業績の概要
上埜修司氏:代表取締役社長執行役員を務めます上埜です。平素は弊社の企業活動にご理解いただき誠にありがとうございます。今回は2022年3月期の決算についてご説明します。
はじめに、2022年3月期の業績についてご説明します。各用途で前年の新型コロナウイルス感染症の影響による需要減少から回復し、フィルム・樹脂の高分子事業を軸に売上が増加したことで、売上高は前期比43億円増収の1,147億円となりました。
営業利益は原燃料価格の上昇により、大きなマイナス影響を受けました。価格改定や販売数量の増加で補完しましたが、前期比1,000万円減益の60億円となりました。
経常利益は円安による為替差損益の好転もあり、前期比10億円増益の64億円です。当期純利益は機能資材事業に関わる減損損失22億円を計上したことにより、前期比16億円減益の22億円となりました。
営業利益変動要因分析
営業利益の変動要因についてご説明します。先ほどお伝えしたとおり、営業利益は前期比1,000万円減益の60億円となりました。マイナス要因としては原燃料価格の高騰の影響によりマイナス38億円、コスト要因では物流費の高騰などでマイナス7億円です。
プラス要因としては、売値・商品構成は高付加価値品の販売増や一部の価格改定などによりプラス20億円です。また、フィルムや樹脂の高分子事業を軸に各素材で前年の新型コロナウイルスによる需要減少から回復し、販売数量が増加したことでプラス25億円となりました。
資産・負債・純資産
資産・負債・純資産の状況をご説明します。固定資産は高分子事業や機能資材事業の設備投資により増加しました。負債合計は借入金の減少などにより減少しており、株主資本は当期純利益の計上により増加しています。
財務体質健全化に向けた推移
財務体質健全化に向けた有利子負債と自己資本比率の推移についてです。有利子負債は前期末比29億円減少の939億円となり、2022年度中期経営計画の目標である933億円に向け、削減が着実に進んでいます。また、現預金を差し引いたネット有利子負債は749億円となりました。
自己資本比率は前期末比0.9ポイント増加の21.6パーセントとなり、財務体質の健全化は着実に進んでいます。なお、本年3月にB種種類株式の一部を取得・消却しました。
セグメント別 業績の概要
各事業セグメントの状況をご説明します。セグメント別業績はスライドに記載のとおりです。前年の新型コロナウイルスの影響による需要減少から回復した高分子事業を軸に、売上が伸長しました。繊維事業は収益認識会計基準などの適用による影響を受けたこともあり、大幅な減収となりました。
会計基準変更による各セグメントへの影響は欄外に記載しています。高分子事業でプラス32億円、機能資材事業でプラス23億円、繊維事業でマイナス86億円でした。
機能資材事業や繊維事業は前年の医療用ガウンや衛生材料用途の需要が減少し、営業利益は前期比で減少しました。各事業セグメントにおいて原燃料価格や物流費上昇の影響を受け、全体で減益となりましたが、高分子事業においては販売増加などでマイナス影響を補完し、増益となりました。
高分子事業の状況
各事業セグメントの状況について、ポイントをご説明します。高分子事業では原燃料価格の上昇、海上物流の混乱や運送費上昇によりマイナス影響を受けました。一方、フィルム事業は前年に続き販売が好調で、樹脂事業では幅広い用途で前年の新型コロナウイルスの影響から回復したことにより、高分子事業セグメント全体で増収増益となりました。
フィルム事業の包装分野では食品包装などで販売が伸長し、バリアナイロンフィルム「エンブレムHG」などの高付加価値品も国内外で好調でした。また、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する環境配慮型食品包装フィルムの採用も拡大しました。
工業分野では半導体関連用途が好調に推移し、シリコーンフリー離型ポリエステルフィルム「ユニピール」などの高付加価値品も好調でした。このように販売は全般的に好調でしたが、海外子会社で海上運賃高騰の影響を大きく受けたことが響き、フィルム事業全体では増収減益となりました。
樹脂事業のナイロン樹脂およびポリアリレート樹脂「Uポリマー」は、自動車用途において一部回復の鈍化が見られましたが、その他幅広い用途で需要が回復し、売上高・営業利益ともに回復しました。高耐熱ポリアミド樹脂「ゼコット」は、自動車用途、電気電子用途で新たに採用を獲得し、販売が大幅に伸長しました。
機能資材事業の状況①(ガラス繊維、ガラスビーズ、活性炭繊維)
機能資材事業についてご説明します。新型コロナウイルスの影響による前年の需要減少から回復した一方で、原燃料価格の上昇、海上物流の混乱、半導体不足などによる自動車の生産減少、新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動抑制によるマイナス影響を受けたことで、事業全体では増収減益となりました。
ガラス繊維事業の産業資材分野は、テント、シートなどの建築土木用途において下期に需要が回復しました。電子材料分野のICクロスは、情報端末および周辺機器の半導体用途が好調に推移し、超薄物や低熱膨張タイプなどの高付加価値品の販売も好調でした。
ガラスビーズ事業は道路用途の需要回復が遅れており、販売は前年並みでした。反射材用途は海外向けが、工業用途はブラスト用途などで販売が伸長しました。
活性炭繊維事業は、主力の浄水器用途の需要が回復したことと、海外において新たな顧客からの採用を獲得したことにより販売を伸ばしました。自動車用途や電子産業関連用途では、工場の稼働が減少した影響を受け苦戦しました。
機能資材事業の状況② (不織布、産業繊維)
機能資材事業の不織布事業と産業繊維事業についてご説明します。不織布事業は、前年に旺盛だった生活資材用途の医療用ガウンや、衛生材料用途の除菌シートなどの需要が減少しました。
一般産業資材、建築土木用途は、新型コロナウイルスの影響による前年の需要減少から緩やかに回復しましたが、自動車用途は半導体不足などの影響により販売が減少し、スキンケア用途は人流減少による影響が続いたことで低調に推移しました。
産業繊維事業について、短繊維は各用途で需要が回復し、ポリエステル高強力糸は建築土木用途で新型コロナウイルスの影響による前年の需要減少から緩やかに回復するなど、全般的に販売は伸長しました。一方で、原燃料価格の上昇や海上物流の混乱によるコスト上昇の影響を受け、苦戦しました。なお、高付加価値品の中空糸膜材料は販売が伸長しました。
繊維事業の状況
繊維事業についてご説明します。新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要減少が続き、加えて前年に旺盛だった医療用ガウンの需要も減少したことで、繊維事業全体では減収減益となりました。先ほどお伝えしたとおり、売上高については収益認識会計基準適用による影響がマイナス86億円となっています。
事業の状況では、主力のユニフォーム分野やレディス分野において緩やかな需要回復傾向が見られた一方、大幅なコストアップ要因が重なり、厳しい事業運営を強いられました。
2023年3月期 業績予想
2023年3月期の業績予想についてご説明します。2023年3月期の通期業績予想は、売上高は1,260億円、営業利益は55億円、経常利益は33億円、当期純利益は15億円と予想しています。
セグメント別業績予想
セグメント別業績予想はスライドに記載のとおりです。今年度は現中期経営計画の最終年度にあたります。これまでの2年間は新型コロナウイルス感染症の影響を受け、今年度はウクライナを中心とした地政学的リスクの顕在化や、より一層の原燃料価格・物流費の高騰など先が見通せない状況が続いていますが、中期経営計画に掲げる各施策を確実に実行し、事業収益基盤の整備に取り組んでいきます。
私からのご説明は以上となります。