発表のポイント
山田義仁氏:社長の山田です。本日は大変お忙しいところ、弊社の2020年度第1四半期決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。
通常、第1四半期の決算はCFOの日戸がスピーカーを務めるのですが、今回は通期の業績予想がありますので、私が説明いたします。また、今回も新型コロナウイルス感染拡大防止のため、リモートでの決算発表とさせていただきます。
それでは、プレゼンテーション資料に沿ってご説明をいたします。1ページをご覧ください。本日の発表のポイントは、3点ございます。
まず、2020年度第1四半期の実績です。第1四半期の営業利益は、前年比で24パーセント増の125億円でした。コロナによる未曽有の変化が起きた中で、変化対応力を発揮し、減収にも関わらず大幅な増益を達成することができました。
要因は3つあります。1つ目に、コロナ禍で生まれた新しい需要を確実に捉え、当初の想定より減収幅を圧縮しました。2つ目に、商品力の強化や変動費コストダウン、構造改革などに継続して取り組み、売上総利益率をさらに向上させました。3つ目に、固定費の削減を計画どおりに進捗させました。後ほど、詳しく説明いたします。
次に、2020年度の通期計画です。今年度内は、極めて厳しい事業環境が継続する見立てを前提に、減収減益の計画といたしました。計画は不確かなものを極力排除し、堅めに組んでいます。
もちろん、この見通しに甘んじることなく、コロナ禍で発生するあらゆる事業機会を確実に捉え、売上・利益の最大化を狙っていきます。そして、厳しい事業環境下ではありますが、年間配当予想額は、前年と同額の84円を維持します。
最後に、オムロングループにおけるアフターコロナへのチャレンジです。今回のコロナショックは、世界を大きく変えました。この変化を踏まえて、2020年度および2021年度を、アフターコロナに向けた事業変革期と位置づけます。
この事業変革期に、各事業のビジネスモデルを進化させ、経営環境の変化に強い事業構造への転換を加速させます。そして、アフターコロナで顕在化する新たなソーシャルニーズを捉え、収益を伴った成長を実現していきます。
本日は、オムロンが取り組むファクトリーオートメーション、ヘルスケア、ソーシャルソリューションの事例を3つご紹介いたします。
2020年度1Q実績
2020年度第1四半期の実績です。売上高は1,465億円、売上総利益は664億円、営業利益は125億円、当期純利益は97億円となりました。コロナの影響による未曽有の変化の中で、減収ではありましたが、営業利益は24.2パーセント増の大幅な増益となりました。
その要因は3つございます。1つ目は、大混乱の中にあっても粘りに粘って、売上の減少幅を最小限に抑えたことです。4月の時点で、この第1四半期は15パーセント程度の減収を覚悟していましたが、結果は8.5パーセントの減収に留めました。これは、コロナの影響で世界的に需要が消失する中においても、変化対応力を発揮することで、突発的な需要の増加を的確に捉えた結果です。
例えば、制御機器事業では、デジタル業界の急激な需要増や、マスクの大幅増産需要を捉えました。ヘルスケアにおいても、体温計需要の急増などを確実に捉えました。
2つ目は、売上総利益率のさらなる向上です。変動費のコストダウンやバックライト事業の収束など、いままで継続的に取り組んできた施策が功を奏し、為替や減収によるマイナス影響を乗り越え、前年比で0.6ポイント向上させました。オムロンの稼ぐ力は、確実に伸び続けています。
3つ目は、固定費の削減です。期初に計画した年間200億円規模の固定費削減を、計画どおりに実行いたしました。これに加え、コロナで事業活動が制限されたことによる経費の未消化もあり、これらが増益に寄与しました。その詳細について、次のスライドで詳しくご説明いたします。
営業利益増減(前年同期差)
こちらは、営業利益の増減を前年と比較したステップチャートです。左からご説明いたします。2019年度第1四半期の営業利益は100億円でした。ここに、為替の円高影響がマイナス24億円ありました。付加価値は、減収幅を最小限に抑えたことで、34億円のマイナスに抑えました。
一方で固定費は、製造固定費と販管費を中心に、合計で83億円を削減いたしました。このうち、固定費削減プランによる削減額は、為替を除いて49億円となります。残りの34億円は、コロナ影響による活動減少に伴う一時的な削減です。
このように、利益の中身を分解してみると、2020年度第1四半期の営業利益125億円は、少々できすぎの数字であると私は見ています。前のページでご説明した突発的な売上増による利益が14億円程度あり、活動減少による固定費の削減の34億円と合わせると、48億円が嵩上げされています。これを営業利益の実績125億円から差し引いた77億円から80億円程度が、本来の実力だと見ています。
セグメント別 売上高①
次に、セグメント別の説明に移ります。6ページをご覧ください。セグメント別の売上高は、ご覧のとおりです。制御機器事業は、期初には大幅な減収を想定していましたが、7.9パーセントの減収に留めました。この要因については、次のページでエリア別に詳しくご説明いたします。
電子部品事業は、車載向けの大幅減収に加え、民生向けでも厳しい状況が継続しました。社会システム事業は、鉄道事業の一部のテーマが前倒しとなった結果、増収となりました。
ヘルスケア事業は、世界各地でロックダウンになったため、店販が大幅に制限されました。しかし、コロナによって高まった家庭での血圧管理ニーズをオンラインチャネルで的確に捉えたことにより、店販の減少を補いました。
なお、昨年まで本社直轄事業に含めていた環境事業は社会システム事業に移管し、バックライト事業は収束を完了しました。その結果、今年度から本社直轄事業セグメントは廃止しています。ご覧のスライドの社会システム事業の数値は、移管後の数値に組み替えています。
制御機器事業(IAB) エリア別 売上高成長率
次に、制御機器事業の売上について、詳しくご説明いたします。7ページをご覧ください。こちらの表は、第1四半期の制御機器事業のエリア別売上を、現地通貨ベースで前年同期と比較したものです。コロナの影響で世界的に製造業の設備投資が縮減する中で、コロナショックからいち早く回復した中華圏と韓国では、デジタル業界の需要の高まりを捉え、大幅な増収を実現しました。
中華圏では、コロナの影響で第4四半期から後ろ倒しになっていた投資と経済活動の再開により、前年同期比で22パーセントの増収となりました。これは、前四半期の第4四半期と比較すると、64パーセントの大幅増となります。
次に韓国では、5Gなどに向けた半導体向け投資の前倒し需要を捉え、前年同期比で31パーセントの増収となりました。同じく前四半期の第4四半期と比較すると、27パーセントの増収となります。
第1四半期では、この2つのエリアが他のエリアの落ち込みをカバーして、制御機器事業全体の売上を下支えいたしました。
セグメント別 営業利益①
次に、セグメント別の営業利益について説明をいたします。8ページをご覧ください。事業セグメント別の営業利益は、ご覧のとおりです。スライドの表の一番右をご覧ください。コロナの影響を受ける中でも、全セグメントで増益を達成いたしました。これは、売上総利益率の向上や固定費の削減に取り組むなど、変化対応力を発揮した成果です。とくにヘルスケア事業の営業利益は、日本での体温計に対する需要の急増に対して、クイックに増産に取り組んだ成果が表れました。第1四半期の実績の説明は以上です。
2020年度計画の前提
続いて、2020年度の通期計画について説明をいたします。10ページをご覧ください。まず、2020年度計画の前提についてご説明申し上げます。新型コロナウイルス感染拡大は、国内外ともに長期化の様相を呈しており、市場環境の不透明感は継続すると見ています。よって、少なくとも年度内は厳しい状況が継続するという見立てを前提として、第2四半期以降の計画を策定いたしました。
引き続き、年間200億円規模の固定費の削減プランは、計画どおりに実施してまいります。しかし、その中でもアフターコロナを見据えた、将来の成長に不可欠な投資は、継続してやりきります。
セグメント別 2Q以降 事業環境認識
次に、事業セグメント別の事業環境認識です。11ページをご覧ください。世界的な景気停滞長期化の影響を受けて、第2四半期以降も引き続き厳しい事業環境が継続すると見ています。
制御機器事業においては、今後も顧客の設備投資の抑制が継続すると見ています。第1四半期は好調だった中国や韓国を中心とするデジタル業界も、第2四半期は第1四半期の反動で落ち込み、回復は第4四半期以降にずれ込むと見ています。自動車業界は、EV・ADASの需要はありますが、全体では今後も設備投資は低調に推移すると見ています。
電子部品事業では、制御機器事業と同様に、車載向けが厳しいことに加え、民生向けもエリアごとの回復度合いが異なる状況が継続すると見ています。
社会システム事業では、旅客収入の減少の影響で、鉄道関連の投資が見直される見込みです。ヘルスケア事業では、コロナ禍での世界的な健康管理意識の高まりによるニーズや、オンラインでの需要が継続する見通しです。
2020年度計画
これらの見立てに基づいた、2020年度の計画について説明いたします。12ページをご覧ください。2020年度の計画です。売上高は5,900億円、売上総利益は2,645億円、営業利益は300億円、当期純利益は165億円と、減収減益の計画といたしました。今後も厳しい事業環境は継続すると見ており、第1四半期では8.5パーセントの減収でしたが、通期では13パーセントまで減収幅が広がると想定しています。
このような中でも、売上総利益率は44.8パーセントと、前年並みを維持します。これは、為替影響を除くと前年度比でプラス0.7ポイントとなり、実質的には大幅な改善となります。この高い売上総利益率をてこに、計画どおり固定費の削減をやりきることで、営業利益300億円を確保していきます。
2020年度計画 営業利益増減(前年度差)
続いて、営業利益の増減分析についてご説明いたします。2020年度の営業利益を、前年の実績と比較をいたしました。スライドの一番左側が昨年の営業利益548億円です。付加価値に対する為替のマイナス影響が125億円、為替を除いた付加価値の減少が339億円あります。
固定費は、計画どおり約200億円の削減をやりきります。具体的には、スライドでご覧のとおり、為替影響を含めて、合計216億円削減いたします。製造固定費と販管費を中心に削減しながらも、将来の成長に不可欠なIT投資を中心とした重点投資は50億円確保し、前年から16億円積み増します。この結果、今期の計画を300億円といたしました。
セグメント別 売上高②
次に、事業セグメント別の売上高です。14ページをご覧ください。制御機器事業は、第1四半期のデジタル需要が第2四半期以降スローダウンするとともに、自動車業界の低調継続を想定しています。
電子部品事業は、制御機器事業と同様に、車載の回復の遅れなどから減収を見込みます。社会システム事業では、鉄道顧客の売上減少に伴う投資抑制により、減収を予想しています。
ヘルスケア事業は、景気の影響を受けにくい事業特性を発揮することで、円高の影響を乗り越え、前年並みの売上を確保いたします。
制御機器事業 エリアごとの四半期別売上高推移イメージ
ここで、制御機器事業の見通しについて、もう少し詳しくご説明いたします。15ページをご覧ください。こちらは、制御機器事業のエリア別における売上の推移を示したチャートです。2019年度第4四半期を起点として、2020年度の四半期ごとの実績と見通しの変化を表しています。
2019年度第4四半期からのエリア別の変化について、ご説明いたします。中華圏と韓国が特徴的な動きをしています。まず、赤色の折れ線グラフの中華圏をご覧ください。2019年度第4四半期はコロナの影響で厳しい状況でしたが、2020年度の第1四半期は、マスクの増産に伴う需要とスマホ関連の投資の第4四半期からの後ろ倒しが重なり、急速に持ち直しました。しかしながら、グローバル経済停滞の影響を受け、第2四半期からは減速し、前年は上回るものの、第4四半期まで減速が続くと見ています。
次に、オレンジ色の折れ線グラフの韓国をご覧ください。ご覧のとおり、第1四半期は半導体関連投資の前倒しを含む需要増加によって売上が大きく伸びましたが、第2四半期以降は平準化すると見ています。制御機器事業全体では、第2四半期ないし第3四半期を底に回復に向かうと見ています。
ヘルスケア事業 オンラインチャネルでの売上比率拡大
次に、ヘルスケア事業のオンライン売上の急拡大について、ご説明いたします。16ページをご覧ください。こちらは、ヘルスケア事業におけるエリア別のオンラインチャネルでの売上構成比率を表しています。上段は2019年度通期の実績、下段は2020年度第1四半期の実績です。
これまで、ヘルスケア事業の最大の強みは、グローバルで60万軒にも上る取扱店舗数でした。日本や米州はもちろんのこと、欧州・中国・中東でも、オムロンの商品はドラッグストアで取り扱われています。しかし、この強みに安住することなく、ここ数年継続して、オンラインでのチャネル開拓を進めてきました。
例えば中国では、オンラインの売上構成比は、すでに40パーセントを超えています。アリババはもちろんのこと、ジンドンなどでもオムロンの血圧計を売れ筋商品として取り扱ってもらっています。その結果、コロナ禍において、外出制限で売上が落ちた店販をオンラインが補い、売上の拡大に貢献いたしました。いまでは、店販もオンラインチャネルもオムロンの強みとなっています。
セグメント別 営業利益②
続いて、事業セグメント別の営業利益についてご説明いたします。17ページをご覧ください。セグメント別の営業利益はご覧のとおりです。各事業ともに厳しい売上の見通しを踏まえ、減益を見込んでいます。
スライドの表の赤い丸印をご覧ください。このような状況でも、ヘルスケア事業は増益を見込みます。前のページでご説明したとおり、各国で新型コロナウイルスによる外出が制限される中、オンラインチャネルでの売上拡大が貢献します。主力の血圧計需要は増加する見通しです。事業セグメント別の営業利益見通しの説明は以上です。
全社で見ますと、第1四半期の営業利益125億円と通期の営業利益300億円との間に、大きなギャップを感じられると思います。それだけ、我々は第2四半期以降の状況を厳しく見ています。業績は第2四半期ないし第3四半期が底で、その後緩やかに回復すると見て、計画を策定いたしました。もちろん、これでよしとしているわけではありません。第1四半期と同様、チャンスを捉えて売上を積み増していきます。
現在のオムロンは売上総利益率が高いので、売上の増加は大きく営業利益に効いてきます。高い売上総利益率を維持したままトップラインを引き上げることで、ボトムの利益を伸ばしていきます。
年間配当
このパートの最後は、年間配当予想額です。今期の年間配当予想額は、前年と同額の84円を維持します。私はこれまでCEOとして、成長力・収益力・変化対応力を向上することを目標に、経営を担ってまいりました。足元では、米中の確執など地政学リスクや、新型コロナウイルス感染症の蔓延など、事業環境は先行き不透明ではありますが、過去9年間を振り返ってみて、それ相応の成果があり、結果として企業価値を高めることができたと自負しています。
今年度は、厳しい事業環境のもと、バランスの取れたリーンで機動的なマネジメントを行なうつもりであります。このような状況のもとで、とくに収益力と変化対応力に対するオムロンの自信を示すため、計画対比の配当性向がおおむね100パーセントとなることを認識した上で、DOE基準を適用し、配当予想額を昨年と同額の84円とすることを決めました。引き続き、安定的な配当、持続的な株主還元に努めてまいります。2020年度計画についての説明は以上です。
アフターコロナで新たに顕在化する社会的課題①
ここからは、今後を見据えた取り組み、アフターコロナへのオムロンのチャレンジについてご説明いたします。新型コロナウイルスは、人命や経済に甚大な影響を与える一方、社会変革のスピードを加速させています。例えば、人とロボットが協調する新しい省人化や、遠隔診療ニーズ、駅務サービスの遠隔化・省人化ニーズなど、これまでさまざまな規制やコストの問題により進んでいなかったことが、前倒しで実現しつつあります。
これは、我々オムロンが将来において想定していた事業機会が、一気に前倒しで顕在化してきたことを意味しています。今日は、製造業の変化、医療の変化、社会・サービスの変化の3つの観点から、これらの事業機会に対するオムロンの取り組みをご紹介いたします。
アフターコロナで新たに顕在化する社会的課題②
はじめに、製造業の変化についてです。21ページをご覧ください。新型コロナウイルスは、製造現場に人が集められない、あるいは、人が集まっても3密を回避しなければならないという制約をもたらしました。
これまでのコスト削減を図るための自動化とは異なり、社員の健康を守るという観点から、モノづくりの人への依存をいかに減らすかという、新たな省人化ニーズが顕在化しています。具体的には、未だに人手作業が多く残る、組み立て・検査・搬送工程といった後工程の自動化ニーズです。
しかし、これらの工程を自動化し省人化するには、これまで大きなハードルがありました。なぜなら、生産ラインのコントローラとロボットのコントローラは別々に存在し、かつ、プログラム言語もまったく違うからです。これを統合して、人の繊細な動作と同等の品質を再現するには、高い生産技術力と大きな投資が必要なため、後工程の自動化は、製造工程の中でも最も遅れていた領域でした。
新しい省人化ニーズ
オムロンは、このソリューションを、世界初のロボット統合コントローラで実現いたします。オムロンは、生産ラインを制御するコントローラとロボット制御のコントローラを統合し、人が行う複雑で繊細な作業を高度に自動化する、世界初となるロボット統合コントローラを、7月31日にリリースいたします。
ロボット統合コントローラのメリットは、大きく2つございます。1つ目は、人にしかできない繊細な組付け作業の自動化実現です。これまで別々に動作していたコントローラを1つに統合し、自動化に必要な幅広い制御機器を、1つのソフトウェア、1つのプログラム言語でシームレスに制御できることを可能にしました。
そしてもう1つが、Oneソフトウェアになったことでできるようになった、生産設備データの一元化です。このデータの一元化が、生産ラインの設計や事前検証、運用、そして保守に至るまで、ソフトウェア上でシミュレーションすることを可能にしました。これにより、1人の技術者が同時に複数の生産ラインの立ち上げや保守に携われるようになりました。
例えば、今後、地産地消の加速により、世界各地に複数の生産ラインを同時に立ち上げる必要が生じた際にも、マザー工場にいる優秀な生産技術者が、遠く離れた生産ラインの構築に携われるようになります。
人にしかできない繊細な組付け作業を自動化
1つずつ、具体例を使って説明いたします。まずは、Oneコントローラによる繊細な組付け作業の自動化実現についてです。こちらのスライドは、スマートフォンに搭載されているカメラモジュールの組み立ての例です。
カメラモジュールは、微細なレンズやユニット部品で構成されており、これらがミクロンオーダーで、ずれることなく絶妙な力加減で組付けられる必要があります。さらに最近は、カメラの高性能化によって、レンズが複数枚になるなど組付けの難易度がさらに上がり、これまでは熟練の作業者でしかできなかった工程でした。
我々の世界初のロボット統合コントローラは、各種センサやサーボとロボットをOneコントローラで統合して制御することができ、いままで熟練の作業者にしかできなかった微小部品の組付けの自動化を実現しました。オムロンがこれまで磨いてきた統合制御技術が、アフターコロナで顕在化した新たなソーシャルニーズを捉え始めています。
Oneソフトウェアに集約されたデータによる設計・運用・保守シミュレーション
続いて、統合コントローラと生産設備データの一元化が実現する、生産技術エンジニア業務のイノベーションについてご説明いたします。
(動画流れる)
ご覧いただいている動画は、生産技術者がロボット統合コントローラのシミュレータを使って、新しい生産ラインの設計に取り組んでいる様子です。
ロボット統合コントローラにあらゆる生産設備のデータを一元化することによって、現場にいなくとも生産ライン設計を可能にするというイノベーションを起こしました。さらに、稼働状況のチェックや改善作業も、生産技術エンジニアが、離れたロケーションに存在する生産ラインからデータを収集し、実施できるようになりました。
また、1つのシミュレータで、生産ライン上のすべての機器の動作を再現できるようになりました。生産技術エンジニアは、マザー工場にいながらにして、世界中の現場技術者とコミュニケーションをとることが可能になりました。これにより、生産ラインの問題解決時間を格段に短縮することが可能になりました。
いま、製造業においては、現場オペレータのみならず、生産技術人財の不足が深刻な課題になっています。オムロンは、統合コントローラのソリューションを通じて、生産技術者不足という社会的課題の解決に挑戦していきます。ファクトリーオートメーションの事例は以上です。
アフターコロナに向けたオムロンの強み
次に、医療の変化に対する遠隔診療ニーズについてご説明したいと思いますが、まずはアフターコロナに向けたオムロンのヘルスケア事業の強みを、もう一度整理したいと思います。
オムロンは、家庭用血圧計のグローバルシェア50パーセントを保有をしています。その年間販売台数は、2,150万台に及びます。まずは、これが最大の強みです。
そして、これを支えるのが、全世界で約120ヶ国にまたがる、60万軒の取扱店舗数です。さらに、オンラインでも売上を拡大しており、グローバルでのカバレッジを年々拡大しています。
2016年度からは、これらの血圧測定データを記録・可視化するアプリ「OMRON connect」を提供しており、そのダウンロード数は190万件を超えています。このデータは、世界中のサービスプロバイダとの協業により、さまざまなアプリで活用されています。
これらの活動が、世界各国で医療従事者から高い評価を得て、オムロンブランドのブランド力向上に大きく貢献しています。オムロンは、この強いブランド力と顧客基盤を活かし、数年前から遠隔診療を支援するビジネスモデルを、パートナー企業とともに開発してきました。
コロナ感染の拡大に伴い、医療従事者や患者同士の接触による病院内での感染拡大リスクが課題となっており、遠隔診療の導入がグローバルで加速していきます。
遠隔診療サービスのビジネスモデル
次に、この需要を捉えるための遠隔診療のサービス・ビジネスモデルをご説明します。27ページをご覧ください。こちらのスライドは、患者と医者を結ぶ遠隔診療サービスの全体像を表しています。スライドの1番から5番に関して、順番に説明をしていきます。
1番は、血圧計や心電計をはじめとする計測機器で、生体データを計測し、そのデータはスマホに自動転送されます。次に、2番の健康管理アプリ「OMRON connect」により、収集した個人の生体データを、電子カルテに直接転送することができます。
3番で、計測したデータをオムロンが持つアルゴリズムで分析し、医師の診療に役立つかたちにして提供します。そして4番で、3番で分析したデータを医師のパソコンに表示することで、治療の選択肢を提案します。ここまでを一気通貫にサービス提供できることが、オムロンの強みです。
5番では、患者に対しても、分析したデータをもとに治療の継続をサポートし、生活習慣の変容を支援することができます。
オムロンは、このビジネスモデルに基づいたサービスに、すでに取り組み始めています。6月より、全米トップクラスの医療機関であるニューヨークのマウントサイナイ病院と、高血圧患者向けの遠隔診療サービスのトライアルを開始いたしました。
このサービスは、公的医療保険メディケアの対象になりました。これは、高血圧患者が家庭で血圧を測定し、医師に共有化する遠隔診療モニタリングにおいて、医療機関には月額64ドルの診療報酬が認められています。そして、そのうちの一部がオムロンの収入となります。
8月より、米国にて正式スタートをいたします。今後、このビジネスモデルに基づいた遠隔診療サービスを、米国のみならず欧州や国内でも加速していきます。
心電測定デバイスのグローバル展開
こちらのスライドは、遠隔診療サービスを加速させるための鍵となる、新商品の発売スケジュールを表しています。今年4月の決算説明会でもご紹介した心電計付き血圧計は、2019年に米国を皮切りに発売を開始いたしました。累計販売台数はすでに1万台を超えています。
米国に続き、2021年2月に欧州で、3月には日本でも発売が決定いたしました。また、来年度以降は、中国・アジアでも順次発売していく計画です。いずれも、各国で医療機器としての許認可を取得し、医療現場で活用していただける機器として販売をしていきます。
さらに、モバイル心電計についても、今年9月には欧州で発売を開始し、来年度には日本、2022年度には中国でも販売も開始する予定です。どちらの商品も、着実にグローバル展開を進めてまいります。今後も、家庭で計測可能な心電計付き血圧計やモバイル心電計をグローバルに普及させ、各地のパートナー企業と連携し、遠隔診療サービスの展開を加速してまいります。
アフターコロナで新たに顕在化する社会的課題③
ここまで、ファクトリーオートメーションとヘルスケアにおける、アフターコロナに向けた取り組みについてご紹介をしてまいりました。最後にご紹介するのは、ソーシャルソリューション領域です。
オムロンが注力する3つの事業ドメインの1つであるこの領域でも、新型コロナウイルスにより、大きな変化が生じています。それは、社会・サービスの変化です。今日はよい機会ですので、オムロンにおけるこの領域での新たな社会的課題解決の例として、駅務サービスの遠隔化・省人化の取り組みについてご説明いたします。
駅務サービスの遠隔化・省人化
30ページをご覧ください。こちらのスライドは、駅の遠隔監視サービスの進化を表しています。現在、オムロンは、ソーシャルソリューションの領域で駅の遠隔監視システムを手掛けており、高い市場シェアを持っています。
スライドの左側の図をご覧ください。現状の遠隔監視システムは、オムロンが鉄道会社に駅務機器およびシステムを販売し、鉄道会社自身が監視・運用を行っています。しかし、現状の遠隔監視サービスは、駅務の一部を監視しているにすぎず、省人化への貢献は限定的でした。
これに対し、今後は右側の下の図のように、駅務機器だけではなく、窓口業務やセキュリティを含め、オムロンのサービスセンターが一括で受託し、駅運営サービスを提供していきます。鉄道会社のアウトソースニーズを取り込むことにより、省人化と安心・安全・快適な駅の両立を実現してまいります。
オムロンは、すでに一部の鉄道会社さまからこのサービスを受託し、運営を開始しています。将来的には、取引のあるすべての鉄道会社の遠隔運営システムを担うことも視野に入れています。従来のモノ売りに留まらないサービス事業を加速させ、事業構造の転換を実現していきます。以上、オムロンが取り組むアフターコロナへのチャレンジについて、3つの具体的事例をご紹介をいたしました。
最後に①
最後に、今後のオムロンの経営スタンスについて、私の考えをお伝えしたいと思います。グローバルで長期化するコロナ感染は、気候変動・医療格差・地政学リスクなど、社会の歪みをあらためて浮き彫りにしました。
社会全体が持続可能なシステムへ移行することが求められる中で、私はあらためてオムロンの存在意義に立ち戻り、その重要性を実感をしています。オムロンの存在意義とは、「事業を通じて社会価値を創出し、社会の発展に貢献し続けること」です。これは、私たちの企業理念の実践そのものです。
コロナ禍において社会の歪みが浮き彫りになったいま、新たな社会価値を生み出すために、既存事業の枠組みにとらわれず、ビジネスモデルを進化させ、事業変革を加速することが重要だと考えています。先ほど紹介した、ヘルスケア領域の遠隔診療サービスへのビジネスモデル転換は、まさに事業変革の事例です。
オムロンはこれまで、血圧計をグローバルに販売し、家庭で血圧を測定する文化をつくってきました。しかし、高血圧が原因で脳卒中や心筋梗塞などで亡くなったり、後遺症を患ったりする人は、グローバルに増え続けています。
人口の高齢化が最大の要因ですが、結果的に国民医療費は高騰し続けています。つまり、心臓や脳の発作、いわゆるイベントをなくすこと、そして医療費を最適化するためには、血圧計を販売しているだけでは不十分です。
最後に②
だからオムロンは、ヘルスケア事業において「ゼロイベント」というゴールを掲げ、各国で保険制度が整う中で、これまでの血圧計の販売から、遠隔診療サービスへの事業変革を進めています。オムロンは本気で、世の中から脳卒中や心筋梗塞の発作をゼロにしたいと考えています。
また、本日紹介させていただいたロボット統合コントローラや駅の遠隔管理サービスは、製造現場や駅の現場における人手不足という社会的課題解決に向けた事例です。これらも、オムロン自身が事業を変革し、新たな社会価値を生み出し、コロナ禍で浮き彫りになった社会的課題の解決にチャレンジするものです。
最後に③
社会全体が持続可能なシステムへ移行することが求められる中で、企業自身が自らを変革することが求められています。私たちのチャレンジも、待ったなしです。
アフターコロナのニューノーマルの時代に勝ち残る企業となるために、中長期の視点で、あらためてオムロンの存在意義に立ち戻り、2020年度から2021年度にかけた2年間は、集中して事業変革の加速に注力する経営を進めてまいります。
オムロンは、ニューノーマルの時代においても、社会から必要とされる企業として、必ず勝ち残ります。新たな成長機会を捉える準備は、すでにできています。引き続き、株主のみなさま・投資家のみなさまからのご支援を賜わりますよう、今後ともよろしくお願いをいたします。私の説明は以上です。ご清聴、ありがとうございました。