連結決算概要
管祥紅氏:みなさま、こんばんは。HOUSEI株式会社、代表取締役社長の管祥紅です。本日はお忙しいところお時間をいただき、私どもの決算説明会にご参加いただきありがとうございます。それではさっそく決算説明を開始したいと思います。
結果からお伝えします。連結業績の売上高は前年同期比11.8パーセント増の21億9,800万円、営業利益は前年同期比58.9パーセント増の7,400万円となりました。業界全体ではIT投資に対する意欲が引き続き堅調に推移していることもあり、売上高および営業利益もおかげさまで順調に増加しました。
セグメント別説明
セグメント別にご説明します。私どもは情報システム事業と越境EC事業の2つのセグメントに分けて情報開示しています。
情報システム事業の売上高は前年同期比10.7パーセント増の21億1,400万円、営業利益は前年同期比34パーセント増の9,400万円となりました。特にメディア業界を中心に既存のお客さまからのニーズが高く、引き続き旺盛でした。売上高の増加に伴い営業利益も増加しています。
越境EC事業の売上高は前年同期比47.9パーセント増の8,300万円、営業利益に関しては残念ながら2,000万円の赤字となりましたが、前年同期は2,300万円の赤字でしたので、赤字幅はやや縮小しています。
私どもは、越境EC事業において「ezOrder」というマーケットプレイスの開発・オペレーションをしており、「ezOrder」では中国のバイヤー向けに中小企業が作ったメイドインジャパンの安心・安全・高品質なものを販売しています。
この上半期では、「京東国際」「天猫国際」で運営する自営EC店舗で売上高が5割近く増加しています。
ただし、それと同時に人員増強とIT管理基盤増強、中国武漢の保税倉庫確保などによる販売費増加により、残念ながら営業利益は継続して2,000万円の赤字となりました。
キャッシュフローの状況
この上半期の営業キャッシュ・フローに関しては、後ほどご紹介しますが、営業活動は黒字ではありましたが、進行基準の契約資産の増加額が4億7,900万円となった結果、マイナス7,500万円となりました。全体的にはマイナス3億9,100万円となっています。
現金及び現金同等物の期末残高は9億9,200万円となり、中身は特に問題ないかと思っています。
資産、負債、資本の状況
資産、負債、資本についてです。会社の買収に伴い新株発行を行ったことに加え、黒字であったこともあり、純資産は1億6,500万円増加しています。
アイード株式会社を100%子会社化
私どもの戦略の1つである、M&Aの積極的な展開に関する進捗をご報告します。まず、これからのメディア事業の枝分かれした先の1つである、教育・出版の延長線上の教育事業に関する取り組みとして、この上半期にアイード株式会社を100パーセント子会社化しました。
弊社は従来、教育機関向けのICT分野の拡大を新たな事業目標としています。アイード株式会社は、教育機関向けに英語のスピーキングテストや学習サービスの開発及び提供を行っています。
双方が有するシステム開発力や事業上のネットワークといった経営資源を相互活用することによって事業を拡大していく目的で、この上半期にアイード株式会社を子会社化しました。
スピーキングテストがどのようなものかと言いますと、英語スピーキング評価AI「CHIVOX」というかなり完成度の高いものがあり、これを使って英語の発音の評価を行います。
普通は人間が行いますが、これからスピーキングを本格的に行っていくことになった場合に、人間が一人ひとりの発音を聞いて査定するのは現実的には非常に難しいため、AIを活用した査定を行うという流れがあると認識しています。
そのようなことに向け、このエンジンを使ったテストや練習、また先生に代わって評価するといったサービスを開発しています。実際に、都立高校入試対策などの試験に向けたテストや練習としても使っていただいています。
主な実績として、API事業の発音を聞いて点数を付けるといったところでは、株式会社アルク、株式会社サンリオにも導入している、あるいは導入している最中です。スピーキングテストに関しては、株式会社JTB、株式会社育伸社、株式会社創育が販売パートナーとして決定しています。
SEVEN&EIGHT SYSTEM株式会社を設立
もう1つは、SEVEN&EIGHT SYSTEM株式会社を設立しました。弊社は、メディア業界向けにシステムを作ることをミッションとして設立した会社です。SEVEN&EIGHT HOLDINGSという会社は、どちらかというとテレビ放送やゲームを中心としたエンターテイメント業界を中心に事業を行ってきました。
HOUSEIの持つ開発力とSEVEN&EIGHT HOLDINGSの持つエンターテイメント業界での営業力・企画力を合わせて、日本で非常に人気の高いIPを海外に斡旋していきます。同時に、海外の良いものを日本に持ってくることも考えています。
これらを目的としてSEVEN&EIGHT SYSTEM株式会社を設立し、51パーセントを弊社から出資しました。
Mission
繰り返しになりますが、ミッションについてご説明します。弊社は、もともとメディア業界のシステム化・DX化のためにできた会社です。
おかげさまで、メディア業界の大手でかなりのシェアをとってシステムサービスを提供できています。そのようなところで培った成功経験やノウハウを活かし、世界中から先進技術を取り入れ、日本産業が比較的弱いとされているIT分野に貢献することをミッションとしています。
そのためには、メディア業界以外の業界にも取り組んでいこうと考えています。ただし、その基本にあるのはメディア業界を支えること、メディア業界で活躍することです。
現在、デジタル化に向けたトランスフォーメーションを行う非常に大事な時期です。業界に向け、既存の事業をサポートすると同時に新しいことにも取り組むというところでは、上半期はかなり進展がありました。
成長戦略の進捗
その1つとして、まずメディア事業の進捗をご説明します。若干繰り返しになりますが、私どもの事業は「メディア産業向けにITインフラを提供する」ことをミッションとしています。
具体的には、日本を代表する新聞社、通信社、出版社、各種情報出版業界に必要なシステムを提供します。もちろんシステムの開発だけではなく、それに関連する運用と保守サポートも提供しています。
メディア業界に対するアプローチについてご説明します。ネットで新しいメディアがどんどん発達する中で、メディア事業は斜陽傾向にあります。そのため、将来的には今までのように大型案件は減っていきます。ただし、各社とも非常に規模が大きく、独特な方法にこだわるというニーズも非常に多いです。
今までの延長線で、これからしばらくの間は市場が全体的に小さくなっていきますが、その分、プレイヤーや競合も減ると予想されます。そのような意味から、弊社としては残存利益を享受できると考えており、今後5年から10年は受注・シェアの拡大は可能だと考えています。
また、今まではどちらかと言いますと大手各社や地域の大手ブロック紙に重点を置いて営業のアプローチを行ってきました。これからは、システムのパッケージ化・サービス化を行い、今まであまり展開してこなかった各地方の県紙や業界紙も視野に入れて、営業展開を図っていきたいと思っています。
成長戦略の進捗
先ほどお伝えしたとおり、この上半期にSEVEN&EIGHT SYSTEM株式会社を設立しました。弊社のメディア事業の中でこれまで弱かった部分として、IPコンテンツやゲーム関係の事業があります。それらを強化するために設立しました。
すでに一部発表していますが、台湾発のゲームの日本配信版に出資しています。また、同会社にてSNSキャンペーンツールの「インスタントウィン」という製品を開発中です。これから下半期に向けて、放送、出版社、新聞社、メディア以外の業界にも拡販していく予定です。
また、エンターテイメント業界向けにITサービスを提供することを考えて作った会社でもありますので、そのような業界向けの受託開発にも着手しています。これは新しいメディアに対しての取り組みになります。
従来行ってきた業界に関しては、この上半期の受注・売上は当初想定したとおり順調に達成しています。重点顧客戦略を引き続き推進した結果、予算以上の受注を獲得しました。さらに、並行して、Amazonの「AWS」と協力関係を構築し、製品のパッケージ化、サービス化したものを全国に展開し始めています。
成長戦略の進捗
プロフェッショナルサービス事業についてです。メディア事業を展開する中で、「これはできるか?」「あれはできるか?」といういろいろな声に応えることを中心としている事業になります。
比較的長くIT業界にいた結果、幅広い業種のDX化を支援するかたちになりました。幅広い業種とお伝えしていますが、中心となるのは製造業になります。この上半期は金融業とも新規の契約を締結しています。
アプローチとしては、顧客を知り、その業務を知り、ともにシステム運用業務を遂行することで、DX化を実現することに取り組んでいます。
成長戦略の進捗
プロフェッショナルサービス事業は、2023年上半期において、取引先は堅調に拡大しています。今まで強いとされてきた製造業とデジタル広告系の重点顧客との取引を継続し、拡大しています。新規取引先としては、金融系の直接契約を獲得しています。
SESには旺盛な引き合いがあります。しかし、この業界の全体的なエンジニア不足により、機会損失の発生が課題となりました。
成長戦略の進捗
越境EC事業に関しては、日本の安心・安全・高品質のものを販売するための仕組みを開発し、オペレーションすることに取り組んでいます。
アプローチとしては、2020年以降のインバウンド消費は減少していますが、新型コロナウイルス収束に伴い回復しつつあります。「日本から中国への越境BtoC」に関しても、越境EC市場は継続して拡大しています。加盟店確保の増加で、取扱高・売上を確保し、収益改善を図っていきます。
成長戦略の進捗
今まで新型コロナウイルスによる影響で「このルートは時間がかかる」など、物流の滞りがありましたが、上半期は改善されてきました。また、販売チャネルの多様化にも取り組んでいます。その結果、従来の航空貨物に加え、船便による搬送など複数の出荷ルートを開拓し、順調に稼働しています。
さらに、自社の販売店拡大のため、「京東国際」や「タオバオ」など自営店舗開設に着手しました。その結果、売上高は5割近く伸びています。
成長戦略の進捗
プロダクト事業についてです。弊社はソフトウェアプロダクトを作って販売することからスタートした会社です。しかし、結果的に大手と取引していく中で、コアのパッケージをベースに、もしくは何かの製品をベースにいろいろなかたちでカスタマイズすることが中心となり、気がつくとシステムの受託開発会社に変わっていました。
今後は、パッケージ化・サービス化したものをよりコストを下げて、幅広い業界の方に使っていただくことが流れとしてあるのではないかと思っています。そのようなことから取り組んでいるのが、パッケージ化・プロダクト化です。
いろいろなかたちで行ってきたシステム開発のコアの部分をより抽象化して、より汎用化したものを作ります。具体的には、顔画像認証や画像認識などの延長線として、顔認証をベースにした各種セキュリティ製品や、同じく画像処理の中で生まれた自動採点技術を活用した学校向け高機能な製品を開発し、提供します。
アプローチとしては、独自にこれらの製品の完成形を作るだけではなく、業界の先進的なお客さまと連携をとりながら、ユースケースに合わせたソリューションを開発し、販売チャネルを開拓していくことを考えています。
成長戦略の進捗
進捗としては、セキュリティ関係の受注が順調です。しかし、ベースが小さいため、まだ開示するほどに至っていません。来年度からプロダクトの開示ができるように努めていきたいと思っています。
また、この上半期に、従来のSIの中で行ってきた部品の1つである「ezRepo」の完成度を上げて、サービスを開始しました。
「ezRepo」というソフトは、一言で言いますと企業活動に必要な帳票の電子データをノーコードで簡単に生成できます。「Excel」や「PDF」に生成できる便利なツールです。
成長戦略の進捗
アイード株式会社についてご説明します。買収してまだ数ヶ月しか経っていませんが、この上半期はアイード株式会社の事業計画どおり、順調に進捗しています。弊社に合流したこともあり、「ChatGPT」を活用した新サービスの企画も順調に推移しています。
また、今後さらに業績を伸ばしていくために人員増強も実施しています。もとから高い成長率を計画していますが、今期は大幅に達成できる見込みです。
成長戦略の進捗
弊社のようにモノを作る事業は、どうしても人数が必要になります。「労働密集型開拓産業」と個人的に定義しています。この上半期に、人員増強を懸命に行った結果、日本・中国ともに新卒の新入社員が11名ずつ増えました。
これまで即戦力の採用計画を立てて取り組んできましたが、かなり苦戦しており、今後の課題となっています。対策として、中国の子会社との連携を強化し、中国でも日本向け人材の採用を強化すると同時に、既存の人材のレベルアップを図ります。また、採用のために日本と中国の大学・専門学校との連携を強化していく予定です。
研究開発投資
弊社はもともと研究開発からスタートした会社です。途中でSI的な会社に生まれ変わっていますが、今後も研究開発を重視し、できるだけ製品の割合を増やしていきたいと考えています。そのために積極的に研究開発を行っており、この上半期は7,800万円を投資しました。前年同期比で1,400万円増、21.7パーセント増です。
内容的には、従来の業界向けの新しい研究開発と、従来の延長線上にある顔認証を中心とした取り組みの2つのラインで進めています。
研究開発投資:背景
研究開発の背景についてお伝えします。事業ドメインはメディア産業向けを中心に行ってきていますが、この業界はデジタル革命というかなり大きな革命に直面しています。ご存知のように、従来、紙を中心に情報伝達していたものが、ネット中心に変わっていきます。
そのためには、大部分の仕組みの更新が必要になります。その更新のための研究開発は、この業界で大きなプレーヤーとなった弊社の社会的責任であり、チャンスでもあると考えています。
弊社はメディア業界向けにAIを活用したシステムを作ってきましたが、そのノウハウを他の業界に展開していくことにも取り組んでいます。具体的には、オンライン教育や越境EC関係などを新たな研究開発対象として進めているところです。
研究開発投資:概要(1)
メディア業界向け研究開発について、一例をお伝えします。「情報を伝達する」と言いますが、伝達する形は結果であり、形を作る前に「そもそもどんな情報を作るか」「誰が取材して作るか」「作ったものをどうやって修正、決済していくか」といった複雑な作業があり、多様な人員が関わっています。
また、今後はいろいろなメディアで同じ記事を載せていく時代にもなります。加えて、従来は限られた機関しかできませんでしたが、現在ではメディアの多様化が進み、至るところにメディアがある時代になっています。そのための簡便で使いやすいサービスが必要です。
そのため、「コンテンツを作る」「コンテンツを管理する」「コンテンツを発表する」といったクラウドシステムの研究開発を継続し、この分野を狙った新製品の開発を続けています。
開発に際しては、VUCA時代の変化対応力を考慮した設計を行っています。具体的には、クラウドネイティブ、マイクロサービス化などを採用し、今後数年にわたっても中心的なサービスとして活用できることを目指しています。
研究開発投資:概要(2)
もう1つは、顔認証の研究開発と各種ソフトウェアを作る際に必要なものの研究開発を行っています。
顔認証については、各種のユースケースで使っていくための周辺システムを作り、精度を上げていく必要があります。例えば、ゴルフのシミュレーション機器が急速に増えている中で、顔認証と一緒に動く予約システムや決済システムなどを懸命に研究開発しています。
また今後、車両が5台以上ある事務所では、アルコールチェックが義務化されます。そこで、今まで人間が行っていたことに代わって、顔認証とアルコールチェッカーをセットにし、チェック後のデータをクラウド化することで、改ざんを不可能にするシステムの研究開発も行っています。
加えて、これまでのSI開発経験から生まれた汎用開発ツールの製品化も継続して行っており、さらにはオンライン教育分野についても新サービス開発のPoCを準備しています。
2023年 12月期 連結業績 見通し
2023年12月期連結業績の見通しについてご説明します。結論としては、今期の連結業績についてはスライドのとおりで、前期決算短信で公表した業績予想からの変更はありません。売上高は47億9,300万円、当期純利益は2億4,200万円です。
以上、会社の決算と主な取り組みに関してご説明しました。
質疑応答:浮動株の課題と今後の動きについて
「浮動株について課題があると感じていますか? もしあれば、今後の動きなどをお話しできる範囲内で教えてください」というご質問です。
浮動株の比率に関しては、私がかなり持っており、「この会社とともに成長し大きくしていきたい」という責任感と自信のもと、あまり売っていません。「場合によっては今後少し増やしていくべきではないか」という話もありますので、今後検討していきたいと思っています。
質疑応答:今後強化していくカテゴリについて
「今後一番の柱となる事業は何ですか? どのカテゴリを強化していきますか?」というご質問です。
弊社が強化していくのは、メディア業界です。弊社は「デジタル革命を起こす」ということで、当初、私が北京大学の一員として作った会社です。
時間がかかりましたが、メディア業界ではかなり大きな存在になったのではないかと思っています。したがって、今後もメディア業界に必要なイノベーションを起こしていきたいと考えています。
また、これから継続的に拡大していく業界であり、業界自体の意味が今までと異なってきているとも考えています。先ほどお伝えしたように、過去にはごく一部の会社しかできなかったことが、今はほとんどの会社がメディアを持つ時代になりました。それに向けて、チャンスをものにしていきたいと思っています。
それと同時に、メディア業界に限らず、他の業界からのニーズも出てきており、これまで培ってきたノウハウが役立つということも事実です。例えば顔認証や教育など、弊社が従来の技術を活かしてサービスできるようになっています。そのようなことも優先順位をつけながら取り組んでいきたいと思います。
メディア業界に関しても、パッケージ化、サービス化することで、今までごく一部の大手企業を中心に展開してきたことを中小企業にも展開したり、今まで日本を中心に展開してきたことを海外にも展開したりということを積極的に検討していきたいと思っています。
質疑応答:Webページのデザインについて
「WebページのデザインもWebフローですか?」というご質問です。
そのとおりです。
質疑応答:プロダクトの営業について
「プロダクトは営業マンがいるのですか?」というご質問です。
結論から言いますと、基本的には営業のデジタル化を推進しており、Web上で情報を発信します。その後、SEOを通じて、検索・広告でリードを獲得し、その上で営業マンがフォローするというかたちをとっています。
特に日本では、営業プロセスのデジタル化の浸透具合という意味で、従来のチャネルやface to faceの営業が依然として強い業界もあります。そのようなところでは、従来のチャネルと提携してお願いすることもあります。
質疑応答:研究機関や公共機関からの研究費補助について
「研究機関や公共機関から研究費の補助が出ることはありますか?」というご質問です。
今まではありませんでしたが、そのような意見も一部出ており、今後積極的に活用していきたいと思っています。