目次
細川馨氏(以下、細川):みなさま、はじめまして。ビジネスコーチの細川と申します。これから当社についてご説明いたしますので、よろしくお願いいたします。
本日は、会社概要、事業概要、2023年9月期第2四半期決算概要、今後の成長のポイントの順でお話しします。
会社概要
細川:会社概要についてです。当社には「あなたに、一人の、ビジネスコーチ」というCorporate Sloganがあります。人は、自分の味方となり、応援してくれる人とコミュニケーションを取ることで、自身の可能性を大きく広げることができます。
コーチと出会い、応援してもらうことは非常に良いことですので、ビジネスパーソン一人ひとりに必ずビジネスコーチがつく世の中を実現し、豊かな社会を築いていきたいという思いから、Purpose、Vision、Mission、Corporate Sloganを策定しました。
基本情報
細川:私はもともと生命保険会社に勤めており、当時は会社を創業することはもちろん、上場することになるなど、想像もしていませんでした。所属していた生命保険会社を発展させるために、一生懸命努力を重ねていました。しかしながら、マネジメントがうまく機能せず、その会社は外資に吸収合併されてしまって、今はもうありません。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):業界としても、合併などはよくあることだと思います。
細川:吸収合併されたことで、会社の業績は悪くなり、社員のリストラも2回実施されました。お客さまにも不安を与えてしまい、私も管理職の1人として責任を感じました。きちんとマネジメントが機能するすばらしい会社にすることができていればと反省しています。
この経験をきっかけとして、生命保険会社に在籍していた1998年くらいに、コーチングについて学びました。その頃は銀座で支社長を務めていましたが、コーチングは一人ひとりを伸ばし、組織全体の情報共有などを活性化するすばらしい取り組みだと実感していました。
さらに、今度はコーチングを踏まえて、6つの支社を同時に立ち上げるというミッションを本社からいただきました。コーチングをベースにマネジメントすることで、6つの支社はきれいに立ち上がり、非常にモチベーションの高いチームになっていましたね。
坂本:コーチングとの最初の出会いについて、教えていただきたいと思います。
細川:1997年くらいに、私の勤めていた生命保険会社が「危ない生命保険会社ランキング」という記事に載りました。
坂本:金融危機の時代はそのような記事がよくありましたね。
細川:私の勤めていた会社も載りましたが、その記事は非常に当たっていました。
坂本:記事に載っていた会社が、実際に駄目になってしまうこともありましたね。
細川:おっしゃるとおりです、それで当たると信じられていました。私の会社も上位にランキングされたことをきっかけに、2,000人いた営業マンが、瞬く間に400人となってしまいました。1,600人募集することはできないため、解約の手続きをすることになったのです。
このような、なんとかしなくてはならないという時に、アメリカにはコーチングというものがあると知りました。一人ひとりのモチベーションを上げ、自発性を高めると聞き、コーチングを学ぶことにしました。これらを自分なりに、営業組織で実践したことが最初の出会いです。
坂本:非常によくわかりました。
細川:2002年の10月にもともと勤めていた生命保険会社が外資に吸収され、それを期に一人で有限会社コーチ・エフを立ち上げました。その後、「日本中にコーチを増やし、日本の活性化につなげたい」という同じ志を持った仲間と2005年の4月に創った会社が、ビジネスコーチです。
副社長の橋場は創業メンバーです。彼はもともとアクセンチュアに勤めていました。専務の山本はプルデンシャル生命保険の役員で、グループ会社の立ち上げまでは専務でした。要するに、コーチングをベースにした組織開発の実践者ということです。
青木はもともと若い頃に当社へ入り、マーケティングを担当しています。鈴木はベンチャーキャピタルの役員だったため、M&Aの経験が非常に豊富です。
坂本:ボードメンバーのみなさまには、さまざまなバックボーンがありますね。
細川:おっしゃるとおりです。会社を立ち上げてから間もなくして、ビジネスコーチを増やすための取り組みとして、「コーチングスクール」を開講したり、「エグゼクティブコーチング」サービスを提供したりしました。
スライドには記載していませんが、コーチングの神さまと言われている、マーシャル・ゴールドスミスという方がいます。この方はマネジメントの実践者であるピーター・ドラッカーの盟友です。
ピーター・ドラッカーの「私の会っている経営者の半分は、もう学ぶ必要はない。自分の持っている悪癖を直したほうが、はるかにすばらしいリーダーになる。マーシャルくん、多くの経営者が成功するための手伝いをしてくれ」という言葉から、360度サーベイ、つまり多面評価がスタートしました。こちらは、すでに一般化しています。
坂本:会社を立ち上げた2005年時点で、コーチングはどのくらい日本で普及が進んでいたのでしょうか?
細川:本当に実践しているのは、大企業でも1パーセントくらいだったと思います。
坂本:そこから今まで、かなりご苦労があったと思います。そのあたりも含めて、本編と一緒にご説明をお願いします。
細川:コーチングそのものがよくわからないという投資家の方もいらっしゃると思うため、ご説明したいと思います。
坂本:私もコーチングを受けたことがないので、ぜひ教えていただきたいですね。コーチングというサービスは、もともと抱えている悩みを解決していくのか、または、課題を与えた上で解決まで導くようなサービスなのかを教えていただくと、受けたことのない方にとってイメージがしやすいと存じます。
細川:こちらに関しては90秒の動画を作りましたので、まずはご覧ください。
坂本:語源など、非常によくわかりました。
ビジネスコーチングとは
細川:ビジネスコーチングについてご説明します。まずコーチングは、パーソナルコーチングとビジネスコーチングの2つに分かれています。パーソナルコーチングは、言葉どおりパーソナル、個人の目標です。自分の人生においてどのような目標を立て、どのように生きるか、課題を克服するかを支援します。
一方、ビジネスコーチングの場合は、ビジネスでパフォーマンスを出すことが目的です。例えば、エグゼクティブの方の場合、リーダーシップが非常に重要となります。経営者が人の話を聞かないと、その組織はどうなると思いますか?
坂本:ワンマンとなると決断が意固地で、もったいないと感じる時もあります。
細川:人の話を聞かないため、破壊的なコメントをすることも考えられます。しかし、実際には経営者でそのような発言をされる方はいません。そのため、人の話を聞かない方には、サーベイにより、「このような良いところもあるが、ここを改善するとすばらしいリーダーになる」と客観的なフィードバックを送ります。こちらを一定期間で改善することで、組織は働きやすくなり、ロイヤルティの向上にもつながります。
例えば、ビジネスパーソンの中には、いろいろな良いアイデアを持っていても言わない方や、遠慮している方がいます。そのような方が発言するようになると、その方自身も成長する上に、会社全体にも良いアイデアが共有されることになります。
サーベイを行って、自分が気づいている、もしくは気づいていないところを改善していくという取り組みが、ビジネスコーチングです。こちらによって結果的に、パフォーマンスが上がります。
アメリカでは、30年くらい前からコーチングが普及しています。エグゼクティブになる前にコーチがつくのが当たり前になっています。この人は本当にエグゼクティブとしてふさわしいのかセレクションを行い、エグゼクティブになる、あるいはなれないという結果が出ることもあります。ビジネスリーダーの時からコーチがつくことで、パフォーマンスは向上するということです。
マネージャーとして高いポジションの方も、パフォーマンスを上げるためにコーチングを活用しています。また、若くて非常に伸びしろのある人もコーチをつけて伸ばしていきます。
そのほか、会社に馴染めなくて退職してしまうことがないよう、中途採用の方にもコーチがついて、働きやすいようにサポートしています。ちなみに、中途採用者の人材紹介会社に支払うフィーはすごく高いです。
坂本:フィーは全体の3割、4割と言われていますよね。
細川:退職となると支払ったフィーが無駄になってしまいます。中途採用者については、いろいろな会社で大きな問題があります。この間も今まで自分が行っていた方法で仕事をしていたら、それがコンプライアンス違反になってしまい、大きな事件になったという事例もありました。
そのようなことが起きないよう、ビジネスコーチングは言うなれば、人を成長させる・活性化させる・パフォーマンスを出す仕組みとなっています。
1対1型・1対n型サービス
細川:1対1型サービスには、「エグゼクティブコーチング」と「ビジネスリーダー/ビジネスパーソン・コーチング」があります。
エグゼクティブコーチングは、日本でも現在相当普及してきており、その影響でビジネスリーダークラスの部長や課長等のコーチングも普及が進んでいる状況です。
1対n型サービスには、「ビジネスコーチング・プログラム」があります。こちらは簡単に言いますと、研修というイメージです。しかし、一方的な研修ではなく、必ずロールプレイを行い、2人ペアになってお互いに質問をし合います。ロールプレイは非常に効果があります。
1対n型サービスの特徴は、集合型の研修のフォローアップを行い、一定期間で組織にどのくらい良い影響を及ぼしているかをモニタリングしているところです。事前・事後には、動画などによるマイクロラーニングで学ぶかたちとなっています。
市場の可能性
細川:市場の可能性です。スライド左側に記載しているのは日本のケースです。日本は人材開発に約5,000億円のお金を使っています。一方で、アメリカは約1兆1,600億円です。しかし、アメリカのGDPや人口からすると、5,000億円と1兆1,600億円は良い勝負になります。
ただし、日本の場合は中身がまったく異なります。集合研修はいろいろな会社で行っているのですが、一人ひとりに実施するコーチング・モチベーション関連はなんと60億円、マネジメント開発研修は250億円であり、合わせて310億円となっています。
坂本:私もよく行きます。集合研修がほとんどだと思います。
細川:フォローアップは行わないわけですよね。
坂本:確かにおっしゃるとおりです。階層はあるものの、その間が数年、10年空くといった場合もあります。
細川:受けてない方は、まったく受けていないという状況も考えられます。アメリカは、ビジネスコーチングとマネジメント開発研修が全体の36.1パーセントです。要するに約4,200億円を、経営層のマネジメント開発費として使っているということです。
会社を成長させ、企業価値を高める、上場している会社だったらそれに伴って時価総額を上げます。ロジックから言って、集合研修が効果的なのか、あるいは一人ひとりに焦点を当ててパフォーマンスを高めるほうが効果的なのかは、日本とアメリカの30年間の時価総額を比べれば一目瞭然です。
30年前は、時価総額世界ベスト10に日本の企業が7社も入っていましたが、今は50番目にいるトヨタだけです。これは「アメリカと日本の経済力が違う」「人口が違う」ということもあるかもしれませんが、効果的に人材開発にリーチがかかっていなかったことが要因ではないかと思います。そこに日本も気がついて、東証はコーポレートガバナンスコードを改定し、岸田総理も「とにかく人だ」と盛んに発言するなど、人材開発に取り組み始めています。
坂本:僕も社会人経験がありますが、研修を1対nにすることによってコストが落ちるし、ゼネラリストを養成するために「この階層は研修を受けて」というようなことが、今まで続いてきたのですよね。
細川:おっしゃるとおりです。集合型研修に全員がはりきって参加しているのかと聞くと、そうではありません。僕も22年6ヶ月サラリーマンをしていましたが、集合研修を行うと席が後ろから埋まります。自分でお金を払って参加される方は前に座ります。
坂本:モチベーションが続くのは、新人の時だけですよね。
細川:企業としては、多額な旅費・交通費を払って、講師を呼んで、場所も取ってと、投資しているということなのです。そのような意味では、日本は非常に良くなってきています。
大企業向けフォローアップサービスからのクロスセル展開
細川:大企業向けフォローアップサービスからのクロスセル展開についてです。スライドをご覧ください。1対1型のサービスでは、EC企業を例に上げています。こちらは7年前は時価総額が4,000億円でしたが、現在は1兆2,000億円です。60人以上が、1対1型のコーチングサービスを受けており、非常に伸びていますね。
1対n型は世界的にも成功している総合電機メーカーの例で、継続的に1対n型サービスを行っています。もちろん1対1型と1対n型を両方行っている会社もあります。
環境変化に向けた次世代幹部育成としての1対1型サービスの活用
細川:こちらのスライドでは、1対1型サービスで成功しているケースをご紹介しています。9名が「エグゼクティブコーチング」を受けており、業績は相当拡大しています。
クライアント企業に寄り添い課題解決につなげるビジネスモデル
細川:当社のクライアント企業は大企業が500社で、そのうち130社と継続してお付き合いしています。さらに、その中の30社とは深くお付き合いがありますが、ほとんどが東証プライムの上場企業です。
コーポレートコーチは、コーチングサービスを実際に行う人ではなく、大企業の意思決定者のところへ行き、「どのような会社にしたいですか?」「そのために人材育成をどう考えていますか?」ということを徹底的に聞き出し、プログラムを作る人です。
坂本:コーポレートコーチを務めるには、かなり豊富な経験が必要となりますよね。そこは、ある程度ノウハウを持つ外部の方にお願いするかたちですか?
細川:コーポレートコーチは当社の社員です。
坂本:社員の方が務めていらっしゃるのですね。
細川:相当勉強してもらうことになります。実際にコーチングを行うプロパーコーチも、当社の社員で6名くらいです。実際にコーチングもするのですが、コーチングの品質向上の研究をしたり、本を出したり、大学で教えていたり、さまざまな活動も行っています。
坂本:日本でもかなり第一人者的な方がいらっしゃるということですね。
細川:やはり、メーカーですから、研究開発が非常に重要となります。そして、パートナーコーチは、当社の試験に合格した業務委託の方です。
増井麻里子氏(以下、増井):1対1でコーチングした際に、その内容はどの程度社内に共有されるのでしょうか? 一人ひとりから「何をしたいのか」といった考えを聞き出し、次回までに取り組む課題等を決定するイメージがあります。それを他の社員にも共有されるのか、あるいはプライバシーを重視して、コーチングを受ける方だけに共有するのでしょうか?
細川:プライバシーの問題もあり、個人的な内容は共有されませんが、やはりどのような質問をして、どのような気づきがあったのかといったことは、どんどんクラウドコーチングでデータを集めています。
坂本:そこは依頼された企業にフィードバックされるのですか?
細川:個人的なことは除きますが、おっしゃるとおりです。あとは、最初はこのような課題があったが、コーチングを受けたことによってどのように変化し、周囲の人からどのような評価を受けたのかといった、個人アセスメントも集めています。
長期的な取引関係構築の源泉となるフォローアップ
細川:長期的な取引関係構築の源泉となるフォローアップについて、フェーズ1ではクライアントにいろいろな気づきを与えていきます。そしてフェーズ2で実践し、フェーズ3で成果につなげます。非常に大きな企業を例に挙げると、「このようにすると若い人たちは活性化する」「このようにするとモチベーションが下がる」といった内容の動画で、フェーズ1に取り組むこともあります。
問題点に応じて、すばらしいコーチングができる1対n型や1対1型のコーチングを実施し、フェーズ3ではフォローアップします。データを見て「少しここは足りない」といったことがあったら、また新たなサービスを提供します。そのような流れで行っていきます。
コーチングを受けた本人が「コーチングが素晴らしかった」と言うことには意味がなく、あくまでもその方の行動が変わったことによって、周りの人たちにどのような影響を及ぼすかが一番重要であり、それが企業価値を高めていくことにもつながります。
坂本:実践につながるように促すというのも、やはりコーチング技術の1つですか?
細川:おっしゃるとおりです。コーチングでトレーニングやセッションを受けると、1時間くらいで気づきを起こします。しかし、そのあと行動につながらないとまったく意味がないので、行動を見ています。
長期的な継続取引実績
細川:お客さまは、1年以上取引を継続されている方が74パーセントです。1年未満のお客さまも26パーセントいらっしゃいますね。つまり、ほとんど継続するかたちになっています。人的資本の投資の開示もあり、それだけ企業からのニーズが高まってきているということです。
坂本:集合研修もコーチングも、企業が従来のアセスメントとの違いをわかっているからこそ、継続しているのかなと思います。
細川:フォローアップしていくと、データが溜まっていき、組織開発することができますからね。
坂本:経営者がコーチングを評価し、「これはいいぞ」と部下に薦めるケースもありますよね。それがおそらく、御社が成長してきたポイントの1つなのだと思います。
細川:4,000億円から1兆2,000億円になった会社は、社長がまず最初にコーチングを受け、「これはいいぞ」と下のレイヤーに受けさせました。また、電機メーカーで非常に伸びている会社も、系列会社がたくさんあるのですが、社長が相当数受けています。
坂本:営業会社からの需要が高いイメージがあります。そうではないところもやはり効果が出るものなのですか? まさに人材の話がありましたが、例えばホワイトカラーの事務を多くこなす会社など、営業以外の部分での効果はどのように出てくるのか、すごく興味があります。
細川:やはりリーダーがメンバーの話をしっかり聞いた上で、良いアドバイスをしてあげたり、よい質問をしてあげたりすることで、部下は自発的に考えるようになります。心理的安全性がある環境を作っていくことで、若い人が伸びます。その集団が、ひいては組織全体になってくるため、成長しないわけがないということです。
坂本:会社のドメインというか、「こうありたい」という共有化にもつながっていくのですか? 欧米企業では大事にするところだと思います。
細川:優秀な社員はいるものの、力を発揮せずに退職してしまう、それはやはり、社風などが相当影響するのではないかと思います。
顧客 取引実績
細川:こちらに記載した取引実績はほんの一部です。「出してもいい」と許可をくださった会社を載せています。トータルで約500社と取引しています。
2023年9月期2四半期累計期間 業績ハイライト
細川:業績についてお話します。売上高は前年同期比11.6パーセント増の6億1,600万円で着地しています。1対1型サービスの増大で半期の計画が達成されています。営業利益は期初の見通しのとおり、採用強化等に向けた人材への先行投資や上場関連費用、本社移転の一過性の費用計上により経費負担が増加したものの、計画どおり増収減益で着地しています。
坂本:人材への先行投資というお話しがありましたが、こちらは自社のコーチを増やすための採用活動をしているのですか?
細川:おっしゃるとおりです。当社は、期初が10月なのですが、8名ほど採用しています。年間通してだと、相当数採用してきました。
坂本:今の社員数から考えるとけっこうな数ですね。
細川:小さな規模の会社だからだと思います。
営業利益増減要因分析
細川:細かい内訳です。取引先は4社増え、実績も増えて4,670万円増収したのですが、先ほどご説明した人件費と、移転費用が発生しています。事務所は5月1日にオープンし、社員のモチベーションが非常に向上しています。
こちらは、社員の中から募った有志がプランニングしています。コーチングブースを作ったり、いろいろなところで打ち合わせができたり、コンセントがたくさんあってどこでもパソコンを使えるなど、業務委託のパートナーの方々も喜んでいました。やはりこの投資はよかったと思いました。
売上構成推移
細川:1対1型サービスの売上高が急激に伸びており、前年同期比でプラス61.9パーセントとなりました。1対n型サービスは、前年同期比で9パーセント減と若干のマイナスになっていますが、下期以降に1対n型サービスもどんどん拡大させていこうと思っています。
1対1型サービス導入企業の広がり
細川:1対1型サービス導入企業の広がりについては、スライドにあるとおり毎年順調に進んでいます。参考までに、取引先1社当たりの売上高が全体では230万円ですが、1対1型サービス導入企業では360万円で、1対1型サービスのほうが伸びしろがあります。
坂本:前のページに戻ってしまいますが、この1対1型サービスと1対n型サービスの割合はずっと変わっていないのですか? 1対1型サービスが増えているということでしたが、2021年以前から見るとどのような推移だったのかと思いました。
細川:やはり1対1型サービスが急激に伸びており、1対n型サービスは今の状況だと横ばいのため、そこは企業努力して1対n型サービスも上げなければならないと思っています。
坂本:例えば、1対1型サービスの効能や効果を実際に感じているため、人気が集まってくるところもあるし、コーチングする方のレベルにも差はあると思うのですが、上場されており、昔からコーチングに取り組まれている御社に頼みたいというニーズもあるのですか?
細川:おっしゃるとおり、実績がありますので、継続率もほぼ100パーセントに近いです。そのため、既存のお客さまが、社長からその下のレイヤー、そして関連会社というふうにつながっていくイメージです。
坂本:「この先生にお願いしたい」という指名もやはりありますか?
細川:指名はあります。それは嬉しいことです。ただし、サクセッションプラン、次期経営者というのは、先生は関係ないです。
坂本:内容がすべてですね。
細川:次期経営者にするため、一定期間のコーチングとサーベイはしますが、この人がふさわしいかどうかという判断をする時にコーチは関係ないですね。リーダーシップがどれだけ変わったかを見られます。それに気付いた企業に発注していただき、私どもで提供させていただくということです。
坂本:営業の方法は、紹介などもあるのですか?
細川:当社の場合は、関連会社の紹介が多いです。また、マーケティングを非常に一生懸命やらせていただいているため、問い合わせから始まることがほとんどです。
インサイドセールスは、お問い合わせいただいたすべてのお客さまを分析した上で、再度問い合わせがきた時は、「このお客さまはこのようなことを見ている」「こういうニーズがある」というところからアプローチするイメージです。
2023月9月期 決算見通し
細川:売上高は18.5パーセント増の13.6億円を予想しています。1対1型サービスをけん引役にして、売上高及び各段階利益の進捗率は計画並みを確保しています。
経常利益は4.4パーセント減の2.3億円を想定しています。人件費増や上場関連費用、本社移転の一時費用などが重石となり、増収減益となる見通しです。2022年11月に公表した業績発表数値から変更はありません。もっと上振れしたいと思っています。
坂本:社員数が増えればその可能性があるのでしょうか? 今は需要に対して断っている状況にありますか?
細川:それは、ありません。
坂本:さらに人が増えていくことによって、需要を取り込めるというかたちですね。
細川:多くのお客さまがいらっしゃいますし、今までの実績もあります。その多くのお客さまのニーズをもっと深掘りして、くみ取っていけば、継続的で大きなかたちになります。また、実際に大型案件もかなり増えてきています。
ただし、社長としては多少不満があります。このようなすばらしいお客さまがいるのだから、もっとサービスができるのではないかと思っています。
坂本:大きい会社には直接、営業に行かれることもあるのでしょうか?
細川:私は営業が大好きですので行きます。上場して2ヶ月間で20社以上を訪ね、ニーズを聞きました。社長全員が「やはり一番は人。人の能力を伸ばすことが大事。効果的な人材開発のプログラムを作る。1対1型で伸ばす人を伸ばそう」という意見を持っていました。
これまでのような企業の集合型研修からいかにシフトさせるかが重要ということです。営業は大切です。
主要KPIの動向
細川:主要KPIの動向です。パートナーコーチ数は143名で、そのうち第2四半期累計期間中に増加したのは11名です。1対1コーチング対象者は前期比で31名増加し、売上・受注状況は堅実に推移しています。
取引先企業数は引き続き順調に拡大しており、1社当たりの売上高は、リピート需要の取り込みや1対1型サービスの大型契約獲得によるセッション数増を背景に、一段の上昇を見込んでいます。
スライド中央に記載の1対1コーチングの対象者数の推移ですが、2023年9月期の目標1,500名のところ、第2四半期累計期間実績は428名となっています。エグゼクティブコーチングが大変多いため、売上は2022年9月期の額を突破しています。ただし、部長以下のコーチングの数がまだ少なく、それを拡大するよう一生懸命努力している最中です。
バランスシートの状況と当期実績
細川:バランスシートの状況と配当実績です。ネットキャッシュと自己資本比率は上がっていますが、株主からすると「何だ、このお金は。全然うまく使っていないじゃないか」とご指摘も受けます。弊社としては、M&Aも行い、企業株を上げていこうとしている最中です。
坂本:御社のような業態がM&Aを考える時は、どのような業態にご興味があるのですか?
細川:お客さまはいらっしゃいます。コーチングサービスをすごく求めていることには対応しています。他方では、マイクロラーニングの充実を希望される会社もあります。
坂本:そのようなことが上手な会社や、システム系の会社等ということですね。
細川:やはりワンストップでいくと良いのではないかと思います。お客さまからはさまざまなご要望をいただきますので、「当社はコーチングの会社のため、コーチングしかできません」ということではいけないのではないかと思います。
品質の高いお客さまサービスを提供していくために、すべてとは言いませんが、ビジネスコーチと一緒にサービスを展開していきたいという会社とは非常に相性が良いのではないかと思い、がんばっています。
坂本:非常にイメージが湧きました。
細川:続いて、配当実績です。2019年9月期から配当を継続しています。また配当額は、配当性向30パーセントをめどに決定しています。
当社の成長性
細川:当社の強みは人材育成領域です。5月1日にコーポレートコーチング本部を立ち上げ、ソリューション営業部隊がかなりレベルアップしました。大企業にもっと寄り添うために、大企業の意思決定者のニーズを聞く、応える、レベルアップするということで、この効果は今後どんどん出てくると思います。
市場動向について、日本企業は成果と合わせて人を成長させるという風潮になってきており、非常に良い流れになっていると思います。
パートナーコーチについては、当社の場合はビジネスコーチのため、ビジネスの経験がある方々を採用しています。こちらの採用は順調です。ただし、選別の仕方がかなり難しいです。応募してくれたから合格というわけではありません。合格率は少し低めになっています。
当社の成長ステージにおける戦略テーマ
細川:当社の成長ステージにおける戦略テーマです。ステージ市場支持獲得のため、ハイパフォーマンスモデルの確立として、徹底的に大企業のニーズに応えられるようなプロを育てていきます。
コーチングの社会的な浸透については、だいぶ進んできました。私が上場した理由についてお話ししたいと思いますが、コーチングにはどのようなイメージをお持ちですか?
坂本:私はコーチングを受けたことがありません。小さな会社を経営していますが、意思決定は「1人でやっておけばいいや」くらいに思っています。答えが出た後に、「どう思う?」と悩みを相談するため、「いや、先生は決まっているでしょう」といつも言われてしまいます。
意思決定のスキルがもう少しあれば良いと思うし、自分がすべての仕事を抱えなくても良いのではないかと思うため、いくつかコーチングを受けてみたいと思っています。
細川:ありがとうございます。すばらしいと思います。
「コーチングは企業価値を高め、結果的に時価総額が上がる」というものにするために我々が上場しなければ駄目だと思ったのです。それは2005年に会社を作った時から思っていたことですが、途中で「無理かな、できないかな」と思ったこともありました。コーチングは本当に役に立つと思いましたので、本当に上場して良かったです。世界で初めてです。
坂本:アメリカにはあると思っていましたが、ないのですね。
細川:アメリカにもありません。そのため、このコーチングを日本に普及させて、日本の活性化のお手伝いができることを、非常に嬉しく思っています。本当にみなさまのおかげで何とか上場できました。
当社の時価総額は16億円とあまり良くないため、これを何とかしなくてはいけないと常に悩み、努力を重ねています。
質疑応答:持株会について
坂本:「今後、組織を強化していくに当たって、御社の中の人材も非常に大事だと思います。1月に設立された持株会について、従業員の反応はどうですか?」というご質問です。
もちろん株価対策にも若干はなると思いますが、そのあたりを含めて教えていただけたらと思います。
細川:80パーセント以上の社員が持株会に入っています。
坂本:これから成長していくならそれと一緒にということですよね。
質疑応答:ビジネスコーチのマッチング方法について
坂本:「ビジネスコーチは専任のコーチが割り当てられるのか、あるいは複数人のコーチが付くのでしょうか?」というご質問です。
1対1型サービスのお話だと思いますが、そのあたりについて、サポートも含めて教えていただけたらと思います。
細川:クライアント企業のニーズをお聞きして、何人かのコーチ候補の中から選んでいただきます。我々のほうも「このコーチはこのような強みがあります」ということでアドバイスします。このようにクライアントとコーチがマッチングされます。また、頻度は少ないですが、相性が悪い場合は、コーチがチェンジするかたちになります。
坂本:1回目のコーチングを受けた後、もう1回受けることもあると思いますが、その2回目は同じコーチになることが多いのですか?
細川:おっしゃるとおりです。
質疑応答:一定時期に集中する際の対応について
坂本:「新人研修のように一定時期に集中する場合、コーチング業界はどのような対応をされていますか?」というご質問です。
細川:エグゼクティブやそれに近い層のコーチングを行っています。そのセッションは月2回で6ヶ月間の12回で、満遍なく行われているイメージです。そのため、集中することはあまりありません。
増井:私は短期のパーソナルコーチングを受けたことがあります。御社はビジネスコーチング専門ですが、お客さまの中にパーソナルコーチングを希望される方はいらっしゃいますか?
細川:いらっしゃいますが、当社のリソースからするとパーソナルコーチングにはお応えできない状態です。そのため、すべてビジネスコーチングになっています。
質疑応答:時価総額の目標額について
坂本:「御社の時価総額について、何年後にいくらにするという具体的な数字があれば教えてください」というご質問です。
当然、時価総額は増えるほうが良いわけですが、そうなるための取り組みについて、今一番大事にしていることで構いませんので、最後に教えていただけたらと思います。
細川:私はすごく不満を持っています。評価は正しいですが、我々の努力が足りていません。もっと我々が成長して、日本に貢献していかなければ駄目だと思っています。
私は65歳で決して若くはないため、時間がないのです。ですから、コーチングを普及するために、M&Aにも力を入れて、爆速で進みたいというイメージを持って走っています。みなさま、どうもありがとうございました。がんばりますので、よろしくお願いいたします。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答していただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:コーチとボスは違いますね。ボスは必ずしも部下のこと、部下の成長を考えておらず、むしろ部下を蹴落とすことのほうが多いと思います。コーチの重要性を感じます。
回答:貴重なご意見をありがとうございます。ご指摘のとおり、コーチとボスは違うものと考えています。ボスは一般的に上司を言い、コーチは外部の第三者を言います。その意味で、コーチはクライアントと直接の利害関係がなく、客観的な立場で話を聞き、時にアドバイスが可能だと考えています。この点において、ビジネスコーチングのメリットがあると考えています。
<質問2>
質問:先日帰国したばかりなのですが、日本は圧倒的に物価が安いと感じています。収益の3割以上を海外展開に向けたほうが利幅が大きくとれると思うのですが、この点に関する貴社の考えを教えてください。
回答:ご質問ありがとうございます。当社としましては、まずは日本においてコーチング文化のさらなる普及・拡大の余地があり、そこに成長可能性があると考えています。なお、海外展開については、現地語でコミュニケーションができる人材の獲得や現地でのネットワークの構築が必要であると考えており、現在のところ当社リソースの観点から、海外展開は考えていません。
<質問3>
質問:ビジネスコーチに求められるのは資質であって、資格ではないと思います。スポーツコーチに置き換えれば、コーチが経歴の中で好成績を成し遂げたことは求められません。
回答:貴重なご意見ありがとうございます。ご指摘のように、ビジネスコーチにはコーチとしての資質が求められると考えています。資質については、コーチのこれまでの経歴や得られた知見がベースとなる一方で、コーチングを機能させるためには、コーチングのプロセスに関するスキルも重要であると考えています。その両面を担保するために、資格制度を運用しています。
<質問4>
質問:社長は、顧客はプライム上場企業だと述べられましたが、プライムとスタンダード、どちらの企業の顧客が多いのでしょうか? スタンダードのほうがコーチングを求めているのではないでしょうか?
回答:具体的な数字の回答は差し控えさせていただきますが、プライム上場企業の割合が多いです。その理由としましては、組織全体を変革する必要性・緊急性がプライム企業の方が相対的に高いからではないかと考えております。
<質問5>
質問:1対nも実施されているとのことですが、これは結局のところコーチングと銘打った「研修」を提供しているということでしょうか?
回答:ご質問ありがとうございます。1対n型サービスでは、運営形態としては研修の提供となりますが、内容としては、単純な座学・インプットに留まらず、ロールプレイやワークショップを織り交ぜながら、実践知を体感いただけるようにサービスを提供しています。なお、1対n・1対1の別については、クライアント企業の人材育成に関する課題や目指すべきゴールや実施までのスケジュール・利用可能なリソースなど総合的に勘案し決定されます。
<質問6>
質問:3年継続が15パーセント、さらに4年継続は8パーセントと急激に低下しますが、これは3年後にコーチングの効果が表れるケースが多いということですか?
回答:ご質問ありがとうございます。こちらについては、コロナ禍以降にお取引をいただいた新規取引企業の絶対数が多いことが要因です。
<質問7>
質問:リアル会議室のようなコーチングブースは必要ですか? いつでもどこでもコーチングできる体制、リモートコーチングこそ重視すべきではないですか?
回答:ご質問ありがとうございます。コーチングブースはオンラインでコーチングを行うための専用の設備(テレフォンボックスのような個別ブース)で、こちらを8台用意しています。コロナ禍以降は基本的にオンラインやリモートでのコーチングが主流となっており、体制面はコーチングブースを活用しながら引き続き維持する予定です。
なお、今回本社を移転し、コーチングスペースを設けた理由としては、パートナーコーチとコーポレートコーチのコミュニケーション活性化を意図した設備と運用を行うためです。これにより、クライアント企業の人材・組織課題の解決に向け、「実践知の共有」と「高度な情報連携」が 実現され、クライアント企業の成長支援の実効性を高めていけるものと考えています。
<質問8>
質問:御社のコーチングによる効果の測定は、売上高や業績によって評価されるものではないと思います。顧客満足度こそ重視して欲しいです。
回答:貴重なご意見ありがとうございます。当社としては、コーチングを受けるクライアント(コーチング対象者)の満足度も重要であると考えますが、当社の顧客は発注者である企業であり、クライアントへのコーチングサービスを通じて、企業の課題解決等の成果につながったかどうかという観点から企業の顧客満足度を重視しています。
<質問9>
質問:余っている現金を活用してM&Aするとのことですが、買収先としては赤字企業も検討の対象ですか?
回答:赤字企業であることのみをもって、買収先の検討から外すことはなく、当社との買収後の事業シナジーなど総合的に判断した上で検討いたします。
<質問10>
質問:競合企業と比較した際の御社の強みや優位性を教えてください。
回答:競合に比較して、当社は下記の3点を強みとして認識しております。
1つ目が契約パートナーコーチ陣の「ビジネスの知見×コーチングスキル」で評価した高い品質、2つ目がクライアント企業やコーチング対象者の多様なニーズに貢献するためのカスタマイズ力、3つ目がこれまで大企業の皆様の行動変容をサポートしてきたことによるフォローアップサービスが充実していることです。
これら3つの要素が、他の人材開発・組織開発サービスを担っている会社と比較した際の優位性であると認識しています。