事業内容
中山博登氏(以下、中山):本日はお忙しい中、ご視聴くださり誠にありがとうございます。毎回必ず事業内容をお伝えしているため、今回も事業内容からご説明します。
当社は大きく4つの事業を展開しています。事業分類としてはリーガルメディア事業、派生メディア事業、HR事業、その他では今年から始めた保険事業を行っています。スライド右側に売上収益構成比と営業利益構成比を記載していますが、現状で言いますと7割強はリーガルメディア事業によって構成している会社となっています。
ビジネスモデル
具体的なビジネスモデルについて、まずリーガルメディア事業からご説明します。例えば食事をする際はいろいろなグルメサイトを利用してレストランを見つけると思いますが、当社では弁護士を探すサイトを運営しており、「リーガルメディア」と呼んで事業を行っています。
ユーザーはインターネット上でサイトを探していただき、無料で自由にサイトを利用できます。我々がどこから収益を得ているのかと言いますと、法律事務所から月額定額収入として広告掲載料をいただいています。成果報酬などは一切なく、定額となっているところが特徴です。
リーガルメディアから派生したものを当社では「派生メディア」と呼んでいます。例えば、リーガルメディアの「労働問題弁護士ナビ」において、働いている方が勤務先の会社との間でいろいろと折り合わず弁護士に相談した結果、転職するケースは非常に多いです。
「それなら転職を支援している会社をそのまま紹介した方がスムーズなのではないか」ということで、別のメディアとして作ったのが派生メディアです。転職支援会社を紹介する「キャリズム」や、離婚される方はパートナーの不貞調査も行うことがあるのではないかということで「浮気調査ナビ」という探偵社を紹介するサイトも運営しています。
リーガルメディアと異なる点は成果報酬型であるところです。転職支援会社に登録し、実際に面談となった時などに成果報酬が発生し、その成果に応じて当社に収益が入ります。
HR事業は今回から「リーガル」という言葉を外していますが、もともとはリーガルメディアでお付き合いしている法律事務所が広告をどんどん出して収益を上げることで人が足りなくなることから、我々が弁護士も一緒に紹介したほうがよいのではないかということで始まった事業です。
我々が人材紹介の免許を取得してご紹介し、転職して実際に働くことが決まってはじめて年収の何十パーセントにあたる人材紹介手数料をいただきます。「リーガルHR」から「HR事業」と呼び直した理由は、弁護士に限らず職種を広げているためです。
前回、「税理士や会計士まで広げている」とお伝えしましたが、現在は弁護士、税理士、会計士という士業に加え、経理・財務・総務・人事・労務といったバックオフィス全般の職種の取り扱いも開始しました。
その他ではスライドに記載のとおり保険事業を行っています。「ベンナビ弁護士保険」という保険で、ユーザーの中でも将来的に法律家・弁護士の方に相談するリスクがあるかもしれない方に加入していただき、毎月定額の保険料をお支払いいただいています。実際に法律問題が起こった際は、我々がその保険金の中から弁護士の報酬をお支払いします。
22年10月期3Q累計(21年11月-22年7月)決算サマリー
ここからは、第3四半期の決算概要についてご説明します。まず、決算サマリーです。特徴的な数字としては、コロナ禍による影響が落ち着いたことで転職支援会社を紹介する派生メディアで求人がかなり回復してきており、前期と比べると非常に大幅な増収増益となっています。
他のところに関してはスライドのとおりです。HR事業はまだ小規模な事業でありながら黒字化を達成しており、先ほどお伝えしたとおり職種を広げているため、かなり拡大余地のある事業と感じています。
その他の保険事業はJカーブモデルで、どうしても初期段階での先行投資がかなりかさみます。今後十分に回収していけるのではないかと思っていますが、保険契約者数が一定レベルを超えてくるまでなかなか黒字にならない事業ですので、現状では投資フェーズということで赤字となっています。
22年10月期3Q累計予算進捗
第3四半期での予算の進捗です。7月に上方修正を出しましたが、こちらは上方修正を実施したものに対しての進捗となっています。もともと出していた予算に対しての営業利益、当期利益は達成している状況です。上方修正したものに対しての進捗率はスライドに記載のとおりです。
前回、「アシロは非常に弱気だ」というご指摘をいただきました。本日決算開示を行いましたが、翌日にまたがず発表当日中にということで前回の反省を踏まえて行っています。前回はコロナ禍の影響がわからないため、「保守的に見て上方修正は出さない」とお伝えしましたが、今回は少し異なっています。今回は決して弱気だから上方修正を行わないのではありません。後ほどご説明しますが、将来に向けて強気だからこそ上方修正を出していないことをご理解いただきたいと思います。
(参考)22年10月期4Q業績見通し
第3四半期から第4四半期にかけての見通しです。先ほど保険事業において事業投資などを行っているとお伝えしましたが、上方修正を出さない理由として、来期以降も継続的に年次成長率130パーセントを確実にこなしていくことが株主さまとのお約束ではないかと思っております。
また、我々はさらなるアップサイドも狙っていきたいと考えています。前年度から成長率130パーセントを達成できたことから考えると、今期中に営業利益を積み足すことも重要になりますが、それ以上に来期以降のさらなる成長に向けて投資をしっかりと行うことも重要なのではないかと思っています。
こちらは来期以降に跳ね返ってくる数字になりますので、今期に関しては第3四半期、第4四半期にかけてしっかりと投資を実施していきたいと考えています。
(参考)22年10月期 通期業績見通し
通期の業績見通しです。上方修正を実施したまま、据え置きとしています。弱気が続いているため代わりにと言うわけではないのですが、初めて配当をご用意しました。我々は「関わってくださった方を誰よりも深く幸せにしたい」という理念で行っており、ステークホルダーである株主さまにも当然幸せになっていただきたいと思っています。
事業として年次成長率130パーセント伸ばす約束に加えて、株主さまがさらに幸せになるためにできることはないかと考えた時、今の我々の財務基準であれば配当を出した上で投資も十分に行っていけると判断しました。来期以降も配当性向30パーセントを目安に続けていきたいと考えており、より一層前向きに株主還元を進めていきたいと思います。
もちろん、大前提として事業をしっかりと伸ばしていきます。我々の手で株価をあげることだけはなかなか難しいのですが、株価がしっかりと上がるように事業を進め、それ以外でできる株主還元も実施していきたいと考えています。
事業別売上収益(四半期推移)
事業別売上収益です。スライドに「Googleアルゴリズム変更の影響を受けて派生メディアが若干減速」と記載がありますが、第2四半期は転職(市場が活況となる)時期でGoogleアルゴリズム変更の影響以上に数字がよくなるため、そのリバウンドで第3四半期は第2四半期に比べると若干数字が下がりがちです。
リーガルメディアに関しては引き続き純増し続けており、ストックが伸び続けている状況です。また、その他の保険事業で収益を取り込み始めたことが特徴的なところです。
ストック収益/ストック収益比率(月次推移)
リーガルメディアのストック収益比率です。保険事業もストック収益のため今後入ってきますが、こちらはまだ小さい数字であるため、リーガルメディアのストック収益比率63.6パーセントがメインとなっています。
コスト構造①(科目別 四半期推移)
コスト構造です。保険事業を中心に第3四半期、第4四半期にかけて新規事業への投資を行っていくとお伝えしましたが、第3四半期においてすでに投資を始めているため、コストが上がり始めています。
コスト構造②(事業別 四半期推移)
実際に新規事業にどのくらいのコストを投資しているのかについてご説明します。スライドの棒グラフの緑色は既存事業にかけたコストで、赤色は新規事業にかけたコストです。新規事業は保険事業とHR事業になりますが、HR事業に関しては職種を広げましたので、マーケティングコストとして積極的に投資を行っています。
保険事業やHR事業に投資しない場合は、第2四半期と同等の営業利益を十分に出していけたのではないかという数字感になります。しかし、先ほどお伝えしたとおり、来期以降により高い成長率を目指すためには足元の営業利益を出すことも大事ではありますが、それ以上にしっかりと投資を行うことが重要ではないかと考えており、新規事業へのコストを増加させています。
営業利益(四半期推移)
営業利益です。第3四半期は第2四半期に比べて保険や新規事業に投資した分、若干減益となっています。これは計画的投資を行った結果であるため、事業構造についてご心配いただく必要はまったくありません。
事業別営業利益(四半期推移)
事業別営業利益です。リーガルメディアは営業利益がしっかり伸びてきており、派生メディアは第2四半期がよいため、第3四半期でリバウンドを受けている状況です。また、その他事業で投資を始めていることが営業利益に影響を与えています。
22年10月期 3Q事業ハイライト
事業のハイライトです。リーガルメディアに関してはこれまでどおり順調に成長しています。ただし、第2四半期にお伝えしたとおり、リーガルメディアの「弁護士ナビシリーズ」を新ブランド「ベンナビ」へ移行し、「ベンナビ離婚」「ベンナビ相続」として統一していくことをリリースしましたが、ブランドを統一するまではかなり慎重に行わないとリスクがあるため、新ブランドへの移行については来期以降に移す予定に変更しています。
派生メディアはGoogleアルゴリズムアップデートの影響が若干ありましたが、ほぼ影響は受けていない状況です。新規メディアとして転職の「キャリズム」や探偵のサイトなどがありますが、こちらに関しても他の領域の立ち上げで投資を進めています。
HR事業は先ほどお伝えしたとおり、会計士・税理士だけでなくバックオフィス全般にまで職種を広げています。マーケティングを積極的に行っていくことで、さらに成長の速度を上げていく準備を進めています。
保険事業は投資期間ではありますが、契約者数をしっかりと増やせるように投資を行っている状況です。
【リーガルメディア】掲載枠数/顧客数
リーガルメディアです。第3四半期にかけて顧客数・掲載枠数ともに、前年比約30パーセント増と非常に順調に成長を続けています。このペースのまましっかり成長していきたいところです。
(参考)リーガルメディアの収益モデル
リーガルメディアの収益モデルについてです。開示事項として主要顧客数を出していますが、1顧客が複数の掲載枠に掲載されたりするため、基本的には「枠数×単価」としています。枠数の月次の開示は行っていませんが、収益は顧客に紐づくというよりは、最終的には枠数に紐づくモデルとなっています。
(参考)リーガルメディアの顧客基盤及び市場のポテンシャル
今後のリーガルメディアの市場や弁護士の領域についてです。我々のメディアはまだお客さまを増やせるのかという点をご説明します。法律事務所は日本全国に1万7,722事務所あり、当社と取引しているのは723事務所で全体の4.1パーセントですので、まだまだ開拓余地がある事業領域でビジネスを行っています。
(参考)弁護士数の増加による市場拡大
事務所が増えるだけでなく、弁護士の数をさらに増やすべきだということで国全体として司法改革を行っていますので、弁護士の数も増えていく見込みです。プレイヤーが増えるということは、市場規模も広がっていく可能性が高まるため、十分な追い風の中でビジネスを行っています。
【派生メディア・HR事業】問合せ数及び新規登録者数
派生メディアとHR事業に関しては、登録者数や問合せ数が収益の肝になります。派生メディアは前年度からかなり回復してきました。第2四半期は数字がかなりよくなる時期ですので、第3四半期は第2四半期に比べると若干下がっていますが、前年度と比べると大幅な増加となりました。
HR事業の新規登録者数についても大幅な増加となっていますが、こちらは職種を広げていますので、さらに増やせるのではないかと見込んでいます。
(参考)派生メディアの収益モデル
派生メディアに関しては、1件の問合せ単価や登録単価などが決まっており、その問合せ数に応じて収益が決まるというモデルです。
(参考)HR事業の収益モデル
HR事業に関しても先ほどお伝えしたとおりですが、我々が転職先をご紹介し、転職が決定して入社すれば我々が収益を得るモデルになっています。
(参考)保険事業の収益モデル
保険事業は月額の保険料が定額で決まっており、保有契約件数が伸びれば伸びるほど収益が上がっていくモデルです。
新たな株主還元方針の導入
配当についてです。我々としては「アシロに投資してよかった」と株主さまに思っていただけるように、株価でも公募の価格を意識しつつ、試行錯誤しています。
結果が事業に帰結していくため、事業を伸ばす努力をしっかり行いながらも、「やれる株主還元」は積極的に行っていくことで株主のみなさまに幸せになっていただきたいと思っています。我々の内部留保や現金などのバランスを考えても、十分な配当を出すことができるのではないかと考えた結果、今回、株主還元として配当を予定しています。
先ほどお伝えしたとおり、来期以降も増配を続けていきたいと考えています。また、この水準に関わらず、さらなる株主還元を行っても成長を維持できると思った場合は、もっと積極的に株主還元を行っていきたいと考えています。
四半期決算(BS/CF)
BSについてご説明します。現預金は17億円ほど積み上がっています。有利子負債、社債などを発行しており、売上収益は5億6,500万円ほどありますので、差し引いたネットキャッシュは12億円ほどあることになります。
我々は上場に関する準備などのコストで1度だけ赤字になったことがありますが、事業投資で赤字だったことはなく、そこまで現金を毀損させる事業は行っていません。これだけキャッシュリッチで自己資本比率も十分に高いのであれば、配当を出すことができると結論づけていますので、「投資に回せるのか」という心配も必要ないと考えています。
質疑応答:海外の機関投資家の相当株数の保有について
分林里佳氏(以下、分林):「海外の機関投資家が相当株数を保有したいというIRについて、内容を具体的に聞きたい」というご質問です。
中山:具体的にどのような海外投資家が保有してくださるのかはお答えしかねますが、もともと我々の大株主であるJ-STARというPEファンドがあります。ファンドは「ここまでにこのファンドを閉じて、ファンドを清算する」というスケジュールが決まっています。そのため、J-STARでは、当社の株に関しても売らなければいけないタイミングが決まっています。
しかし、決まったタイミングで、短期間で一気に市場で売却されるとなると、株価にも影響がありますし、今お持ちいただいている個人投資家さまにも大変ご迷惑をおかけする可能性があります。したがって、我々のほうでもJ-STARの持っている株式を長期的な目線で代わりに持ってくださる投資家を探しており、今回はその一環ということです。
引き続き、J-STARの株式を中長期的かつ安定的に保有いただけるような株主さまを探し、我々の株主が安定するための施策を行っていきたいと考えています。
質疑応答:掲載顧客数鈍化の要因について
分林:「掲載顧客数が7月、8月と鈍化しているように見えますが、季節的要因でしょうか?」というご質問です。
中山:顧客数が伸びていないという心配もありますが、先ほどお伝えしたとおり、リーガルメディアは掲載枠数に売上が紐づいています。
例えば、既存のお客さまは723事務所ありますが、これらのお客さまが新規でいろいろな地域・事件に掲載したいという数が多いと、「新規の顧客は増えていないが、掲載枠数は伸びている」となることもあります。顧客数が伸びていないから売上が伸びていないとは、一概には言えません。
ですので、そこまで心配していただく必要はありませんが、実態として8月は営業が若干苦戦する月でもあり、実際に苦戦しました。8月はお盆がありますが、昔はお盆の時期が決まっていたため、決まった時期に休みをとっていました。しかし、いろいろな働き方が広がったため、休みの幅がとても広くなりました。
我々も営業活動を行いたいのですが、お客さまである弁護士が休みのことが多く、8月はなかなか営業活動をかけられなかったため、若干伸び悩んでしまった部分もあります。
しかし、我々が戦っている市場全体から見れば我々はまだ4パーセント強のお客さまとしか契約していません。世の中には法律事務所はたくさんありますので、そこまで大きく鈍化していくことはないと思っています。
質疑応答:市場の展望や現状について
分林:「市場の展望や現状について、会社の見解を具体的に聞かせてください」というご質問です。
中山:先ほどご説明したとおりではありますが、弁護士の人数がまだまだ増えますので、マーケットのサイズが比較的伸びていきやすい領域でビジネスを行っています。また、我々の事業は「円安もインフレも関係ない」というお話を掲示板などで時々見ますが、実際にそのとおりで、円安もインフレもまったく関係ありません。
リーマンショックの時も弁護士のマーケットはシュリンクせず、不況に対して非常に強いです。唯一市場がシュリンクするかもしれないと思われたのが、新型コロナウイルスの感染拡大の第1波の時です。この時は裁判所が閉まってしまい、裁判ができず、案件をこなせなくなってしまいました。
これはかなり稀な事態かと思いますので、市場としてはプレイヤーが増えて十分に伸びていくと考えています。加えて、不況や不安定な世界経済にも強いのが弁護士領域の特徴だと思っています。
質疑応答:足元での業績について
分林:「足元での業績について教えてください。月次の顧客数の伸びが鈍化しているように見えます」というご質問です。
中山:我々の開示や決算が毎回弱気で心配を与えてしまうのですが、「中山はすごく強気なんだ」「ものすごく投資しているんだ」と思っていただいて問題ないと思っています。
既存事業の伸びに特段の悲壮感なども感じていませんし、どちらかと言いますともう少し高い目線で来期も成長できるように取り組んでいます。毎回、現状高い進捗率なのに、なぜ、とご心配をおかけしているのですが、来期以降の成長を一緒に安心して見守っていただけたらうれしいと思っています。
質疑応答:事務所への依頼契約が生じた場合の報酬が設定されていない理由について
分林:「掲載料金による収入がメインで、事務所への依頼契約が生じた場合の報酬が設定されていない理由を教えてください」というご質問です。
中山:結論からお伝えすると、弁護士法72条という法律で定まっているからです。我々が弁護士に事件を紹介し、その成果報酬もしくは手数料をいただくのは違反であると弁護士法で決まっていますので、定額の料金しかいただいていません。
質疑応答:保険事業が黒字化するのに必要な売上について
分林:「保険事業は相応の売上規模にならないと黒字化しないとのことですが、黒字化するのに必要な売上はどの程度でしょうか? また、黒字化時期のイメージを教えてください」というご質問です。
中山:我々が扱っている保険は、月額2,950円です。事業停止するレベルで広告を完全に止め、事業の成長も望まない場合のコストは、数百万円中盤から後半くらいです。
仮にもう少し高く見積もって900万円と考えると、月額約3,000円いただいていますので、3,000件あれば900万円に届くことになります。それくらいの契約件数で投資・マーケティングなどを行わなければ、黒字化できる規模になると思います。
具体的にどれくらいまでに黒字化させていくのかという点については、「もっと早く黒字化させてほしい」ということであれば事業投資に回すべきだと思いますし、「進捗率が高いのにまた投資して、利益の上方修正がまったくできないじゃないか」ということであればマーケットコストを少し抑えて、利益をさらに積み増したほうがよいという結論になるかと思います。
ですので、どのような状況が好ましいかをその時々でしっかり考慮しながら事業投資を進めていくため、それによって時期が変わってくるかと思っています。株主の声なども聞きながら、黒字化させるためにどのくらいのタイミングでどれくらいの投資を行っていくかをしっかり検討していきたいと考えています。
質疑応答:高齢者が使いやすい工夫について
分林:「若い世代の利用者が多いと思いますが、高齢者が使いやすい工夫などはあるのでしょうか?」というご質問です。
中山:リーガルメディアのユーザー層は、他のインターネットサービスと比べると年齢が高く、具体的には40歳から60歳未満の方がメインで利用しています。
使いやすい工夫としては、例えばスマートフォンでサイトを見る時に、領域によっては少しフォントが大きくなっていたり、見つけやすく押しやすいようにボタンが大きくなっていたり、視覚的に見落としがないようにしています。
質疑応答:投資の詳細について
分林:「投資の内容を教えてください」というご質問です。
中山:競合もご覧になる可能性がありますので、株主のためにも内訳など投資の全貌を細かく出すべきではないと思っていますが、現時点でまったく取り組んでいない事業には一切投資していません。
先ほど保険事業やHR事業についてお伝えしましたが、今あるものの中でさらにしっかり投資を行えば十分にリターンが得られるものや果実が見えているものに、比率に応じて投資しています。僕は個人投資家が好きですので、細かく逐一ご説明したいのですが、冒頭でお話ししたとおり競合などの関係もあります。
本日はまだまだたくさんのご質問をいただいており、今日回答しきれなかったものに関しては「YouTube」などでアシロの独自チャンネルで動画配信を実施し、すべてのご質問に回答したいと考えています。その際には、競合に見られても問題ない投資内容の開示範囲を検討したいと思います。
私は「Yahoo!ファイナンス掲示板」「Twitter」「YouTube」なども基本的には全部拝見していますので、「掲示板での質問だが、僕がきちんと回答すべきだ」と思った場合にはアシロの独自チャンネルで回答します。ですので、この場には間に合わなかったものもそちらでご質問いただければと思います。
質疑応答:掲載枠数の月次での開示について
分林:「現在、顧客数の開示は月次ですが、掲載枠数の開示は四半期ごとです。顧客数も大事ですが、売上への相関がより高い掲載枠数も月次で開示してほしいです」というご質問です。
中山:おっしゃるとおり、掲載枠数は四半期ごとに開示しています。こちらも先ほどの答えと同じになりますが、競合との関係で今は開示していません。
しかし、競合などの関係性以上に株主さまに確認していただいたほうがよいと判断に至れば、また後日ご説明します。本日、僕の勝手な判断で「来月から開示します」とは言えませんので、検討させていただければと思います。
質疑応答:「弁護士ドットコム」との差別化について
分林:「『弁護士ドットコム』との差別化はどのような点でしょうか? また、競合として脅威を感じている部分はありますか?」というご質問です。
中山:本質的な差別のポイントは僕の中にはあるのですが、今回のようなオンラインのかなり公の場でご説明してしまうと競合が気づくことになってしまいますので、ご説明しかねます。
一番の違いを簡単にご説明しますと、「弁護士ドットコム」は離婚の弁護士も相続の弁護士も見つけることができ、1つのサイトで全部が完了しています。
それに対して、我々は事件分野ごとにサイトを切り分けています。法律相談はいろいろな弁護士がたくさん載っている「広さ」以上に、専門性を高めていったほうがユーザーの満足度が上がると我々は考えています。その専門性を高めるために、事件ごとにサイトを区切って運営しています。
表面的には、広さを出すのか、深さを出すのかが「弁護士ドットコム」との一番の違いだと思います。
質疑応答:採用を強化している部門について
分林:「現在どのような部門に何人くらいいますか? 人材採用の強化はどの部門に向けてなのかを教えてください」というご質問です。
中山:従業員数は約70名です。約半数近くがマーケティング、約3割が営業・CS、残り約2割が管理・バックオフィスです。
強化していく人材は、全部門です。全部門で人数がまったく足りていない状況ですので、ここを課題だと捉えて採用にしっかり投資し、よい人材を採用して成長させていきたいと考えています。
例えば、今期の売上収益の約21億円を約70名で進捗させていますので、生産性としては1人あたり3,000万円ほどです。仮に来期に成長率130パーセントを目指す場合、売上収益は27億5,000万円から28億円くらいになります。それを3,000万円で割るとまったく人が足りないため、各部門でもっと成長できるように全職種・全部門の採用を強化しているところです。
質疑応答:顧客数について
分林:「全国の弁護士の何割が顧客になっていますか?」というご質問です。
中山:事務所は先ほどお伝えした全国17,772事務所に対して、顧客は4.1パーセントにあたる723事務所です。全国に弁護士は約4万4,000人いますが、平均すると1法律事務所あたり約2.5人が所属しています。
我々のお客さまも平準化するとそれくらいです。723事務所に2.5人ですので、我々が取引している事務所の先には2,000人弱の弁護士が所属しています。したがって、お付き合いしている弁護士の数も全国の4パーセント台だと思います。
質疑応答:会社名の認知度向上について
分林:「会社名があまり知られていないと思いますが、今後の認知度向上の施策を考えていますか?」というご質問です。
中山:きちんと取り組んでいかなければいけないとは思いますが、一方で弊社の社名とサービスは紐づいていない部分があります。「アシロは非常に有名だが『ベンナビ』は知らない」よりは「アシロは知らないが『ベンナビ』は知っている」ほうが、サービスを利用してもらいやすいと思っています。
採用力を上げるためにも将来的には会社の認知度もしっかり上げていく必要があると思っていますが、それ以上にサービスの認知度向上のほうが喫緊の課題として優先順位が高いと考えています。
施策の一環として、新ブランド「ベンナビ」に統一し、ブランディングをしっかりかけていくプロモーション施策を現在検討して取り組み始めている状況です。
質疑応答:地方への営業手段について
分林:「リーガルメディアにおいて首都圏が営業の中心だと思いますが、地方の法律事務所への開拓は行っていきますか? また、地方への営業手段はどのような方法を考えていますか?」というご質問です。
中山:確かに首都圏が中心ではありますが、地方への営業もすでに行っており、新型コロナウイルスが非常に追い風になっています。新型コロナウイルスが流行する前は、首都圏であれば基本的に商談の機会をいただいて、実際にお邪魔して商談して契約する手順でした。
我々の本社は新宿にありますが、現在は新宿の法律事務所との新規の商談であってもリモートで行っています。訪問は一切行っておらず、すべてをリモートで営業できる状況になっていますので、新宿の事務所でも大分の事務所でもリモートで行います。したがって、地域性はまったく関係ない状況ですので、首都圏と同じように営業が可能です。
質疑応答:地方への営業の度合いについて
分林:「地方の弁護士情報が貴社メディアに掲載されることは、ユーザーにとっての利便性につながると思います。オンラインでアプローチしているとのお話でしたが、積極的に行っているのですか?」というご質問です。
中山:積極的に行っており、ユーザー満足度を考えると「地方も載せて欲しい」「地方も営業して欲しい」との声はあると思います。一方で「広告をかけて収益を上げたい」「お客さまをもっと増やしたい」という事務所側のニーズは首都圏のほうがどうしても高い部分があります。
ユーザーニーズも考えながらではありますが、収益をいただけるお客さま側のニーズをどうしても優先しがちです。この点を課題として捉え、ユーザーの利便性を上げるためにも地方への営業をしっかり行っていかなければいけないとは考えています。
質疑応答:解約率について
分林:「解約率、解約数はどの程度でしょうか?」というご質問です。
中山:KPIとしては月次1パーセント以下に抑え込んでいく方向で動いていますが、現状は月次の解約率で1.2パーセント前後と考えていただくとよいと思います。
質疑応答:代表者によるSNS発信について
分林:「中山さま自身のSNS発信が、集客や新規開拓につながるとよいと思います」というメッセージをいただいています。
中山:アカウントは持っており、SNSの全サービスをマーケティング的な視点で試していますので、まったくわかっていないわけではありませんが、前面には出さないようにしています。
とある事件をきっかけに出さないようになったのですが、このあたりは精査して我々の独自のチャンネルでお話しできればと思います。ただし、個人投資家のみなさまに見ていただけるのであれば、活用を考えたいとは思っています。
質疑応答:掲載枠増加による顧客離れへの対策について
分林:「掲載枠増加によるサイト内の競争激化によって顧客離れが起きるリスクをどのように考えていますか? 成果報酬ではなく定額報酬のため、掲載枠が増加するにつれてユーザー流入のない顧客が離れることが増えそうだと思いました」というご質問です。
中山:カスタマーサクセス部門で、どの事件のどの地域をまだ販売してよいかを管理しています。例えば、東京の新宿で離婚に出稿したい弁護士がいた場合、カスタマーサクセス部門が営業に対して売ってよいかどうかを判断します。
おっしゃるとおり、これ以上掲載してしまうと内側での競争が激化してしまう恐れがある場合があります。その際には離婚に出稿したいお客さまに対して、「申し訳ありませんが、今はどうしても掲載できませんので、離婚ではなく違う事件ではいかがですか?」と提案する流れになっています。