連結業績概況
米倉英一氏(以下、米倉):米倉でございます。本日はスカパーJSATホールディングスの2022年3月期第2四半期決算説明会にご参加いただき、ありがとうございます。早速、業績および各事業の概況についてご説明いたします。
第2四半期の連結業績の概要からご説明します。スライドをご覧ください。第2四半期累計の連結営業収益は584億円です。通期予想の進捗率で約50パーセントに達し、計画どおり順調に推移しています。
通期決算時にもご説明したとおり、2021年度から「収益認識に関する会計基準」を適用し、その影響で営業収益が103億円程度減少していますが、ほとんどが営業収益と営業原価をあわせ純額表示する調整であり、利益面への影響は軽微です。会計基準適用の影響を除いた減収幅はおよそ13億円で、主にメディア事業の加入者減にともなう収入減です。セグメント別の詳細については、後ほどご説明します。
営業利益は109億円で、前年同四半期比で若干の減益ですが、進捗率は60パーセントを超え、利益面でも計画どおり推移しています。当期純利益は85億円となり、前年同四半期を大きく上回り、進捗率も66パーセントに達しました。
セグメント別業績概況(2Q累計):宇宙事業
セグメント別の業績について詳細をご説明します。まずは宇宙事業ですが、営業収益は約280億円です。収益認識会計基準の適用の影響が12億円ありますが、それ以外で合計約3億円の増収となり、安定した売上水準を維持しました。
営業利益は、前年同四半期比2億円増の70億円です。四半期純利益ベースのセグメント利益は、10億円増の58億円となりました。第1四半期に連結子会社の解散に伴う税金費用の減少を9億円計上したことにより、セグメント利益は増益となりました。
宇宙事業の新規3衛星の状況ですが、NTTドコモ向け専用衛星である「JCSAT-17」の売上は安定的です。アジア太平洋をカバーするHTS衛星「Horizons 3e」も着実に新規顧客を獲得し続けています。「JCSAT-1C」については、今年度後半には大口の顧客向けのサービスを開始できるものと見込んでいます。
セグメント別業績概況(2Q累計):メディア事業
メディア事業の業績についてです。営業収益は357億円です。収益認識会計基準の適用の影響額が92億円ほどあり、それを除くと、放送加入者の減少にともなう視聴料収入の減少等が約13億円です。会計基準の影響は、営業原価もほぼ同額減少しており、利益面の影響はほとんどありません。
営業利益は、広告宣伝費が約7億円減少した一方、加入者減少に伴い収益が減少したことにより、約5億円減の42億円となり、当期純利益ベースのセグメント利益は、約4億円減の30億円となりました。
以上が、第2四半期の連結業績の概要です。
成長の見通し
ここからは、今後の成長に向けた取り組みの進捗についてご紹介します。スライドは、通期決算の際にもご説明したページです。今期130億円の当期純利益の計画に対し、そこから宇宙事業、メディア事業の両事業における具体的な成長施策を着実に実行し、中長期的な基礎収益力の強化を図っていきます。
超高速海洋ブロードバンドサービス JSATMarine の開始
宇宙事業の取り組みをご紹介します。2022年1月より、超高速の海洋ブロードバンドサービス「JSATMarine」のサービスを開始します。HTS衛星でもある「JCSAT-1C」も利用し、西太平洋からインド洋の主要な航路において、静止衛星による海洋サービスとして世界最高クラスの通信速度を実現します。
運航業務のDXや船舶機器のIoT化による安全かつ効率的な航行の推進だけでなく、船員を支える通信インフラとして、船と陸の間でのビデオ会議や船内Wi-Fi環境の改善など、福利厚生の充実にも寄与します。また、将来の自動運航船システムの実現に向けても支援していきます。
宇宙事業のESGの取組みについて
11ページをご覧ください。当社は30年以上にわたり、宇宙における太陽光発電を利用して事業を展開してきました。衛星通信システムは、宇宙で作られるクリーンなエネルギーと地上機器も含めた効率的な電力利用により、地上回線に比べて3分の1の消費電力で通信が可能です。
当社は、こうしたこれまでの取り組みに加えて、今後は新しい事業創出を通じ、さらに地球環境の改善や社会課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。
例えば、低軌道衛星から得られる地球観測データは、気候変動の観測や地上災害および海洋汚染状況の把握など、ESGの分野においても幅広い用途での活躍が期待されています。
近年、こうした地球観測データに対するニーズはますます高まっており、本分野のアジア地域の市場規模は、2029年時点で約16億ドルと試算されています。当社はこの市場のうち、だいたい4パーセントから5パーセントのシェアの獲得を目指し、環境にも資するサービスの提供に注力するとともに、宇宙事業の収益拡大も実現していきます。
地球依存から宇宙活用へ ~将来の可能性~
12ページをご覧ください。こちらは将来のさらなる宇宙活用について、未来を想像して作成したイメージです。
宇宙太陽光発電は、現在、脱炭素に向けた新技術の1つとして期待されています。令和2年度の内閣府の「宇宙基本計画」にも研究開発項目として記述されており、将来の実用化も期待ができる技術であると考えています。これらの技術と、当社の通信をはじめとする宇宙事業を掛け合わせることで、通信と無線送電が一体化した社会を実現できる可能性があります。
また、船舶などにおいては、衛星から取得した最適な航路のデータや運行制御の信号を送受信することで、燃費のよい効率的な無人航行を実現できる可能性もあります。宇宙の利活用に関する関心は年々高まっており、新たな技術の進展も目覚ましい昨今の状況において、当社も新しい技術を積極的に活用し、宇宙の利活用シーンを開拓していくことで、持続的な社会の実現に資する事業を開発していきたいと考えています。
配信事業領域の新たな取り組み
メディア事業については、現在取り組んでいる配信事業、新たな収益機会の拡大を狙うBtoB事業、既存の放送事業の状況についてご紹介します。
メディア事業を取り巻く環境ですが、有料放送市場が成熟する一方、インターネットを通じた動画配信市場が拡大を続けており、視聴者の獲得、コンテンツの獲得の両面において、国内外の事業者との激しい競争が続いています。
こうした状況を踏まえ、当社は、従来提供してきた「スカパー!オンデマンド」をリニューアルし、有料動画配信向けの商品は「SPOOX(スプークス)」、放送契約者向けの無料番組は「スカパー!番組配信」として、新たに10月1日から配信サービスを開始しました。
ネット配信が人気の高まりをみせる中、当社としても動画配信サービスを強化し、お客さまの生活シーンに合わせて、シンプルで使いやすいサービスの実現を目指していきます。今後さらに多種多様なコンテンツを取り揃え、商品ラインナップを3万タイトル以上に拡充する予定です。配信サービス「SPOOX」を将来の収益の柱の1つに成長させていきたいと考えています。
また、将来の「コネクテッドTV」領域における協業を目指して、フリークアウト社と業務提携契約を締結し、共同検討を開始したこともご報告します。
メディアHUBクラウド
15ページをご覧ください。従来からお伝えしていました、「メディアHUBクラウド」が10月から正式にサービスを開始しました。スカパー東京メディアセンターと、PLAY社のメディアクラウドの仕組みをつなぎ、コンテンツの制作から配信・運用まで、動画配信をトータルでサポートするサービスです。
例えば、「配信事業者へ手軽にコンテンツを提供したい」「イベントを手軽に配信したい」「海外コンテンツを配信したい」といった配信事業者やコンテンツプロバイダ、企業などの要望に応じて、柔軟に効率的に対応します。
今後は当社のメディアソリューション事業として、放送用アセットを活用したサービスの提供を官公庁や国内外の企業向けに展開していきます。
ブンデスリーガにおける新たな取り組み
2021年、2022年シーズンの「ドイツ ブンデスリーガ」では、全試合の放送や配信にとどまらず、映像とデータの統合、いわゆる「インタラクティブフィード」を世界で初めて実装した「ブンデスリーガLIVEアプリ」をリリースしました。フォーメーションやシュート数などに加えて、選手個人の情報をリアルタイムで映し出します。
さらに楽しんでもらうために、「ブンデスリーガLIVEアプリ」にユニークな機能を搭載し、次世代の新しいサッカー視聴体験を提供していきます。今冬にはブンデスリーガ関連商品を取り扱うECサイトもオープンし、このサイトでしか入手できない商品を数多く取り揃えていきます。東京オリンピックでも活躍した、田中碧選手が所属する「フォルトナ・デュッセルドルフ」のグッズをクラブ公式で日本独占販売します。
引き続き、他クラブのグッズなどの商品を含めたラインナップを拡充し、現在強化しているファン・マーケティングに積極的に取り組んでいきます。
スカパー!基本プラン/プラットフォーム施策
「スカパー!」放送サービスに関しては、基幹商品である「スカパー!基本プラン」への加入が大変好調です。在宅時間が増えている状況下で展開した「基本プラン最大2か月無料キャンペーン」が奏功し、加入件数は順調に増加しています。
「スカパー!基本プラン」は、テレビ1台分の料金で、追加料金なしで3台まで視聴することができ、50チャンネルが見放題であるため、お客さまの満足度も高く、解約抑止とARPU向上にも貢献しています。
また、今年の下期のコンテンツ施策としては、11月1日より「スカパー!なつエモ天国TV」を放送しています。昭和から平成初期の懐かしい、記憶に残っている番組を一挙放送する企画で、リクエストの多い昔の番組を取り揃えており、『日本沈没』や『スケバン刑事』など、今でも人気のあるコンテンツを多数放送していく予定です。
2030年のありたい姿に向かって
通期決算説明会でもご説明した、サステナビリティ経営の深化に向けた取り組みについてお話しします。
当社はこの度、長期的な視点において社会価値と経済価値の両方を持続的に創出するために、「サステナビリティ方針」を策定しました。これまでも、グループミッションである「Space for your Smile」のもと、人々を笑顔にする事業活動を行ってきました。あらためて当社のミッション実現について、当社グループの持続的な成長だけでなく、社会への貢献につながることを再認識したため、「サステナビリティ方針」として掲げることにしました。
また、当社が取り組むべき9つの重要課題、22のマテリアリティに対して、目標およびKPIを定めました。ここでは特に、2030年に向けた「気候変動」と「ダイバーシティ&インクルージョン」への取り組みについてお話しします。
まず、社会的にも大きな関心事項の1つである「気候変動」への取り組みについてです。当社施設の使用エネルギーをできるだけ早く、再生可能エネルギーに切り換えていきます。また、宇宙事業においては、当社の衛星通信や衛星データユーザーによる「太陽光発電」「次世代風力発電」の供給拡大などを通じて、脱炭素社会の早期実現に寄与していきます。
次に「ダイバーシティ&インクルージョン」についてです。役職員一人ひとりが最大限に実力を発揮できることを目指す中でも、特に女性の活躍を推進します。働きやすい職場環境の整備や、研修などを通じた意識変容を加速させます。
人も環境も大切にしながら、長期的な視点で社会価値と経済価値の両方を持続的に創出し、人々に笑顔を届けられる企業を目指していきます。
私からのご説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:メディア事業の利益進捗について
質問者1:利益の進捗について、セグメントごとにおうかがいします。メディア事業の通期計画では28億円の営業減益とのことですが、上期は5億円の営業減益にとどまっており、利益面での進捗として非常によいのではないかと思います。
基本的に、ベースの利益はよい状況だと思いますが、下期からは先行投資として、または第4四半期に打たれる販促について、費用や負担がどのように出るのか、このあたりをご説明いただきたいです。
小川正人氏(以下、小川):メディア担当の小川からご説明します。ご質問内容のとおり、私も順調に推移していると考えています。下期には、11月から「スカパー!なつエモ天国TV」を放送していますが、そのようなキャンペーンならびに年末年始のコンテンツを提供していきます。
3月には、いつも実施しているプロ野球、サッカー、F1などへの加入販促をかなり積極的に行う予定です。さらに、10月1日に無事ローンチした「SPOOX」または配信をさらに拡販すべく、第3四半期と第4四半期で積極的に販促策を打っていきます。そのようなことを踏まえ、当初予定している利益をしっかりと確保し、将来に向けたいろいろな投資を実施していけると考えています。
質問者1:昨年と比べると、キャンペーン関係でどのくらいの費用負担が増えるのかを、先ほどお話しされた動画配信、配信プラットフォームなどの新規事業によってそれぞれ分けて考えるとどのようなイメージになるのでしょうか?
小川:まず放送の販促については、昨年に比べると少なくて済むと思っています。昨年度はコロナ禍の影響により、プロ野球、サッカーなどの開幕が、本来であれば前年度の3月に開始するところを去年の6月に開幕したこともあり、第1四半期に広告宣伝費をかなり投下しました。先ほどお伝えしたとおり、第2四半期までの累計で見ても広告宣伝費は減っており、昨年度よりもその部分が少なくなると思っています。
しかし、その分を新しい配信事業、またはBtoB事業に打っていこうと考えています。そのような意味で、だいたい同じくらいの費用を使うと考えています。
質問者1:それでは、計画上において、収益、売上の影響も含めると下期は営業利益が23億円の減益と見ているとの理解でよろしいでしょうか?
小川:おっしゃるとおりです。
質疑応答:宇宙事業の下期見通しについて
質問者1:宇宙事業ですが、通期で営業利益12億円増益をご計画ということですが、上期は2億円の増益になっていますので、あと10億円の増益を下期に前年同期比で達成しないといけない状況です。実額では、去年の70億円を今期は80億円にするという利益計画ですが、下期で衛星事業の売上は増えてくると思います。どれくらい売上が増える見通しをもとに、このような利益増計画で着地できそうだとお考えでしょうか?
福岡徹氏(以下、福岡):今後の下期の見通しですが、まずこの上期は、昨年から続くコロナ禍の影響で、特に航空機分野での低迷が厳しく出ていると考えています。
昨年度の上期と比べますと、前回第1四半期の決算の時には、2020年度と比べて今期のほうが少し悪いとお伝えしたようですが、若干でもプラスになってきています。第2四半期の通期でも昨年度よりは多少よくなっていることを、訂正を含めてご報告します。
今後下期に向けて、私どもとしては、特に国内線の需要などについては、年末年始あたりから徐々に回復していくのではないかと期待しています。現時点で今年度末までに、これがどこまで回復してくるかというところに当然期待していますが、「現時点で、これがこれくらいまで回復するので、下期はこの営業利益までに相当貢献します」というところまで、今日の時点では明確にお答えできない状況です。
特に近々の状況では、従来ご説明しています、当面の当社の宇宙事業の牽引役です「Horizons 3e」等の売上については少しずつ積み上がっており、基本的には順調です。
「JCSAT-1C」についても、契約については獲得をどんどん進めています。しかし、これを実際に収益化し、利益に貢献していくには、例えばインドネシアやロシア等でのゲートウェイの設備構築といったものが前提になります。このようなところもコロナ禍の影響で少し遅れたりしていますが、今年度下半期の第4四半期くらいまでには、多少なりとも収益に貢献が出てくるとは考えており、期待しています。
したがって、現時点で「この営業利益の目標について、このような根拠で大丈夫です」というかたちではお伝えできない状況ですが、今お話ししましたところを、少しでも順調に前倒しで立ち上げる努力を進め、なんとか計画に到達するところまで持っていきたいと考えています。
質疑応答:海外と国内の契約実績について
質問者1:海外の契約実績について確認させてください。契約ベースではある程度「JCSAT-1C」は見えてきており、「Horizons 3e」はこれまでの延長で積み上がっているということですので、収益化に少しタイムラグがあるにせよ、契約自体は積み上がっているとお考えでしょうか?
御社は、国内事業については、計画は慎重に見ていたと思いますが、年末年始がどうなるかは、そもそも計画に見込みを織り込んでいないということでしょうか?
福岡:国内については、これは本年度に限らず、引き続き堅調だとお伝えできます。とりわけ昨今では、足元、携帯バックホールの需要が高まっており、これが本年度においても積み上がっている部分があります。
その部分については、ある程度現時点で見込み済みですので、国内環境については、今後の下半期の営業利益等の利益の達成に関して、大きなファクターとしての上振れや下振れ等はないと考えています。
短期の下半期ではこのような見通しですが、今後の長期スパンでは、国内においても、新規のビジネスや既存事業の延長として、衛星運用の受託等、私どもがリソースとして持っている地上局施設を活用した政府系の需要の商談をいろいろと進めているところです。
今後は、そのような事業を本年度内に契約に結びつけていくということで、将来の道筋をさらに付けていきたいと考えています。
質疑応答:Starlinkのサービスとの競合リスクについて
質問者1:最近よく聞かれるのですが、Starlinkと日本で携帯バックホール向けのサービスを開始するという計画が発表されています。御社の携帯バックホールの事業と一部競合する部分もあると思うのですが、現時点でそのリスクをどう見ていますか?
米倉:今の点に関しては、私からご説明したいと思います。StarlinkとKDDIのお話は他所さまのことですが、当然低軌道を使ったコンステレーションのよさもあると思うのも事実です。ただ、これは我々もこの数年来、ヨーロッパのパートナーと低軌道のコンステレーションのお話を進めてきた経緯もあります。
ご存じのとおり、5月に発表したNTTとの協業の枠組みの中で、いろいろなポートフォリオを持とうと整理しています。現時点では、やはりStarlinkはご存じのとおりのバックグラウンドがありますので、思い切ったリスクが取れますが、ピュアコマーシャルベースで考えた場合、この低軌道のコンステレーションにはグローバルマーケティングリスクがあるわけです。
要は、1,000機以上打ち上げると、オペレーションコストもどんどんかかり続けます。そのグローバルのマーケティングリスクを常に回していかなければいけないということがあります
そう考えると、我々はやはりアジアや日本で勝負する時に、もちろん低軌道のアセットに対して一部極東のリスクを取るかたちで入ってくるという考え方もあり、それは否定はしません。そして、Starlinkも含めて、彼らの低軌道のコンステレーションの地上設備のサービスを提供するというお話も水面下で進んでいます。
一方で、我々がコア(主体)となって低軌道のコンステレーションを運用するかというと、日本国内あるいは東南アジアを考えた時には、実は技術的に衛星ではなくHAPSを運用することで、5Gの特性を活かすことができます。ご存じのとおり衛星ではありませんが、我々はいま、政府と実験段階に入っています。
HAPSを持つことでグローバルマーケティングではなく、日本あるいはアジアの地域でHAPSで5Gを組み合わせて行ったほうが、より利便性も高く、コマーシャルのエクスポージャーリスクも低減できるのではないかという考え方もあるわけです。
ですので、OneWebもそうですが、Starlinkの動きはいろいろな考え方がある中で脅威とも思っています。しかし、慌てる必要があるのかというと、必ずしもそうではないのではないか、という考えを持っているのも事実です。
質疑応答:「SPOOX」を始めた背景および足元の状況について
質問者2:10月に刷新した「SPOOX」について、可能であれば米倉さまにお答えいただきたいです。放送サービスの契約がなくても利用できるとのことですが、このようなサービスを始めた背景と狙いについて教えていただけますでしょうか? 特に、テレビ離れが進む中で、放送サービスへの加入者をこれからたくさん取っていくことは難しいと思いますが、やはりそのようなお考えもあるのでしょうか?
また、加入者数やコンテンツ販売数など、足元の状況も可能な範囲で教えていただけますでしょうか?
米倉:それでは、最初の部分は私がお答えします。以前からお伝えしているとおり、私どもも私自身も、やはり衛星を導線にしたコンテンツサービスには限界があると思っています。しかし、少なくとも衛星放送サービス自体がなくなるとは思っていません。
日本のような島国あるいは山間部、災害時などの状況においても、また今後コロナ禍が終息した後には、アジアにおいて先ほどの説明にもあったテレポートなどを作ることによって、衛星を媒体としたコンテンツの配信はあるだろうとは思っています。
今まさしくご質問があったとおり、やはりテレビ離れが進んでいるのも事実だと思います。しかし、テレビ離れに関して、いわゆるハードディスクとしてのテレビ、つまり「4K」「8K」「薄型の40インチ、60インチ」などが世の中から消えるとは思っていません。
1人暮らしの方も、部屋の壁にくっつく薄型の4Kや8K、高度なスピーカーを使用し、スポーツや音楽などをより大きな画面で、きれいな画質でライブ中継を見られる楽しさがあると思っています。そのような意味からすると、大きなモニターはなくならないと思います。
ただし、スマホを使ってコンテンツを見るというきっかけも必要になります。そのため、我々としては、いわゆる従来型の衛星放送を使ったコンテンツも見られる一方で、「スマホで動画を見たい」という希望や、ご存じのとおりミラーリングを使って、4Kや8Kのモニターに映して見るという需要があります。
私自身も同様ですが、今テレビを買うと、当然真っ先につなげるのはインターネットです。そのような時代であるため、我々は「ハイブリッド」と言っていますが、両方でも楽しめる「スカパー!」を実現していきたいと思っています。
もちろん、若い方の中には、映像をスマホの小さい画面で、あるいはiPadなどで見ることもあると思いますが、ライブ中継やアウトドアスポーツも含めて、大きい画面でよいサービスを見る、あるいはよい音楽を聞くことにも魅力があると思っています。しかし、若い方たちにとっては、そもそも4Kや8K、60インチは値段が高いと思います。これにさらによいスピーカーを付けるとなるとお金がかかります。
そのため、「PLUSY」というサービスを使い、リースとしてお金が一度にかからないようなサービスも合わせ技で実施し、両方のサービスが「スカパー!」で見られることを世の中に訴えていきたいと思います。
「SPOOX」の今の状況に関しては、小川からご説明します。
小川:メディア担当の小川です。「SPOOX」は、10月1日から無事に立ち上がり、連日、コンテンツに応じて視聴される方が増えてきている状況です。10月の時点で、ある程度のコンテンツ数もありますが、今後は3万タイトル以上に増やすため、加入件数、登録件数も順次増やしていこうと考えています。現時点での登録件数などについては、控えさせていただきたいと思います。
質疑応答:女性管理職の現在の比率と比率向上のための具体策について
質問者2:もう1点おうかがいしたいのですが、女性管理職についてです。先日公表したSDGs関連のKPIの中で、「2030年までに社員の男女構成比と同水準に引き上げる」とされていましたが、現在の比率がどのくらいで、2030年に何パーセントまで引き上げる計画なのでしょうか? また、この女性管理職を増やすための具体策について教えていただけますでしょうか?
大松澤清博氏:当社の現在の女性管理職の比率はおよそ10パーセントです。これを2030年に向けて、社員の男女構成比相当に上げていくことを目標としています。そのためには、女性の活躍をより積極的に推進できるよう、働きやすい環境整備や内発的な動機づけのための研修など、男性社員も含めて社員の意識変容を進めていきたいと思っています。具体的な女性活躍の施策として、今年度もいろいろなプログラムを用意して実施しているところです。
米倉:補足します。実は今までの経験からなのですが、私自身は「四半期的に女性の管理職比率を何パーセントだ」、あるいは「役員比率を何パーセント」と決めることは、果たして本当に正しいのだろうかと思っています。これは女性活躍を抑えるということではありません。
やはりその時々のトレンドなどがあるわけです。その四半期のパーセンテージが一人歩きしてしまうと、結局、無理矢理それを作らなければならなくなり、逆差別につながる可能性もあります。重要なのは適材適所だと思っています。
これは男性でも女性でも同じです。特にコロナ禍で働き方改革が一気に進んだ中で、リーダーが丁寧に、ラインで個別に人を見て、キャラクターを見て、ということが必要だと思っています。つまり、私どもの考え方としては、スカパーJSATを男性・女性問わず働きやすい会社にするために、いろいろなダイバーシティ(多様性)あるいはインクルージョンを含めて、その時々のマーケットや世の中の状況を見ながら行っていくということです。
もちろん、そのために例えば女性のエンジニアに「このような活躍の場がある」ということもアピールして、「よし、スカパーJSATに行ってみよう」となるようなことも非常に必要だと思っています。特に数値目標を具体的に持たず、合わせ技で走りたいとは思っています。
ただ今後、株主総会やこのような場でもそうですが、IRの中で必ず、「その後、どうなりましたか?」ということを聞かれると思いますので、そのアカウンタビリティ(説明責任)はきちんと果たしていきたいと思っています。
質疑応答:「メディアHUBクラウド」のBtoB事業の拡大イメージについて
質問者3:メディア事業の中で、「メディアHUBクラウド」のBtoB事業についてご説明していたと思うのですが、こちらの事業の拡大イメージについてです。どのようなKPIを設定して、いつくらいまでに、どれくらいの規模の事業に育てたいと思っているのか教えてください。
また、「今後はメディアソリューション事業として、多くの企業や官公庁向けに推進」ということですが、その中でもメインターゲットとして、どのような業種や役所の方を想定していらっしゃるのか、教えていただけますでしょうか?
小川:まず、メディアHUB事業の主要なターゲットについて、今いろいろなコンテンツを持っていらっしゃる方が、いろいろなプラットフォームにそのコンテンツを提供する、ということを行っています。同じコンテンツでも、いくつかのプラットフォームに出す時には、それぞれの仕様に基づいて提供します。
それがライブだった場合は、ライブのフォーマットに合わせて提供する、ということを行っています。私どもがこの「メディアHUBクラウド」を使うことによって、複数のプラットフォームに、指定するフォーマットで、一括で提供することができ、コンテンツプロバイダ側の利便性を高めることができます。ならびに、それを一定の品質で提供することができることによって、プラットフォーマーも効率化できるのではないかと思っています。
また、今はそのようなコンテンツプロバイダだけではなく、普通の企業や官公庁も、ネットを利用したイベントやセミナーなどを数多く行っています。それには社内向けのものも社外向けのものもあります。
この「メディアHUBクラウド」の事業を行う東京メディアセンターには、放送用に持っているスタジオ設備などもあります。そのようなスタジオまたは制作、送出も含めて、ワンストップで提供することで、コンテンツプロバイダに限らず、普通の企業や官公庁へのBtoBのサービスの提供ができると考えています。
そのため、普通の一般企業に向けても、宇宙事業と協力して営業を展開していきたいと考えています。まだ「この10月からサービスを開始しました」というところですので、今は2年後くらいに10億円規模の売上をきちんと確保し、ある一定の利益も確保できるような事業を目指しています。