供の「うちな〜 CO2フリーメニュー」を使って基地局を稼働させます。つまり、24時間365日、CO2の排出量が実質ゼロの基地局が完成しました。

当社は2011年に、クリーンエネルギーロードマップとして「2030年度までに自社のCO2排出を実質ゼロにする」と宣言しています。今後も、このサステナブル基地局を拡大していき、CO2の排出ゼロを目指していきます。

沖縄県のDXを推進

上原:3点目は、沖縄県のDXの推進です。沖縄県は労働生産性が全国で最下位となっていますが、その背景にはDXの普及がかなり遅れていることがあります。残念ながらこの状況は簡単には解決できません。

そこで、沖縄県の企業や自治体に声をかけ、DXのスタート地点にいる方々100名に対し、DXの基礎研修講座を無料で開催しました。当社に加え、沖縄電力や金融機関など、計7社で構成されている沖縄未来創造協議会の力によって、沖縄県のDXを高めていこうという取り組みです。

増井:「Okinawa DX University」のプログラムは、例えばデータサイエンティストやエンジニアを育成するといった内容でしょうか? なにかイメージができる例があれば教えてください。

上原:沖縄県のDX自体がかなり遅れているため、今回の取り組みはまずDXのスタート地点にいる方100名を対象としています。今期だけでなく来期以降も毎年続けていこうという話になっています。つまり、まずはスタート地点にいる方を、まずは基礎講座から、どんどんと上に上げていこうという取り組みです。

沖縄県の子ども達への支援

上原:最後は、沖縄県の未来を担う子どもたちを地元の通信会社として支援することで、こちらについては2点ご紹介します。

1点目は「離島ケータイ奨学金」です。沖縄県には高等学校のない有人島が23島あります。こちらに住む子どもたちは、中学校を卒業すると高校のある沖縄本島などに1人で進学するかたちになります。

そのような子どもたちのために携帯電話サービスを3年間無償で提供し、さらに、携帯電話端末としてスマートフォンを無償で提供しています。2015年度からこの取り組みを開始し、延べ370名、毎年度30名以上の方々に無償提供しています。

2点目は子ども基金です。沖縄県では子どもの貧困問題が非常に深刻となっています。県が調査したところ、2015年度は3割の方々が貧困に苦しんでいるという状況でした。そのような状況に対し、我々は2016年に「沖縄セルラー子ども基金」を設立し、毎年5団体に各30万円の基金を寄付しています。こちらは今後も続けていきたいと考えています。

経営方針

上原:経営方針をご説明します。経営方針としては、増収・増益・連続増配の3つの増、つまり3増を目標としています。それに加え、配当性向40パーセント超を経営本質として掲げています。

業績推移

上原:3増の状況についてです。まずは業績の推移をご覧ください。スライド左側は営業収益を示しており、右肩上がりで増収となっていましたが、2022年3月期のみ少しへこんでいます。こちらは、収益認識に関する会計基準が変更になったため減収に見えていますが、元の基準のままだった場合は増収となっていました。したがって、実質的には増収が続いています。

また、2024年3月期の期初予想における営業収益は762億円で、前期の772億円から10億円ほど減収となる見込みです。足元では9月に発売された「iPhone 15」の値段がかなり上がっており、販売も好調に推移しているため、なんとか増収を達成したいと考えています。

増井:会計基準の変更は、携帯電話の割賦販売などに関係しているのでしょうか?

上原:会計基準の変更自体は社内の運用変更ではなく、上場企業に適用されています。影響を受けたこととして、今までは携帯電話の販売において値引きの部分を費用として計上していましたが、会計基準の変更後は売上減という処理に変わっています。

増井:利益にはあまり影響がないということですね。

上原:おっしゃるとおりです。

また、スライド右側に記載の営業利益は、右肩上がりで順調に推移しています。今期は期初に営業利益を163億円と予想しており、前期の159億円から増益となる予想です。こちらが実現すると12期連続の増益となります。

一株あたりの配当金の状況

上原:1株あたりの配当金の状況です。スライド右端の2024年3月期は通期で100円を予想しており、こちらが実現すると23期連続の増配となります。「連続増配株ランキング」では、日本の企業では花王がかなりの差をつけてトップとなっていますが、当社もトップ10に入っている状況です。

配当性向も43.3パーセントと、経営方針に掲げている40パーセント超の実現に向けて取り組んでいます。

事業戦略

上原:中期経営計画のご説明に移ります。2022年度から2024年度までの3期にわたる中期経営計画を発表しました。事業戦略は通信を核とした両利きの経営で、既存事業の深化と成長領域の拡大を掲げています。

既存事業の深化を支えるものとして、5Gネットワーク戦略と、5G戦略とマルチブランド推進による収益の最大化を掲げています。

成長領域については、エネルギー事業の推進、ソリューション事業の推進、そして事業創造による沖縄の社会課題の解決を挙げています。

八木ひとみ氏(以下、八木):沖縄県全体のお話にもなってくるかと思いますが、2025年に開業予定との発表があった大型テーマパークについて、御社へのメリットはあるのでしょうか?

上原:沖縄県はやはり観光立県です。観光客の増加により当社が得られるメリットとしては、沖縄県にある企業が成長することによって、我々の携帯電話の契約あるいは固定通信の契約が伸びていくことが挙げられます。

さらに、観光客が増えることによって、親会社のKDDIと契約しているお客さまが沖縄本島に来て電話を利用されると、親会社の契約者が使った分がローミング収入というかたちで請求されるため、当社の収入が増えていきます。

足元でも、コロナ禍が明けて観光客数がかなり伸びてきており、コロナ禍前とほぼ同水準まで戻りつつあります。それに加え、北部にこのようなテーマパークができれば、かなり期待できるのではないかと思っています。

八木:どちらかというと、インバウンドよりも国内の旅行者の需要が大きくなることに期待されているのでしょうか?

上原:おっしゃるとおりです。

深化を支える5Gネットワーク戦略

上原:深化を支える5Gネットワーク戦略についてです。昨年掲げた中期経営計画では、2024年度までに沖縄本島だけでなく、全島の95パーセントまで5Gのエリアを広げるという計画を発表しました。

こちらの足元の状況としては、2023年9月に計画を1年半前倒しし、95パーセントを達成できました。

深化を支える5Gネットワーク戦略

上原:5Gエリアの拡大を支えているのが、スライド左側の離島海底ケーブルの敷設です。ネットワークの強化と沖縄全域での5Gの拡大を実現するため、沖縄本島から石垣島、宮古島や久米島のような低容量のケーブルを、我々が直接ケーブルを敷設することによって整えていこうという戦略になります。

2023年7月に離島海底ケーブルの運用を開始した後、特に宮古島を中心に基地局を一気に5G化し、先ほどお話しした全島95パーセントという目標をいち早く達成することができました。

収益最大化

上原:収益の最大化については、5Gを浸透させることによって通信ARPU収入を高めていこうと思っています。実は2021年度の菅政権による政策以降、携帯電話とスマートフォンの料金が値下げする方向に動いており、その収入が減っている最中です。

中期経営計画では、スライド左側に記載のとおり2023年度を底とし、2024年度までに収入を反転させる計画を立てました。しかし、中間期の2023年9月を終えた現在、すでに2022年度を底に反転している状況です。

まだ1年を終えていないため、再反転する可能性がないとは言い切れませんが、下期も引き続き伸ばしていき、前倒しで進めていこうと思っています。

増井:通信ARPU収入の反転が前倒しとなっているのは、5G端末への移行が進んでいるからでしょうか?

上原:おっしゃるとおり、まずは5Gへの移行を進めています。4Gから5Gに機種を変更すると、通信トラフィックが2.5倍に上がるという実績があります。その結果、容量の高いプラン、あるいは使い放題のプランへの移行につながり、ARPUが高まっていきます。当社では、5Gへの移行とマルチブランドをうまく推進していくことで、順調に反転しています。

成長領域の拡大

上原:成長領域の拡大についてです。スライド左側に記載のとおり、中期経営計画として2021年度には100億円規模であった成長領域の売上を、2024年度までの3年間で50パーセントアップの150億円規模を目指します。

こちらについては、2022年度が137億円と順調に拡大してきているため、2024年度に向けてしっかりと推進していこうと思います。

財務目標

上原:財務目標です。スライド左側の中期経営計画として、2024年度のEPSは2021年度の198円から30円アップの228円と、15パーセントアップを目指す計画です。

2023年度の9月末時点での予想は、スライド右側に記載のとおりです。利益と自己株式取得を進めており、EPSは230.82円がすでに見えてきています。こちらも前倒しで目標を達成できる見込みとなっています。

キャピタルアロケーション

上原:キャピタルアロケーションです。経営資源の配分として、営業キャッシュフローは2022年度から2024年度までの3年間の累計で500億円規模を予想しています。

3年間で200億円規模の5Gなどの設備投資と、成長に向けた戦略投資事業に着実に取り組むことで、キャッシュフローの創出を高めていきたいと考えています。

さらに、増配、機動的な自己株式取得の実施により、株主還元を進めていきます。

自己株式取得

上原:株主還元についてご説明します。先ほどもお話しした自己株式取得の実施状況はスライドのとおりです。

当社では自己株式の取得を、2021年3月期の2020年5月より20億円規模で実施し、2023年3月期にはこれを40億円に倍増して進めてきました。

さらに今期に入り、親会社であるKDDIの持分の83.7億円を公開買付しました。また、足元では市場から30億円の取得を進めています。つまり、この第4四半期では、合計173.7億円の自己株式取得を進めている状況です。

配当金

上原:配当金については、中間決算で通期の配当予想を上方修正しました。期初予想では中間配当45円、期末配当45円の年間90円を予想していましたが、今回、中間配当50円、期末配当50円の年間100円に上方修正し、10円増、率にして11.1パーセント増としています。

修正前は自己株式取得をかなり進めていたため、配当性向は40パーセントを切っていましたが、この上方修正により40パーセント超となる、43.3パーセントを実現しています。

一株あたりの配当金の状況

上原:1株あたりの配当金は100円と、前期の88円から12円アップし、23期連続の増配を予定しています。

株主優待

上原:株主優待は、個人株主のみなさまに非常に喜ばれています。基準月は3月末で、その時点で当社の株式を保有されている株主のみなさまのうち、保有株式数100株以上の方を対象に「株主優待カタログギフト」を株主総会前後の6月頃に贈呈しています。

保有株式数と保有期間の組み合わせによって、3,000円相当から、最大で1万円相当までの、非常に充実した内容のカタログギフトとなっています。

ちなみに、スライド右下の写真にある「石垣牛KINJOBEEF&石垣島アグー豚セット」「フルーツマルシェの完熟パイン」は、当社の子会社である沖縄セルラーアグリ&マルシェが提供している商品です。

増井:こちらの株主優待カタログギフトには、沖縄県以外の地方の名産品も含まれていますが、株主に沖縄県にお住まいの方が多いからでしょうか?

上原:このプログラムはKDDIと共同で組み立てています。先ほどもお話ししましたが、残念ながら沖縄県は離島ということもあり、物流コストが非常にかかります。沖縄県内の商品のみではコストの面で非常に厳しく、品ぞろえも十分ではないため、今のところは全国の商品を扱っています。

増井:実際は、沖縄県のものを選ばれる方が多いですか?

上原:そうですね。沖縄県のものも多く、できる限り沖縄県産の商品比率を高めていくことを検討しています。

まとめ

上原:本日ご説明した内容のまとめとなります。1点目は、健全な財務と契約数の好調です。自己資本比率82.6パーセントの健全な財務に加え、契約数では、特にモバイルシェアが約5割と好調に推移していることをお伝えしました。

2点目は、中期経営計画の前倒しでの進捗です。通信ARPU収入の底打反転を、2023年度より1期前倒しで進行できています。さらに、EPSの成長については、2021年度比15パーセント増を計画として掲げていましたが、こちらもすでに1年前倒しで進捗している状況です。

3点目は、増配・機動的な自己株式取得による株主還元です。増収・増益・連続増配の3増に加え、配当性向は40パーセント超を目指すという足元の状況もご理解いただけたのではないかと思います。そして、機動的な自己株式の取得においては、EPSを高めていくことに取り組んでいます。

以上の3点を踏まえた経営状況などをご勘案の上、ぜひ当社へのご理解を深めていただきたいと思っています。本日はご清聴ありがとうございました。

質疑応答:株主優待の継続について

増井:「株主優待をこのまま継続していきますか?」というご質問を複数の方からいただきました。

上原:株主優待については、おそらくみなさまご心配いただいているかと思います。確かに個人投資家のみなさまと機関投資家のみなさまとでは、多少意見がわかれている状況です。

しかし、今のところは株主優待の継続を考えており、特に今期中は間違いなく実施します。今後についてもさまざまな意見をいただきながら検討していきますが、非常に好評のため、継続できるように取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:合併による実店舗数の削減について

八木:これは私の個人的な疑問なのですが、最近、東京などでは店舗が合併し、実店舗数を少なくしている印象があります。

先ほど「povo」のように、オンライン上でしか契約できないプランも出ているというお話がありましたが、沖縄県内ではやはり、今でも店舗に行って新規契約や機種変更を行われる方が圧倒的に多いですか? また、今後店舗を合併し、店舗数を削減していく考えはありますか?

上原:能動的にショップ数を減らすことは考えていません。大手企業の中には、店舗数の削減数まで明示されているところもありますが、当社がトップシェアを維持できている1つの理由として、ショップ数が他社に比べて多いことがあると思います。

他の大手2社と比較しても、ショップ数は2倍ほどになっており、こちらがおそらく、トップシェアを維持している理由の1つだと思っています。ですので、能動的にショップを合併して減らしていくことは考えていません。

ただし、先ほどのお話にあったとおり、オンラインでの手続き、あるいはオンラインで携帯電話端末を購入する方が、特に若年層で少しずつ増えてきています。その流れによって、必要なショップ数が決まっていくことになれば、そちらに合わせていくことになると思いますが、今のところ積極的に減らすことは考えていません。

質疑応答:モバイル契約数の増加要因について

増井:「モバイルの契約数が増加している要因は何ですか? 沖縄県内の人口が増加しているのでしょうか?」というご質問です。

上原:以前、沖縄県内の人口自体は「2025年度まで増加する」と県が発表していましたが、このコロナ禍を経て、実際は人口減になっていると聞いています。ただし、携帯電話を持ち始めるのは、最近では小学生からの場合もあるようですが、基本的には中学生からが多く、その年齢層の人口が減っているわけではありません。

初めて携帯電話を持つ年齢層に1万台から1万5,000台ぐらいが充当していると見込んでおり、実際、当社では携帯電話を毎年1万台以上純増しています。ですので、その年齢層のほとんどのシェアを獲得できていると思います。

質疑応答:シェアの目標値について

八木:「沖縄県内で、すでにモバイルシェアの約5割を獲得している中、ここからさらにシェアを伸ばすのは大変な気もします。御社が目標としているシェアの割合はありますか?」というご質問です。

上原:すでにほぼ1人1台持っている状況のため、シェアを2桁伸ばすというのはさすがに難しいと思いますが、少しでもシェアを伸ばしていこうと取り組んでいます。

質疑応答:人材採用について

増井:「沖縄という場所では、人材の獲得に苦労するイメージがありますが、実際はどのような状況でしょうか?」というご質問です。

上原:先ほどもお話ししたとおり、連結で社員数はようやく400人を超えたところで、少数精鋭となっています。毎年多くの新卒採用は実現できないものの、県内の大学の方、あるいは県内から県外の大学を経て沖縄県に戻ってくる方がいるため、逆に競争率が高くなっており、優秀な方々が入社していると思います。

ただし、先ほどの成長領域の分野でもお話ししたとおり、新卒採用だけではなく、キャリア採用も進めています。しかし、キャリア採用となると、沖縄県に戻るタイミングが難しいこともあり、このあたりは少し苦労しています。現在も募集しているため、今、ご覧の方々の中で沖縄県に興味があるという方は、ぜひ募集サイトをご覧ください。

質疑応答:スマート農業について

八木:将来の株主優待にも関わってくるお話かもしれませんが、御社がスマート農業で生産されているのは、どのようなものなのでしょうか?

上原:スマート農業で最初に手がけたものは葉野菜でした。沖縄県には台風が頻繁に到来し、夏は酷暑のため、そもそも葉野菜を路地で作れませんでした。

加えて、台風で船便が止まると、例えば南大東島では船が1週間以上滞ってしまいます。本土からも野菜が入らず、沖縄本島から大東島に送れないため、しなびたレタスが1玉1,300円という状況もありました。ですので、まずは葉野菜から取り組むことになりました。

今では大東島にもスマートハウス工場を作って運営しており、野菜を生産しています。さらに、本島北部では現在イチゴも生産しており、将来的には東南アジアへの輸出も考え、さまざまなことに取り組んでいます。