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明田篤氏(以下、明田):こんにちは、トビラシステムズ株式会社代表取締役社長の明田篤でございます。本日は、先日発表した2021年10月期第3四半期決算資料をもとに、個人投資家向けのIRセミナーを実施いたします。
はじめに当社の事業概要、成長可能性および競争優位性、2021年10月期現在までの具体的な成果についてご説明し、最後に質疑応答を行います。
「YouTube」で録画を見ることもできるため、2021年10月期第3四半期決算概要以下については参考資料とします。本日は折角の機会ですので、質疑応答を多く行いたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
企業理念
明田:当社の事業概要についてです。「私たちの生活 私たちの世界を よりよい未来につなぐ トビラになる」という企業理念のもと、テクノロジーで社会の課題解決に挑戦していきたいと考えています。
当社の歩み
明田:製品開発のきっかけは、私の祖父が迷惑電話の被害にあっていたことです。最初は「なんとかしよう」と思い、迷惑電話を防止するサービスを探したのですが、そのようなサービスが日本にはありませんでした。迷惑電話に悩まされている祖父を助けたいという思いで、迷惑電話フィルタの開発に着手しました。
ウイルス対策やファイアウォールなど、コンピュータやスマートフォンを守るコンピュータセキュリティは進歩を続けていますが、人の行動が弱みとなるような問題はまだまだ多くあります。当社は、人を守るセキュリティを提供したいという観点で事業を推進しています。
その思いが共感を呼び、さまざまなパートナーの応援をいただきながら成長してきました。今後も新たな社会課題の解決を目指したサービスを展開することで、さらなる成長を目指していきます。
「トビラフォン」販売後は、警察庁や警視庁と特殊詐欺電話の防止に関する覚書を締結し、日本で唯一、全国の特殊詐欺の情報提供を受ける体制を構築することができました。大手通信キャリアに迷惑電話フィルタサービスをオプションパックとして導入いただくことにより、当社サービスは飛躍的に成長していきました。
なぜこの事業に取り組むのか?
明田:当社は特殊詐欺や悪質な電話やSMSの詐欺・被害を減らすことを目指して事業を行っています。特殊詐欺の被害だけでも、2020年度は約1万3,000件の認知件数で約278億円の被害が発生しており、依然として大きな社会問題となっています。また警察や民間企業がこの対策にかけているお金や活動を考えると、社会全体ではより大きな損失が発生しています。
そのため、単に利益成長だけを目指すのではなく、事業を通じて社会に貢献します。もちろん事業として利益がしっかり出るようにして、得られた利益を投資に回し、新しい社会課題の解決に挑戦するサイクルを回していきたいと考えています。
サービス概要
明田:当社が展開している具体的なサービスの概要についてご説明します。「人を守りたい」、具体的には「特殊詐欺を防ぎたい」という思いで開発した迷惑情報フィルタ事業は、現在3つのビジネスを展開しています。
1つ目はモバイル向けフィルタサービスです。主にモバイルアプリというかたちで迷惑電話や迷惑SMSのブロックサービスを提供しています。現在このサービスは大手通信キャリアに採用されており、非常に多くの方にご利用いただいています。
2つ目は固定電話向けフィルタサービスです。詐欺電話だけではなく、営業電話などを自動で遮断します。ご自宅のIP電話を契約する際に、オプションパックとして通信キャリアを通じて展開しています。
3つ目はビジネスフォン向けフィルタサービスです。主に「トビラフォンCloud」というサービスを展開しており、個人のスマートフォンにアプリケーションをダウンロードするだけで、会社の電話から発着信できるクラウド型電話サービスとなっています。
事業内容
明田:当社の事業の売上構成です。2020年10月期においては、迷惑情報フィルタ事業で売上全体の約92.5パーセントを構成しています。その中でも特に売上構成比が大きいのは、モバイル向けフィルタサービスです。売上構成比は約78パーセントとなっており、今後も安定的な成長が期待できるサービスだと考えています。
固定電話向けフィルタサービスは約12パーセントで、モバイル向けよりも成長の時間軸としては長くかかるかもしれませんが、モバイルよりも大きな成長可能性があると考えているサービスです。
ビジネスフォン向けフィルタサービスは約2パーセントですが、将来の収益の柱に育てていきたいという思いで、現在積極的に投資を行っているサービスです。その他事業は積極的に展開しない方針のため、以降の説明は省略します。
モバイル向けフィルタサービスの市場規模と成長可能性
明田:事業の成長可能性および当社の競争優位性についてご説明します。まずはモバイル向けフィルタサービスの成長可能性について、当社のアプリケーションが採用されているオプションパックの契約数は、3社合計で推定約4,400万件もあります。
そのうち実際に当社のアプリケーションをダウンロードしてご利用いただいている方は、まだ約1,200万人にとどまっています。当社のビジネスモデルの中にはアクティブユーザー数と売上の増加が連動するものがあるため、この潜在ユーザー層に働きかけることでまだまだ成長の可能性は高いと考えており、モバイル向けフィルタサービスは今後も安定的な成長を見込んでいます。
固定電話向けフィルタサービスの市場規模と成長可能性
明田:固定電話向けフィルタサービスの成長可能性についてご説明します。固定電話全体は、国内では約5,300万件の契約が存在しています。しかし、固定電話フィルタサービスの月間利用者数は現在約38万人にとどまっており、成長可能性は非常に高くなっています。成長の鍵はパートナーとのアライアンス戦略だと考えており、積極的に働きかけていきます。
ビジネスフォン向けフィルタサービスの市場規模と成長可能性
明田:ビジネスフォン向けフィルタサービスの成長可能性についてご説明します。SaaS市場は拡大しており、その傾向は今後も続く見込みです。またハードウェアを購入するのではなく、ソフトウェアを購入するという傾向が強まっています。
「トビラフォンCloud」はこの流れに沿ったサービスであり、法人携帯を持つのではなく「トビラフォンCloud」を導入する企業が増えています。今後は音声通話機能だけではなく、CTIとの連携や顧客管理であるCRM、営業支援のSFAなどの機能を付加し、充実化を図ることで売上高100億円を目指していきます。
迷惑情報フィルタ事業の参入障壁
明田:迷惑情報フィルタ事業は当社が業界のトップです。類似のサービスは存在しますが、競合と呼べる企業・サービスは現在のところ存在していません。参入障壁については、3つの点から後発の参入が難しい状況であると考えています。
1つ目は警察との連携です。国内では当社のみが警察と連携を行っています。こちらにより他社には真似できない精度の高い情報を入手することが可能となっています。
2つ目はユーザー数が多いことです。すでにユーザー数は1,300万人を超えており、同じ規模の利用者を獲得することはなかなか難しいと考えています。多くのユーザーから得られる統計情報を活用しているため、ユーザーが多ければ多いほどデータ精度が高まり、先行者である当社が有利な状況となります。
3つ目は通信事業者への採用です。当社サービスは大手通信キャリアすべてに採用されており、ユーザー数の拡大につながり参入障壁を強固なものとしています。これらの観点から、私たちの事業は当面新規参入のリスクに晒される可能性は低いと考えています。
研究開発、M&A戦略
明田:研究開発やM&A戦略についてご説明します。当社は競争優位の基盤であるデータベースを強化し、オンリーワン企業としての能力をより高めていくことに注力しています。現状では迷惑電話番号情報、迷惑SMS情報が主なものとなりますが、電話番号の企業情報や名刺情報、さらには与信情報などを付加していくことでデータベースの価値が高まっていきます。
こちらを現状の市場だけではなく、さまざまな市場へ展開していきます。データベースの強化は当社の研究開発だけではなく、M&Aを通じて失敗を恐れることなくチャレンジしていく考えです。
中期的な成長イメージ
明田:モバイル・固定電話・ビジネスフォン向けのさまざまな打ち手に加え、積極的にM&Aにも取り組んでいくことで中長期的に成長していきます。当社は1つのマイルストーンとして売上高100億円企業を目指していきます。そのための投資やさまざまな取り組みについて一つひとつ具体的に進めています。
トピックス
明田:2021年10月期に取り組んできた具体的な成果についてご説明します。現時点までは、大きく3つあります。広告ブロックアプリ「280blocker」の買収、「トビラフォンモバイル」のリニューアル、名古屋大学発のベンチャー企業である株式会社Sonoligoへの出資です。
広告ブロックアプリ「280blocker」の買収
明田:広告ブロックアプリ「280blocker」は、WebブラウザのSafari上の迷惑広告をブロックするiOSのアプリケーションです。「AppStore」の全有料アプリケーションの中で2017年から3年連続で年間ランキングNo.1を獲得しており、現在最も利用されている有料の広告ブロックアプリの1つです。
当社はこれまで迷惑情報フィルタ事業を通じて1,300万人を超えるユーザーにサービスを提供し、電話やSMSを用いた特殊詐欺や迷惑電話被害の防止に効果を発揮してきました。今後は広告ブロックアプリの導入による迷惑広告対策を強化することで、スマートフォンにおける全方位から消費者を守っていくことが可能となります。また、あわせて自社サービスのダイレクトセールスの強化を目指していきます。
トビラフォンモバイルをリニューアル
明田:2つ目は「トビラフォンモバイル」のリニューアルです。これは自社アプリケーションのシェア向上を狙ったものです。デザインを刷新するとともにシンプルな料金体系とし、月額200円という手頃な価格でサービス提供を行うこととしました。背景には携帯キャリアが格安プランを導入したことがあります。
格安プランでは店頭でオプションパックを加入するのではなく、ユーザーは自分でアプリケーションを追加することとなります。当社は、多くのお客さまに迷惑電話・特殊詐欺対策アプリケーションをお届けすることで、世の中から特殊詐欺を撲滅したいと考えています。「トビラフォンモバイル」をよりお求めやすい価格にすることは、そのようなユーザーの受け皿になります。
名古屋大学発ベンチャー、株式会社Sonoligoへの出資
明田:3つ目は株式会社Sonoligoへの出資です。株式会社Sonoligoは2018年創業の名古屋大学発のベンチャー企業です。「文化の民主化」を掲げ、音楽・スポーツ・アートのイベントを月額料金のみで楽しめるサービスを提供しています。
トビラシステムズは、今年6月に名古屋大学や名古屋工業大学など東海地区の5大学による次世代の起業家を育成・支援するプログラムを提供するプロジェクト「Tongali」に、東海発のベンチャー企業として初のプラチナスポンサーに就任しました。
このような活動を通じ、東海地区のスタートアップ・エコシステムの発展に貢献したいと考えています。あわせて、優秀な人材獲得に向けた活動の一環としても有効な取り組みだと考えています。自社だけではなく、他のスタートアップの事業も成長していくことでSDGsの達成に貢献していきたいと考えています。
ハイライト
明田:2021年10月期第3四半期決算の概要については、今回は省略します。当社のホームページや「YouTube」、ログミー株式会社のサイトでも決算説明動画をご視聴いただけます。ぜひともそちらからご確認いただけますと幸いです。
質疑応答:「280blocker」について
高井ひろえ氏(以下、高井):Q&A欄に投稿された質問などを取り上げながら進めたいと思います。先ほどプレゼンテーション中に説明があった「280blocker」について、どのようなアプリケーションなのか詳しくおうかがいしたいです。広告がブロックできるのは、すごく便利ですね。
明田:こちらは500円で買い切りのアプリケーションのため、素晴らしさを体感いただくためにぜひとも買っていただきたいと思います。アプリケーションの効果は、大きく2つあると考えています。
1つ目は、みなさま全員が経験していると思いますが、インターネット上でいろいろな情報を収集していると、詐欺まがいのものや人のコンプレックスにつけ込んで、たいして効果のないようなものを売り込もうとするものなど、見たくない広告が出てきます。
子どもの立場から考えてもそうです。最近オンライン授業になって全員にタブレットが配られ、一気に子どもたちへのITシステムの普及が広がっていると思います。そして、検索していると明らかに子どもにとってはよくない広告、性的なものや怖い思いをしてしまうものなど、世の中にたくさん出回っています。
すべてを排除するわけではありませんが、迷惑電話や迷惑SMSと同様に、不適切なものはきちんとフィルタリングする、当社が持っている迷惑なものをフィルタリングするデータベースの技術を活かせると思っています。
当社でもサービス提供に取り組んできましたが、先駆者として「280blocker」が大きな地位を占めているということで、今回の買収に至りました。もう1つの効果としては、月末になるとパケットの容量がなくなり、ギガ数が足りないという人が多いと思います。実は、Webにおいて、広告に使われるデータ量はかなり多いです。
不快な広告とギガ数を一気に節約できるため、そちらにも貢献できるという2つの大きな効果だと思います。
高井:確かに使ってみたいですね。広告なしという環境でないと生きていけないかたちになりそうですが、広告全般をブロックでき、不適切な広告だけをブロックすることもできるということですか?
明田:現在、その両方の機能があります。
質疑応答:「280blocker」の今後について
高井:今後、月額課金制にするなど制度の変更などもありますか?
明田:今はまったく考えていません。当社が買収して一番に考えていることは、既存ユーザーの方が非常に多く、また新たに使い始めたユーザーの方も非常に多いサービスのため、その方たちの期待を裏切らないようにすることです。まずはもともとの開発者の思いや、これまで蓄えられたノウハウがあるため、当社が完全に踏襲して既存ユーザー、新規ユーザーの方に満足していただけるようなサービスにしていくことが、何よりも大事だと考えています。
私もTwitterなどでエゴサーチしていると、「長年『280blocker』を使ってきたが、企業が変わっちゃったからもう終わりだ」というような投稿があります。そのような懸念を払しょくする素晴らしい運営で、よりよいサービスにしていきたいと考えています。ご安心いただければと思います。
質疑応答:「280blocker」の競合との差別化について
高井:「280blocker」の競合となる存在との差別化はどのようにお考えですか?
明田:実は当社の迷惑電話、迷惑SNSフィルタと同様に、競合という競合は国内にはありません。あえて挙げるとすると海外製のものがあります。
海外は無料のものもあります。しかし、迷惑データベースの最も大事なところは、いかに日本の電話番号や広告、コンテンツを精査してローカライズしていくか、改良していくか、ということです。海外の企業は、日本にコストをかけることが難しい状況もあり、圧倒的に「280blocker」やトビラフォンの精度が高いです。このまま継続していけば既存ユーザーから得られるデータが多いため、さらに精度を高めていけば心配はいらないと思っています。
高井:すでに高い優位性があるということですね。
質疑応答:働く上で重視することについて
高井:「明田社長は働く上で大事にしていることはありますか?」というご質問です。最初にプライベートなご質問をいくつかおうかがいしたため、もっとお人柄を知りたいという意図だと思いますが、どのようなことを大切にされていますか?
明田:当社が一番大事にしていることは、行動指針にも掲げていますが、まずは「自分と大切な人が幸せな時間を送れる環境であり続ける」ことこそが、それぞれの人の成長にも世界中の幸せにもつなげていけると考えています。働いている自分も含め、メンバーが幸せに働いていける環境を作ることが一番大事だと思っています。
しかし、それを実現することは簡単にはできません。実現するためには、日々努力して世の中にないような革新的な技術を生み出し、かつ、しっかりと売上や利益を上げていくことが大事だと考えています。幸せな環境を維持するために、素晴らしい技術を作っていかなければならないという難しい課題はありますが、一番大切にしていることでもあります。
「人のため」というのは、まずは自分たちがそのような状況でなければ、他人にまで広げていくことは実際に難しいことです。全員が本当の意味で共感できる理念を掲げたいと思っています。
高井:社員は、現在何名くらいいらっしゃるのですか?
明田:正社員は70人くらいいます。
高井:精鋭メンバーの方々が理念を持って働かれているのですね。
質疑応答:社内メンバーの雰囲気について
高井:トビラシステムズで働く方はどのような雰囲気の方が多いですか? 元バンドメンバーの方とも一緒に働かれているというお話もありましたが、どのような目線で人を採用されているのか教えてください。
明田:どのような目線でと言いますと、やはり理念や行動指針に共感してくれるメンバーでないと難しいと思っています。私は一時期、大企業に派遣されるかたちで働いていたことがあり、その時に「上司がどうのこうの」などと後ろ向きな会話をしている人がすごく多かったという経験をしました。そのような会社であれば自分は留まりたくなく、他の人も同様だと思いますので、そのような人間性の方と一緒に働きたくないと思います。
当社にそのような人は1人もいないですし、前向きに考えられる人間が多く、会社は非常によい雰囲気です。上場して優秀なメンバーもどんどん増えてきているため、ここからは本当に伸ばす方向にしか考えられないと思っています。
高井:きっと明るくて熱量のある職場なのだろうなと思いました。
質疑応答:モバイル向けフィルタサービスの普及について
高井:「モバイル向けフィルタサービスを実際に利用して、とても便利で継続的に使われるサービスだと思いました。しかし、やはり普及率が悪いように思えます。一時的に大幅な減益になっても、テレビCMなどで大きく宣伝広告を打つような予定はありますか?」というご質問が来ています。いかがでしょうか?
明田:おっしゃるとおりで、現在1,300万人の方に利用いただいていると言いましても、国内人口の10パーセント程度です。私たちが実現したい「迷惑電話・詐欺電話のない世の中」というにはまだまだ程遠いのですが、当社としてはなんとかして実現したいと思っています。
今のやり方では実現できないということもわかってきています。現在は、あくまで有料サービスの一環としてご利用されているお客さまが1,300万人という構成ですが、やはり100パーセントの普及を目指すためには有料ではない部分も作り、かつ有料の側面を持つプロダクトへと変革させなければいけない時期が近づいてきていると思っています。
具体的になにか決まっているわけではありませんが、ご指摘いただいたように、大きな課題として認識しています。
質疑応答:売上達成の見込みと成長戦略について
高井:視聴者の方からいただいたご質問です。「売上100億円の達成はいつ頃までに実現したいと考えていますか? 資料の中期的な成長イメージでは、2025年時の売上予想は20億円後半から30億円程度の見込みでしょうか?」というご質問をいただいています。
明田:あくまでスケールで見ていくと、このようなイメージだと思います。これはよく聞かれますし、具体的にお答えすることが非常に難しいのですが、私の気持ちとしては10年かかるなどというのはもってのほかで、5年以内、それもなるべく早いタイミングで実現したいと考えています。
質疑応答:クラウドの成長戦略について
高井:ほかのご質問として、「クラウドの成長戦略はどのようにお考えですか?」ともいただいています。
明田:クラウドビジネスフォンは、昨年の3月末にサービスを開始してからちょうど1年半が経ちました。その間に多くの方に利用していただきましたが、利用していただけなかった方もまた多くいらっしゃいました。
その中で得られた知見を活かし、当社の優秀なメンバーでしっかり調査して、次世代向けに大きくバージョンアップしていきたいと考えており、それも1年などの単位ではなく、数ヶ月以内には実現したいと思っています。そこが達成できれば、すでに使っていただいている方にはより多くの付加価値を提供できると思いますし、使っていただけなかった方にも使ってもらえるようになると思います。今の成長スピードよりはるかに高いものを実現できるのではないかと考えて、現在急いで準備しています。
質疑応答:会社を芸能人に例えると?
高井:少し変わり種のご質問もありますが、こちらはお答えいただますでしょうか? 「自分の会社を芸能人に例えると誰ですか? 年齢なら何歳ですか」というご質問です。「芸能人に例える」のはすごく難しいような気もしますが、思い浮かびますか?
明田:正直なところ、芸能人に関する「引き出し」がまったくないのです。芸能人ではなく正義の味方ですが、バットマンのように、技術があり、すごくクレバーで、しかも自分が活躍していることをあまり主張せず裏で活動している、そのようなヒーローの姿にはすごくあこがれます。僕の事務所の机にもバットマンが置いてあります。
芸能人にそのような方がいたら、そのイメージにしたいと思います。ヒーローで、あまり主張せず派手ではなく、芸能に徹するような人です。
高井:私も芸能人には疎いほうだと思うのですが、バットマンはすごくわかりやすい例えでした。トビラシステムズはバットマンのような会社なのですね。
明田:年齢については18歳くらいですね。
高井:人間に例えると、成人していないイメージでしょうか?
明田:そうですね。たまたまですが、当社は個人創業から始まって約18年になります。だからということではありませんが、上場させてもらって、言うなれば自動車の免許を取って、これからようやく世の中で活躍できるというイメージで18歳くらいとしています。18歳が少し幼稚と言うと失礼ですが、イメージとしては今18歳くらいのところです。
高井:なるほど。このご質問は、明田社長が会社に対してどのような目線で見ているかがすごくわかりやすく、おもしろかったです。
質疑応答:株式投資について
高井:先ほどと同じ方からで、「個人的に株式投資をするならば、自社以外にどこに投資しますか?」というご質問をいただいています。どのような株に投資をするかで、明田社長の性格が出るのではという意図だと思います。
明田:期待を何度も裏切るようで申し訳ありませんが、当社の株以外には基本的に手をつけていません。
高井:もし投資をするとしたらいかがでしょうか?
明田:自社の株だけと言いますと、嘘になってしまうかもしれません。私の子どもと奥さんが非常にディズニーが好きで、コロナ禍でオリエンタルランド株だけ100株買いました。結果的に株価がすごく上がり、「これで何回ディズニー行けるんだろう」ということがありました。
高井:そのような理由で株を買われるのもすてきですね。
明田:僕はトビラシステムズの株を全力で買いたいのですが、期待に応えられる回答ではなかったかもしれません。
高井:社長が自らお勧めする株ということで、そこはブレていないと思いました。家族思いなところと、自社への愛が伝わるご回答をありがとうございます。
質疑応答:販売機会の損失について
高井:個人投資家の方から、「親類が迷惑SMSを受け取ったため、ドコモショップで対策ソフトを契約しましたが、後日確認すると『ウイルスバスター』がインストールされていました。この事例のような販売機会の損失を回避する手段はありますか?」というご質問です。
明田:おっしゃるとおりで、そこは1つの大きな課題だと思っています。推測になってしまいますが、携帯ショップでは基本的に当社のものを勧めていただいていると思うのですが、家電量販店などの場合、その店舗の商品として「ウイルスバスター」が売られていることがあるため、そこでお勧めされた可能性が高いのではと考えています。
私たちは今まで、通信キャリアと一緒に普及を目指していたのですが、ご質問いただいたように、家電量販店など通信キャリア以外とのさらに深い連携も確かに必要だと考えています。重要な課題の1つとして、社内でも検討していきたいと思っています。
質疑応答:プライム市場への上場について
高井:「東証新市場区分であるプライム市場の一時審査で不適合項目がありますが、最終的にプライム市場に上場されない可能性はありますか? 可能性を数値で教えていただけると投資の判断がしやすいです」というご質問です。
明田:現在当社が満たしていないのは株価のみです。先ほどお伝えしたとおり、具体的にはお答えできないのですが、当社は年齢で言えば18歳、僕自身もまだ40歳で、「今」を1ミリたりとも満足したことはありません。そのため、今後どのような判断をするかはご推測いただけるとありがたいと思っています。
質疑応答:東京支店の状況について
高井:「御社で働いている人は名古屋勤務ばかりでしょうか? 名古屋本社ですが東京にも支社があるとのことで、どのように働かれているのでしょうか?」というご質問です。実際に応募しようと思われている方かもしれませんね。
明田:管理部門とエンジニアのメンバーは名古屋に集中していますが、最近は東京支店も引越ししており、力を入れている拠点となっています。理由の1つとして、当社の大きな営業先は基本的には東京が中心となっているため、しっかりと拡充して、さらに速いスピードで売上を伸ばしていきたいということがあります。
また、今回の説明会は名古屋からつないでいますが、IRは基本的に東京から配信されていると思います。そのような投資家とのリレーションという面でも東京支店の重要さを認識しており、現在人員を募集して少しずつ増やしています。
質疑応答:潜在顧客へのアプローチについて
高井:「モバイル向けオプションパックの潜在顧客へのアプローチの手法について、より具体的なご説明をお願いします」というご質問です。
明田:ざっくりとした推測ですが、資料にもあるとおり潜在ユーザーは3,200万人以上います。現在の利用者数から大きな乖離があるため、ここをいかに増やしていくかということが、モバイル事業では最もプライオリティの高い課題となっています。しかし、これは通信キャリアにも共通する非常に大きな課題です。
なぜかと言いますと、通信キャリアはオプションパックの料金をもらっているにもかかわらず、たくさんの方が利用していない状況です。そうなると、オプションパックの契約者数が多くとも、解約されてしまう確率は上がります。いかにここを埋めるかというところを、通信キャリアと当社で同じ課題感を持ち、日々協議を行い、次にどのような施策を実行するかなど考えています。
今期はその施策のうち1つがうまく機能して、利用者数の伸長につながっています。今後は潜在ユーザーすべてを獲得できるかたちを目指して、通信キャリアと一緒に引き続き検討していきたいと思っています。
質疑応答:ビジネスフォン向けサービスについて
高井:「ビジネスフォン向けサービスについて、銀行と提携して顧客紹介をしてもらうような動きはありますか?」というご質問です。
明田:「トビラフォンCloud」のお話だと思いますが、実際に行っており、その中で先ほどお伝えした機能の拡充等を優先している状況です。プロダクトの準備がきちんと整いリリースできる段階になったら、銀行のほうでもさらに紹介していただきやすくなるため、その際には積極的に動いていただきたいと考えています。
質疑応答:迷惑電話の定義について
高井:「そもそも迷惑電話とは何でしょうか? 『オレオレ詐欺』を指すのでしょうか。御社の迷惑電話の定義を教えてほしいです」というご質問です。迷惑電話は本当に多岐にわたると思うのですが、いかがでしょうか?
明田:ありがたいご質問です。少し前までは、「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」「還付金詐欺」など、明らかに犯罪行為である電話詐欺が多かったのですが、法改正や警察の努力により、そのような犯罪行為を行うような集団がグレーなところに移り始めています。
当社ではそれを「グレーゾーン犯罪」と呼んでいます。例えば、不要なものを無理やり買わせる、または大事なものを安く買い取る業者や、謎の健康食品の販売業者、仮想通貨などを扱う怪しい投資系を指しており、被害額は膨大になっています。
先ほど「特殊詐欺の被害が280億円」とお伝えしましたが、その中に「グレーゾーン犯罪」は含まれていません。統計情報はないのですが、そのような詐欺も含めると数千億規模の被害が出ている可能性が高いと思っています。明らかにブラックなもの、グレーゾーンのもの、そのような類の電話は総じて迷惑であると考え、フィルタリングするのが当社の方針です。
高井:「迷惑電話」と聞いて「オレオレ詐欺」くらいしか思い浮かびませんでしたが、グレーゾーンも含めると本当にたくさんあるのですね。
明田:また、迷惑レベルとしては少し落ちますが、断ってもしつこく電話をかけてくるような営業系の電話などもフィルタリングできるようになっています。
高井:本当に幅広く網羅されているシステムなのですね。
質疑応答:時価総額の目標について
高井:最後に、「現在時価総額は139億円程度ですが、将来はどのくらいの規模でありたいと考えていますか?」とのご質問です。
明田:それは、僕のポリシーとして心の中にはあるのですが、言わないようにしています。「バットマンでいたいな」と思っていますので、しっかりと結果が出てから言いたいと考えています。
高井:バットマンと重ねて着地したところが、またすてきですね。
明田:3作くらいは見ましたが、実はそんなにバットマンの知識はないかもしれません。
高井:あくまで「バットマン的な存在になりたい」ということですね。