会社概要

小久保知洋氏(以下、小久保):みなさま、本日はお忙しい中、当社説明会をご視聴いただきまして誠にありがとうございます。株式会社SKIYAKI代表取締役の小久保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

今回が最初ということで、当社の会社概要とビジネスモデルを少し丁寧にご説明します。まず、 会社概要です。当社は2003年に創業し、2017年にマザーズ市場に上場しています。現在の従業員数は95名で、主な株主としてカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社があります。

ミッション・ビジョン

当社のミッション・ビジョンです。ミッションは「創造革命で世界中の人々を幸せに」です。ビジョンは「FanTech分野で新たなマーケットを創造し世の中に価値を提供する」を掲げています。

簡単に言いますと、アーティストやクリエイターのみなさまを支援するプラットフォームを提供しています。最近では、Web3関連の技術などがFanTech分野との親和性が非常に高いと思っています。今後も1人でも多くのクリエイターのみなさまを支援できるように、さまざまなことにチャレンジしていきたいと考えています。

グループ会社概要(2022年7月末現在)

グループ会社概要です。連結子会社が3社、持分法適用関連会社が3社となっています。スライド右上に記載のエンターメディアFCは、昨年12月にグループ入りしました。

事業概要

事業概要です。当社はクリエイターとファンをつなぐプラットフォームサービスを展開しており、ファンクラブ(FC)、EC、チケットなどのあらゆる機能をオールインワンで提供しています。

プロダクトのラインナップは、大きく分けて2種類あります。スライド左側はデザインのカスタマイズ性などが優れた「Bitfan Pro」、スライド右側は誰でも利用できるオープン型のプラットフォーム「Bitfan」です。この2つについて、詳しくお話しします。

有料会員数の推移

有料会員数の推移です。直近の第2四半期末に有料会員数が約103万人となりました。

FCサービス数の推移

FCサービス数は現在768サービスで、非常に多くのアーティストやクリエイターのみなさまにご利用いただいている状況です。

Bitfan Pro 主な導入実績

「Bitfan Pro」の主な導入実績です。スライドに記載のサイトなどにご利用いただいています。ゆず、HYDE、[Alexandros]など大手のアーティストにご利用いただいており、音楽領域のファンクラブが非常に多くあります。

Bitfan Pro 主な導入実績

また、「すみっコぐらし」「リラックマ」などのキャラクターのファンクラブや、千葉ロッテマリーンズ、アルビレックス新潟といったスポーツチームのファンクラブもかなり多くあります。最近では日本相撲協会のファンクラブが非常に話題になっていますが、このようにいろいろと展開しています。

Bitfan 主な導入実績

オープン型の「Bitfan」の主な導入実績です。こちらも、ここ1年から2年で非常に増えました。「Bitfan Pro」と同様に音楽中心ですが、違いとしては「YouTube」「TikTok」を中心として活動している方のファンクラブや、個人の格闘家、eスポーツのチームなど、さらにバリエーションの広いサービスを展開しています。

ビジネスモデル

ビジネスモデルです。基本的に、サービスの手数料をいただくモデルとなっています。ですので、初期費用として構築費用をいただいたり、開発するための受託費用をいただいたりするということは一切ありません。基本的にファンのみなさまが支払った利用料の中から手数料をいただくかたちで、レベニューシェアする仕組みになっています。

プロダクトの特徴

少し細かいですが、各プロダクトの特徴はスライドに記載のとおりです。契約の欄をご覧ください。「Bitfan Pro」は一つひとつの案件ごとに契約しており、当社のサービス内容についても一つひとつ決めています。

「Bitfan」はオンラインでサインアップができる上、利用規約に同意するとすぐに始められます。手数料率も一律で、基本的にはクリエイターのほうですべて更新などを行うことになっています。

Bitfan Pro 事業モデル

「事業モデル」と記載していますが、サービスの利用の流れについてです。「Bitfan Pro」は、契約後に当社の専任チームでサイトのデザインやコーディングを行うため、立ち上げに2ヶ月から3ヶ月ほどかかります。

Bitfan Pro 事業モデル

一方、「Bitfan」はすぐに始められるため、当社が介在することはありません。まれに、当社がサイト構築のデザインなどを手伝うこともありますが、管理画面上で自由に操作できるため、基本的にはアーティストやクリエイター自身がサイトを作って公開する流れになります。

こちらは即日オープンが可能ですので、「サイトを明日開けたい」という希望も叶えられますし、そのようなユーザーもいらっしゃいます。

ここで、サービスの紹介動画をご覧ください。

「Bitfan」にはいろいろな機能が搭載されており、今は開発リソースの8割くらいがこちらのプロダクトに専念しています。現在もこれに加えて、ARPUが上がる施策やファンエンゲージメントが高まる施策を開発している状況です。今動画でお示ししたのは、現時点で最新の「Bitfan」でできることということです。

エグゼクティブ・サマリー

ここから業績についてお話しします。IRの資料を転記しているため細かいところがありますが、ポイントをかいつまんでご説明します。

エグゼクティブ・サマリーです。第2四半期の実績で売上高は6億1,000万円、前年同期比プラス17.2パーセントとなっています。営業利益は6,800万円で、前年同期の数字が悪かったこともあり、大幅に改善しています。

主要KPIは先ほどお伝えしたとおり、有料会員数が103.1万人で前年同期比で大きく伸びています。こちらはエンターメディアFCの買収が非常に大きかったと考えています。

業績予想の上方修正について

業績予想については第2四半期の決算のタイミングで上方修正しています。スライドの緑色の文字が変更した部分です。後ほどお話ししますが、予定していた固定費を抑えて経営できたため、営業利益以下を大幅に上方修正しています。売上高に関してはおおむね当初の予定どおりで、変更はありません。

2Q業績サマリー

第2四半期の業績サマリーです。スライド左側のブロックが第2四半期単体の数字で、右側のブロックが第1四半期、第2四半期の累計期間の数字となっています。第2四半期はおおむね好調だったのですが、いくつか補足させていただきます。

まず、第2四半期累計期間の売上高のマイナスについてです。前期の第1四半期に連結除外した売上高が含まれているため、前年同期比でやや下がっているように見えますが、こちらを除くと実質4.1パーセントの成長となっています。

また、第2四半期単体の最終利益について、経常利益から非常に下がっていますが、投資有価証券評価損の4,400万円が主な要因となっています。実力値としては問題ないと考えています。

収益モデル別売上高

ここからは、いくつかの財務指標の切り口からお話しします。まず、収益モデル別の売上高です。スライドの棒グラフの緑色の部分がストック収益で、黒色と灰色の部分がフロー収益となっています。

ストック収益をどのようにして右肩上がりに成長させていくかがベースとなっていますが、しっかり成長させていくことができています。また、ECについては当社がすべての商品を作っているわけではなく、アーティストがライブグッズを作ったり、楽曲を出すなどのタイミングで増減するものですので、基本的にボラティリティがあります。

2021年のECの売上高が非常に多かったのですが、これはちょうどコロナ禍に入る時で、ライブ会場で売るはずだったものがECに流れてくる現象が起きました。各社でそのようなことが起きていたと思います。

今はライブも徐々に開催されつつあり、特需は終わりましたが、今回の第2四半期ではきちんとこの数字が出ていますし、前年同期と比べても随分よい数字になっているため、第2四半期のフロー収益についても問題なかったと考えています。

限界利益の推移

限界利益の推移です。収益モデル別売上高のグラフと比べて緑色の部分が増えており、限界利益額で見てもきちんと右肩上がりで伸びています。また、全体の限界利益額の中でもファンクラブの限界利益が非常に重要だということがおわかりいただけると思います。

売上総利益と売上総利益率の推移

売上総利益も伸びています。また、売上総利益率が約70パーセントのビジネスモデルであるということをおわかりいただければと思います。

固定費と変動費の推移

先ほどお伝えした、利益が出た要因にもつながりますが、スライドの棒グラフの緑色の固定費があまり増えていない状況で売上高を伸ばすことができているため、経営の効率性が保てているのではないかと考えています。特に2022年第2四半期では、連結除外した人件費などが大幅に減っています。リストラなどを行ったわけではありません。

営業利益と営業利益率の推移

営業利益と営業利益率の推移です。営業利益については非常にわかりやすく右肩上がりになっており、直近1年で見るとだいぶ安定して利益が見えています。あまりサプライズが起きなくなっていることは、私としても非常に安心している状況ではあります。

また、営業利益率は11.2パーセント、営業利益は6,800万円と、過去3期間と比較しても最高水準となっているため、第2四半期は非常によかったと思っています。

市場環境と当社のポジションについて

成長戦略と事業トピックスについてお話しする前に、市場環境と当社のポジションについてご説明します。

スライドの図の濃い緑色の部分が、今の当社の収益の中心となっているファンクラブ市場です。計算上、ファンクラブの収益のみを持ってきています。当社の今のGMVは41.9億円で、国内のエンタメファンクラブ市場はだいたい1,000億円あるのではないかと見ていますので、まだまだポテンシャルがあります。

また、誰でもファンクラブを作ることができることを狙う「Bitfan」に8割のリソースをかけている理由についてです。海外ではクリエイターエコノミー領域には世界で約5,000万人のクリエイターがいるということが約2年前から言われており、アメリカのVCファームSignalFireなどのリサーチでもそのような結果が出ています。このような点で、潜在市場が非常に大きいと考えています。

ですので、薄い緑色の大きな市場をオープン型の「Bitfan」によってロングタームで取っていくことが現在の基本的な戦略です。なぜオープン型の「Bitfan」かと言うと、これから個の時代になりますので、一つひとつのファンクラブは大きなアーティストのようなファン数にはならないのですが、クリエイター数が非常に多いため、プロダクトとしてオープン型のほうが相性がよいだろうと考えているからです。

市場における競争優位性

競争優位性についてです。当社は2013年頃からファンクラブを作っており、770サイト弱の大、中、小さまざまなサイトを運営してきたため、かなりいろいろなケースのファンクラブを見ていることから、さまざまなノウハウがたまっています。

今のニーズに合わせたプロダクトを作る環境においては、非常に優位な状態にあるのではないかと考えています。

国内ファンクラブの変遷

スライドの図は個人的にまとめたものですので、このような用語があるわけではありませんが、世代感を見ていただくと、同じファンクラブと言ってもかなり変わってきていることがおわかりいただけるかと思います。

ファンクラブはもともと会報誌を中心としたアナログファンクラブから始まっており、2000年頃のガラケーが出てきたあたりからアーティストの公式サイトなど、デジタルファンクラブの先駆けのようなものが始まりました。

そこからスマホに変わり、キャリア課金や動画コンテンツも整備され、いろいろなコンテンツがリッチ化していきました。

2020年頃になると4Gや5Gなどで回線が強くなったり、「YouTube」「Instagram」などのSNSをアーティストのみなさまも使うようになりました。コメントへの返信など双方向のコミュニケーションや、インスタライブを中心としてライブ配信に慣れていったこともあり、ファンクラブでも同様のコミュニケーションを求める流れになってきています。

つまり、2020年以降は、もともとプロダクトとして提供していた機能と求められるものが違うものになってきていることがおわかりいただけるかと思います。

当社は2010年頃にファンクラブ事業に参入し、オープン型に本格的に取り組み始めたのが2020年頃です。現在は、Web3やメタバース、NFTといった今後の技術の可能性が盛んに議論されている状況です。

当期の成長戦略

今期の成長戦略のポイントを3つ挙げています。

1 クリエイター領域の拡大

スライドには、第2四半期のクリエイター領域の拡大について記載しています。冒頭にもお伝えしましたが、面白いものを一部ご紹介します。

例えば、琉球放送のラジオ番組のファンコミュニティのようなものが生まれました。また、「D1グランプリ」というドリフトのグランプリのファンサイトもオープンしています。このように、インバウンドで増えているものがあるというのは、非常におもしろい状況だと思っています。

顧客基盤の拡大を目的とした投資

少し毛色の違う話をします。先日、Voicyさまへのマイナー出資についてリリースを出しました。なぜ、このようなことを行っているかと言うと、やはり日本でのクリエイターエコノミーをどのように盛り上げていくかが非常に大事だからです。

提供しているサービスは異なりますが、音声を扱うことに長けており、インフルエンサーや文化人に強いVoicyさまと、音楽アーティストや俳優、声優などに強い当社が組むことで、シナジー効果がお互いにあるのではないかと考えています。

2 有料会員一人あたりGMVの向上

GMVの向上についてです。当然ながら、経営的には単価を上げることが非常に重要です。スライドには、ファンクラブの有料会員1人あたりのGMVの推移を記載しています。左側がすべてのFCサイトの推移で、768サイトの平均月額単価は400円弱となっています。一方、右側は今期開始したFCサイトの平均月額単価で、600円台となっています。前期も600円台でした。

最近は、オープンするサイトの単価が昔よりも高い傾向があります。何年も続いているサイトはずっと300円のままであることもありますが、最近は500円、600円が当たり前で、1,000円を超えてくる場合もあります。また、3,000円コースと500円コースのように、複数のコースがあるものもあります。

したがって、単純に月額費用だけを見ても、GMV向上のポテンシャルが非常にあるとおわかりいただけるのではないかと思います。

Bitfan Pro 複数コース・プライムコース展開

複数コースやプライムコースの事例をご紹介します。スライド下段に記載しているVリーグの事例がその1つです。大相撲も同様のコース展開だったのですが、プラチナ会員は20名限定で、年会費11万円とけっこう高額なコースがあります。このようなものも即時完売しています。スポーツの場合は、人数を限定することでプラチナシートとセットで提供することができます。

最近、スポーツに関しておもしろいと思っていることがあります。そもそも、スポーツチームにとって、ファンクラブはマネタイズをメインで考えるものではありませんでした。そのような過去から、先ほどお話ししたVリーグのチームなどにおいて「このようにすればコアなファンからきちんとお金をいただきつつ、満足度の高いものを提供できる」という事例を作ることができています。これは非常に手応えのある展開ではないかと思っています。

3 クリエイターファーストな体制構築

今期の成長戦略の3つ目は、クリエイターファーストな体制構築についてです。先ほども言ったとおり、あらゆるジャンルのクリエイターがいる中で、「なにを開発すべきなのか」「どのような機能が必要なのか」というところは、当社単体ではなかなか判断できません。

当社は、営業担当者やディレクターが、お客さまや事務所に寄り添って仕事に取り組んでいる会社ではあるものの、ニーズをさらに吸い上げていく必要があると考えています。

そこで、当社では「オーナーサクセスチーム」と呼んでいる、カスタマーサクセスを実現するためのチームを組成して、「次はどのようなものが必要ですか?」「メタバースはいかがですか?」というようなことを率直にどんどんと質問し、「いや、私は興味ないです」「私はこのようなものが欲しいです」というやり取りを日々行い、それらを開発にフィードバックすることで、優先順位を決めていく流れになっています。

Bitfan 機能アップデート

現在「Bitfan」の中には、スライドに記載しているような機能があります。そのうち、オレンジ色や赤色で印がついているものは、この第2四半期にリリースしたものです。

Bitfan 2Qの機能アップデート

今回の最も大きなニュースは、LINEさまのブロックチェーンを使って、NFTのサービス提供を開始したことですが、その他にもいろいろと取り組んでいます。

Bitfan 直近2期の主なアップデート

第2四半期のアップデートについてです。少し細かいですが、直近2期の主なアップデートとして、スライドに記載しているようなことに取り組んでいます。今後、この手数をどのように増やせるかが、開発サイドとしては生命線になると思っています。

そしてご覧のように、前期の第4四半期で取り組んできた項目はすでに終えており、そのような意味では、かなり効率よくいろいろなサービスを提供できているのではないかと思っています。

また、今期中にまだ大きなサービスのアップデート予定があるため、このあたりは今期のいろいろな開発達成の中で評価できる点ではないかと思っています。

Bitfan オウンドメディア展開

オウンドメディア展開についてです。先ほどお伝えしたように、実際にクリエイターと当社の編集チームが直接お話しして、「ファンの思いをどのように捉えていますか?」というようなことを聞いたり、「困っていることはないですか?」「あなたのクリエイター活動を『Bitfan』はどのように助けることができていますか?」というようなことを掘り下げたり、インタビューしたりすることを実施しています。

クリエイターファーストの開発に活かすことはもちろんですが、これを世にリリースすることによって、既存のファンの方々が「私の推しのアーティストは、ファンのことをそのように考えていたんだ」といったことが、かなり伝わるようになっています。そのような副次的な効果もあるため、今後も続けていきたいと思っています。

Bitfan 3Dビデオ配信&NFTサービスの開始

第2四半期に実施した、新しい取り組みについてご説明します。1つは先ほどお話ししたNFTで、もう1つはARやVRを活用した取り組みです。

AR/VRについては、スライド上段に記載のとおり、山崎エリイさんのファンクラブで実証実験を実施しました。ARによって、実際に目の前に山崎エリイさんが出てきて、ぐるぐると視点を変えてもいるというものです。Twitterで観測していたところ、非常に好評でしたので、今後の実用化とマネタイズを検討している状況です。

Bitfan Pro ライブ配信実績

当社の案件は、プラットフォームの提供だけではありません。スライドに記載しているような、社内のカフェスペースでのライブ配信の制作が年々増えていっています。

Bitfan Pro トータルサポート実績

今は、オンラインとオフラインのハイブリッドに移行しており、ファンミーティングやライブをそのように実施することもスタンダードになりつつあります。そのため、ライブ配信だけではなく、オフラインのファンミーティング自体を制作することも行っています。

そこで、「ではグッズも作りましょうか」ということになり、当社にもグッズ制作チームが1年か2年ぐらい前に発足しました。少しずつ取り組んでいましたが、最近はこのようなトータルサポートが着実に増えています。今はまだ業績に大きなインパクトが出る規模ではありませんが、今後はこのあたりを伸ばしていきたいと思っています。

OMEGA X プロジェクト進捗状況

新人K-POPアーティストの日本向けのマネジメント権を獲得しています。「OMEGA X」というグループで、ついに日本でデビューし、8月26日に来日しました。今はアメリカなどでツアーを行っている状況です。

まだ新人でデビューしたばかりということもあり、売上へのインパクトはまだ来期以降の話になりますが、南米などでもツアーができるぐらいになっているというのは、よい状況だと思っています。

2008年:1,000 True Fans

最後に、私の考えているファンビジネスについて、今取り組んでいることだけではなく、「このような世界観がある」というところをお話ししたいと思います。

クリエイターエコノミー界隈では、ケビン・ケリー氏が書いた「1,000 True Fans」というエッセイが非常に有名です。2008年頃に書かれたものですが、その内容は先見の明が非常にあると感じる内容になっています。例えば「クリエイターは1,000人の真のファンがいれば生計を立てられるようになる」という文章があります。その他にも、「ミリオンセラーやそのようなことは必要ないのです」ということを言っています。

実際には、この時代はまだSNSやスマ―トフォンなど、個人のデバイスがそれほど繋がっておらず、実現が難しかった時期です。しかし、今はこのお話が非常によくわかります。私もこのエッセイを知った時に、「まさにこれがやりたいんだ」と思い、社内でもこのエッセイを引用して、何度も話しています。

2020年:100 True Fans

しかし、1,000人のファンを得るのはけっこう難しいものです。2020年には、元アンドリーセン・ホロウィッツのリ・ジン氏が「100人でもいけるのではないか」ということを言い始めています。これは「結局のところ、クリエイターが暮らしていくには年間10万ドルくらい稼げばよい」ということです。

また、ケビン・ケリー氏は「ファン1人あたり年間100ドル」と言っていたのに対し、リ・ジン氏は「年間1,000ドルを支払ってくれるファンが100人集まればよいのではないか」と言っています。

今、私が取り組んでいる感覚でお話しすると、インディーズのアーティストの支援では、実際にそのような事例もあります。しかし、やはり100人で1,000ドルというのは少し単価が高すぎます。ですので、私は200人から300人ぐらいのファン数で成立する世界観を目指していきたいと思っています。

実際に、シンガーソングライターの方がアルバイトを辞めて、200人から300人のファンによってアーティスト活動に専念できるようになってきています。事務所などに所属するのではなく、独立して全部1人で取り組めば実現できるという状態ですが、この世界観が今目の前まで来ています。私たちは、そのあたりがクリエイターエコノミーの未来であると考えています。

Bitfan のプロダクトビジョン

今は外に向けてあまり大々的には言っていませんが、オープン型の「Bitfan」のプロダクトビジョンとして、現状はスライドに記載している4つを考えています。今後、少し変わるかもしれませんが、順番にご説明します。

1点目は先ほど言ったように、事務所に所属し、マネージャーがついていると、どうしてもその人たちを養えるぐらいの稼ぎを得なければなりません。そうではなく、1人でも簡単に運用できるこの「Bitfan」というツールがあれば、ファンの規模が200人から300人でも生きていけます。この「1人でできる」ということが、まずは大事だと思っています。

そして、クリエイターの種類も非常にさまざまで、オンライン握手会をしたい人もいれば、したくない人もいます。自分のカラーに合う方法がいろいろとあって、それを取捨選択できることも非常に重要です。「絶対にこのような運用を行ってください」とするではなく、あらゆるアーティストやクリエイターが選択して使えるように機能を増やしていくことを2点目として考えています。

3点目は、長期に渡る活動を可能にするために、ファンの熱を短期的に高めてしまうのではなく、スーパーファンからは月額でどのくらいのお金を貰い、通常のミドルクラスのファンからはどのくらい貰うのかを設計し、それをどのように可能にするかというところで、これが非常に肝になると思っています。

しかしながら、4点目に挙げているように、やはりファンの毎日を彩るサービスを提供しなければいけません。現在も「本当に私はこのために毎日を頑張ることができました」「このライブ配信を見るために1週間頑張ることができました」というコメントをよくいただきます。アーティストやクリエイターのほうだけを向くのではなく、お金を支払うファンの毎日を彩るサービスを提供することが、ベースとして本当に大事なことだと思っています。

Web3関連技術とファンビジネスの可能性

ファンの目線に立つと、Web3関連技術については「実際のところどうなの?」と思うところがあります。今回、今田美桜さんのファンクラブにおいて、第1回の限定イベントの記念としてNFTを発行しました。しかし、このNFTはチケットを買った人に付いてくるかたちで、私としては「これがファンのためになるのかな?」という違和感がありました。やはり、NFTのような「高騰するものを目指す」「お金が先に来る」というものは、ファンビジネスに直接入れるのは非常に問題があるのではないかと思っています。

一方で、「伝説となったライブのチケットの半券をずっと持っている」ということや、そのような活動やファンクラブの会員証の1番にずっとこだわり続けて、「私は20年間この番号です」ということは今までも普通にあったことです。

これを「Web3関連技術がどのように表現していくか?」ということですが、参加証明をNFTコレクションで披露することも、ファンにとっての満足度につながると思っています。ですので、NFTを使うことは可能ですが、使い方を間違えないようにしたいとすごく思っています。

メタバースも同様です。私も1年以上ずっと、「メタバースは何をどのようにすればいいのだろう」という議論を、外部の会社とけっこう交わしています。ベースとしては、先ほど言ったとおり、ファンビジネスとの相性はよいと思っています。理由の1つは、ファンクラブの名称の多くにメタバースを連想するような名前が付けられていることです。

もう1つは、やはりアーティストが「世界観を作り込みたい」と考えるためです。ファンも「推しの世界観に没入したい」と考えているため、いわゆるVRのようなものは非常に嬉しいものとなります。また、例えば推しの世界観に溢れたメタバースワールドができた場合には、「仕事から帰ると毎日そこを歩き回り、なにかをリセットする」というようなことが未来の現実にはあり得るのではないかと思っています。

ただ、これがビジネスとしてどのように成立するかという点については、入口を間違えてしまうと想像以上に大変なことになると思います。そのため、ファンが十分に喜び、かつアーティスト本人もそれを実施したいと思っているものがどのようなラインにあるのかを見ながら、今後もこのような技術を取り入れていきたいと考えています。

ファンビジネスの更なる可能性

もともとファンクラブやファンビジネスは、アーティストを中心に日本で始まりました。私は、いろいろなモノ、コト、ヒト、それらすべてがファンを中心とした経済圏になっていると感じています。

スライド上側に記載している「稼げる個人の増加」は、まさにクリエイターエコノミーのことです。今まではビデオをアップロードするのが大変でしたが、TikTokであればスマ―トフォン1つで実行できるようになっています。このように活動の敷居がどんどんと下がり、クリエイターの数が増えている状況において、それをビジネス化するツールが重要になってきています。

一方で、スライド右側に記載しているように、SNSは情報を広めるためにはよいツールですが、炎上したり、いがみ合ったりという面があるため、「濃いファンだけが集まれるコミュニティが非常に重要だ」というニーズが日に日に高まっている気がします。

実際に、当社のプラットフォームを使っているクリエイターの中にも、「あまりSNSはしたくないけれど、このようなことがしたかった」とライブ配信で言う方や、大御所のアーティストの方もおり、「このようなものが求められているんだな」と強く感じました。

そして、スライド左側の「消費行動の変遷」は、当社からまだ少し距離が遠いお話になります。例えば、クリエイターが最終的にはD2Cなどの自分のブランドを持ったり、企業や商品のファンクラブのようなものができたりすることはあり得ると思います。だんだんとマスの消費からストーリー消費、共感消費になっていくため、ファンマーケティングなどが重要になってくると思っています。

当社が今、アーティストやクリエイターを中心に行っていることやそのようなツールの先には、いろいろな経済圏が広がっています。そこへ参加していく中で、さまざまなものにツールを転用できるのではないかということを、ぼんやりと世界観として考えています。私からの説明は以上です。

質疑応答:社名の由来について

「『SKIYAKI』の社名の由来について教えてください」というご質問です。

これは坂本九さんのビルボードでヒットした曲「上を向いて歩こう」の洋題が「SUKIYAKI」だったというところから、「当社もゆくゆくはグローバルにサービスを展開していき、世界をとろう」という意味で「SKIYAKI」という社名としています。

今回、海外戦略についてあまり触れることができなかったため、ここで少しご説明します。一応、「Bitfan」のプロダクト自体はすでに多言語化に対応しており、今はグローバルな銀行口座で出金できるようなサービスとの提携など、環境を整えている状況です。

ただし、実際に海外のクリエイターに「Bitfan」を使ってもらうところまでは、まだ力がぜんぜん及んでいません。ちなみに、日本のアーティストやクリエイターの海外在住のファンは一定の割合でいます。また、ドル建てでの投げ銭などもけっこう見受けられますので、まずは東南アジアを中心にアーティスト支援を展開していきたいと考えています。

質疑応答:クリエイターの獲得方法とKPIについて

続いて、「クリエイターはどのように獲得するのでしょうか? また、重要なKPIはクリエイター数でしょうか?」とのご質問です。

おっしゃるとおりで、クリエイターは今のところ、社内にいる営業の者がアウトバウンドで採っていったり、これまでにかなりの数を手掛けていますので既存のクライアントさまから「新人のこの人のサイトを手掛けてほしい」というようなお話をいただいたりします。他にも、コーポレートサイトから「比較検討しているところです」というお問い合わせを受けることもあります。

一時期、SNSでのマーケティングなども行っていたこともあるのですが、やはり商材として「SNSの広告で見たから使ってみようかな」という感じではなく、今は同種のサービスも多いため、まずは比較検討のために話を聞くという流れが多いです。

今のところはまだ、そのような口コミによる拡大と「この人はまだファンサイトを作っていないよね」と新しいアーティストをアウトバウンドしていくところがメインの活動になります。

ただ本当は、やはり「あの人も『Bitfan』をしている、この人も『Bitfan』をしている」というように、アーティスト間やクリエイター間での口コミが生まれていくと非常に強いと思っています。「なぜ、当社に問い合わせをいただいたのですか?」「実は、あの人が使っているのを見て自分も使ってみようと思いました」というお声もいただいていますので、もっとバイラルが生まれるといいなと思っています。

「KPIはクリエイター数でしょうか?」というところについては、有料会員数とクリエイター数のどちらも大事ですが、1人でも多くのクリエイターの支援をしたいと思っているため、クリエイター数が増えることは重要です。

例えば、ファンクラブの会員が20人のクリエイターさんであっても、1万人のクリエイターさんであっても、SKIYAKIのプラットフォームを使えるということを目指していきたいと思っているので、クリエイター数は非常に大事なことだと思っています。

質疑応答:グッズ制作について

「グッズも御社が作るのでしょうか?」というご質問です。

先ほどトータルでサポートしていますとお伝えしたとおり、グッズも当社が提案して作っているケースもあります。

質疑応答:クリエイター育成や支援に関する事業展開の可能性について

「今後、クリエイター支援にとどまらず、育成に手を出す予定はありますか? また、SNS上のインフルエンサー支援や育成などの事業展開、M&Aなどは検討していますか?」というご質問です。

非常によいご質問で、ここは大変大事なポイントだと思っています。ファンクラブ運営について、音楽アーティストでは裾野が広がっていうにもかかわらず、それ以外でなぜ広がらないかというのは、アーティストのファンクラブはかなり多くあるため、なんとなく「これをすればいいんだ」というイメージが湧くからです。

しかし例えば「eスポーツチームはなにをするべきなのか」「インフルエンサーはどのようなファンクラブを作って、月額いくらでなにを提供すればいいのか」などというのは、前例がないとなかなか難しいというところもあります。

それに加えて、「そのファンのエンゲージメントをどのようにマネジメントするか」のようなところも、コツが必要です。実際のところ、海外には、このようなクリエイター支援まで行っているスタートアップなどもあります。

今のところ、人海戦術で行うというのは、なかなか見えていない状況ではあるのですが、やはりまずはツールとして、「あなたは次にこのようなことをしたほうがよいですよ」など、サポートしたりサジェストしたりするような機能というのは、今後行っていきたいと思っています。

現状ですと、今営業が担当で立っているような案件などでは、一緒に伴走して「次はこうやりましょう」のようなところと、どういうふうに増やしていくかは、今も検討して行っています。

またもう1つ別に行いたいと思っているのは、「Bitfan」のクリエイター同士で何か事例の紹介をし合うようなコミュニティを作れないかというところです。昨年は、オーナー、クリエイター、アーティスト、クリエイターを集めて勉強会のようなものを当社主催で行ったりなどというのはあるのですが、クリエイター間でこれをどのようにできるかどうかについては考えていきたいと思っています。

ただ事業展開やM&Aまで見えているかというと、まだそこまでの規模は見えていないというところではありますが、今後、さらに何千人などに増えていった場合には、そのようなところは考えられると思います。

似たもので言うと、ライバーさんのエージェンシーなどです。ライバーは最初に「どのようにしてライブ配信でお金を稼ぐのか」というところをマネジメントしたり育成したりしていると思うのですが、アーティストだとなかなか難しいのですね。

一律にそのような指導をするという、投げ銭の稼ぎ方を教えるようなことでもなかったりするので、いきなりそのようなインフルエンサー支援の事業展開というのは、まだ少し見えてはいないという感じです。

質疑応答:「Bitfan」と「Bitfan Pro」の違いについて

次に「『Bitfan』と『Bitfan Pro』の違いはなんでしょうか?」というところですね。

先ほどお伝えしたとおり、「Bitfan Pro」はサイトのデザインにかなり凝っています。やはりアーティストの方だと「このデザインでなくてはいやだ」ということもあり、非常にこだわりが強い方もいらっしゃるため、そのような違いがあります。

やはり今は、基本的には「Bitfan」のほうが機能が多かったり、またメニューの追加や削除を自由にでき、やはりデザインをこちらで作ってしまうと、なにか変えようとした時に当社のクリエイターが必要になってくるので、そのような違いがあるというところです。

また、実はこれをハイブリッドで使うケースも増えてきています。例えば「『Bitfan』のグループチャットの機能も使いたい」などについては、技術的に可能になっています。そのような意味では、だんだん「デザインだとこっち、コミュニケーション機能重視だったら『Bitfan』」という感じでもなくなっており、お客さまに合わせて提供できつつあるので、非常によいことだと思っています。

質疑応答:新型コロナウイルスや景気変動の影響について

「新型コロナウイルス、為替、円安、物価上昇、インフレの影響はありますか?」というご質問です。

大まかに言うと、このような景気の変動に非常に強い事業だということは、この数年感じています。

新型コロナウイルスについてお伝えすると、やはりイベントができないというところで、イベントの関連会社などは大打撃を受けました。しかしコストマネジメントをきちんと行えば、そこまでの影響はなく、先ほどお話ししたとおり、逆にECが跳ねたりというところがあります。わりと新型コロナウイルスのよいところ、悪いところというのを吸収し合うような関係性にあるので、そこまで大きな影響はありません。

為替については、少し幸いというか、まだ国内を中心として行っているものなので、お客さまもアーティストも国内だと、売上という意味での為替の変動を受けることはあまりないと思っています。

ただ、サーバーはAWSを使っていると、当然単価が上がるところはあるので、このあたりで影響はありますが、全体の中におけるサーバー費用の割合の上昇分のようなことでいうと、ほぼないということです。物価上昇の件も、それほど影響はないと思っています。

質疑応答:企業のファンクラブについて

「企業などのファンクラブを作ることはできますか?」というご質問です。

はい、できます。企業そのものではあまりないのですが、商品のようなものでいうと、関西のお菓子のファンクラブなどの事例はあります。ただこのあたりは非常に、それこそビズデブに近いと思っています。

「じゃあ企業のファンクラブでなにを展開しますか」というところが難しいところで、当社もそのようなところを、どうやって一緒に伴走していくのかというところが、今後の課題だと思っています。

今表示しているページにあるように、そのような企業の、特に今の話ですと左側の「ファンマーケティングの重要性」というところだと思うのですが、これは直近のすぐできそうな課題です。私も結構企業サイドの方とこのようなお話をしたことがあるのですが、やはり商品企画、いわゆる大企業さんの商品の決め方などの組織的な話です。

「ファンがこう言っていますよ」といった時に、きちんとそれがマーケティングや商品企画に落とし込めるのかというのは、超えなければいけないハードルが多いと思っています。将来的にはそのような可能性も非常にあると思っています。直近ではまだ難しいですが、作れます。

質疑応答:競合他社について

続いて、「競合はどこでしょうか?」というご質問です。

競合は非常にさまざまな会社があると思っています。今はもう観測しきれませんが、おそらく同種のサービスは20個から30個あり、オンラインサロン的なものまで含めると、30個ほどに増えていっていると思います。だいたいファンクラブ系のもので、小さいものも含めると20個ぐらいあるのではないかと思っています。

しかし、中でも基本的に競合と言えるのは、上場しているエムアップホールディングスさまの子会社であるFanplusと、先日上場した「Fanicon(ファニコン)」のTHECOOさまの2社が挙げられます。また、アカツキさまもCRAYONという子会社を作っていたりなど、他にもいろいろあります。

質疑応答:BtoC企業のファンクラブについて

「今後、BtoC企業でもファンクラブは増えるのでしょうか?」というご質問です。

正直なところ、当社にはまだそこまでのご相談はきていません。私が感じているところでは、ファンマーケティングの上手な会社というのは、けっこうあると思います。ネスレさまや広島東洋カープさまなどのようなところは、やはりうまくファンマーケティングが行える人がいてできているようなところがあります。

やはり一般的にみんながみんなできるという感じでもないと思っているので、ここは増えていってほしいですし、当社もそこになにかお手伝いしたいと思うのですが、まだ急激にそのような動きは難しいと思います。

質疑応答:メタバースについて

「メタバースの計画はどれぐらいのペースで進められるのでしょうか?」というご質問です。

いつというのはまだわかりません。結局、今はまだ実際にやられている狭義の、いわゆる空間を作って歩き回るようなメタバースでうまくいっているのは、そんなにないと思っています。

VTuberのライブですと、もともとVTuberには3Dのモデリングがあるため、空間に入ればそれに近づけるという、わかりやすいメリットがあります。例えばアーティストが、3D空間でどのように存在するかというと、理解が進むには時間がかかると思っているので、今年はまだそこまでではなく、来年以降だと思っています。でも引き続き、どのような可能性があるかというのは、ずっと協議を行っている状況です。

質疑応答:山崎エリイ氏とリアライズ・モバイル・コミュニケーションとの配信について

そこに関連して、先ほどのAR/VRです。山崎エリイさまのリアライズ・モバイル・コミュニケーションさまとの配信の点で「よさと難しい点、手応えなどを教えてください」というご質問です。

山崎エリイさまのファン層は、ITリテラシーが非常に高く、おそらくPCのスペックも高かったため、非常にサクサク動いていました。しかし、どこまでスムーズに表現できるかということと、ポリゴンをどこまで表現できるかというところは、トレードオフなのです。そのため、お金を取って行ってみても、「私のスマホではほとんど動きませんでした」ということが起きると思います。

やはりそのあたりは、あるスペック以下は切り捨てるなどという割り切りをした上でチケットを販売しないと、あとでクレームが発生すると思っています。

質疑応答:現在の株価について

「現在の株価についてどう思われますか? よい材料を出してほしいです」というご質問です。

今日お話ししたとおり、当然、私ももっともっと、マーケットのポテンシャルは大きなものだと思っています。Web3なども可能性がありますし、手が尽きたという感じはまったくなく、行うことが多いという感じです。

ただ、株価という点でいうと、やはり市場でどう評価されるかというところです。ただひとつ、原則として思っているのは、中長期的に見て、ファンのため、アーティストのため、クリエイターのためになっていることをしっかり行うということがベースにあると思います。きちんと話題にも乗りつつ、ただその主従を逆転してしまうと問題だと思っています。

例えば、AR/VRがうまくいったから、「これをガンガン広めていこうぜ」としても、今お伝えしたような問題があるので、やはりそこを無理矢理行っても、ちょっと不幸なことがあると思っています。まずそのようなところはしっかり行っていき、長期的に株価を上げていきたいと考えています。

ただ、足元の株価ということで考えますと、今の当社のレベルでいうと、とにかくきちんと利益を積んでいくということが重要かなと思っていますので、そこはしっかり外さずに行いつつ、新しいことにもチャレンジしていこうというところです。

先ほどの営業利益の推移で見ていただくと、私もこの2年近くは、とにかく安定させないと話にならないということで、いろいろ行っていたところがあります。もう今は目を離しても、赤字転落のようなことはなさそうですので、そのような新しい取り組みについて、私もより注力していきたいと考えています。

質疑応答:分散型ファンクラブの開設について

「Web3等のバズワードがメディアで取り上げられる機会が増えています。先ほどファンを中心とした経済圏とのお話がありましたが、クリエイターを中心とする従来の中央集権型ファンクラブから、DAOやDefiのような、ファンが組織内の決定権を持つファンクラブが生まれてくるとお考えでしょうか? 『Bitfan』においても、分散型ファンクラブの開設を検討されていますか?」というご質問です。

これについては、今の当社が行っている「クリエイターエコノミー」と「推しエコノミー」とあえて社内で分けて表現しています。推しエコノミーは、「私の尊い推し」というかたちなので、クリエイターエコノミーの広義のものとは似て非なるものがあると思っているのですね。

今、当社の100万人会員がいる大半のファンクラブにおいては、このDAOや、ファンが組織内で決定権を持つというのは、非常に相性が悪いと思っています。そのようなことがやりたくてここに来ているわけではなく、とにかく「推しが今日も尊い」ようなことを求めてきているためです。

ただ、参加できる、関与できるなど参加の決定権のようなものは、ほとんど相性が良くないのではないかと思いますし、ファン同士でマウンティングが始まるのは、非常によくないため「混ぜるな危険」だと思っています。

しかし例えば投票など、「じゃあファンネームはなににする?」みたいなことを、チャット内でみんなで決めるようなことはあります。DAOが株のようなものなので、かなりしっかりしたものを明示してしまうのは、ファンの組織としてはあまりよくないのではないかと思っているので、今の文脈においての分散型ファンクラブというのは、ほぼないと思っています。

ただし、今のファンクラブではなく、例えば今後、「SDGsのこのようなテーマのファンコミュニティみたいなものを作ろう」ということが生じた時に、いわゆる推しを推すようなファンがいるファンクラブというよりは、ファンコミュニティまでに展開されていった時には可能性もあると思っています。

クリエイター同士のコミュニティの中に、なにかDAOみたいなものが取り込まれても面白いものになるかもしれないと思うこともあります。ただし、このあたりに関しても、DAOコミュニティをいろいろと見ているのですが、やはり株式会社以上に、意思決定が難しいと思っていますので、正直なところ「安易に使うのはどうなんだろうか」と思っているところです。

小久保氏からのご挨拶

みなさまからさまざまなご質問をいただきましたが、Web3への対応やDAOなど、私が今まさにどうしようかと悩んでいる部分を的確にお尋ねいただいたため、本日お話しした内容がみなさまに少しでも伝わったのだと思い、嬉しく感じています。

今後もこのような説明会を引き続き開催していきたいと思いますので、どうぞみなさま、今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。今日は長い間、ご視聴ありがとうございました。