会社概要(2022年3月末現在)
上村正人氏(以下、上村):それでは、会社概要からご説明します。当社は1973年の設立で、本社は東京都八王子市にあります。事業拠点および工場は、八王子事業所の他に東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区にあり、加えて、生産拠点として中国江蘇省蘇州市に100パーセント子会社の蘇州エブレンがあります。
当社は以上の国内4拠点、海外1拠点の合計5拠点で、産業用電子機器・工業用コンピュータの設計・製造・販売を行っている電子機器メーカーです。資本金は1億4,301万円で、売上高は2022年3月期の実績で39億2,200万円、経常利益は5億2,900万円です。
事業内容:産業用コンピュータの設計・製造
上村:事業内容を一言でお伝えすると、産業用コンピュータの設計・製造を専業としていて、特徴的なのは、受託設計・受託製造が事業の大半を占めていることです。
現在のメインの仕事内容は、通信・電力・鉄道・医療などの「社会インフラ系設備」および半導体製造装置や生産自動化機械などの「産業インフラ系設備」に、コントローラーとして使用される産業用コンピュータの受託設計・受託生産が中心で、売上全体の80パーセント以上を占めています。
鉄道・電力・通信など公共性の高い事業会社向け設備の開発や調達は、日本を代表するような大手装置メーカーが主契約者となっており、私どもはその下で仕事をしています。
主契約者の装置メーカーは、設備やシステムの開発構想に基づいて、当社へ委託するコンピュータ製品の「要求仕様書」を作成して提示し、私どもはその「要求仕様」に基づいて製品を設計して試作品を作り、装置メーカーへ送って評価と設計検証を受けます。
設計段階が終わって量産に入るまでには半年から1年、あるいは1年以上かかることもありますが、量産開始以降は中長期的に安定した製品供給を要求されます。
製品区分(1) ボードコンピュータ
上村:私どもが今メインで生産している機器についてのご説明になりますが、コンピュータに限らず、電子機器では半導体のような電子部品をエポキシ系のプリント基板の上に実装し、回路でつないで一定の働きをするようにします。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):プリント基板とは、パソコン内部に搭載されている緑色の板のようなものですよね?
上村:そのとおりです。製品によってプリント基板も大小さまざまあります。扱いやすい官製ハガキくらいからB5判、A4判くらいまでの大きさが一般的ですが、もっと大きいものもあります。
坂本:一番大きいものでどのくらいのサイズですか?
上村:基板の大きさとして「500ミリメートル×600ミリメートル」程度のものもありますが、大きくなるほど扱いにくくなり、最終的には構造体としてまとめる必要があるため、適度な大きさに抑える必要があります。私どもの業界では国際的な規格があり、プリント基板の大きさも決まっていますので、電子機器を適当な大きさで作ることはあまりなく、規格に則って大きさを決めていきます。
スライドの左側にあるのは、バックプレーンシステム用のボードコンピュータです。特徴として、基板のへりに白いコネクタが付いており、こちらをバックプレーンに接続することで大規模回路を実現します。右側のIoT・Edge システム用のワンボードコンピュータは比較的小規模で、1枚の基板の中にCPUからメモリーや通信といった一定の機能を持たせています。
坂本:右側のワンボードコンピュータはパソコンに搭載されている基板のようなもので、左側のボードコンピュータは、1枚にすべての機能があるわけではなく、一部の機能が緑の基板に搭載され、それを何枚も入れて使用するということですね?
上村:おっしゃるとおりです。
製品区分(2) バックプレーン
上村:バックプレーンは、先ほどお話ししたような電子部品がたくさん載った回路ボードを連結し、規模の大きいコンピュータや電子機器を作る時などに採用されるもので、産業用のコンピュータは圧倒的にこのかたちが多いです。一方、ノートパソコンのような比較的に小さなものは、基本的に1枚の基板にすべての機能を搭載しています。
スライド右側の図のようにボードコンピュータをバックプレーンに挿し込んで、最終的に金属の筐体(コンピュータシャーシ)の中に収めます。
製品区分(3) コンピューターシャーシ
上村:最終的な製品の姿はスライド左の写真のようになります。
坂本:バスラックはかなりの枚数が入るのですね。
上村:10枚、20枚入と入るものが多く、さらに大きいものもありますが、この写真のような大きさのものが半導体製造装置などでよく使われています。奥に見える白い部分がボードコンピュータのコネクタをバックプレーンに連結するためのスロットです。回路を広げると全体で畳1枚分くらいの回路面積になり、それを分割したものが挿さっているということです。
スライド右側の写真はワンボード型シャーシで、先ほどお話ししたワンボードコンピュータをこのような金属のケースに入れて使います。こちらはバックプレーンを使っていないタイプです。最近では、IoT・Edgeシステム用などの比較的規模の小さいコンピュータはこのようなかたちになっています。
製品区分(4) 制御用コンピュータ
上村:半導体製造装置の中には、スライドのような制御用コンピュータが入っています。筐体のフロント側から各種ボードコンピュータをバックプレーンに挿し込み、最終的には製品本体の中に組み込まれて半導体製造装置の一部として使われます。
坂本:こちらは省スペースという意味で使われているということもあると思いますが、ボードコンピュータを脱着できる理由も教えてください。
上村:脱着できる理由はかなり重要なポイントになりますので、次のスライドでご説明します。
バックプレーン方式が産業用に多用される理由
上村:バックプレーンは、各ボードコンピュータに電力を供給する役割があるのですが、もう1つの重要な役割として、コネクタとバックプレーンを通してデータを信号伝送する役割も持っています。
特にCPUのような電子回路は高速で運転するとどんどん発熱し、放っておくと壊れてしまうくらいまで温度が上がります。そこで、一定の温度以上にならないようにする工夫が必要です。
この筐体の上部にはファンが付いており、中の空気をどんどん出して、外の空気を取り入れることで一定温度以上にならないようにしています。
さらに、電磁波の問題があります。電子機器は高速で動くとかなりの電磁波を出してしまい、この電磁波はさまざまな障害に結び付くことがあります。電磁波の影響を受けないようにすると同時に、電磁波を外に出さない工夫が求められるため、金属製の筐体に収めているということです。
着脱可能にしている理由は、保守性に関わっています。私どもは常に「作ったものが万が一壊れたらどうするか?」ということを考えながら設計しますが、万が一壊れたとしても、その部分を切り離して修理できないとなると困ってしまいます。そのため、いつでも必要に応じて基板をスロットから切り離し、取り出して対応できるようにしています。
坂本:確かに1枚のボードではどこが壊れているかわからなかったり、部品がないことも考えられます。入れているボードの中で「ここが壊れた」とわかれば、その部分だけ入れ替えることができるのですか?
上村:おっしゃるとおりです。回路を分割して何枚かに分けるのですが、それぞれのボードが役割を持っています。例えば、通信に異常があった時は「通信ボードがおかしいかな?」と考え、取り替えてみると正常に動くこともあります。
現在、世界中で私どもが作っている半導体製造装置が使われていますが、保守のためにコンピュータに精通している人間を現地に常駐させることは不可能です。そのため、症状を見て対応できるようなメンテナンス要員を用意するのですが、修理対応を極力簡単にする必要があります。
坂本:半導体製造装置は24時間動いているものもあり、修理対応している間は生産が止まってしまいます。
上村:そのような時の復旧は1分、2分を争いますので、修理はともかく、短時間で復旧するように応急処置をすることが大事です。
坂本:こちらは納入時に予備もあわせて納入するのですか?
上村:主要なボードやモジュールは、一定量を機械と一緒に納入し、万が一の時には連絡し合いながら対応できるようにしています。
坂本:もし予備がない時には、御社に「急いで作ってほしい」という話もあるのですか?
上村:そうですね。ただし、そのような場合は1ヶ月から2ヶ月の間、機械が止まってしまうことになります。
坂本:そのため、納入の数以上に予備も納入するのが基本なのですね。
上村:そのとおりです。また、拡張性については、通信機などのケースでは加入者が増えてから機能を増設することがよくありますので、半分くらいのスロットでスタートし、その後の加入者増加とともに機能を継ぎ足すことが可能で、はじめから大きなものを作ってしまうよりも合理的です。
さらに規模の大きい拡張が必要になった場合には筐体を増やして対応しますが、同様に、メモリー容量をもっと増やしたいような場合は、スロットを足していくことができます。
坂本:機器のアップデートとともに、中身もアップデートできるということですね。
上村:また、汎用性については、バックプレーンには国際規格があり、我々は標準規格に則って作ることが多いのですが、標準規格で互換性があれば、市場に流通している他社のボードも採用できるというメリットもあります。そのような点で、規格はとても大事なポイントとなってきます。
昔は互換性のないものが多かったのですが最近はそのあたりの規格が浸透しています。身近なところではUSBメモリーがありますが、例えば、他のパソコンで記録したUSBメモリーを自分のパソコンに挿して使えるのは、規格が守られているため実現できているのです。このように、工業用のコンピュータもいろいろな規格があり、主要な基準をきちんと守ることで汎用性が増します。
エブレン製品の用途(応用分野)
上村:当社製品の応用分野です。スライド右側の円グラフは、2023年3月期の上半期の連結売上高構成比ですが、連結売上高20億5,200万円のうち、ジャンル別にどのような分野で製品が使われているのかを表しています。
円グラフの緑の部分は計測・制御分野で、全体の69.8パーセントを占めています。計測・制御分野においてかなりの部分を占めているのが、半導体製造装置や半導体検査装置です。代表例として、スライド左下に緑色の丸で囲っていますが、FAと半導体製造装置を挙げています。
FAとはチップマウンターやロボット、工作機械など、ファクトリー・オートメーション分野の機械類のことです。半導体製造装置は成膜装置やコータ・デベロッパ、エッジング装置、洗浄装置など、非常に多くの製品があります。
次に多いのは、青色の丸で囲った交通関連で、高速道路などの料金を自動的に収受するETCが代表的です。鉄道分野は、ATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)といった、新幹線から山手線のようなローカル線の電車まで共通的に設置されている安全装置をはじめ、信号システムや軌道監視システムに我々の工業用コンピュータが使われています。
赤色の丸で囲った部分は、通信・放送、電力・プラント分野です。通信も非常に分野が広く、有線、無線、モバイル、ブロードバンド、衛星通信から海底ケーブル装置にも使用されています。
また、黄色の丸で囲った部分は、HPC(スーパーコンピュータ)や医療関係を中心とした電子応用のジャンルです。スーパーコンピュータは、ゲノム解析やディープラーニング等に使用されています。
医療関係は主に映像系の装置で、MRIやCTスキャナ、超音波診断装置などです。映像系以外では、血液分析装置のようなシステムにも応用されています。
このように、連結売上高20億5,200万円のうち、圧倒的に多いのは計測・制御分野ですが、時代によってジャンルや割合が異なるという特徴があります。
主要納入先 (直接納入,間接納入を含む)
上村:先ほど主契約者のお話をしましたが、最終的な製品を作っている日本を代表するメーカーをスライドに記載しています。私どもはこれらメーカーの要請を受けて設計・製造しています。
生産拠点の分散
上村:生産拠点は入間事業所、上野事業所、本社・八王子事業所、大阪営業所、さらに中国江蘇省蘇州市に蘇州エブレンがあります。これらの製造拠点にはメインの設備を共通的に設置することで、BCPの観点において、万が一のことがあっても、ほかの事業所にデータを渡し生産を継続できる工夫をしています。
2023年3月期(第50期上半期) 決算実績
上村:2023年3月期の上半期の実績です。売上高は20億5,200万円、営業利益は3億円、経常利益は2億8,900万円、当期純利益は1億8,600万円となっています。2021年3月期の上半期、2022年3月期の上半期と比較すると、売上高・営業利益ともに伸びています。
坂本:前年比増収増益となっていますが、半導体製造装置を含む計測・制御の売上が好調ということでした。この背景を教えてください。
上村:売上増加の背景として、まずは足元の半導体不足が関係しており、さらに最近は、半導体製品の需給判断による設備投資以外に、経済安全保障体制としての半導体関連設備投資も関係しているようです。これまでは「これは台湾に頼んで、こっちは韓国から買えばいいよね」としていたところ、今後はそう簡単にはいかにないようです。
坂本:日本国内の設備で製造するということですね。
上村:そういうことになりますね。現在はこれまでにない特殊な状況です。例えば半導体についても、メモリー関係は十分足りるようになったと聞きますが、半導体全体ではそのようなことはなく、依然として設備投資は伸び続けています。計測・制御分野の売上が伸びており、この状況はしばらく変わらないと思います。
営業利益や営業利益率も量産効果によって伸びています。ものづくりにおいて、10個作るのと1,000個作るのとでは利益・利益率はまったく異なります。発注台数が増えたため同じものをたくさん作る機会が増え、利益構造を大きく左右しているということです。
坂本:量産効果以外の要因もありますが、一番大きいのは量産効果ということですね。
2023年3月期(第50期上半期)応用分野別概況-1
上村:2023年3月期の上半期について、計測・制御関係は先行的な調達により、部材調達難による出荷停止を回避しました。実はこの時期は業界全体が部材がないために製品がまとまらなく、製品出荷できないことが大きな問題になっていました。
坂本:その時期を御社がうまく乗り越えられた理由として、何か工夫したことなどがあれば教えてください。
上村:一番大きかったのは、そのような非常に切迫した状況にあることを、お客さまが私ども以上によく理解されていたことです。先行的に発注したり、手に入らないものは代替品にしたりと、積極的にご協力いただき、重大な遅延とならずに納入することができました。
また、メモリー半導体製造装置への設備投資は、一部顧客側で延期がありました。メモリー半導体はロジック半導体とは異なり、それほど種類がありません。半導体不足の中、部材調達問題をいち早く解消するのは、大量に使われるメモリーということは誰もがわかっていることで、大量に作って一度に納品したほうが収益性も高く効率的ですので、そのほかの少量の発注は後回しになります。
このような背景もあり、メモリーがかなり充足してきた状況ですので、メモリー半導体製造装置は一部顧客で延期となりました。ただし、ロジック半導体製造装置への設備投資は継続して増加し、結果として、売上高は前年上半期比14.2パーセント増となりました。
交通関連は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下での移動制限の影響を受け、鉄道会社の設備投資の延期、加えて、海外向け鉄道関連の入札延期、設置工事の遅延等がありました。結果として、売上高は前年上半期比27.5パーセント減となりました。
2023年3月期(第50期上半期)応用分野別概況-2
上村:通信・放送分野については、通信・電力ともに堅調に推移しました。また、放送関連の一部顧客で、半導体入手難による前期から今期への後ろ倒しがありました。結果として、売上高は前年上半期比16.4パーセント増となっています。
電子応用分野については、先送りされていたCTスキャナ・MRIなどの1億円、2億円規模の高額医療装置への設備投資が復調し、医療関係は好調です。売上高は前年上半期比0.2パーセント増で、今年はさらに増えそうです。
防衛・その他について、売上高は前年上半期比11.2パーセント増となっています。
2023年3月期(第50期上半期)応用分野別売上
上村:連結応用分野別売上の前年度上半期および前々年度上半期比の推移です。一番左は一昨年の上半期、中央が昨年の上半期、右端が今期の上半期で、売上高はそれぞれ16億1,200万円、19億3,000万円、20億5,200万円となっています。
色分けで見ると、一番目立つグレーの部分が計測・制御分野ですが、48期上半期・49期上半期・50期上半期と増加しています。そのうちの3分の2は半導体製造装置です。
また、黄色の交通関連分野は一昨年と比較すると、昨年・今年ともに減っています。
2023年3月期(第50期上半期) 業績 – 財政状態
上村:スライドは2023年3月期上半期の財政状態です。流動資産は40億5,200万円、固定資産は12億5,800万円、資産合計で53億1,100万円です。
流動負債は9億5,500万円、固定負債は3億8,300万円、負債合計は13億3,800万円です。
純資産は39億7,300万円、負債純資産合計は53億1,100万円です。自己資本比率は74.8パーセントですので、順調と捉えています。
増井麻里子氏(以下、増井):自己資本比率が非常に高く見えるのですが、今後、M&Aなどはお考えですか?
上村:M&Aは、成長戦略の中でとても大事な着眼点だと考えています。M&Aのみならず資本提携なども含めて、広く積極的に考えています。
製造業はものづくりが中心ですが、私どもは、ものづくりにとって大切な一部分である設計能力を重要視しています。設計能力により生産量が決まってくるといっても過言ではなく、特に私どもは受託設計製造業のため、設計能力がないと受託生産量を増やすことができません。
したがって、M&Aの相手として望ましいのは技術力がある企業です。そのようなことで相乗効果が出せるところがあれば大変ありがたく、強い関心を持っています。
2023年3月期 (第50期) 通期予想
上村:2023年3月期通期予想です。売上高は43億2,000万円、営業利益は6億5,000万円、経常利益は6億5,000万円、当期純利益は4億3,000万円としています。今のところ順調に進んでいますので、このままでいけば予想は達成可能だと見ています。
2023年3月期 (第50期) 見通し
上村:今年の見通しですが、分野によってかなり好不調が分かれると予測しています。半導体製造装置・半導体検査装置を中心とした計測・制御分野については、ロジック半導体を中心に半導体需要が拡大基調にあり、半導体製造装置市場の増加は、今後も継続すると考えています。
ただし、ウクライナ問題や新型コロナウイルスの影響で、半導体製造装置生産に支障を来す可能性もあり、絶対に大丈夫だとは言えない状況ですので、想定外のことも考えていかなければと思います。
部材入手難のリスクは、よくなってきているとは思いますが、まだ収まっておらず、依然として入手できない部品が多くあります。
坂本:どのあたりが足りないか、簡単に教えてください。メモリーは以前のままですか?
上村:やはり半導体です。スマホ向けの半導体やメモリーは大量に作るものですので、最近はほぼ足りてきています。ところが、工業用製品は多種少量ですので一番後回しになり、非常につらいところです。そのため、しばらくの間は半導体を中心とした部品入手難のリスクを常に考えながら、対応しなければと考えています。
交通関連については、新型コロナウイルスによる行動規制や移動規制などの影響を直接受けており、設備投資が減っています。今期は例年並み程度と予測していますが、新型コロナウイルスの影響によって、さらなる延期の可能性もあると考えています。
2023年3月期 (第50期) 見通し
上村:通信・放送分野については、ほぼ予定どおりに推移しています。放送関係は、東京オリンピックが終わったため、オリンピック特需のようなものはなくなり減少傾向です。
電子応用分野については、医療関係が好調です。特に大型医療設備が好調に推移し、今年度は医療関係が伸びると見ています。
防衛・その他の分野は、例年並みです。
2023年3月期 (第50期) 応用分野別売上予想
上村:2023年3月期(第50期)の予想です。売上高は43億2,000万円で、それぞれの分野別内訳はスライドのとおりです。特に目立つところは、半導体製造装置や検査装置を中心とした計測・制御分野で、売上高は前年比約10パーセント増と予想しています。
直近10年間の業績推移
上村:成長への取り組みの前提として、当社の過去10年間の売上・利益の推移をグラフに表しています。ブルーが売上、ピンク色が経常利益で、一番左の2013年3月期が10年前の水準ですが、売上は23億5,000万円から2022年3月期に39億2,200万円まで達しています。
経常利益も2013年3月期の7,500万円から2022年3月期は5億2,900万円まで伸長し、売上・利益ともに右肩上がりの傾向になっています。
当面の目標
上村:売上・利益の当面の目標です。今年の3月から来年の3月へ向けて、売上高は前年比10パーセント増、経常利益前年比20パーセント増を見込んでおり、さらに将来的には、グラフのように右肩上がりに成長しなければと考えています。
成長戦略
上村:成長戦略について、4つに分けてお話しします。1つ目はコア事業の強化です。産業用のコンピュータをインフラ設備に使っていただく前提での受託設計・受託製造のビジネスモデルを、さらに強化していきたいと思います。
2つ目は受託範囲の拡大です。私どもが受託する仕事は、どの段階においても「いいとこ取り」が可能ですので、お任せいただける仕事の範囲を拡大していきたいと考えています。
3つ目は、ボードコンピュータの事業強化です。コンピュータ本体にはボードコンピュータが入っていますが、日本にはボードコンピュータを専門にしている優秀な会社がいくつもあります。お客さまから「中に入れるボードも、エブレンでできないか?」といった需要が増えてきていますので、ボードコンピュータの開発力を強化し、お客さまの要望に応えられるようにしていきたいと思います。
4つ目は中国子会社の戦略的活用です。中国をはじめとして台湾も技術力が上がり、品質も向上しています。サプライチェーンの中によい調達先を組み込むといった、戦略的活用を推進します。
(1)コア事業の強化
上村:コア事業の強化についても先ほどお話ししたとおり、お客さまは、開発や設計などのリソースが足りず、専門メーカーでできるところは積極的に行ってほしいという意向です。そのような需要や要望に応えることが私どもの務めだと思いますので、さらに拡大していきたいです。
(2)受託範囲の拡大
上村:受託範囲については、基本的にはお客さまにとって必要なところだけを買っていただくというスタンスです。受託範囲を拡大することは手間がかかることですが、手間がかかることこそ付加価値の源泉であり、お客さまに貢献する価値の創造につながることだと思います。そのために受託範囲を拡大し、お客さまのお役に立ちたいと考えています。
(3)ボードコンピュータ事業強化
上村:ボードコンピュータ事業についても、エブレンでできることをどんどん広げていければ、付加価値が高く発展的なお話に結びつくことも多いため、この分野についても力を入れて取り組んでいるところです。
(4)中国子会社の活用強化
上村:中国子会社の活用強化については、中国や台湾を中心として、主に資材調達に寄与できるところを中心に開発していきたいと考えています。
質疑応答:自己資本と配当について
坂本:「御社の自己資本は高いですが、このくらいを維持するのでしょうか? 配当を引き上げることは難しいでしょうか?」というご質問です。
上村:配当については、2020年6月末の上場以来、毎年コンスタントに上げていくことを基本に考えていますが、昨年度は想定していた配当と利益のうち、利益が少し上回ったことで、配当性向は逆に落ちてしまっています。このあたりについては、今後、考えていかなければいけません。
ご承知のとおり、日本の上場企業の配当性向は30パーセントくらいだと言われていますので、いずれはその程度の配当性向に近くなっていくと思います。当面の配当水準については、投資家のみなさまの投資リスクにかなうような配当内容にしていくことが大切であり、検討の余地があると考えています。
坂本:別途、自社株買いも検討されますか?
上村:それも含めて全体的に検討していきます。
質疑応答:為替変動の影響について
増井:「為替変動の影響を教えてください」というご質問です。
上村:結論的に言いますと、輸入と輸出の両方があることと、売り買い全体に占める輸出入の割合が小さいので、為替の影響はあまり受けていません。部品調達についてはお客さまから協力していただいているため、受注残高はコロナ禍前の2.8倍と、かなり先までご注文いただいている状況です。一刻も早く部品調達をしないと間に合わなくなることは明確ですので、お客さまにおいても積極的に先を見据えて注文を出していただいています。
一方で、私どもの在庫はコロナ禍前に比べると1.8倍に増加していて大変厳しい状況です。
坂本:本当に調達難になってしまったら出せなくなってしまうため、ある程度保有しているということですか?
上村:そのとおりです。材料がなければ製品はできません。
坂本:取引先との信頼にも関わりますよね。
上村:受注残高はコロナ禍前に比べて2.8倍にもなっていますので、在庫もコロナ禍前に比べて1.8倍あってもおかしくないと思います。お客さまにご迷惑をかけないようにするためには、仕方のないことです。
ただし、どうしても部品の入手が大変難しいとなれば、積極的に他の部品に代替することをお勧めします。
坂本:代替についてメーカーが承諾すれば、問題ないということですか?
上村:そのとおりです。一番難しいのは、設計を変えなければいけなくなってしまうことです。
坂本:同じような用途と確認してから代替に切り替えるということですね。
上村:そのあたりも含めて、対応していきたいと考えています。
質疑応答:部品の使用期間について
坂本:御社が作られている工業用のパーツについて、ボードコンピュータに載るチップやメモリーなどは進化が非常に速いと思います。半導体は新しいものが続々と出てきますが、それ以外の部品は結構ロングタームで、意外と長い間使えるものですか? 設計が急に変わることはあまりないと思っているのですが、そのあたりについて教えてください。
上村:工業用の機械が使用される期間は2年や3年では終わらず、10年から15年間稼働します。逆に、パソコンのように頻繁に仕様が変わるとなると対応が難しいため、工業用ということを前提に「この部品は、長期的に安定供給できますか?」とメーカーに必ず確認します。
坂本:壊れた部分の交換部品もありますので、ある程度在庫があっても、売上が伸びれば、将来的に消費できると思います。
上村:また、生産中止などになってしまっても、機能的に相違のない後継品が出てきますので、少し設計を変更すれば問題ないことが多く、長期間生産が続いている機械でも変更を重ねることができればロングランになるという特徴があります。