中期経営計画の位置付け
菅隆志氏:中期経営計画についてご説明します。沖縄セルラーは1991年6月1日に創業、1992年10月20日にサービスを開始し、今年10月にサービス開始から30周年を迎えることができました。
サービス開始時は基地局が5局、契約数は一部の予約を含め1,900件というところから始まり、30年後の現在、基地局数800以上、契約数74万件強と、非常に順調に推移してきています。これもひとえに沖縄県民のみなさま、また、企業のご支援の賜物だと考えています。
しかしながら、ここに来て通信料金の値下げ、コロナ禍の大きな環境変化を迎えています。
中期経営計画の位置付け
これからの30年は、マーケットが成熟していますし、非常に厳しい環境下になると予想されます。そのような中で、当社としてどのような成長戦略を描いていくかが、今回の中期経営計画の目玉になるだろうと考えています。
目次
以降は、この4点に沿ってご説明します。
中期経営計画の全体フレーム
まずは、中期経営計画の全体像です。「社是」「経営理念」、その下に「中期経営計画」があり、サステナビリティ経営として「事業戦略」と「経営基盤強化」の2本柱で整理しています。スライド右側には6つの重要課題(マテリアリティ)を挙げています。
事業戦略の概要
事業戦略についてです。「通信を核とした両利きの経営」において、やはり我々は通信事業者として既存事業を深化させる必要があります。そのために、まずはこれからのネットワークである5Gのネットワークを構築し、我々の戦略をしっかりと支えていく必要があります。
「5G戦略とマルチブランド推進による収益最大化」としては、ベースに5Gがあり、その上にマルチブランド推進があります。我々はブランドを3つ提供しており、これらをうまく活用しながら収益の最大化を図っていきます。
成長領域の拡大ということで、スライド右側に3つ記載しました。エネルギー事業の推進、ソリューション事業の推進、事業創造による沖縄の社会課題解決です。
これらをもう少し詳しく見ていきたいと思います。
5Gエリア構築方針
まずは、深化を支える5Gネットワーク戦略についてご説明します。
「本格5G時代も沖縄のナンバーワンキャリアに」ということで、我々はこの30年間で沖縄において50パーセント程度のシェアを維持しています。その大きな要因の1つはネットワークです。エリアが非常に広く、通信品質が非常によいとのお声をいただいています。そのような沖縄県民のみなさまの評価があるからこそ、ここまで成長できたと思っています。
そのような背景から、他社を凌駕するエリアの広さとスピードを含めた5Gのスペックを、エリアの中でしっかりとお客さまに提供していくことが非常に重要です。
スライドに記載のとおり、5Gのエリアについては「どこよりも広く人口カバー率95パーセント以上」、重要施設での5G化については「どこよりも多く50か所以上」としています。この2つが、我々の5Gエリア展開の考え方です。
5Gエリア構築
「県内の5Gエリア拡大」についてです。足元の状況は、昨年度末で、沖縄本島において人口カバー率90パーセントでした。今年度は沖縄全島での人口カバー率90パーセントを目指します。そして、2024年度には沖縄全島で人口カバー率95パーセントを目指す計画です。
「地元目線での5G化」は、先ほどお話ししたとおり、イベント会場や商業施設などの重要なスポットで十分に5G対応を行い、しっかりとパフォーマンスを出していくことです。
5Gをフル活用できるインフラの構築
「5Gをフル活用できるインフラの構築」として、「5G SA(Stand Alone)」を開始しています。これにより低遅延・多接続が実現し、本格的な5Gのサービス提供ができるようになります。「5G SA」を極力早く展開することにより、本来の5Gの仕様・スペックをお客さまに提供していこうと考えています。
離島海底ケーブル敷設
5Gでは大量のデータが流れるため、特に離島の場合、現在敷設されている海底ケーブルでは対応しきれません。したがって、スライド右側の地図で示したように、離島海底ケーブルの敷設を進めています。
左下の写真は、石垣島で行った海底ケーブルの陸揚げ式の様子です。
マルチブランド推進
「5G戦略とマルチブランド推進による収益の最大化」についてです。マルチブランド推進に関しては、「au」「UQ mobile」「povo」の3つのブランドをお客さまのニーズに合わせて提供していきます。
「au」の5Gは、大量のデータも非常に扱いやすいため、お客さまに価値を提供し、使用していただくというのが我々のシナリオです。
モバイル累計契約数
スライド左側のグラフをご覧ください。我々はハンドセットの契約数を、3年間で4万契約純増させる考えです。
モバイル 5G比率
モバイルの5G比率です。スライド右側のグラフは、4Gから5Gの端末に変更したお客さまのデータ量です。2022年5月の実績では9.3GBから24.8GBへと、データ量が2.5倍程度増加しています。
5G端末に切り替えることで、よりリッチな動画を視聴できるようになり、動画の視聴機会が増加しています。これにより、お客さまのデータ利用量が増えてきているということです。
このような背景からも、5Gの端末の浸透を極力早いタイミングで進めていく必要があると考えています。端末の普及だけでなく、5Gの魅力をしっかりとお客さまに伝えていきます。そして2024年度には、5Gの端末の浸透率を85パーセントにまで引き上げる計画です。
マルチブランド通信ARPU収入
マルチブランド通信ARPU収入についてです。足元を見ると下落傾向は続いていますが、少し緩やかになってきています。来年度を底に、底打ち反転をしていきたいと考えています。
FTTH累計回線数
FTTH累計回線数です。こちらも3年間で約1.2万回線の純増を目指しています。沖縄は内地と比べてFTTHの普及率が5ポイント程度低い状況であるため、普及の余地はまだあると考えています。
FTTHに関しては、営業体制を十分に整えて、引き続き進めていきたいと考えています。
成長領域の拡大
「成長領域の拡大」についてです。2021年度は、成長領域全体で100億円規模でしたが、2024年度には150億円規模にまで持ち上げようと考えています。成長領域には、エネルギー、ソリューション、ヘルスケア、アグリビジネスなどが含まれています。
エネルギー事業
エネルギー事業は、2021年度対比で売上40パーセント増を目指します。2023年度の64億円から、2024年度は90億円規模ということです。
燃料費調整額の上限を11月から撤廃するとお伝えしましたが、エネルギー事業は非常に見通しにくいところがあります。政府が支援するというアナウンスも出てきているため、2023年度にはある程度条件がもとに戻ると想定し、中期経営計画の数字をまとめています。
ソリューション事業:全国に比べ遅れている沖縄のDX
ソリューション事業は、さまざまな指標を見ても全国に比べて少し遅れています。しかしながら、市場性はまだあると考えており、しっかりと強化していく予定です。
ソリューション事業
DXや観光産業において、人手不足の問題があります。観光DXなどについて、沖縄ではいろいろ議論されています。
ソリューション事業 ビジネスDX推進により成長を加速
「DX for OKINAWA」として、沖縄の企業、自治体に対しDXを推進し、ソリューション事業を伸ばしていきます。
沖縄の社会課題を解決する事業創造
沖縄の社会課題を解決する事業創造についてです。
沖縄が抱えている健康課題は、非常に深刻な状況になりつつあります。沖縄には長寿県のイメージがあると思いますが、都道府県ランキングは年々下がっています。また、メタボやメタボ予備軍を入れると、全国ワーストという数字も出てきています。
また、公共交通機関もあまり発達していないため、少しの距離でも車に乗ってしまう風潮があります。そのようなところも影響していると考えており、我々は、健康課題により入り込んでいきたいと思っています。
スライド右側に記載のとおり、沖縄は夏場に台風が来ると、スーパーやコンビニの棚から葉野菜がなくなります。このようなところに、我々の課題解決への貢献の道があると考えています。
沖縄の社会課題を解決する事業創造
健康課題の解決においては、スライド左側にあるとおり、ベースは自社開発の健康管理アプリを活用しつつ、医療・ヘルスケア分野の強化を図っていきたいと思います。
右側の写真は、すでに展開しているスマート農業と植物工場です。我々は工場でイチゴも生産しています。その生産量は月平均で約12万粒で、アジアへの輸出も視野に入れて拡大を図っていきたいと考えています。
事業戦略まとめ
5Gというネットワークを核とし、周辺領域である観光、エネルギー、DX、ヘルスケア、農業をしっかりと拡大していくことが我々のベースの戦略です。
経営基盤強化の全体像
経営基盤強化の全体像です。経営基盤の強化について、「三位一体改革」「DX人材育成」「カーボンニュートラル」ということで、いろいろ展開していきたいと考えています。
三位一体改革
三位一体改革についてです。「新人事制度」「社内DX」「新しい働き方」をベースにしています。戦略を実行するのは人であるため、教育も含め、しっかりと対応していきたいと考えています。また、全社員のDXスキル向上等も、これからより重要になってくると考えています。
DX人材の育成
DXのスキルは2段階に分けています。全社員に対しては基礎研修を十分に行い、ベースのスキルアップを図ります。さらには、役割に応じた専門スキルを持つ人材を育成することにより我々の事業に大きく貢献してもらえるよう、計画を立てています。
カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
カーボンニュートラル実現に向けた取り組みについてです。昨年、「沖縄セルラークリーンエネルギーロードマップ2030」をディスクローズしています。「2030年にCO2排出実質ゼロ」に向けて、取り組みを進めています。
昨年10月、主要な高圧施設に関しては、沖縄電力から「CO2フリーメニュー」を購入しています。我々の使用電力のうち、約6割はCO2フリーだといえる状況です。
ただし、基地局などの低圧施設が数多くあります。そのため、この施設をいかにしてCO2フリーに持っていくかが大きな課題となっています。こちらは、KDDIと連携しながら推進していきたいと考えています。
財務計画:EPS 成長目標
財務計画です。2021年度比プラス15パーセントを掲げ、2024年度EPS228円を目指しています。
キャピタルアロケーション
キャピタルアロケーションについてです。営業キャッシュフローは、2022年度から2024年度で累計500億円規模を想定しています。
スライド左側は、5Gなどの設備投資です。先ほどお話しした海底ケーブルなどを含め、累計200億円規模の設備投資を想定しています。
右側は成長に向けた戦略投資です。こちらも積極的に行っていきたいと考えています。
「増配、機動的な自己株式取得実施による株主還元」の実現を目指しますが、成長に向けた戦略投資の具体的な金額について、今回は設定していません。残りの部分をしっかりと見極めながら、最終的にはEPS成長へとつながるよう進めていきたいと考えています。
中期経営計画サマリ
中期経営計画のサマリです。通信を核とした両利きの経営の推進と経営基盤の強化により、サステナブルな価値を創造し、社会の持続的成長と企業価値の向上を目指します。
事業成長について、2023年度は5G推進による通信ARPU収入の底打ち反転を目指します。2024年度は成長領域の拡大を売上高100億円から150億円と、1.5倍にまで持っていきます。
財務方針に関しては、成長に向けた戦略投資を着実に実行していきます。3増(増収、増益、連続増配)という経営方針の旗は降ろさず、最低限、しっかりとクリアしていく考えです。また、配当性向40パーセント超にも着実に取り組んでいきます。
我々は、機動的な自己株式の取得により、株主還元を実行したいと考えています。EPS成長は2021年度比プラス15パーセントを目指します。
沖縄セルラーは、創業31年目にして初めて対外的に中期経営計画を発表しました。発表した以上は、経営陣も十分にコミットして計画を実現できるよう、しっかりと企業運営に取り組んでいきたいと思います。
以上が中期経営計画のご説明です。ご清聴ありがとうございました。